JP4491699B2 - 不飽和ポリエステル樹脂組成物及びパテ塗料 - Google Patents

不飽和ポリエステル樹脂組成物及びパテ塗料 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車及び車両補修用パテのバインダーとして好適な不飽和ポリエステル樹脂組成物及びこれを用いたパテ塗料に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的に不飽和ポリエステル樹脂は、他の樹脂に比べ比較的安価であり、また常温でも短時間で硬化するため作業性にすぐれ、さらに主原料の選択によって種々のすぐれた物理的及び化学的特性を有するため、例えば波板、浴槽、浄化槽等の建設資材、タンク、パイプ等の工業機材、船舶、自動車等の輸送機器、電気絶縁素材、レジンコンクリート、化粧板、ゲルコート、パテ塗料など各種用途に広く使用されている。
【0003】
自動車及び車両補修用パテ塗料は、(1)常温で速やかに硬化すること、(2)研磨性にすぐれていること、(3)基材との付着性にすぐれていること等の性能が要求される。
特に前記(2)の研磨性は補修の作業性に重要な要素となり、空乾性を不飽和ポリエステルに付与することによりその目的が達成される。
一般的に空乾性付与素材としてアリル化合物またはヨウ素価80以上の動植物油等を不飽和ポリエステルに導入することによってその目的は達成されるが、これらの素材はいずれも高価であると同時に付着性を低下させる傾向にあり、パテ塗料のバインダーとして使用した際、基材との剥離が生じる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
請求項1記載の発明は、安価でしかも乾燥性、研磨性及び付着性にすぐれた自動車及び車両補修パテ塗料のバインダーとして好適に用いることができる不飽和ポリエステル樹脂組成物を提供するものである。
請求項2記載の発明は、安価でしかも乾燥性、研磨性及び付着性にすぐれた自動車及び車両補修に好適なパテ塗料を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(A)(a)飽和多塩基酸とα,β−不飽和多塩基酸とからなり、その使用割合が0〜90:100〜10モル%(飽和多塩基酸:α,β−不飽和多塩基酸)である多塩基酸成分と、(b)全多価アルコール成分中50〜100モル%がエーテル結合を有するジエチレングリコールとを、多塩基酸成分(a)の総モル数に対して多価アルコール成分(b)の総モル数の割合を1.0〜2.0の範囲として反応させて得られる不飽和ポリエステル、(B)p−ジメチルアミノベンズアルデヒド(C)液状の重合性不飽和化合物、及び硬化剤、硬化促進剤、充填剤を含有してなり、(B)p−ジメチルアミノベンズアルデヒドが、(A)不飽和ポリエステル100重量部に対し0.05〜10.0重量部の割合で使用され、(A)+(B)の総量が30〜80重量部、(C)液状の重合性不飽和化合物が20〜70重量部〔(A)+(B)+(C)は、100重量部となるようにする〕としてなるパテ塗料用不飽和ポリエステル樹脂組成物に関する。
【0006】
また、本発明は、前記のパテ塗料用不飽和ポリエステル樹脂組成物をバインダーとして含有してなるパテ塗料に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる多塩基酸成分(a)は、飽和多塩基酸とα,β−不飽和多塩基酸とからなり、その使用割合は、飽和多塩基酸:α,β−不飽和多塩基酸=0〜90:100〜10モル%とされ、好ましくは0〜60:100〜40モル%である。
α,β−不飽和多塩基酸の使用割合が上記範囲以外であると常温での硬化が遅くなり、また、パテ塗膜の乾燥性及び研磨性が低下する。
【0008】
前記飽和多塩基酸としては、例えば、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘット酸、アジピン酸、セバシン酸等が用いられ、α,β−不飽和多塩基酸としては、例えば、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等が用いられる。前記飽和多塩基酸、α,β−不飽和多塩基酸は、それぞれ2種以上を併用してもよい。
