JP4485045B2 - 延伸加工用ビニルアルコール系重合体フィルムの製造法 - Google Patents

延伸加工用ビニルアルコール系重合体フィルムの製造法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、偏光フィルムや寒冷紗の製造原料として有用で、気泡または液滴によるフィルムの欠点がないこと、さらに、これら欠点部分に起因する延伸加工時のフィルムの破断が少ない、延伸加工用ビニルアルコール系重合体フィルムの製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光の透過および遮蔽機能を有する偏光板は、光のスイッチング機能を有する液晶とともに、液晶ディスプレイ(LCD)の基本的な構成要素である。このLCDの適用分野も、開発初期の頃の電卓および腕時計などの小型機器から、近年では、ラップトップパソコン、ワープロ、液晶カラープロジェクター、車載用ナビゲーションシステム、液晶テレビ、パーソナルホンおよび屋内外の計測機器などの広範囲に広がり、従来品以上に安価で大面積の偏光板が求められている。
【0003】
偏光板は、一般にビニルアルコール系重合体フィルム(以下、ビニルアルコール系重合体を「PVA」、ビニルアルコール系重合体フィルムを「PVAフィルム」と略記することがある)を一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、ホウ素化合物で固定処理を行った(染色と固定処理が同時の場合もある)偏光フィルムに、三酢酸セルロース(TAC)フィルムや酢酸・酪酸セルロース(CAB)フィルムなどの保護膜を貼り合わせた構成となっている。
【0004】
また、農業の合理化や機械化に伴い、PVA製の寒冷紗やビニルハウス内のPVA製の保温カーテンなども注目されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、偏光フィルムや寒冷紗を製造するには、前記したようにPVAフィルムを延伸する延伸工程が必要であるが、PVAフィルム中に気泡や異物を含んでいる場合には、延伸加工時に気泡や異物部分からPVAフィルムが裂けて破断が発生することがあり、大きなコストロスとなる。また、たとえ延伸加工時に破断がなくても、フィルム中の欠点が延伸により広がり、外観不良になる。特に偏光板の用途に使用される場合には、表示部の欠陥により使用できなくなる。偏光板メーカーや寒冷紗メーカーでは、収率改善による最終製品の低価格化のために、延伸加工時に破断が発生しないPVAフィルムが要望されている。
【0006】
そこで、本発明の目的は、フィルム中に気泡または液滴による欠点がなく、外観が良好でかつ延伸加工時に破断が少なく、均一な延伸が容易で、寒冷紗や偏光フィルムの製造原料として有用な、延伸加工用PVAフィルムをスムーズに得られるようにする点にある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明者らは、PVAを構成成分とする製膜原料を製膜する前工程で通過させるフィルターに着目し、フィルターに目詰まり等を生じた場合にフィルターを新たに交換する際に、新たなフィルター内を予め特定の溶液で充満させておくことにより、フィルム中に気泡または液滴などの欠点の発生を抑えることが可能となり、延伸加工時にフィルム中の欠点に起因するフィルムの破断が少なく、均一な延伸を容易に行い得るPVAフィルムを製造することができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、PVAを構成成分とする製膜原料をフィルターを通過させたのち製膜するPVAフィルムの製造法において、フィルターを新たに交換する際に、新たなフィルター内に予め、水もしくは水溶液、または水に溶解可能な液体もしくは水に溶解可能な液体を主要成分とする溶液を充満させておくことを特徴とする延伸加工用PVAフィルムの製造法である。
【0008】
本発明によれば、目的とする偏光フィルムや寒冷紗などの製造原料として有用な、フィルム中に気泡または液滴を抑えたPVAフィルムがスムーズに得られる。よって、延伸加工時に気泡や液滴によるフィルムの破断の発生が少なく、均一な延伸加工が容易で、高収率で延伸加工用PVAフィルムが得られ、寒冷紗や液晶表示画面の低価格化などに対応可能となる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いられるPVAは、例えば、ビニルエステルを重合して得られたポリビニルエステルをけん化することにより製造される。また該PVAをグラフト共重合した変性PVAや、ビニルエステルと共重合可能なモノマーと共重合した変性ポリビニルエステルをけん化することにより製造される変性PVAや、未変性または変性PVAをアルデヒド類で水酸基の一部を架橋したいわゆるポリビニルアセタール樹脂などを挙げることができる。
