JP4487010B2 - 有機発光デバイスの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明の分野は、改良された電極を有する有機発光デバイス及びその付着に関するものである。
ケンブリッジ・ディスプレイ・テクノロジー・リミテッド社(Cambridge Display Technology Limited) が特許権の譲受人となっている特許文献1又はVan Slyke et al.の特許文献2に開示されるような有機発光デバイス(OLED)は、その内容を参考のため例としてここに引用するが、モノクローム又はマルチカラーのいずれかのディスプレイとして種々のディスプレイ用途での使用において大きな潜在的可能性を有している。原則的に、OLEDは、正電荷キャリアを放出するアノード(陽極)と、負電荷キャリアを放出するカソード(陰極)と、これら両電極間に挟まれた少なくとも1つの有機エレクトロルミネセンス層とで構成される。必ずしも必要ではないが、典型的には、アノードは、例えばインジウム−錫−酸化物(ITO)、すなわち、市販で容易に入手可能なガラスもしくはプラスチック基板上に既に付着された半透明な導電性酸化物の薄膜である。次いで、一般に、有機層は、例えば、蒸発(evaporation)/昇華もしくはスピンコーティング、ブレード被覆、浸漬被覆又はメニスカス(meniscus) 被覆によりITO被覆基板に付着(deposit)される。カソード層を上部有機層に付着させる最終工程は、適するカソード金属の真空下における熱蒸発もしくはスパッタリングにより通常行われる。カソード材料としてはAl、Ca又はMg:AgもしくはMg:Inの合金、又はAl合金の層がしばしば使用される。
OLED技術の重要な利点の1つは、正電荷及び負電荷キャリアの放出につき効率の優れた適するエレクトロルミネセンス有機層及び電極が使用される場合、デバイスを低電圧駆動で動作することが可能なことである。OLEDにおいて優れた性能を得るには、個々の全ての層(すなわち、アノード層、カソード層及び有機層)並びに各層間の界面を最適化することが極めて重要である。
電力効率、低電圧駆動、保存寿命、運転寿命、並びに高温及び/又は高湿などの過酷な環境条件下における安定性のような基準に基いて判断すると、高品質のカソードは、OLEDにおいて全体的に優れた性能を得るために極めて重要である。カソードの品質に関する基準は限定されるものではないが、特に、仕事関数、耐腐食性、形態及びバリヤ特性、ポリマーに対する接着性、並びにシート耐性である。
OLEDの金属カソード層は、最も一般的には、真空下でのカソード材料の単純な熱蒸発により付着される。同様に、金属合金により構成されるカソード層も合金成分を含有する2種以上の供給源からの熱蒸発により、且つ、適する相対的な付着速度を選択して所望の相対的な合金組成を得ることにより付着させることができる。
米国特許第5,247,190号 米国特許第4,539,507号
しかしながら、OLED上に金属を単純に熱蒸発してカソード層を形成することにより、カソードと上部有機層との間に接着不良が起こることがあり、極めてしばしば、蒸発された層の形態は、大きい平均粒子寸法を有する多結晶質となり、酸素及び水分のような雰囲気ガスがデバイス中へ拡散するための高密度の粒子境界が生ずるようになる。接着不良及び大きい粒子寸法の多結晶質形態は、OLEDの性能、特に環境安定性(デバイス保存寿命及び運転寿命、カソードの腐食)を著しく劣化させうる。
同様の問題(接着性、形態)が、OLEDをカソードから構築する場合、すなわち、カソードを基板上に付着させた後に有機層の付着を行い且つ最終工程として上部有機層の頂部にアノードを付着させる場合にも生ずる。
元素金属の異なる供給源からの単純な熱蒸発又は合金の形態でカソードを得るための既製合金の蒸発には問題が存在する。例えば、アルカリもしくはアルカリ土類金属のような低い仕事関数の反応性元素からなるカソード合金層が必要とされる場合、空気中の通常の環境におけるこれらの元素の処理及び/又は取扱いは不可能ではないにせよ困難である。或いは、合金自身を蒸発させる場合は、付着物(カソード)の合金組成は、例えば、異なる熱特性や供給源−合金成分の異なる蒸発速度のために制御困難となりうる。
