JP3945395B2 - 透明導電性薄膜、その形成方法、それを用いた表示パネル用透明導電性基材及び有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents

透明導電性薄膜、その形成方法、それを用いた表示パネル用透明導電性基材及び有機エレクトロルミネッセンス素子 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、透明導電性薄膜、その形成方法、それを用いた表示パネル用透明導電性基材及び有機エレクトロルミネッセンス素子に関し、さらに詳しくは、エッチングや研磨加工の後処理を施すことなく容易に形成でき、低抵抗で表面平滑性に優れ、可視光領域の低波長側で透過率が大きい透明導電性薄膜、その透明導電性薄膜を備えた表示パネル用透明導電性基材及び発光特性が優れた有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
透明導電性薄膜は、高い導電性と可視光領域での高い透過率とを有する。このため、透明導電性薄膜は、太陽電池、液晶ディスプレー素子(LCD)やエレクトロルミネッセンス素子を用いた表示パネル、その他各種受光素子等の透明電極として利用されているばかりでなく、自動車窓ガラスや建築物の窓ガラス等に用いる熱線反射膜、各種の帯電防止膜、冷凍ショーケースなどの防曇用の透明発熱体としても利用されている。
【0003】
エレクトロルミネッセンス素子(以下、EL素子ともいう)は、電界発光を利用した素子であり、自己発光のため視認性が高く、完全固体素子であるため耐衝撃性に優れることから、各種表示装置における発光素子として注目されている。
EL素子には発光材料として無機化合物を用いる無機EL素子と、有機化合物を用いる有機EL素子とがある。このうち有機EL素子は、駆動電圧を大幅に低くして小型化することが容易であるため、次世代の表示素子として実用化研究が積極的になされている。この有機EL素子の構成は、陽極/発光層/陰極の積層構造を基本とし、ガラス板等の透明絶縁基板上に透明陽極を形成する構成が通常採用されている。
【0004】
従来、透明導電性薄膜には、アンチモンやフッ素がドーピングされた酸化スズ(SnO)膜や、アルミニウムやガリウムがドーピングされた酸化亜鉛(ZnO)膜や、スズがドーピングされた酸化インジウム(In)膜などが広範に利用されている。特に、スズがドーピングされた酸化インジウム膜、すなわちIn−Sn系膜は、ITO(Indium tin oxide)膜と称され、低抵抗の膜を形成することが容易で良く用いられている。
【0005】
透明電極用のITO薄膜を形成する方法には、スプレー法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などが知られているが、多くの場合、スパッタリング法が採用されている。スパッタリング法は、蒸気圧の低い材料を用いて被成膜物質(以下、単に基板という)上に膜を形成する場合や、精密な膜厚制御が必要とされる際に有効な手法であり、操作が非常に簡便であることから広範に利用されている。
【0006】
スパッタリング法は、一般に、0.1〜10Paのアルゴン等の不活性ガス雰囲気下、基板を陽極、ターゲットを陰極として、これらの間にグロー放電を起こしてアルゴンプラズマを発生させ、プラズマ中のアルゴン陽イオンを陰極のターゲットに衝突させ、これによってターゲット成分の粒子をはじき飛ばし、該粒子を基板上に堆積させて成膜するというものである。
【0007】
この方法は、アルゴンプラズマの発生方法で分類され、高周波プラズマを用いるものは高周波スパッタリング法、直流プラズマを用いるものは直流スパッタリング法という。また、ターゲットの裏側にマグネットを配置してアルゴンプラズマをターゲット直上に集中させ、低ガス圧でもアルゴンイオンの衝突効率を上げて成膜する方法をマグネトロンスパッタ法という。通常、上記の透明導電性薄膜の製造法には、直流マグネトロンスパッタ法が採用されている。
【0008】
通常、ターゲットにはITO焼結体が用いられ、これは、粉末焼結法、即ち実質的にインジウム酸化物やスズ酸化物を所望の組成に配合し、加圧成形した後、1400℃以上の温度で焼結する方法により製造されている。
従来、酸化スズ(SnO)が10重量%程度含まれるITO焼結体、特に密度が7.0g/cm未満のITO焼結体を加工して製造されているが、最近、ITOの成膜性能を向上させるために、更に高密度なITO焼結体とこれを用いたスパッタリングターゲットの開発が検討されている。
【0009】
高密度なITO焼結体としては、密度7.02g/cm以上(相対密度で98%相当以上)で、ばらつきが1%程度であるITO焼結体の製造方法が提案されている(特許文献1参照)。このITO焼結体をスパッタリングに用いれば、初期段階は良好に成膜できるが、末期に近づくに従って、ターゲット表面にノジュールと呼ばれる黒化物が発生し、異常放電等を惹起し、性能(スパッタレート)が低下する。この原因は、焼結体の空孔分布が制御されていないためであって、長時間スパッリングした場合、その影響を無視し得ないことを意味している。
【0010】
また、ターゲットの表面粗さを均一に制御する方法が知られ、この方法で作製されたターゲットを用いれば、スパッタリング初期段階では異常放電が少なく安定した成膜速度が達成できるものの、中期から後期の段階になると新生面が現れ、ターゲット表面にノジュールが発生し、異常放電が起こって最後まで安定しないなどの問題があった。
【0011】
ところで、LCDや有機EL素子用の電極には、表面が平滑で低抵抗な透明導電性薄膜が必要とされている。特に、有機EL素子を用いたディスプレーの電極では、その上に有機化合物の超薄膜を形成するため、透明導電性薄膜には優れた表面平滑性が要求される。表面の平滑性は、一般に膜の結晶性に大きく依存する。同一組成のものでも、粒界の存在しない非晶質膜の方が表面平滑性は良好である。従来組成のITOの場合でも、スパッタ成膜時に基板を加熱せず、スパッタガス圧を高く(例えば2Pa以上)して作製すれば、非晶質膜が得られやすいので、表面平滑性に優れた膜が得られるものと期待される。
【0012】
しかし、こうして作製された非晶質ITO膜の比抵抗は、6×10−4〜8×10−4Ω・cmが限界であり、LCDや有機EL素子などのディスプレイ用に有用な、表面抵抗の低い電極を形成するためには厚く成膜しなければならない。
ところが、ITO膜の膜厚を500nmよりも厚くすると、膜の着色の問題が生じてしまう。
また、基板を加熱せずにスパッタ成膜を行っても、成膜したITO膜は、基板に入射するスパッタ粒子の運動エネルギーが高いため、局所的に温度が上がり、微細な結晶相と非晶質相の混合膜を形成してしまう。この傾向は、スパッタガス圧が低いほど顕著である。
【0013】
ITO膜中に混在する微細な結晶相は、X線回折測定のほか透過型電子顕微鏡でも容易に確認することができるが、微細な結晶相が一部で形成されると、膜の表面平滑性を悪化させてしまう。また、膜を所定の形状に弱酸でエッチング除去しなければならないが、その際には、結晶相のみが除去できずに残存することがあり、その後処理が問題となる。
【0014】
一方、完全に非晶質であるITO膜を安定して製造する方法を検討した例がいくつかある。例えば、ITOターゲットを100〜120℃(基板温度)という低温でスパッタすることにより、非晶質なITO膜を形成する方法が提案されており(特許文献2参照)、また、酸素ガスを含むスパッタ用不活性ガス中に、水素ガスを導入して成膜する方法が提案されている(特許文献3参照)。
【0015】
しかしながら、前者の方法により低温で成膜したITO膜は、非晶質であるためウエットエッチングにより容易にパターニングできるものの、電気抵抗率が上昇して高くなると共に、可視光透過率も減少して低くなるなどの欠点があり、また、後者の方法は、ITOターゲットと基板を装置に配置し、スパッタガス中に水素ガスを導入して、基板に非晶質なITO膜を成膜後、フォトリソグラフ法でエッチングし、アニールして結晶化する方法であり、充分な成膜速度で非晶質なITO膜が得られず、しかも、工程が複雑化するなどの問題点がある。
【0016】
一方、シリコン添加酸化インジウム膜、及びシリコン及びスズ添加酸化インジウム膜を、例えば、高周波スパッタリング法又は電子ビーム蒸着法でシリコン添加酸化インジウム膜、及びシリコン及びスズ添加酸化インジウム膜を成膜する方法が提案されている(特許文献4参照)。しかし、この方法によれば、膜欠陥が解消されたシリコン添加酸化インジウム膜、シリコン及びスズ添加酸化インジウム膜が得られるものの、膜の結晶構造が明記されていないことから、この方法により純アルゴンガス中で高周波スパッタ成膜しても、表面が平滑な膜を得ることはできないものと考えられる。
【0017】
また、Siをドープした酸化インジウム膜は、X線回折で測定した結果、全て結晶膜であることが報告されており(非特許文献1参照)、表面平滑性に優れた非晶質膜とはいえない。
【0018】
一方、非晶質で表面平滑性に優れた透明導電膜として、In−ZnO系が知られている(例えば、特許文献5参照)。しかしながら、このIn−ZnO系膜では、金属Znが膜中の成分として含まれているため、可視光領域の低波長側での透過率がITO薄膜と比べて劣る。また、膜中に含まれる金属ZnやZnOは、空気中の炭酸ガスや水分と反応しやすいことが一般に知られており、このような原因により特性が安定しないなどの問題がある。よって、LCDや有機EL素子の電極として用いるには不十分である。
