JP5956276B2 - 偏光フィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、偏光フィルムの製造方法に関する。
光の透過および遮蔽機能を有する偏光板は、光の偏光状態を変化させる液晶と共に液晶ディスプレイ(LCD)の基本的な構成要素である。多くの偏光板は偏光フィルムの表面に三酢酸セルロース(TAC)フィルムなどの保護膜が貼り合わされた構造を有しており、偏光板を構成する偏光フィルムとしてはポリビニルアルコールフィルム(以下、「ポリビニルアルコール」を「PVA」と略記することがある)を一軸延伸して配向させた延伸フィルムにヨウ素系色素(I やI 等)や二色性有機染料といった二色性色素が吸着しているものが主流となっている。このような偏光フィルムは、二色性色素を予め含有させたPVAフィルムを一軸延伸したり、PVAフィルムの一軸延伸と同時に二色性色素を吸着させたり、PVAフィルムを一軸延伸した後に二色性色素を吸着させたりするなどして製造される。
LCDは、電卓および腕時計などの小型機器、ノートパソコン、液晶モニター、液晶カラープロジェクター、液晶テレビ、車載用ナビゲーションシステム、携帯電話、屋内外で用いられる計測機器などの広範囲において用いられるようになっているが、近年、特に小型のノートパソコンや携帯電話などのモバイル用途へ用いられることが多くなっており、偏光板への薄型化の要求が強くなっている。特に偏光板を構成する偏光フィルムの厚みを10μm以下にするという要求が高まっている。
偏光板を構成する偏光フィルムを薄型化する方法として、熱可塑性樹脂フィルムの片面にPVA層を形成してなる積層体を延伸、染色、乾燥してから、必要に応じて延伸された熱可塑性樹脂フィルムの層を剥離除去する方法が知られている(特許文献1および2などを参照)。
具体的に特許文献1には、基材樹脂フィルムにPVAを塗布する工程、および、得られる積層フィルムを、PVA層の厚さが10μm以下となるように横一軸延伸する工程を有する偏光フィルムの製造方法が記載されている。特許文献1には、基材樹脂フィルムへのPVA溶液の塗布に先立って基材樹脂フィルムを表面処理してもよいことが記載されており、その実施例において、非晶性ポリエチレンテレフタレートシートの表面を濡れ張力が500μN/cm前後となるようにコロナ処理し、この面に重合度が2,400のPVAを含む水溶液を塗工してPVA層を設け、このシートを4.5倍に横一軸延伸したことが記載されている。
また特許文献2には、少なくとも20μmの厚みを有する樹脂基材にPVA層を生成し、二色性物質を吸着させた後、ホウ酸水溶液中において、総延伸倍率が元長の5倍以上となるように延伸して偏光フィルムを作製する方法が記載されている。特許文献2にも、樹脂基材の表面にはPVA層との密着性を向上させるためコロナ処理を含む表面改質処理が施されていてもよいことが記載されている。
特開2003−43257号公報 国際公開第2010/100917号
しかしながら、熱可塑性樹脂フィルムに対する上記従来の表面処理方法では、熱可塑性樹脂フィルム層とPVA層とを有する積層体を高い延伸倍率で延伸する際にPVA層が剥離したり裂けたりして偏光性能に優れる偏光フィルムの製造が困難になるという問題があった。そこで本発明は、熱可塑性樹脂フィルム層とPVA層とを有する積層体を高い延伸倍率で延伸することができて、偏光性能に優れる偏光フィルムを円滑且つ簡便に製造することのできる偏光フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、熱可塑性樹脂フィルムの表面の接触角を予め55〜70°に調整した上で、この表面と接するようにPVA層を形成してなる積層体を用いれば、高い延伸倍率で延伸することができて、偏光性能に優れる偏光フィルムを円滑且つ簡便に製造することができることを見出し、当該知見に基づいてさらに検討を重ねて本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
[1]少なくとも一方の表面の接触角が55〜70°である熱可塑性樹脂フィルム上に当該接触角を有する表面と接するようにPVA層を形成してなる、熱可塑性樹脂フィルム層とPVA層とを有する積層体を延伸する工程を含む偏光フィルムの製造方法;
[2]熱可塑性樹脂フィルム層を構成する熱可塑性樹脂が非晶性ポリエチレンテレフタレートである、上記[1]の製造方法;
[3]PVA層に含まれるPVAの平均重合度が2,800〜9,500である、上記[1]または[2]の製造方法;
[4]PVA層が可塑剤をPVA100質量部に対して1〜15質量部含む、上記[1]〜[3]のいずれか1つの製造方法;
[5]可塑剤がグリセリンである、上記[4]の製造方法;
[6]積層体を延伸する際の延伸倍率が5.5倍以上である、上記[1]〜[5]のいずれか1つの製造方法;
[7]厚みが10μm以下の偏光フィルムの製造方法である、上記[1]〜[6]のいずれか1つの製造方法;
に関する。
本発明の偏光フィルムの製造方法によれば、熱可塑性樹脂フィルム層とPVA層とを有する積層体を高い延伸倍率で延伸することができて、偏光性能に優れる偏光フィルムを円滑且つ簡便に製造することができる。
