JP6685661B2 - 偏光フィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリビニルアルコールフィルムを用いて偏光フィルムを製造するための方法に関し、さらに詳しくは、偏光フィルムを製造する際に使用される処理液中に溶出したポリビニルアルコールを効率的に除去することができて欠点の少ない偏光フィルムを収率よく容易に製造することのできる偏光フィルムの製造方法に関する。
特定の偏光を選択的に透過させる偏光板は、光の偏光状態を変化させる液晶とともに、液晶ディスプレイ(LCD)を構成する重要な部材である。LCDは、電卓および腕時計等の小型機器、ノートパソコン、液晶モニター、液晶カラープロジェクター、液晶テレビ、車載用ナビゲーションシステム、携帯電話、屋内外で用いられる計測機器など広範な用途に用いられている。
従来から汎用されている偏光板は、偏光フィルムの片面または両面に、三酢酸セルロースフィルムや酢酸・酪酸セルロースフィルムなどの保護膜を貼り合わせることによって製造されている。当該偏光フィルムとしては、ポリビニルアルコールフィルム(以下、「ポリビニルアルコール」を「PVA」と略記することがある)を一軸延伸して配向させた延伸フィルムにヨウ素系色素や二色性有機染料といった二色性色素が吸着しているものが主流となっている。このような偏光フィルムは、通常、二色性色素を予め含有させたPVAフィルムを一軸延伸したり、PVAフィルムの一軸延伸と同時に二色性色素を吸着させたり、PVAフィルムを一軸延伸した後に二色性色素を吸着させたりするなどして連続的に製造されている。
二色性色素の吸着(染色)は、通常、二色性色素を含む染色処理液(染色液)の入った染色処理槽にPVAフィルムを浸漬させることにより行われる。また、一軸延伸は延伸処理液の入った延伸処理槽中でPVAフィルムを一軸延伸することにより行われることが多い。その他、乾燥したPVAフィルムを膨潤させたり、延伸前または延伸後のPVAフィルムを洗浄したり、架橋処理や固定処理を施したりする際に、各処理用の処理液と接触させる工程を施す場合もある。
ところで、特に液晶モニターや液晶テレビの分野では、LCDの大画面化が急速に進んでおり、それに合せて偏光板にも大面積のものが用いられてきている。偏光板に異物等の付着による光学的な欠陥や染色むら等による欠陥が含まれていると、大面積の偏光板の全てが不良品となるため、これが製品の収率を著しく低下させる大きな原因となっている。この異物の混入への対策として、これまでにいくつかの方法が知られている。
例えば、偏光フィルムを製造するための延伸前のフィルムに対して水流を吹き付けたり気体を噴射させたりして異物を除去する方法や、偏光フィルムに保護膜を貼り合わせるまでの間に、浮遊するゴミが極力少ない環境下で偏光板を製造する方法が知られている(例えば、特許文献1などを参照)。
しかしながら、近年、LCDは高精細なものが求められる傾向がますます強まっており、それにつれてこれまで問題とならなかった大きさないし種類の異物も問題として認識されるようになり、従来知られている方法では上記のような要求に十分応えることができなくなってきている。特に、偏光フィルムの製造工程で使用される上記処理液中に生じる、処理液中に溶出したPVAが析出してヨウ素で染色された、PVAを主成分とする青色の異物(以下、「青色異物」と略称することがある)は、浮遊するゴミが極力少ない環境下でも容易に偏光板に混入するため、その除去が重要な課題である。
当該青色異物に関連して、処理液中に溶解したPVAやホウ酸架橋されたPVAを活性炭で除去する方法が知られている(特許文献2を参照)。
特開2003−207625号公報 特開2008−292935号公報
しかしながら、特許文献2に記載の方法では、使用する活性炭の交換を頻繁に行わなければならず、その交換作業が煩雑で時間的・費用的面において問題があった。そこで本発明は、偏光フィルムを製造する際に使用される処理液中に溶出したPVAを効率的に除去することができて青色異物などに基づく欠点の少ない偏光フィルムを収率よく容易に製造することのできる偏光フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、PVAフィルムに一軸延伸、ヨウ素による染色およびホウ素化合物処理を施して偏光フィルムを連続的に製造する際に、低分子量のPVAに代表される溶出しやすいPVAを含む処理液にバブリングを行うと、処理液中に溶存していたPVAの析出を促進させることができてこれを効率よく除去することができること、および、当該PVAの除去により、青色異物などに基づく欠点の少ない偏光フィルムを収率よく容易に製造することができることを見出し、これらの知見に基づいてさらに検討を重ねて本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
[1] PVAフィルムより偏光フィルムを製造するに際して、使用される処理液に泡沫を発生させる工程を有する偏光フィルムの製造方法;
[2] 泡沫を発生させる上記処理液が、膨潤処理液、染色処理液、架橋処理液、延伸処理液、固定処理液および洗浄処理液からなる群より選ばれる少なくとも1つである、上記[1]の製造方法;
[3] 上記処理液が、ヨウ素含有化合物およびホウ素含有化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物を含む、上記[1]または[2]の製造方法;
[4] 上記処理液が、処理槽、循環ラインおよび保管タンクからなる群より選ばれる少なくとも1つの内にあるときに泡沫を発生させる、上記[1]〜[3]のいずれか1つの製造方法;
[5] 泡沫の直径が1μm〜3cmである、上記[1]〜[4]のいずれか1つの製造方法;
[6] 処理液中に溶存していたPVAを除去する工程を有する、上記[1]〜[5]のいずれか1つの製造方法;
