JP6142326B2 - 有機電界発光素子および有機電界発光素子の製造方法 - Google Patents

有機電界発光素子および有機電界発光素子の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、有機電界発光素子および有機電界発光素子の製造方法に関し、特に有機電界発光素子の電極形成技術に関する。
近年、有機材料の電界発光現象を利用した有機電界発光素子の研究開発が進められている。自己発光を行うため視認性が高く、かつ、完全固体素子であるため耐衝撃性に優れるなどの特徴を有することから、各種表示装置における発光素子や光源としての利用が注目されている。
有機電界発光素子は、上部電極と下部電極との間に有機機能層が介挿された構造を有し、蒸着法やスパッタ法等により、下部電極、有機機能層、上部電極を順次積層することにより製造される(例えば、特許文献1参照)。
特開2007−95338号公報
しかしながら、上記の従来の有機電界発光素子の素子寿命や発光効率等のデバイス性能は不十分であった。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、素子寿命や発光効率等のデバイス性能に優れた有機電界発光素子を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の一態様である有機電界発光素子は、下部電極と、前記下部電極上に形成された有機機能層と、前記有機機能層上に形成された上部電極とを有し、前記上部電極の上面形状は、歪度Skewが−0.5以上、0.7以下であることを特徴とする。
本発明の一態様である有機電界発光素子によれば、有機機能層上に形成される上部電極の上面形状の歪度Skewが−0.5以上、0.7以下であり、平坦性が高いため、有機機能層と上部電極との界面に隙間が少ない電極膜を形成することができる。このため、有機機能層への酸素侵入や電極材料の侵入を抑制することができ、素子寿命や発光効率等のデバイス性能に優れた有機電界発光素子を提供することができる。
本発明の一態様にかかる有機電界発光素子100の構成の一例を示す断面図である。 本発明の一態様にかかる有機電界発光素子の製造工程を示すフローチャートである。 陰極101の成膜過程を模式的に示した図である。 陰極101の上面形状と有機電界発光素子のデバイス性能との関係を示すイメージ図である。 歪度および尖度と、陰極101の上面形状との関係を示す模式図である。 電子輸送層102上に形成した陰極101の上面形状の歪度および尖度を示す図である。 2次イオン質量分析法(SIMS)による電子輸送層(ETL)の酸素分布強度の分析結果を示す図である。 図7で示す実験結果の深さ5nmからマイナス40nmの部分を拡大した図である。 2次イオン質量分析法(SIMS)による電子輸送層(ETL)のインジウム(In)分布強度の分析結果を示す図である。 マグネトロンスパッタ法、またはプラズマ蒸着法により陰極を形成したEOD(Electron only device)に流れる電流の値を示す図である。 マグネトロンスパッタ法、またはプラズマ蒸着法により陰極を形成したBPD(Bipolar device)の電流効率を示す図である。 マグネトロンスパッタ法、またはプラズマ蒸着法により陰極を形成したBPD(Bipolar device)の駆動電力の値を示す図である。 マグネトロンスパッタ法、またはプラズマ蒸着法により陰極を形成したBPD(Bipolar device)の輝度半減寿命を示す図である。 マグネトロンスパッタ装置1400の構成の一例を示す図である。 成膜方式を変えて成膜した、ITO膜の単膜評価の結果を示す図である。 雰囲気ガス圧の成膜条件を変えて成膜した、ITO膜の単膜評価の結果を示す図である。 成膜方式を変えて成膜した、ITO膜の透過率の測定結果を示す図である。 雰囲気ガス圧の成膜条件を変えて成膜した、ITO膜の透過率の測定結果を示す図である。 Alq3膜/ITO膜界面のXPS分析の結果を示す図である。 プラズマ特性の測定結果を示す図である。 対向ターゲット式スパッタ法により成膜したITO膜のSEM写真を示す図である。 マグネトロンスパッタ法により成膜したITO膜のSEM写真を示す図である。 ITO膜の結晶サイズの測定結果を示す図である。 ITO膜の結晶の格子定数の測定結果を示す図である。 有機電界発光素子に対して、5Vの電圧を印加した場合に流れる電流の値を示す図である。 有機電界発光素子の電圧−電流密度特性を示す図である。 対向ターゲット式スパッタ法により有機機能層上にITO膜を成膜し製造した有機電界発光素子の輝度半減寿命の測定結果を示す図である。 マグネトロンスパッタ法、対向ターゲット式スパッタ法、またはプラズマ蒸着により有機機能層上にITO膜を成膜し製造した有機電界発光素子の輝度半減寿命の測定結果を示す図である。
≪本発明にかかる一態様の基礎となった知見≫
まず、本発明にかかる一態様の基礎となった知見について説明する。
有機電界発光素子は、普及が進むにつれて、素子寿命や発光効率等のデバイス性能のさらなる向上が求められている。
有機電界発光素子は、上部電極と下部電極との間に有機機能層が介挿された構造を有しており、一般に、蒸着法やスパッタ法等により、基板の上に、下部電極、一層または多層の有機機能層、上部電極をその順で成膜することにより製造される。
ここで、上部電極は、有機機能層上に成膜されるが、この成膜過程の際に、雰囲気ガスの酸素や上部電極の材料等が、下地の有機機能層に侵入する。かかる酸素侵入や上部電極材料の侵入は、有機機能層の電子注入性等の性能の低下につながる。その結果、有機電界発光素子の素子寿命や発光効率等のデバイス性能が低下してしまう。
発明者らは、鋭意研究の結果、酸素侵入や上部電極材料の侵入は、有機機能層上に形成される上部電極膜の隙間から発生するものと考え、有機機能層と上部電極との界面に形成される上部電極膜の形状が、有機電界発光素子のデバイス性能を左右する一要因であると考えた。
そこで、発明者らは、上部電極の上面形状に着目し、以下に示す発明の一態様を得るに至った。
≪本発明の一態様の概要≫
本発明の一態様である有機電界発光素子は、下部電極と、前記下部電極上に形成された有機機能層と、前記有機機能層上に形成された上部電極とを有し、前記上部電極の上面形状は、歪度Skewが−0.5以上、0.7以下である。
また、本発明の一態様にかかる有機電界発光素子の特定の局面では、前記上部電極の上面形状は、尖度Kurtが−0.7以上、0.3以下である。
また、本発明の一態様にかかる有機電界発光素子の特定の局面では、前記上部電極は、前記有機機能層を下地として成膜される。
また、本発明の一態様にかかる有機電界発光素子の特定の局面では、前記上部電極は、マグネトロンスパッタ法を用いて、4.5W/cm2以上、9.0W/cm2以下の成膜電力密度で成膜される。
また、本発明の一態様にかかる有機電界発光素子の特定の局面では、前記有機機能層は、酸素が分布している領域の深さが、前記上部電極との界面から18nm以下である。
また、本発明の一態様にかかる有機電界発光素子の特定の局面では、前記有機機能層は、電子輸送層を含む複数の層から構成され、前記下部電極は、陽極であり、前記上部電極は、陰極であり、前記電子輸送層と接する。
また、本発明の一態様にかかる有機電界発光素子の特定の局面では、前記上部電極は、透明導電材料からなる。
