JP2004170944A - 偏光フィルムの製造法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 広幅のポリビニルアルコールフィルムを一軸延伸することにより、良好な偏光性能を有する偏光フィルムを製造する方法を提供する。
【解決手段】 幅が2m以上のポリビニルアルコールフィルムをホウ酸水溶液中で一軸延伸する工程を含む連続的な偏光フィルムの製造において、ポリビニルアルコールフィルムを下記式(1)および(2)が満足される条件で一軸延伸することを特徴とする偏光フィルムの製造法。
A≧5(m) ・・・(1)
A/B≧0.5(分) ・・・(2)
(上記式において、Aは延伸間距離(m)を表わし、Bは延伸後のフィルム速度(m/分)を表わす。)
【選択図】 なし

Description

本発明は、液晶ディスプレイ装置に用いられる偏光フィルムの製造法に関する。
光の透過および遮蔽機能を有する偏光板は、光のスイッチング機能を有する液晶とともに、液晶ディスプレイ(LCD)の基本的な構成要素をなしている。このLCDの適用分野も、開発初期の頃の電卓および腕時計などの小型機器から、近年では、ノートパソコン、液晶モニター、液晶カラープロジェクター、液晶テレビ、車載用ナビゲーションシステム、パーソナルホンおよび屋内外で用いられる計測機器などへと広範囲の広がりをみせている。LCDの適用分野の中でも、特に液晶モニター、液晶テレビなどは、高輝度のバックライトを使用することが多いため、偏光板にも従来品以上に高い偏光性能が求められるようになっている。
偏光板は、一般にポリビニルアルコール系フィルム(以下、ポリビニルアルコールを「PVA」、ポリビニルアルコール系フィルムを「PVAフィルム」と略記することがある)を縦方向に一軸延伸し、ヨウ素や二色性染料を用いて染色するか、または染色して縦方向に一軸延伸した後、ホウ素化合物で固定処理を行うことにより(場合によっては、染色と固定処理が同時に行われることがある)得られる偏光フィルムに、三酢酸セルロース(TAC)フィルムや酢酸・酪酸セルロース(CAB)フィルムなどの保護膜を貼り合わせた構成となっている。
液晶モニターや液晶テレビなどの画面が大型化するのに伴って、従来よりも広幅の偏光フィルムが要求されるようになってきている。広幅の偏光フィルムを製造するには、これに見合った広幅のPVAフィルムを原料に用いる必要があるが、その場合に、製造装置や製造条件は従来と同じにして、PVAフィルムの幅を広くするだけでは、PVAフィルムの幅を広くしない場合よりも、かえって得られる偏光フィルムの偏光性能が低下するという問題があった。
一方、液晶モニターおよび液晶テレビは、コントラストがより向上したものが求められるようになってきており、その要求に応えるために、従来よりも高い偏光性能を有する偏光フィルムが求められるようになってきている。しかし、前述のとおり、液晶モニターおよび液晶テレビの画面の大型化に対応して、従来よりも広幅の偏光フィルムを製造しようとすると、偏光フィルムの偏光性能が低下するので、液晶モニターおよび液晶テレビのコントラストを向上させるという要求には応えることができないことになる。
偏光フィルムの偏光性能を向上させる試みとして、PVAフィルムを一軸延伸する際の延伸条件を制御するという方法が提案されている。その方法として、例えば、PVA、二色性物質および溶媒の混合物からキャスト法又は押出法により製膜されたPVAフィルムを、未延伸フィルムの幅(c)と延伸ギャップ(l)の比(c/l)が3以下の条件で乾熱法により延伸する方法(特許文献1および特許文献2)、PVAフィルムをホウ酸水溶液中で延伸間距離(a)とフィルム幅(c)の比(a/c)が3以上の条件で延伸する方法(特許文献3)、PVAフィルムをホウ酸水溶液中で延伸後のフィルム幅が延伸前のフィルム幅の60%以下になるようにして延伸する方法(特許文献4)などの方法が知られている。
しかしながら、これらの方法によっても、広幅のPVAフィルムを用いたのでは、良好な偏光性能を有する偏光フィルムを製造することはできず、液晶ディスプレイの大型化には十分対応することができないのが現状である。
この発明に関連する先行技術文献としては次のものがある。
特開平6−51123号公報 米国特許第5,326,507号明細書 特開平6−337311号公報 特開平8−327823号公報