【0010】
前記のビニルエステルとしては、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニルなどが例示される。
【0011】
一方、ビニルエステルと共重合可能なモノマーとしては、オレフィン類、アクリル酸およびその塩およびニトリル類、アクリル酸エステル類、メタクリル酸およびその塩およびニトリル類、メタクリル酸エステル類、マレイン酸およびその塩およびニトリル類、マレイン酸エステル類、イタコン酸およびその塩およびニトリル類、イタコン酸エステル類、アクリルアミドおよびその誘導体、メタクリルアミドおよびその誘導体、N−ビニルアミド類、ビニルエーテル類、ハロゲン化ビニル類、アリル化合物、ビニルシリル化合物、酢酸イソプロペニルなどを挙げることができる。
【0012】
変性PVAを用いる場合は、変性量は15モル%以下が好ましく、5モル%以下がより好ましい。またコモノマーとしては、α−オレフィンが好ましく、特にエチレンが好ましい。
【0013】
PVAのけん化度は、偏光性能と耐久性の点から95モル%以上が好ましく、特に99.5モル%以上が最も好ましい。
【0014】
前記けん化度とは、けん化によりビニルアルコール単位に変換され得る単位の中で、実際にビニルアルコール単位にけん化されている単位の割合を示したものである。なお、PVAのけん化度は、JIS記載の方法により測定を行った。
【0015】
PVAの重合度は、偏光性能と耐久性の点から1000以上が好ましく、特に2500以上が最も好ましい。PVA重合度の上限は8000以下が好ましく、6000以下がより好ましい。
【0016】
前記PVAの重合度は、JIS K 6726に準じて測定される。すなわちPVAを再けん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度から求められる。
【0017】
以上のPVAを使用してPVAフィルムを製造する方法として、押出機中で含水PVA(有機溶剤を含んでいても良い。以下同じ)を溶融させて押し出す溶融押出方式や、PVAを溶剤に溶解したPVA溶液を使用して、流延製膜法、湿式製膜法(貧溶媒中への吐出)、ゲル製膜法(PVA水溶液を一旦冷却ゲル化した後、溶媒を抽出除去し、PVAフィルムを得る方法)、およびこれらの組み合わせによる方法などを採用することができる。これらのなかでも流延製膜法および溶融押出製膜法が、良好な偏光フィルムが得られることから好ましい。
【0018】
PVAフィルムを製造する際に使用される含水PVAやPVAを溶解する溶剤としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、ジグリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、グリセリン、水などを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を使用することができる。これらのなかでも、ジメチルスルホキシド、水、またはグリセリンと水の混合溶媒が好適に使用される。
【0019】
PVA溶液または含水PVAには、必要に応じて可塑剤、界面活性剤、二色性染料などを含有させてもよい。
【0020】
PVAフィルムを製造する際に可塑剤として、多価アルコールを添加することが好ましい。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジグリセリン、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパンなどを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を使用することができる。これらのなかでも延伸性向上効果から、ジグリセリンやエチレングリコールやグリセリンが好適に使用される。
【0021】
多価アルコールの添加量としてはPVA100重量部に対し1重量部乃至30重量部が好ましく、特に5重量部乃至20重量部が最も好ましい。1重量部未満では、染色性や延伸性が低下する場合があり、30重量部を超えると、PVAフィルムが柔軟になりすぎて、取り扱い性が低下する場合がある。