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明において使用される積層体は熱可塑性樹脂フィルム層とPVA層とを有する。そして当該積層体は、少なくとも一方の表面の接触角が55〜70°である熱可塑性樹脂フィルム上に当該接触角を有する表面と接するようにPVA層を形成してなるものである。当該接触角が55°より低いと熱可塑性樹脂フィルム層とPVA層との接着強度が強くなり過ぎ、積層体の延伸後に延伸された熱可塑性樹脂フィルム層を剥離する場合に剥離が困難になる。一方、当該接触角が70°より高いと、積層体の延伸中に熱可塑性樹脂フィルム層からPVA層が剥離したり裂けたりしやすくなって、高い延伸倍率で延伸するのが困難になる。延伸された熱可塑性樹脂フィルム層を剥離する際の剥離性や積層体の延伸性などの観点から、上記接触角は57〜69°であることが好ましく、59〜68°であることがより好ましい。熱可塑性樹脂フィルムは少なくとも一方の表面の接触角が上記した範囲内にあるが、少なくともPVA層と接する表面の接触角が上記した範囲内にあればよく、通常は熱可塑性樹脂フィルムの一方の面のみにおいてその接触角が上記した範囲内にあればよい。なお、熱可塑性樹脂フィルムの表面の接触角とは、水の自由表面が熱可塑性樹脂フィルムに接する場所での水面と熱可塑性樹脂フィルムの表面とのなす角(水の内部にある角をとる)をいい、実施例において後述する方法によって測定することができる。
熱可塑性樹脂フィルムの表面の接触角を調整するための処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、アンカーコート処理等が挙げられる。これらの中でも、接触角を調整しやすい点からコロナ処理が好ましい。
コロナ処理の条件に特に制限はないが、熱可塑性樹脂フィルムの表面の接触角を容易に上記範囲に調整することができることから、下記式(1)で表される放電量が180〜350W・分/mの範囲内であることが好ましく、190〜320W・分/mの範囲内であることがより好ましく、200〜300W・分/mの範囲内であることがさらに好ましい。
放電量(W・分/m) = 出力(W/m)/処理速度(m/分) (1)
熱可塑性樹脂フィルム層を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、メタクリル樹脂、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート等の各種熱可塑性樹脂、およびこれらの熱可塑性樹脂を構成する単量体単位を複数種有する共重合体などが挙げられる。熱可塑性樹脂フィルム層において、熱可塑性樹脂は1種のみ含まれていても、2種以上含まれていてもどちらでもよい。これらの中でも、高い耐熱性と延伸性を備える点で、ポリエチレンテレフタレートが好ましく、非晶性ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。
熱可塑性樹脂フィルム層の厚みは、20〜250μmの範囲内であることが好ましく、30〜230μmの範囲内であることがより好ましく、50〜200μmの範囲内であることがさらに好ましい。熱可塑性樹脂フィルム層の厚みが20μm以上であることにより、PVA層を形成する際に皺が入るのを効果的に防止することができる。一方、熱可塑性樹脂フィルム層の厚みが250μm以下であることにより、積層体を延伸する際の張力が過度に高くなるのを抑制することができる。
PVA層におけるPVAとしては、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、酢酸イソプロペニル等のビニルエステルの1種または2種以上を重合して得られるポリビニルエステルをけん化することにより得られるものを使用することができる。上記のビニルエステルの中でも、PVAの製造の容易性、入手容易性、コスト等の点から、酢酸ビニルが好ましい。
上記のポリビニルエステルは、単量体として1種または2種以上のビニルエステルのみを用いて得られたものが好ましく、単量体として1種のビニルエステルのみを用いて得られたものがより好ましいが、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、1種または2種以上のビニルエステルと、これと共重合可能な他の単量体との共重合体であってもよい。
上記のビニルエステルと共重合可能な他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等の炭素数2〜30のα−オレフィン;(メタ)アクリル酸またはその塩;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸またはその塩、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルアミンまたはその塩、N−メチロール(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体等の(メタ)アクリルアミド誘導体;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン等のN−ビニルアミド;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸またはその塩、エステルもしくは酸無水物;イタコン酸またはその塩、エステルもしくは酸無水物;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;不飽和スルホン酸などを挙げることができる。上記のポリビニルエステルは、前記した他の単量体の1種または2種以上に由来する構造単位を有することができる。
上記のポリビニルエステルに占める前記した他の単量体に由来する構造単位の割合は、ポリビニルエステルを構成する全構造単位のモル数に基づいて、15モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることがさらに好ましい。