また、本発明の一態様にかかる有機電界発光素子の特定の局面では、前記上部電極は、In、Ti、Zn、Snの少なくとも1つを含む酸化物からなる。
また、本発明の一態様である有機電界発光素子の製造方法は、基板上に下部電極を形成する工程と、前記下部電極上に有機機能層を形成する工程と、前記有機機能層上に、上面形状の歪度Skewが、−0.5以上、0.7以下である上部電極を形成する工程とを含む。
≪実施の形態1≫
以下では、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
[有機電界発光素子の構成]
まず、本発明の一態様にかかる有機電界発光素子の構成について説明する。図1は、本発明の一態様にかかる有機電界発光素子100の構成の一例を示す断面図である。本図に示されるように、有機電界発光素子100は、陰極101、電子輸送層102、発光層103、正孔輸送層104、正孔注入層105、陽極106、基板107を備える。以下では、各構成について説明する。
<陰極>
陰極101は、電子を電子輸送層102に注入する機能を有する。陰極101の材料には、ITO(酸化インジウムスズ)、IZO(酸化インジウム亜鉛)、Ag(銀)、Al(アルミニウム)、銀とパラジウムと銅との合金、銀とルビジウムと金との合金、MoCr(モリブデンとクロムの合金)、NiCr(ニッケルとクロムの合金)等が用いられる。
特に、陰極側から光を取り出すトップエミッション型の有機電界発光素子では、ITO、IZO、ZnO、TiO2等のIn、Ti、Zn、Snの少なくとも1つを含む酸化物からなる透明導電材料が用いられる。
本発明の一態様にかかる有機電界発光素子は、電子輸送層102上に形成される陰極101の上面形状に技術的特徴がある。詳細は後述するが、具体的には、本発明の一態様にかかる有機電界発光素子は、陰極101の上面形状の歪度Skewが−0.5以上、0.7以下である。また、より好ましくは、本発明の一態様にかかる有機電界発光素子は、陰極101の上面形状の尖度Kurtが−0.7以上、0.3以下である。
電子輸送層102上に、隙間が少ない平坦性が高い膜が形成されるため、電子輸送層102への酸素侵入や電極材料の侵入を抑制することができ、素子寿命や発光効率等のデバイス性能に優れた有機電界発光素子を提供することができる。
<電子輸送層>
電子輸送層102は、陰極101から注入された電子を発光層103に輸送する機能を有する。電子輸送層102の材料には、ニトロ置換フルオレノン誘導体、チオピランジオキサイド誘導体、ジフェキノン誘導体、ペリレンテトラカルボキシル誘導体、アントラキノジメタン誘導体、フレオレニリデンメタン誘導体、アントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ペリノン誘導体、キノリン錯体誘導体(いずれも特開平5‐163488号公報に記載)、リンオキサイド誘導体、トリアゾール誘導体、トジアジン誘導体、シロール誘導体、ジメシチルボロン誘導体、トリアリールボロン誘導体等が用いられる。
<発光層>
発光層103は、キャリア(ホールと電子)の再結合による発光を行う部位である。発光層103の材料には、オキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物等が用いられる。
<正孔輸送層>
正孔輸送層104は、陽極106から注入された正孔を発光層103に輸送する機能を有する。正孔輸送層104の材料には、例えば、芳香族三級アミン誘導体やフタロシアニン誘導体等が用いられる。
<正孔注入層>
正孔注入層105は、陽極106から正孔輸送層104への正孔の注入を促進させる機能を有する。正孔注入層105の材料には、例えば、MoOx(酸化モリブデン)、WOx(酸化タングステン)又はMoxyz(モリブデン‐タングステン酸化物)等の金属酸化物、金属窒化物又は金属酸窒化物等が用いられる。
<陽極>
陽極106は、正孔を正孔注入層105に注入する機能を有する。陽極106の材料には、Ag(銀)、Al(アルミニウム)、銀とパラジウムと銅との合金、銀とルビジウムと金との合金、MoCr(モリブデンとクロムの合金)、NiCr(ニッケルとクロムの合金)、ITO(酸化インジウムスズ)、IZO(酸化インジウム亜鉛)等が用いられる。
基板側から光を取り出すボトムエミッション型の有機電界発光素子では、ITO、IZO、ZnO、TiO2等のIn、Ti、Zn、Snの少なくとも1つを含む酸化物からなる透明導電材料が用いられる。
また、陰極側から光を取り出すトップエミッション型の有機電界発光素子では、光反射性材料が用いられる。
なお、トップエミッション型の有機電界発光素子では、陽極106と基板107との間に、反射電極を設けてもよい。
<基板>
基板107は、有機電界発光素子の基材となる部分である。基板107の上に、陽極106、有機機能層(正孔注入層105、正孔輸送層104、発光層103、電子輸送層102)、陰極101が順次積層され、有機電界発光素子100が製造される。基板107の材料には、例えば、無アルカリガラス、ソーダガラス、無蛍光ガラス、燐酸系ガラス、硼酸系ガラス、石英、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレン、ポリエステル、シリコン系樹脂、アルミナ等の絶縁性材料が用いられる。
<その他>
図1には図示しないが、陰極101の上には、有機機能層が水分や空気等に触れて劣化することを抑制する目的で封止層が設けられる。トップエミッション型の有機電界発光素子の場合、封止層の材料には、例えば、SiN(窒化シリコン)、SiON(酸窒化シリコン)等の光透過性材料が用いられる。
以上が、本発明の一態様にかかる有機電界発光素子100の構成についての説明である。
[有機電界発光素子の製造方法]
続いて、本発明の一態様にかかる有機電界発光素子の製造方法について説明する。図2は、本発明の一態様にかかる有機電界発光素子の製造工程を示すフローチャートである。
本図に示されるように、まず、有機電界発光素子の基材となる基板107を準備し(ステップS201)、その基板107上に陽極106を形成する(ステップS202)。陽極108の形成には、蒸着法やスパッタ法等を用いる。
次に陽極106上に多層の有機機能層を形成する(ステップS203〜S206)。
具体的には、まず、陽極106上に正孔注入層105を形成する(ステップS203)。正孔注入層105の形成後、正孔注入層105上に正孔輸送層104を形成する(ステップS204)。正孔輸送層104の形成後、正孔輸送層104の上に発光層103を形成する(ステップS205)。発光層103の形成後、発光層103の上に電子輸送層102を形成する(ステップS206)。これ等の有機機能層の形成には、蒸着法やインクジェット装置による塗布法等を用いる。
有機機能層の形成後、電子輸送層102上に陰極101を形成する(ステップS207)。詳細は後述するが、具体的には、例えば、マグネトロンスパッタ法を用いて、上面形状の歪度Skewが−0.5以上、0.7以下である陰極101を形成する。また、より好ましくは、例えば、マグネトロンスパッタ法を用いて、上面形状の尖度Kurtが−0.7以上、0.3以下である陰極101を形成する。
陰極101の形成後、陰極101上に封止層を形成する(ステップS208)。
このように、基板の上に、陽極、有機機能層、陰極を順次積層することにより、有機電界発光素子を製造する。