【0022】
PVAフィルムを製造する際には、界面活性剤を添加することが好ましい。界面活性剤の種類としては特に限定はないが、アニオン性またはノニオン性の界面活性剤が好ましい。アニオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸カリウムなどのカルボン酸型、オクチルサルフェートなどの硫酸エステル型、ドデシルベンゼンスルホネートなどのスルホン酸型のアニオン性界面活性剤が好適である。ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのアルキルエーテル型、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどのアルキルフェニルエーテル型、ポリオキシエチレンラウレートなどのアルキルエステル型、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテルなどのアルキルアミン型、ポリオキシエチレンラウリン酸アミドなどのアルキルアミド型、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテルなどのポリプロピレングリコールエーテル型、オレイン酸ジエタノールアミドなどのアルカノールアミド型、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテルなどのアリルフェニルエーテル型などのノニオン性界面活性剤が好適である。これらの界面活性剤の1種または2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0023】
界面活性剤の添加量としては、PVA100重量部に対して0.01重量部乃至1重量部が好ましく、0.05重量部乃至0.3重量部が最も好ましい。0.01重量部未満では延伸性向上や染色性向上の効果が現れにくく、1重量部を超えると、PVAフィルム表面に溶出し、ブロッキングの原因になり取り扱い性が低下する場合がある。
【0024】
含水PVAやPVA溶液などのPVAを構成成分とする製膜原料を、フィルターを用いてろ過することが、得られる延伸用PVAフィルム中の異物数を低減させ、異物によるPVAフイルムの延伸時の破断を抑制する上で重要である。フィルターとしては、公知の物が使用可能であるが、ディスクフィルター、キャンドルフィルターが好適であり、多葉式フィルターを多段で用いることがさらに好ましい。
【0025】
前記フィルターの孔径は、10μm以下であることが望ましく、5μm以下がより望ましく、1μm以下が特に望ましい。孔径が10μmを超えると、ろ過で除去できなかった異物により、PVAフイルムの延伸時に破断が発生したり、偏光フィルムに光学的欠点となることが多い。孔径の下限は、ろ過圧力より0.1μmである。ここで、前記フィルターの孔径とは、捕集効率が90%以上となる粒子径である。また、当該フィルターの上流側に、より大きな孔径のプレフィルターを設置することがより望ましい。
【0026】
本発明において、フィルターに目詰まり等を生じた場合にフィルターを新たに交換するに際し、水もしくは水溶液、または水に溶解可能な液体もしくは水に溶解可能な液体を主要成分とする溶液を、交換する新たなフィルター内に予め充満させておいてから、含水PVAやPVA溶液などのPVAを構成成分とする製膜原料を供給することが、極めて重要である。フィルター内に予め前記液を充満させる時期は、製膜原料を供給する前であれば良く、液を充満させたフィルターを製膜装置の配管に組み立てても良いし、フィルターを製膜装置の配管に組み立ててから液を充満させても良い。空のフィルターに製膜原料を供給すると、フィルター内の空気が製膜原料に完全に置換されるのに非常に長時間を要する。置換が完了するまでの間、PVAフィルムに気泡による孔あきが発生して製品にならなかったり、気泡を含んだPVAフィルムとなる。当該PVAフィルムを延伸すると、気泡部分からPVAフィルムが裂けて破断に至るので、安定した延伸ができない。
【0027】
フィルター内に予め充満させる液体としては、水もしくは水溶液、または水に溶解可能な液体もしくは水に溶解可能な液体を主要成分とする溶液であることが重要である。水と相溶性が乏しい液体または水と相溶性が乏しい液体を主要成分とする溶液を充満させておくと、フィルターが空の場合と同じく、フィルター内の水と相溶性が乏しい液体が、製膜原料に完全に置換されるのに非常に長時間を要する。その間、液滴を含んだPVAフィルムが得られ、当該PVAフィルムを延伸すると、液滴部分からPVAフィルムが裂けて破断に至るので、安定した延伸ができない。本発明の目的を阻害しない範囲で、他の物質を添加しても良い。
