JP2004102094A - 偏光フィルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリビニルアルコール系フィルムを一軸延伸することにより得られる偏光フィルムであって、該ポリビニルアルコール系フィルムの延伸による限界倍率をX、延伸倍率をX’としたときに0.95X<X’<0.99Xの関係式を満足することを特徴とする偏光フィルム。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶ディスプレイの部品として用いられる偏光板の材料として有用な偏光フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
光の透過および遮蔽機能を有する偏光板は、光のスイッチング機能を有する液晶とともに、液晶ディスプレイ(LCD)の基本的な構成要素である。このLCDの適用分野も、開発初期の頃の電卓および腕時計などの小型機器から、近年では、ラップトップパソコン、ワープロ、液晶カラープロジェクター、車載用ナビゲーションシステム、液晶テレビ、パーソナルホンおよび屋内外で用いられる計測機器などの広範囲に広がり、従来品以上に偏光斑が少なくて大面積の偏光板が求められるようになってきている。
【0003】
偏光板は、一般にポリビニルアルコールフィルム(以下、ポリビニルアルコールを「PVA」、ポリビニルアルコール系フィルムを「PVAフィルム」と略記することがある)を一軸延伸させ、ヨウ素や二色性染料を用いて染色するか、または染色して一軸延伸させた後、ホウ素化合物で固定処理を行うことにより(染色と固定処理が同時の場合もある)得られる偏光フィルムに、三酢酸セルロース(TAC)フィルムや酢酸・酪酸セルロース(CAB)フィルムなどの保護膜を貼り合わせた構成となっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
外観的には均一に見えるPVAフィルムであっても、これを一軸延伸することにより得られる偏光フィルムには外部から判別が困難な偏光斑が内在していることがある。この偏光斑は保護膜などを積層した最終製品(偏光板)でないと確認しにくい。この最終製品の段階で偏光斑が発現すると、品質的には全く問題のない保護膜などの副資材も偏光板と共に不良品として廃棄されるので、大きな損失となる。従来偏光斑を減少させる方法として、特開平6−138319号公報などで提案されているように、PVAフィルムの厚み斑や複屈折斑を減少させる検討がなされてきた。PVAフィルムの厚み斑や複屈折斑を減少させるという方法により、偏光板の偏光斑はある程度減少して当時の要求レベルを満足することは可能となったが、近年の性能が向上した最終製品(偏光板および液晶ディスプレイ装置)で問題となるようなレベルの偏光斑を減少させることは困難であることが分かってきた。
【0005】
また、液晶ディスプレイ装置の大型化に伴い、大面積の偏光フィルムが要求されるようになってきた。従来の液晶ディスプレイ装置は、表示面積が比較的小さい上に偏光板が単独で用いられていたために、偏光斑が問題にされることはほとんどなかったが、表示面積が大きくなると、表示面積全体の均一性が要求されることや、視野角補正フィルムなど他のフィルムと組み合わせて用いられることが多くなってきたことなどのため、偏光斑の問題が顕在化してきた。特に、幅が2m以上のPVAフィルムを一軸延伸することにより得られる偏光フィルムから製造される、偏光度99.9%以上の高偏光度の偏光板の場合には、フィルムの中央部と端部における光学特性の差が問題となる場合がある。そのため、大画面の液晶ディスプレイ用の偏光板を製造する場合には、偏光斑が比較的少ない例えばフィルムの中央部のみから製品を採取しているために、生産効率が低くなるなどの問題があった。これまでは偏光性能をできるだけ上げるため、PVAフィルムを破断ぎりぎりの延伸倍率まで延伸したり、あるいは破断を防いで安定に生産を行うために、延伸倍率を下げて延伸しているのが現状であり、偏光斑を少なくするという観点から延伸倍率を制御することは行われていなかった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、偏光斑が少なく、液晶ディスプレイの大型化に対応可能な偏光フィルムを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、上記の課題は、ポリビニルアルコール系フィルムを一軸延伸することにより得られる偏光フィルムであって、該ポリビニルアルコール系フィルムの延伸による限界倍率をX、延伸倍率をX’としたときに0.95X<X’<0.99Xの関係式を満足することを特徴とする偏光フィルムによって達成することができる。