【0009】
本発明に用いられる多価アルコール成分は、全多価アルコール成分に対して、15〜100モル%、好ましくは50〜100モル%が、エーテル結合を有するジエチレングリコールを含むものであり、15モル%未満の場合は、乾燥性、研磨性が劣るので50モル%以上とする。エーテル結合を有する多価アルコール成分の1種または2種以上及びエーテル結合を有しない多価アルコール成分の1種または2種以上を併用してもよい。
【0010】
不飽和ポリエステル(A)は、前記(a)成分の総モル数に対して前記(b)成分の総モル数の割合を1.0〜2.0の範囲として使用し、縮合反応により得られる。(b)成分の総モル数が、1.0未満では、酸価が高くなりパテ塗膜の耐水性、耐アルカリ性が低下する。また(b)成分の総モル数が2.0を超えると分子量が低くなり、常温での硬化性が低下すると同時にパテ塗膜が軟らかくなるため、研磨作業時にキズがつきやすくなる。
【0011】
本発明に用いられる不飽和ポリエステル(A)は、常法により得ることができる。例えば、前記多塩基酸成分と前記多価アルコール成分を窒素雰囲気で100〜230℃で縮合反応させて得られる。
【0012】
不飽和ポリエステル(A)の数平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定し、標準ポリスチレン換算した値、以下も同じ)は、パテ塗料の作業性、塗膜の乾燥性及び耐水性等から、500〜10000であることが好ましく、800〜5000であることがより好ましい。また、酸価は100以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましい。
本発明においては、動植物油、アリル化合物等の空乾性付与材を使用してもよい。
【0013】
本発明に用いられるp−ジメチルアミノベンズアルデヒドは、前記不飽和ポリエステル(A)100重量部に対して0.05〜10.0重量部、好ましくは0.1〜5重量部添加する。
0.05重量部未満では、パテ塗膜の乾燥性及び研磨性が劣り、パテ作業性が著しく低下する。また、10重量部を超えての使用は、特に乾燥性、研磨性等に顕著な効果がみられなく、また、高価である。
【0014】
本発明の樹脂組成物は不飽和ポリエステル(A)とp−ジメチルアミノベンズアルデヒド(B)との総量30〜80重量部に、液状の重合性不飽和化合物(C)20〜70重量部を含有する〔(A)+(B)+(C)は、100重量部となるようにする〕。
液状の重合性不飽和化合物(C)の配合割合が、20重量部未満では反応性に劣り、高硬度の塗膜が得られず、パテ塗膜の研磨作業時にキズがつきやすくなる。また、70重量部を超えるとパテ塗膜の肉持性が悪くなり、硬化性及び付着性が低下する。
【0015】
本発明に用いられる液状の重合性不飽和化合物(C)としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル化合物、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、グリシジルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアクリル酸またはメタクリル酸系化合物などが挙げられる。これらは1種または2種以上併用してもよい。
【0016】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物をパテ塗料として使用する際には、必要に応じて充填剤、着色顔料、硬化促進剤等を3本ロール、デゾルバー等で混練して配合される。
【0017】
充填剤としては、例えば、タルク、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、クレー等が挙げられる。充填剤は、通常、パテ塗料中30〜80重量%使用される。着色顔料としては、例えばチタン白、ベンガラ、アニリンブラック、カーボンブラック、シニアンブルー、マンガンブルー、鉄黒、クロムエロー、クロムグリーン、マピコエロー等が挙げられる。着色顔料は、通常、パテ塗料中に1〜10重量%使用される。