本発明の目的は、広幅のポリビニルアルコールフィルムを用いた場合でも、これを一軸延伸することにより、良好な偏光性能を有する偏光フィルムの製造法を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、幅が2m以上のポリビニルアルコールフィルムを一軸延伸して連続的に偏光フィルムを製造するにあたり、延伸間距離、および延伸間距離とフィルムの延伸速度を特定の範囲に制御しながら、ポリビニルアルコールフィルムを一軸延伸することにより、従来よりも偏光性能が高い偏光フィルムが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、幅が2m以上のポリビニルアルコールフィルムをホウ酸水溶液中で一軸延伸する工程を含む連続的な偏光フィルムの製造において、ポリビニルアルコールフィルムを下記式(1)式および(2)が満足される条件で一軸延伸することを特徴とする偏光フィルムの製造法を提供する。
A≧5(m) ・・・(1)
A/B≧0.5(分) ・・・(2)
(上記式において、Aは延伸間距離(m)を表わし、Bは延伸後のフィルム速度(m/分)を表わす。)
また、本発明の方法による偏光フィルムの製造において、延伸間距離(A)と延伸後のフィルム幅(C)の比(A/C)を5以上にすることにより、得られる偏光フィルムの偏光性能が一層向上する。
本発明の方法によれば、広幅のポリビニルアルコールフィルムを用いた場合でも、偏光性能が良好な偏光フィルムを製造することができる。得られた偏光フィルムは、大型の液晶ディスプレイの部品として用いられる偏光板の材料として有用である。
本発明の方法において、偏光フィルムは、幅が2m以上のPVAフィルムを原料として用い、これを特定の条件下で一軸延伸することにより製造される。幅が2m以上のPVAフィルムを、通常の方法で一軸延伸したとしても、このようにして得られる広幅の偏光フィルムは、それよりも幅が狭い偏光フィルムよりも偏光性能が低く、これに対し、本発明の方法によれば、幅が2m以上のPVAフィルムを用いた場合でも、偏光性能が著しく向上した偏光フィルムを製造することができる。
本発明の方法において、偏光フィルムは連続的に製造される。ここで、偏光フィルムを連続的に製造するとは、原料PVAフィルムを用い、染色、一軸延伸などの複数の工程を経て連続的に偏光フィルムを製造することを意味する。原料PVAフィルムはロール状に巻き取られた状態で保管されることが多く、これと同様に、偏光フィルムもTAC等の保護膜を貼り合わせた後、ロール状に巻き取られた状態で保管されることが多い。このことから、本発明の方法は、ロール状に巻き取られたPVAフィルムから連続的に偏光フィルムを製造し、その製造された偏光フィルムをロール状に巻き取りながら実施するのが有利である。
本発明方法による偏光フィルムの製造において、PVAフィルムの一軸延伸には、低速で回転する駆動ロールと高速で回転する駆動ロールを用いることができ、この場合、PVAフィルムを引き取る速度は、ニップロールを用いるなどして調整される。ニップロールを用いた場合、駆動ロールの速度とPVAフィルムの移動速度は一致するので、PVAフィルムの一軸延伸は、低速で回転する駆動ロールと高速で回転する駆動ロールの速度差を利用して行われる。
本発明の方法において、PVAフィルムを一軸延伸する際の延伸間距離(A)は5m以上であることが必要であり、好ましくは8m以上であり、さらに好ましくは10m以上であり、特に好ましくは15m以上である。延伸間距離が大きくなるほど、得られる偏光フィルムの偏光性能が向上することから好ましい。しかし、延伸間距離が大きくなりすぎると、フィルムがカール(curl)するなどして、端部が折れ曲がることがあり、フィルムの幅方向に均一な張力を与えることが困難になるため、延伸間距離は30mを超えないのがよい。ここで、延伸間距離とは、PVAフィルムの延伸に用いられる、低速で回転する駆動ロールから、これよりも2倍以上の速度で回転する駆動ロールにいたるフィルムの長さのことである。
本発明方法による偏光フィルムの製造において、延伸間距離(A)と延伸後のフィルム速度(B)の比(A/B)は0.5分以上であることが必要であり、1.0分以上が好ましく、1.2分以上がさらに好ましい。A/Bが0.5分よりも小さいと、偏光フィルムの偏光性能が低下し、実用上好ましくない。A/Bが大きいほど、偏光フィルムの偏光性能が向上することから好ましい。A/Bの上限は、一軸延伸の際に用いられるホウ酸水溶液のホウ酸濃度、および延伸温度などの種々の条件によって変化するため、これを一律に規定することはできないが、A/Bがいたずらに大きくなると、偏光フィルムの偏光性能が低下する傾向があるので、3分を超えないのがよい。