【0028】
フィルター内に予め充満させる水に溶解可能な液体とは、20℃の水に8重量%以上、より好ましくは20重量%以上溶解し、融点が20℃以下、より好ましくは10℃以下で、沸点が75℃以上、より好ましくは90℃以上のものである。溶解度が8重量%未満では、得られるPVAフィルムに液滴が発生しやすく、延伸加工時に破断が発生する恐れが多い。融点が20℃を超えると、フィルター内や配管内などで凝固しやすく、流路を閉塞させる恐れが多い。沸点が75℃未満では、製膜時に当該液体が沸騰しやすく、得られるPVAフィルムが白化する恐れが多い。
【0029】
このような液体としては、エタノール、イソプロピルアルコール、1−プロパノール、イソブチルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、s−ブタノール、t−アミルアルコール、ジオキサン、アセチルアセトン、ジアセトンアルコール、メチルエチルケトン、エチレングリコール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールモノブチルエーテル、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコールなどを例示でき、これらの1種または2種以上混合物、またはそれらと水の混合物が使用できる。
【0030】
本発明において、フィルター内に予め充満させる水溶液または水に溶解可能な液体を主成分とする溶液の溶質としては、エタノール、イソプロピルアルコール、1−プロパノール、ブタノールなどの炭素数4以下のアルコール、グリセリン、ジグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの炭素数10以下のポリオール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコールモノブチルエーテルなどの炭素数8以下のエーテルアルコール、エチレングリコールモノアセタートなどの炭素数8以下のエステルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、エチレンジアミン、ジオキサン、N−メチルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルピロリドン、PVA(製膜原料のPVAと同一でなくても良い)などが挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物が好適であり、グリセリンとPVAがより好適である。溶質の濃度は、50重量%未満が好ましい。
【0031】
さらに本発明において、フィルター内に予め充満させる溶液としては、製膜原料よりも粘度が低いPVA溶液が好ましい。PVA溶液のPVA濃度は30重量%以下が好ましく、25重量%以下がより好ましく、特に15重量%以下が最も好ましい。PVA濃度が30重量%を超えると、フィルターに液体を予め充満するときに、空気の追い出しが不十分になり、得られるPVAフィルムに気泡が含まれることが多い。なお、PVA溶液に用いるPVAは、製膜原料に用いるPVAと同じものが好ましい。
【0032】
フィルター内に予め充満させるPVA溶液の溶媒としては、水、グリセリン、ジグリセリン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、エチレンジアミン、ジオキサンなどが挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物が使用される。
【0033】
PVAフィルムの乾燥には、スチーム・熱媒・温水・電気ヒーターなどにより加熱された金属ロールや金属ベルトが使用される。また、温風や冷風などをPVAフィルムに吹き付けたり、PVAフィルム周囲の空気や蒸気などを吸引するなどの手段を、補助的に用いても良い。また、金属ロールや金属ベルトで生乾きにした後に、テンター方式やフリー方式などのフローティングドライヤーなどの金属ロールや金属ベルト以外の乾燥方法を用いることも可能である。
【0034】
PVAフィルムの厚みは、好ましくは5μm乃至150μmであり、最も好ましくは30μm乃至80μmである。
【0035】