従って、本発明の目的は、上記諸問題を解決し或いは少なくとも最小化させる有機エレクトロルミネセンスデバイスを加工するための構造及び加工方法を提供することにある。
本発明の第1の側面によると、第1の電極と第2の電極との間に配置された少なくとも1つの発光性有機材料層からなり、電極の少なくとも1つは多層構造であり、多層構造の各層はDCマグネトロンによってスパッタされた層であることを特徴とする有機発光デバイスが提供される。
さらに、本発明のこの第1の側面は、
基板上に電極を形成する工程と、
前記電極上に少なくとも1つの発光性有機材料層を形成する工程と、
多層構造の各層がDCマグネトロンによってスパッタされた層である多層電極構造を少なくとも1つの有機材料層の上に形成する工程と
からなることを特徴とする有機発光デバイスの加工方法を提供することにある。
またさらに、この本発明の第1の側面は、
多層構造の各層がDCマグネトロンによりスパッタされた層である多層電極構造を基板上に形成する工程と、
前記多層電極上に少なくとも1つの発光性有機材料層を形成する工程と、
少なくとも1つの有機材料層の上に電極を形成する工程と
からなる有機発光デバイスの加工方法を提供することにある。
本発明の第2の側面によれば、
第1の電極と、
前記第1の電極の上に形成された2つ以上の発光性有機材料層と、
有機材料の最上層の上に形成された第2の電極とからなり、
有機材料の最上層は、有機材料の下側層よりもスパッタ付着に対し耐性を有し、
第2の電極は、少なくとも1つの層からなり、有機材料の最上層に隣接する層は、スパッタされた層であることを特徴とする有機発光デバイスを提供することにある。
さらに、本発明の第2の側面は、有機材料の最上層がスパッタ付着に対し実質的に耐性を有する有機発光デバイスを提供する。
従って、本発明の第1の側面及び第2の側面は、低い平均粒子寸法を有する小形の形態の金属製カソードを有し、スパッタ付着により付着された前記カソードとOLED積層体との隣接層の良好な接着性を有する有機エレクトロルミネセンスデバイスを提供することにある。カソードと隣接層との間の良好な接着性により、剥離、及び、例えば、酸素、水分、溶剤もしくは他の低分子量化合物の前記界面における侵入が最小化される。さらに、カソード金属層の小形の形態により、例えば、酸素、水分、溶剤もしくは他の低分子量化合物のような周囲の物質のカソード層自身を介したOLED中への拡散も最小化される。前記カソードは、前記カソードと正電荷キャリアを放出するアノードとの間に少なくとも1つのエレクトロルミネセンス有機層を有するOLEDのための電子放出電極を形成する。有機エレクトロルミネセンス層は、必ずしも限定されないが好ましくは共役ポリマーである。
本発明の第1の側面において、スパッタ付着の方法は、DCマグネトロンスパッタリングである。本発明の第2の側面において、発光性有機材料は、2つ以上の層からなり、その最上層は、有機材料の下側層よりもスパッタ付着に対しより優れたスパッタ耐性を有する。
本発明によれば、OLEDの性能、特に環境安定性が確保される。
図1はOLEDを示し、図2は本発明の第1の実施の形態に係るOLEDを示し、図3は本発明の第2の実施の形態に係るOLEDを示し、図4は他のOLEDを示し、図5は改良されたアノードを有するOLEDを示す。