【0019】
ところで、近年、EL素子に透明な陰極を用い、発光を陰極側から取り出す試みがなされている。陽極と共に陰極も透明にすれば、全体として透明な受光素子を得ることができる。また、透明な発光素子の背景色として任意な色を採用すれば、発光時以外もカラフルなディスプレイとすることが可能となり、装飾性が改良される。背景色として黒を採用した場合には、発光時のコントラストが向上する。カラーフィルターや色変換層を用いる場合には、これらを発光素子の上に置くことができるため、これらの層を考慮することなく素子を製造することができる。そのため、例えば、電極形成の際に基板温度を高くすることができ、これにより電極の抵抗値を下げることができる等の利点がある。
【0020】
また、このような事情から、最近では透明陰極を用いた有機EL素子を作成する試みがなされている。例えば、陽極と陰極との間に有機発光層を含む有機層を備え、陰極を電子注入金属層と非晶質透明導電層とによって構成し、電子注入金属層が有機層と接する構造の有機EL素子が提案されている(特許文献6参照)。また、陰極を透明にすると共に、陽極としてCr、Mo、W、Ta、Nbなどの光反射性の金属膜を用いて、陰極から効率的に光を取り出すように工夫した有機EL素子が提案されている(特許文献7参照)。
しかしながら、これらのEL素子は、いずれも透明導電性薄膜としてIn−ZnO系膜を用いているため、可視光領域の低波長側での透過率がITOと比べて劣るだけでなく、特性が安定しないなどの問題がある。
【0021】
近年、ますます高精細化が進むLCDや有機EL素子などの各種表示パネルにおいて、表面平滑性に極めて優れ、低抵抗で透過率が高い透明導電性薄膜が不可欠となっており、大型のターゲットを用いて、スパッタリング初期から末期まで成膜速度を低下させずに、表面が平滑で、低抵抗かつ透過率が高い透明導電性薄膜を容易に形成できる方法が切望されていた。
【0022】
【特許文献1】
特開2000−144393号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開平4−48516号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】
特開平3−64450号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】
特開昭62−202415号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】
特開平6−234565号公報(特許請求の範囲)
【特許文献6】
特開平10−162959号公報(特許請求の範囲)
【特許文献7】
特開2001−43980号公報(特許請求の範囲)
【非特許文献1】
Appl.Phys.Let.64巻(1994年)p.1395
【0023】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、前述した従来技術の問題に鑑み、エッチングや研磨加工の後処理を施すことなく容易に形成でき、低抵抗で表面平滑性に優れ、可視光領域の低波長側で透過率が大きい透明導電性薄膜、その透明導電性薄膜を備えた表示パネル用透明導電性基材及び発光特性が優れた有機EL素子を提供することにある。
【0024】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、スパッタリング法によって種々の組成の透明導電性薄膜を形成し、得られた膜の結晶構造、電気特性、光学特性を検討したところ、特定の条件で酸化インジウムを主成分としシリコンを含有する透明導電性薄膜、或いは酸化インジウムを主成分としシリコン、及びスズ又はタングステンを含有する透明導電性薄膜を形成すると得られた膜は非晶質となり、そのために表面平滑性に優れ、また、比抵抗も9×10−4Ω・cm以下の低電気抵抗率を有すると共に、高可視光透過率を有することから、有機EL素子やLCDの透明電極膜として有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0025】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、酸化インジウムを主成分とし、シリコン及びタングステンを含有する透明導電性薄膜であって、その構造が実質的に非晶質であり、かつシリコンの含有量がインジウムとシリコンとの合計量に対して0.5〜13原子%であり、タングステンの含有量がタングステンとインジウムとの合計量に対して0.2〜15原子%であることを特徴とする透明導電性薄膜が提供される。
【0026】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、さらに、ドーパントとしてスズを含有することを特徴とする透明導電性薄膜が提供される。
【0027】
また、本発明の第3の発明によれば、第2の発明において、スズの含有量が、スズとインジウムの合計量に対して0.5〜15原子%であることを特徴とする透明導電性薄膜が提供される。
【0029】
また、本発明の第の発明によれば、第1〜の発明において、透明導電性薄膜の比抵抗が、9.0×10−4Ω・cm以下であることを特徴とする透明導電性薄膜が提供される。
【0030】
また、本発明の第の発明によれば、第1〜の発明において、透明導電性薄膜の中心線平均粗さ(Ra)が、2.5nm以下であることを特徴とする透明導電性薄膜が提供される。
【0031】
また、本発明の第の発明によれば、第1〜の発明において、透明導電性薄膜は、平均可視光(400〜800nm)の透過率が85%以上であることを特徴とする透明導電性薄膜が提供される。
【0032】
さらに、本発明の第の発明によれば、第1〜の発明において、透明導電性薄膜の結晶化温度が180℃以上であることを特徴とする透明導電性薄膜が提供される。
【0033】
一方、本発明の第の発明によれば、第1〜の発明において、スパッタリング装置内に、基板と、ターゲットとを配置した後、酸素ガスを含む不活性ガス雰囲気中でスパッタリングすることによって、基板上にシリコンを含有する酸化インジウムよりなる非晶質の透明導電性薄膜を成膜することを特徴とする透明導電性薄膜の形成方法が提供される。
【0034】
また、本発明の第の発明によれば、第の発明において、基板が100〜300℃に加熱されることを特徴とする透明導電性薄膜の形成方法が提供される。
【0035】
また、本発明の第10の発明によれば、第の発明において、不活性ガスが、酸素を1%以上含有するアルゴンと酸素の混合ガスであることを特徴とする透明導電性薄膜の形成方法が提供される。
【0036】
また、本発明の第11の発明によれば、第の発明において、透明導電性薄膜が、酸素ガスを含む不活性ガス雰囲気でスパッタリング装置内を0.1〜1Paに設定後、直流スパッタリングで成膜されることを特徴とする透明導電性薄膜の形成方法が提供される。
【0037】
また、本発明の第12の発明によれば、第の発明において、ターゲットが、タングステン添加酸化インジウム焼結体のターゲット上に、複数枚のシリコンのチップを略均等の間隔で貼着したものであることを特徴とする透明導電性薄膜の形成方法が提供される。
【0038】
さらに、本発明の第13の発明によれば、第の発明において、ターゲットが、シリコンをタングステンとともに添加した酸化インジウム焼結体であることを特徴とする透明導電性薄膜の形成方法が提供される。
【0039】
一方、本発明の第14の発明によれば、第1〜のいずれかの発明に係り、透明導電性薄膜をガラス基板、石英板、樹脂板又は樹脂フィルムから選択されるいずれかの基材上に成膜してなる表示パネル用透明導電性基材が提供される。
【0040】
さらに、本発明の第15の発明によれば、第14の発明において、基材には、絶縁層、半導体層、ガスバリア層又は保護層の少なくとも1層が形成されていることを特徴とする表示パネル用透明導電性基材が提供される。
【0041】
一方、本発明の第16の発明によれば、第1〜のいずれかの発明に係り、透明導電性薄膜を陽極及び/又は陰極に用いてなる有機エレクトロルミネッセンス素子が提供される。
【0042】
また、本発明の第17の発明によれば、第16の発明において、陽極を光反射性薄膜で構成し、陰極を透明導電性薄膜又は透明導電膜と金属薄膜から構成したことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子が提供される。
【0043】
さらに、本発明の第18の発明によれば、第14又は15の発明において、表示パネル用透明導電性基材の陽極上に有機層、陰極を形成してなる有機エレクトロルミネッセンス素子が提供される。
【0044】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の表面平滑性に優れた透明導電性薄膜、その形成方法、それを用いた表示パネル用透明導電性薄膜及び有機EL素子について詳細に説明する。
【0045】
1.透明導電性薄膜
本発明の透明導電性薄膜は、酸化インジウムを主成分とし特定量のシリコンをドーパントとして含有し、その構造が実質的に非晶質な透明導電性薄膜である。また、酸化インジウムを主成分とし、特定量のシリコンと、特定量のスズ及び/又はタングステンをドーパントとして含有し、その構造が実質的に非晶質である透明導電性薄膜である。
