JP6667989B2 - 偏光フィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、薄いポリビニルアルコールフィルムを用いた場合であってもポリビニルアルコールフィルムの端部の折れ込みを抑制することができて延伸時や乾燥時などにおけるフィルムの破断が発生しにくく、偏光性能に優れた偏光フィルムを容易に製造することのできる偏光フィルムの製造方法に関する。
光の透過および遮蔽機能を有する偏光板は、光の偏光状態を変化させる液晶と共に液晶ディスプレイ(LCD)の基本的な構成要素である。多くの偏光板は、偏光フィルムの表面に三酢酸セルロース(TAC)フィルムなどの保護膜が貼り合わされた構造を有しており、偏光板を構成する偏光フィルムとしてはポリビニルアルコールフィルム(以下、「ポリビニルアルコール」を「PVA」と略記することがある)を一軸延伸して配向させた延伸フィルムにヨウ素系色素(I やI 等)や二色性有機染料といった二色性色素が吸着しているものが主流となっている。このような偏光フィルムは、通常、二色性色素を予め含有させたPVAフィルムを一軸延伸したり、PVAフィルムの一軸延伸と同時に二色性色素を吸着させたり、PVAフィルムを一軸延伸した後に二色性色素を吸着させたりするなどして連続的に製造される。
LCDは、電卓および腕時計などの小型機器、ノートパソコン、液晶モニター、液晶カラープロジェクター、液晶テレビ、車載用ナビゲーションシステム、携帯電話、屋内外で用いられる計測機器などの広範囲において用いられるようになっているが、近年、特に小型のノートパソコンや携帯電話などのモバイル用途へ用いられることが多くなっており、偏光板への薄型化の要求が強くなっている。
偏光板を薄型化する手法の1つとして偏光フィルムを薄型化することが挙げられ、このためには偏光フィルムの原料となるPVAフィルムを薄型化することが考えられる。しかしながら、薄いPVAフィルムは延伸時や乾燥時などにフィルムの破断が発生しやすく、偏光フィルムの生産性や収率が低下し、コスト高につながりやすい。
フィルムの破断を発生させずに薄い偏光フィルムを製造する技術として、プラスチックフィルム上にコート法によって薄いPVA層を形成し、その積層体を延伸する方法が知られている(例えば、特許文献1および2などを参照)。
特許第4804588号明細書 特許第4815544号明細書
しかしながら、プラスチックフィルム上にコート法によってPVA層を形成してなる積層体を用いる方法には、以下のような問題がある。
(i)コート作業やその後の乾燥作業が煩雑である。
(ii)PVA層の不溶化処理のための熱処理を積層体の状態で行う必要があるため、使用されるプラスチックフィルムが熱処理後も延伸可能なものに限定され、コスト高になる。
(iii)プラスチックフィルム上にコート法によってPVA層を形成してなる積層体では、プラスチックフィルムとPVA層との間の接着強度が比較的高く、このような接着強度の高い積層体を延伸すると、PVA層の適度なネックインが妨げられて、偏光性能に優れる偏光フィルムが得られにくい。
本発明は、薄いPVAフィルムを用いた場合であっても延伸時や乾燥時などにフィルムの破断が発生しにくく、偏光性能に優れた偏光フィルムを容易に製造することのできる偏光フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、薄いPVAフィルムを用いて偏光フィルムを製造する場合には、延伸する前に行われる膨潤工程や染色工程といった、PVAフィルムを水に浸漬する水浸漬工程を通過した後の表面に水が付着したPVAフィルムにおいて、その幅方向の端部に折れ込みが発生しやすく、それが原因となってその後の延伸工程において延伸切れが発生しやすくなること、延伸した後においても表面に水が付着したPVAフィルムは依然として幅方向の端部に折れ込みが発生しやすく、それが原因となってその後の乾燥工程において収縮によるフィルムの破断が発生しやすくなること、および、ニップロールと接触させる前において表面に水が付着したPVAフィルムの幅方向両端部にロールを接触させることにより、当該PVAフィルムの幅方向の端部における折れ込みの発生が抑制されて、延伸時や乾燥時などにおけるフィルムの破断(延伸切れ等)の発生を低減できることを見出し、これらの知見に基づいて更に検討を重ねて本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
[1]PVAフィルムを延伸する延伸工程を有する偏光フィルムの製造方法であって、PVAフィルムを水に浸漬する水浸漬工程によって水に浸漬されたPVAフィルムを水から取り出した後の表面に水が付着したPVAフィルムの幅方向両端部にロールRを接触させ次いでニップロールを接触させる工程を有し、ここで、当該ロールRは表面に水が付着したPVAフィルムの幅方向中央部と接触しない、製造方法(以下、当該製造方法を「製造方法(1)」と称することがある);
[2]表面に水が付着したPVAフィルムのフィルム面と、上記ロールRにおけるPVAフィルムとの接触部とのなす角度θが1〜10度である、上記[1]の製造方法;
[3]上記ロールRの軸方向の長さが1cm以上である、上記[1]または[2]の製造方法;
[4]PVAフィルムを延伸する延伸工程を有する偏光フィルムの製造方法であって、PVAフィルムを水に浸漬する水浸漬工程によって水に浸漬されたPVAフィルムを水から取り出した後の表面に水が付着したPVAフィルムの幅方向両端部にPVAフィルムの長さ方向に配列した複数のロールRを接触させ次いでニップロールを接触させる工程を有し、ここで、当該複数のロールRの少なくとも一部は表面に水が付着したPVAフィルムの幅方向中央部と接触しない、製造方法(以下、当該製造方法を「製造方法(1’)」と称することがある);
[5]表面に水が付着したPVAフィルムのフィルム面と、表面に水が付着したPVAフィルムの幅方向中央部と接触しない上記ロールRにおけるPVAフィルムとの接触部とのなす角度θが1〜10度である、上記[4]の製造方法;
[6]表面に水が付着したPVAフィルムの幅方向中央部と接触しない上記ロールRの軸方向の長さが1cm以上である、上記[4]または[5]の製造方法;
[7]PVAフィルムを水から取り出した後、最初にニップロールに接触するまでの間において、PVAフィルムの幅方向両端部での長さ方向に連続するロール非接触部の長さの最大値A(mm)と乾燥時のPVAフィルムの厚みB(mm)とが、下記式(1)
A ≦ 8286×B − 103 (1)
を満たす、上記[4]〜[6]のいずれか1つの製造方法;
[8]PVAフィルムを延伸する延伸工程を有する偏光フィルムの製造方法であって、PVAフィルムを水に浸漬する水浸漬工程によって水に浸漬されたPVAフィルムを水から取り出した後の表面に水が付着したPVAフィルムの幅方向両端部にPVAフィルムの長さ方向に配列した複数のロールRを接触させ次いでニップロールを接触させる工程を有し、ここで、PVAフィルムを水から取り出した後、最初にニップロールに接触するまでの間において、PVAフィルムの幅方向両端部での長さ方向に連続するロール非接触部の長さの最大値A(mm)と乾燥時のPVAフィルムの厚みB(mm)とが、下記式(1)
A ≦ 8286×B − 103 (1)
を満たす、製造方法(以下、当該製造方法を「製造方法(2)」と称することがある);
[9]水浸漬工程が、膨潤工程、染色工程、架橋工程、延伸工程および固定処理工程からなる群より選ばれる少なくとも1つである、上記[1]〜[8]のいずれか1つの製造方法;
[10]延伸工程の前に、表面に水が付着したPVAフィルムの幅方向両端部に上記ロールを接触させる工程を有する、上記[1]〜[9]のいずれか1つの製造方法;
[11]乾燥時のPVAフィルムの厚みが0.05mm以下である、上記[1]〜[10]のいずれか1つの製造方法;
に関する。