[7] 除去されるPVAが泡沫により析出したものである、上記[6]の製造方法;
に関する。
本発明の製造方法によれば、偏光フィルムを製造する際に使用される処理液中に溶出したPVAを効率的に除去することができて青色異物などに基づく欠点の少ない偏光フィルムを収率よく容易に製造することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
偏光フィルムを製造するための本発明の製造方法は、PVAフィルムより偏光フィルムを製造するに際して、使用される処理液に泡沫を発生させる工程を有する。
〔PVAフィルム〕
PVAフィルムを構成するPVAとしては、ビニルエステルの1種または2種以上を重合して得られるポリビニルエステルをけん化することにより製造されるものを使用することができる。当該ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル等が挙げられる。これらのビニルエステルの中でも、入手の容易性、PVAの製造の容易性、コスト等の点から、分子中にビニルオキシカルボニル基(HC=CH−O−CO−)を有する化合物が好ましく、酢酸ビニルがより好ましい。
上記のポリビニルエステルは、単量体として1種または2種以上のビニルエステルのみを用いて得られたものが好ましく、単量体として1種のビニルエステルのみを用いて得られたものがより好ましいが、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、1種または2種以上のビニルエステルと、これと共重合可能な他の単量体との共重合体であってもよい。
上記のビニルエステルと共重合可能な他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等の炭素数2〜30のα−オレフィン;(メタ)アクリル酸またはその塩;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリルアミド;N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸またはその塩、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルアミンまたはその塩、N−メチロール(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体等の(メタ)アクリルアミド誘導体;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン等のN−ビニルアミド;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル、ポリオキシエチレンビニルエーテル等のビニルエーテル;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル;ビニルエチルカーボネート等のビニルカーボネート;3,4−ジアセトキシ−1−ブテン、3,4−ジエトキシ−1−ブテン等のジヒドロキシブテン誘導体;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸またはその塩、エステルもしくは酸無水物;イタコン酸またはその塩、エステルもしくは酸無水物;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;不飽和スルホン酸またはその塩などを挙げることができる。上記のポリビニルエステルは、前記した他の単量体の1種または2種以上に由来する構造単位を有することができる。
上記のポリビニルエステルに占める上記他の単量体に由来する構造単位の割合は、ポリビニルエステルを構成する全構造単位のモル数に基づいて、15モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることがさらに好ましい。
上記のPVAはその水酸基の一部が架橋されていてもよいし架橋されていなくてもよい。また上記のPVAはその水酸基の一部がホルマリン、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒドなどと反応してアセタール構造を形成していてもよいし、アルデヒドなどと反応せずアセタール構造を形成していなくてもよい。
上記のPVAの重合度は、偏光フィルムを製造する際にPVAフィルムから処理液中に溶出するPVAを少なくするなどの観点から、800以上であることが好ましく、1,000以上であることがより好ましく、1,500以上であることがさらに好ましく、2,000以上であることが特に好ましい。PVAの重合度の上限に特に制限はないが、PVAの製造が工業的に容易であることから、PVAの重合度は、10,000以下であることが好ましく、8,000以下であることがより好ましく、6,000以下であることがさらに好ましい。なお、本明細書でいうPVAの重合度はJIS K 6726−1994の記載に準じて測定した平均重合度を意味する。
PVAのけん化度に特に限定はなく、製造される偏光フィルムの用途などに応じて適宜調整することができるが、得られる偏光フィルムの耐湿熱性などの観点から、88モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましく、98モル%以上であることがさらに好ましい。なお本明細書におけるPVAのけん化度とはPVAが有するけん化によってビニルアルコール単位に変換され得る構造単位(典型的にはビニルエステル単位)とビニルアルコール単位との合計モル数に対して当該ビニルアルコール単位のモル数が占める割合(モル%)をいう。PVAのけん化度はJIS K 6726−1994の記載に準じて測定することができる。