【0046】
本発明において、構造が実質的に非晶質であるとは、膜中の結晶性をCuKα線を利用したX線回折測定で調べたとき、非晶相に起因するハローパターンのみが観察され結晶相に起因する回折ピークが認められないことを意味している。例えば、酸化インジウム結晶相であれば、2θが22度、31度、35度、37度、46度、52度、56度付近のいずれにも回折ピークが存在しないことが重要である。
【0047】
これまで、太陽電池や各種表示パネルには、透明導電性薄膜としてITO薄膜、即ち、スズをドープした酸化インジウム薄膜が専ら使われてきたが、その導電機構は、以下のように説明されている。スズは4価のイオンになりやすく、酸化インジウムの3価のインジウムイオン位置へ4価のスズが置換固溶すると、キャリア電子が放出され、導電性が向上する。
【0048】
また、酸化インジウム中には酸素欠陥も生じやすく、これによってもキャリア電子が放出される。そのため、ITOのキャリア電子密度を上げるためには、スズの添加だけでなく適当な量の酸素欠陥が必要である。しかし、酸素欠陥が増加するとキャリア電子の移動度が低下するため、電気抵抗率を最小にするにはスズと同様に4価の原子価をとりやすく、酸化インジウムのインジウム位置に置換するとキャリア電子を放出する元素をドーパントとして採用することが考えられ、その有力な元素がシリコンである。
【0049】
In3+とSn4+のイオン半径は、それぞれ0.81Å、0.71Åでありインジウムイオンよりもスズイオンの方が若干小さい。しかし、Si4+のイオン半径は0.41Åであり、In3+と比べると極めて小さい。よって、酸化インジウムのインジウムサイトにシリコンが置換固溶すると、スズが置換固溶する場合と比べて格子の歪みが大きく、非晶質膜が得られやすいと考えられる。
【0050】
そこで、本発明では、スズの代わりにシリコンを酸化インジウムへのドーパントとして用い、このシリコンの含有量を、シリコンとインジウムの合計量に対して0.5〜13原子%、好ましくは1〜12原子%、さらに好ましくは3〜11原子%とすることで膜の導電性を向上させた。シリコンの含有量が0.5原子%未満であると非晶質の膜が得られにくく、一方、13原子%を超えると比抵抗が大きくなりすぎるので好ましくない。
【0051】
本発明では、酸化インジウムを主成分としシリコンをドーパントとして含有した透明導電性薄膜に、さらにスズを含有させることができる。上記の導電機構からすれば、従来の透明導電性薄膜である酸化インジウムを主成分としスズをドーパントとして含有したITO薄膜に、さらにシリコンを含有させたものであるということもできる。
【0052】
スズは、スズとインジウムの合計に対して0.5〜15原子%、好ましくは1〜13原子%、さらに好ましくは3〜10原子%含有させることで膜の導電性を向上させることができる。スズの含有量が0.5原子%未満であると非晶質の膜が得られにくく、一方、15原子%を超えると比抵抗が大きくなりすぎるので好ましくない。
【0053】
先にシリコンやスズを酸化インジウムにドープした場合について説明したが、タングステンを酸化インジウムにドープした場合でも、酸化インジウムの3価のインジウムイオン位置へ4〜6価のタングステンが置換固溶して、キャリア電子が放出されるので、同様に導電性向上に寄与させることができる。
【0054】
このため、本発明では、上記のシリコンをドープした酸化インジウム、或いはシリコンとスズをドープした酸化インジウムに、さらにタングステンを含有させて非晶質の透明導電性薄膜とすることができる。
タングステンは、タングステンとインジウムの合計量に対して0.2〜15原子%、好ましくは1〜13原子%、さらに好ましくは3〜10原子%含有させることで膜の導電性を向上しうる。タングステンの含有量が0.2原子%未満であると非晶質の膜が得られにくく、一方、15原子%を超えると比抵抗が大きくなりすぎるので好ましくない。
【0055】
この透明導電性薄膜の非晶質構造の結晶化温度は、180℃以上、好ましくは180〜450℃である。結晶化温度とは、高温X線回折法により測定される透明導電性薄膜の非晶質構造が結晶化するときの温度であり、本発明では、薄膜を室温から3℃/minの昇温速度で加熱しながらX線回折測定を行い、回折ピークが出現した温度を指すものとする。
【0056】
本発明の透明導電性薄膜の比抵抗は、9.0×10−4Ω・cm以下、好ましくは6.0×10−4Ω・cm以下であり、成膜条件を最適化すれば、3×10−4Ω・cm以下とすることも可能である。従来の非晶質ITO膜の比抵抗は、6×10−4〜8×10−4Ω・cmが限界であり、しかも前記のように特殊な成膜法を必要とする。本発明によれば、LCDや有機EL素子のディスプレイ用の透明電極として好適な表面抵抗の低い電極膜が提供される。比抵抗が、9.0×10−4Ω・cmを超えると、厚く成膜しなければならず好ましくない。
【0057】
本発明の透明導電性薄膜の膜厚は、100〜500nmであり、好ましくは150〜450nm、さらに好ましくは200〜400nmである。100nm未満であると十分な比抵抗が確保できず、一方、500nmを超えると膜の着色の問題が生じてしまうので好ましくない。
【0058】
また、透明導電性薄膜の平均可視光(400〜800nm)での透過率は85%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である。平均透過率が85%未満であると有機EL素子などへの適用が困難となる。
【0059】
本発明の透明導電性薄膜の大きな特徴は、その表面が平滑であること、すなわち、膜表面の中心線平均粗さ(Ra)が2.5nm以下であることにあり、成膜条件を最適化すれば、Raが1.0nm以下の極めて平滑な薄膜が提供される。
【0060】
ここで、中心線平均粗さ(Ra)とは、原子間力顕微鏡で測定し、具体的には、膜表面の任意の10箇所に対して、それぞれ1μm×1μmの領域内で測定し、その平均値を算出したものである。Raが2.5nmを超えると、特に、有機EL用の電極として用いる場合、この上に有機化合物の超薄膜を形成できなくなるため、膜のエッチングや研磨などによる平滑化処理の工程を付加しなければならず、好ましくない。
【0061】
2.透明導電性薄膜の形成方法
本発明の透明導電性薄膜は、スパッタリング装置内に、基板と、シリコン添加酸化インジウム焼結体などのターゲットとを配置した後、酸素ガスを一定量含む不活性ガス雰囲気中でスパッタリングすることによって形成される。
【0062】
すなわち、本発明の方法は、(1)シリコン添加酸化インジウム焼結体ターゲットなどのターゲットを用い、(2)特定の基板温度、圧力、酸素濃度などのスパッタ条件を採用することで、基板上にシリコンを含有する酸化インジウムよりなる非晶質の透明導電性薄膜を形成する方法である。
【0063】
(1)ターゲット
本発明においてターゲットは、シリコンが添加された酸化インジウム焼結体をベースとするものである。これには単一ターゲットと複合ターゲットがあるが、いずれも従来のターゲットより成膜速度、膜の均一性を向上せしめることができる。以下、一例として、酸化インジウム焼結体、スズ添加酸化インジウム焼結体又はタングステン添加酸化インジウム焼結体のいずれかのターゲット上に、複数枚のシリコンのチップを間隔が略均等になるように貼着した複合ターゲットを中心に説明する。
【0064】
本発明の透明導電性薄膜を形成するのに用いられる複合ターゲットは、酸化インジウム焼結体などのターゲットのエロージョン上に、複数枚のシリコンのチップを間隔が略均等になるように貼りつけて作製される。このような複合ターゲットは、酸化インジウムターゲットに対してシリコンチップの表面積比率を変えることにより、膜中のシリコン含有量を所望な範囲で変化させることができるので、得られる透明導電性薄膜の非晶質性や表面平滑性が膜組成や成膜条件とどのように関連しているかを詳細に調べることができる。
【0065】
ベースとなる酸化インジウム焼結体ターゲットは、実質的に酸化インジウムからなる焼結体である。実質的にとは、酸化インジウムが99.99%以上であって、それ以外の不純物を殆ど含まないことを意味する。また、スズ添加酸化インジウム焼結体ターゲット又はタングステン添加酸化インジウム焼結体ターゲットは、酸化インジウムにスズ又はタングステンを添加した焼結体から作製したターゲットである。
【0066】
前記のとおり、焼結体は、酸化インジウム以外の成分、すなわちスズ又はタングステンをドーパントとして含有することができる。スズの含有量は、0.5〜15原子%で、タングステンの含有量は、0.2〜15原子%(いずれもインジウムと各ドーパントとの合計量に対して)であることが好ましい。また、本発明の目的を損なわない範囲内で、モリブデンや、レニウム、ハフニウム、ゲルマニウム、ジルコニウム、チタン、銀、金、パラジウム、白金、銅などが添加されても良い。
【0067】
酸化インジウム焼結体を製造する工程は、原料粉末から成形体を形成する工程と、該成形体を炉に入れて焼結させる工程に大別できる。
原料粉末から成形体を形成する工程では、酸化インジウムを原料粉末として用い、必要により酸化スズ、酸化タングステンを混合し成形する。これに続く焼結工程は、得られた成形体を、炉内の炉床板、セッター上に載置する工程、および酸素雰囲気下に焼結する工程に分かれる。
【0068】