本発明において、PVAフィルムの延伸による破断限界倍率(以下、「限界延伸倍率」と略記する)(X)とは、PVAフィルムを破断するまで延伸した際に、破断が発生した時点の延伸倍率のことである。延伸倍率(X’)とは、PVAフィルムが延伸されて偏光フィルムとなったとき、PVAフィルムの単位長さが延伸された倍率のことである。なお、限界延伸倍率および延伸倍率は、フィルムの中央部で測定された値である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
図1は、PVAフィルムを一軸延伸することにより得られる偏光フィルムについて、延伸倍率と偏光性能との関係を示す概略図である。
図2は、PVAフィルムを一軸延伸することにより得られる偏光フィルムの使用形態の一例を示すものであり、本発明品は、実施例において偏光性能の評価に用いられた偏光フィルムとその測定部位を、従来品は、比較例において偏光性能の評価に用いられた偏光フィルムとその測定部位をそれぞれ示す。
図3は、従来品(比較例)と比較して、本発明品(実施例)の方が偏光性能の差が小さいことを示している。
【0009】
本発明の偏光フィルムは、PVAフィルムを一軸延伸した際の破断限界倍率をX、延伸倍率をX’としたときに0.95X<X’<0.99Xの関係式を満足することを特徴とする。このような偏光フィルムは、図1に示されるように、フィルムの中央部と端部において偏光性能の差が小さいという優れた特長を有する。延伸倍率(X’)が0.99Xよりも大きくなると偏光性能が低下し、偏光フィルムの中央部と端部において偏光性能の高低の差が大きくなるため、好ましくない。一方、延伸倍率(X’)が0.95Xよりも小さいと偏光性能が不十分となり好ましくない。本発明の偏光フィルムは、0.96X<X’<0.98Xの関係式を満足することがさらに好ましい。
【0010】
PVAフィルムを一軸延伸することにより製造される通常の偏光フィルムは、延伸倍率を上げるほど偏光性能が高くなる傾向があるが、前述のとおり、フィルムを破断限界まで延伸すると偏光性能が低下する。図1に示されるように、破断限界まで延伸を行なったPVAフィルムは端部の延伸倍率が中央部よりも高くなり、PVAの配向状態の破壊によると推定される部分的な偏光性能の低下が起こり、一枚の偏光フィルムにおいて幅方向に光学性能の高い部分(中央部)と、光学性能が低い部分(端部)が存在することになる。
従来、偏光フィルムの材料として用いられるPVAフィルムに着目して、その厚みを均一にしたり、あるいはレタデーションを小さくすることで、偏光フィルムの偏光斑を低減する試みがなされてきたが、本発明は、PVAフィルムを延伸する際の延伸倍率を特定の範囲に制御することにより、幅方向における偏光性能の差が小さい偏光フィルムの製造を実現したものである。
【0011】
本発明の偏光フィルムは、偏光度斑を減少させるという観点から、延伸前のポリビニルアルコール系フィルムの幅をY、延伸後のフィルムの幅をY’としたときに0.5Y<Y’<0.8Yの関係式を満足するのがよい。
【0012】
本発明において用いられるPVAは、例えば、ビニルエステルを重合して得られたポリビニルエステルをけん化することにより製造される。またPVAの主鎖に不飽和カルボン酸またはその誘導体、不飽和スルホン酸またはその誘導体、炭素数2〜30のα−オレフィンなどを5モル%未満の割合でグラフト共重合した変性PVAや、ビニルエステルと不飽和カルボン酸またはその誘導体、不飽和スルホン酸またはその誘導体、炭素数2〜30のα−オレフィンなどを15モル%未満の割合で共重合した変性ポリビニルエステルをけん化することにより製造される変性PVAや、未変性または変性PVAの水酸基の一部をホルマリン、ブチルアルデヒド、ベンズアルデヒドなどのアルデヒド類で架橋したいわゆるポリビニルアセタール樹脂などを挙げることができる。
【0013】
前記のビニルエステルとしては、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニルなどが例示される。
【0014】