上記のPVAフィルムは可塑剤を含んでいてもよい。PVAフィルムが可塑剤を含むことにより、PVAフィルムの取り扱い性や延伸性の向上等を図ることができる。可塑剤としては多価アルコールが好ましく用いられ、その具体例としては、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジグリセリン、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン等を挙げることができる。これらの可塑剤は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、揮発性と可塑性の観点からグリセリンが好ましい。
PVAフィルムにおける可塑剤の含有量は、PVA100質量部に対して、3〜20質量部の範囲内であることが好ましく、4〜18質量部の範囲内であることがより好ましく、5〜15質量部の範囲内であることがさらに好ましい。可塑剤の含有量がPVA100質量部に対して3質量部以上であることによりPVAフィルムの柔軟性が良くなって取り扱い性が向上する。一方、可塑剤の含有量がPVA100質量部に対して20質量部以下であることにより、PVAフィルムの表面に可塑剤がブリードアウトしてPVAフィルムの取り扱い性が低下したり、延伸性が低下したりするのを抑制することができる。
また、PVAフィルムを後述するPVAフィルムを製造するための製膜原液を用いて製造する場合には、製膜性が向上してフィルムの厚み斑の発生が抑制されると共に、製膜に金属ロールやベルトを使用した際、これらの金属ロールやベルトからのPVAフィルムの剥離が容易になることから、当該製膜原液中に界面活性剤を配合することが好ましい。界面活性剤が配合された製膜原液からPVAフィルムを製造した場合には、当該PVAフィルム中には界面活性剤が含有され得る。PVAフィルムを製造するための製膜原液に配合される界面活性剤、ひいてはPVAフィルム中に含有される界面活性剤の種類は特に限定されないが、金属ロールやベルトからの剥離性の観点から、アニオン性界面活性剤またはノニオン性界面活性剤が好ましく、ノニオン性界面活性剤が特に好ましい。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸カリウム等のカルボン酸型;オクチルサルフェート等の硫酸エステル型;ドデシルベンゼンスルホネート、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸型などが挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のアルキルエーテル型;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のアルキルフェニルエーテル型;ポリオキシエチレンラウレート等のアルキルエステル型;ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル等のアルキルアミン型;ポリオキシエチレンラウリン酸アミド等のアルキルアミド型;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル等のポリプロピレングリコールエーテル型;ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド等のアルカノールアミド型;ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル等のアリルフェニルエーテル型などが挙げられる。
これらの界面活性剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
PVAフィルムを製造するための製膜原液中に界面活性剤を配合する場合、製膜原液中における界面活性剤の含有量、ひいてはPVAフィルム中における界面活性剤の含有量は、製膜原液またはPVAフィルムに含まれるPVA100質量部に対して、0.01〜10質量部の範囲内であることが好ましく、0.02〜5質量部の範囲内であることがより好ましく、0.03〜1質量部の範囲内であることがさらに好ましい。界面活性剤の含有量がPVA100質量部に対して0.01質量部以上であることにより製膜性および剥離性を向上させることができる。一方、界面活性剤の含有量がPVA100質量部に対して10質量部以下であることにより、PVAフィルムの表面に界面活性剤がブリードアウトしてブロッキングが生じて取り扱い性が低下するのを抑制することができる。
PVAフィルムはPVAのみからなっていても、あるいはPVAと上記した可塑剤および/または界面活性剤のみからなっていてもよいが、必要に応じて、酸化防止剤、凍結防止剤、pH調整剤、隠蔽剤、着色防止剤、油剤など、上記したPVA、可塑剤および界面活性剤以外の他の成分を含有していてもよい。
PVAフィルムにおける上記したPVA、可塑剤および界面活性剤の合計の含有率は、50〜100質量%の範囲内であることが好ましく、80〜100質量%の範囲内であることがより好ましく、85〜100質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
PVAフィルムの厚みに特に制限はないが、一軸延伸のしやすさなどの観点から、1μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることがさらに好ましく、10μm以上であることが特に好ましく、また、100μm以下であることが好ましく、90μm以下であることがより好ましく、80μm以下であることがさらに好ましい。なお、PVAフィルムは単層であっても、PVAの層と他の層とが積層された積層体であってもよいが、本発明の効果がより顕著に奏されることから単層であることが好ましい。積層体の場合にはPVAの層の厚みが上記範囲にあることが好ましい。
