JP4498765B2 - 封着用組成物 - Google Patents
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Description
近年、鉛を含有する製品は環境上の観点から、その使用が避けられる傾向にある。
一方、鉛を含有しない封着用組成物に用いることができるガラスとして、例えばP2O5−ZnO系、P2O5−SnO系、Bi2O3系のガラスが知られており、中でも化学的耐久性の観点からBi2O3系ガラスが使用されることが多い。
Bi2O3系のガラスと無機フィラーからなる封着用組成物として、出願人は、例えば特開2003−95697を提供している。
また封着用組成物に必要な封着温度が上がると、その封着時の高温により被封着物やその他の使用材料に及ぼす劣化やその他の悪影響が顕著になるのである。
また本発明の封着用組成物は、上記第1の特徴に加えて、ガラス粉末は、酸化物換算で、Bi2O3を80〜83重量%、B2O3を4.5〜8重量%、ZnOを8.0〜12重量%、Al2O3を0.1〜0.5重量%含有する組成とし、且つ無機フィラーであるリン酸タングステン酸ジルコニウムの含有量を、前記組成のガラス粉末と無機フィラーとからなる封着用組成物全量に対して5〜20重量%の含有量に限定したことを第2の特徴としている。
十分に低温で且つ十分に小さい熱膨張係数(十分に低い熱膨張率)をもって封着を行うことが可能となる。
また本発明の封着用組成物は鉛を含有しないので、環境上の観点からも好ましい。
また本発明の封着用組成物では、ガラス成分として上記したBi 2 O 3 −B 2 O 3 −ZnO−Al 2 O 3 系ガラスを用いているので、溶融温度を低くすることができる上に封着焼成時にガラスが結晶化し難くすることができる。
本発明でいう「実質的にPbを含有せず」とは、PbO等の鉛を主成分とする原料を一切使用しないの意であり、ガラスを構成する各成分の原料及び無機フィラーの不純物に由来する微量の鉛が混入したものを排除するものではない。
ガラス粉末中のBi2O3が70重量%未満ではガラスの低溶融化が不十分であり、また85重量%を超えると封着焼成時にガラスが結晶化しやすく、封着材料として好ましく焼結しない。
Bi2O3のガラス粉末中における含有量は、好ましくは80〜83重量%である。
ガラス粉末中のB2O3が4.5重量%未満では封着焼成時のガラスの結晶化の抑制に効果がなく、また10重量%を超えるとガラスが不安定になり、ガラスの結晶化の抑制に効果がない。
B2O3のガラス粉末中における含有量は、好ましくは4.5〜8重量%である。
ZnOのガラス粉末中における含有量は、好ましくは9.0〜12重量%である。
ガラス粉末中のAl2O3が0.1重量%未満ではガラス溶融時の安定性と封着焼成時のガラスの結晶化の抑制に効果がなく、また1重量%を超えるとガラスの低溶融化が不十分となる。
Al2O3のガラス粉末中における含有量は、好ましくは0.1〜0.5重量%である。
更に上記構成成分に加えて、CaO、MgO、SrO、TiO2、ZrO2等を含有させることができる。
リン酸ジルコニウム化合物は熱膨張係数が小さいか負の値を示し、封着用組成物の熱膨張係数を低くする働きがある。
リン酸ジルコニウム化合物は、封着用組成物全量に対して2〜20重量%含有させる。2重量%未満では封着用組成物の熱膨張係数の低下が不十分となり、好ましくない。また20重量%を超えると封着用組成物の焼結を阻害するため好ましくない。
封着用組成物の全量に対するリン酸ジルコニウム化合物の含有量は、5〜20重量%がより好ましい。更に好ましくは10〜20重量%がよい。
リン酸タングステン酸ジルコニウムは、熱膨張係数が負の値を示し、封着用組成物に含有されることで、封着用組成物の熱膨張係数を効果的に低減させることができる。特に、リン酸タングステン酸ジルコニウムがBi2O3−B2O3−ZnO−Al2O3系ガラスに組み合わされて封着用組成物が構成される場合には、両者の配合割合から理論的に計算される封着用組成物の熱膨張係数よりも実際の封着用組成物の熱膨張係数の方が更にかなり小さくなるという効果を見出しており、これによって、より少ないフィラーの量でより低温の封着温度、より小さい熱膨張係数の封着用組成物を確実に提供することが可能になる。
このようにすることで、封着用組成物の熱膨張係数を少ないフィラーの量で大きく低減させることができ、且つガラス粉末の配合割合を多くして封着温度低減効果をその分だけ大きくすることができるので、結果として十分に封着温度が低く且つ熱膨張係数も十分に小さい封着用組成物を提供することができる。
封着用組成物の全量に対するリン酸タングステン酸ジルコニウムの含有量(2〜20重量%)は5重量%以上がより好ましく、更にいえば10重量%が更に好ましい。
また無機フィラーとして、リン酸ジルコニウム化合物に加えて、熱膨張係数の低下を阻害しない程度に、コーディエライト、チタン酸アルミニウム、ジルコン、ムライト、β−スポジュメン、アルミナ、セルシアン、ウィレマイト、シリカ(α−クォーツ、クリストバライト、トリジマイト)等のセラミックフィラーや石英ガラスフィラーを含有させることができる。
無機フィラーの粒度分布は1μm以下の微紛が少ないことが熱膨張係数の安定性の点から好ましく、44μm以上の粗粒も少ないことが封着用組成物の均質性の面から好ましい。
なお実施例において使用した原料は、Bi2O3、H3BO3、ZnO、Al(OH)3、Ba(NO3)2、SiO2である。