原料粉末である酸化インジウムとしては、平均粒径が0.5μm以下、好ましくは0.4μm以下(粒度分布は、粒径0.1〜0.8μmの粒子が85重量%以上、更に好ましくは、95%以上を占める)の粉末を用いる。
【0069】
酸化スズや酸化タングステンを用いる場合は、平均粒径が2.5μm以下の粉末を原料とすることが好ましい。原料粉末は、公知の装置を用いて混合、撹拌でき、バインダー(PVA)などを添加して造粒した後、10〜100μmの範囲に整えればよい。こうして得た顆粒は、例えば1000kg/cm以上の圧力で加圧成形して成形体とする。
【0070】
本発明の焼結工程においては、使用する焼結炉の種類は特に限定されないが、通常、加熱雰囲気を制御し易い電気炉が採用される。予め、成形体の下面と炉床板との間及び成形体の上面と天井板との間に、酸素ガスが流通するに十分な間隔を設けて、成形体を炉内に置き、次いで、1000℃以上の温度で、該成形体の表面に酸素ガスを流通させることにより、炉内の酸素雰囲気を置換しながら、1400℃以上の焼結温度に保持し、焼結させる。
【0071】
炉内の温度を上げ、1000℃になったところで、常圧において成形体の上部及び下部の表面に酸素ガスの流通を開始し、炉内の酸素雰囲気を置換させつつ、1400℃を超えたら、焼結温度で1時間以上、好ましくは5〜20時間保持する。その後、酸素ガスの流通を実質的に止めて、最後に冷却する。焼結中、成形体内部は、温度のばらつきを20℃以下に抑えるように注意する。
【0072】
流通時間は、小型の焼結体であれば30分未満でもよいが、近年、特に大型化している酸化インジウムターゲット、例えば、焼結体サイズが一辺300mm、厚さ5mmを超すような大型で厚いものは、全体の温度分布が制御しにくくなるので、好ましくは60分以上かけて保持させる。
【0073】
これにより、平面方向、厚み方向がおおむね均一に加熱され、焼結密度や平均空孔数がばらつくのを大幅に低減でき、更には焼結収縮時、加熱が不均一になって発生した反りも、焼結体の自重によって軽減される。
本焼結工程の後、加熱をやめ、実質的に酸素ガスの流通を止めて冷却工程に移る。冷却工程を終えてから、再度、焼結温度にして焼結体を加熱する再焼結を行ってもよい。
【0074】
上記の方法で製造された焼結体は、平面研削等により加工し、所定の寸法にしてから、バッキングプレートに貼着することにより、本発明の方法で用いる複合ターゲットのベースとすることができる。必要により数枚の焼結体を分割形状にならべても良い。
【0075】
シリコンのチップは、単結晶シリコン、多結晶シリコンなどの結晶シリコンを一辺が1〜10mm、厚さが0.5〜3mmに加工したもので、通常、半導体の基板などとして使用されているチップの他、オフスペック(仕様外)のチップなども用いることができる。これを前記の酸化インジウム焼結体ターゲット上に、間隔が略均等になるように貼り着ければ、本発明の複合ターゲットが得られる。
【0076】
なお、上記複合ターゲットでの酸化インジウムターゲットとシリコンチップの表面積比率を変えることにより、膜中のシリコン含有量を所望な範囲で変化させることができる。このとき、作製される透明導電性薄膜の構造や結晶性は、膜中のシリコン含有量、基板加熱温度、不活性ガス雰囲気中の酸素分圧、成膜速度等のスパッタ成膜条件に依存する。
【0077】
また、スズ又はタングステンを含む酸化インジウム焼結体ターゲット上にシリコンチップを配置した複合ターゲットを用いて、直流スパッタリング法で1%以上の酸素を含むアルゴンと酸素の混合ガスをスパッタガスとして用いれば、酸化インジウムを主成分としてシリコンとスズ又はタングステンを含有する結晶質を含まない透明導電性薄膜を得ることができる。
【0078】
以上、複合ターゲットを中心に説明したが、単一ターゲットの場合は、酸化インジウム焼結体を製造する際にシリコンを添加すればよく、特別な条件を必要とすることなく得ることができる。
シリコンとしては、平均粒径が2.5μm以下である二酸化珪素などの粉末を原料とすることが好ましい。原料粉末は、公知の装置を用いて酸化インジウムと混合、撹拌し、バインダー(PVA)などを添加して造粒した後、10〜100μmの範囲に整え、こうして得た顆粒を例えば1000kg/cm以上の圧力で加圧成形し、得られた成形体を上記の要領で焼成する。
【0079】
(2)スパッタ条件
本発明により透明導電性薄膜を形成するには、スパッタガスにはアルゴンと酸素の混合ガスを用い、直流スパッタリングを用いることが必要である。酸素ガスは、1%以上、好ましくは1〜5%導入することが重要である。酸素ガスが1%未満では、得られる膜の透明率が低く、膜の表面からドーパントが離脱し易くなるため組成ずれを起こし、一方、5%を超えると抵抗値が上がってしまい好ましくない。
【0080】
また、スパッタリング装置内は、0.1〜1Pa、特に0.3〜0.8Paの圧力にしてスパッタリングすることで非晶質の膜を形成され易くし、表面平滑性を良好なものとすることができる。0.1Pa未満であると非晶質化しにくく、1Paを超えると緻密な膜が得られず好ましくない。
【0081】
本発明では、基板を加熱しない成膜も可能であるが、基板を100〜300℃、特に100〜200℃に加熱することによっても非晶質の膜を得ることができる。この効果はドーパントとして、シリコンを添加することが効果的であるが、シリコンに加えてタングステンを添加させると更に効果的である。
【0082】
本発明の透明導電性薄膜の形成方法によれば、特定条件(基板温度、圧力など)を採用した直流スパッタリングで酸化インジウムにシリコンを添加させるため、スズを添加する場合よりも格子の歪みが大きくなるため膜の結晶化温度が上がり、非晶質構造の膜が得られやすいという特徴がある。
【0083】
Si4+のイオン半径は0.39ÅとIn3+のイオン半径の0.92Åと比べて小さいため、シリコンが酸化インジウムに添加されると格子がひずみやすくなるのである。また、酸化インジウムにタングステンを含ませると、In−O間の共有結合性が増大して、非晶質構造を安定に得ることができる。上記以外の成膜条件に依存せず、安定して非晶質構造の膜が得られる。またタングステン添加により膜の比抵抗も下がる。
【0084】
先に、シリコン及びスズ添加酸化インジウムからなる透明導電性薄膜を高周波スパッタリングにより作製する従来技術を説明したが、このような高周波スパッタリングによる方法では、非晶質で平滑な構造の透明導電性薄膜を安定的に得ることが不可能である。
【0085】
本発明者は、酸化インジウムに酸化シリコンを含む焼結体ターゲットから、純アルゴンガスをスパッタリングガスとして用い、高周波スパッタリングで成膜を行う実験を試みたが、基板をヒーター加熱しなくても、表面凹凸の激しい結晶性薄膜が得られた。この傾向は、酸化インジウムに酸化シリコンと酸化スズを含む焼結体ターゲットを用いても同じであった。
【0086】
一般に、高周波スパッタリングは、直流スパッタリングと比べてプラズマのエネルギーが著しく高いことが知られており、高周波スパッタリングによって得られる膜は結晶性が高くなる。結晶性の高い膜は、言うまでもなく膜の表面の凹凸が激しく平滑性は悪いものとなる。また、高周波スパッタリングを純アルゴンガス中で行ない、成膜ガス中に酸素を含ませない成膜条件下では、膜中に取り込まれる酸素がターゲットから供給される酸素の一部のみであるため、酸素欠損の極めて多い酸化物薄膜になってしまう。
【0087】
酸化インジウムの酸素欠損量が多くなるとIn−Oの結合性が金属的になり、成膜中にプラズマから受ける熱の効果で容易に結晶成長しやすくなる。つまり、高周波スパッタリングで、スパッタガス中に酸素を導入せず純アルゴンのみで成膜すると、基板をヒーター加熱しなくても結晶膜の良い膜になってしまい、膜表面の凹凸は激しいものとなる。非晶質膜の得られる条件は、膜にシリコンが含まれるだけでなく、成膜法としてプラズマエネルギーの低い直流スパッタリングを採用し、スパッタガスに酸素を1%以上混合したアルゴンと酸素の混合ガスを用いることが必要不可欠ということができる。
【0088】
シリコンを含む酸化インジウム膜、あるいは、シリコンとスズを含む酸化インジウム膜の場合は、純アルゴンガスをスパッタガスに用いた高周波スパッタリングで作製すると結晶膜が得られてしまうが、薄膜中にシリコンだけでなくタングステンも含ませた酸化インジウムにすると、このような成膜条件下でも安定して非晶質膜を得ることができる。しかもタングステンの添加により膜の比抵抗をさらに低くすることができる。
【0089】
本発明者は、酸化インジウムにタングステンが含まれると、In−O間の共有結合性が増加することを、DV−Xα法による分子軌道計算法で材料物性を計算することにより確認した。In−O間の共有結合性が増大すると、結晶化温度が上がることが推測され実験でも確認できた。
In膜の結晶化温度は約150℃であるが、Wのみを0.6原子%含ませると結晶化温度は約200℃まで上昇することが、膜の高温X線回折測定で明らかとなった。よって、薄膜の組成をシリコンだけでなくタングステンも含ませた酸化インジウムとすることで、表面の平滑な非晶質膜が安定して得られるようになるといえる。
【0090】
シリコンが添加された酸化インジウムでは、例えば、ガス圧が低くても完全に非晶質膜が得られ、更に基板を加熱しても非晶質膜が得られやすい。つまり、膜中のシリコン量が多くなると膜の結晶化温度が高くなるため、前記のようにスパッタによって実質的に基板温度が上がっても、また基板が加熱されても、その膜組成に対応した結晶化温度以下であれば、得られた膜は非晶質構造をとる。