PVAフィルムの形状に特に制限はないが、偏光フィルムを生産性良く連続的に製造することができることから、長尺のフィルムであることが好ましい。当該長尺のフィルムの長さは特に制限されず、製造される偏光フィルムの用途などに応じて適宜設定することができ、例えば、5〜20,000mの範囲内にすることができる。当該長尺のフィルムの幅に特に制限はなく、例えば30cm以上とすることができるが、近年、液晶ディスプレイの大画面化が進行しており、その要求に合わせるなどの観点から、当該幅は、1m以上であることが好ましく、2m以上であることがより好ましく、2.5m以上であることがさらに好ましく、3m以上であることが特に好ましく、4m以上であることが最も好ましい。本発明によれば青色異物などに基づく欠点の少ない偏光フィルムを収率よく容易に製造することができて、大面積の偏光フィルムを製造する際に当該欠点によって大面積の偏光フィルムないし偏光板の全体が不良品となる問題を解決することができることから、当該幅が広い場合において本発明の効果がより一層顕著に奏される。当該幅の上限に特に制限はないが、当該幅があまりに広すぎると、実用化されている装置で偏光フィルムを製造する場合に、均一に延伸することが困難になる傾向があることから、PVAフィルムの幅は7m以下であることが好ましい。
本発明において使用されるPVAフィルムの製造方法は特に限定されず、製膜後のフィルムの厚みおよび幅がより均一になる製造方法を好ましく採用することができ、例えば、PVAフィルムを構成する上記したPVA、ならびに必要に応じてさらに可塑剤、界面活性剤および他の成分のうちの1種または2種以上が液体媒体中に溶解した製膜原液や、PVA、ならびに必要に応じてさらに可塑剤、界面活性剤、他の成分および液体媒体のうちの1種または2種以上を含み、PVAが溶融している製膜原液を用いて製造することができる。当該製膜原液が可塑剤、界面活性剤および他の成分のうちの少なくとも1種を含有する場合には、それらの成分が均一に混合されていることが好ましい。
製膜原液の調製に使用される上記液体媒体としては、例えば、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンなどを挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上を使用することができる。そのうちでも、環境に与える負荷が小さいことや回収性の点から水が好ましい。
製膜原液の揮発分率(製膜時に揮発や蒸発によって除去される液体媒体などの揮発性成分の製膜原液中における含有割合)は製膜方法、製膜条件等によっても異なるが、50〜95質量%の範囲内であることが好ましく、55〜90質量%の範囲内であることがより好ましく、60〜85質量%の範囲内であることがさらに好ましい。製膜原液の揮発分率が50質量%以上であることにより、製膜原液の粘度が高くなり過ぎず、製膜原液調製時の濾過や脱泡が円滑に行われ、異物や欠点の少ないPVAフィルムの製造が容易になる。一方、製膜原液の揮発分率が95質量%以下であることにより、製膜原液の濃度が低くなり過ぎず、工業的なPVAフィルムの製造が容易になる。
上記した製膜原液を用いてPVAフィルムを製膜する際の製膜方法としては、例えば、キャスト製膜法、押出製膜法、湿式製膜法、ゲル製膜法などが挙げられ、キャスト製膜法、押出製膜法が好ましい。これらの製膜方法は1種のみを採用しても2種以上を組み合わせて採用してもよい。これらの製膜方法の中でも押出製膜法が、厚みおよび幅が均一で物性の良好なPVAフィルムが得られることからより好ましい。PVAフィルムには必要に応じて乾燥や熱処理を行うことができる。
〔偏光フィルムの製造方法〕
偏光フィルムを製造するための本発明の製造方法は、PVAフィルムより偏光フィルムを製造するに際して、使用される処理液に泡沫を発生させる工程を有する。偏光フィルムは、通常、PVAフィルムを原反フィルムとして用いて、膨潤工程、染色工程、架橋工程、延伸工程、固定処理工程などの処理工程を経て製造することができるが、本発明の製造方法では、これらの処理工程などで使用される処理液に泡沫を発生させる。これにより当該処理液中に溶存していたPVAを処理液中に析出させることができ、当該処理液中に溶存していたPVAを効率的に除去することができる。なお本発明の偏光フィルムの製造において使用する処理液が2種以上存在する場合には、全ての処理液に対して泡沫を発生させてもよいし、一部の処理液に対して泡沫を発生させてもよい。
上記処理液の具体例としては、膨潤処理に使用される膨潤処理液、染色処理に使用される染色処理液(染色液)、架橋処理に使用される架橋処理液、延伸処理に使用される延伸処理液、固定処理に使用される固定処理液および洗浄処理に使用される洗浄処理液(洗浄液)などが挙げられ、これらのうちの1つまたは2つ以上に対して泡沫を発生させればよい。本発明者らの検討の結果、青色異物はヨウ素含有化合物やホウ素含有化合物を含有する処理液において特に発生しやすいことが分かった。そのためこのような処理液に泡沫を発生させることにより本発明の効果がより顕著に奏されることから、泡沫を発生させる処理液は、ヨウ素含有化合物およびホウ素含有化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物を含むことが好ましく、ヨウ素含有化合物およびホウ素含有化合物を共に含むことがより好ましい。当該ヨウ素含有化合物としては、例えば、ヨウ素(I)、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウムなどが挙げられ、ヨウ素(I)、ヨウ化カリウムが好ましい。また、当該ホウ素含有化合物としては、例えば、ホウ酸、ホウ砂などが挙げられ、ホウ酸が好ましい。