以上が、本発明の一態様にかかる有機電界発光素子の製造方法についての説明である。
[陰極101の詳細]
発明者らは、陰極101の上面形状に着目し、鋭意研究の結果、陰極101の上面形状の歪度Skewが−0.5以上、0.7以下であるときに、下地の電子輸送層102への酸素侵入や電極材料の侵入を抑制することができ、素子寿命や発光効率等のデバイス性能に優れた有機電界発光素子を提供することができることを発見した。また、陰極101の上面形状の尖度Kurtが−0.7以上、0.3以下であるとき、酸素侵入や電極材料の侵入をより抑制することができることを発見した。以下では、この陰極101の上面形状について詳細に説明する。
図3は、陰極101の成膜過程を模式的に示した図である。本図に示す例では、電極材料にITOを用いている。
本図に示されるように、陰極101は、スパッタ法や蒸着法等により、有機膜(電子輸送層102)上に形成される。この成膜過程の際に、雰囲気ガスの酸素や陰極101の材料等が、下地の電子輸送層102に侵入する。かかる酸素侵入や電極材料の侵入は、電子輸送層102の電子注入性等の性能の低下につながる。その結果、有機電界発光素子の素子寿命や発光効率等のデバイス性能が低下してしまう。
雰囲気ガスの酸素分子や陰極101の材料であるITO分子は、電子輸送層102上に成膜されるITO分子膜の隙間から侵入する。ここで、陰極101の上面形状の平坦性が高いほど、この隙間が少なくなると考えられる。このため、陰極101の上面形状の平坦性が高ければ、酸素分子やITO分子の電子輸送層102への侵入を抑制することができ、素子寿命や発光効率等のデバイス性能に優れた有機電界発光素子を提供することができる。すなわち、陰極101の上面形状と有機電界発光素子のデバイス性能との関係は、図4に示すイメージ図のようになると考えられる。
そこで、発明者らは、陰極101の上面形状を示すパラメータとして、歪度、尖度に着目した。
歪度および尖度は、正規分布を基準としたときの分布の偏りを示す値である。正規分布は、その平均をμ、分散をσ2とするとき、以下の数式のように表される。
Figure 0006142326
ここで、歪度Skewは、平均をμ、標準偏差をs、サンプル数をnとするとき、以下の数式により定義される。
Figure 0006142326
上記の数式(1)により定義される歪度は、正規分布を基準としたときに、分布が左右にどの程度偏っているかを示す値である。本実施の形態において、歪度は、陰極101の上面形状の凸部分と凹部分との割合を示す。
また、尖度Kurtは、平均をμ、標準偏差をs、サンプル数をnとするとき、以下の数式により定義される。
Figure 0006142326
上記の数式(2)により定義される尖度は、正規分布を基準としたときに、分布が上下にどの程度偏っているかを示す値である。本実施の形態において、尖度は、陰極101の上面形状の凸部分の尖り度合いを示す。
図5は、歪度および尖度と、陰極101の上面形状との関係を示す模式図である。本図に示されるように、歪度の値が大きいとき、陰極101の上面は、凸部分が多いこととなる。また、尖度の値が大きいとき、陰極101の上面の凸部分の形状は、尖った形状であることとなる。
ここで、発明者らは、マグネトロンスパッタ法、または対向ターゲット式スパッタ法で、成膜条件を変え、陰極101を成膜し、陰極101の上面形状の歪度および尖度を調べた。
マグネトロンスパッタ法、対向ターゲット式スパッタ法の各成膜条件における詳細な条件内容を以下に示す。
Figure 0006142326
上記の表1において、マグネトロンスパッタ法の成膜電力は5.4[kW]であり、対向ターゲット式スパッタ法の成膜電力は、2.5[kW]である。単位ターゲット面積あたりの成膜電力である成膜電力密度に換算すると、マグネトロンスパッタ法の成膜電力密度は9.0[W/cm2]となる。
また、ガス流量とはスパッタ室に供給されるガスの流量である。また、周波数とは、ターゲットに印加する電流のパルス周波数である。また、duty比とは、パルス1周期あたりの正バイアス時間の比である。
本実施の形態では、陰極101の上面を倍率15万倍で観察したSEM写真を、二次元画像解析ソフトウェア「ウィンルーフ(WinRoof):三谷商事製」により画像解析することにより、歪度および尖度を導出した。その実験結果を以下に示す。
Figure 0006142326
また図6は、上記の表2に示される実験データを、歪度を縦軸とし、尖度を横軸としてプロットしたグラフである。
表2および図6を参照するに、高エネルギープロセスのマグネトロンスパッタ法で陰極101を成膜した場合、平坦性が高い陰極101が形成されていることが分かる。具体的には、マグネトロンスパッタ法により成膜した陰極101の歪度Skewの最大値は0.7、最小値は−0.5となる。また、マグネトロンスパッタ法により成膜した陰極101の尖度Kurtの最大値は0.3、最小値は−0.7となる。
詳細は後述するが、高エネルギープロセスのマグネトロンスパッタ法で、電子輸送層上に陰極を形成した場合、陰極から電子輸送層への電子注入性が優れた有機電界発光素子を製造することができる。このため、優れたデバイス性能の有機電界発光素子を得るためには、電子輸送層102上に形成される陰極101の上面形状の歪度Skewが−0.5以上、0.7以下であることが好ましい。電子輸送層102上に形成される陰極101の上面形状の歪度Skewが−0.5以上、0.7以下であれば、電子輸送層102への酸素侵入や電極材料の侵入を抑制することができ、素子寿命や発光効率等のデバイス性能に優れた有機電界発光素子を得ることができる。
また、電子輸送層102上に形成される陰極101の上面形状の歪度Skewが−0.5以上、0.7以下であることがより好ましい。凸部分の尖りが小さく、電子輸送層102への酸素侵入や電極材料の侵入をより抑制することができ、素子寿命や発光効率等のデバイス性能に優れた有機電界発光素子を得ることができる。
図7は、2次イオン質量分析法(SIMS)による電子輸送層(ETL)の酸素分布強度の分析結果を示す図である。横軸は深さ[nm]、縦軸は検出強度[a.u.]を示す。本図に示す実験結果では、マグネトロンスパッタ法、またはプラズマ蒸着法で、電子輸送層上にITO膜を成膜している。マグネトロンスパッタ法の成膜条件は、表1に示される標準の条件である。また、プラズマ蒸着法の成膜条件は、ターゲット基板の距離:50[cm]、成膜パワー:30[kW]、雰囲気ガス圧力:0.7[Pa]、Arガス流量:300[sccm]、O2ガス流量:35[sccm]、H2Oガス流量:5[sccm]である。
図8は、図7で示す実験結果の深さ5nmからマイナス40nmの部分を拡大した図である。本図を参照するに、プラズマ蒸着法で電子輸送層上にITO膜を成膜した場合、電子輸送層への酸素拡散の深さは、およそ26nmから29nmであることがわかる。また、マグネトロンスパッタ法で電子輸送層上にITO膜を成膜した場合、電子輸送層への酸素拡散の深さは、およそ15nmから18nmであることがわかる。この結果から、高エネルギープロセスのマグネトロンスパッタ法で電子輸送層上にITO膜を成膜した場合、電子輸送層上に平坦性の高いITO膜を成膜することができ、電子輸送層への酸素拡散が抑制できていることがわかる。