(1)ガラス粉末の平均粒径
レーザー散乱式粒度分布計を用いて、体積分布モードのD50の値を求めた。
(2)ガラス粉末のガラス転移点Tg
示差熱分析測定装置(DTA)を用いて、室温から20℃/minで昇温した時に得られるDTA曲線の最初の吸熱開始の温度(外挿点)から求めた。
(3)封着性(フロー性)
封着用組成物の粉末10gを直径20mmの円筒形にし、ソーダライムガラスの上に載せて、表1、2に示す封着温度で焼成し、得られた焼結体の外形の最大値を測定して得た。このフロー径(外形の最大値)が22mm未満の場合、封着材料として使用できない。
(4)熱膨張係数
(3)で得られた焼成体を約3mm×約3mm×約10mmに切り出し、熱機械分析測定装置(TMA)を用い、石英ガラスを標準試料として室温から10℃/minで昇温したときに得られるTMA曲線より、50〜250℃での熱膨張係数を求めた。
(ガラス粉末の作製)
表1、2に示す化学組成となるように原料を調合、混合して、この調合原料を白金るつぼに入れて1000℃で1時間溶融後、急冷してガラスを作製した。得られたガラスをボールミルに入れて乾式粉砕した後、目開き106μmのふるいを通過させ、ガラス粉末を得た。得られたガラス粉末の平均粒径は3〜6μmであった。ガラス粉末のガラス転移点Tgを表1、2に示す。
(封着用組成物の作製)
ガラス粉末と無機フィラー(共立マテリアル株式会社製、リン酸タングステン酸ジルコニウム(ZWP)、リン酸ジルコニウム(ZP))を表1、2に示す配合比で混合し、封着用組成物を作製した。得られた封着用組成物の封着性(フロー性)、熱膨張係数を測定した。結果を表1、2に示す。なおフロー性の測定において、フロー径が22mm未満の場合は封着材料として使用できないため、熱膨張係数の測定は実施していない。
実施例1と比較例1とは、無機フィラーの配合量を変えたものである。無機フィラーとしてのZWPの配合量が21重量%のものは、フロー径が17.5mmとなって封着性に問題が生じる。
実施例3と比較例2とは、使用フィラーする無機フィラーを変えたものである。無機フィラーがZWPからβSPJに変ることで、熱膨張係数が大きくなる。
比較例1は無機フィラーとしてのリン酸タングステン酸ジルコニウムの量が20重量%を超えており、フロー性が悪く、520℃以下での実際の封着が困難となる。
比較例2は、無機フィラーとしてβ−スポジュメン(βSPJ)を使用しており、低温での封着はできるものの、熱膨張係数が大きい点において劣っている。
比較例3〜5は、ガラスの組成が何れかにおいて範囲を超えており、焼成時にガラスが結晶化しやすいためにフロ−性が悪く、低温での封着が困難となる。
特にリン酸タングステン酸ジルコニウム(ZWP)をフィラーとして本発明に用いられるBi2O3−B2O3−ZnO−Al2O3系ガラスに配合してなる封着用組成物における、両材料の個々の熱膨張係数と配合比とから演算できる理論熱膨張係数と、実際に測定した熱膨張係数とを次に示す。
(1)実施例1に示す封着用組成物(ガラス粉末82重量%、ZWP18重量%)
理論計算熱膨張係数:60×10−7(1/K)
実測熱膨張係数 :40×10−7(1/K)
(2)実施例3のガラス粉末90重量%にZWP10重量%を配合した封着用組成物
理論計算熱膨張係数:78×10−7(1/K)
実測熱膨張係数 :64×10−7(1/K)
(3)実施例3のガラス粉末90重量%にZP10重量%を配合した封着用組成物
理論計算熱膨張係数:82×10−7(1/K)
実測熱膨張係数 :79×10−7(1/K)
(4)実施例3のガラス粉末90重量%にβSPJ10重量%を配合した封着用組成物
理論計算熱膨張係数:91×10−7(1/K)
実測熱膨張係数 :90×10−7(1/K)
(5)実施例3のガラス粉末90重量%にAl2O310重量%を配合した封着用組成物
理論計算熱膨張係数:95×10−7(1/K)
実測熱膨張係数 :96×10−7(1/K)
またリン酸ジルコニウム(ZP)がフィラーとして配合される場合にも、封着用組成物の熱膨張係数が理論計算熱膨張係数よりも低く(小さく)なる傾向があるようである。
またフィラーとしてβSPJ、Al2O3が配合される場合には、封着用組成物の熱膨張係数に改善の傾向はほとんど見られないことがわかる。
Claims (2)
- 実質的にPbを含有せず、且つガラス粉末と無機フィラーとからなり、
前記ガラス粉末は、酸化物換算で、
Bi2O3 :70〜85重量%
B2O3 :4.5〜10重量%
ZnO :8.0〜20重量%
Al2O3 :0.1〜1重量%
含有する組成とし、
前記無機フィラーは、リン酸タングステン酸ジルコニウムで構成し、
且つ無機フィラーであるリン酸タングステン酸ジルコニウムの含有量を、前記組成のガラス粉末と無機フィラーとからなる封着用組成物全量に対して2〜20重量%の含有量に限定したことを特徴とする封着用組成物。 - ガラス粉末は、酸化物換算で、
Bi2O3 :80〜83重量%
B2O3 :4.5〜8重量%
ZnO :8.0〜12重量%
Al2O3 :0.1〜0.5重量%
含有する組成とし、
且つ無機フィラーであるリン酸タングステン酸ジルコニウムの含有量を、前記組成のガラス粉末と無機フィラーとからなる封着用組成物全量に対して5〜20重量%の含有量に限定したことを特徴とする請求項1に記載の封着用組成物。
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