本発明によれば、薄いPVAフィルムを用いた場合であっても延伸時や乾燥時などにフィルムの破断が発生しにくく、偏光性能に優れた偏光フィルムを容易に製造することのできる偏光フィルムの製造方法が提供される。
表面に水が付着したPVAフィルムの幅方向両端部にロールRを接触させる方法の一例を示す概略図である。 表面に水が付着したPVAフィルムのフィルム面とロールRにおけるPVAフィルムとの接触部とのなす角度θなどを示す概略図である。 実施例1における偏光フィルムの製造方法を示す概略図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
偏光フィルムを製造するための本発明の製造方法は、PVAフィルムを延伸する延伸工程を有する。そして本発明の製造方法では、膨潤工程、染色工程、架橋工程、延伸工程、固定処理工程等のPVAフィルムを水に浸漬する水浸漬工程によって水に浸漬されたPVAフィルムを水から取り出した後の、表面に水が付着したPVAフィルムの幅方向両端部にロールRを接触させ次いでニップロールを接触させる工程を有する。
ここで、製造方法(1)に係る本発明の製造方法では、上記ロールRは表面に水が付着したPVAフィルムの幅方向中央部と接触しない。また製造方法(1’)に係る本発明の製造方法は、製造方法(1)において、ロールRがPVAフィルムの長さ方向に複数配列され、これらの複数のロールRのうちの少なくとも一部が表面に水が付着したPVAフィルムの幅方向中央部と接触しないことが特定された発明に相当する。
一般に、PVAフィルムから偏光フィルムを製造するに際し、水浸漬工程を通過した後には1個または2個以上のガイドロールやニップロールを用いてPVAフィルムを保持したり搬送したりすることが多いが、これらの従来のガイドロールやニップロールは表面に水が付着したPVAフィルムの幅方向全域にわたり接触している点で、製造方法(1)や(1’)における表面に水が付着したPVAフィルムの幅方向中央部と接触しない上記ロールRは、これらの従来のガイドロールやニップロールとは異なっている。
また、製造方法(2)に係る本発明の製造方法では、表面に水が付着したPVAフィルムの幅方向両端部にPVAフィルムの長さ方向に配列した複数のロールRを接触させる。そして、PVAフィルムを水から取り出した後、最初にニップロールに接触するまでの間において、PVAフィルムの幅方向両端部での長さ方向に連続するロール非接触部の長さ(PVAフィルムの長さ)の最大値A(mm)が特定範囲にある。上記のとおり、一般に、PVAフィルムから偏光フィルムを製造するに際してはガイドロールやニップロールを用いてPVAフィルムを保持したり搬送したりすることが多いが、従来は、PVAフィルムを水から取り出した後、最初にニップロールに接触するまでの間に介在するロールの数が少なく、上記最大値Aが比較的長い点で、製造方法(2)は、従来技術とは異なっている。
通常、PVAフィルムを用いて偏光フィルムを製造する場合には、水浸漬工程を通過した後にPVAフィルムの幅方向の端部に折れ込みが発生しやすく、それが原因となって、延伸工程における延伸切れや乾燥工程における収縮によるフィルムの破断などが発生しやすくなるが、表面に水が付着した状態のPVAフィルムの幅方向両端部に対して、上記の製造方法(1)、(1’)または(2)のようにロールを接触させることにより、当該PVAフィルムの幅方向の端部における折れ込みの発生が抑制されて延伸時や乾燥時などにおけるフィルムの破断の発生が低減され、また、より高い延伸倍率で延伸することができて偏光性能に優れた偏光フィルムが容易に製造されるものと考えられる。
[PVAフィルム]
PVAフィルムを構成するPVAとしては、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、酢酸イソプロペニル等のビニルエステルの1種または2種以上を重合して得られるポリビニルエステルをけん化することにより得られるものを使用することができる。上記のビニルエステルの中でも、PVAの製造の容易性、入手の容易性、コスト等の点から、分子中にビニルオキシカルボニル基(HC=CH−O−CO−)を有する化合物が好ましく、酢酸ビニルがより好ましい。
上記のポリビニルエステルは、単量体として1種または2種以上のビニルエステルのみを用いて得られたものが好ましく、単量体として1種のビニルエステルのみを用いて得られたものがより好ましいが、本発明の効果を大きく損なわない範囲内であれば、1種または2種以上のビニルエステルと、これと共重合可能な他の単量体との共重合体であってもよい。
上記のビニルエステルと共重合可能な他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等の炭素数2〜30のα−オレフィン;(メタ)アクリル酸またはその塩;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリルアミド;N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸またはその塩、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルアミンまたはその塩、N−メチロール(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体等の(メタ)アクリルアミド誘導体;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン等のN−ビニルアミド;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸またはその塩、エステルもしくは酸無水物;イタコン酸またはその塩、エステルもしくは酸無水物;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;不飽和スルホン酸またはその塩などを挙げることができる。上記のポリビニルエステルは、前記した他の単量体の1種または2種以上に由来する構造単位を有することができる。
上記のポリビニルエステルに占める上記他の単量体に由来する構造単位の割合は、ポリビニルエステルを構成する全構造単位のモル数に基づいて、15モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることが更に好ましい。
上記のPVAとしてはグラフト共重合がされていないものを好ましく使用することができるが、本発明の効果を大きく損なわない範囲内であれば、PVAは1種または2種以上のグラフト共重合可能な単量体によって変性されたものであってもよい。当該グラフト共重合は、ポリビニルエステルおよびそれをけん化することにより得られるPVAのうちの少なくとも一方に対して行うことができる。上記グラフト共重合可能な単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸またはその誘導体;不飽和スルホン酸またはその誘導体;炭素数2〜30のα−オレフィンなどが挙げられる。ポリビニルエステルまたはPVAにおけるグラフト共重合可能な単量体に由来する構造単位の割合は、ポリビニルエステルまたはPVAを構成する全構造単位のモル数に基づいて、5モル%以下であることが好ましい。
上記のPVAはその水酸基の一部が架橋されていてもよいし、架橋されていなくてもよい。また上記のPVAはその水酸基の一部がアセトアルデヒド、ブチルアルデヒド等のアルデヒド化合物などと反応してアセタール構造を形成していてもよいし、これらの化合物と反応せずアセタール構造を形成していなくてもよい。
上記のPVAの重合度は特に制限されないが、1,000以上であることが好ましい。PVAの重合度が1,000以上であることにより、得られる偏光フィルムの偏光性能をより一層向上させることができる。PVAの重合度はあまりに高すぎるとPVAの製造コストの上昇や製膜時における工程通過性の不良につながる傾向があるので、PVAの重合度は1,000〜10,000の範囲内であることがより好ましく、1,500〜8,000の範囲内であることが更に好ましく、2,000〜5,000の範囲内であることが特に好ましい。なお本明細書でいうPVAの重合度はJIS K6726−1994の記載に準じて測定した平均重合度を意味する。