なお、本発明において、延伸後のフィルム速度(B)とは、PVAフィルムの延伸に用いられる高速で回転する駆動ロールをフィルムが通過するときの速度(m/分)である。
本発明方法による偏光フィルムの製造において、延伸間距離(A)と延伸後のフィルム幅(C)の比(A/C)は5以上であることが好ましく、7以上であることがさらに好ましい。A/Cが大きいほど偏光フィルムの偏光性能が向上するが、この値が大きすぎると、延伸後のフィルムの端部の厚みが大きくなりすぎて、偏光フィルムの収率が低下するため、A/Cの上限は概ね20である。
なお、本発明において、延伸後のフィルム幅(C)とは、PVAフィルムの延伸に用いられる高速で回転する駆動ロールをフィルムが通過するときの幅(m)である。
本発明において用いられるPVAは、例えば、ビニルエステルを重合して得られたポリビニルエステルをけん化することにより製造される。また、PVAの主鎖に不飽和カルボン酸またはその誘導体、不飽和スルホン酸またはその誘導体、炭素数2〜30のα−オレフィンなどを5モル%未満の割合でグラフト共重合させた変性PVAや、ビニルエステルと不飽和カルボン酸またはその誘導体、不飽和スルホン酸またはその誘導体、炭素数2〜30のα−オレフィンなどを15モル%未満の割合で共重合させた変性ポリビニルエステルをけん化することにより製造される変性PVAや、未変性または変性PVAの水酸基の一部をホルマリン、ブチルアルデヒド、ベンズアルデヒドなどのアルデヒド類で架橋したいわゆるポリビニルアセタール樹脂などを挙げることができる。
前記したビニルエステルとしては、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニルなどが挙げられる。
変性PVAの製造に使用されるコモノマーは、主としてPVAの変性を目的に共重合されるもので、本発明の趣旨を損なわない範囲で使用される。このようなコモノマーとして、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテンなどのオレフィン類;アクリル酸およびその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシルなどのアクリル酸エステル類;メタクリル酸およびその塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシルなどのメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩、N−メチロールアクリルアミドおよびその誘導体などのアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩、N−メチロールメタクリルアミドおよびその誘導体などのメタクリルアミド誘導体;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニルアミド類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル類;酢酸アリル、塩化アリルなどのアリル化合物;マレイン酸およびその塩またはそのエステル;イタコン酸およびその塩またはそのエステル;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニルなどを挙げることができる。これらの中でもα−オレフィンが好ましく、特にエチレンが好ましい。変性PVAの変性量は15モル%未満であるのが好ましい。
PVAのけん化度は、偏光フィルム並びに該偏光フィルムから製造される偏光板の偏光性能および耐久性の点から、95モル%以上が好ましく、98モル%以上がより好ましく、99モル%以上がさらに好ましく、99.5モル%以上が最も好ましい。
PVAのけん化度とは、けん化によりビニルアルコール単位に変換されうる単位の中で、実際にビニルアルコール単位にけん化されている単位の割合を示したものである。なお、PVAのけん化度は、JIS記載の方法により測定することができる。