【0091】
従来のITOでは、非晶質の膜を得るのに基板を加熱せずに、しかもスパッタ粒子のエネルギーが小さくなるように高ガス圧下でスパッタ成膜する必要があった。しかし、本発明のようにシリコンが添加された酸化インジウムでは、例えば、ガス圧が低くても、完全に非晶質膜が得られやすい。つまり、膜中のシリコン量が多くなると膜の結晶化温度が高くなるため、前記のようにスパッタによって実質的に基板温度が上がっても、また基板が加熱されても、その膜組成に対応した結晶化温度以下であれば、得られた膜は非晶質構造をとるのである。
【0092】
このようにして、直流スパッタリング法の採用、ドーパント含有量、基板温度、圧力、酸素ガス濃度の各条件を上記の範囲内で様々に変化させれば、酸化インジウムを主成分としてシリコンを含有する結晶層を含まない透明導電性薄膜、或いは酸化インジウムを主成分としてシリコン、及びスズ又はタングステンを含有する結晶層を含まない透明導電性薄膜を得ることができる。
【0093】
3.表示パネル用透明導電性基材
本発明の表示パネル用透明導電性基材は、上記の透明導電性薄膜をガラス板、ガラス基板、石英板、樹脂板又は樹脂フィルムから選択されるいずれかの基材上に成膜したものである。
【0094】
表示パネルは、LCD、PDP、或いはEL素子などであり、本発明の表示パネル用透明導電性基材は、透明導電性薄膜を表示パネルの陽極及び/又は陰極として機能させるものである。また、光透過性の支持体を兼ねることから、基材としては一定の強度と透明性を有する必要がある。
【0095】
樹脂板もしくは樹脂フィルムを構成する材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリアリレート、ポリカーボネート(PC)などが挙げられ、これらの表面にアクリル樹脂が被覆された構造の樹脂板もしくは樹脂フィルムでもよい。
【0096】
基材の厚さは、特に限定されるわけではないが、ガラス基板や石英板であれば、0.5〜10mm、好ましくは1〜5mmであり、樹脂板又は樹脂フィルムの場合は、0.1〜5mm、好ましくは1〜3mmとされる。この範囲よりも薄いと強度が弱く取り扱いも難しい。一方、この範囲よりも厚いと透明性が悪いだけでなく重量が大きくなり好ましくない。
【0097】
上記基材には、絶縁層、半導体層、ガスバリア層又は保護層のいずれかを形成することができる。絶縁層としては、酸化シリコン(Si−O)膜または窒化酸化シリコン(Si−O−N)膜などがあり、半導体層としては、薄膜トランジスター(TFT)などがあり主にガラス基板に形成され、ガスバリア層は、水蒸気バリア膜などとして樹脂板もしくは樹脂フィルムに形成される。保護層は、基材の表面を傷や衝撃から守るためのものであり、シリコン系、チタン系、アクリル樹脂系など各種コーテングが使用される。なお、基材に形成しうる層はこれらに限定されず、導電性の薄い金属膜などを施すこともできる。
【0098】
本発明の表示パネル用透明導電性基材は、比抵抗、光透過率、表面平坦性などの面で優れた特性をもつ透明導電性薄膜が成膜されているため、各種の表示パネルの構成部品として極めて有用である。
【0099】
4.有機エレクトロルミネッセンス素子
本発明の有機EL素子は、前記の透明導電性薄膜を陽極及び/又は陰極に用いたものであり、(A)陽極を光反射性薄膜で構成し、陰極を透明導電性薄膜又は透明導電膜と金属薄膜から構成したタイプと、(B)陰極を透明導電性薄膜とした前記の表示パネル用透明導電性基材の上に有機層と陽極を形成したタイプとがある。
【0100】
本発明の有機EL素子の構造を図7に示す。陽極2と陰極3の間に発光層7を含む有機層6を備え、その陽極2及び/又は陰極3が本発明の透明導電性薄膜4で構成されるか、透明導電性薄膜4と金属薄膜5とで構成されている。
【0101】
有機層6は陽極2から供給される正孔と陰極3から供給される電子との再結合によって発光する発光層7のみであっても良いが、更に正孔注入層8及び正孔輸送層9などを積層した多層構造であっても良い。また、透明導電性薄膜4の上には絶縁層10、基板1には保護膜11が設けられている。
有機層6は、陽極2と陰極3の間にあり、(1)電界印加時に陽極2側から正孔及び陰極3側から電子を注入することができる機能、(2)注入した電荷(電子と正孔)を電界の力で移動させる輸送機能、及び(3)電子と正孔の再結合の場を発光層7の内部に提供し、これを発光につなげる発光機能などを有している。
正孔注入層8と正孔輸送層9は、正孔伝達化合物からなる層であって、陽極2より注入された正孔を発光層7に伝達する機能を有する。この正孔注入層8と正孔輸送層9を陽極2と発光層7の間に介在させることで、より低い電界で多くの正孔を発光層7に注入することができる。
【0102】
陰極3は、基本的に本発明の透明導電性薄膜4で構成すればよいが、透明導電性薄膜4と金属薄膜5の2層構造(積層体)とすることもできる。金属薄膜5は、発光層7を含む有機層6に良好に電子を注入する為の層である。陰極3側から発光層7に注入された電子は、発光層7と正孔輸送層9の界面に存在する電子の障壁により発光層7内の界面近くに蓄積されて、EL素子の発光効率を向上させる。透明な発光素子を得るためには、金属薄膜5の光透過率は50%以上が好ましく、60%以上が更に好ましい。その場合に金属薄膜5は、膜厚0.5〜20nm程度の超薄膜とすることが望ましい。かかる金属薄膜5としては、仕事関数が3.8eV以下の金属、例えばMg、Ca、Ba、Sr、Yb、Eu、Y、Sc、Li等の金属またはこれらの合金が好ましい。
【0103】
一方、陽極2は、仕事関数が4.4eV以上、好ましくは4.8eV以上の導電性を示す金属であるか、透明導電性薄膜又はこれらの積層体が好ましい。導電性を示す金属は、必ずしも透明である必要はなく、黒色のカーボン層等をコーティングしてもよい。好適な金属としては、例えば、Au、Pt、Ni、Pd、Cr、Wを挙げることができ、透明導電性薄膜の材料としては、もちろん本発明のIn−Si−O、In−Si−Sn−O、In−Si−W−O、又はIn−Si−Sn−W−Oの使用が有用である。透明導電性薄膜の材料として、本発明のIn−Si−O、In−Si−Sn−O、In−Si−W−O、又はIn−Si−Sn−W−Oを使用した場合は、基板付きの表示パネル用透明導電性基材に相当する。
【0104】
また、積層体としては、例えば、AuとIn−Si−Oの積層体、PtとIn−Si−Oの積層体、In−Si−W−OとPtの積層体などを挙げることができる。また、陽極は、有機層との界面が仕事関数4.8eV以上であれば良いため、陽極を二層とし、有機層と接しない側に仕事関数4.8eV以下の導電性膜を用いてもよい。この場合、Al、Ta、Nb等の金属やAl合金、Ta−W合金等の合金を用いることができる。また、ドープされたポリアニリンやドープされたポリフェニレンビニレン等の導電性高分子や、a−Si、a−SiC、a−Cなどの非晶質半導体なども用いることができる。更には、黒色の半導体性の酸化物であるCr、Pr、NiO、Mn、MnO等を用いることができる。
【0105】
(A)陽極を光反射性薄膜で構成し、陰極を透明導電性薄膜又は透明導電性薄膜と金属薄膜から構成した有機EL素子
このタイプは、本発明の好ましい有機EL素子であり、例えば図7において、陽極2が光反射性薄膜(例えば、クロム)で構成され、陰極3が本発明の透明導電性薄膜4で構成されるか、又は透明導電性薄膜4と金属薄膜5で構成されたものである。陰極3が本発明の透明導電性薄膜4であることから、この有機EL素子は、主として陰極3側から発光を効率的に放出させることができる。
【0106】
(B)陰極を透明導電性薄膜とした前記の表示パネル用透明導電性基材の上に有機層と陽極を形成した有機EL素子
この有機EL素子は、全体が透明なタイプの有機EL素子であり、透明の絶縁性基板1上に形成されている前記の表示パネル用透明導電性基材を用いて、これに有機層や陽極2などを形成している。この場合に透明の絶縁性基板1としてはガラス板やガラス基板を用いることができるが、樹脂フィルム、もしくは酸化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜などの水蒸気バリア膜を覆ったバリア膜付樹脂フィルムが好ましい。
【0107】
本発明の有機EL素子には、初期における平均発光輝度が大きく、また輝度半減期が長いという特徴がある。
【0108】
【実施例】
以下、実施例に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、下記に示す実施例のうち実施例1−22は参考例である。
【0109】
透明導電性薄膜の物性は、次の方法で測定した。
(1)透明導電性薄膜の組成は、基板を石英ガラスからポリイミドフィルムに変えて、基板以外の成膜条件を全く同じにして作製した膜についてICP発光分析を行い、決定した。ポリイミドフィルムにはシリコン、インジウム、スズ、タングステン元素が実質的に含まれていないことをICP発光分析にて確認した。
(2)膜中の結晶性は、CuKα線を利用したX線回折測定および透過型電子顕微鏡、電子線回折で調べた。
(3)薄膜の結晶化温度は、高温X線回折測定で調べた。膜を室温から3℃/minの昇温速度で加熱しながら、X線回折測定を行い、回折ピークが出現する温度を結晶化温度とした。