図9は、2次イオン質量分析法(SIMS)による電子輸送層(ETL)のインジウム(In)分布強度の分析結果を示す図である。横軸は深さ[nm]、縦軸は検出強度[a.u.]を示す。本図に示す実験結果では、マグネトロンスパッタ法、またはプラズマ蒸着法で、電子輸送層上にITO膜を成膜している。マグネトロンスパッタ法、およびプラズマ蒸着法の成膜条件は、図7に示した実験における条件と同じ条件である。
図9を参照するに、プラズマ蒸着法で電子輸送層上にITO膜を成膜した場合、電子輸送層へのインジウム拡散の深さは、およそ16nmから19nmであることがわかる。また、マグネトロンスパッタ法で電子輸送層上にITO膜を成膜した場合、電子輸送層へのインジウム拡散の深さは、およそ12nmから15nmであることがわかる。インジウムはITOに含まれる物質であり、電子輸送層上に平坦性の高いITO膜を成膜することにより、電子輸送層への電極材料の拡散が抑制できていることが分かる。
図10は、マグネトロンスパッタ法、またはプラズマ蒸着法により陰極を形成したEOD(Electron only device)に対して、5Vの電圧を印加した場合に流れる電流の値を示す図である。マグネトロンスパッタ法、およびプラズマ蒸着法の成膜条件は、図7に示した実験における条件と同じ条件である。縦軸の電子電流は、マグネトロンスパッタ法により陰極を形成したBPD(Bipolar device)の電子電流の値で規格化している。
図10を参照するに、マグネトロンスパッタ法で陰極を成膜した場合の方が、プラズマ蒸着法で陰極を成膜した場合に比べ、電子注入性が優れていることがわかる。これは、電子輸送層上に平坦性の高い陰極を形成することにより、電子輸送層への酸素侵入や電極材料の侵入を抑制することができたためだと考えられる。一方、プラズマ蒸着法では、電子輸送層上に平坦性の高い陰極を形成することができないため、電子輸送層への酸素侵入や電極材料の侵入を抑制することができず、電子注入性が劣ることとなっている。
図11は、マグネトロンスパッタ法、またはプラズマ蒸着法により陰極を形成したBPD(Bipolar device)の電流効率を示す図である。縦軸の電流効率は、マグネトロンスパッタ法により陰極を形成したBPD(Bipolar device)の電流効率の値で規格化している。また、マグネトロンスパッタ法、およびプラズマ蒸着法の成膜条件は、図7に示した実験における条件と同じ条件である。
図11を参照するに、マグネトロンスパッタ法で陰極を成膜した場合の方が、プラズマ蒸着法で陰極を成膜した場合に比べ、電流効率が高いことが分かる。これは、電子輸送層上に平坦性の高い陰極を形成することにより、電子輸送層への酸素侵入や電極材料の侵入を抑制することができたためだと考えられる。
図12は、マグネトロンスパッタ法、またはプラズマ蒸着法により陰極を形成したBPD(Bipolar device)に対して、10mA/cm2で駆動するために必要な電圧の値を示す図である。縦軸の電圧は、マグネトロンスパッタ法により陰極を形成したBPD(Bipolar device)の電圧の値で規格化している。また、マグネトロンスパッタ法、およびプラズマ蒸着法の成膜条件は、図7に示した実験における条件と同じ条件である。
図12を参照するに、マグネトロンスパッタ法で陰極を成膜した場合の方が、プラズマ蒸着法で陰極を成膜した場合に比べ、10mA/cm2で駆動するために必要な電圧が低く、駆動効率が優れていることが分かる。これは、電子輸送層上に平坦性の高い陰極を形成することにより、電子輸送層への酸素侵入や電極材料の侵入を抑制することができたためだと考えられる。
図13は、マグネトロンスパッタ法、またはプラズマ蒸着法により陰極を形成したBPD(Bipolar device)の輝度半減寿命を示した図である。縦軸の輝度半減寿命は、マグネトロンスパッタ法により陰極を形成したBPD(Bipolar device)の輝度半減寿命で規格化している。また、マグネトロンスパッタ法、およびプラズマ蒸着法の成膜条件は、図7に示した実験における条件と同じ条件である。
図13を参照するに、マグネトロンスパッタ法で陰極を成膜した場合の方が、プラズマ蒸着法で陰極を成膜した場合に比べ、輝度半減寿命が高いことが分かる。これは、電子輸送層上に平坦性の高い陰極を形成することにより、電子輸送層への酸素侵入や電極材料の侵入を抑制することができたためだと考えられる。
なお、本実施の形態に示す有機電界発光素子の陰極の膜厚は、例えば、30[nm]以上、200[nm]以下とすることが考えられる。
また、本実施の形態に示す有機電界発光素子の陰極のシート抵抗は、例えば、1000[Ω/□]とすることが考えられる。
また、本実施の形態に示す有機電界発光素子の陰極の透過率は、例えば、80[%]以上、95[%]以下とすることが考えられる。
以上のように、陰極の上面形状の平坦性が高い場合、具体的には、上面形状の歪度Skewが、−0.5以上、0.7以下である場合、電子輸送層上に、隙間が少ない電極膜が形成されるため、電子輸送層への酸素侵入や電極材料の侵入を抑制することができ、素子寿命や発光効率等のデバイス性能に優れた有機電界発光素子を提供することができる。
[高エネルギープロセスのマグネトロンスパッタ法について]
発明者らは、鋭意研究の結果、高エネルギープロセスのマグネトロンスパッタ法を用いて電子輸送層上に陰極を形成することにより、電子注入性等のデバイス性能の優れた有機電界発光素子を製造することができることを発見した。そして、発明者らは、その有機電界発光素子の陰極の上面形状を観察したところ、電子輸送層上に、隙間が少ない平坦性が高い膜が形成されるため、電子輸送層への酸素侵入や電極材料の侵入を抑制することができ、素子寿命や発光効率等のデバイス性能に優れた有機電界発光素子を提供することができることを発見した。
まず、マグネトロンスパッタ装置の構成について説明する。図14は、マグネトロンスパッタ装置1400の構成の一例を示す図である。本図に示されるように、マグネトロンスパッタ装置1400は、スパッタ室1401、ガス供給系1402、排気系1403、バッキングプレート1404、ターゲット1405、磁石1406、基台1407、成膜基板1408、電源1409を含んで構成される。
マグネトロンスパッタ装置1400は、スパッタ室1401を有し、このスパッタ室1401内で、スパッタを行う。
スパッタ室1401には、スパッタリングガスを導入するためのガス供給系1402、およびスパッタ室1401内を所定の圧力に減圧するための排気系1403が接続されている。スパッタリングガスには、Ar(アルゴン)等の不活性ガスが用いられる。
スパッタ室1401内の基台1407には、成膜対象の成膜基板1408が設置され、スパッタ室1401内のバッキングプレート1404には、成膜材料のプレート状のターゲット1405が配置されている。また、ターゲット1405の背面には、磁石1406が配置されている。
電源1409は、ターゲット1405に対して電圧を印加する。なお、図14に示す例では、電源1409は直流電源であるが、交流電源、または直流/交流のハイブリッド電源であってもよい。
排気系1403によりスパッタ室1401内を排気し、ガス供給系1402によりスパッタ室1401内にスパッタリングガスを導入し、電源1409によりターゲット1405に電圧を印加すると、スパッタリングガスのプラズマが発生し、ターゲット1405の表面がスパッタされる。