図示した例において、OLEDは、透明な支持基板に付着された半透明のアノードにより形成される。基板は、例えば、30μm〜5mm、好ましくは≦1.1mmの厚さを有するガラスのシート、或いは、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルイミドなどのプラスチックのシートである。半透明のアノードは、必ずしも限定されないが、好ましくは、インジウム−錫−酸化物、ドープされた酸化錫もしくは酸化亜鉛のような導電性酸化物の薄い層である。アノード/基板の頂部に付着される有機層は、必ずしも限定されないが、好ましくは、特許文献1(米国特許第5,247,190号)に開示されたような、典型的には、厚さ100nm程度の1つ以上のエレクトロルミネセンス共役ポリマー層である。代替的に、有機層は、特許文献2(米国特許第4,539,507号)に開示されたような低分子量化合物、又は、実際には、共役ポリマーと低分子量化合物との組合せとすることもできる。上部有機層の頂部にスパッタリングにより付着されるカソードは隣接有機層中へ電子を放出しうる金属であり、必ずしも限定されないが、典型的には、厚さ100〜500nm程度である。この種の金属の例は、限定するものではないが、Al、Mg、In、Pb、Sm、Tb、YbもしくはZrである。この種のスパッタ付着された金属層の接着性及び小形の形態は、熱蒸発により付着されたものと比較してはるかに優れている。すなわち、デバイスの安定性及びカソードの腐食耐性は、特に、カソード付着後の加工過程又はデバイスの操作に際し、雰囲気中に酸素、水分、溶剤もしくは他の低分子量化合物が存在する場合には顕著に向上する。
代替的には、スパッタリングにより付着される前記カソードは、合金スパッタリングターゲットからスパッタされる合金である。この種の合金は、限定するものではないが、Al、Zr、Mg、Si、Sb、Sn、Zn、Mn、Ti、Cu、Co、W、Pb、InもしくはAgの合金又はその組合せであって、例えば、Li、Ba、Ca、Ce、Cs、Eu、Rb、K、Sm、Na、Sm、Sr、TbもしくはYbのような低い仕事関数を有する元素を含有する。典型的なこの種の合金は、例えば、市販で入手可能なAl 95%/Li 2.5%/Cu 1.5%/Mg 1%の合金である。前記の低い仕事関数を有する元素は、純粋な元素の形態においては、通常、酸化及び水分による腐食の影響を受けやすく、通常の実験室環境においては、取扱いが不可能ではないにせよ問題となりやすい。しかしながら、前記列挙したようなより安定した金属のマトリックスにおいては、これらの低い仕事関数を有する元素は、マトリックス元素中に充分に低い濃度で、充分安定することができ、スパッタターゲット加工、ターゲットの取扱い、さらにOLEDに対するターゲット合金のスパッタ付着を通常の実験室もしくは製造環境において標準的スパッタ設備で行うことを可能にし、スパッタ付着後のOLEDにおけるカソードの安定性も付与する。この例において、低い仕事関数を有する元素は、電子放出及びデバイス効率を向上させるよう作用し、マトリックス元素は環境的な安定性を付与し、スパッタ付着過程は、接着性を向上させると共に小形の形態を可能にし、さらにターゲット組成及びスパッタ条件の選択により付着されるカソード合金の組成を制御することができる。DCマグネトロンスパッタ付着により特に達成される合金の形態は、付着後のカソード合金において、例えば、分離作用及び拡散効果を最小化させるよう作用しうる。このように、OLEDは、有機層への効率的な電子放出を付与する低い仕事関数を有するカソードを備えた雰囲気の条件下に製造することができる。
そこで、図1を参照すると、第1のOLEDは、厚さ約1000Åのポリ(p−フェニレンビニレン)(PPV)の層3を、特許文献1(米国特許第5,247,190号)に開示されたような可視範囲において少なくとも80%の透明性と100オーム/スクエア(square) 未満のシート抵抗とを有する半透明のインジウム−錫−酸化物(ITO)の層2でプレコートされた基板1に付着させることにより実現される。厚さ約150nmの層4からなるカソードを、次の条件下でDCマグネトロンスパッタリングによりPPV層3の頂部に付着させる。
Al 95%/Li 2.5%/Cu 1.5%/Mg 1%(ターゲット)、約3.2W/cm2(直径100mmのターゲット及び250W)に一定した出力モードでのスパッタリング、25sccmアルゴン流における約5×10-3ミリバールの圧力(約1×10-6ミリバールのベース圧力)、ターゲット電圧400〜410V、ターゲット−基板の間隔75mm、及び約1nm/secの付着速度。