PVAのけん化度は得られる偏光フィルムの耐湿熱性が良好になることから、99.0モル%以上であることが好ましく、99.8モル%以上であることがより好ましく、99.9モル%以上であることが更に好ましい。なお本明細書におけるPVAのけん化度とはPVAが有するけん化によってビニルアルコール単位に変換され得る構造単位(典型的にはビニルエステル単位)とビニルアルコール単位との合計モル数に対して当該ビニルアルコール単位のモル数が占める割合(モル%)をいう。けん化度はJIS K6726−1994の記載に準じて測定することができる。
PVAフィルムは上記したPVAと共に可塑剤を含んでいてもよい。PVAフィルムが可塑剤を含むことにより、PVAフィルムの取り扱い性や延伸性の向上等を図ることができる。可塑剤としては多価アルコールが好ましく用いられ、具体例としては、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジグリセリン、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパンなどを挙げることができ、PVAフィルムはこれらの可塑剤の1種または2種以上を含むことができる。これらのうちでもPVAフィルムの延伸性がより良好になることからグリセリンが好ましい。
PVAフィルムにおける可塑剤の含有量は、PVA100質量部に対して3〜20質量部であることが好ましく、5〜17質量部であることがより好ましく、7〜14質量部であることが更に好ましい。PVAフィルムにおける可塑剤の含有量がPVA100質量部に対して3質量部以上であることによりPVAフィルムの延伸性が向上する。一方、PVAフィルムにおける可塑剤の含有量がPVA100質量部に対して20質量部以下であることにより、PVAフィルムの表面に可塑剤がブリードアウトしてPVAフィルムの取り扱い性が低下するのを抑制することができる。
また、PVAフィルムを後述するPVAフィルムを製造するための製膜原液を用いて製造する場合には、製膜性が向上してフィルムの厚み斑の発生が抑制されると共に、製膜に金属ロールやベルトを使用した際、これらの金属ロールやベルトからのPVAフィルムの剥離が容易になることから、当該製膜原液中に界面活性剤を配合することが好ましい。界面活性剤が配合された製膜原液からPVAフィルムを製造した場合には、当該PVAフィルム中には界面活性剤が含有され得る。PVAフィルムを製造するための製膜原液に配合される界面活性剤、ひいてはPVAフィルム中に含有される界面活性剤の種類は特に限定されないが、金属ロールやベルトからの剥離性の観点から、アニオン性界面活性剤またはノニオン性界面活性剤が好ましく、ノニオン性界面活性剤が特に好ましい。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸カリウム等のカルボン酸型;オクチルサルフェート等の硫酸エステル型;ドデシルベンゼンスルホネート等のスルホン酸型などが好適である。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のアルキルエーテル型;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のアルキルフェニルエーテル型;ポリオキシエチレンラウレート等のアルキルエステル型;ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル等のアルキルアミン型;ポリオキシエチレンラウリン酸アミド等のアルキルアミド型;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル等のポリプロピレングリコールエーテル型;ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド等のアルカノールアミド型;ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル等のアリルフェニルエーテル型などが好適である。
これらの界面活性剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
PVAフィルムを製造するための製膜原液中に界面活性剤を配合する場合、製膜原液中における界面活性剤の含有量、ひいてはPVAフィルム中における界面活性剤の含有量は製膜原液またはPVAフィルムに含まれるPVA100質量部に対して0.01〜0.5質量部の範囲内であることが好ましく、0.02〜0.3質量部の範囲内であることがより好ましい。界面活性剤の含有量がPVA100質量部に対して0.01質量部以上であることにより製膜性および剥離性を向上させることができる。一方、界面活性剤の含有量がPVA100質量部に対して0.5質量部以下であることにより、PVAフィルムの表面に界面活性剤がブリードアウトしてブロッキングが生じて取り扱い性が低下するのを抑制することができる。
PVAフィルムはPVAのみからなっていても、あるいはPVAと上記した可塑剤および/または界面活性剤のみからなっていてもよいが、必要に応じて、酸化防止剤、凍結防止剤、pH調整剤、隠蔽剤、着色防止剤、油剤など、上記したPVA、可塑剤および界面活性剤以外の他の成分を含有していてもよい。
PVAフィルムにおけるPVAの含有率は、50〜100質量%の範囲内であることが好ましく、80〜100質量%の範囲内であることがより好ましく、85〜100質量%の範囲内であることが更に好ましい。
PVAフィルムの厚みに特に制限はないが、特に薄いPVAフィルムを用いた場合においてその幅方向の端部に上記の折れ込みが発生しやすく、薄いPVAフィルムを用いた場合において本発明の効果がより顕著に奏されることから、当該厚みは、乾燥時におけるものとして、0.05mm以下であることが好ましく、0.045mm以下であることがより好ましく、0.035mm以下であることが更に好ましく、0.025mm以下であることが特に好ましく、0.02mm以下であることが最も好ましい。PVAフィルムの厚みの下限に特に制限はないが、偏光フィルムをより円滑に製造することができることから、当該厚みは0.003mm以上であることが好ましい。また、PVAフィルムは単層であっても、PVAの層と他の層とが積層された積層体であってもよいが、本発明の効果がより顕著に奏されることから単層であることが好ましい。積層体の場合にはPVAの層の厚みが上記範囲にあることが好ましい。
PVAフィルムの形状に特に制限はないが、偏光フィルムを生産性良く連続的に製造することができることから、長尺のフィルムであることが好ましい。当該長尺のフィルムの長さは特に制限されず、製造される偏光フィルムの用途などに応じて適宜設定することができ、例えば、5〜20,000mの範囲内にすることができる。当該長尺のフィルムの幅に特に制限はなく、例えば50cm以上とすることができるが、近年幅広の偏光フィルムが求められていることから1m以上であることが好ましく、2m以上であることがより好ましく、4m以上であることが更に好ましい。当該長尺のフィルムの幅の上限に特に制限はないが、当該幅があまりに広すぎると、実用化されている装置で偏光フィルムを製造する場合に、均一に延伸することが困難になる傾向があることから、PVAフィルムの幅は7m以下であることが好ましい。
PVAフィルムの製造方法は特に限定されず、製膜後のフィルムの厚みおよび幅がより均一になる製造方法を好ましく採用することができ、例えば、PVAフィルムを構成する上記したPVA、および必要に応じて更に可塑剤、界面活性剤、他の成分が液体媒体中に溶解した製膜原液や、PVA、および必要に応じて更に可塑剤、界面活性剤、他の成分、液体媒体を含み、PVAが溶融している製膜原液を用いて製造することができる。当該製膜原液が可塑剤、界面活性剤および他の成分の少なくとも1種を含有する場合には、それらの成分が均一に混合されていることが好ましい。