【0018】
硬化促進剤としては、例えば、ナフテン酸コバルト、オクテン酸コバルト、オクテン酸マンガン等の金属石けん類、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン等のアミン類等が挙げられる。硬化促進剤の使用量は、通常、パテ塗料中に0.1〜10重量%使用される。
【0019】
また、前記塗料中の塗装時(パテ付け)には硬化剤が混合分散される。硬化剤は通常、パテ塗料中1〜4重量%使用される。硬化剤としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等が用いられる。
【0020】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明する。なお、下記例中の部及び%はそれぞれ重量部及び重量%を意味する。
【0021】
実施例1
攪拌機、ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた2リットルの四つ口フラスコにジエチレングリコール 968.0部(9.13モル)、テトラヒドロ無水フタル酸 504.0部(3.32モル)、無水マレイン酸 524.0部(5.35モル)及びハイドロキノン 0.2部を入れ、窒素ガスを吹き込みながら150℃で1時間加熱後、150℃から200℃まで4時間で昇温し、同温度で経時ごとにサンプリングを行い、スチレンで加熱残分67%に希釈した際の粘度(ガードナ、25℃、以下同じ)及び酸価を測定し、200℃昇温後16時間で粘度8.8秒、酸価22.0を示した時点を終点とした。反応終了後、ハイドロキノン0.1部を添加したスチレンに溶解し、加熱残分が66%になるように調整した。
【0022】
この組成物の粘度は7.9秒、酸価21.3であり、不飽和ポリエステルの数平均分子量は1,780であった。
次いで、上記組成物を一部採取し、上記組成物100部に対してp−ジメチルアミノベンズアルデヒドを1.0部添加した後、60℃のウォーターバス中で一時間保温して均一に溶解した。
【0023】
実施例2
p−ジメチルアミノベンズアルデヒドを1.0部添加するのに変えて、5.0部添加することとした以外は、実施例1と同様にした。
【0024】
実施例3
実施例1と同じ装置を用いてジエチレングリコール 722.7部(6.82モル)、プロピレングリコール 207.3部(2.73モル)、テトラヒドロ無水フタル酸 525.5部(3.46モル)、無水マレイン酸 552.7部(5.64モル)及びハイドロキノン 0.2部を入れ、窒素ガスを吹き込みながら150℃で1時間加熱後、150℃から200℃まで4時間で昇温し、同温度で経時ごとにサンプリングを行い、スチレンで加熱残分67%に希釈した際の粘度及び酸価を測定し、200℃昇温後16時間で粘度8.9秒、酸価20.8を示した時点を終点とした。反応終了後、ハイドロキノン0.1部を添加したスチレンに溶解し、加熱残分が66%になるように調整した。
【0025】
この組成物の粘度は8.2秒、酸価19.9であり、不飽和ポリエステルの数平均分子量は1,810であった。
次いで、上記組成物を一部採取し、上記組成物100部に対してp−ジメチルアミノベンズアルデヒドを5.0部添加した後、60℃のウォーターバス中で一時間保温して均一に溶解した。
【0026】
比較例1
実施例1で合成した組成物を一部採取した(p−ジメチルアミノベンズアルデヒドを添加しなかった)。
【0027】
比較例2
実施例1と同じ装置を用いてプロピレングリコール 798.0部(10.50モル)、テトラヒドロ無水フタル酸 578.0部(3.80モル)、無水マレイン酸 608.0部(5.74モル)及びハイドロキノン 0.2部を入れ、窒素ガスを吹き込みながら150℃で1時間加熱後、150℃から200℃まで4時間で昇温し、同温度で経時ごとにサンプリングを行い、スチレンで加熱残分67%に希釈した際の粘度及び酸価を測定し、200℃昇温後16時間で粘度8.9秒、酸価21.0を示した時点を終点とした。反応終了後、ハイドロキノン0.1部を添加したスチレンに溶解し、加熱残分が66%になるように調整した。
【0028】