また本発明の効果がより顕著に奏されることから、処理液が、膨潤処理槽、染色処理槽、架橋処理槽、延伸処理槽、固定処理槽、洗浄処理槽等の処理槽にあるときに泡沫を発生させることが好ましく、延伸処理槽、固定処理槽および洗浄処理槽のうちの少なくとも1つの内にあるときに泡沫を発生させることがより好ましいが、処理液が循環ラインや処理液の保管タンク内にあるときに泡沫を発生させてもよい。上記循環ラインの具体例としては、例えば、処理槽(好ましくは延伸処理槽、固定処理槽および洗浄処理槽のうちの少なくとも1つ)と別の槽(保管タンク等)とを循環ラインで結び、処理液を循環させながら偏光フィルムを製造する場合などにおいて、当該処理槽に直接または間接的に接続された循環ラインなどが挙げられる。また、上記保管タンクの具体例としては、例えば、処理槽(好ましくは延伸処理槽、固定処理槽および洗浄処理槽のうちの少なくとも1つ)と保管タンクを直接または間接的に接続し、処理液を当該処理槽および保管タンク間で循環させながら偏光フィルムを製造する場合などにおける当該保管タンクなどが挙げられる。
偏光フィルムを製造するための本発明の製造方法において採用することのできる各処理工程について、処理液を使用する処理工程であるか、処理液を使用しない処理工程であるかにかかわらず、以下に詳細に説明する。なお、本発明の製造方法において、以下の各処理の1つまたは2つ以上を省略してもよいし、同じ処理を複数回行ってもよいし、別の処理を同時に行ってもよい。
・膨潤処理前の洗浄処理
PVAフィルムに膨潤処理を施す前にPVAフィルムを洗浄することが、PVAフィルムに付着しているブロッキング防止剤などを除去して、偏光フィルムの製造工程にブロッキング防止剤などが持ち込まれることを防止する観点から好ましい。当該洗浄処理は、PVAフィルムを洗浄処理液(洗浄液)の入った洗浄処理槽中に浸漬させることにより行うことが好ましいが、洗浄処理液をPVAフィルムに対して吹き付けることにより行うこともできる。当該洗浄処理液としては、例えば水を用いることができる。当該洗浄処理液の温度は20〜40℃の範囲内であることが好ましい。当該温度が20℃以上であることによりブロッキング防止剤などの除去が行いやすくなる。また当該温度が40℃以下であることによりPVAフィルムの表面の一部が溶解してフィルム同士がくっつきやすくなって取り扱い性が低下するのを抑制することができる。上記のような観点から、当該温度は、22℃以上であることがより好ましく、24℃以上であることがさらに好ましく、26℃以上であることが特に好ましく、また、38℃以下であることがより好ましく、36℃以下であることがさらに好ましく、34℃以下であることが特に好ましい。
・膨潤処理
膨潤処理は、PVAフィルムを水等の膨潤処理液の入った膨潤処理槽中に浸漬させることにより行うことができる。膨潤処理槽中に浸漬する際の膨潤処理液の温度としては、20〜40℃の範囲内であることが好ましく、22〜38℃の範囲内であることがより好ましく、24〜36℃の範囲内であることがさらに好ましく、26〜34℃の範囲内であることが特に好ましい。また、膨潤処理槽中に浸漬する時間としては、例えば、0.1〜5分間の範囲内であることが好ましく、0.5〜3分間の範囲内であることがより好ましい。なお、膨潤処理液として使用される水は純水に限定されず、ホウ素含有化合物等の各種成分が溶解した水溶液であってもよいし、水と水性媒体との混合物であってもよい。当該ホウ素含有化合物の種類は特に限定されないが、取り扱い性の良いホウ酸やホウ砂が好ましい。膨潤処理液がホウ素含有化合物を含む場合、延伸性を向上させる観点から、その濃度は6質量%以下であることが好ましい。
・染色処理
染色処理は、二色性色素としてヨウ素系色素を用いて行うのがよく、染色の時期としては、延伸処理前、延伸処理時、延伸処理後のいずれの段階であってもよい。染色処理は、染色処理液(染色液)としてヨウ素−ヨウ化カリウムを含有する溶液(特に水溶液)を用い、当該染色処理液の入った染色処理槽中にPVAフィルムを浸漬させることにより行うのが好ましい。染色処理液におけるヨウ素の濃度は0.005〜0.2質量%の範囲内であることが好ましく、ヨウ化カリウム/ヨウ素(質量割合)を20〜100の範囲内にすることが好ましい。染色処理液の温度は20〜50℃の範囲内、特に25〜40℃の範囲内とすることが好ましい。染色処理液には、ホウ酸等のホウ素含有化合物が架橋剤として含有されていてもよい。
なお使用するPVAフィルムに予め二色性色素を含有させておけば、染色処理を省略することができる。また、使用するPVAフィルムには予めホウ酸、ホウ砂等のホウ素含有化合物を含有させておくこともできる。
・架橋処理
偏光フィルムの製造にあたって、PVAフィルムへの二色性色素の吸着を強固にするなどの目的のために、染色処理後に架橋処理を行うことが好ましい。架橋処理は、架橋処理液として架橋剤を含有する溶液(特に水溶液)を用い、当該架橋処理液の入った架橋処理槽中にPVAフィルムを浸漬させることにより行うことができる。架橋剤としては、ホウ酸、ホウ砂等のホウ素含有化合物の1種または2種以上を使用することができる。架橋処理液における架橋剤の濃度は、あまりに高すぎると架橋反応が進みすぎてその後に行う延伸工程で十分な延伸を行うのが困難になる傾向があり、また、あまりに少なすぎると架橋処理の効果が低減することから、1〜6質量%の範囲内であることが好ましく、1.5〜5.5質量%の範囲内であることがより好ましく、2〜5質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