ターゲット1405の背面に、磁石1406を配置することにより、ターゲット1405の表面に平行な磁界が発生する。スパッタリングガスのイオンがターゲット表面に衝突し叩きだされる二次電子を、ターゲット1405の表面に発生する磁界によるローレンツ力で捕らえてサイクロイドまたはトロコイド運動させることにより、ターゲット付近に高密度プラズマを生成することができる。
マグネトロンスパッタ法は、上記のような装置構成により、高エネルギーのスパッタ粒子を用いて薄膜を形成することができる。
以上が、マグネトロンスパッタ装置の構成についての説明である。次に、高エネルギープロセスのマグネトロンスパッタ法について説明する。
陰極成膜工程では、下地の有機機能層のダメージによる有機電界発光素子の駆動電圧、素子寿命等の特性の低下を懸念して、蒸着法、または低エネルギープロセスのスパッタ法が採用されていた。
特に、陰極にITO、IZO、ZnO、TiO2等のIn、Ti、Zn、Snの少なくとも1つを含む酸化物からなる透明導電材料を用いる必要があるトップエミッション型の有機電界発光素子では、下地の有機機能層のダメージによる有機電界発光素子の駆動電圧、素子寿命等の特性の低下が懸念されており、高エネルギープロセスのスパッタ法は避けられていた。
しかし、蒸着法、または低エネルギープロセスのスパッタ法による成膜では、下地の有機機能層に付着するターゲットの原子または分子のエネルギーが低いため、上部電極と下地の有機機能層との密着性が低い。このため、有機機能層、電極間の電子または正孔の注入障壁が大きく、製造した有機電界発光素子は、十分な駆動電圧、素子寿命の特性が得られなかった。
これに対して発明者らは、ITO成膜による電子輸送層へのダメージの評価等を行い、高エネルギープロセスのスパッタ法でITO成膜することによる電子輸送層へのダメージを、ITO電極と電子輸送層の密着性を高めることでカバーできる可能性について考えた。
その結果、基板へ入射するイオン量が大きいマグネトロンスパッタ法を用いて、高エネルギープロセスでITOの成膜を行うことで、有機機能層と陰極との密着性を高めることができ、陰極から有機機能層への電子注入性に優れた、高効率、高寿命の有機電界発光素子を製造することができることを発見した。
以下では、発明者らが行った実験の結果を参照しながら、高エネルギープロセスのマグネトロンスパッタ法による陰極の成膜について、さらに詳細に説明する。
まず、プラズマ蒸着、マグネトロンスパッタ法、対向ターゲット式スパッタ法の成膜方式により、電子輸送層上にITO膜を成膜し、そのITO膜の単膜評価を行った。具体的には、グレインの粒径サイズ、ITO膜の仕事関数、ITO膜のシート抵抗について評価を行った。
スパッタ法の成膜電力(成膜パワー)は、マグネトロンスパッタ法では[5.4kW]、対向ターゲット式スパッタ法では2.5[kW]である。単位ターゲット面積当たりの成膜電力である成膜電力密度になおすと、マグネトロンスパッタ法の成膜電力密度は、9.0[W/cm2]である。
また、マグネトロンスパッタ法、対向ターゲット式スパッタ法における雰囲気ガス圧は、0.6[Pa]であり、プラズマ蒸着における雰囲気ガス圧は、0.7[Pa]である。
図15は、成膜方式を変えて成膜した、ITO膜の単膜評価の結果を示す図である。図15(a)は、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)の観察によるグレインの粒径サイズを示し、図15(b)は、ITO膜の仕事関数を示し、図15(c)は、ITO膜のシート抵抗を示す。
図15(a)を参照するに、マグネトロンスパッタ法によるITO成膜におけるグレインの粒径サイズと、対向ターゲット式スパッタ法によるITO成膜におけるグレインの粒径サイズは同等である。プラズマ蒸着によるITO成膜におけるグレインの粒径サイズは、マグネトロンスパッタ法、対向ターゲット式スパッタ法によるITO成膜におけるグレインの粒径サイズよりも小さい。
図15(b)を参照するに、プラズマ蒸着によるITO膜の仕事関数と、マグネトロンスパッタ法によるITO膜の仕事関数と、対向ターゲット式スパッタ法によるITO膜の仕事関数とは同等である。
図15(c)を参照するに、グレインの粒径サイズの大きさに比例して、シート抵抗が上昇している。
このように、グレインの粒径サイズ、ITO膜の仕事関数、ITO膜のシート抵抗についてITO膜の単膜評価を行ったが、ITO膜の仕事関数について成膜方式による明確な差が見られない。
また、マグネトロンスパッタ法において、雰囲気ガス圧の成膜条件を変えて、電子輸送層上にITO膜を成膜し、そのITO膜の単膜評価を行った。図16は、雰囲気ガス圧の成膜条件を変えて成膜した、ITO膜の単膜評価の結果を示す図である。図16(a)は、SEMの観察によるグレインの粒径サイズを示し、図16(b)は、ITO膜の仕事関数を示し、図16(c)は、ITO膜のシート抵抗を示す。ここでは、雰囲気ガス圧0.6[Pa]、1.0[Pa]、1.4[Pa]の場合について、ITO膜の単膜評価を行っている。
図16(a)を参照するに、ITO成膜におけるグレインの粒径サイズは、雰囲気ガス圧に比例して、大きくなっている。
図16(b)を参照するに、雰囲気ガス圧0.6[Pa]、1.0[Pa]、1.4[Pa]の場合におけるITO膜の仕事関数は同等である。
図16(c)を参照するに、グレインの粒径サイズの大きさに比例して、シート抵抗が上昇している。
このように、グレインの粒径サイズ、ITO膜の仕事関数、ITO膜のシート抵抗について、雰囲気ガス圧の成膜条件を変えてマグネトロンスパッタ法で成膜したITO膜の単膜評価を行ったが、ITO膜の仕事関数について雰囲気ガス圧の成膜条件による明確な差が見られない。
また、図15、図16に示した成膜方式、成膜条件で成膜したITO膜について、透過率の測定を行った。
図17は、成膜方式を変えて成膜した、ITO膜の透過率の測定結果を示す図である。図17(a)は波長450[nm]の光の透過率を示し、図17(b)は波長550[nm]の光の透過率を示し、図17(c)は波長650[nm]の光の透過率を示す。プラズマ蒸着、マグネトロンスパッタ成膜、対向ターゲット式スパッタ成膜の各成膜方式の成膜条件は、図15に示した条件と同じである。
図17(a)〜(c)を参照するに、いずれの波長においても、各成膜方式によるITO膜の透過率は同等である。
また、図18は、雰囲気ガス圧の成膜条件を変えて成膜した、ITO膜の透過率の測定結果を示す図である。図18(a)は波長450[nm]の光の透過率を示し、図18(b)は波長550[nm]の光の透過率を示し、図18(c)は波長650[nm]の光の透過率を示す。ここでは、図16示した成膜条件と同様に、マグネトロンスパッタ成膜における雰囲気ガス圧0.6[Pa]、1.0[Pa]、1.4[Pa]の場合について、ITO膜の透過率を測定している。
図18(a)〜(c)を参照するに、いずれの波長においても、各雰囲気ガス圧の成膜条件によるITO膜の透過率は同等である。
また、X線光電子分光(X-ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)により、ITO成膜による下地の有機機能層へのダメージの評価を行った。具体的には、有機機能層へのダメージ評価を行うため、ガラス基板上に、蒸着によりAlq3(トリス(8−キノリノラト)アルミニウム)膜を5nm成膜し、さらにその上にプラズマガン蒸着、マグネトロンスパッタ、対向ターゲット式スパッタの各成膜方式により、ITO(酸化インジウムスズ)膜を35nm成膜した。そして、ガラス基板からAlq3膜を剥離し、Alq3膜/ITO膜界面のXPS分析を行った。また、Alq3膜の上に、蒸着によりAl(アルミニウム)膜を120nm成膜した場合についても、同様にAlq3膜/Al膜界面のXPS分析を行った。また、比較のため、ITO成膜をしていないAlq3膜についても、XPS分析を行った。なお、Alq3は有機電界発光素子の電子輸送層の材料として、一般に用いられる。