特に前記した他の単量体が、(メタ)アクリル酸、不飽和スルホン酸などのように、得られるPVAの水溶性を促進する可能性のある単量体である場合には、偏光フィルムの製造過程においてPVAが溶解するのを防止するために、ポリビニルエステルにおけるこれらの単量体に由来する構造単位の割合は、ポリビニルエステルを構成する全構造単位のモル数に基づいて、5モル%以下であることが好ましく、3モル%以下であることがより好ましい。
上記のPVAは、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、1種または2種以上のグラフト共重合可能な単量体によって変性されたものであってもよい。当該グラフト共重合可能な単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸またはその誘導体;不飽和スルホン酸またはその誘導体;炭素数2〜30のα−オレフィンなどが挙げられる。PVAにおけるグラフト共重合可能な単量体に由来する構造単位(グラフト変性部分における構造単位)の割合は、PVAを構成する全構造単位のモル数に基づいて、5モル%以下であることが好ましい。
上記のPVAは、その水酸基の一部が架橋されていてもよいし架橋されていなくてもよい。また上記のPVAは、その水酸基の一部がアセトアルデヒド、ブチルアルデヒド等のアルデヒド化合物などと反応してアセタール構造を形成していてもよいし、これらの化合物と反応せずアセタール構造を形成していなくてもよい。
上記のPVAの平均重合度は2,800〜9,500の範囲内であることが好ましく、3,000〜9,200の範囲内であることがより好ましく、4,000〜6,000の範囲内であることがさらに好ましい。一般にはPVAの平均重合度が高くなれば延伸時の張力が高まって限界延伸倍率が低下するものと考えられるが、本発明者らは、熱可塑性樹脂フィルム層とPVA層とを有する積層体を延伸して偏光フィルムを得るにあたり、上記の平均重合度を有するPVAを用いると、例えば、平均重合度が2,600のPVAを用いた場合と比較して限界延伸倍率が低下せずにむしろ向上し、偏光性能に優れる偏光フィルムを円滑且つ簡便に製造することができることを見出した。
なお、PVA層の形成に使用されるPVA(PVA層に含まれるPVA)の平均重合度は、JIS K6726−1994の記載を基に求めることができ、具体的には実施例において後述する方法により求めることができる。
上記のPVAのけん化度は、得られる偏光フィルムの偏光性能などの観点から、98モル%以上であることが好ましく、98.5モル%以上であることがより好ましく、99モル%以上であることがさらに好ましい。けん化度が98モル%未満であると、偏光フィルムの製造過程でPVAが溶出しやすくなり、溶出したPVAがフィルムに付着して偏光フィルムの偏光性能を低下させる場合がある。なお、本明細書におけるPVAのけん化度とは、PVAが有する、けん化によってビニルアルコール単位に変換され得る構造単位(典型的にはビニルエステル単位)とビニルアルコール単位との合計モル数に対して当該ビニルアルコール単位のモル数が占める割合(モル%)をいう。けん化度はJIS K6726−1994の記載に準じて測定することができる。
PVA層は、積層体を延伸する際の延伸性向上の観点から可塑剤を含むことが好ましい。当該可塑剤としては、例えば、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジグリセリン、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン等の多価アルコールなどを挙げることができ、PVA層はこれらの可塑剤の1種または2種以上を含むことができる。これらの中でも、延伸性の向上効果の観点からグリセリンが好ましい。
PVA層における可塑剤の含有量は、それに含まれるPVA100質量部に対して、1〜15質量部の範囲内であることが好ましい。当該含有量が1質量部以上であることにより、積層体の延伸性をより向上させることができる。一方、当該含有量が15質量部以下であることにより、PVA層が柔軟になり過ぎて取り扱い性が低下するのを防止したり、熱可塑性樹脂フィルム層からPVA層が剥離するのを防止したりすることができる。PVA層における可塑剤の含有量はPVA100質量部に対して2〜13質量部の範囲内であることがより好ましく、4〜12質量部の範囲内であることがさらに好ましく、5〜8質量部の範囲内であることが特に好ましい。特にPVA層に含まれるPVAの平均重合度が上記範囲にある場合において、PVA層における可塑剤の含有量がPVA100質量部に対して2〜13質量部の範囲内、さらには4〜12質量部の範囲内、特に5〜8質量部の範囲内であると、理由は定かではないが限界延伸倍率がより向上することから、このような含有量はより好ましい。
なお、偏光フィルムの製造条件などにもよるが、PVA層に含まれる可塑剤は偏光フィルムを製造する際に溶出するなどするため、その全量が偏光フィルムに残存するとは限らない。
PVA層は、必要に応じて、酸化防止剤、凍結防止剤、pH調整剤、隠蔽剤、着色防止剤、油剤、界面活性剤などの成分をさらに含んでいてもよい。
PVA層におけるPVAの含有率は、所望とする偏光フィルムの調製のしやすさなどから、50〜99質量%の範囲内であることが好ましく、75〜98質量%の範囲内であることがより好ましく、80〜96質量%の範囲内であることがさらに好ましく、85〜95質量%の範囲内であることが特に好ましい。