また、染色処理後のPVAフィルムから二色性色素が溶出するのを抑制するため、架橋処理液には、ヨウ化カリウム等のヨウ素含有化合物を含有させてもよい。架橋処理液におけるヨウ素含有化合物の濃度は、あまりに高すぎると理由は不明であるが得られる偏光フィルムの耐熱性が低下する傾向があり、また、あまりに少なすぎると二色性色素の溶出抑制効果が低減することから、1〜6質量%の範囲内であることが好ましく、1.5〜5.5質量%の範囲内であることがより好ましく、2〜5質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
架橋処理液の温度は、あまりに高すぎると二色性色素が溶出して得られる偏光フィルムに染色むらが生じやすくなる傾向があり、また、あまりに低すぎると架橋処理の効果が低減することから、20〜45℃の範囲内であることが好ましく、22〜40℃の範囲内であることがより好ましく、25〜35℃の範囲内であることがさらに好ましい。
・延伸処理
延伸処理は、湿式延伸法または乾式延伸法のいずれで行ってもよい。湿式延伸法の場合は、延伸処理液としてホウ酸等のホウ素含有化合物を含有する溶液(特に水溶液)を用い、当該延伸処理液の入った延伸処理槽中で行うこともできるし、上記した染色処理槽中や後述する固定処理槽中で行うこともできる。また乾式延伸法の場合は、吸水後のPVAフィルムを用いて空気中で行うことができる。これらの中でも、湿式延伸法が好ましく、ホウ酸を含む水溶液中で一軸延伸するのがより好ましい。延伸処理液がホウ素含有化合物を含有する場合、当該延伸処理液におけるホウ素含有化合物の濃度は、延伸性を向上させることができることから、1.5〜7質量%の範囲内であることが好ましく、2.0〜6.5質量%の範囲内であることがより好ましく、2.5〜6質量%の範囲であることがさらに好ましい。
また延伸処理液には、ヨウ化カリウム等のヨウ素含有化合物を含有させることが好ましい。延伸処理液におけるヨウ素含有化合物の濃度は、あまりに高すぎると得られる偏光フィルムの色相が青みの強いものとなる傾向があり、また、あまりに低すぎると理由は不明であるが得られる偏光フィルムの耐熱性が低下する傾向があることから、2〜8質量%の範囲内であることが好ましく、2.5〜7.5質量%の範囲内であることがより好ましく、3〜7質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
延伸処理における延伸温度は、あまりに高すぎるとPVAフィルムが溶断しやすくなる傾向があり、また、あまりに低すぎると延伸性が低下する傾向があることから、50〜70℃の範囲内であることが好ましく、52.5〜67.5℃の範囲内であることがより好ましく、55〜65℃の範囲内であることがさらに好ましい。
また、延伸処理における延伸倍率(多段で延伸する場合には各延伸倍率を掛け合わせた総延伸倍率)は、得られる偏光フィルムの偏光性能の点から、5倍以上であることが好ましく、5.5倍以上であることがより好ましく、6倍以上であることが特に好ましい。延伸倍率の上限は特に制限されないが、延伸倍率は8倍以下であることが好ましい。
・固定処理
偏光フィルムの製造に当たっては、PVAフィルムへの二色性色素の吸着を強固にするために固定処理を行うことが好ましい。固定処理は、固定処理液としてホウ酸、ホウ砂等のホウ素含有化合物の1種または2種以上を含む溶液(特に水溶液)を用い、当該固定処理液の入った固定処理槽中にPVAフィルム(好ましくは延伸処理後のPVAフィルム)を浸漬させることにより行うことができる。また必要に応じて、固定処理液にはヨウ素含有化合物や金属化合物を含有させてもよい。固定処理液におけるホウ素含有化合物の濃度は、一般に2〜15質量%、特に3〜10質量%程度であることが好ましい。固定処理液の温度は、15〜60℃、特に25〜40℃であることが好ましい。
・染色処理後の洗浄処理
染色処理後、好ましくは延伸処理後のPVAフィルムに対して洗浄処理を施すことが好ましい。当該洗浄処理は、PVAフィルムを洗浄処理液(洗浄液)の入った洗浄処理槽中に浸漬させることにより行うことが好ましいが、洗浄処理液をPVAフィルムに対して吹き付けることにより行うこともできる。
当該洗浄処理液としては、例えば水を用いることができる。当該水は純水に限定されず、例えばヨウ化カリウム等のヨウ素含有化合物を含有していてもよい。なお、当該洗浄処理液はホウ素含有化合物を含有していてもよいが、その場合、ホウ素含有化合物の濃度は2.0質量%以下であることが好ましい。
当該洗浄処理液の温度は5〜40℃の範囲内であることが好ましい。当該温度が5℃以上であることにより水分の凍結に基づくフィルムの破断を抑制することができる。また、当該温度が40℃以下であることにより得られる偏光フィルムの光学特性が向上する。上記のような観点から、当該温度は、7℃以上であることがより好ましく、10℃以上であることがさらに好ましく、また、38℃以下であることがより好ましく、35℃以下であることがさらに好ましい。
偏光フィルムを製造する際の具体的な方法としては、PVAフィルムに対して染色処理、延伸処理、ならびに、架橋処理および/または固定処理を施す方法が挙げられ、好ましい一例としては、PVAフィルムに対して、膨潤処理、染色処理、架橋処理、延伸処理(特に一軸延伸処理)、洗浄処理をこの順番で施す方法が挙げられる。また、延伸処理は、上記よりも前のいずれかの処理工程で行ってもよいし、2段以上の多段で行ってもよい。
本発明の製造方法では、上記したような処理液に泡沫を発生させる工程を有する。連続的な偏光フィルムの製造過程などにおいては、使用される処理液中に低分子量のPVAに代表される溶出しやすいPVAが溶出して当該処理液中にPVAが溶存していることが多いが、処理液に泡沫を発生させることにより、当該処理液中に溶存していたPVAを処理液中に析出させるなどすることができ、これを除去することで溶存していたPVAを除去することができる。泡沫を発生させることにより溶存していたPVAを処理液中に析出させることができるメカニズムは定かではないが、泡沫が処理液の気液界面ではじけるときに、溶存していたPVA分子が泡沫の界面で凝集しやすいためと考えられる。