このように作成されたOLEDは低い駆動電圧及び操作電圧(<5V)を有し、純Ca及びスパッタターゲットの形態のカソード材料を用いたカソードを有する同様のデバイスよりも優れた効率性を有し、OLED上に付着された薄膜として環境的な安定性を有し、通常の実験室環境での取扱いが可能である。
他の例において、スパッタリングにより付着されたOLEDは、上部有機層に隣接するカソードの第1層が、カソードに関し上記に説明されたような低い仕事関数を有する元素もしくは低い仕事関数を有する元素を含有する合金の薄い層であり、前記第1の低い仕事関数を有する元素を有する薄い層が安定した導電層の第2の厚い層でキャップされた二重層の構造である。例えば、薄い第1のカソード層は、Liを含有する合金とすることができ、典型的には、厚さ≦20nmであるが、好ましくは、厚さ≦5nmである。例えば、第2の厚いカソード層は、Al、Al−Cu、Al−Siもしくは他の合金とすることができ、好ましくは、少なくとも100nmの厚さを有し、薄い第1カソード層を保護するよう作用し、デバイスに対し環境的な安定性を付与し、カソードの低いシート抵抗を付与する。合金は、極めてしばしば表面分離作用を示し、これにより例えば合金元素の1種が界面/表面に選択的に濃縮される。二重カソード層構造において、低い仕事関数を有する元素は、少ない割合だけ含有され、さらに薄い第1カソード層においてのみ存在する。これにより、例えば、隣接する有機層との界面における低い仕事関数を有する元素の濃縮の問題を最小限にする。この低い仕事関数を有する元素の濃縮は、反応の増加や、低い仕事関数を有する元素の有機層への拡散を招き、その結果、後続する有機層の許容レベルを超えたドーピングをもたらし、もしくは、デバイス効率の低下を引き起こしうる。前記薄い第1カソード層は容易に入手可能であり、その厚さは、例えば、スパッタ帯域にわたる試料の通過速度を付着速度と共に制御することにより調節可能である。
好ましくは、この種の2つの層の薄い/厚いカソードにおいて、導電性材料の第1層と導電性材料の第2層との厚さの比は少なくとも20:1である。
他の例において、上記の2つの層の薄い/厚いカソード構造を参照すると、前記第2の厚い導電性カソード層は、代替的に、例えばインジウム−錫−酸化物(ITO)のような半透明の導電性酸化物とすることもできる。
他の例において、2つの層の薄い/厚いカソード構造を参照すると、カソードの第2の厚い層のみがスパッタリングにより付着され、第1の薄い層は、熱蒸発のような他の手段により付着される。これは、例えば上部有機層が(半透明の導電性酸化物の反応性スパッタ付着で使用されるような反応性スパッタリングを用いた、或いは用いない)スパッタ処理による損傷の影響を受けやすい場合に有用である。この実施の形態において、第1層は、まだカソードと隣接有機層との電子界面を形成するが、第2の厚いDCマグネトロンによってスパッタされた層は、形態上小形な、保護性且つ導電性を有する薄膜を形成する。
他の例において、OLEDの上層として付着されたスパッタによるカソードも、その良好な接着性と小形の形態と良好なバリア特性とに基づき、反応性ガス及び液体のようなその後の処理工程に際し存在しうる望まれない物質のデバイス中への侵入及び/又はデバイスの保存寿命及び操作寿命に対する保護を付与するデバイスのカプセル層として作用する。
他の例によれば、化学量論的もしくは化学量論以下の誘電体のスパッタされた極薄膜が、カソード下に導入されることにより向上した電荷キャリアバランス及びデバイス効率が達成される。前記誘電体薄膜は厚さ≦5nmである。OLEDは、負電荷キャリアと比較して、正電荷キャリアに対して一層良好な放出及び輸送をしばしば示す。厚さ≦5nmの誘電体の薄膜は、孔部(正電荷キャリア)よりも電子に対し実質的に高い伝達速度を有しうることが判明した。これは、化学量論的及び化学量論以下の金属酸化物の場合に特に顕著である。従って、カソードと頂部有機層との間の薄いこの種の誘電体層は、デバイス効率を向上させることが可能である。