変性PVAに使用されるコモノマーは、主としてPVAの変性を目的に共重合されるもので、本発明の趣旨を損なわない範囲で使用される。このようなコモノマーとして、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテンなどのオレフィン類;アクリル酸およびその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシルなどのアクリル酸エステル類;メタクリル酸およびその塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシルなどのメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩、N−メチロールアクリルアミドおよびその誘導体などのアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩、N−メチロールメタクリルアミドおよびその誘導体などのメタクリルアミド誘導体;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニルアミド類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル類;酢酸アリル、塩化アリルなどのアリル化合物;マレイン酸およびその塩またはそのエステル;イタコン酸およびその塩またはそのエステル;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニルなどを挙げることができる。これらの中でもα−オレフィンが好ましく、特にエチレンが好ましい。変性PVAの変性量は15モル%未満であるのが好ましい。
【0015】
PVAのけん化度は、偏光フィルムの偏光性能および耐久性の点から90モル%以上が好ましく、95モル%以上がより好ましく、98モル%以上がさらに好ましく、99モル%以上が特に好ましく、99.5モル%以上が最も好ましい。
【0016】
前記けん化度とは、けん化によりビニルアルコール単位に変換されうる単位の中で、実際にビニルアルコール単位にけん化されている単位の割合を示したものである。なお、PVAのけん化度は、JIS記載の方法により測定を行った。
【0017】
PVAの重合度は、偏光フィルムの偏光性能および耐久性の点から500以上が好ましく、1000以上がより好ましく、1500以上がさらに好ましく、2500以上が特に好ましい。PVAの重合度の上限は8000以下が好ましく、6000以下がより好ましい。
【0018】
前記PVAの重合度は、JIS K 6726に準じて測定される。すなわち、PVAを再けん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度から求められる。
【0019】
以上のPVAを使用してPVAフィルムを製造する方法としては、含水PVAを溶融押出法により製膜する方法の他に、例えば、PVAを溶剤に溶解したPVA溶液を使用して、流延製膜法、湿式製膜法(貧溶媒中への吐出)、ゲル製膜法(PVA水溶液を一旦冷却ゲル化した後、溶媒を抽出除去し、PVAフィルムを得る方法)、およびこれらの組み合わせによる方法などを採用することができる。これらの中でも流延製膜法および溶融押出製膜法が、良好なPVAフィルムが得られることから好ましい。
【0020】
PVAフィルムを製造する際に使用されるPVAを溶解する溶剤としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、グリセリン、水などを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を使用することができる。これらの中でも、ジメチルスルホキシド、水、またはグリセリンと水の混合溶媒が好適に使用される。
【0021】
PVAフィルムを製造する際に使用されるPVA溶液または含水PVAのPVA濃度は、PVAの重合度によっても変化するが、20〜70重量%が好適であり、25〜60重量%がより好適であり、30〜55重量%がさらに好適であり、35〜50重量%が最も好適である。PVA濃度が70重量%より高いと、PVA溶液または含水PVAの粘度が高くなり過ぎて濾過や脱泡が困難となり、異物や欠点のないフィルムを得ることが困難となる。また、PVA濃度が20重量%より低いと、PVA溶液または含水PVAの粘度が低くなり過ぎるため、フィルム製造時にレベリング効果でPVAフィルムがフラットになり、適度の厚みを有するPVAフィルムを製造することが困難となる。また、このPVA溶液または含水PVAには、必要に応じて可塑剤、界面活性剤、二色性染料などを含有させてもよい。
【0022】
PVAフィルムを製造する際に可塑剤として、多価アルコールを添加することが好ましい。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジグリセリン、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパンなどを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を使用することができる。これらの中でも、延伸性の向上効果の点からジグリセリン、エチレングリコールまたはグリセリンが好適に使用される。