泡沫を発生させる方法は特に限定されず、例えば処理液中にバブリングを行うことにより発生させることができる。泡沫を発生させる装置としては、浄化槽用の高い風量を有するエアーポンプや水槽用の低い風量を有するエアーポンプなど各種の泡沫発生装置を、処理槽、循環ライン、保管タンクなど、適用する装置の大きさに応じて適宜選択して使用することができる。
発生させる泡沫の直径は特に制限されないが、1μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、100μm以上であることがさらに好ましく、150μm以上であることが特に好ましく、また、3cm以下であることが好ましく、2cm以下であることがより好ましく、1cm以下であることがさらに好ましい。泡沫の直径が上記下限以上であることにより、泡沫が処理液中で適度な浮遊速度を示し処理液中に溶存していたPVAをより効果的に析出させることができるとともに泡沫が必要以上に処理液中に残存するのを抑制することができ、また泡沫が破裂するときのエネルギーに基づく処理液温度の上昇を抑制することができる。一方、泡沫の直径が上記上限以下であることにより処理液中に溶存していたPVAをより効果的に析出させることができる。なお、本明細書において泡沫の直径とは、実際に発生させた各泡沫の体積と同じ体積を有する真球を想定した場合における当該真球の直径を意味する。
泡沫の発生に使用する気体としては取り扱い性の容易な空気が好ましいが、処理液中におけるヨウ素含有化合物等の各成分が酸化するのを防止するなどの観点から、ヘリウムや窒素などの不活性ガスを使用してもよい。
上記のようにして処理液中に析出させるなどしたPVAを除去することで、当該処理液中に当初溶存していたPVAを効率よく除去することができ、これにより、青色異物などに基づく欠点の少ない偏光フィルムを収率よく容易に製造することができる。PVAの除去方法に特に制限はないが、例えば、PVAが析出しやすい泡沫がはじける処理液の気液界面付近で、フィルター等により捕集する方法;泡沫がはじける処理液の気液界面付近で処理液ごと吸引し、フィルターを通過させてろ過する方法などが挙げられる。また、処理液の薬液組成を均一に保つなどの目的のために処理槽と循環ラインとを結び処理液を循環させる場合には、処理槽からの薬液の吸入口を泡沫が上昇してくる処理液の気液界面近辺に設けた上、循環ラインの途中にフィルターを設置すれば、青色異物等の析出したPVAが偏光フィルムに付着するのをより効果的に抑制することができ好ましい。
使用されるフィルターの素材に特に制限はなく、例えば、鉄、ステンレス等の金属;ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、セルロース、PTFE等の高分子材料;ガラスファイバーや石綿等、腐食に対して耐性のある材料などが挙げられるが、金属はヨウ素含有化合物の影響により腐食が進行しやすい傾向があり、また取り扱いの容易さなども勘案すると、高分子材料が好ましい。
フィルターの目開きは特に指定はないが、目詰まりを抑制しつつPVAを効率よく捕集することができるなどの観点から、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることがさらに好ましく、また、500μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、150μm以下であることがさらに好ましい。フィルターはPVAの捕集量に応じて適宜取り替えればよい。本発明の効果がより顕著に奏されることから、PVAを除去した後の処理液は、例えば循環させるなどの方法によって、偏光フィルムの製造に再度使用されることが好ましい。
本発明の偏光フィルムの製造方法において、フィルムに水流を吹き付ける、気体を噴射する、布やゴム、ガラス等のブレードを用いて青色異物等の異物を掻き落とすなどの方法を組み合わせれば、欠点のより少ない偏光フィルムを得ることができ好ましい。
上記のような各処理を経た後のフィルムに乾燥処理を施すことにより目的とする偏光フィルムを得ることができる。乾燥処理方法に特に制限はなく、例えば、フィルムを加熱ロールに接触させる接触式の方法、熱風乾燥機中で乾燥させる方法、フィルムを浮遊させながら熱風により乾燥させるフローティング式の方法などが挙げられる。
〔偏光板〕
以上のようにして得られた偏光フィルムは、その両面または片面に、光学的に透明で且つ機械的強度を有する保護膜を貼り合わせて偏光板にして使用されることが好ましい。保護膜としては、三酢酸セルロース(TAC)フィルム、シクロオレフィンポリマー(COP)フィルム、酢酸・酪酸セルロース(CAB)フィルム、アクリル系フィルム、ポリエステル系フィルムなどが使用される。また、貼り合わせのための接着剤としては、PVA系接着剤やウレタン系接着剤などを挙げることができるが、中でもPVA系接着剤が好適である。
上記のようにして得られた偏光板は、アクリル系等の粘着剤を積層した後、ガラス基板に貼り合わせてLCDの部品として使用することができる。同時に位相差フィルムや視野角向上フィルム、輝度向上フィルム等と貼り合わせてもよい。
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において採用された偏光フィルムの表面に付着した青色異物の個数の測定方法を以下に示す。
偏光フィルムの表面に付着した青色異物の個数の測定方法
延伸方向30cm×幅方向20cmにカットした偏光フィルム上にある青色異物を目視で観察してマーキングし、それらを微分干渉顕微鏡200倍下で観察して、その形状を略楕円形とした場合の長径が1〜500μmの範囲にある青色異物の個数をカウントした。
[実施例1]
