JP4499843B2 - 硬化性樹脂組成物の製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、繊維強化プラスチック、レジンコンクリート、塗料、注型、及び、コンクリート、モルタル、鋼板、ガラス等を被覆する被覆材料等の各種用途に利用可能であり、臭気が少なく、可撓性に優れた硬化物となる硬化性樹脂組成物を得させるための硬化性樹脂組成物の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂は、耐水性、耐熱性、機械強度等に優れ、さらに液状での取り扱いが可能であり、よってその作業性の良さから各種用途に用いられてきた。その用途の一つとして、屋上防水材、塗り床材、鋼板構造物等の耐食ライニング材等の被覆材料としての利用が増えている。被覆材料は一般に下地となる基材の動きに追従する必要があり、そのため、可撓性のある樹脂が用いられる。例えば、特公平8−5948号公報では、不飽和ポリエステル樹脂の構成成分を限定することにより低温下でも伸び率が大きく、かつ機械的強度の大きい樹脂組成物を開示している。
【0003】
被覆材料用の不飽和ポリエステル樹脂は、スチレンに代表される重合性単量体を含有することで作業に応じた適切な粘度に調節し、刷毛やローラーを用いて基材に塗布し、常温下、あるいは加熱して硬化することにより可撓性のある被覆層を形成する。しかしながら、これらの粘度調節に用いる重合性単量体、あるいは有機溶剤は塗布作業中や硬化過程中に大気へ揮散する。特に倉庫等の閉所の床を被覆する場合では、換気が不十分になり悪臭をともなった揮散成分が充満して作業環境が非常に悪くなり改善が望まれてきた。
【0004】
例えば、特公平6−843号公報では、不飽和ポリエステル樹脂の構成成分としてジシクロペンタジエンを用いることにより樹脂中にスチレンを含有していても、そのスチレンの大気への揮散量を低減できる樹脂組成物を開示している。しかしながら、樹脂組成の成分としてスチレンを用いており、ある程度のスチレン臭気は避けられない状況である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明は、不飽和ポリエステル樹脂と同様に低粘度であり、優れた硬化性を有し、不飽和ポリエステル樹脂の短所である臭気を抑えた、いわゆる低臭気性を有し、その硬化物が優れた可撓性を有している樹脂組成物を得させるための製造法を提供することを課題とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、エポキシ化合物、(メタ)アクリル酸、及び、特定の多塩基酸を反応させることにより得られる反応混合物(A)と重合性単量体である特定の(メタ)アクリル酸エステル(B)を含む硬化性樹脂組成物が、低粘度であり、硬化性に優れ、臭気が極めて少なく、その硬化物は可撓性に優れることを見い出した。また、多価アルコールと該多価アルコールに対して過剰当量の(メタ)アクリル酸とをエステル化反応させて(メタ)アクリル酸エステルと未反応の(メタ)アクリル酸を含む反応混合物を得る第一工程と、続いて、前記第一工程の反応混合物、エポキシ化合物、及び、多塩基酸を反応させる第二工程を含む製造法により、煩雑な工程を必要とせずに容易に硬化性樹脂組成物を製造することができることを見い出した。
【0007】
すなわち、本発明にかかる硬化性樹脂組成物の製造法は、一般式(3)で表されるアルコールと該アルコールに対して過剰当量の(メタ)アクリル酸とをエステル化反応させて下記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステルと未反応の(メタ)アクリル酸とを含む反応混合物を得る第一工程と、続いて、前記第一工程の反応混合物、エポキシ化合物、及び、カルボキシル基当量が200〜500g/eqの多塩基酸を反応させる第二工程を含む。
上記本発明の製造法によれば、エポキシ化合物、(メタ)アクリル酸、及び、カルボキシル基当量が200〜500g/eqの多塩基酸を反応させてなる反応混合物(A)と、下記一般式(1)で示される(メタ)アクリル酸エステル(B)とを含み、低粘度であり、硬化性に優れ、臭気が極めて少なく、可撓性に優れる硬化物を得させる硬化性樹脂組成物を得ることができる。
【0008】
【化3】
(式中、R 1 、R 2 は各々独立して、水素またはメチル基を表す。R 3 はアルキル基またはアリール基を表す。nは1〜5の整数を表す。)
【化4】
(R 2 は水素またはメチル基を表す。R 3 はアルキル基またはアリール基を表す。nは1〜5の整数を表す。)
【0009】