PVA層の厚みは特に制限されず、例えば100μm以下とすることができるが、薄型の偏光フィルムを容易に調製することができることなどからPVA層を薄くすることが好ましく、具体的には、PVA層の厚みは20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましい。本発明の製造方法では特定の積層体を用いるため、PVA層の厚みを上記のように薄くしても高い限界延伸倍率で延伸することができ、結果として、偏光性能に優れる薄型の偏光フィルムを得ることができる。また、PVA層の厚みが上記のように薄い場合には積層体を延伸する際の張力を低減することも可能となる。なお、PVA層の厚みがあまりに薄すぎると積層体の延伸時に延伸切れが発生しやすくなる傾向があることから、PVA層の厚みは、例えば3μm以上である。
積層体の層構成に特に制限はないが、偏光性能に優れる偏光フィルムがより簡便に得られることなどから、熱可塑性樹脂フィルム層1層とPVA層1層の2層構造であることが好ましい。
積層体の形状は特に制限されないが、より均一な積層体を連続して容易に製造することができると共に、それを用いて偏光フィルムを製造する際にも連続して使用することができることから長尺の積層体であることが好ましい。長尺の積層体の長さ(長尺方向の長さ)は特に制限されず、製造される偏光フィルムの用途などに応じて適宜設定することができ、例えば、5〜20,000mの範囲内とすることができる。
積層体の幅は特に制限されず、製造される偏光フィルムの用途などに応じて適宜設定することができるが、近年、液晶テレビや液晶モニターの大画面化が進行している点から、積層体の幅を0.5m以上、より好ましくは1.0m以上にしておくと、これらの用途に好適である。一方、積層体の幅があまりに広すぎると実用化されている装置で偏光フィルムを製造する場合に均一に延伸することが困難になる傾向があることから、積層体の幅は7m以下であることが好ましい。
本発明において使用される積層体は、少なくとも一方の表面の接触角が55〜70°である熱可塑性樹脂フィルム上に当該接触角を有する表面と接するようにPVA層を形成してなるものである。当該積層体を製造するための具体的な方法としては、PVAおよび必要に応じてさらに上記した可塑剤などPVA以外の他の成分が液体媒体中に溶解した原液を熱可塑性樹脂フィルム上に塗工して乾燥する方法;PVA、液体媒体および必要に応じてさらに他の成分を溶融混練してなる原液を熱可塑性樹脂フィルム上に押し出し、必要に応じてさらに乾燥する方法;PVAおよび必要に応じてさらに他の成分を含むPVAフィルムを公知の方法で作製してから、熱可塑性樹脂フィルムと貼り合わせる方法などが挙げられる。これらの中でも、薄いPVA層を容易に調製できる点および得られるPVA層の厚みの均一性の点から、PVAおよび必要に応じてさらに他の成分が液体媒体中に溶解した原液を熱可塑性樹脂フィルム上に塗工して乾燥する方法が好ましい。
上記の液体媒体としては、例えば、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンなどを挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上を使用することができる。そのうちでも、環境に与える負荷や回収性の点から水が好ましい。
原液の揮発分率(PVA層の形成時に揮発や乾燥などによって除去される液体媒体などの揮発性成分の、原液中における含有割合)は、PVA層の形成方法や形成条件などによっても異なるが、50〜98質量%の範囲内であることが好ましく、55〜95質量%の範囲内であることがより好ましい。原液の揮発分率が50質量%以上であることにより、その粘度が高くなり過ぎず、原液調製時の濾過や脱泡が円滑に行われて異物や欠点の少ないPVA層の形成が容易になると共に、塗工性も向上する。一方、原液の揮発分率が98質量%以下であることにより、原液の濃度が低くなり過ぎず、積層体の工業的な製造が容易になる。
原液を熱可塑性樹脂フィルム上に塗工する際の塗工方法としては、例えば、ダイコート法、コンマコート法、ディップコート法などが挙げられる。これらの中でも、得られるPVA層の厚みの均一性の点からダイコート法が好ましい。
原液を熱可塑性樹脂フィルム上に塗工したり押し出したりした後の乾燥の条件に特に制限はないが、熱可塑性樹脂フィルムに皺が入ることを防ぐため、熱可塑性樹脂フィルムのガラス転移温度以下の温度で乾燥するのが好ましい。
本発明の製造方法は上記の積層体を延伸する工程を含む。ここで、PVA層に予め二色性色素を含有させておけば、積層体を延伸することによって二色性色素が吸着している偏光フィルムを得ることができる。この場合において、PVA層に二色性色素を含有させる方法は特に制限されず、例えば、積層体のPVA層に二色性色素を接触させる方法や、PVA層を形成するための上記した原液に予め二色性色素を含有させる方法などを適宜採用することができる。また、PVA層に予め二色性色素を含有させておかない場合には、積層体の延伸中に延伸途上にあるPVA層に二色性色素を接触させたり、あるいは、積層体を延伸した後にPVA層から形成された延伸フィルム層に二色性色素を接触させたりすることによって二色性色素が吸着している偏光フィルムを得ることができる。
上記したいずれの方法においても、延伸および二色性色素を接触させる処理(染色)の他に、PVA層の不溶化処理、膨潤処理、架橋処理、固定処理、乾燥などを必要に応じてさらに施すことができる。各処理の順番は必要に応じて適宜変更してもよく、また各処理を2回以上実施してもよく、さらに異なる処理を同時に実施してもよい。また、上記の製造方法によれば、延伸された熱可塑性樹脂フィルム層上に形成された偏光フィルムが得られるが、当該延伸された熱可塑性樹脂フィルムを必要に応じて剥離する工程を含んでいてもよい。