また、本発明のPVAフィルムから、偏光フィルムを製造するには、例えばPVAフィルムを染色、一軸延伸、固定処理、乾燥処理、さらに必要に応じて熱処理を行えばよく、染色、一軸延伸、固定処理の操作順に特に制限はない。また、各操作を二回またはそれ以上行っても良い。
【0036】
染色は、一軸延伸前、一軸延伸時、一軸延伸後のいずれでも可能である。染色に用いる染料としては、ヨウ素−ヨウ化カリウム;ダイレクトブラック 17、19、154;ダイレクトブラウン 44、106、195、210、223;ダイレクトレッド 2、23、28、31、37、39、79、81、240、242、247;ダイレクトブルー 1、15、22、78、90、98、151、168、202、236、249、270;ダイレクトバイオレット 9、12、51、98;ダイレクトグリーン 1、85;ダイレクトイエロー 8、12、44、86、87;ダイレクトオレンジ 26、39、106、107などの二色性染料などが、1種または2種以上の混合物で使用できる。通常、染色は、PVAフィルムを上記染料を含有する溶液中に浸漬させることにより行うことが一般的であるが、PVAフィルムに塗工したり、PVAフィルムに混ぜて製膜するなど、その処理条件や処理方法は特に制限されるものではない。
【0037】
一軸延伸は、湿式延伸法または乾熱延伸法が使用でき、温水中(前記染料を含有する溶液中や後記固定処理浴中でも良い)または吸水後のPVAフィルムを用いて空気中で行うことができる。延伸温度は特に限定されないが、PVAフィルムを温水中で延伸(湿式延伸)する場合は30℃乃至90℃が、また乾熱延伸する場合は50℃乃至180℃が好適である。また一軸延伸の延伸倍率(多段の一軸延伸の場合には合計の延伸倍率)は、偏光性能の点から4倍以上が好ましく、特に5倍以上が最も好ましい。延伸倍率の上限は特に制限はないが、8倍以下であると均一な延伸が得られやすいので好ましい。延伸後のフィルムの厚みは、3μm乃至75μmが好ましく、5μm乃至50μmがより好ましい。
【0038】
延伸フィルムへの上記染料の吸着を強固にすることを目的に、固定処理を行うことが多い。固定処理に使用する処理浴には、通常、ホウ酸および/またはホウ素化合物が添加される。また、必要に応じて処理浴中にヨウ素化合物を添加しても良い。
【0039】
前記延伸フィルムの乾燥処理(熱処理)は30℃乃至150℃で行うのが好ましく、50℃乃至150℃で行うのがより好ましい。
【0040】
以上のようにして得られた偏光フィルムは、通常、その両面または片面に、光学的に透明で、かつ機械的強度を有した保護膜を貼り合わせて偏光板として使用される。保護膜としては、三酢酸セルロース(TAC)フィルム、酢酸・酪酸セルロース(CAB)フィルム、アクリル系フィルム、ポリエステル系フィルムなどが使用される。また、貼り合わせのための接着剤としては、PVA系の接着剤やウレタン系の接着剤などを挙げることができるが、PVA系の接着剤が好適である。
【0041】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0042】
実施例1
プレフィルターとして孔径80μmのキャンドルフィルターと、フィルターとして孔径1μmのディスクを80枚取り付けたディスクフィルターに、水とグリセリンの等重量混合液を満たしてから、キャンドルフィルターとディスクフィルターを製膜装置の配管に取り付けた。
【0043】
けん化度99.9モル%、重合度1750のPVA100重量部に対し、グリセリン10重量部を含有する、PVA濃度が15重量%の水溶液を、キャンドルフィルターとディスクフィルターを経由させて、金属ロールを用いて流延製膜した。製膜時、気泡や液滴による孔あきや、白化などは見られず、スムーズに厚さ75μmのきれいな延伸加工用PVAフィルムを得た。
【0044】
前記PVAフィルムを予備膨潤、染色、一軸延伸、固定処理、乾燥、熱処理の順に処理して偏光フィルムを作成した。すなわち、前記PVAフィルムを30℃の水中に5分間浸漬させて予備膨潤し、ヨウ素濃度0.4g/リットル、ヨウ化カリウム濃度40g/リットルの35℃の水溶液中に3分間浸漬させた。続いて、ホウ酸濃度4%の40℃の水溶液中で5.5倍に一軸延伸を行い、ヨウ化カリウム濃度40g/リットル、ホウ酸濃度40g/リットル、塩化亜鉛濃度10g/リットルの30℃の水溶液中に5分間浸漬させて固定処理を行った。この後延伸フィルムを取り出し、定長下、40℃で熱風乾燥し、さらに100℃で5分間熱処理を行った。
【0045】