(4)透明導電性薄膜の比抵抗は、四探針法で測定し、基板を含めた光透過率は分光光度計で測定した。
(5)膜表面の中心線平均粗さ(Ra)は、原子間力顕微鏡で測定した。Raは、膜表面の任意の10箇所に対して、それぞれ1μm×1μmの領域内で測定し、その平均値を算出した。
【0110】
(実施例1〜6)
純度99.99%のIn粉末を加圧成形した後、1400℃で加熱し焼結して、酸化インジウム焼結体を作製した。この焼結体を6インチΦ×5mmtに加工し、In系合金を用いて無酸素銅製のバッキングプレートに貼り合わせてInターゲットとした。このターゲットのエロージョン上に、1mm×1mm×0.5mmt又は2mm×2mm×1mmtの純度99.99%のSi単結晶片を間隔が均等になるように配置し、複合ターゲットとした。
直流マグネトロンスパッタ装置の非磁性体ターゲット用カソードに、上記スパッタリング用ターゲットを取り付け、該ターゲットの対向面に50mm×50mm×1.0mmtの石英ガラス基板を取り付けた。該ターゲットと基板との距離を70mmとし、チャンバ内の真空度が1×10−4Pa以下に達した時点で、純度99.9999重量%のArガスをチャンバ内に導入して、ガス圧を0.6Paとし、酸素を1〜3%だけ成膜ガス中に導入させて、100〜200Wの直流電力をターゲット−基板間に投入して、直流プラズマを発生させてスパッタリングを実施して、基板を室温の状態にして、約100〜300nmの膜厚の透明導電性薄膜を形成した。
Inターゲット上に載せるSi単結晶片の数を変えた複合ターゲットから、種々のシリコン含有量の酸化インジウム薄膜を作製した。膜の比抵抗と可視光透過率は、スパッタ時の酸素ガス混合量に依存したが、可視光透過率が80%以上の膜において比抵抗が最も低かった膜について、膜の組成分析、表面粗さなどの詳細な評価を実施した。
実施例4のX線回折パターンを図1に、原子間力顕微鏡像を図2に示す。表1に膜中のSi原子濃度(シリコン含有量とインジウム含有量の合計量に対するシリコン含有量の割合)、及び比抵抗値、結晶性、表面粗さRa(平均値)の測定結果を合わせて示した。X線回折ピークを見ると、2θが22度、31度、35度、37度、46度、52度、56度付近のいずれにもピークが存在しないことが分かる。
【0111】
【表1】
Figure 0003945395
【0112】
表1から明らかなように、本発明の範囲内でシリコンが含有した酸化インジウムは、100〜300℃に基板加熱を行って、しかも0.6Paの低ガス圧にてスパッタ成膜した場合でも、非晶質であり、比抵抗も8.8×10−4Ω・cm以下であり、ほとんどの膜が6.0×10−4Ω・cm以下と低かった。また、全ての膜で原子間力顕微鏡による中心線表面粗さRaの平均値が2.48以下であり非常に小さかった。さらに、膜の基板を含めた平均可視光透過率は、85〜90%であり透過率も良好であった。また、実施例1〜6の非晶質透明導電性薄膜の結晶化温度を、高温X線回折測定で測定したところ190〜390℃であることがわかった。
また、同様の実験を、上記の複合ターゲットでなく、シリコン元素が含有する酸化インジウム焼結体の単一ターゲットを用いた以外は、実施例1〜6と同様の条件で成膜実験を行った。焼結体ターゲットは、酸化インジウムと酸化シリコンの粉末を原料粉末として、これらを混合して、プレス成形し、焼成してシリコン元素が含まれる酸化インジウム焼結体を作製し、研磨加工して作製した。このターゲットを用いて、直流スパッタリング法で、酸素量1〜3%を含むアルゴンと酸素の混合ガスをスパッタガスに用い、基板温度を室温から300℃の範囲で振って成膜を試みたところ、表1に示す結果と殆ど同じであった。よって、チップを用いた複合ターゲットを用いる場合だけでなく、シリコンを含む酸化インジウムの焼結体ターゲットをもちいても、非晶質で表面平滑性に優れ、低抵抗な膜が得られることがわかった。
【0113】
(実施例7〜22)
酸化インジウムターゲットの代わりに、様々な量のスズを添加した酸化インジウム(すなわちITO)焼結体ターゲットを用い、エロージョン直上にSi単結晶チップを均等な間隔で置いて、複合ターゲットを作製した。ITOターゲットのサイズは、前記と同様の6インチΦ×5mmtである。
この複合ターゲットを用いて、スパッタ時のガス圧、ターゲット基板間距離、前記の実施例と同様の条件で、膜厚約100〜300nmのスズとシリコンを含む酸化インジウム薄膜を作製した。スパッタ時の酸素混合量は1〜3%とし、可視光透過率が80%以上で抵抗が最も低かった膜について、膜の組成分析と表面粗さの測定を行った。膜中のSn原子濃度(スズ含有量とインジウム含有量の合計量に対するスズ含有量の割合)、膜中のSi原子濃度(シリコン含有量とインジウム含有量の合計量に対するシリコン含有量の割合)、膜の比抵抗と結晶性、膜表面の中心線平均粗さ(Ra)の平均値を、同様の条件で測定した結果を表2に示す。
【0114】
【表2】
Figure 0003945395
【0115】
表2から明らかなように、本発明の範囲内でシリコンとスズを含有した酸化インジウムは、200℃で成膜した場合でも、膜の構造は非晶質であり、比抵抗も5.8×10−4Ω・cm以下と低かった。原子間力顕微鏡による表面粗さ(Ra)も、2.42以下であり非常に小さかった。また膜の基板を含めた平均可視光透過率は、84〜90%であり透過率も良好であった。また、実施例7〜22で得られた非晶質の透明導電性薄膜の結晶化温度を、高温X線回折測定で測定したところ180〜320℃であることがわかった。
また、同様の実験を、複合ターゲットでなく、シリコン元素とスズ元素が含有する酸化インジウム焼結体の単一ターゲットを用いた以外は、実施例7〜22と同様の条件で成膜実験を行った。焼結体ターゲットは、酸化インジウムと酸化シリコンおよび酸化ススの粉末を原料粉末として、これらを混合して、プレス成形し、焼成してシリコン元素が含まれる酸化インジウム焼結体を作製し、研磨加工して作製した。このターゲットを用いて、直流スパッタリング法で、酸素量1〜3%を含むアルゴンと酸素の混合ガスをスパッタガスに用い、基板温度を室温から300℃の範囲で振って成膜を試みたところ、表2に示す結果と殆ど同じであった。よって、チップを用いた複合ターゲットを用いる場合だけでなく、シリコン元素及びスズ元素を含む酸化インジウムの焼結体ターゲットをもちいても、非晶質で表面平滑性に優れ、低抵抗な膜が得られることがわかった。
【0116】
(実施例22〜42)
酸化インジウムターゲットの代わりに、様々な量のタングステンが添加された酸化インジウム焼結体ターゲットを用い、ターゲットのエロージョン上にSi単結晶チップを均等な間隔で置いて、複合ターゲットを作製した。タングステン添加酸化インジウムターゲットのサイズは、前記と同様の6インチΦ×5mmtである。
この複合ターゲットを用いて、スパッタ時のガス圧、ターゲット基板間距離、前記の実施例と同様の条件で、膜厚約100〜300nmのタングステンとシリコンを含む酸化インジウム薄膜を作製した。スパッタ時の酸素混合量は1〜3%とし、可視光透過率が80%以上で抵抗が最も低かった膜について、膜の組成分析と表面粗さの測定を行った。膜中のW原子濃度(タングステン含有量とインジウム含有量の合計量に対するタングステン含有量の割合)、膜中のSi原子濃度(シリコン含有量とインジウム含有量の合計量に対するシリコン含有量の割合)、膜の比抵抗と結晶性、膜表面の中心線平均粗さ(Ra)の平均値を、同様の条件で測定した結果を表3に示す。
【0117】
【表3】
Figure 0003945395
【0118】
表3から明らかなように、本発明の範囲内でシリコンとタングステンが含有した酸化インジウムは、300℃で成膜した場合でも、非晶質であり、比抵抗も5.6×10−4Ω・cm以下と低かった。原子間力顕微鏡による表面粗さ(Ra)も2.41以下であり非常に小さかった。また膜の基板を含めた平均可視光透過率は、85〜90%であり透過率も良好であった。また、実施例23〜42で得られた非晶質の透明導電性薄膜の結晶化温度を、高温X線回折測定で測定したところ180〜450℃であることがわかった。
さらに、弱塩酸性のエッチング液を用いてエッチング特性を調べたところ、実施例1〜42の膜は、全てエッチング速度が速く、またエッチング残さもなく良好であった。
また、同様の実験を、複合ターゲットでなく、シリコン元素とタングステン元素が含有する酸化インジウム焼結体の単一ターゲットを用いた以外は、実施例23〜42と同様の条件で成膜実験を行った。焼結体ターゲットは、酸化インジウムと酸化シリコンおよび酸化タングステンの粉末を原料粉末として、これらを混合して、プレス成形し、焼成してシリコン元素が含まれる酸化インジウム焼結体を作製し、研磨加工して作製した。このターゲットを用いて、直流スパッタリング法で、酸素量1〜3%を含むアルゴンと酸素の混合ガスをスパッタガスに用い、基板温度を室温から300℃の範囲で振って成膜を試みたところ、表3に示す結果と殆ど同じであった。よって、チップを用いた複合ターゲットを用いる場合だけでなく、シリコン元素及びタングステン元素を含む酸化インジウムの焼結体ターゲットをもちいても、非晶質で表面平滑性に優れ、低抵抗な膜が得られることがわかった。
【0119】
(比較例1〜6)