【0023】
多価アルコールの添加量としては、PVA100重量部に対し1〜30重量部が好ましく、3〜25重量部がさらに好ましく、5〜20重量部が最も好ましい。多価アルコールの添加量が1重量部より少ないと、PVAフィルムの染色性や延伸性が低下する場合があり、30重量部より多いと、PVAフィルムが柔軟になり過ぎて、取り扱い性が低下する場合がある。
【0024】
PVAフィルムを製造する際には、界面活性剤を添加することが好ましい。界面活性剤の種類としては特に限定はないが、アニオン性またはノニオン性の界面活性剤が好ましい。アニオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸カリウムなどのカルボン酸型、オクチルサルフェートなどの硫酸エステル型、ドデシルベンゼンスルホネートなどのスルホン酸型のアニオン性界面活性剤が好適である。ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのアルキルエーテル型、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどのアルキルフェニルエーテル型、ポリオキシエチレンラウレートなどのアルキルエステル型、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテルなどのアルキルアミン型、ポリオキシエチレンラウリン酸アミドなどのアルキルアミド型、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテルなどのポリプロピレングリコールエーテル型、オレイン酸ジエタノールアミドなどのアルカノールアミド型、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテルなどのアリルフェニルエーテル型などのノニオン性界面活性剤が好適である。これらの界面活性剤は1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0025】
界面活性剤の添加量としては、PVA100重量部に対して0.01〜1重量部が好ましく、0.02〜0.5重量部がさらに好ましく、0.05〜0.3重量部が最も好ましい。界面活性剤の添加量が0.01重量部より少ないと、界面活性剤を添加したことによる製膜性および剥離性の向上効果が現れにくく、1重量部より多いと、界面活性剤がPVAフィルムの表面に溶出してブロッキングの原因になり、取り扱い性が低下する場合がある。
【0026】
本発明において使用されるPVAフィルムは、フィルムの幅が2m以上であることが好ましく、2.5m以上がより好ましく、3m以上が特に好ましく。フィルムの幅が2mより小さいと、幅方向における偏光性能差が小さくなるため、本発明の効果が発現されにくい。
【0027】
PVAフィルムの厚さは好ましくは5〜150μmであり、より好ましくは20〜100μmであり、さらに好ましくは30〜90μmであり、特に好ましくは35〜80μmである。
【0028】
PVAフィルムから偏光フィルムを製造するには、例えば、該PVAフィルムを染色、一軸延伸、固定処理、乾燥処理、さらに必要に応じて熱処理を行えばよく、染色、一軸延伸、固定処理の操作の順番に特に制限はない。また、一軸延伸は二回またはそれ以上行ってもよい。
【0029】
染色は、一軸延伸前、一軸延伸時、一軸延伸後のいずれの操作段階においても実施可能である。染色に用いる染料としては、ヨウ素−ヨウ化カリウム;ダイレクトブラック 17、19、154;ダイレクトブラウン 44、106、195、210、223;ダイレクトレッド 2、23、28、31、37、39、79、81、240、242、247;ダイレクトブルー 1、15、22、78、90、98、151、168、202、236、249、270;ダイレクトバイオレット 9、12、51、98;ダイレクトグリーン 1、85;ダイレクトイエロー 8、12、44、86、87;ダイレクトオレンジ 26、39、106、107などの二色性染料などが、1種または2種以上の混合物で使用できる。通常染色は、PVAフィルムを上記染料を含有する溶液中に浸漬させることにより行うことが一般的であるが、PVAフィルムに混ぜて製膜するなど、その処理条件や処理方法は特に制限されない。
【0030】