従って、この例によれば、OLEDは、(ITO被覆ガラスのような)支持基板上のアノードと、本発明の第1の側面及び/又は第2の側面に係る金属カソードで被覆される薄い(≦5nm)誘電体層で覆われた少なくとも1つの有機エレクトロルミネセンス層とで構成される。誘電体は、限定されるものではないが、好ましくは、化学量論的もしくは化学量論以下(酸素欠乏)の金属酸化物であって、本発明の第1の側面及び/又は第2の側面に係るOLEDの他の元素でのスパッタリングにより上部有機層に付着される。必ずしも限定されないが、典型的には、酸化物は、酸素及びAl、Mg、Zrもしくは他の元素金属ターゲットによる反応性DCマグネトロンスパッタリング、或いは実際には、Al:Mg、Al:Li、Al:Li:Cu:Mg又は他の合金スパッタリングターゲットから反応的にスパッタされた酸化物により形成される。
安定した低い仕事関数のカソードを有するOLEDを参照すると、効率性の向上は、厚さ約100nmのポリ(p−フェレンビニレン)の層3を、特許文献1(米国特許第5,247,190号)に開示されたような可視範囲において少なくとも80%の透明性と100オーム/スクエア(square) 未満のシート抵抗とを有する半透明のインジウム−錫−酸化物の層2でプレコートされた基板1に付着させることにより実現される。PPV層3は、厚さ約3nmのAl 95%/Li 2.5%/Cu 1.5%/Mg 1%の化学量論的酸化物の層5で被覆され、これは次の条件下での反応性DCマグネトロンスパッタリングにより実現される。
ターゲット−基板の間隔75mm、ベース圧力1×10-6ミリバール、310Vの一定電圧における出力供給モード、電流密度6.2mA/cm2 、圧力5×10-3ミリバール、25sccmアルゴン流、2sccm酸素流、付着時間7秒。厚さ約150nmの層4からなるカソードを、上記したようにDCマグネトロンスパッタリングにより薄い酸化物層5の上部に付着させる。カソードは、好ましくは、100〜500nmの厚さを有する導電層から構成される。このデバイスは、同じカソードを有するが薄い酸化物層を持たない同等のデバイスよりも向上した効率を示す。
上記のようなスパッタされたカソードを有するOLEDにおいて、カソードに隣接する有機層(上部有機層)が特に後続するスパッタ付着に適しており、下側有機層をスパッタリング過程から防止するが許容しえないレベルを超えて全体的デバイス性能を劣化させないような共役ポリマーであるOLEDにつき他の例で説明する。
この例に関し、電子放出の効率性、OLED駆動電圧又はデバイス製造の信頼性及び生産性、並びにスパッタ付着過程自体による上部有機層に対する損傷に基づいて判断すると、頂部有機層の性質は、後続するスパッタ付着の成功を大幅に左右しうることが判明した。金属及び合金のスパッタ付着は、形態上極めて小形且つ機械的に頑丈な、ポリ(p−フェニリンビニレン)(PPV)のような共役ポリマーに対し、ポリマー及び界面に大きな損傷を与えることがはっきりと見受けられることなく、容易に使用しうることも判明した。
このことは、ジアルコキシ側鎖を有するPPVの可溶性誘導体のような「軟質」可溶性ポリマーの場合にはそうではない。これらの軟質ポリマーの場合においては、スパッタ付着の過程は、上部ポリマー層及び界面の損傷を一層容易にもたらし、例えば、デバイス駆動電圧が増大し、デバイスがショートしやすくなる。
上記の例によれば、主たる活性層及びエレクトロルミネセンス層として「軟質」ポリマーを有するOLEDにおいて、前記層は、形態上極めて小形且つ機械的に頑丈な、限定するものではないが、PPVのような共役ポリマーの薄い上層で保護され、デバイスの損傷を最小に、或いは損傷なしに、且つ上記に概略説明したスパッタされたカソードの後続する利点を伴ったカソードの最終的スパッタ付着に対してデバイスをより適したものにする。頑丈な保護ポリマーの前記層は、典型的には厚さ数10nm程度であるが、好ましい厚さは5〜20nmの範囲である。例えば、PPVのジアルコキシ誘導体の頂部におけるPPVの光学的、電子的及び輸送上の特性に関しては、例えば、効率性もしくは発色のようなデバイス特性は、保護PPV層を持たないデバイスと比較して大きな変化はない。