PVAの重合度は、偏光フィルムおよび偏光板の偏光性能と耐久性の点から、1000以上が好ましく、1500以上がさらに好ましく、2000以上が特に好ましい。PVAの重合度の上限としては8000が好ましく、6000がより好ましい。
PVAの重合度は、JIS K 6726に準じて測定することができる。すなわち、PVAを再けん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度から求めることができる。
以上に述べたPVAを使用してPVAフィルムを製造する方法としては、含水PVAを溶融押出法により製膜する方法の他に、例えば、PVAを溶剤に溶解したPVA溶液を使用して、流延製膜法、湿式製膜法(貧溶媒中に吐出する方法)、ゲル製膜法(PVA水溶液を一旦冷却ゲル化した後、溶媒を抽出除去し、PVAフィルムを得る方法)、およびこれらの組み合わせによる方法などを採用することができる。これらの中でも、流延製膜法および溶融押出製膜法が、良好な偏光フィルムを得る観点から好ましい。
PVAフィルムを製造する際に使用されるPVAを溶解する溶剤としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、グリセリン、水などを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を使用することができる。これらの中でも、ジメチルスルホキシド、水、またはグリセリンと水の混合溶媒が好適に使用される。
PVAフィルムを製造する際に使用されるPVA溶液または含水PVAにおけるPVAの濃度は、PVAの重合度によっても変化するが、20〜70重量%が好適であり、25〜60重量%がより好適であり、30〜55重量%がさらに好適であり、35〜50重量%が最も好適である。PVAの濃度が70重量%よりも高いと、PVA溶液または含水PVAの粘度が高くなり過ぎて、フィルムの原液を調製する際に濾過や脱泡が困難となり、異物や欠点のないフィルムを得るのが困難になる傾向がある。また、PVAの濃度が20%よりも低いと、PVA溶液または含水PVAの粘度が低くなり過ぎて、目的とする厚みを有するPVAフィルムを製造するのが困難になる傾向がある。また、このPVA溶液または含水PVAには、必要に応じて、可塑剤、界面活性剤、二色性染料などが含有されていてもよい。
PVAフィルムを製造する際に、可塑剤として、多価アルコールを添加することが好ましい。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジグリセリン、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパンなどを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を使用することができる。これらの中でも、延伸性の向上効果の点から、ジグリセリン、エチレングリコールまたはグリセリンが好適に使用される。
多価アルコールの添加量としては、PVA100重量部に対して1〜30重量部が好ましく、3〜25重量部がさらに好ましく、5〜20重量部が最も好ましい。多価アルコールの添加量が1重量部よりも少ないと、PVAフィルムの染色性や延伸性が低下する場合があり、30重量部よりも多いと、PVAフィルムが柔軟になり過ぎて、取り扱い性が低下する場合がある。
PVAフィルムを製造する際には、界面活性剤を添加することが好ましい。界面活性剤の種類としては特に限定はないが、アニオン性またはノニオン性の界面活性剤が好ましい。アニオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸カリウムなどのカルボン酸型、オクチルサルフェートなどの硫酸エステル型、ドデシルベンゼンスルホネートなどのスルホン酸型のアニオン性界面活性剤が好適である。ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのアルキルエーテル型、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどのアルキルフェニルエーテル型、ポリオキシエチレンラウレートなどのアルキルエステル型、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテルなどのアルキルアミン型、ポリオキシエチレンラウリン酸アミドなどのアルキルアミド型、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテルなどのポリプロピレングリコールエーテル型、オレイン酸ジエタノールアミドなどのアルカノールアミド型、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテルなどのアリルフェニルエーテル型などのノニオン性界面活性剤が好適である。これらの界面活性剤は1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