製膜原液の調製に使用される上記液体媒体としては、例えば、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンなどを挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上を使用することができる。そのうちでも、環境に与える負荷が小さいことや回収性の点から水が好ましい。
製膜原液の揮発分率(製膜時に揮発や蒸発によって除去される液体媒体などの揮発性成分の製膜原液中における含有割合)は製膜方法、製膜条件等によって異なるが、50〜95質量%の範囲内であることが好ましく、55〜90質量%の範囲内であることがより好ましく、60〜85質量%の範囲内であることが更に好ましい。製膜原液の揮発分率が50質量%以上であることにより、製膜原液の粘度が高くなり過ぎず、製膜原液調製時の濾過や脱泡が円滑に行われ、異物や欠点の少ないPVAフィルムの製造が容易になる。一方、製膜原液の揮発分率が95質量%以下であることにより、製膜原液の濃度が低くなり過ぎず、工業的なPVAフィルムの製造が容易になる。
上記した製膜原液を用いてPVAフィルムを製膜する際の製膜方法としては、例えば、キャスト製膜法、押出製膜法、湿式製膜法、ゲル製膜法などが挙げられ、キャスト製膜法、押出製膜法が好ましい。これらの製膜方法は1種のみを採用しても2種以上を組み合わせて採用してもよい。これらの製膜方法の中でも押出製膜法が、厚みおよび幅が均一で物性の良好なPVAフィルムが得られることからより好ましい。PVAフィルムには必要に応じて乾燥や熱処理を行うことができる。
[表面に水が付着したPVAフィルム]
本発明の製造方法では、PVAフィルムを水に浸漬する水浸漬工程によって水に浸漬されたPVAフィルムを水から取り出した後の、表面に水が付着したPVAフィルムの幅方向両端部にロールRを接触させ次いでニップロールを接触させる工程を有する。偏光フィルムは、通常、膨潤工程、染色工程、架橋工程、延伸工程、固定処理工程などの各工程を経て製造することができ、本発明の製造方法は、これらの工程のうちの1つまたは2つ以上を水浸漬工程として有することができる。すなわち、本発明の製造方法では、上記水浸漬工程が、膨潤工程、染色工程、架橋工程、延伸工程および固定処理工程からなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましく、膨潤工程、染色工程および架橋工程からなる群より選ばれる少なくとも1つであることがより好ましい。
水浸漬工程において使用される水は純水に限定されず、各工程の目的に応じて、後述するような水溶液や更には水性分散液などを用いることもできる。
以下に、水浸漬工程として採用することのできる工程も含め、偏光フィルムを製造するための本発明の製造方法において採用することのできる各工程をより詳細に説明する。
・膨潤工程
膨潤工程における膨潤処理は、PVAフィルムを水に浸漬することにより行うことができる。水に浸漬する際の水の温度としては、20〜40℃の範囲内であることが好ましく、22〜38℃の範囲内であることがより好ましく、25〜35℃の範囲内であることが更に好ましい。また、水に浸漬する時間としては、例えば、0.5〜5分間の範囲内であることが好ましく、1〜3分間の範囲内であることがより好ましい。なお、水に浸漬する際の水は純水に限定されず、各種成分が溶解した水溶液であってもよいし、水と水性媒体との混合物であってもよい。
・染色工程
染色工程における染色処理は、PVAフィルムを二色性色素を含む水溶液中に浸漬することにより行うことができる。二色性色素を含む水溶液中における二色性色素の濃度は使用される二色性色素の種類などに応じて適宜設定することができ、例えば0.001〜1質量%の範囲内とすることができるが、二色性色素を含む水溶液としてヨウ素−ヨウ化カリウム水溶液を用いる場合には、ヨウ素系色素を効率良くPVAフィルムに吸着させることができることから、使用されるヨウ素(I)の濃度として0.01〜1.0質量%の範囲内であることが好ましく、使用されるヨウ化カリウム(KI)の濃度として0.01〜10質量%の範囲内であることが好ましい。二色性色素を含む水溶液の温度は、二色性色素を効率良くPVAフィルムに吸着させることができることから、20〜50℃の範囲内であることが好ましく、25〜40℃の範囲内であることがより好ましい。なお、二色性色素を予め含有させたPVAフィルムを用いる場合には、染色工程を省略することができる。
上記の二色性色素としては、ヨウ素系色素(I やI 等)、二色性有機染料などが挙げられる。ヨウ素系色素は、例えば、ヨウ素(I)とヨウ化カリウムとを接触させることにより得ることができる。また、二色性有機染料としては、ダイレクトブラック 17、19、154;ダイレクトブラウン 44、106、195、210、223;ダイレクトレッド 2、23、28、31、37、39、79、81、240、242、247;ダイレクトブルー 1、15、22、78、90、98、151、168、202、236、249、270;ダイレクトバイオレット 9、12、51、98;ダイレクトグリーン 1、85;ダイレクトイエロー 8、12、44、86、87;ダイレクトオレンジ 26、39、106、107などが挙げられる。これらの二色性色素の中でも、取り扱い性、入手性、偏光性能などの観点からヨウ素系色素が好ましい。なお、二色性色素は1種単独であっても2種以上であってもどちらでもよく、例えば、I およびI のように平衡混合物であってもよい。
・架橋工程
架橋工程を行うと、PVAフィルムに架橋が導入され、比較的高い温度かつ湿式で延伸工程を行う際にPVAが水へ溶出するのを効果的に防止することができる。このような観点などから、架橋工程は染色工程の後に行うのが好ましい。架橋処理は、PVAフィルムを架橋剤を含む水溶液中に浸漬することにより行うことができる。当該架橋剤としては、ホウ酸、ホウ砂等のホウ酸塩などのホウ素化合物の1種または2種以上を使用することができる。架橋剤を含む水溶液における架橋剤の濃度は1〜15質量%の範囲内であることが好ましく、2〜7質量%の範囲内であることがより好ましい。架橋剤を含む水溶液はヨウ化カリウム等の助剤を含有してもよい。架橋剤を含む水溶液の温度は、20〜50℃の範囲内であることが好ましく、25〜40℃の範囲内であることがより好ましい。
後述する延伸工程とは別に、水浸漬工程中、および/または、水浸漬工程が複数の工程にわたる場合において各水浸漬工程の間に、PVAフィルムを延伸することができる。このような延伸(前延伸)をすることにより、PVAフィルムにしわが入るのを防止することができる。前延伸の延伸倍率は、得られる偏光フィルムの偏光性能などの観点から、延伸前のPVAフィルムの元長に基づいて、4倍以下であることが好ましく、1.5〜3.5倍の範囲内であることがより好ましい。また、各水浸漬工程中における延伸倍率に関して、例えば、膨潤工程における延伸倍率としては、1.1〜3倍の範囲内であることが好ましく、1.2〜2.5倍の範囲内であることがより好ましく、1.4〜2.3倍の範囲内であることが更に好ましく;染色工程における延伸倍率としては、2倍以下であることが好ましく、1.8倍以下であることがより好ましく、1.1〜1.5倍の範囲内であることが更に好ましく;架橋工程における延伸倍率としては、2倍以下であることが好ましく、1.5倍以下であることがより好ましく、1.05〜1.3倍の範囲内であることが更に好ましい。
・延伸工程