従来よく用いられている不純物を含まない酸化インジウム焼結体ターゲット、又はスズを含む酸化インジウム(ITO)焼結体ターゲットを用いて、スパッタ法にて約100〜300nmの薄膜を作製した。スパッタ時のガス圧、ターゲット基板間距離、ターゲットサイズは、前記の実施例と同様の条件でおこなった。スパッタ時の酸素混合量は、1〜3%とし、可視光透過率が80%以上で抵抗が最も低かった膜について、膜の組成分析と表面粗さの測定を行った。膜中のSn原子濃度(スズ含有量とインジウム含有量の合計量に対するスズ含有量の割合)、膜の比抵抗と結晶性、膜表面の中心線平均粗さ(Ra)の平均値を、同様の条件で測定した結果を表4に示す。
【0120】
【表4】
Figure 0003945395
【0121】
表3に示すように、比較例1〜6の薄膜は、比抵抗が2.5×10−4〜5.6×10−4Ω・cmと低いものもあったが、X線回折測定では結晶相が必ず含まれていた。比較例3の非晶質相と結晶質相が混合した膜のX線回折パターンを図3に、原子間力顕微鏡像を図4に示す。また比較例5の結晶質相で形成された膜のX線回折パターンを図5に、原子間力顕微鏡像を図6に示す。X線回折ピークを見ると、2θが22度、31度、35度、37度、46度、52度、56度付近のいずれかに大きなピークが存在していることが分かる。
また比較例1〜6の膜の中心線平均粗さ(Ra)は、何れも5.3nm以上であり、本発明の実施例1〜22の膜と比べて著しく大きかった。比抵抗が高く、基板を加熱せずにスパッタ成膜しても、膜中に微細な結晶相が含まれていた。非晶質相と結晶質相の混在している様子がわかる。
さらに、実施例と同条件で弱塩酸性のエッチング液を用いて膜のエッチング特性を調べたところ、比較例の膜では、結晶相のエッチング残さが生じ易いことが分かった。また、エッチング速度も遅く、実施例の膜と比べて時間が1.5〜2倍位かかった。
このことから、このような膜を、LCDや有機EL用の透明電極として使用するためには、表面を研磨加工して表面の凹凸を除去する必要がある。
【0122】
(実施例43)
本発明に係わる有機EL素子として、陰極がIn−W−Si−O系薄膜とMg−Ag系薄膜の積層体で構成され、陽極がクロムからなる有機EL素子を、以下の手順で製造した。すなわち、直径6インチのCrターゲットを用い、スパッタガスとしてArを用いて、圧力0.4Pa、DC電力300Wの条件で、DCスパッタリングすることにより、ガラス基板上に膜厚200nmのCr膜を成膜した。このCr膜を通常のリソグラフィー技術を用いてパターニングを行い、所定形状の陽極を形成した。
次に、上記のCr陽極を設けたガラス基板上にSiターゲットを用いた酸素との反応性スパッタリングにより、膜厚200nmの二酸化珪素(SiO)からなる絶縁膜を形成した。この絶縁膜を、通常のリソグラフィー技術を用いて、Cr陽極上に開口部を有する絶縁層とした。SiOのエッチングにはフッ素とフッ化アンモニウムの混合液を使用した。また、ドライエッチングによる加工も可能である。
次に、このガラス基板を真空蒸着装置に入れて、有機層及び金属薄膜を蒸着により形成した。有機層の構成は、正孔注入層として4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)、正孔輸送層としてビス(N−ナフチル)−N−フェニルベンジジン(α−NPD)、発光層として8−キノリノールアルミニウム錯体(Alq)を用いた。これらの有機層上に設けた陰極用の金属薄膜にはマグネシウムと銀の合金(Mg:Ag)を用いた。
有機層に属する各材料は、それぞれ0.2gを抵抗加熱用のボートに充填して真空蒸着装置の所定の電極に取り付け、金属層のマグネシウムは0.1g、銀は0.4gをボートに充填して、真空蒸着装置の所定の電極に取り付けた。真空チャンバを、1.0×10−4Paまで排気した後、各ボートに電圧を印加し、順次加熱して蒸着させた。蒸着には、金属マスクを用いることにより所定の部分のみ有機層およびMg:Agからなる金属層を蒸着させた。所定の部分とは、基板上で、クロムが露出している部分である。クロムの露出している部分だけに高精度に蒸着することは困難であるので、クロムの露出している部分全体を覆うように(絶縁層の縁にかかるように)蒸着マスクを設計した。
まず、正孔注入層としてMTDATAを30nm、正孔輸送層としてα−NPDを20nm、発光層としてAlqを50nm蒸着した。さらに、マグネシウムおよび銀の共蒸着を行なうことにより、有機層上に陰極の金属層11としてMg:Agを成膜した。マグネシウムと銀は、成膜速度の比を9:1とし、Mg:Agの膜厚をl0nmとした。
次に、別の真空チャンバに移し、同じマスクを通して透明導電性薄膜を成膜した。成膜にはDCスパッタリングを用いた。ここでは、実施例23のIn−W−Si−O系の透明導電性薄膜を形成した。成膜条件は、スパッタガスとしてアルゴンと酸素の混合ガス(体積比Ar:O=99:1)、圧力0.6Pa、DC出力160Wとした。膜厚200nmで成膜した。このように作製して得た透明導電性薄膜は、室温成膜にもかかわらず良好な導電性と透過特性を示した。
最後に、透明導電膜層の表面を覆うようにSiOを200nmの厚さにスパッタして保護膜として、有機EL発光素子を得た。この有機EL発光素子は、それぞれ2本ずつの平衡ストライプ状陰電極と、8本の平衡ストライプ状陽電極を互いに交互させ、2×2mm縦横の素子単体(画素)を互いに2mmの間隔で配置し、8×2の16画素の素子とした。
得られた有機EL素子について、N雰囲気で直流電圧を印加し、10mA/cmの一定電流密度で連続駆動させ、160画素(10素子分)の初期平均発光輝度、電極間の電流リーク個数、発光半減期及び発光開始から200時間経過後のダークスポットの発生有無について調べた。その結果を表5に示す。
【0123】
(実施例44)
陰極に用いる透明導電層を実施例25のIn−W−Si−O系の透明導電性薄膜を形成した以外は、実施例43と同様の製造方法で、16画素の有機EL素子を製造した。同様に160画素(10素子分)の初期平均発光輝度、電極間の電流リーク個数、発光半減期及び発光開始から200時間経過後のダークスポットの発生有無について調べた。その結果を表5に示す。
【0124】
(実施例45)
陰極に用いる透明導電層を実施例34のIn−W−Si−O系の透明導電性薄膜を形成した以外は、実施例43と同様の製造方法で、16画素の有機EL素子を製造した。同様に160画素(10素子分)の初期平均発光輝度、電極間の電流リーク個数、発光半減期及び発光開始から200時間経過後のダークスポットの発生有無について調べた。その結果を表5に示す。
【0125】
(実施例46)
陰極に用いる透明導電層を実施例38のIn−W−Si−O系の透明導電性薄膜を形成した以外は、実施例43と同様の製造方法で、16画素の有機EL素子を製造した。同様に160画素(10素子分)の初期平均発光輝度、電極間の電流リーク個数、発光半減期及び発光開始から200時間経過後のダークスポットの発生有無について調べた。その結果を表5に示す。
【0126】
(比較例7)
陰極に用いる透明導電層を比較例1のIn−O系の透明導電性薄膜を形成した以外は、実施例43と同様の製造方法で、16画素の有機EL素子を製造した。
同様に160画素(10素子分)の初期平均発光輝度、電極間の電流リーク個数、発光半減期及び発光開始から200時間経過後のダークスポットの発生有無について調べた。その結果を表5に示す。
【0127】
(比較例8)
陰極に用いる透明導電層を比較例3のIn−Sn−O系の透明導電性薄膜を形成した以外は、実施例43と同様の製造方法で、16画素の有機EL素子を製造した。同様に160画素(10素子分)の初期平均発光輝度、電極間の電流リーク個数、発光半減期及び発光開始から200時間経過後のダークスポット(非発光点)の発生有無について調べた。その結果を表5に示す。
【0128】
(比較例9)
陰極にIn−Zn―O系透明導電膜を用いた以外は、実施例43と同様の製造方法で、16画素の有機EL素子を製造した。In−Zn―O系透明導電膜はIn−ZnO(10wt%)の焼結体ターゲットを用いて、成膜温度を室温のまま、DCスパッタリングにて作製した。同様に160画素(10素子分)の初期平均発光輝度、電極間の電流リーク個数、発光半減期及び発光開始から200時間経過後のダークスポット(非発光点)の発生有無について調べた。その結果を表5に示す。
【0129】
【表5】
Figure 0003945395
【0130】
表5に示すように、本発明の透明導電性薄膜を陰極に用いた有機EL素子(実施例43〜46)は、従来の材料を用いた有機EL素子(比較例7〜9)と比べて、初期における平均発光輝度が大きく、また輝度半減期が明らかに長い。また400cd/m以上の発光が確認できた。輝度の半減期は800時間であった。発光開始から200時間経過後のダークスポット(非発光点)の発生についても、従来の材料を用いた有機EL素子(比較例7〜9)には多数発生したが、本発明の透明導電性薄膜を陰極に用いた有機EL素子(実施例43〜46)は全くなかった。また比較例9の有機EL素子は、発光開始から200時間経過後でのダークスポット(非発光点)の発生は見受けられず、輝度の半減期も本発明の実施例43〜46と同様に長かったが、初期の発光輝度は低かった。
In−Zn−O薄膜と本発明の薄膜の単膜での光透過特性の比較実験から明らかになったのであるが、陰極に用いたIn−Zn−O薄膜の光透過性が劣っていたことから、発光輝度が低かったものと考えられる。In−Zn−O薄膜をXPSにて分析したところ、膜中には金属Znが含まれていることが明らかとなり、これにより400nm前後での光透過率が本発明の膜と比べて劣っていると判断される。