一軸延伸には、PVAフィルムをホウ酸水溶液などの温水溶液中(前記染料を含有する溶液中や後述する固定処理浴中でもよい)で延伸する湿式延伸法、または含水後のPVAフィルムを空気中で延伸する乾熱延伸法を使用することができる。延伸温度は特に限定されないが、PVAフィルムを温水中で延伸(湿式延伸)する場合は30〜90℃が、また乾熱延伸する場合は50〜180℃が好適である。また、一軸延伸の延伸倍率(多段で一軸延伸を行う場合には、合計の延伸倍率)は、偏光性能の点から4倍以上が好ましく、5倍以上がより好ましい。延伸倍率について厳密な意味での上限はないが、10倍以下であると均一な延伸が得られやすいので好ましく、9倍以下がより好ましい。本発明において、延伸倍率はフィルムの中央部における延伸倍率である。延伸後のフィルムの厚さは、3〜75μmが好ましく、5〜50μmがより好ましい。
【0031】
PVAフィルムへの上記染料の吸着を強固にすることを目的にして、固定処理を行うことが多い。固定処理に使用する処理浴には、通常、ホウ酸および/またはホウ素化合物が添加される。また、必要に応じて処理浴中にヨウ素化合物を添加してもよい。
【0032】
得られた偏光フィルムの乾燥処理は、30〜150℃で行うのが好ましく、50〜150℃で行うのがより好ましい。
【0033】
本発明の偏光フィルムは偏光度が好ましくは99.9%以上であり、さらに好ましくは99.95%以上である。
【0034】
以上のようにして得られた偏光フィルムは、通常、その両面または片面に、光学的に透明で、かつ機械的強度を有する保護膜を貼り合わせて偏光板として使用される。保護膜としては、三酢酸セルロース(TAC)フィルム、酢酸・酪酸セルロース(CAB)フィルム、アクリル系フィルム、ポリエステル系フィルムなどが使用される。また、偏光フィルムと保護膜を貼り合わせるための接着剤としては、PVA系の接着剤やウレタン系の接着剤などを挙げることができるが、中でもPVA系の接着剤が好適である。
【0035】
以上のようにして得られた偏光板はアクリル系等の粘着剤を被覆した後、ガラス基板に貼り合わせて液晶ディスプレイ装置の部品として使用される。ガラス基板に偏光板を貼り合わせる際に、位相差フィルム、視野角向上フィルム、輝度向上フィルム等を同時に貼り合わせてもよい。
【0036】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において、偏光フィルムの偏光性能は以下の方法により評価した。
なお、偏光性能の評価に用いた偏光フィルムは、以下のようにして作製した。すなわち、PVAフィルムを一軸延伸して、図2に示すように裁断し得られた偏光フィルムを、対角線上に等間隔で7等分した部分の偏光性能を測定した。
【0037】
偏光フィルムの偏光性能:
紫外可視分光光度計(UV−2200、島津製作所)を用いて、2枚の偏光フィルムのクロスニコルとパラレルニコルの透過率を測定し、偏光度を算出した。それぞれの偏光フィルムの単体透過率の平均値を算出し、平均透過率とした。
【0038】
実施例1
けん化度99.95モル%、重合度2400のPVA100重量部に、グリセリン10重量部および水170重量部を含浸させたものを溶融混練し、脱泡後、Tダイから金属ロール上に溶融押出し、製膜した。得られたPVAフィルムは幅3m、厚み70μmであった。
【0039】
前記PVAフィルムを、予備膨潤、染色、一軸延伸、固定処理、乾燥、熱処理の順番で連続的に処理して、偏光フィルムを作製した。すなわち、前記PVAフィルムを30℃の水中に30秒間浸して予備膨潤し、ヨウ素濃度0.4g/リットル、ヨウ化カリウム濃度40g/リットルの35℃の水溶液中に3分間浸した。続いて、ホウ酸濃度4%の50℃の水溶液中で一軸延伸(延伸倍率5.5倍)を行い、ヨウ化カリウム濃度40g/リットル、ホウ酸濃度40g/リットル、塩化亜鉛濃度10g/リットルの30℃の水溶液中に5分間浸漬して固定処理を行った。その後、PVAフィルムを取り出し、定長下、40℃で熱風乾燥し、さらに100℃で5分間熱処理を行い、幅が1.6mの偏光フィルムを得た。これとは別に、PVAフィルムを、フィルムが破断するまで延伸することにより測定した限界延伸倍率は5.6倍であった。
【0040】
偏光フィルムを図2に示すように切り取り、B、C、D、Eの各点について偏光性能を評価したところ、B=99.97%、C=99.98%、D=99.99%、E=99.97%であり、偏光性能の差は0.02%と偏光斑が小さく良好であった。
【0041】
この偏光フィルムに、4%のポリビニルアルコール水溶液を用いて、厚さ80mμのトリアセテートフィルムを貼り合わせ、偏光板を得た。偏光板について、偏光フィルムで評価したのと同じ部位の偏光性能を評価したところ、B=99.97%、C=99.98%、D=99.99%、E=99.97%であり、偏光性能の差は0.02%と偏光斑が小さく良好であった。
【0042】
実施例2