延伸工程でフィルムの破断もなく、安定した延伸が可能で、得られた偏光フィルムの厚みは22μmであり、色斑も無く良品であった。
【0046】
実施例2
プレフィルターとして孔径120μmのキャンドルフィルターと、フィルターとして孔径5μmのディスクを80枚取り付けたディスクフィルターを製膜装置の配管に取り付け、下記PVA10重量%、グリセリン10重量%、水80重量%の90℃の溶液を満たした。
【0047】
けん化度99.9モル%、重合度4000のPVA100重量部に、グリセリン10重量部および水120重量部を押出機で溶融し、金属ロールを用いて溶融押出製膜を行った。製膜時、気泡や液滴による孔あきや、白化などは見られず、スムーズに厚さ75μmのきれいな延伸加工用PVAフィルムを得た。
【0048】
前記PVAフィルムを予備膨潤、染色、一軸延伸、固定処理、乾燥、熱処理の順に処理して偏光フィルムを作成した。すなわち、PVAフィルムを30℃の水中に5分間浸漬させて予備膨潤し、ヨウ素濃度0.4g/リットル、ヨウ化カリウム濃度40g/リットルの35℃の水溶液中に3分間浸漬させた。続いて、ホウ酸濃度4%の40℃の水溶液中で5.6倍に一軸延伸を行い、ヨウ化カリウム濃度40g/リットル、ホウ酸濃度40g/リットル、塩化亜鉛濃度10g/リットルの30℃の水溶液中に5分間浸漬させて固定処理を行った。その後延伸フィルムを取り出し、定長下、40℃で熱風乾燥し、さらに100℃で5分間熱処理を行った。
【0049】
延伸工程でフィルムの破断もなく、安定した延伸が可能で、得られた偏光フィルムの厚みは22μmであり、色斑も無く良品であった。
【0050】
比較例1
実施例1において、各フィルターに水にほとんど溶解しないクロロホルムを充填した以外は、実施例1と同様の操作を行った。孔あきや、白化が多発しており、厚さ75μmのきれいな延伸加工用PVAフィルムを得るのに7時間を要した。
【0051】
比較例2
実施例2において、空の各フィルターに直接製膜原料を導入した以外は、実施例2と同様の操作を行った。孔あきが多発しており、厚さ75μmのきれいな延伸加工用PVAフィルムを得るのに12時間を要した。
【0052】
比較例3
実施例2において、各フィルターに水にほとんど溶解しない流動パラフィンを充填した以外は、実施例2と同様の操作を行った。孔あきもなくスムーズに厚さ75μmの延伸加工用PVAフィルムを得た。しかし、PVAフィルム中には流動パラフィンの液滴が多数存在しており、延伸加工時に液滴に起因する破断が多発して、安定した延伸ができなかった。
【0053】
比較例4
実施例2において、各フィルターに充填するPVA水溶液に代えて、30重量%含水させたPVAとした以外は、実施例2と同様の操作を行った。孔あきが多発しており、厚さ75μmのきれいな延伸加工用PVAフィルムを得るのに19時間を要した。
【0054】
比較例5
実施例2において、各フィルターに替えてパイプを取り付けた以外は、実施例2と同様の操作を行った。スムーズに延伸加工用PVAフィルムを得たが、延伸加工時に異物に起因する破断が多発して、安定した延伸ができなかった。
【0055】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、フィルム中に気泡または液滴などの欠点の発生を抑え、延伸時にこれらの欠点に起因するフィルムの破断が少なく、均一な延伸が容易な延伸加工用PVAフィルムがスムーズに得られる。このPVAフィルムを用いて、寒冷紗や液晶表示画面用として最適な偏光フィルムを得ることができる。

Claims (3)

  1. ビニルアルコール系重合体を構成成分とする製膜原料をフィルターを通過させたのち製膜するビニルアルコール系重合体フィルムの製造法において、フィルターを新たに交換する際に、新たなフィルター内に予め、水もしくは水溶液、または水に溶解可能な液体もしくは水に溶解可能な液体を主要成分とする溶液を充満させておくことを特徴とする延伸加工用ビニルアルコール系重合体フィルムの製造法。
  2. フィルター内に予め充満させる水溶液または溶液が、ビニルアルコール系重合体の水溶液または溶液であり、該ビニルアルコール系重合体の濃度が30重量%以下である請求項1記載の延伸加工用ビニルアルコール系重合体フィルムの製造法。
  3. 延伸加工用ビニルアルコール系重合体フィルムが偏光フィルム用である請求項1または2記載の延伸加工用ビニルアルコール系重合体フィルムの製造法。
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