本発明によると、スチレンに代えて臭気の極めて少ない特定の(メタ)アクリル酸エステル(B)を重合性単量体として樹脂組成の成分に用いることにより、低臭気化、及び、低粘度化が達成される。また、エポキシ化合物、(メタ)アクリル酸、及び、特定の多塩基酸を反応せしめてなる反応混合物(A)中に多塩基酸残基を有することで、可撓性、及び、低粘度化が達成される。
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明で用いられるエポキシ化合物としては、1分子内に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等;多価アルコールのグリシジルエーテルであるネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル等;多価カルボン酸のグリシジルエーテルであるフタル酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル等;1分子内に1個のエポキシ基を有する化合物であるプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド、脂肪酸モノグリシジルエステル、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらのエポキシ化合物は、単独または2種以上併用可能である。
【0011】
特に可撓性に優れるためには、エポキシ化合物の総重量に対して1分子内に2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物が70重量%以上であることが好ましく、また樹脂組成物の粘度を低くするためには、1分子内に2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物のエポキシ当量が500g/eq以下であり、さらに200g/eq以下であることが好ましい。
【0012】
本発明で用いられる多塩基酸は、優れた可撓性を有するためには、カルボキシル基当量が200g/eq以上であることが必要であり、また、得られる樹脂組成物の粘度を低くするためにはカルボキシル基当量が500g/eq以下であることが必要である。従って、多塩基酸のカルボキシル基当量が200g/eq〜500g/eqの範囲であることが必要である。
【0013】
カルボキシル基当量は酸価、あるいは、分子量から下記の様にして計算できる。
カルボキシル基当量=56100/AV
カルボキシル基当量=Mn/L
(AVは酸価(mg.KOH/g)、Mnは分子量、Lは多塩基酸の1分子中のカルボキシル基の個数を表す。)
2種以上の多塩基酸を用いる場合は、多塩基酸混合物として計算したカルボキシル基当量が200g/eq以上、500g/eq以下となることが必要であり、すなわち下記の計算式を満たすことが好ましい。
【0014】
200≦ΣDi/Σ(Di/di)≦500
(Diは多塩基酸iの重量(g)、diは多塩基酸iのカルボキシル基当量(g/eq))
本発明で用いられる多塩基酸としては、不飽和多塩基酸であるマレイン酸、フマル酸等;芳香族多塩基酸であるフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等;脂肪族多塩基酸であるコハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、エイコサ二酸、テトラヒドロフタル酸;SB−20、IPS−22、IPU−22(商品名、何れも岡村製油株式会社製)、炭素数18の不飽和脂肪酸の重合体(ダイマー酸、トリマー酸と称される)である、バーサダイム216、エンポール1009、エンポール1045(商品名、何れもヘンケルジャパン株式会社製)等が挙げられる。中でも、カルボキシル基当量が270g/eqから320g/eqの範囲にある不飽和脂肪酸の重合体であるダイマー酸、トリマー酸の使用が好ましい。さらに、一般式(2)
【0015】
【化3】
【0016】
(Yは多価アルコール残基、Zは環状酸無水物残基を表す。mは1以上でk以下の整数を表す。kは多価アルコールの価数である。)
で示される多価アルコールと環状酸無水物の反応物形態を有する多塩基酸も使用可能であり、例えば、該多価アルコールと環状酸無水物を50℃から150℃で加熱混合することにより得られる。該多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が使用でき、特に、アリル基を有するアルコールである、グリセリンモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンモノアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル等を用いることにより空気硬化性に優れた組成物を得ることができる。また、環状酸無水物としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸等の上記多塩基酸の無水物が使用できる。