界面活性剤の添加量としては、PVA100重量部に対して0.01〜1重量部が好ましく、0.02〜0.5重量部がさらに好ましく、0.05〜0.3重量部が最も好ましい。界面活性剤の添加量が0.01重量部よりも少ないと、界面活性剤を添加したことによる製膜性および剥離性の向上効果が現れにくく、1重量部よりも多いと、界面活性剤がPVAフィルムの表面に溶出してブロッキングの原因になり、取り扱い性が低下する場合がある。
本発明方法による偏光フィルムの製造において、幅が2m以上のPVAフィルムを用いることが重要であり、2.3m以上が好ましく、2.6m以上がより好ましく、3m以上がさらに好ましい。PVAフィルムの幅が2mより小さい場合には、PVAフィルムを一軸延伸する際にネックイン(neck-in)の影響をフィルムの中央部付近にまで受けやすくなり、光学性能が均一で幅広の偏光フィルムを得ることができなくなる。また、PVAフィルムの幅が6mを超えると、PVAフィルムを均一に一軸延伸するのが困難になる場合があるので、フィルム幅は6m以下が好ましく、5m以下がより好ましい。
PVAフィルムの厚みは10〜100μmが好ましく、20〜80μmがより好ましい。PVAフィルムの厚みが10μmより小さいと、フィルムの強度が低すぎて、均一な延伸を行いにくく、偏光フィルムに色斑が発生しやすい。PVAフィルムの厚みが100μmを超えると、PVAフィルムを一軸延伸した際に、端部のネックインによりフィルムの厚みに変動が生じ易くなり、偏光フィルムの色斑が強調されやすくなるので、好ましくない。
本発明の方法は、例えば、PVAフィルムに、膨潤、染色、ホウ酸水溶液中での一軸延伸、ホウ酸またはヨウ化カリウム水溶液中での固定処理、乾燥処理などの操作を施し、さらに必要に応じて熱処理を施すなどして実施することができる。本発明の方法において、PVAフィルムの一軸延伸は1段で行っても、あるいは多段階に分けて行ってもよい。PVAフィルムの一軸延伸を多段階に分けて実施する場合、そのうちの少なくとも1つの段階において実施される一軸延伸は、前記式(1)および(2)を満足する必要がある。
PVAフィルムの染色は、一軸延伸前、一軸延伸時、一軸延伸後のいずれの操作段階においても実施が可能であるが、偏光フィルムの偏光性能の点から、一軸延伸前に行われるのが望ましい。染色に用いる染料としては、ヨウ素−ヨウ化カリウム;ダイレクトブラック 17、19、154;ダイレクトブラウン 44、106、195、210、223;ダイレクトレッド 2、23、28、31、37、39、79、81、240、242、247;ダイレクトブルー 1、15、22、78、90、98、151、168、202、236、249、270;ダイレクトバイオレット 9、12、51、98;ダイレクトグリーン 1、85;ダイレクトイエロー 8、12、44、86、87;ダイレクトオレンジ 26、39、106、107などの二色性染料などが挙げられ、これらは1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。PVAフィルムの染色は、通常PVAフィルムを上記染料を含有する溶液中に浸漬させることにより行われるが、PVAフィルムの製造に用いられる製膜原液に染料を混合するなどの方法によってもよい。
本発明の方法にしたがうPVAフィルムの一軸延伸は、ホウ酸を含む水溶液などの温水中(前記染料を含有する溶液中や後述する固定処理浴中でもよい)で行うことが必要である。延伸温度について特に制限はなく、30〜90℃が好適である。また、一軸延伸の延伸倍率(一軸延伸を多段階に分けて行う場合には、合計の延伸倍率)は、偏光フィルムの偏光性能および該偏光フィルムから製造される偏光板の偏光性能の点から、4倍以上が好ましく、5倍以上が特に好ましい。延伸倍率について厳密な意味での上限はないが、8倍以下であると均一な延伸が得られやすいので好ましい。延伸後のフィルムの厚さは、3〜75μmが好ましく、5〜50μmがより好ましい。