図3に示された第2の特定の実施の形態を参照すると、OLEDは、キシレン溶液からスピン(spin) された、厚さ約100nmのポリ[2−メトキシ−5−(2’−エチル−ヘキシルオキシ)−p−フェニレンビニレン][MEH−PPV]の層6を、半透明のインジウム−錫−酸化物の層2でプレコートされた基板1上へ付着させることにより実現される。次いで、MEH−PPV層6をポリ(p−フェニレンビニレン)(変換後に約20nm)の薄い層3で被覆する。MEH−PPV層6の頂部へのPPV前駆体溶液のスピニングはMEH−PPV及びPPV前駆体に対する不混和性溶剤の使用により可能となり、PPV前駆体からPPVへの変換はMEH−PPVを明らかに阻害するものではない。厚さ約150nmの層4からなるカソードを、上記したようにDCマグネトロンスパッタリングにより薄いPPV層3の頂部に付着させる。この種のOLEDは、MEH−PPVの特徴である橙色/赤色発光を付与し、空気中で安定した低い仕事関数を有するスパッタ付着されたカソード合金によって低い駆動電圧(約5〜6V)を有する。カソードを同様にスパッタするがMEH−PPV層の頂部に直接スパッタする(すなわちPPV緩衝層を持たない)同等なデバイスは10Vを超える駆動電圧を有する傾向を示し、スパッタリング過程の際のMEH−PPV層の上表面の損傷によってショートしやすい。
他の例において、カソードは、既にOLEDの支持基板に付着されている。カソードを有する基板は、少なくとも1つの有機エレクトロルミネセンス層で被覆され、第2の電極及び頂部の電極は、スパッタリングにより付着されたアノードである。
この例の配置の1つにおいて、前記頂部スパッタカソード層は、限定するものではないが、C、Ag、Au、Co、Ni、Pd、Pt、Re、Seもしくはその合金又はドープされた半導性化合物、又はより一般的には、4.7eVより高い仕事関数を有する導電層のような高い仕事関数の金属の層である。代替的には、前記アノードは、限定されるものではないが、インジウム−錫−酸化物又はドープされたSn−酸化物もしくはZn−酸化物のような導電性を有するスパッタされた酸化物の層である。
この例の他の配置において、前記頂部アノードが反応性スパッタリングにより付着された導電性酸化物である場合を参照すると、頂部有機層は、先ず最初に高い仕事関数を有する元素、限定されるものではないが、又は、C、AuもしくはPtのような合金の薄い層によってスパッタ付着又は他の熱蒸発のような手段で、厚いスパッタ付着の導電性酸化物が施される前に被覆される。この場合、反応性スパッタ付着過程における頂部有機層に対する損傷は最小限となる。
アノードが少なくとも半透明であることを要する場合、頂部有機層と半透明の酸化物との間の薄い界面層は10nm未満、好ましくは厚さ5nm未満として透明性を保持する必要がある。
図4を参照すると、さらに他のOLEDが、厚さ約100nmのポリ(p−フェレンビニレン)の層3を、カソードとして作用するAlの層4で被覆された基板1の頂部に被覆することにより実現される。PPV前駆体ポリマーからPPVへの変換の後、PPVを熱蒸発されたAuの薄い(<5nm)層7で被覆し、次いでこれを厚さ150nmのインジウム−錫−酸化物の厚い層2で商業的に標準の反応性DCマグネトロンITO付着過程でキャップする。Auの薄い層7は、正電荷キャリアの効率的放出を確保するだけでなく、緩衝層をも付与して、反応性ITO付着過程の際に下側のPPV層3を保護する。
従って、本発明は、有機エレクトロルミネセンスデバイス構造及びその加工方法を提供し、第2(すなわち頂部)電極は、少なくとも部分的にスパッタリングにより実現される。このスパッタされた電極層は良好なバリア特性と接着特性とを有する小形且つ緻密な電極形態を保証し、スパッタ付着過程自体は、環境的な安定性と低い仕事関数のような所望の電子特性とを組み合わせた合金の使用を可能にする。
保護絶縁層は、頂部電極の付着と前記絶縁層との間の周囲の大気にOLEDを露出することなくスパッタされた頂部電極に対しスパッタすることができ、前記絶縁層は、例えば酸化物もしくは窒化物である。