幅650mmで厚み60μmのPVAフィルム(PVA100質量部に対してグリセリンを12質量部およびラウリン酸ジエタノールアミドを0.16質量部を含有する単層のフィルム。PVAにおけるエチレン単位の含有率は2.0モル%で、けん化度は99.9モル%で、重合度は2,400。)に膨潤処理、染色処理、架橋処理、延伸処理、洗浄処理、乾燥処理をこの順に施して偏光フィルムを連続的に製造した。膨潤処理は膨潤処理液として30℃の純水の入った膨潤処理槽中で長さ方向に1.72倍に一軸延伸しながら実施した。染色処理は32℃の染色処理液の入った膨潤処理槽中で長さ方向に1.37倍に一軸延伸しながら実施した。なお染色処理液としてはヨウ素0.05質量%およびヨウ化カリウム1.15質量%の水溶液を用いた。架橋処理は架橋処理液として32℃の2.6質量%ホウ酸水溶液の入った膨潤処理槽中で1.12倍に長さ方向に一軸延伸しながら実施した。延伸処理は55℃の延伸処理液の入った膨潤処理槽中で長さ方向に2.31倍に一軸延伸することにより実施した。なお延伸処理液としてはホウ酸2.8質量%およびヨウ化カリウム5質量%の水溶液を用いた。洗浄処理は22℃の洗浄処理液の入った洗浄処理槽中に延伸しないで12秒間浸漬することにより実施した。なお洗浄処理液としてはホウ酸1.5質量%およびヨウ化カリウム5質量%の水溶液を用いた。乾燥処理は延伸しないで60℃で1.5分間行うことにより実施した。
上記のようにして偏光フィルムを製造する過程で、染色処理液、架橋処理液、延伸処理液および洗浄処理液の全てに対して、これらが対応する各処理槽内にあるときにパナソニック株式会社製の「PANA AIR BH−707」を用いて直径が0.2mmから1cmの泡沫(空気)をそれぞれ発生させ、泡沫がはじける各処理液の気液界面付近で、目開き0.20mmのナイロンメッシュを用いて、泡沫により析出した、処理液中に溶存していたPVAに由来する青色異物の捕集作業をそれぞれ行った。このとき、各処理液の温度上昇は見られず、各処理液中に泡沫が残存する現象も見られなかった。
偏光フィルムの製造を開始してから6時間経過後、偏光フィルムをサンプリングしてその表面に付着した青色異物の個数を上記した方法により測定したところ、0個であった。
[実施例2]
実施例1において、パナソニック株式会社製の「PANA AIR BH−707」を用いて直径が0.2mmから1cmの泡沫(空気)をそれぞれ発生させたことに代えて、株式会社田中金属製作所製の「TK7003」を用いて直径が0.01mmから0.1mmの泡沫(空気)をそれぞれ発生させたこと以外は実施例1と同様にして偏光フィルムを連続的に製造した。このとき、各処理液の温度上昇は見られなかったが、各処理液中に泡沫が残存する現象が若干見られた。
偏光フィルムの製造を開始してから6時間経過後、偏光フィルムをサンプリングしてその表面に付着した青色異物の個数を上記した方法により測定したところ、0個であった。
[実施例3]
実施例1において、泡沫発生部にナイロンメッシュを配置することにより発生する泡沫の直径を1.5cmから3cmとしたこと以外は実施例1と同様にして偏光フィルムを連続的に製造した。このとき、各処理液の温度上昇は見られず、各処理液中に泡沫が残存する現象も見られなかった。
偏光フィルムの製造を開始してから6時間経過後、偏光フィルムをサンプリングしてその表面に付着した青色異物の個数を上記した方法により測定したところ、1個であった。
[比較例1]
実施例1において、染色処理液、架橋処理液、延伸処理液および洗浄処理液のいずれに対しても泡沫を発生させなかったこと以外は実施例1と同様にして偏光フィルムを連続的に製造した。
偏光フィルムの製造を開始してから6時間経過後、偏光フィルムをサンプリングしてその表面に付着した青色異物の個数を上記した方法により測定したところ、5個であった。
本発明の製造方法によれば、偏光フィルムを製造する際に使用される処理液中に溶出したPVAを効率的に除去することができて青色異物などに基づく欠点の少ない偏光フィルムを収率よく容易に製造することができることから、当該偏光フィルムは、電卓、腕時計、ノートパソコン、液晶モニター、液晶カラープロジェクター、液晶テレビ、車載用ナビゲーションシステム、携帯電話、屋内外で用いられる計測機器などの高い表示品質が求められるLCDの構成部材である偏光板の作製などに有効に用いることができる。

Claims (6)

  1. ポリビニルアルコールフィルムより偏光フィルムを製造するに際して、使用される処理液に泡沫を発生させ、処理液中に溶存していたポリビニルアルコールを除去する工程を有する偏光フィルムの製造方法であって、除去されるポリビニルアルコールが泡沫により析出したものである、偏光フィルムの製造方法
  2. 泡沫を発生させる上記処理液が、膨潤処理液、染色処理液、架橋処理液、延伸処理液、固定処理液および洗浄処理液からなる群より選ばれる少なくとも1 つである、請求項1に記載の製造方法。
  3. 上記処理液が、ヨウ素含有化合物およびホウ素含有化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物を含む、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 上記処理液が、処理槽、循環ラインおよび保管タンクからなる群より選ばれる少なくとも1つの内にあるときに泡沫を発生させる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 泡沫の直径が1μm〜3cmである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 泡沫の直径が1.5cm〜3cmである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
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