PVAフィルムへの上記染料の吸着を強固にすることを目的にして、PVAフィルムに対して固定処理を行うことが多い。固定処理に使用する処理浴には、通常、ホウ酸および/またはホウ素化合物が添加される。また、固定処理浴には、必要に応じて、ヨウ素化合物が添加されていてもよい。
固定処理された偏光フィルムは、乾燥処理に付される。乾燥処理は、30〜150℃で行われるのが好ましく、50〜150℃で行われるのがより好ましい。
以上のようにして得られた偏光フィルムは、通常、その両面または片面に、光学的に透明で、かつ機械的強度を有した保護膜を貼り合わせて偏光板にして使用される。保護膜としては、三酢酸セルロース(TAC)フィルム、酢酸・酪酸セルロース(CAB)フィルム、アクリル系フィルム、ポリエステル系フィルムなどが使用される。また、偏光フィルムと保護フィルムを貼り合わせるための接着剤としては、ポリビニルアルコール系の接着剤やウレタン系の接着剤などを挙げることができるが、中でもポリビニルアルコール系の接着剤が好適である。
以上のようにして得られた偏光板は、アクリル系等の粘着剤を被覆した後、ガラス基板に貼り合わせて液晶ディスプレイ装置の部品として使用される。偏光板をガラス基板に貼り合わせる際に、位相差フィルム、視野角向上フィルム、輝度向上フィルム等を同時に貼り合わせてもよい。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
なお、以下の実施例および比較例において、偏光フィルムの光学性能は以下の方法により測定した。
偏光フィルムの光学性能:
約4cm×4cmの偏光フィルムのサンプルを島津製作所製の分光光度計UV−2200(積分球付属)を用い、JIS Z 8701に準拠して、C光源、2度視野の可視光領域の視感度補正したY値を測定し、偏光フィルムの延伸軸方向に対して45度と、−45度方向の平均値から透過率(T)を求めた。これと同様の方法でパラレルニコルとクロスニコルのY値を測定し、偏光度(V)を求めた。さらに、下式にしたがって、2色性比(Rd)を求めた。
Rd=log(T−T×V)/log(T+T×V)
けん化度99.95モル%、重合度2400のポリビニルアルコールからなる、ロール状に巻き取られたポリビニルアルコールフィルム(グリセリン含有量12%、厚み75μm、幅3.5m、全長2500m)を予備膨潤、染色、一軸延伸、固定処理、乾燥、および熱処理の順番で連続的に処理して、偏光フィルムを製造した。なお、偏光フィルムの製造は、ロール状に巻き取りながら連続的に行った。すなわち、前記ポリビニルアルコールフィルムを30℃の水中に30秒間浸して予備膨潤し、ヨウ素/ヨウ化カリウムの濃度比が1/100の35℃の水溶液中に3分間浸した。続いて、ポリビニルアルコールフィルムをホウ酸濃度4%の50℃の水溶液中で、延伸間距離(A)を15mにして縦方向に6倍に一軸延伸した。一軸延伸後のフィルム速度(B)は10m/分、延伸後のフィルム幅(C)は1.5m、幅方向の中央部における厚みは29μmであった。このフィルムをヨウ化カリウム濃度70g/リットル、ホウ酸濃度40g/リットル、塩化亜鉛濃度10g/リットルの30℃の水溶液中に5分間浸漬して固定処理を行った。その後、PVAフィルムを取り出し、40℃の温風で乾燥し、さらに100℃で熱処理を行った。延伸間距離(A)/延伸後フィルム速度(B)は1.5分であり、延伸間距離(A)/延伸後フィルム幅(C)は10であった。
得られた偏光フィルムは透過率が43.5%であり、偏光度が99.99%であり、2色性比が72であり、偏光性能は非常に良好であった。