PVAフィルムを延伸する延伸工程において、その延伸方法に特に制限はなく、湿式延伸法および乾式延伸法のうちのいずれで行ってもよい。湿式延伸法の場合は、ホウ酸、ホウ砂等のホウ酸塩などのホウ素化合物の1種または2種以上を含む水溶液中で行うこともできるし、上記した二色性色素を含む水溶液中や後述する固定処理浴中で行うこともできる。また乾式延伸法の場合は、室温のまま延伸を行ってもよいし、熱をかけながら延伸してもよいし、吸水後に延伸してもよい。これらの中でも、得られる偏光フィルムにおける幅方向の厚みの均一性の点から湿式延伸法が好ましく、ホウ酸水溶液中で延伸することがより好ましい。ホウ酸水溶液中におけるホウ酸の濃度は0.5〜6.0質量%の範囲内であることが好ましく、1.0〜5.0質量%の範囲内であることがより好ましく、1.5〜4.0質量%の範囲内であることが更に好ましい。上記したホウ素化合物を含む水溶液はヨウ化カリウムを含有してもよく、その濃度は0.01〜10質量%の範囲内であることが好ましい。
延伸工程においてPVAフィルムを延伸する際の温度は、30〜90℃の範囲内であることが好ましく、40〜80℃の範囲内であることがより好ましく、50〜70℃の範囲内であることが更に好ましい。
延伸工程における延伸倍率は、偏光性能により優れた偏光フィルムが得られることなどから、1.2倍以上であることが好ましく、1.5倍以上であることがより好ましく、2倍以上であることが更に好ましい。また、上記した前延伸の延伸倍率をも含めた全延伸倍率(各延伸の延伸倍率を掛け合わせた倍率)は、使用されるPVAフィルムの元長に基づいて、5.5倍以上であることが好ましく、5.7倍以上であることがより好ましく、5.8倍以上であることが更に好ましく、5.9倍以上であることが特に好ましい。各延伸倍率を上記の範囲内にすることで、偏光性能により優れる偏光フィルムが得られる。上記全延伸倍率の上限は特に制限されないが、8倍以下であることが好ましい。
延伸工程におけるPVAフィルムの延伸は、得られる偏光フィルムの性能の観点から一軸延伸が好ましい。一軸延伸の方向に特に制限はなく、長尺のフィルムにおける長さ方向への一軸延伸や横一軸延伸を採用することができるが、偏光性能により優れる偏光フィルムが得られやすいことから長さ方向への一軸延伸が好ましい。長さ方向への一軸延伸は、互いに平行な複数のロールを備える延伸装置を使用して、各ロール間の周速を変えることにより行うことができる。一方、横一軸延伸はテンター型延伸機を用いて行うことができる。
・固定処理工程
固定処理工程における固定処理は、主として、延伸されたPVAフィルムへの二色性色素の吸着を強固にするために施される。固定処理は延伸されたPVAフィルムを固定処理浴中に浸漬することにより行うことができる。固定処理浴としては、ホウ酸、ホウ砂等のホウ酸塩などのホウ素化合物の1種または2種以上を含む水溶液を使用することができる。また、必要に応じて、固定処理浴中にヨウ素化合物や金属化合物を添加してもよい。固定処理浴として使用されるホウ素化合物を含む水溶液中におけるホウ素化合物の濃度は、一般に2〜15質量%の範囲内であることが好ましく、3〜10質量%の範囲内であることがより好ましい。固定処理浴の温度は、15〜60℃の範囲内であることが好ましく、25〜40℃の範囲内であることがより好ましい。
[ロールRを接触させる工程]
本発明の製造方法では、上記の水浸漬工程によって水に浸漬されたPVAフィルムを水から取り出した後の、表面に水が付着したPVAフィルムの幅方向両端部にロールRを接触させ次いでニップロールを接触させる工程を有する。当該ロールRは当該ニップロールよりも上流側に位置するロールである。そして、製造方法(1)に係る本発明の製造方法では、上記ロールRは表面に水が付着したPVAフィルムの幅方向中央部と接触しない。当該ロールRが表面に水が付着したPVAフィルムの幅方向中央部と接触しないことにより、当該幅方向中央部への不要な接触による膜面異常の発生を抑制することができ、また、装置が複雑・高価になるのを抑制することができる。
製造方法(1)において使用される上記ロールRの好ましい例としては、表面に水が付着したPVAフィルムの幅方向の一方の端部に接触し他方の端部に接触しないロールが挙げられる。このようなロールを複数用い、その一部をPVAフィルムの幅方向の一方の端部に接触させ、残りをPVAフィルムの他方の端部に接触させることにより、全体として、PVAフィルムの幅方向両端部にロールを接触させることができる。また、軸方向両端部の径が軸方向中央部の径よりも大きいロールを用いることによっても、表面に水が付着したPVAフィルムの幅方向中央部と接触させずに、幅方向両端部に当該ロールを接触させることができる。これらのロールの中でも入手性や得られる偏光フィルムの性能等の観点から、表面に水が付着したPVAフィルムの幅方向の一方の端部に接触し他方の端部に接触しないロールが好ましい。
PVAフィルムの幅方向の端部における折れ込みの発生をより効果的に抑制することができることから、表面に水が付着したPVAフィルムの幅方向中央部と接触しない上記ロールRの軸方向の長さ(外周面上の長さ)は1cm以上であることが好ましく、2cm以上であることがより好ましく、3cm以上であることが更に好ましい。また当該長さは、PVAフィルムひいては偏光フィルムにおける傷等の外乱を低減する観点から、10cm以下であることが好ましい。このような軸方向の長さを有するロールRを接触させることにより、PVAフィルムにおける幅方向の各端部において、PVAフィルムとロールRとが接触している部分の長さ(ロールRの軸方向の向きにおける長さ)を、好ましくは0.5cm以上、より好ましくは1cm以上、更に好ましくは1.5cm以上、特に好ましくは2cm以上、また、好ましくは8cm以下、より好ましくは5cm以下確保することができる。
製造方法(1)において上記ロールRは、例えば表面に水が付着したPVAフィルムの幅方向の各端部にそれぞれ1個ずつ接触させる場合のように、PVAフィルムの長さ方向に1つのみ有していてもよいが、PVAフィルムの幅方向の端部における折れ込みの発生をより効果的に抑制することができることから、PVAフィルムの長さ方向に複数のロールRを配列してこれらの複数のロールRをPVAフィルムの幅方向の端部に接触させることが好ましい。すなわち、製造方法(1)における好ましい態様としては、製造方法(1’)の態様、すなわち、表面に水が付着したPVAフィルムの幅方向両端部にPVAフィルムの長さ方向に配列した複数のロールRを接触させる工程を有し、ここで、当該複数のロールRの少なくとも一部は表面に水が付着したPVAフィルムの幅方向中央部と接触しない態様が挙げられる。製造方法(1’)における具体例としては、水浸漬工程によって水に浸漬されたPVAフィルムを水から取り出した後の表面に水が付着したPVAフィルムが、PVAフィルムの幅方向全域にわたり接触するロールRの一部としてのガイドロール、および、PVAフィルムの幅方向全域にわたり接触するニップロールにこの順で接触し、PVAフィルムが水から取り出された後よりガイドロールに接触するまでの間、および、当該ガイドロールから離れてより最初にニップロールに接触するまでの間のうちの少なくとも一方(好ましくは両方)において、表面に水が付着したPVAフィルムの幅方向両端部に、当該PVAフィルムの幅方向中央部と接触しない1つ以上のロールRをさらに接触させる態様が挙げられる。
また、製造方法(2)に係る本発明の製造方法では、表面に水が付着したPVAフィルムの幅方向両端部にPVAフィルムの長さ方向に配列した複数のロールRを接触させ次いでニップロールを接触させる工程を有し、ここで、PVAフィルムを水から取り出した後、最初にニップロールに接触するまでの間において、PVAフィルムの幅方向両端部での長さ方向に連続するロール非接触部の長さの最大値A(mm)と乾燥時のPVAフィルムの厚みB(mm)とが、下記式(1)
A ≦ 8286×B − 103 (1)
を満たす。上記最大値Aと乾燥時のPVAフィルムの厚みBとが上記関係を満たすことにより、水浸漬工程を通過した後において、PVAフィルムの幅方向の端部における折れ込みの発生が抑制されて延伸時や乾燥時などにおけるフィルムの破断の発生が低減され、また、より高い延伸倍率で延伸することができて偏光性能に優れた偏光フィルムを容易に製造できる。PVAフィルムの幅方向の端部における折れ込みの発生をより効果的に抑制することができることから、上記最大値A(mm)と乾燥時のPVAフィルムの厚みB(mm)とは、下記式(1’)