また、上記の作製した有機EL素子を湿度95%80℃の雰囲気中に100時間置いたあとで、同様の発光試験を行ったところ、比較例8〜9の素子は発光初期の時点で多数のダークスポットが観察されたが、実施例43〜46の有機EL素子は発光開始から200時間経過後でもダークスポットは観察されなかった。
これは本発明の透明導電性薄膜の耐熱性が優れているからである。
このような傾向は、実施例24、実施例26〜33、実施例35〜37、実施例39〜42の組成のIn−W−Si−O系非晶質薄膜を室温〜100℃の基板温度で作製して陰極に用いても全く同じ結果であり、発光特性、耐熱性、耐湿性に優れ、ダークスポットの生じない有機EL素子が製造できた。
また、基板として薄膜トランジスタとその回路が形成されたガラス基板を用いて実施例43と同様にアクティブマトリックス型有機EL素子を作製したが、全く同じ結果であり、発光特性、耐熱性、耐湿性に優れ、ダークスポットの生じない有機EL素子が製造できた。
【0131】
(実施例47)
実施例43〜46では陽極にクロムを用いたが、パラジウムを用いた以外は上記実施例43と同様にして同じ構造の有機EL素子を作製した。得られたPd陽電極の有機EL素子は、Cr陽極を用いた実施例43〜46の素子と同様の優れた発光特性を備えていた。また200時間経過後においても、ダークスポットは観察されなかった。
【0132】
(実施例48)
実施例43〜46では陰極にIn−W−Si−O系非晶質薄膜を用いたが、実施例1〜6のIn−Si−O系非晶質薄膜、あるいは実施例7〜22のIn−Sn−Si−O系非晶質薄膜を室温〜300℃の基板温度にて作製して用いた以外は、上記実施例43と同様にして同じ構造の有機EL素子を作製した。
得られた有機EL素子は、In−W−Si−O系非晶質薄膜を用いた実施例43〜46の素子と同様の優れた発光特性を備えていた。また200時間経過後においても、ダークスポットは観察されなかった。
【0133】
(実施例49)
実施例43〜46では、陽極に金属を用いたが、実施例1〜42の組成のIn−Si−O系、In−Sn−Si−O系、In−W−Si−O系非晶質薄膜を室温から300℃の基板温度にて作製し、この薄膜を陽極に用いた以外は実施例43と同様の方法で、図7の構造の有機EL素子を作製した。
この有機EL素子は、陰極だけでなく陽極にも発光可能となる。発光特性を調べたが、同様に良好な発光特性がみられ、200時間経過後でもダークスポットも観察されなかった。しかし、陽極に比較例のIn−O系、In−Sn−O系薄膜を用いた同様の有機EL素子は200時間経過後でダークスポットが多数観察された。
【0134】
(実施例50)
厚み1μmのアクリル系のハードコート層を形成したPES(ポリエーテルスルホン)フィルム(フィルム全体の厚みは0.2mm)の表面に50nmの窒化酸化シリコン膜を施した基板を用い、その上に図7に示すような有機EL素子を作製した。
陽極および陰極に実施例1〜42の本発明のIn−Si−O系、In−Sn−Si−O系またはIn−W−Si−O系透明導電性薄膜を基板温度室温〜120℃で作製して用いたところ、素子の発光特性は良好であった。
【0135】
(比較例10)
下記の成膜条件で高周波スパッタリングにより、ガラス基板上にシリコンを含有する酸化インジウム透明導電性薄膜を形成させた。得られた薄膜の比抵抗は7.5×10−4Ω・cmであったが、X線回折ピークが多数観察され、表面粗さRaは5.7nmであり、表面平滑性の極めて悪い結晶性の透明導電膜であった。
ターゲット組成:In+SiO(2wt%)、ターゲットサイズ:6インチΦ、ガス圧:0.2Pa、スパッタガス:純Ar、ターゲット基板間距離:40mm、高周波電力:500W、基板加熱せず。
【0136】
(比較例11)
陽極に比較例10のIn−Si−O系薄膜を用い、この薄膜を陽極に用いた以外は実施例43と同様の方法で、図7の構造の有機EL素子を作製した。この有機EL素子は、200時間経過後でダークスポットが多数観察された。
【0137】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の透明導電性薄膜は、結晶相を全く含まず完全に非晶質であるため表面平滑性に極めて優れ、低抵抗で可視光領域での透過率も高い。
また、本発明の透明導電性薄膜は、表面が平滑で低抵抗な透明電極が必要とされる有機EL素子だけでなく、無機EL素子やLCD等の表示デバイス素子の透明電極として極めて有用なものである。従って、本発明の透明導電性薄膜を用いることにより、従来よりも発光輝度が高く、かつその輝度の半減期も長くなるうえ、ダークスポットの発生がなく、耐久性にも優れたEL素子を提供することができ、その工業的価値は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の透明導電性薄膜(実施例4)のX線回折パターンである。
【図2】本発明の透明導電性薄膜(実施例4)の原子間力顕微鏡像である。
【図3】従来技術の透明導電性薄膜(比較例3)のX線回折パターンである。
【図4】従来技術の透明導電性薄膜(比較例3)の原子間力顕微鏡像である。
【図5】従来技術の透明導電性薄膜(比較例5)のX線回折パターンである。
【図6】従来技術の透明導電性薄膜(比較例5)の原子間力顕微鏡像である。
【図7】本発明の有機EL素子の一具体例を示す概略図である。
【符号の説明】
1.絶縁性基板
2.陽極
3.陰極
4.透明度電性薄膜
5.金属薄膜
6.有機層
7.発光層
8.正孔注入層
9.正孔輸送層

Claims (18)

  1. 酸化インジウムを主成分とし、シリコン及びタングステンを含有する透明導電性薄膜であって、その構造が実質的に非晶質であり、かつシリコンの含有量がインジウムとシリコンとの合計量に対して0.5〜13原子%であり、タングステンの含有量がタングステンとインジウムとの合計量に対して0.2〜15原子%であることを特徴とする透明導電性薄膜。
  2. さらに、ドーパントとしてスズを含有することを特徴とする請求項1に記載の透明導電性薄膜。
  3. スズの含有量が、スズとインジウムとの合計量に対して0.5〜15原子%であることを特徴とする請求項2に記載の透明導電性薄膜。
  4. 透明導電性薄膜の比抵抗が、9.0×10−4Ω・cm以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の透明導電性薄膜。
  5. 透明導電性薄膜の中心線平均粗さ(Ra)が、2.5nm以下であることを特徴とする請求項1〜に記載の透明導電性薄膜。
  6. 透明導電性薄膜は、平均可視光(400〜800nm)の透過率が85%以上であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の透明導電性薄膜。
  7. 透明導電性薄膜の結晶化温度が180℃以上であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の透明導電性薄膜。
  8. スパッタリング装置内に、基板と、ターゲットとを配置した後、酸素ガスを含む不活性ガス雰囲気中でスパッタリングすることによって、基板上にシリコンを含有する酸化インジウムよりなる非晶質の透明導電性薄膜を成膜することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の透明導電性薄膜の形成方法。
  9. 基板が100〜300℃に加熱されることを特徴とする請求項に記載の透明導電性薄膜の形成方法。
  10. 不活性ガスが、酸素を1%以上含有するアルゴンと酸素の混合ガスであることを特徴とする請求項に記載の透明導電性薄膜の形成方法。
  11. 透明導電性薄膜が、酸素ガスを含む不活性ガス雰囲気でスパッタリング装置内を0.1〜1Paに設定後、直流スパッタリングで成膜されることを特徴とする請求項に記載の透明導電性薄膜の形成方法。
  12. ターゲットが、タングステン添加酸化インジウム焼結体のターゲット上に、複数枚のシリコンのチップを略均等の間隔で貼着したものであることを特徴とする請求項に記載の透明導電性薄膜の形成方法。
  13. ターゲットが、シリコンをタングステンとともに添加した酸化インジウム焼結体であることを特徴とする請求項に記載の透明導電性薄膜の形成方法。
  14. 請求項1〜のいずれかに記載の透明導電性薄膜をガラス基板、石英板、樹脂板又は樹脂フィルムから選択されるいずれかの基材上に成膜してなる表示パネル用透明導電性基材。
  15. 基材には、絶縁層、半導体層、ガスバリア層又は保護層の少なくとも1層が形成されていることを特徴とする請求項14に記載の表示パネル用透明導電性基材。
  16. 請求項1〜のいずれかに記載の透明導電性薄膜を陽極及び/又は陰極に用いてなる有機エレクトロルミネッセンス素子。
  17. 陽極を光反射性薄膜で構成し、陰極を透明導電性薄膜又は透明導電膜と金属薄膜から構成したことを特徴とする、請求項16に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  18. 請求項14又は15に記載の表示パネル用透明導電性基材の陽極上に有機層、陰極を形成してなる有機エレクトロルミネッセンス素子。
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