【0017】
これらの多塩基酸のうち単独あるいは2種以上の併用が可能である。単独で用いる場合には、カルボキシル基当量が200〜500g/eqのものを用いる必要があり、2種以上併用する場合には、多塩基酸混合物として計算したカルボキシル基当量が200〜500g/eq以下となるようにすればよいので、カルボキシル基当量が200g/eq未満の多塩基酸を一部として用いることが可能である。
【0018】
本発明では、一般式(1)で示される(メタ)アクリル酸エステル(B)を樹脂組成物の成分とすることで低臭気化、及び低粘度化が達成される。
上記一般式(1)でのnが5より大きくなると粘度が高くなり好ましくない。R3はアルキル基またはアリール基であり、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜11のアリール基が好ましい。(メタ)アクリル酸エステル(B)として具体的には、例えば、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシ−1−メチルエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(メタ)アクリレート、ペンタエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ペンタプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシ−1−メチルエチル(メタ)アクリレート、2−(4−メチルフェノキシ)エチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(4−メチルフェニル)エーテル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステル(B)は、単独あるいは2種以上併用可能である。特に、臭気が極めて少なく、得られる樹脂組成物の粘度を低くするためにはジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレートの少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0019】
エポキシ化合物、(メタ)アクリル酸、及び、多塩基酸の反応方法は特に限定されないが、例えば、下記の方法を用いることができる。
エポキシ化合物の重量(g)をEP、エポキシ基当量をep、
(メタ)アクリル酸のモル量(mol)をMA、
多塩基酸の重量(g)をAC、カルボキシル基当量をac、
とすれば、
0.8≦(EP/eq)/(MA+AC/ac)≦1.2
0.3≦(AC/ac)/MA≦4.0
を満たす量を用い、反応触媒の存在下で80〜140℃に加熱して酸価が20mg.KOH/g以下になるまで反応を行えばよい。反応は窒素等の不活性ガス気流下でも行うことができるが、反応中のゲル化を防止するためには、空気あるいは酸素と不活性ガスの混合ガス気流下で、ラジカル重合禁止剤を添加して行うことが好ましい。また、エポキシ化合物、(メタ)アクリル酸、及び、多塩基酸を同時に混合加熱して反応を行っても良いし、多塩基酸とエポキシ化合物を先に反応させてから(メタ)アクリル酸を投入してさらに反応を続けても良い。
【0020】
また、多塩基酸として多価アルコールと環状酸無水物の反応物を用いる場合では、(メタ)アクリル酸の存在下で多価アルコール、環状酸無水物を例えば、50〜150℃に加熱反応させて、これにより生成する多塩基酸と(メタ)アクリル酸の混合物を得て、この混合物とエポキシ化合物を反応させても良い。
反応触媒としては、カルボン酸とエポキシ化合物によるエポキシ基の開環を伴った付加反応に用いる公知のものが使用でき、例えば、トリエチルアミン、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。
【0021】
反応中に用いるラジカル重合禁止剤としては、公知のラジカル重合禁止剤を用いることができ、例えば、メトキノン、ブチル化ヒドロキシトルエン等のフェノール類、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、モノメチルハイドロキノン等のハイドロキノン類、ベンゾキノン等のキノン類、フェノチアジン等の硫黄化合物が挙げられる。
【0022】