図19は、Alq3膜/ITO膜界面のXPS分析の結果を示す図である。図19(a)はC1sスペクトルの比較結果を示す。また図19(b)は、図19(a)に示したC1sスペクトルの比較結果を拡大表示したものである。
図19(a)、(b)を参照するに、結合エネルギー(Binding Energy)288[ev]〜290[ev]付近において、ITOのプラズマ蒸着、マグネトロンスパッタ、対向ターゲット式スパッタの各成膜方式において、同等のスペクトルのピークの減少が確認できた。このスペクトルのピークの減少は、ITO膜の成膜工程におけるAlq3膜へのダメージによるものと考えられるが、ITO膜の成膜方式の違いによるスペクトルの差は明確には確認できなかった。
また、各スペクトルのピークフィッティングを行うことで、成膜した薄膜の成分の構成割合を算出した。サンプルは、(1)Alq3膜の上に、ITO膜をプラズマガン蒸着により2nm成膜、(2)Alq3膜の上に、ITO膜をマグネトロンスパッタ法により2nm成膜、(3)Alq3膜の上に、ITO膜を対向ターゲット式スパッタ法により2nm成膜、(4)Alq3膜の上に、Al(アルミニウム)を蒸着により2nm成膜、(5)Alq3膜の上に、ITO膜を成膜していないものである。その結果を以下に示す。
Figure 0006142326
上記の表3を参照するに、ITO膜の成膜方式間において、明確な原子の構成割合の差異は確認できなかった。
発明者は、以上の図15〜図19、および表3に示したITO膜および有機機能層の膜評価において、各成膜方式、各成膜条件の間で、明確な差異が見られなかった点に着目した。そして、下地の有機機能層のダメージによる有機電界発光素子の駆動電圧、素子寿命等の特性の低下を懸念して従来では避けられていた、高エネルギープロセスのスパッタ法でITO成膜することにより、ITO層と有機機能層の密着性を高めることで、駆動電圧、素子寿命等の特性に優れた有機電界発光素子を製造できる可能性について考えた。
ここで、一般にITO成膜では、マグネトロンスパッタまたは対向ターゲット式スパッタが用いられる。そこで、マグネトロンスパッタまたは対向ターゲット式スパッタの、いずれのスパッタ法により有機機能層上に電極を成膜するのがよいか検討を行った。
まず、マグネトロンスパッタ法、対向ターゲット式スパッタ法における、成膜基板へのスパッタリングガスのイオン照射量を示すイオン電流と、スパッタリングガスのイオンのエネルギーとを、プローブ法によるプラズマ診断により測定した。ここで、プローブ法によるプラズマ診断とは、針状の電極(プローブ)をプラズマに挿入して、そのプローブに流れる電流を測定することによりプラズマ特性を測定する手法をいう。
図20は、プラズマ特性の測定結果を示す図である。またこのプラズマ特性の測定結果の詳細を下記の表に示す。
Figure 0006142326
ここでは、成膜基板位置にプローブを挿入することで、成膜基板に対するプラズマ特性の測定を行っている。横軸は、成膜基板に対するArイオンの衝突エネルギー(Ar+イオンエネルギー)を示す。また縦軸は、単位ダイナミックレートあたりのイオン電流を示す。イオン電流とは、プラズマがプローブに流れ込む電流値のことをいい、図20の縦軸に示す単位ダイナミックレートあたりのイオン電流は、イオン電流を、ダイナミックレート(成膜基板の搬送速度1m/minでターゲット下を通過する時の成膜速度:Åm/min)で割ることにより、成膜基板へ入射するイオン量を定量化したものである。
各成膜条件は、前述の表1に示す条件と同一条件である。
図20を参照するに、すべての成膜条件において、マグネトロンスパッタ法が、対向ターゲット式スパッタ法よりも、成膜基板へ入射するイオン量を示す単位ダイナミックレートあたりのイオン電流密度が大きい。具体的には、マグネトロンスパッタ法の単位ダイナミックレートあたりのイオン電流密度は0.2[mA/cm2]以上、0.4[mA/cm2]以下の範囲にある。
例えば、対向ターゲット式スパッタ法の低圧力条件における場合と、マグネトロンスパッタ法の標準条件における場合を比較すると、Ar+イオンエネルギーは同等であるが、単位ダイナミックレートあたりのイオン電流密度は約3倍異なる。この場合、マグネトロンスパッタ法の標準条件における成膜基板に積算されるエネルギーは、対向ターゲット式スパッタ法の低圧力条件における成膜基板に積算されるエネルギーの約3倍となる。
スパッタガスであるArのイオンが成膜基板に入射すると、一度成膜基板に付着したスパッタ原子に運動エネルギーを与える。これにより、一度付着したスパッタ原子が、より有機機能層に密着して積層され、緻密な膜質の薄膜が成膜できるものと考える。
この実験結果から、本実施の形態にかかる有機電界発光素子の製造方法における、上部電極の形成時の、単位ダイナミックレートあたりのイオン電流密度は、0.2[mA/cm2]以上、0.4[mA/cm2]以下であることが好ましい。
本実施の形態にかかる有機電界発光素子の製造方法では、成膜基板に入射するスパッタガスイオンが、ITO層と有機機能層の密着性に与える影響について注目し、対向ターゲット式スパッタ法よりも成膜基板に積算されるエネルギーが大きいマグネトロンスパッタ法に着目した。
ここでさらに、対向ターゲット式スパッタ法、マグネトロンスパッタ法のそれぞれの成膜方式において、成膜条件を変えてITO膜を成膜し、その上面形状を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)により観察することで、成膜条件を変更することによるITO膜の上面形状の変化を確認した。
図21は、対向ターゲット式スパッタ法により成膜したITO膜のSEM写真を示す図である。図21(a)、(b)、(c)、(d)、(f)に示すSEM写真は、それぞれ表2に示す成膜条件で成膜したものである。図21(e)に示すSEM写真は、表2に示す標準の成膜条件において、成膜パワーを2.5kwから半分の1.25kwに変更した成膜条件で成膜したものである。
図21(a)〜(f)を参照するに、対向ターゲット式スパッタ法では、標準条件を除く成膜条件において形骸粒子が観察された。
図22は、マグネトロンスパッタ法により成膜したITO膜のSEM写真を示す図である。図22(a)、(b)、(c)、(d)、(f)に示すSEM写真は、それぞれ表1に示す成膜条件で成膜したものである。図22(e)に示すSEM写真は、表1に示す標準の成膜条件において、成膜パワーを5.4kwから半分の2.7kwに変更した成膜条件で成膜したものである。
図22(a)〜(f)を参照するに、マグネトロンスパッタ法では、すべての成膜条件において、グレイン同士が結合したサブストラクチャの構造が認められ、緻密な薄膜が形成されていることが分かる。
また、マグネトロンスパッタ法、および対向ターゲット式スパッタ法により成膜したITO膜のX線回折法による結晶性の解析を行った。