A ≦ 8286×B − 110 (1’)
を満たすことが好ましく、下記式(1”)
A ≦ 8286×B − 115 (1”)
を満たしていてもよく、また、下記式(2)
A ≧ 8286×B − 200 (2)
を満たすことが好ましく、下記式(2’)
A ≧ 8286×B − 170 (2’)
を満たすことがより好ましく、下記式(2”)
A ≧ 8286×B − 150 (2”)
を満たすことが更に好ましい。
上記最大値Aは0mm以上(A≧0)であり、したがって、厚みBの値は当該Aが0mm以上となる範囲に定まる。当該最大値Aをより小さくするためにはより小径のロールRが必要となって製造装置が複雑・高価になる傾向があることから、当該最大値Aは1mm以上であることが好ましく、5mm以上であることがより好ましく、8mm以上であることが更に好ましく、20mm以上であってもよい。また、本発明の効果がより顕著に奏されることから、当該最大値Aは300mm以下であることが好ましく、200mm以下であることがより好ましく、150mm以下であることが更に好ましく、100mm以下、更には、80mm以下であってもよい。
製造方法(2)において使用される上記ロールRとしては、その全部に、表面に水が付着したPVAフィルムの幅方向全域にわたり接触するような、軸方向の長さがPVAフィルムの幅よりも広い略円筒形状のロールを使用することもできるが、PVAフィルムの幅方向中央部への不要な接触による膜面異常の発生を抑制することができ、また、装置が複雑・高価になるのを抑制することができることから、当該ロールRの少なくとも一部には、製造方法(1)において使用される表面に水が付着したPVAフィルムの幅方向中央部と接触しないロールRとして上記したような、表面に水が付着したPVAフィルムの幅方向の一方の端部に接触し他方の端部に接触しないロールや、軸方向両端部の径が軸方向中央部の径よりも大きいロールを好ましく使用することができ、表面に水が付着したPVAフィルムの幅方向の一方の端部に接触し他方の端部に接触しないロールをより好ましく使用することができる。言い換えれば、製造方法(1’)におけるより好ましい態様としては、表面に水が付着したPVAフィルムの幅方向両端部にPVAフィルムの長さ方向に配列した複数のロールRを接触させ次いでニップロールを接触させる工程を有し、ここで、当該複数のロールRの少なくとも一部は表面に水が付着したPVAフィルムの幅方向中央部と接触せず、そして、PVAフィルムを水から取り出した後、最初にニップロールに接触するまでの間において、PVAフィルムの幅方向両端部での長さ方向に連続するロール非接触部の長さの最大値Aおよび乾燥時のPVAフィルムの厚みBが、製造方法(2)について上述した関係ないし範囲にある態様が挙げられる。
製造方法(1)、(1’)および(2)のいずれにおいても、上記ロールRを構成する材質としては、例えば、ステンレス製、ゴム製、スポンジ製、プラスチック製など、種々の材質から任意のものを選択すればよい。また、当該ロールRは、非回転式のものでも、回転式のものでもどちらでもよく、PVAフィルムと当該ロールとの摩擦が少ない方が得られる偏光フィルムにおける傷等の外乱を低減することができることから、回転式のロールが好ましい。
また、製造方法(1)、(1’)および(2)のいずれにおいても、上記ニップロールを構成する材質としては、例えば、ステンレス製、ゴム製、スポンジ製、プラスチック製など、種々の材質から任意のものを選択すればよい。ニップロールを通過することにより、PVAフィルムから多くの水が除去されるため、それ以降より次の水浸漬工程までの間においてPVAフィルムの幅方向の端部における折れ込みの発生が抑制される。
上記のガイドロールやニップロールは一般的にはその直径が5cm以上あるが、製造方法(1)、(1’)および(2)のいずれにおいても、これらのガイドロールやニップロールの直径よりも小さい直径を有するロールRを更に用いるのが好ましい。本発明において使用される上記ロールRのうちガイドロール以外のロールRの直径(軸方向に径が変化する場合には最大径)は、最大値Aの値をより小さくするのが容易になり、また、PVAフィルムの幅方向の端部における折れ込みの発生をより効果的に抑制することができることから、3cm以下であることが好ましく、2cm以下であることがより好ましく、1cm以下であることが更に好ましい。当該直径の下限に特に制限はないが、当該直径は、例えば0.5cm以上とすることができる。
製造方法(1)、(1’)および(2)のいずれにおいても、表面に水が付着したPVAフィルムの幅方向両端部にPVAフィルムの長さ方向に配列した複数のロールRを接触させる場合、当該複数のロールRは、PVAフィルムの一方の面のみに接触させることが好ましいが、当該複数のロールRのうちの一部をPVAフィルムの一方の面に接触させ、残りをPVAフィルムの他方の面に接触させてもよい。後者の方法によれば、上記最大値Aの値をより小さくするのが容易になる。当該複数のロールRのうちの少なくとも一部、より好ましくはその全部は、PVAフィルムの鉛直方向下側からPVAフィルムに接触させることが好ましい。
図1は、表面に水が付着したPVAフィルムの幅方向両端部にロールRを接触させる方法の一例を示す概略図であり、(a)は、鉛直方向上側から見た図であり、(b)は側面から見た図である。図1は、PVAフィルム1がその長さ方向に移動している際に、PVAフィルムの両端部の近傍にPVAフィルムの長さ方向に配列された複数のロール2(ロールR)およびガイドロール3(ロールR)が、PVAフィルム1の鉛直方向下側からPVAフィルム1に接触する様子を示している。ここで、個々のロール2は、表面に水が付着したPVAフィルムの幅方向の一方の端部に接触し他方の端部に接触しないロールであり、これらのロール2はいずれも、表面に水が付着したPVAフィルムの幅方向中央部と接触しない。
表面に水が付着したPVAフィルムの幅方向両端部に当該PVAフィルムの幅方向中央部と接触しない上記ロールRを接触させるにあたり、当該PVAフィルムのフィルム面(典型的には、PVAフィルムの幅方向中央部と平行なPVAフィルム上の面)と、上記ロールRにおけるPVAフィルムとの接触部とのなす角度θ(PVAフィルムのフィルム面上の流れ方向に投影した際の最大角度であって、PVAフィルムの幅方向内側に広がる角度)は0度であってもよいが、上記ロールRの端部がPVAフィルムに食い込むことを防ぐことができて工程通過性が向上し、また、スジなどが少なく外観の良好な偏光フィルムを得ることができることから、当該角度θは、1〜10度の範囲内であることが好ましく、3〜8度の範囲内であることがより好ましく、4〜7度の範囲内であることが更に好ましい。当該角度は、図1に示したように、略円筒状のロールRの軸を傾けることにより調整することができるが、軸方向に径の異なるロールR(例えばPVAフィルムのフィルム面上の流れ方向に投影した際の形状が台形となるようなロール)を用いることによっても調整することができる。表面に水が付着したPVAフィルムの幅方向中央部と接触しない上記ロールRの外周面のうちのPVAフィルムの幅方向内側部は、PVAフィルムと接触しないことが好ましい。
図2は、PVAフィルムのフィルム面と上記ロールRにおけるPVAフィルムとの接触部とのなす角度θなどを示す概略図であり、図1における1個のロール2(ロールR)について、その近傍の様子を示している。
上記ロールRの接触は延伸工程の後に行っても乾燥工程における収縮によるフィルムの破断の発生を低減することが可能となるが、偏光フィルムを製造する際のフィルムの破断は延伸時に特に発生しやすいことから、延伸工程の前に、当該ロールRを接触させる工程を有することが好ましい。この場合において、膨潤工程、染色工程および架橋工程からなる群より選ばれる少なくとも1つの工程を水浸漬工程とし、当該水浸漬工程によって水に浸漬されたPVAフィルムを水から取り出した後の表面に水が付着したPVAフィルムの幅方向両端部にロールRを接触させればよい。なお、当該ロールRを接触させる工程を複数有する場合は、そのうちの少なくとも1つの工程が延伸工程の前にあるのが好ましい。