一般式(1)で示される(メタ)アクリル酸エステルは、例えば、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル、あるいは、ポリオキシアルキレンモノアリールエーテルと(メタ)アクリル酸をエステル化反応することにより得ることができる。すなわち、p−トルエンスルホン酸や硫酸を触媒として用い、共沸溶剤の存在下で加熱し、生成する縮合水を反応系外に除きながらエステル化反応を進める。その後、未反応の(メタ)アクリル酸を除くため、水酸化ナトリウム等で中和、水洗浄し、水洗浄液を分離除去してから共沸溶剤を減圧下で除去することにより得られる。
【0023】
エポキシ化合物、(メタ)アクリル酸、及び、多塩基酸の反応混合物(A)と、一般式(1)で示される(メタ)アクリル酸エステル(B)の混合割合は特に限定しないが、低粘度であり、硬化性に優れるためには、重量比で
0.1≦B/(A+B)≦0.8の範囲であることが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル(B)と反応混合物(A)の混合方法は特に限定しないが、(メタ)アクリル酸エステル(B)を溶媒として用い、エポキシ化合物、(メタ)アクリル酸、及び、多塩基酸を反応させることにより、(メタ)アクリル酸エステル(B)と反応混合物(A)からなる組成物を得ることもできる。
【0024】
また、製造工程の簡略化により容易に硬化性樹脂組成物を製造する方法として、アルコール(C)と該アルコール(C)に対して過剰当量の(メタ)アクリル酸をエステル化触媒の存在下でエステル化反応させることにより(メタ)アクリル酸エステルと未反応の(メタ)アクリル酸を含む反応混合物を得て、続いて、この反応混合物とエポキシ化合物、及び、多塩基酸を反応させることにより硬化性樹脂組成物を製造することができる。この製造方法によれば、アルコール(C)の一部あるいは全部として、一般式(3)のアルコールを用いることによって、本発明の硬化性樹脂組成物を製造することができる。
【0025】
【化4】
【0026】
(R2は水素またはメチル基を表す。R3はアルキル基またはアリール基を表す。nは1〜5の整数を表す。)
(メタ)アクリル酸エステルを製造する際に行う未反応の(メタ)アクリル酸の除去を行わずに、この反応混合物とエポキシ化合物、及び、多塩基酸と反応させることにより硬化性樹脂組成物を得る製造方法であるので、水酸化ナトリウム等での中和作業や水洗浄作業を行う必要が無く、容易に製造することができる。また、反応混合物に対して、エポキシ化合物と多塩基酸とを予め反応させることなく一括で反応させるので、反応時間が短縮される。
【0027】
アルコール(C)としては、1価アルコールである2−メトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、2−ブトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ペンタエチレングリコールモノメチルエーテル、ペンタプロピレングリコールモノメチルエーテル、2−フェノキシエタノール、1−フェノキシ−2−プロパノール、2−(4−メチルフェノキシ)エタノール、ジエチレングリコールモノ(4−メチルフェニル)エーテル等、2価アルコールであるエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジプロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,4−ブタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、4,5−ノナンジオール、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレート、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等、2価アルコール誘導体であるエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のモノエポキシ化合物、3価以上のアルコールであるグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等及びこれらのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられ、これらは単独、あるいは2種以上併用可能である。
【0028】