この組成物の粘度は8.1秒、酸価20.6であり、不飽和ポリエステルの数平均分子量は1,800であった。次いで、上記組成物を一部採取し、上記組成物100部に対してp−ジメチルアミノベンズアルデヒドを1.0部添加した後、60℃のウォーターバス中で一時間保温して均一に溶解した。
【0029】
比較例3
p−ジメチルアミノベンズアルデヒドを1.0部添加するのに変えて、5.0部添加することとした以外は、比較例2と同様にした。
【0030】
<試験例>
実施例1〜3及び比較例1〜3で得られた不飽和ポリエステル樹脂組成物の塗膜特性を次のようにして試験した。
【0031】
(1)パテ塗料配合
下記表1のようにして配合した材料をそれぞれ300mlの丸缶に採取し、高速デゾルバーで15分間攪拌して均一に分散させた。
【0032】
【表1】
Figure 0004491699
【0033】
(2)試験板の調整
試験板として鉄板(日本テストパネル(株)製、SPCC−SB)を用い、表面を耐水ペーパー#150で軽く研磨した。
(3)試験片の作製
(1)で作製したそれぞれの塗料に55%メチルエチルケトンパーオキサイドを2%添加し、これを(2)で調整した各試験板上に2mm厚にパテ付けした。
【0034】
(4)塗膜性能の測定
実施例1〜3及び比較例1〜3の樹脂組成物を用いて得たパテ塗料について下記に示す塗膜性能を試験し、その結果を表2に示した。
(ア)乾燥性:鉄板上へパテ付け後、常温(20℃)で経時ごとに表面を耐水ペーパー#150を用いて指で軽く研磨し、研磨可能となる時間(分)を測定した。
(イ)研磨性:鉄板上へパテ付け後、常温(20℃)で4時間放置後、耐水ペーパー#150を用いて指で研磨し、研磨のし易さを比較し、次のようにして評価した。
○:軽く研磨しても、よくパテ塗膜が削れる。
△:パテ塗膜が削れるが、研磨がやや重く感じる。
×:研磨が重く、パテ塗膜がよく削れない。
(ウ)付着性:各試験板上へパテ付け後、常温(20℃)で16時間放置し、その後120℃の乾燥機内で60分焼き付け後、常温まで冷却し、中央部より90°角に折り曲げた際の折り曲げ部のパテ付着性を調べ、次のようにして評価した。
○:パテが付着している。
△:50%パテが付着している。
×:パテの付着が見られない。
【0035】
【表2】
Figure 0004491699
【0036】
表2の結果から、本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物を用いたパテ塗膜は、乾燥性、研磨性、付着性にすぐれていることが示される。
【0037】
【発明の効果】
請求項1記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物は、安価でしかも乾燥性、研磨性及び付着性にすぐれた自動車及び車両補修パテ塗料のバインダーとして好適に用いることができるものである。
請求項2記載のパテ塗料は、安価でしかも乾燥性、研磨性及び付着性にすぐれた自動車及び車両補修に好適なものである。

Claims (2)

  1. (A)(a)飽和多塩基酸とα,β−不飽和多塩基酸とからなり、その使用割合が0〜90:100〜10モル%(飽和多塩基酸:α,β−不飽和多塩基酸)である多塩基酸成分と、(b)全多価アルコール成分中50〜100モル%がエーテル結合を有するジエチレングリコールとを、多塩基酸成分(a)の総モル数に対して多価アルコール成分(b)の総モル数の割合を1.0〜2.0の範囲として反応させて得られる不飽和ポリエステル、(B)p−ジメチルアミノベンズアルデヒド(C)液状の重合性不飽和化合物、及び硬化剤、硬化促進剤、充填剤を含有してなり、(B)p−ジメチルアミノベンズアルデヒドが、(A)不飽和ポリエステル100重量部に対し0.05〜10.0重量部の割合で使用され、(A)+(B)の総量が30〜80重量部、(C)液状の重合性不飽和化合物が20〜70重量部〔(A)+(B)+(C)は、100重量部となるようにする〕としてなるパテ塗料用不飽和ポリエステル樹脂組成物。
  2. 請求項1記載のパテ塗料用不飽和ポリエステル樹脂組成物をバインダーとして含有してなるパテ塗料。
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