本発明の製造方法が複数の水浸漬工程を有する場合、それらの水浸漬工程の全てについて、当該水浸漬工程を通過した後の表面に水が付着したPVAフィルムの幅方向両端部にロールRを接触させても、あるいは、それらの水浸漬工程のうちの一部について、当該水浸漬工程を通過した後の表面に水が付着したPVAフィルムの幅方向両端部にロールRを接触させてもどちらでもよい。本発明の好ましい態様としては、膨潤工程、染色工程、架橋工程および延伸工程を、いずれも水浸漬工程としてこの順に有し、このうち少なくとも膨潤工程、染色工程および架橋工程を通過した後の表面に水が付着したPVAフィルムの幅方向両端部にロールRを接触させる態様が挙げられる。
[乾燥工程]
延伸を行い、必要に応じて更に固定処理を行った後、乾燥することにより偏光フィルムを製造することができる。乾燥条件は特に制限されないが、乾燥温度は30〜150℃の範囲内であることが好ましく、50〜130℃の範囲内であることがより好ましい。上記範囲内の温度で乾燥することで寸法安定性に優れる偏光フィルムが得られやすい。
[偏光板]
以上のようにして得られた偏光フィルムは、通常、その両面または片面に、光学的に透明で、かつ機械的強度を有する保護膜を貼り合わせて偏光板として使用される。保護膜としては、三酢酸セルロース(TAC)フィルム、酢酸・酪酸セルロース(CAB)フィルム、アクリル系フィルム、ポリエステル系フィルムなどを使用することができる。また、貼り合わせのための接着剤としては、PVA系接着剤やウレタン系接着剤などを挙げることができるが、中でもPVA系接着剤が好適である。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において採用された連続運転可能な延伸倍率、および、偏光フィルムの偏光性能の各測定または評価方法を以下に示す。
[連続運転可能な延伸倍率]
以下の実施例または比較例において、延伸工程における延伸倍率を調整することにより全延伸倍率を0.1倍ずつ段階的に上げていき、フィルムの破断が発生したときの全延伸倍率の直前に設定した全延伸倍率を、連続運転可能な延伸倍率とした。
[偏光フィルムの偏光性能]
(a)透過率Tsの測定
以下の実施例または比較例で得られた偏光フィルムの幅方向の中央部から、偏光フィルムの長さ方向に3cm×幅方向に2cmの正方形のサンプルを2枚採取し、積分球付き分光光度計(日本分光株式会社製「V7100」)を用いて、JIS Z8722:2009(物体色の測定方法)に準拠し、C光源、2°視野の可視光領域の視感度補正を行い、1枚のサンプルについて、長さ方向に対して45°傾けた場合の光の透過率と−45°傾けた場合の光の透過率を測定して、それらの平均値Ts1(%)を求めた。もう1枚のサンプルについても同様にして、45°傾けた場合の光の透過率と−45°傾けた場合の光の透過率を測定して、それらの平均値Ts2(%)を求めた。下記式(3)によりTs1とTs2を平均し、偏光フィルムの透過率Ts(%)とした。
Ts = (Ts1+Ts2)/2 (3)
(b)偏光度Vの測定
上記透過率Tsの測定で採取した2枚のサンプルを、その長さ方向が平行になるように重ねた場合の光の透過率T‖(%)、および、長さ方向が直交するように重ねた場合の光の透過率T⊥(%)を、上記「(a)透過率Tsの測定」の場合と同様にして測定し、下記式(4)により偏光度V(%)を求めた。
V = {(T‖−T⊥)/(T‖+T⊥)}1/2×100 (4)
[実施例1]
乾燥時の厚みが0.030mmで幅が1mの長尺のPVAフィルム(PVAとグリセリンと界面活性剤を含み、グリセリンの含有量がPVA100質量部に対して12質量部で、界面活性剤の含有量がPVA100質量部に対して0.03質量部であるPVAフィルム。PVAは酢酸ビニルの単独重合体のけん化物であり、PVAの重合度は2,400で、PVAのけん化度は99.9モル%。)を、そのフィルムロールから連続的に巻き出し、膨潤工程、染色工程および架橋工程に、この順で連続的に供した。
ここで、膨潤工程として、PVAフィルムを蒸留水(温度:30℃)中に1分間浸漬し、その間に長さ方向に延伸倍率2.0倍で一軸延伸した。また染色工程として、PVAフィルムをヨウ素系色素を含有する水溶液(使用されるヨウ素の濃度:0.05質量%、使用されるヨウ化カリウムの濃度:1.2質量%、温度:30℃)中に2分間浸漬し、その間に長さ方向に延伸倍率1.2倍で一軸延伸した。更に架橋工程として、PVAフィルムをホウ酸水溶液(ホウ酸濃度:2.6質量%、温度:30℃)中に2分間浸漬し、その間に長さ方向に延伸倍率1.1倍で一軸延伸した。
また、膨潤工程、染色工程および架橋工程のいずれについても、図3に示すように、これらの各工程によって水に浸漬されたPVAフィルムを水から取り出した後の表面に水が付着した状態のPVAフィルムがガイドロール(当該PVAフィルムの幅方向全域にわたり接触するガイドロール)に接触するようにし、その後、更に、一対のニップロール(当該PVAフィルムの幅方向全域にわたり接触するニップロール)に接触するようにした。そして、各工程においてPVAフィルムが水に浸漬された状態にあるときより水から取り出した後ガイドロールに接触するまでの間において、PVAフィルムの幅方向両端部にPVAフィルムの長さ方向に配列した複数の小径ロールをPVAフィルムの鉛直方向下側から接触させ、また、ガイドロールとニップロールの間においても、表面に水が付着した状態のPVAフィルムの幅方向両端部にPVAフィルムの長さ方向に配列した複数の小径ロールをPVAフィルムの鉛直方向下側から接触させた。ここで、個々の小径ロールは、上記PVAフィルムの幅方向の一方の端部に接触し他方の端部に接触しないロール(径が9mmで軸方向の長さが5cmである略円筒状の回転式のロール(SUS304製))であり、当該小径ロールはいずれも、上記PVAフィルムの幅方向中央部と接触しないものとした。また、膨潤工程、染色工程および架橋工程のいずれについても、PVAフィルムを水から取り出した後、最初にニップロールに接触するまでの間において、PVAフィルムの幅方向両端部での長さ方向に連続するロール非接触部の長さの最大値Aが140mmなるようにし、PVAフィルムと各小径ロールとが接触している部分の長さ(小径ロールの軸方向の向きにおける長さ)を2cmとし、PVAフィルムのフィルム面(PVAフィルムの幅方向中央部と平行なPVAフィルム上の面)と各小径ロールにおけるPVAフィルムとの接触部とのなす角度θをいずれも5度とし、各小径ロールの外周面のうちのPVAフィルムの幅方向内側部がPVAフィルムと接触しないようにした。
上記の架橋工程に続いて延伸工程を連続的に行い、更に固定処理工程および乾燥工程をこの順に経て偏光フィルムを製造した。延伸工程は、PVAフィルムをホウ酸水溶液(ホウ酸濃度:2.8質量%、ヨウ化カリウム濃度:5質量%、温度:57℃)中で長さ方向に延伸倍率1.9倍で一軸延伸することにより行った(前延伸の延伸倍率をも含めた全延伸倍率は5.0倍)。また固定処理工程は、延伸されたPVAフィルムをホウ酸水溶液(ホウ酸濃度:2.6質量%、ヨウ化カリウム濃度:5質量%、温度:22℃)中に2分間浸漬することにより行った。更に乾燥工程は、延伸されたPVAフィルムを60℃で1分間乾燥することにより行った。
そして、上記した方法により連続運転可能な延伸倍率を求め、当該連続運転可能な延伸倍率を採用した際に得られた偏光フィルムを用いて上記した方法により偏光フィルムの偏光性能を評価した。これらの結果を表1に示した。なお上記の偏光フィルムの製造において、いずれの水浸漬工程を通過した後にも、PVAフィルムの幅方向の端部に折れ込みの発生はみられなかった。
[実施例2]