特に、優れた可撓性を有するためには、アルコール(C)の全量中、50重量%以上が1価アルコールであることが好ましく、さらに、臭気が極めて少なく、低粘度の樹脂組成物を製造するためには、アルコール(C)の全量中、50重量%以上が一般式(3)のアルコールであることが好ましく、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、2−フェノキシエタノールの少なくとも1種であることが特に好ましい。
【0029】
エポキシ化合物としては前述のエポキシ化合物が使用できる。
多塩基酸としては前述の多塩基酸が使用できる。
第一工程は、アルコール(C)と過剰当量の(メタ)アクリル酸をエステル化する工程である。
エステル化反応の進行を速やかにすることと低粘度の樹脂組成物を得るためには、アルコール(C)の水酸基1mol量に対して、1.1〜5.0molの(メタ)アクリル酸を用いることが好ましい。
【0030】
第一工程でのエステル化反応は、70〜140℃の温度で、常圧、あるいは減圧下で行うことができ、エステル化触媒の存在下で行うことができる。また、エステル化反応を円滑に進めるため、縮合水と共沸するキシレン、トルエン、シクロヘキサン等の溶媒を用いても良い。また、反応中のゲル化を防ぐため、空気、あるいは酸素と不活性ガスの混合ガス気流下で、ラジカル重合禁止剤を添加して行うことが好ましい。
【0031】
エステル化触媒として公知のものが使用でき、例えば、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、スルホフタル酸、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸等の有機スルホン酸を挙げることができる。
ラジカル重合防止剤としては公知のラジカル重合禁止剤を用いることができ、たとえば、メトキノン、ブチル化ヒドロキシトルエン等のフェノール類、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、モノメチルハイドロキノン等のハイドロキノン類、ベンゾキノン等のキノン類、フェノチアジン等の硫黄化合物が挙げられる。
【0032】
第一工程の終了は、留出する縮合水の量で判断することができ、理論縮合水量の80%以上の縮合水が留出するまでエステル化を進めることが好ましい。
第二工程は、第一工程で得られた(メタ)アクリル酸エステルと未反応の(メタ)アクリル酸を含む反応混合物、エポキシ化合物、及び、多塩基酸を反応させる工程であり、反応触媒の存在下で80〜140℃に加熱して、酸価が20mg.KOH/g以下になるまで、反応を続けることが好ましい。
【0033】
反応触媒としては前述したカルボン酸とエポキシ化合物によるエポキシ基の開環を伴った付加反応に用いる公知のものが使用できる。
第一工程で共沸溶媒を用いた場合では、第二工程終了後に減圧下でこの共沸溶媒を留去すればよい。
本発明の硬化性樹脂組成物、及び、本発明の硬化性樹脂組成物の製造法で得られる樹脂組成物は、放射線や紫外線の照射、あるいは硬化剤の添加により硬化させることができる。
【0034】
硬化剤としては、不飽和ポリエステル樹脂に用いられる公知の硬化剤が使用でき、例えば、過酸化物としてメチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のアルキルパーエステル、ビス(4−tーブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーカーボネートを用いることができ、アゾ化合物として、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル等が使用できる。これらは単独、あるいは2種以上の併用が可能である。
【0035】
使用量は、成形用途に適したゲル化時間になるように、適宜、決めることができるが、樹脂組成物100重量部に対し、0.2〜10.0重量部の範囲で用いることが望ましい。
さらに硬化剤と併用して、不飽和ポリエステル樹脂の硬化促進剤として公知な硬化促進剤を使用することができ、たとえば、オクチル酸コバルト、オクチル酸マンガン等の金属石鹸、コバルトアセチルアセトナート、バナジウムアセチルアセトナート等の金属キレート化合物、ジメチルアニリン、ジメチルトルイジン等のアミン化合物、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等を用いることができ、単独、2種以上の併用が可能である。
【0036】
本発明の硬化性樹脂組成物、及び、本発明の硬化性樹脂組成物の製造法で得られる樹脂組成物は、繊維強化プラスチック、レジンコンクリート、塗料、注型、及び、コンクリート、モルタル、鋼板、ガラス等を被覆する被覆材料等の各種用途に利用可能であり、必要に応じて、(メタ)アクリル酸エステル(B)以外のラジカル重合性単量体、揺変性付与剤、充填剤、乾燥性向上剤、増粘剤、着色剤等を混合することができる。