けん化度99.95モル%、重合度2400のポリビニルアルコールからなる、ロール状に巻き取られたポリビニルアルコールフィルム(グリセリン含有量12%、厚み75μm、幅3m、全長2500m)を予備膨潤、染色、一軸延伸、固定処理、乾燥、熱処理の順番で連続的に処理して、偏光フィルムを製造した。なお、偏光フィルムの製造は、ロール状に巻き取りながら連続的に行った。すなわち、前記ポリビニルアルコールフィルムを30℃の水中に30秒間浸して予備膨潤し、ヨウ素/ヨウ化カリウムの濃度比が1/100の35℃の水溶液中に3分間浸した。続いて、ポリビニルアルコールフィルムをホウ酸濃度4%の50℃の水溶液中で、延伸間距離(A)を10mにして縦方向に5.5倍に一軸延伸した。一軸延伸後のフィルム速度(B)は8.3m/分、延伸後のフィルム幅(C)は1.5m、幅方向の中央部における厚みは27μmであった。このフィルムをヨウ化カリウム濃度60g/リットル、ホウ酸濃度40g/リットル、塩化亜鉛濃度10g/リットルの30℃の水溶液中に5分間浸漬して固定処理を行った。その後、PVAフィルムを取り出し、40℃の温風で乾燥し、さらに100℃で熱処理を行った。延伸間距離(A)/延伸後フィルム速度(B)は1.2分であり、延伸間距離(A)/延伸後フィルム幅(C)は6.7であった。
得られた偏光フィルムは透過率が43.5%であり、偏光度が99.98%であり、2色性比が67であり、偏光性能は良好であった。
けん化度99.95モル%、重合度2400のポリビニルアルコールからなる、ロール状に巻き取られたポリビニルアルコールフィルム(グリセリン含有量12%、厚み75μm、幅3m、全長2500m)を予備膨潤、染色、一軸延伸、固定処理、乾燥、熱処理の順番で連続的に処理して、偏光フィルムを製造した。なお、偏光フィルムの製造は、ロール状に巻き取りながら連続的に行った。すなわち、前記ポリビニルアルコールフィルムを30℃の水中に30秒間浸して予備膨潤し、ヨウ素/ヨウ化カリウムの濃度比が1/100の35℃の水溶液中に3分間浸した。続いて、ポリビニルアルコールフィルムをホウ酸濃度4%の50℃の水溶液中で、延伸間距離(A)を8mにして縦方向に5.5倍に一軸延伸した。一軸延伸後のフィルム速度(B)は8m/分、延伸後のフィルム幅(C)は1.5m、幅方向の中央部における厚みは27μmであった。このフィルムをヨウ化カリウム濃度50g/リットル、ホウ酸濃度40g/リットル、塩化亜鉛濃度10g/リットルの30℃の水溶液中に5分間浸漬して固定処理を行った。その後、PVAフィルムを取り出し、40℃の温風で乾燥し、さらに100℃で熱処理を行った。延伸間距離(A)/延伸後フィルム速度(B)は1.0分であり、延伸間距離(A)/延伸後フィルム幅(C)は5.3であった。
得られた偏光フィルムは透過率が43.5%であり、偏光度が99.97%であり、2色性比が64であり、偏光性能は良好であった。
けん化度99.95モル%、重合度2400のポリビニルアルコールからなる、ロール状に巻き取られたポリビニルアルコールフィルム(グリセリン含有量12%、厚み75μm、幅3m、全長2500m)を予備膨潤、染色、一軸延伸、固定処理、乾燥、熱処理の順番で連続的に処理して、偏光フィルムを製造した。なお、偏光フィルムの製造は、ロール状に巻き取りながら連続的に行った。すなわち、前記ポリビニルアルコールフィルムを30℃の水中に30秒間浸して予備膨潤し、ヨウ素/ヨウ化カリウムの濃度比が1/100の35℃の水溶液中に3分間浸した。続いて、ポリビニルアルコールフィルムをホウ酸濃度2%の55℃の水溶液中で、延伸間距離(A)を8mにして縦方向に5.5倍に一軸延伸した。一軸延伸後のフィルム速度(B)は8m/分、延伸後のフィルム幅(C)は2m、幅方向の中央部における厚みは20μmであった。このフィルムをヨウ化カリウム濃度50g/リットル、ホウ酸濃度40g/リットル、塩化亜鉛濃度10g/リットルの30℃の水溶液中に5分間浸漬して固定処理を行った。その後、PVAフィルムを取り出し、40℃の温風で乾燥し、さらに100℃で熱処理を行った。延伸間距離(A)/延伸後フィルム速度(B)は1.0分であり、延伸間距離(A)/延伸後フィルム幅(C)は4であった。
得られた偏光フィルムは透過率が43.5%であり、偏光度が99.9%であり、2色性比が55であり、偏光性能は良好であった。
比較例1