本発明の製造方法の一例としては、まず二色性色素を含まないPVA層を有する積層体に対して不溶化処理を施し、必要に応じてさらに膨潤処理を施し、次いで二色性色素を接触させることでPVA層に二色性色素を含有させ、必要に応じてさらに架橋処理を施し、得られた積層体を延伸し、必要に応じてさらに固定処理を施し、乾燥し、これらの一連の処理によって、延伸された熱可塑性樹脂フィルム層上に形成された偏光フィルムを得て、当該延伸された熱可塑性樹脂フィルム層を剥離する方法が挙げられる。
PVA層の不溶化処理は、主として、PVA層に含まれるPVAの水への溶出を防止するために行われる。当該不溶化処理としては、例えば、積層体に対して熱処理を施す方法や、積層体をホウ酸、ホウ砂等のホウ酸塩などのホウ素化合物の1種または2種以上を含む水溶液に浸漬する方法が挙げられる。これらのうち、積層体に対して熱処理を施すと熱可塑性樹脂フィルム層の寸法変化に伴い皺が入る場合があることから、ホウ素化合物を含む水溶液を用いる方法が好ましい。上記熱処理は、例えば80〜200℃の範囲内の温度で行うことができる。皺を防止する観点から熱処理は積層体に張力をかけながら行うのが好ましい。またホウ素化合物を含む水溶液を用いる方法においてその水溶液の温度は、20〜40℃の範囲内であることが好ましく、22〜38℃の範囲内であることがより好ましく、25〜35℃の範囲内であることがさらに好ましい。当該温度を20〜40℃の範囲内にすることでPVAの溶解を防止して効率良く不溶化することができる。ホウ素化合物を含む水溶液に浸漬する時間としては、例えば、0.1〜5分間の範囲内である。0.1〜5分間の範囲内にすることで効率良く不溶化することができる。ホウ素化合物を含む水溶液中におけるホウ素化合物の濃度は0.5〜6.0質量%の範囲内であることが好ましく、1.0〜5.0質量%の範囲内であることがより好ましく、1.5〜4.0質量%の範囲内であることがさらに好ましい。当該濃度を0.5〜6.0質量%の範囲内にすることでPVAの溶解を防止して効率良く不溶化することができる。
PVA層の不溶化処理は二色性色素を接触させる処理の前、さらには膨潤処理の前に行うのが好ましい。
膨潤処理は、積層体を水に浸漬することにより行うことができる。水に浸漬する際の水の温度としては、20〜40℃の範囲内であることが好ましく、22〜38℃の範囲内であることがより好ましく、25〜35℃の範囲内であることがさらに好ましい。当該温度を20〜40℃の範囲内にすることでPVA層を効率良く膨潤させることができる。また、水に浸漬する時間としては、0.1〜5分間の範囲内であることが好ましく、0.5〜3分間の範囲内であることがより好ましい。0.1〜5分間の範囲内にすることでPVA層を効率良く膨潤させることができる。なお、水に浸漬する際の水は純水に限定されず、各種成分が溶解した水溶液であってもよいし、水と水性媒体との混合物であってもよい。
上記したように、延伸前の積層体のPVA層、積層体の延伸中における延伸途上にあるPVA層、積層体を延伸した後のPVA層から形成された延伸フィルムなどに対して二色性色素を接触させて染色することによって、二色性色素が吸着している偏光フィルムを得ることができる。二色性色素の接触は、延伸前、延伸中、または延伸後の積層体を、二色性色素を含む溶液(特に水溶液)に浸漬することにより行うことができる。二色性色素を含む溶液中における二色性色素の濃度は使用される二色性色素の種類などに応じて適宜設定することができ、例えば0.001〜1質量%とすることができるが、二色性色素を含む溶液としてヨウ素−ヨウ化カリウム溶液(特に水溶液)を用いる場合には、ヨウ素系色素を効率良く吸着させることができることから、使用されるヨウ素(I)の濃度として0.01〜1.0質量%の範囲内であることが好ましく、使用されるヨウ化カリウム(KI)の濃度として0.01〜10質量%の範囲内であることが好ましい。二色性色素を含む溶液の温度は、二色性色素を効率良く吸着させることができることから、20〜50℃の範囲内、特に25〜40℃の範囲内とすることが好ましい。
本発明における二色性色素としては、ヨウ素系色素(I やI 等)、二色性有機染料などが挙げられる。ヨウ素系色素は、例えば、ヨウ素(I)とヨウ化カリウムとを接触させることにより得ることができる。また、二色性有機染料としては、ダイレクトブラック 17、19、154;ダイレクトブラウン 44、106、195、210、223;ダイレクトレッド 2、23、28、31、37、39、79、81、240、242、247;ダイレクトブルー 1、15、22、78、90、98、151、168、202、236、249、270;ダイレクトバイオレット 9、12、51、98;ダイレクトグリーン 1、85;ダイレクトイエロー 8、12、44、86、87;ダイレクトオレンジ 26、39、106、107などが挙げられる。これらの二色性色素の中でも、取り扱い性、入手性、偏光性能などの観点からヨウ素系色素が好ましい。なお、二色性色素は1種単独であっても2種以上であってもどちらでもよく、例えば、I およびI のように平衡混合物であってもよい。