【0037】
また、他種の熱硬化性樹脂を混合してもよい。
(メタ)アクリル酸エステル(B)以外のラジカル重合性単量体としては、スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等のアリール基で置換したビニル化合物、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート化合物等が使用できるが、本発明の効果である低臭気性を維持するためには、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等の臭気の少ないラジカル重合性単量体を用いることが好ましい。
【0038】
揺変性付与剤としては、無水微粉末シリカ、アスベスト、クレー等が挙げられる。
充填剤としては、水酸化アルミ、タルク、珪砂、炭酸カルシウム、酸化アンチモン等が挙げられる。
乾燥性向上剤としては、パラフィン、乾性油、アリルオキシ基を有する不飽和、あるいは飽和ポリエステルオリゴマー;例えば、アリルグリシジルエーテル、ジエチレングリコール、及び、無水マレイン酸の付加重合体等が挙げられる。
【0039】
増粘剤としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛等の金属酸化物が挙げられる。
着色剤としては、有機顔料、無機顔料、染料等が挙げられる。
他種の熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0040】
繊維強化プラスチック材料に用いる場合は、ガラス繊維、炭素繊維等の無機繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維等の有機繊維を用いることができる。
【0041】
【実施例】
以下に実施例によりさらに詳細に本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
攪拌機、冷却管、ガス導入管及び温度計を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート497g、メタクリル酸172g、バーサダイム216(ヘンケルジャパン株式会社製、カルボキシル基当量288)576g、YD−128(東都化成株式会社製のビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量187)748g、トリエチルアミン7.5g、フェノチアジン0.3gを仕込み、空気を吹き込みながら100℃に加熱した。100℃に達してから10時間後に酸価が5.0mg.KOH/gとなり、ジエチレングリコールモノメチルメタクリレートを500g追加して、粘度が2.5ストークス(25℃)の樹脂組成物(1)を得た。
(実施例2)
実施例1でのジエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレートをジエチレングリコールモノエチルエーテルメタクリレートに代えて、実施例1と同様の操作を行い、粘度が2.3ストークス(25℃)の樹脂組成物(2)を得た。
(実施例3)
実施例1でのジエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレートを2−フェノキシエチルメタクリレートに代えて、実施例1と同様の操作を行い、粘度が3.4ストークス(25℃)の樹脂組成物(3)を得た。
(実施例4)
攪拌機、冷却管、ガス導入管及び温度計を備えたフラスコに、テトラヒドロ無水フタル酸486g、ジエチレングリコール170gを仕込み、窒素ガスを吹き込みながら95℃に加熱した。95℃に達してから4時間後に酸価が278mg.KOH/gの反応混合物を得た。この反応混合物のカルボキシル基当量は酸価から計算して202となる。続いて、2−フェノキシエチルメタクリレート627g、メタクリル酸138g、YD−128(東都化成株式会社製のビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量187)898g、トリエチルアミン9g、フェノチアジン0.3g、ハイドロキノン0.3gを加え、空気を吹き込みながら120℃に加熱した。120℃に達してから6時間後に酸価が5.0mg.KOH/gとなり、2−フェノキシエチルメタクリレート500gを追加して、粘度が4.5ストークス(25℃)の樹脂組成物(4)を得た。
(実施例5)