電極の少なくとも1つが少なくとも部分的に金属元素もしくは合金又は導電性酸化物又は半導体のスパッタ付着により実現されるような有機エレクトロルミネセンスデバイスの加工方法についても開示する。
デバイス性能、及び、特に、デバイス寿命を制限するメカニズムの1つは、無機酸化物アノードに隣接する有機層及び前記アノードと隣接有機層との間の界面の劣化であって、これは、例えば、有機層を有する前記酸化物アノードから放出される酸素に起因することが判明した。この点に関し、例えばポリアニリンのような半導性ポリマーの薄い層を第1有機層として無機酸化物アノードの頂部に組み込めば、デバイス特性及び操作安定性を向上させることが判明した。しかしながら、無機酸化物アノードの頂部に対する第1有機層としての前記追加層の導入は、例えば、接着性の劣化、或る場合には望ましくない前記第1有機層と後続する層との混合、後続する層の湿潤及び被覆特性における劣化のような他の問題や、前記第1有機層の薄い層の付着の均一性に関する問題、又はデバイス操作における前記第1有機層の安定性に関する問題などが新たに生じるおそれがある。
図5は、無機酸化物の半透明アノードを第1有機層から分離する利点を有するが、正電荷キャリアの効果的放出を維持し、上記問題の幾つかを回避する有機発光デバイスのための構造を示す。
この構造は、デバイスのためのアノードとカソードとの間に配置された少なくとも1つの発光性有機材料層を備え、アノードは、無機酸化物の第1透光性層と、少なくとも1つの有機材料層と無機酸化物の第1層との間に配置された高い仕事関数を有する導電性材料の第2透光性層とからなり、導電性材料の第2層は、無機酸化物の第1層よりも実質的に薄い。
カソードを基板上に形成させ、アノードを少なくとも1つの有機材料層の上に形成させることができる。代替的には、アノードを基板上に形成させ、カソードを少なくとも1つの有機材料層の上に形成させることもできる。
無機酸化物の第1層は、好ましくはDCマグネトロン又はRFスパッタリングによりスパッタ付着させることができ、或いは、好ましくは抵抗もしくは電子線の熱蒸発により蒸発させることができる。導電性材料の第2層は、好ましくはDCマグネトロンもしくはRFスパッタリングによりスパッタ付着させることができ、或いは、抵抗もしくは電子線熱蒸発により蒸発させることもできる。
無機酸化物の第1層と導電性材料の第2層との厚さの比は、好ましくは少なくとも15:1である。
図5の構造は、半透明の無機酸化物アノード(例えばインジウム−錫−酸化物(ITO)、酸化錫もしくは酸化亜鉛)が少なくとも4.7eVの仕事関数を有する導電性材料の半透明な薄い層で被覆された後にOLED積層体の第1有機層を付着させる有機発光デバイス(OLED)である。前記薄い層の厚さは最高で10nmであるが、好ましくは3〜7nmである。前記薄い層はAg、As、Au、C、Co、Ge、Ni、Os、Pd、Pt、Re、Ru、Se、Te又はこれら元素を含有する合金もしくは金属間化合物とすることができる。代替的には、前記薄い層は、p型のドープされたZnSもしくはZnSeのようなドープされた半導体とすることもできる。前記薄い高い仕事関数の層は、少なくとも1つの有機エレクトロルミネセンス層(好ましくは共役ポリマー)で被覆され、最後に頂部電極としてのカソードが備えられる。
好ましい実施の形態において、薄い半透明且つ導電性の高い仕事関数の層は、厚さ3〜7nmの炭素の層である。
他の好ましい実施の形態において、有機エレクトロルミネセンス薄膜は、ポリ(p−フェニレンビニレン)のアルコキシ誘導体のような可溶性共役ポリマーである。
また、他の好ましい実施の形態において提供されているOLEDは、第1の電極としてカソードを有する基板から構築され、次いでこれを少なくとも1つのエレクトロルミネセンス層(好ましくは共役ポリマー)で被覆し、より厚い半透明の導電性酸化物の頂部アノード層を付着させる前に、頂部有機層は本発明の第1の側面に従った薄い半透明の高い仕事関数の層で被覆される。
図5の構造のものは、以下の工程によって加工される。