PVA層に対して架橋処理を施すことで、高温で湿式延伸する際にPVAが水へ溶出するのをより効果的に防止することができる。この観点から架橋処理は二色性色素を接触させる処理の後であって延伸の前に行うのが好ましい。架橋処理は、架橋剤を含む水溶液に積層体を浸漬することにより行うことができる。当該架橋剤としては、ホウ酸、ホウ砂等のホウ酸塩などのホウ素化合物の1種または2種以上を使用することができる。架橋剤を含む水溶液における架橋剤の濃度は1〜15質量%の範囲内であることが好ましく、2〜7質量%の範囲内であることがより好ましく、3〜6質量%の範囲内であることがさらに好ましい。架橋剤の濃度が1〜15質量%の範囲内にあることで十分な延伸性を維持することができる。架橋剤を含む水溶液はヨウ化カリウム等の助剤を含有してもよい。架橋剤を含む水溶液の温度は、20〜50℃の範囲内、特に25〜40℃の範囲内とすることが好ましい。当該温度を20〜50℃の範囲内にすることで効率良く架橋することができる。
積層体を延伸する際の延伸方法に特に制限はなく、湿式延伸法および乾式延伸法のうちのいずれで行ってもよい。湿式延伸法の場合は、ホウ酸、ホウ砂等のホウ酸塩などのホウ素化合物の1種または2種以上を含む水溶液中で行うこともできるし、上記した二色性色素を含む溶液中や後述する固定処理浴中で行うこともできる。また乾式延伸法の場合は、室温のまま延伸を行ってもよいし、熱をかけながら延伸してもよいし、吸水後に延伸してもよい。これらの中でも、得られる偏光フィルムにおける幅方向の厚みの均一性の点から湿式延伸法が好ましく、ホウ酸水溶液中で延伸することがより好ましい。ホウ酸水溶液中におけるホウ酸の濃度は0.5〜6.0質量%の範囲内であることが好ましく、1.0〜5.0質量%の範囲内であることがより好ましく、1.5〜4.0質量%の範囲内であることがさらに好ましい。ホウ酸の濃度が0.5〜6.0質量%の範囲内にあることで幅方向の厚みの均一性に優れる偏光フィルムが得られる。上記したホウ素化合物を含む水溶液はヨウ化カリウムを含有してもよく、その濃度は0.01〜10質量%の範囲内であることが好ましい。ヨウ化カリウムの濃度が0.01〜10質量%の範囲内にあることで偏光性能がより良好な偏光フィルムが得られる。
積層体を延伸する際の温度は、30〜90℃の範囲内であることが好ましく、40〜80℃の範囲内であることがより好ましく、50〜70℃の範囲内であることがさらに好ましい。当該温度が30〜90℃の範囲内であることで幅方向の厚みの均一性に優れる偏光フィルムが得られる。
積層体を延伸する際の延伸倍率は5.5倍以上であることが好ましく、5.7倍以上であることがより好ましく、5.8倍以上であることがさらに好ましく、5.9倍以上であることが特に好ましい。積層体の延伸倍率を上記の範囲内にすることで、偏光性能により優れる偏光フィルムが得られる。積層体の延伸倍率の上限は特に制限されないが、8倍以下であることが好ましい。積層体の延伸は一度に行っても、複数回に分けて行ってもどちらでもよいが、複数回に分けて行う場合には各延伸の延伸倍率を掛け合わせた総延伸倍率が上記範囲内にあればよい。なお、本明細書における延伸倍率は延伸前の積層体の長さに基づくものであり、延伸をしていない状態が延伸倍率1倍に相当する。
積層体の延伸は、得られる偏光フィルムの性能の観点から一軸延伸が好ましい。長尺の積層体を延伸する場合における一軸延伸の方向に特に制限はなく、長尺方向への一軸延伸や横一軸延伸を採用することができるが、偏光性能により優れる偏光フィルムが得られることから長尺方向への一軸延伸が好ましい。長尺方向への一軸延伸は、互いに平行な複数のロールを備える延伸装置を使用して、各ロール間の周速を変えることにより行うことができる。一方、横一軸延伸はテンター型延伸機を用いて行うことができる。
固定処理は、主として、PVA層や延伸フィルムへの二色性色素の吸着を強固にするために行われる。固定処理は、延伸前、延伸中または延伸後の積層体を固定処理浴に浸漬することにより行うことができる。固定処理浴としては、ホウ酸、ホウ砂等のホウ酸塩などのホウ素化合物の1種または2種以上を含む水溶液を使用することができる。また、必要に応じて、固定処理浴中にヨウ素化合物や金属化合物を添加してもよい。固定処理浴として使用されるホウ素化合物を含む水溶液中におけるホウ素化合物の濃度は、一般に2〜15質量%の範囲内、特に3〜10質量%の範囲内であることが好ましい。当該濃度を2〜15質量%の範囲内にすることで二色性色素の吸着をより強固にすることができる。固定処理浴の温度は、15〜60℃の範囲内、特に25〜40℃の範囲内であることが好ましい。当該温度を15〜60℃の範囲内にすることで二色性色素の吸着をより強固にすることができる。
乾燥の条件は特に制限されないが、30〜150℃の範囲内、特に50〜130℃の範囲内の温度で乾燥を行うのが好ましい。30〜150℃の範囲内の温度で乾燥することで寸法安定性に優れる偏光フィルムが得られやすい。
以上のようにすることで、延伸された熱可塑性樹脂フィルム層上に形成された偏光フィルムが得られる。このような形態の偏光フィルムの使用方法は特に制限されず、例えば、延伸された熱可塑性樹脂フィルム層を剥離せずに、それをそのまま、または所望により偏光フィルム側に光学的に透明で且つ機械的強度を有する保護膜を貼り合わせて偏光板としてもよいし、延伸された熱可塑性樹脂フィルム層が位置する側とは反対側に保護膜を貼り合わせた後で、当該延伸された熱可塑性樹脂フィルム層を剥離し、それをそのまま、または所望により剥離面に別の保護膜を貼り合わせて偏光板としてもよい。保護膜としては、三酢酸セルロース(TAC)フィルム、酢酸・酪酸セルロース(CAB)フィルム、アクリル系フィルム、ポリエステル系フィルムなどを使用することができる。また、貼り合わせのための接着剤としては、PVA系接着剤やウレタン系接着剤などを挙げることができるが、PVA系接着剤が好適である。