けん化度99.95モル%、重合度2400のポリビニルアルコールからなる、ロール状に巻き取られたポリビニルアルコールフィルム(グリセリン含有量12%、厚み75μm、幅3m、全長2500m)を予備膨潤、染色、一軸延伸、固定処理、乾燥、熱処理の順番で連続的に処理して、偏光フィルムを製造した。なお、偏光フィルムの製造は、ロール状に巻き取りながら連続的に行った。すなわち、前記ポリビニルアルコールフィルムを30℃の水中に30秒間浸して予備膨潤し、ヨウ素/ヨウ化カリウムの濃度比が1/100の35℃の水溶液中に3分間浸した。続いて、ポリビニルアルコールフィルムをホウ酸濃度4%の50℃の水溶液中で、延伸間距離(A)を15mにして縦方向に6倍に一軸延伸した。一軸延伸後のフィルム速度(B)は38m/分、延伸後のフィルム幅(C)は1.2m、幅方向の中央部における厚みは31μmであった。このフィルムをヨウ化カリウム濃度40g/リットル、ホウ酸濃度40g/リットル、塩化亜鉛濃度10g/リットルの30℃の水溶液中に5分間浸漬して固定処理を行った。その後、PVAフィルムを取り出し、40℃の温風で乾燥し、さらに100℃で熱処理を行った。延伸間距離(A)/延伸後フィルム速度(B)は0.4であり、延伸間距離(A)/延伸後フィルム幅(C)は12.5であった。
得られた偏光フィルムは透過率が43.5%であり、偏光度が99.8%であり、2色性比が50であり、偏光性能はテレビ用途などの液晶ディスプレイ用としては不十分なレベルであった。
比較例2
けん化度99.95モル%、重合度2400のポリビニルアルコールからなる、ロール状に巻き取られたポリビニルアルコールフィルム(グリセリン含有量12%、厚み75μm、幅3m、全長2500m)を予備膨潤、染色、一軸延伸、固定処理、乾燥、熱処理の順番で連続的に処理して、偏光フィルムを製造した。なお、偏光フィルムの製造は、ロール状に巻き取りながら連続的に行った。すなわち、前記ポリビニルアルコールフィルムを30℃の水中に30秒間浸して予備膨潤し、ヨウ素/ヨウ化カリウムの濃度比が1/100の35℃の水溶液中に3分間浸した。続いて、ポリビニルアルコールフィルムをホウ酸濃度4%の50℃の水溶液中で、延伸間距離(A)を4mにして縦方向に5.5倍に一軸延伸した。一軸延伸後のフィルム速度(B)は2.7m/分、延伸後のフィルム幅(C)は1.5m、幅方向の中央部における厚みは27μmであった。このフィルムをヨウ化カリウム濃度40g/リットル、ホウ酸濃度40g/リットル、塩化亜鉛濃度10g/リットルの30℃の水溶液中に5分間浸漬して固定処理を行った。その後、PVAフィルムを取り出し、40℃の温風で乾燥し、さらに100℃で熱処理を行った。延伸間距離(A)/延伸後フィルム速度(B)は1.5であり、延伸間距離(A)/延伸後フィルム幅(C)は2.7であった。
得られた偏光フィルムは透過率が43.5%であり、偏光度が99.7%であり、2色性比が47.2であり、偏光性能はテレビ用途などの液晶ディスプレイ用としては不十分なレベルであった。

Claims (7)

  1. 幅が2m以上のポリビニルアルコールフィルムをホウ酸水溶液中で一軸延伸する工程を含む連続的な偏光フィルムの製造において、ポリビニルアルコールフィルムを下記式(1)および(2)が満足される条件で一軸延伸することを特徴とする偏光フィルムの製造法。
    A≧5(m) ・・・(1)
    A/B≧0.5(分) ・・・(2)
    (上記式において、Aは延伸間距離(m)を表わし、Bは延伸後のフィルム速度(m/分)を表わす。)
  2. 延伸間距離(A)と延伸後のフィルム幅(C)の比(A/C)が5以上であることを特徴とする請求項1記載の偏光フィルムの製造法。
  3. 延伸間距離(A)と延伸後のフィルム速度(B)の比(A/B)が1.0(分)以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の偏光フィルムの製造法。
  4. ホウ酸水溶液の温度が30〜90℃であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の偏光フィルムの製造法。
  5. ポリビニルアルコールフィルムの延伸倍率が4倍以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の偏光フィルムの製造法。
  6. ポリビニルアルコールフィルムの延伸倍率が5倍以上であることを特徴とする請求項1〜5記載のいずれか1項に記載の偏光フィルムの製造法。
  7. ポリビニルアルコールフィルムを膨潤する工程、染色する工程、ホウ酸水溶液中で一軸延伸する工程、固定処理する工程、および乾燥処理する工程を経て、偏光フィルムを製造することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の偏光フィルムの製造法。
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