攪拌機、Dean−Stark型水分離器、ガス導入管及び温度計を備えたフラスコに、2−フェノキシエチルアルコール669g、メタクリル酸589g、トルエン258g、パラトルエンスルホン酸1水和物52g、フェノチアジン1gを仕込み、空気を吹き込みながら120℃に加熱した。120℃に達してから8時間後に留出した縮合水が80g(理論流出量の92%)となり、Dean−Stark型水分離器を冷却管に取り替えて、反応混合物の温度を100℃に下げ、、バーサダイム216(ヘンケルジャパン株式会社製、カルボキシル基当量288)576g、YD−128(東都化成株式会社製のビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量187)748g、トリエチルアミン8gを投入し、100℃で10時間加熱して酸価が5.0mg.KOH/gとなった。その後、減圧下、90℃でトルエンを除去して、粘度が3.5ストークス(25℃)の樹脂組成物(5)を得た。
(実施例6)
攪拌機、Dean−Stark型水分離器、ガス導入管及び温度計を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノメチルエーテル638g、ジエチレングリコール109g、メタクリル酸793g、トルエン263g、パラトルエンスルホン酸1水和物53g、フェノチアジン1gを仕込み、空気を吹き込みながら120℃に加熱した。120℃に達してから8時間後に留出した縮合水が130g(理論流出量の98%)となり、Dean−Stark型水分離器を冷却管に取り替えて、反応混合物の温度を100℃に下げ、、バーサダイム216(ヘンケルジャパン株式会社製、カルボキシル基当量288)369gとアジピン酸39gの混合物(カルボキシル基当量は224)、YD−128(東都化成株式会社製のビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量187)684g、トリエチルアミン8gを投入し、100℃で12時間加熱して酸価が5.0mg.KOH/gとなった。その後、減圧下、90℃でトルエンを除去して、粘度が1.5ストークス(25℃)の樹脂組成物(6)を得た。
(実施例7)
攪拌機、Dean−Stark型水分離器、ガス導入管及び温度計を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノエチルエーテル663g、メタクリル酸600g、トルエン259g、パラトルエンスルホン酸1水和物52g、フェノチアジン1gを仕込み、空気を吹き込みながら120℃に加熱した。120℃に達してから8時間後に留出した縮合水が85g(理論流出量の95%)となり、Dean−Stark型水分離器を冷却管に取り替えて、反応混合物の温度を100℃に下げ、エンポール1045(ヘンケルジャパン株式会社製、カルボキシル基当量281)570g、YD−128(東都化成株式会社製のビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量187)757g、トリエチルアミン8gを投入し、100℃で9時間加熱して酸価が5.0mg.KOH/gとなった。その後、減圧下、90℃でトルエンを除去して、粘度が4.0ストークス(25℃)の樹脂組成物(7)を得た。
(比較例1)
攪拌機、冷却管、ガス導入管及び温度計を備えたフラスコに、2−フェノキシエチルメタクリレート592g、メタクリル酸516g、YD−128(東都化成株式会社製のビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量187)1122g、トリエチルアミン8g、フェノチアジン1gを仕込み、空気を吹き込みながら100℃に加熱した。100℃に達してから6時間後に酸価が5.0mg.KOH/gとなり、2−フェノキシエチルメタクリレート500gを追加して、粘度が1.8ストークス(25℃)の樹脂組成物(比1)を得た。
(比較例2)
攪拌機、冷却管、ガス導入管及び温度計を備えたフラスコに、スチレン497g、メタクリル酸172g、バーサダイム216(ヘンケルジャパン株式会社製、カルボキシル基当量288)576g、YD−128(東都化成株式会社製のビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量187)748g、トリエチルアミン8g、フェノチアジン1gを仕込み、空気を吹き込みながら100℃に加熱した。100℃に達してから6時間後に酸価が5.0mg.KOH/gとなり、スチレン500gを追加して、粘度が1.1ストークス(25℃)の樹脂組成物(比2)を得た。
(比較例3)