本発明の製造方法により得られる偏光フィルムの厚みは、10μm以下であることが好ましく、8μm以下であることがより好ましい。偏光フィルムがこのような厚みを有することにより、携帯電話などの薄型化への要求が高まっている分野に好適に用いることができる。なお、厚みがあまりに薄い偏光フィルムはその調製が困難であることから、偏光フィルムの厚みは、例えば、1μm以上である。
本発明を以下の実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において採用された各測定または評価方法を以下に示す。
PVAの平均重合度の測定
JIS K6726−1994の記載に準じて測定した。但し、試験溶液としては、PVA0.28g、蒸留水70g、および撹拌子を、100mL共通すり合わせ三角フラスコに投入して栓をし、95℃の恒温槽に浸漬し、撹拌子で撹拌しながらPVAを溶解することで濃度約0.4質量%のPVA水溶液とし、これをブフナー漏斗形ガラスろ過器3Gでろ過し、30℃の恒温水槽中で冷却したものを用いた。
熱可塑性樹脂フィルムの表面の接触角の測定
協和界面科学株式会社製「DropMaster500」を使用し、20℃、65%RHの環境下で、内径0.4mmの針から2μLの純水を熱可塑性樹脂フィルムの表面に押し出して接触角を測定した。
偏光フィルムの厚みの測定
デジタルゲージ(マグネスケール社製「DE12BR」)を用いて、偏光フィルムの任意の位置(5箇所)での厚みを測定し、その平均値を偏光フィルムの厚みとした。
偏光性能の評価
(a)透過率Tsの測定
以下の実施例または比較例で得られた偏光フィルムの幅方向の中央部から、偏光フィルムの幅方向に2cm×長さ方向に2cmの正方形のサンプルを2枚採取し、積分球付き分光光度計(日本分光株式会社製「V7100」)を用いて、JIS Z 8722(物体色の測定方法)に準拠し、C光源、2°視野の可視光領域の視感度補正を行い、1枚のサンプルについて、長さ方向に対して45°傾けた場合の光の透過率と−45°傾けた場合の光の透過率を測定して、それらの平均値Ts1(%)を求めた。もう1枚のサンプルについても同様にして、45°傾けた場合の光の透過率と−45°傾けた場合の光の透過率を測定して、それらの平均値Ts2(%)を求めた。下記式(2)によりTs1とTs2を平均し、偏光フィルムの透過率Ts(%)とした。
Ts = (Ts1+Ts2)/2 (2)
(b)偏光度Vの測定
上記透過率Tsの測定で採取した2枚のサンプルを、その長さ方向が平行になるように重ねた場合の光の透過率T‖(%)、長さ方向が直交するように重ねた場合の光の透過率T⊥(%)を、上記「(a)透過率Tsの測定」の場合と同様にして測定し、下記式(3)により偏光度V(%)を求めた。
V = {(T‖−T⊥)/(T‖+T⊥)}1/2×100 (3)
(c)透過率44%時の二色性比の算出
以下の各実施例および比較例において、ヨウ素系色素を含有する水溶液への浸漬時間を1〜2分間の範囲内で1分間から4回変更して同様の操作を行い、各実施例または比較例で製造した偏光フィルムとは二色性色素の吸着量の異なる4枚の偏光フィルムを製造した。これら4枚の偏光フィルムのそれぞれについて上記した方法で透過率Ts(%)および偏光度V(%)を求め、各実施例および比較例毎に、透過率Ts(%)を横軸、偏光度V(%)を縦軸として各実施例または比較例で得られた偏光フィルムの透過率Ts(%)および偏光度V(%)に基づく1点も含めた合計5点をグラフにプロットして近似曲線を求め、当該近似曲線から、透過率Ts(%)が44%であるときの偏光度V44(%)を求めた。
得られた偏光度V44(%)から、下記式(4)により透過率44%時の二色性比を求めて、偏光性能の指標とした。
透過率44%時の二色性比 = log(44/100−44/100×V44/100)/log(44/100+44/100×V44/100) (4)
[実施例1]
(1)熱可塑性樹脂フィルムの親水化処理
熱可塑性樹脂フィルムとして、非晶性ポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人化成株式会社製 A−PETシート FR 厚み150μm)を用いて、熱可塑性樹脂フィルムの片面に放電量280W・分/m(出力280W/m、処理速度1.0m/分)でコロナ処理を行った。コロナ処理後の熱可塑性樹脂フィルムの表面の接触角は60°であった(コロナ処理前の接触角は79°)。
(2)原液の調製
平均重合度2,400、けん化度99.8モル%のPVA(酢酸ビニルの単独重合体のけん化物)100質量部、可塑剤としてグリセリン6質量部および水からなるPVA濃度が5質量%の水溶液を調製してPVA層を形成するための原液とした。
(3)積層体の作製
(1)で親水化処理を行った熱可塑性樹脂フィルムのコロナ処理面に(2)で調製した原液をダイコーターを用いて塗工した後、80℃で240秒間乾燥することにより、非晶性ポリエチレンテレフタレートフィルム層と厚みが6μmのPVA層とからなる2層構造の積層体(幅0.5mの長尺の積層体)を作製した。
(4)偏光フィルムの製造