図23は、ITO膜の結晶サイズの測定結果を示す図である。ここでは、図20に示した成膜方式、成膜条件と同条件のスパッタ法により、ITO膜を成膜し、(222)回折線の半値幅(Full Width at Half Width:FWHM)からScherrerの式によって結晶サイズを算出した。以下に、Scherrerの式を示す。
Figure 0006142326
上記の数式において、Dは結晶子サイズであり、λはX線波長であり、βはピーク幅であり、θは回折線のブラッグ角度である。
図23を参照するに、対向ターゲット式スパッタ法では、成膜条件によって結晶子サイズにばらつきが見られたのに対して、マグネトロンスパッタ法による成膜では、結晶子サイズにばらつきが見られなかった。
また、図24は、ITO膜の結晶の格子定数の測定結果を示す図である。ここでは、図20に示した成膜方式、成膜条件と同条件のスパッタ法により、ITO膜を成膜し、(222)回折線のピーク位置から格子定数を算出した。格子定数の算出に用いた式を以下に示す。
Figure 0006142326
上記の数式において、aは格子定数であり、dはBraggの式による面間隔であり、h、k、lは面指数である。
図24を参照するに、In2O3(ITO)の格子定数10.118Åと比較して、マグネトロンスパッタ法、対向ターゲット式スパッタ法のいずれのスパッタ法においても格子定数が増大しており、スパッタ法により成膜されたITO膜の結晶の歪みが観察された。この結果から、マグネトロンスパッタ法により成膜されたITO膜のほうが、対向ターゲット式スパッタ法により成膜されたITO膜よりも結晶の歪みが大きいことが分かる。これは、成膜基板へのArのイオンの入射量がマグネトロンスパッタ法のほうが大きいことに起因すると考えられる。
以上の実験結果から、発明者は、対向ターゲット式スパッタ法よりも成膜基板に入射するスパッタガスイオンのエネルギーが大きいマグネトロンスパッタ法を用いて、高エネルギープロセスで、有機機能層上に電極膜を形成することにより、電極層と有機機能層の密着性を高めることができ、駆動電圧、素子寿命等の特性に優れた有機電界発光素子を製造できるものと考えた。すなわち、本実施の形態に示す平坦性を有する有機電界発光素子の陰極は、4.5[W/cm2]以上、9.0[W/cm2]以下の成膜電力密度のマグネトロンスパッタ法により成膜することが好ましい。
また、マグネトロンスパッタ法による、本実施の形態に示す有機電界発光素子の陰極成膜時の雰囲気ガス圧は、有機電界発光素子の製造過程におけるタクトタイムの観点から、0.4[Pa]以上であることが好ましく、また、電極層のシート抵抗値の観点から、1.6[Pa]以下であることが好ましい。雰囲気ガス圧を高くしすぎると、電極層のシート抵抗値が上昇してしまう。
また、図20に示した実験結果から、マグネトロンスパッタ法による、本実施の形態に示す有機電界発光素子の陰極成膜時の単位ダイナミックレートあたりのイオン電流密度は、0.2[mA/cm2]以上、0.4[mA/cm2]以下であることが好ましい。
また、マグネトロンスパッタ法による、本実施の形態に示す有機電界発光素子の陰極成膜では、ターゲットと基板との距離を、例えば、50[mm]以上、80[mm]以下で行なうことが考えられる。
また、マグネトロンスパッタ法による、本実施の形態に示す有機電界発光素子の陰極成膜では、Arガス流量を、例えば、100[sccm]以上、500[sccm]以下で行なうことが考えられる。
また、マグネトロンスパッタ法による、本実施の形態に示す有機電界発光素子の陰極成膜では、O2ガス流量を、例えば、5[sccm]以上、25[sccm]以下で行なうことが考えられる。
また、マグネトロンスパッタ法による、本実施の形態に示す有機電界発光素子の陰極成膜では、ターゲットに印加する電流のパルス周波数を、例えば、100[kHz]以上、500[kHz]以下で行なうことが考えられる。
以下では、高エネルギープロセスのマグネトロンスパッタ法の有用性を確かめるため、高エネルギープロセスによるマグネトロンスパッタ法で電極を成膜し製造した有機電界発光素子について、その駆動効率および素子寿命を測定した。
図25は、有機電界発光素子に対して、5Vの電圧を印加した場合に流れる電流の値を示す図である。有機電界発光素子は、マグネトロンスパッタ法、または対向ターゲット式スパッタ法により、有機機能層の上にITO電極を成膜し製造したものである。また、マグネトロンスパッタ法、対向ターゲット式スパッタ法の成膜条件は、表1に示す標準の成膜条件である。すなわち、マグネトロンスパッタ法の成膜電力密度は、9.0[W/cm2]である。また、縦軸の電子電流は、対向ターゲット式スパッタ法によりITO電極を成膜した場合の電子電流の値で規格化している。
図25を参照するに、高エネルギープロセスのマグネトロンスパッタ法でITO膜を有機機能層上に成膜した場合のほうが、同じ電圧を印加した場合において、大きな電流が流れている。このことから、高エネルギープロセスのマグネトロンスパッタ法により有機機能層上に電極層を成膜し製造した有機電界発光素子は、電極から有機機能層への電子注入性が高く、駆動効率が優れていることが分かる。
また、図26は、有機電界発光素子の電圧−電流密度特性を示す図である。有機電界発光素子は、プラズマ蒸着、成膜電力密度9.0[W/cm2]のマグネトロンスパッタ、成膜電力密度4.5[W/cm2]のマグネトロンスパッタのそれぞれの成膜方式により有機機能層上にITO膜を成膜し製造したものである。プラズマガン蒸着、成膜電力密度9.0[W/cm2]のマグネトロンスパッタの成膜条件は、表1に示す標準の成膜条件である。また成膜電力密度4.5[W/cm2]のマグネトロンスパッタの成膜条件は、表1に示す標準の成膜条件において、成膜電力を半分にしたものである。また、縦軸の電流密度は、成膜電力密度9.0[W/cm2]のマグネトロンスパッタ法によりITO電極を成膜し、10Vの電圧を印加した場合の電流密度の値で規格化している。
図26を参照するに、成膜電力密度が9.0[W/cm2]のマグネトロンスパッタにより有機機能層上にITO膜を成膜し製造した有機電界発光素子、および成膜電力密度が4.5[W/cm2]のマグネトロンスパッタにより有機機能層上にITO膜を成膜し製造した有機電界発光素子は、一般に低ダメージと言われているプラズマ蒸着より有機機能層上にITO膜を成膜し製造した有機電界発光素子よりも電極から有機機能層への電子注入性が高く、駆動効率が優れていることが分かる。
この実験結果から、本実施の形態にかかる有機電界発光素子の製造方法の陰極の成膜工程では、4.5[W/cm2]以上、9.0[W/cm2]以下の成膜電力密度のマグネトロンスパッタ法により、陰極を成膜することが好ましい。
また、図27は、対向ターゲット式スパッタ法により有機機能層上にITO膜を成膜し製造した有機電界発光素子の輝度半減寿命の測定結果を示す図である。縦軸の輝度半減寿命は、成膜電力密度9.0[W/cm2]のマグネトロンスパッタ法により有機機能層上にITO膜を成膜し製造した有機電界発光素子の輝度半減寿命で規格化している。図27を参照するに、対向ターゲット式スパッタ法では、成膜電力(パワー)を上げても、輝度半減寿命は向上しないことが分かる。これは、対向ターゲット式スパッタ法は、成膜基板へ入射するスパッタガスのイオン量が大きくないため、有機機能層と電極層との密着性を高めることができず、電極から有機機能層への電子注入性が向上しないからだと考えられる。