PVAフィルムの厚みを0.020mmにし、膨潤工程、染色工程および架橋工程のいずれについても、上記最大値Aが60mmになるようにしたこと以外は実施例1と同様にして、連続的に偏光フィルムを製造した。
そして、上記した方法により連続運転可能な延伸倍率を求め、当該連続運転可能な延伸倍率を採用した際に得られた偏光フィルムを用いて上記した方法により偏光フィルムの偏光性能を評価した。これらの結果を表1に示した。なお上記の偏光フィルムの製造において、いずれの水浸漬工程を通過した後にも、PVAフィルムの幅方向の端部に折れ込みの発生はみられなかった。
[実施例3]
PVAフィルムの厚みを0.015mmにし、膨潤工程、染色工程および架橋工程のいずれについても、上記最大値Aが10mmになるようにしたこと以外は実施例1と同様にして、連続的に偏光フィルムを製造した。
そして、上記した方法により連続運転可能な延伸倍率を求め、当該連続運転可能な延伸倍率を採用した際に得られた偏光フィルムを用いて上記した方法により偏光フィルムの偏光性能を評価した。これらの結果を表1に示した。なお上記の偏光フィルムの製造において、いずれの水浸漬工程を通過した後にも、PVAフィルムの幅方向の端部に折れ込みの発生はみられなかった。
[実施例4]
架橋工程については小径ロールを接触させなかったこと以外は実施例2と同様にして、連続的に偏光フィルムを製造した。
そして、上記した方法により連続運転可能な延伸倍率を求め、当該連続運転可能な延伸倍率を採用した際に得られた偏光フィルムを用いて上記した方法により偏光フィルムの偏光性能を評価した。これらの結果を表1に示した。なお上記の偏光フィルムの製造において、架橋工程を通過した後に、PVAフィルムの幅方向の一方の端部に幅0.5mmのわずかな折れ込みが発生した。
[実施例5]
膨潤工程、染色工程および架橋工程のいずれについても、PVAフィルムのフィルム面と各小径ロールにおけるPVAフィルムとの接触部とのなす角度θをいずれも0度とした(各小径ロールの外周面のうちのPVAフィルムの幅方向内側部がPVAフィルムと接触する)こと以外は実施例2と同様にして、連続的に偏光フィルムを製造した。
そして、上記した方法により連続運転可能な延伸倍率を求め、当該連続運転可能な延伸倍率を採用した際に得られた偏光フィルムを用いて上記した方法により偏光フィルムの偏光性能を評価した。これらの結果を表1に示した。なお上記の偏光フィルムの製造において、得られた偏光フィルムの両端部にスジが発生した。
[実施例6]
膨潤工程、染色工程および架橋工程のいずれについても、上記最大値Aが100mmになるようにしたこと以外は実施例2と同様にして、連続的に偏光フィルムを製造した。
そして、上記した方法により連続運転可能な延伸倍率を求め、当該連続運転可能な延伸倍率を採用した際に得られた偏光フィルムを用いて上記した方法により偏光フィルムの偏光性能を評価した。これらの結果を表1に示した。なお上記の偏光フィルムの製造において、水浸漬工程を通過した後に、PVAフィルムの両端部に幅1mmのわずかな折れ込みが発生した。
[実施例7]
膨潤工程、染色工程および架橋工程のいずれについても、上記最大値Aが30mmになるようにしたこと以外は実施例3と同様にして、連続的に偏光フィルムを製造した。
そして、上記した方法により連続運転可能な延伸倍率を求め、当該連続運転可能な延伸倍率を採用した際に得られた偏光フィルムを用いて上記した方法により偏光フィルムの偏光性能を評価した。これらの結果を表1に示した。なお上記の偏光フィルムの製造において、水浸漬工程を通過した後に、PVAフィルムの両端部に幅1mmのわずかな折れ込みが発生した。
[比較例1]
膨潤工程、染色工程および架橋工程のいずれについても小径ロールを接触させなかった(最大値Aは170mm)こと以外は実施例1と同様にして、連続的に偏光フィルムを製造した。
そして、上記した方法により連続運転可能な延伸倍率を求め、当該連続運転可能な延伸倍率を採用した際に得られた偏光フィルムを用いて上記した方法により偏光フィルムの偏光性能を評価した。これらの結果を表1に示した。なお上記の偏光フィルムの製造において、水浸漬工程を通過した後に、PVAフィルムの幅方向の両端部に顕著な折れ込みが発生した。
[比較例2]
膨潤工程、染色工程および架橋工程のいずれについても小径ロールを接触させなかった(最大値Aは170mm)こと以外は実施例3と同様にして、連続的に偏光フィルムを製造した。
そして、上記した方法により連続運転可能な延伸倍率を求め、当該連続運転可能な延伸倍率を採用した際に得られた偏光フィルムを用いて上記した方法により偏光フィルムの偏光性能を評価した。これらの結果を表1に示した。なお上記の偏光フィルムの製造において、それぞれの水浸漬工程を通過した後に、PVAフィルムの幅方向の両端部に顕著な折れ込みが発生した。
1 PVAフィルム、2 表面に水が付着したPVAフィルムの幅方向中央部と接触しないロール、3 ガイドロール、4 PVAフィルムの幅方向の端部、5 PVAフィルムとロールRとが接触している部分、6 水面、7 PVAフィルムのフィルム面、8 PVAフィルムとの接触部、9 ロールRの外周面のうちのPVAフィルムの幅方向内側部、10 PVAフィルムのフィルムロール、11 ニップロール、d 長さ方向に連続するロール非接触部の長さ、A 長さ方向に連続するロール非接触部の長さの最大値、C ロールの軸方向の長さ、θ PVAフィルムのフィルム面と表面に水が付着したPVAフィルムの幅方向中央部と接触しないロールRにおけるPVAフィルムとの接触部とのなす角度。

Claims (3)

  1. 乾燥時の厚みBが0.02mm以上0.05mm以下であるポリビニルアルコールフィルムを延伸する延伸工程及び水に浸漬する水浸漬工程を有する偏光フィルムの製造方法であって、
    前記水浸漬工程は、膨潤工程、染色工程及び架橋工程であり、
    前記水浸漬工程の各工程は、前記ポリビニルアルコールフィルムを前記水に浸漬し、該水から取り出した後の表面に前記水が付着した前記ポリビニルアルコールフィルムに、その長さ方向に配列した複数のロールRを接触させ、次いでニップロールを接触させる工程であり、
    前記複数のロールRは、軸方向の長さが前記ポリビニルアルコールフィルムの幅よりも広い略円筒形状の第1ロールと、前記ポリビニルアルコールフィルムの幅方向両端部に配置され、前記ポリビニルアルコールフィルムの幅方向の一方の端部に接触し他方の端部に接触しない略円筒形状の第2ロールとを含み、
    前記第1ロールは、鉛直方向上側から見たとき、その軸方向両端部が前記ポリビニルアルコールフィルムから露出して配置され、
    前記第2ロールは、鉛直方向上側から見たとき、その軸方向外側の端部が前記ポリビニルアルコールフィルムから露出して配置され、その軸方向において前記ポリビニルアルコールフィルムと接触する接触部の長さが0.5cm以上8cm以下であり、
    前記水浸漬工程の各工程において、前記ポリビニルアルコールフィルムを前記水から取り出した後、前記ニップロールに接触するまでの間で、前記ポリビニルアルコールフィルムの幅方向両端部において長さ方向に連続しかつ前記第1ロール及び前記第2ロールのいずれとも接触しないロール非接触部の長さの最大値をA(mm)としたとき、
    前記A(mm)と前記B(mm)とが、下記式(1)
    8286 × B − 150 ≦ A ≦ 8286 × B − 103 (1)
    の関係を満すように、前記第1ロールと前記第2ロールとが配置されている、製造方法。
  2. 前記延伸工程の前に、前記水浸漬工程を有する、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記第2ロールは、前記第1ロールより前記ポリビニルアルコールフィルムの流れ方向上流側に位置する、請求項1または2に記載の製造方法。
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