攪拌機、冷却管、ガス導入管及び温度計を備えたフラスコに、2−フェノキシエチルメタクリレート210g、メタクリル酸172g、アジピン酸(カルボキシル基当量73)146g、YD−128(東都化成株式会社製のビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量187)748g、トリエチルアミン5.3g、フェノチアジン0.2gを仕込み、空気を吹き込みながら100℃に加熱した。100℃に達してから8時間後に酸価が5.0mg.KOH/gとなり、2−フェノキシエチルメタクリレート500gを追加して、粘度が2.7ストークス(25℃)の樹脂組成物(比3)を得た。
(比較例4)
攪拌機、冷却管、ガス導入管及び温度計を備えたフラスコに、テトラヒドロ無水フタル酸213g、ポリエチレングリコール(水酸基当量500)700gを仕込み、窒素ガスを吹き込みながら95℃に加熱した。95℃に達してから5時間後に酸価が98mg.KOH/gの反応混合物を得た。この反応混合物のカルボキシル基当量は酸価から計算して572となる。続いて、2−フェノキシエチルメタクリレート538g、メタクリル酸120g、YD−128(東都化成株式会社製のビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量187)524g、トリエチルアミン8g、フェノチアジン0.3g、ハイドロキノン0.3gを加え、空気を吹き込みながら120℃に加熱した。120℃に達してから14時間後に酸価が5.0mg.KOH/gとなり、2−フェノキシエチルメタクリレート500gを追加して、粘度が18.0ストークス(25℃)の樹脂組成物(比4)を得た。
【0042】
実施例1〜7及び比較例1〜4で得た樹脂組成物の物性を表1、2に示す。引張り強度、引張伸び率は、JIS K7113に従って測定した。測定に用いたテストピースの作製方法は次の通りである。実施例、比較例で得た各々の樹脂組成物300gに8重量%金属分のオクチル酸コバルト0.6gと硬化剤328E(化薬アクゾ株式会社製)3.0gを添加し、ガラス製の注形型に注ぎ、一晩放置した。翌日、110℃で2時間加熱した後、型から取り出して3mm×300mm×270mmの大きさの硬化物を得た。この硬化物からテストピースを切り出した。
【0043】
低臭気性の評価は、100ml容量のビーカーに樹脂組成物を各々20g入れ、ビーカーの口に鼻を近づけて臭いを嗅ぎ、殆ど臭気が無いものを◯、臭気の強いものを×、として行った。
表に示すとおり、本発明の樹脂組成物は引張り伸び率が高く、従って、可撓性に優れる。また、臭気も殆ど無く、低臭気性に優れる。中でも、実施例5〜7の樹脂組成物は、その製造工程で中和作業や水洗浄作業を行う必要が無く、容易に製造することができる。
【0044】
一方、比較例1の樹脂組成物は、多塩基酸を用いていないので引張り伸び率が低く、従って、可撓性に劣る。比較例2の樹脂組成物は、(メタ)アクリル酸エステル(B)の代わりにスチレンを用いているので、臭気が強い。比較例3の樹脂組成物は、用いた多塩基酸のカルボキシル基当量が小さいので引張り伸び率が低く、従って、可撓性に劣る。比較例4の樹脂組成物は、用いた多塩基酸のカルボキシル基当量が大きいので粘度が高く作業性に劣る。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【発明の効果】
本発明の硬化性樹脂組成物では、臭気の極めて少ない特定の(メタ)アクリル酸エステル(B)を重合性単量体として樹脂組成の成分に用いることにより低臭気化、及び、低粘度化が達成される。また、エポキシ化合物、(メタ)アクリル酸、及び、特定の多塩基酸を反応せしめてなる反応混合物(A)中に多塩基酸残基を有することで可撓性、及び低粘度化が達成される。
【0048】
本発明の硬化性樹脂組成物の製造法では、(メタ)アクリル酸エステルを製造する際に行う未反応の(メタ)アクリル酸の除去を行わずに、この反応混合物とエポキシ化合物、及び、多塩基酸と反応させることにより硬化性樹脂組成物を得る製造方法であるので、水酸化ナトリウム等での中和作業や水洗浄作業を行う必要が無く、容易に製造することができる。また、反応混合物に対して、エポキシ化合物と多塩基酸とを予め反応させることなく一括で反応させるので、反応時間が短縮される。
Claims (1)
- 一般式(3)で表されるアルコールと該アルコールに対して過剰当量の(メタ)アクリル酸とをエステル化反応させて下記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステルと未反応の(メタ)アクリル酸とを含む反応混合物を得る第一工程と、続いて、前記第一工程の反応混合物、エポキシ化合物、及び、カルボキシル基当量が200〜500g/eqの多塩基酸を反応させる第二工程を含む、硬化性樹脂組成物の製造法。
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