また、図28は、マグネトロンスパッタ法、対向ターゲット式スパッタ法、またはプラズマ蒸着により有機機能層上にITO膜を成膜し製造した有機電界発光素子の輝度半減寿命の測定結果を示す図である。縦軸の輝度半減寿命は、マグネトロンスパッタ法により有機機能層上にITO膜を35nm成膜した有機電界発光素子の輝度半減寿命で規格化している。
サンプルは、(1)マグネトロンスパッタ法により有機機能層上にITO膜を35nm成膜した有機電界発光素子、(2)対向ターゲット式スパッタ法により有機機能層上にITO膜を5nm成膜し、その上にマグネトロンスパッタ法によりITO膜を30nm成膜した有機電界発光素子、(3)対向ターゲット式スパッタ法により有機機能層上にITO膜を10nm成膜し、その上にマグネトロンスパッタ法によりITO膜を25nm成膜した有機電界発光素子、(4)対向ターゲット式スパッタ法により有機機能層上にITO膜を35nm成膜した有機電界発光素子、(5)プラズマ蒸着により有機機能層上にITO膜を35nm成膜した有機素子である。
また、マグネトロンスパッタ法、対向ターゲット式スパッタ法、プラズマ蒸着の各成膜条件は、表1に示す標準の成膜条件である。すなわち、マグネトロンスパッタ法の成膜電力密度は、9.0[W/cm2]である。
図28を参照するに、成膜電力密度9.0[W/cm2]のマグネトロンスパッタ法により有機機能層上に電極を成膜した有機電界発光素子は、プラズマ蒸着、または対向ターゲット式スパッタ法により有機機能層上に電極を成膜した有機電界発光素子よりも、寿命特性が優れていることが分かる。
これは、有機機能層に入射するスパッタガスのイオン量が大きいマグネトロンスパッタ法を用いて、高エネルギープロセスで上部電極を成膜することにより、有機機能層と上部電極との密着性を高めることができたためだと考えられる。
また、高エネルギープロセスのマグネトロンスパッタ法で陰極を成膜することによる下地の有機機能層へのダメージは見当たらず、陰極と有機機能層間の密着性が向上したことで、上部電極から有機機能層への電子注入性に優れた、高効率、高寿命の有機電界発光素子を製造することができるものと考えられる。
また、対向ターゲット式スパッタ法により有機機能層上に電極を成膜し、その上にさらに成膜電力密度9.0[W/cm2]のマグネトロンスパッタ法により電極を成膜した有機電界発光素子は、プラズマ蒸着、または対向ターゲット式スパッタ法のみにより有機機能層上に電極を成膜した有機電界発光素子よりも、寿命特性が優れていることが分かる。
この結果は、上部電極成膜工程に高エネルギープロセスのマグネトロンスパッタ法を用いることで、寿命特性が優れた有機電界発光素子を製造できることを示している。
また図25の実験結果を参照するに、成膜電力密度が9.0[W/cm2]のマグネトロンスパッタ法により有機機能層上にITO膜を成膜し製造した有機電界発光素子と、成膜電力密度が4.5[W/cm2]のマグネトロンスパッタ法により有機機能層上にITO膜を成膜し製造した有機電界発光素子は、ほぼ同等の電極から有機機能層への電子注入性を有することから、成膜電力密度が4.5[W/cm2]のマグネトロンスパッタにより有機機能層上にITO膜を成膜し製造した有機電界発光素子についても、成膜電力密度が9.0[W/cm2]のマグネトロンスパッタにより有機機能層上にITO膜を成膜し製造した有機電界発光素子と同様に、優れた寿命特性が得られるものと考えられる。
[まとめ]
以上まとめると、陰極の上面形状の平坦性が高い場合、具体的には、上面形状の歪度Skewが、−0.5以上、0.7以下である場合、電子輸送層上に、隙間が少ない電極膜が形成されるため、電子輸送層への酸素侵入や電極材料の侵入を抑制することができ、素子寿命や発光効率等のデバイス性能に優れた有機電界発光素子を提供することができる。上記の歪度Skewを有する陰極は、例えば、高エネルギープロセスのマグネトロンスパッタ法を用いることで、形成することができる。
[補足]
なお、上記の実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は上記の実施の形態に限定されないことはもちろんである。以下のような場合も本発明に含まれる。
(1)上記の実施の形態において、有機電界発光素子は、陰極、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極、基板からなるとしたが、本発明は必ずしもこの場合に限定されない。上部電極および下部電極からなる一対の電極と、その間に有機機能層が設けられていればよく、ここに挙げた以外の機能層を有機機能層に含む構成であってもよい。
例えば、陰極と電子輸送層との間に、陰極から電子輸送層への電子の注入を促進させる機能を有する電子注入層を設けてもよい。電子注入層の材料には、リチウム、バリウム、カルシウム、カリウム、セシウム、ナトリウム、ルビジウム等の低仕事関数金属、及びフッ化リチウム等の低仕事関数金属塩、酸化バリウム等の低仕事関数金属酸化物等が用いられる。なおITO陰極の場合、酸化してしまい期待される電子注入性が得られない。このため、例えば、AlがITOよりも先に成膜されているか、有機物と混合させるなどの条件が必要である。
また、ここに挙げた機能層の一部を含まない構成であってもよい。
(2)図3に示すマグネトロンスパッタ装置は一例であり、本発明にかかるマグネトロンスパッタ法はこの装置を用いるものに限定されない。マグネトロンスパッタ法とは、ターゲットに磁界を印加することにより、ターゲット表面に衝突し叩きだされる二次電子を磁界によるローレンツ力で捕らえ、サイクロイドまたはトロコイド運動させることにより、ターゲット付近に高密度プラズマを生成するものである。
本発明の有機電界発光素子は、例えば、家庭用もしくは公共施設、あるいは業務用の各種表示装置、テレビジョン装置、携帯型電子機器用ディスプレイ等として用いられる有機電界発光素子に利用可能である。
100 有機電界発光素子
101 陰極
102 電子輸送層
103 発光層
104 正孔輸送層
105 正孔注入層
106 陽極
107 基板
1400 マグネトロンスパッタ装置
1401 スパッタ室
1402 ガス供給系
1403 排気系
1404 バッキングプレート
1405 ターゲット
1406 磁石
1407 基台
1408 成膜基板
1409 電源

Claims (1)

  1. 基板上に下部電極を形成する第1工程と、
    前記下部電極上に有機機能層を形成する第2工程と、
    単層からなり、上面形状の歪度Skewが、−0.5以上、0.7以下である上部電極を、マグネトロンスパッタ法により、前記有機機能層上に直接形成する第3工程とを含み、
    前記第3工程において、
    電力密度は、4.5[W/cm2 ]以上、9.0[W/cm2 ]以下であり、
    雰囲気ガス圧は、0.4[Pa]以上、1.6[Pa]以下であり、
    ターゲットと基板との距離は、50[mm]以上、80[mm]以下であり、
    Arガス流量を、100[sccm]以上、500[sccm]以下で行い、
    O2 ガス流量を、5[sccm]以上、25[sccm]以下で行い、
    ターゲットに印加する電流のパルス周波数を、100[kHz]以上、500[kHz]以下で行なう
    ことを特徴とする有機電界発光素子の製造方法。
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