無機酸化物の第1透光性層を基板上に形成させることと、高い仕事関数を有する導電性材料の第2透光性層を無機酸化物の第1層の上に形成させることからなり、導電性材料の第2層は、無機酸化物の第1層よりも実質的に薄い、基板上にデバイスのアノードを形成する工程と、
少なくとも1つの透光性有機材料層をアノード上に形成する工程と、
デバイスのカソードを少なくとも1つの有機材料層の上に形成する工程。
代替的な「逆の」構造のものは、以下の工程によって加工される。
デバイスのカソードを基板上に形成する工程と、
少なくとも1つの透光性有機材料層をアノード上に形成する工程と、
高い仕事関数を有する導電性材料の第2透光性層を少なくとも1つの有機材料層の上に形成させることと、無機酸化物の第1透光性層を導電性材料の第2層の上に形成させることからなり、導電性材料の第2層は、無機酸化物の第1層よりも実質的に薄い、デバイスのアノードを少なくとも1つの有機材料層の上に形成する工程。
図5の構造によるOLEDの加工方法においては、薄い半透明の高い仕事関数の層を透明な導電性酸化物アノードと隣接第1有機層との間に付着させる。前記薄い半透明の高い仕事関数の層は、スパッタ付着、或いは抵抗もしくは電子線熱蒸発により施される。
特に図5を参照すると、ガラス基板10は、典型的には、厚さ約150nmであり、典型的には、≦30オーム/スクエア(square) のシート抵抗を有する半透明の導電性インジウム−錫−酸化物(ITO)層20の層で被覆される。代替的に、基板は、プラスチック材料で構成することもできる。前記ITO層20は、99.997%の純度を有する電子線蒸発された厚さ6nmの炭素の層30で被覆される。次いで前記層30を厚さ約100nmのポリ(MEH−PPVと略記される)[2−メトキシ−5−(2’−エチル−ヘキシルオキシ)−1、4−フェニレンビニレン]の層40で被覆し、これはキシレン溶液から層30上へスピンされる。次いで、前記MEH−PPV層を、約200nmのAlの第2保護層60でキャップされた、約50nmのCaで構成されるカソード50によって被覆する。このOLEDデバイスは、ITOとMEH−PPVとの間に炭素層を持たないデバイスと比較して向上したデバイス性能、特に、向上した操作安定性を有する。
以上のように、半透明の薄い導電性酸化物アノードを用いて透明性及び導電性を達成するが、前記導電性酸化物アノードと隣接有機層(これは前記酸化物アノードとの直接的接触の際に劣化しうる)との直接的接触を回避する、正電荷キャリアを放出するための効率的なアノード構造を有するデバイス構造及びOLEDの加工方法につき説明した。
第1図は、OLEDを示す。 第2図は、本発明の第1の実施の形態に係るOLEDを示す。 第3図は、本発明の第2の実施の形態に係るOLEDを示す。 第4図は、他のOLEDを示す。 第5図は、改良されたアノードを有するOLEDを示す。
符号の説明
1…基板 2…ITO層
3…PPV層 4…カソード層
5…酸化物層 6…MEH−PPV層
7…Au層 10…ガラス基板
20…ITO層 30…炭素層
40…MEH−PPV層 50…Ca層(カソード)
60…Al層(第2保護層)

Claims (3)

  1. アノードを含む基板上に有機発光材の層を付着させる工程と、
    前記有機発光材の層上に、カソードをスパッタリングによって付着させる際に前記有機発光層を保護する最上有機緩衝層を付着させる工程と、
    前記最上有機緩衝層の直上に、カソードを構成する半透明の導電性酸化物をスパッタにより付着させる工程と、
    を有することを特徴とする有機発光デバイスの製造方法。
  2. 請求項1記載の有機発光デバイスの製造方法において、
    前記有機発光材の層が共役ポリマーからなることを特徴とする有機発光デバイスの製造方法。
  3. 請求項1又は2記載の有機発光デバイスの製造方法において、
    前記半透明の導電性酸化物がインジウム−錫−酸化物からなることを特徴とする有機発光デバイスの製造方法。
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