(3)で作製した積層体に対して、PVA層の不溶化処理、染色、一軸延伸、乾燥処理をこの順に施して偏光フィルムを製造した。すなわち、PVA層の不溶化処理として積層体をホウ酸水溶液(濃度:3質量%、温度:30℃)に1分間浸漬した。次いで、ヨウ素系色素を含有する水溶液(使用されるヨウ素の濃度:0.3質量%、使用されるヨウ化カリウムの濃度:2.1質量%、温度:30℃)に1分間浸漬してPVA層にヨウ素系色素を含有させた。続いて、ホウ酸水溶液(ホウ酸濃度:4質量%、ヨウ化カリウム濃度:6質量%、温度:65℃)中で長尺方向に限界まで一軸延伸した。なお、予め同じ方法で延伸して切断する倍率を確認しておき、その切断した倍率から0.20倍低い倍率を上記の限界とした。その後、60℃で1分間乾燥して、延伸された非晶性ポリエチレンテレフタレートフィルム層上に形成された偏光フィルムを得た。これから延伸された非晶性ポリエチレンテレフタレート層を、偏光フィルムが裂けないように注意深く剥離し、得られた偏光フィルムについて、厚みおよび偏光性能の各測定または評価を行った。結果を採用された延伸倍率と共に表1に示した。
[実施例2]
非晶性ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に放電量220W・分/m(出力220W/m、処理速度1.0m/分)でコロナ処理を行い、コロナ処理後の非晶性ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面の接触角を66°にしたこと以外は実施例1と同様にして偏光フィルム(延伸された非晶性ポリエチレンテレフタレート層を剥離したもの)を得て、厚みおよび偏光性能の各測定または評価を行った。結果を採用された延伸倍率と共に表1に示した。
[実施例3〜6]
PVA(けん化度99.8モル%、酢酸ビニルの単独重合体のけん化物)の平均重合度を表1に示したようにしたこと以外は実施例1と同様にして偏光フィルム(延伸された非晶性ポリエチレンテレフタレート層を剥離したもの)を得て、厚みおよび偏光性能の各測定または評価を行った。結果を採用された延伸倍率と共に表1に示した。
[比較例1]
非晶性ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に放電量380W・分/m(出力380W/m、処理速度1.0m/分)でコロナ処理を行い、コロナ処理後の非晶性ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面の接触角を52°にしたこと以外は実施例1と同様にして延伸された非晶性ポリエチレンテレフタレートフィルム層上に形成された偏光フィルムを得た。続いて、これから延伸された非晶性ポリエチレンテレフタレートフィルム層を、偏光フィルムが裂けないように注意深く剥離しようとしたが、偏光フィルムが裂けた。結果を採用された延伸倍率と共に表1に示した。
[比較例2]
非晶性ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に放電量150W・分/m(出力150W、処理速度1.0m/分)でコロナ処理を行い、コロナ処理後の非晶性ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面の接触角を72°にしたこと以外は実施例1と同様にして偏光フィルムを作製しようとしたところ、延伸倍率が5.00倍を超えたところでPVA層が非晶性ポリエチレンテレフタレートフィルムから自然に剥離して裂けたため、偏光フィルムを作製することができなかった。
[比較例3]
非晶性ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に放電量150W・分/m(出力150W、処理速度1.0m/分)でコロナ処理を行い、コロナ処理後の非晶性ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面の接触角を72°にした。なお、このコロナ処理面について、JIS K6768:1999に従って濡れ張力を測定したところ50.0mN/m(500μN/cm)であった。このコロナ処理された非晶性ポリエチレンテレフタレートを用いると共にグリセリンを使用しなかったこと以外は実施例1と同様にして偏光フィルムを作製しようとしたところ、延伸倍率が5.00倍を超えたところでPVA層が非晶性ポリエチレンテレフタレートフィルムから自然に剥離して裂けたため、偏光フィルムを作製することができなかった。
Figure 0005956276

Claims (7)

  1. 少なくとも一方の表面の接触角が55〜70°である熱可塑性樹脂フィルム上に当該接触角を有する表面と接するようにポリビニルアルコール層を形成してなる、熱可塑性樹脂フィルム層とポリビニルアルコール層とを有する積層体を延伸する工程を含む偏光フィルムの製造方法。
  2. 熱可塑性樹脂フィルム層を構成する熱可塑性樹脂が非晶性ポリエチレンテレフタレートである、請求項1に記載の製造方法。
  3. ポリビニルアルコール層に含まれるポリビニルアルコールの平均重合度が2,800〜9,500である、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. ポリビニルアルコール層が可塑剤をポリビニルアルコール100質量部に対して1〜15質量部含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 可塑剤がグリセリンである、請求項4に記載の製造方法。
  6. 積層体を延伸する際の延伸倍率が5.5倍以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 厚みが10μm以下の偏光フィルムの製造方法である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
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