けん化度99.9モル%、重合度4000のPVA100重量部に、グリセリン10重量部および水220重量部を含浸させたものを溶融混練し、脱泡後、Tダイから金属ロール上に溶融押出し、製膜した。得られたPVAフィルムは幅3m、厚み70μmであった。
【0043】
前記PVAフィルムを、予備膨潤、染色、一軸延伸、固定処理、乾燥、熱処理の順番で連続的に処理して、偏光フィルムを作製した。すなわち、前記PVAフィルムを30℃の水中に0.5分間浸して予備膨潤し、ヨウ素濃度0.3g/リットル、ヨウ化カリウム濃度60g/リットルの35℃の水溶液中に3分間浸した。続いて、ホウ酸濃度4%の50℃の水溶液中で一軸延伸(延伸倍率5.7倍)を行ない、ヨウ化カリウム濃度60g/リットル、ホウ酸濃度40g/リットル、塩化亜鉛濃度10g/リットルの30℃の水溶液中に5分間浸漬して固定処理を行った。その後、PVAフィルムを取り出し、定長下、40℃で熱風乾燥し、さらに100℃で5分間熱処理を行い、幅が1.68mの偏光フィルムを得た。これとは別に、PVAフィルムを、フィルムが破断するまで延伸することにより測定した限界延伸倍率は5.8倍であった。
【0044】
偏光フィルムを図2に示すように偏光フィルムを切り取り、B、C、D、Eの各点について偏光性能を評価したところ、B=99.97%、C=99.98%、D=99.99%、E=99.97%であり、偏光性能の差は0.02%と偏光斑が小さく良好であった。
【0045】
この偏光フィルムに、4%のポリビニルアルコール水溶液を用いて、厚さ80mμのトリアセテートフィルムを貼り合わせ、偏光板を得た。偏光板について、偏光フィルムで評価したのと同じ部位の偏光性能を評価したところ、B=99.97%、C=99.98%、D=99.99%、E=99.97%であり、偏光性能の差は0.02%と偏光斑が小さく良好であった。
【0046】
比較例1
けん化度99.95モル%、重合度2400のPVA100重量部に、グリセリン10重量部および水170重量部を含浸させたものを溶融混練し、脱泡後、Tダイから金属ロールに溶融押出製膜した。Tダイのリップ開度を調整することにより、幅方向の厚みが均一な、幅3mのPVAフィルムを得た。
【0047】
前記PVAフィルムを予備膨潤、染色、一軸延伸、固定処理、乾燥、熱処理の順番で連続的に処理して、偏光フィルムを作製した。すなわち、前記PVAフィルムを30℃の水中に30秒間浸して予備膨潤し、ヨウ素濃度0.4g/リットル、ヨウ化カリウム濃度40g/リットルの35℃の水溶液中に3分間浸した。続いて、ホウ酸濃度4%の50℃の水溶液中で限界延伸まで一軸延伸を行い、ヨウ化カリウム濃度40g/リットル、ホウ酸濃度40g/リットル、塩化亜鉛濃度10g/リットルの30℃の水溶液中に5分間浸漬して固定処理を行った。その後、PVAフィルムを取り出し、定長下、40℃で熱風乾燥し、さらに100℃で5分間熱処理を行い、幅が1.48mの偏光フィルムを得た。
【0048】
偏光フィルムを図2に示すように切り取り、C、D、E、Fの各点について偏光性能を評価したところ、C=99.98%、D=99.99%、E=99.97%、F=99.95%であり、偏光性能の差は0.04%と偏光斑が大きく大型液晶ディスプレイ用の偏光膜として不適であった。
【0049】
この偏光フィルムに、4%のポリビニルアルコール水溶液を用いて、厚さ80mμのトリアセテートフィルムを貼り合わせ、偏光板を得た。偏光板について、偏光フィルムで評価したのと同じ部位の偏光性能を評価したところ、C=99.98%、D=99.99%、E=99.97%、F=99.95%であり、偏光性能の差が0.04%と偏光斑が大きく大型液晶ディスプレイ用の偏光膜として不適であった。
【発明の効果】
本発明の偏光フィルムは偏光斑が少ないという優れた特性を有していることから、その特性を活かして、液晶ディスプレイの部品として用いられる偏光板の材料として有効に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】PVAフィルムを一軸延伸することにより得られる偏光フィルムについて、延伸倍率と偏光性能との関係を示す概略図である。
【図2】PVAフィルムを一軸延伸することにより得られる偏光フィルムの使用形態の一例を示す概略図である。
【図3】本発明品(実施例)および従来品(比較例)について、延伸倍率と偏光性能との関係を示す概略図である。
Claims (4)
- ポリビニルアルコール系フィルムを一軸延伸することにより得られる偏光フィルムであって、該ポリビニルアルコール系フィルムの延伸による破断限界倍率をX、延伸倍率をX’としたときに0.95X<X’<0.99Xの関係式を満足することを特徴とする偏光フィルム。
- ポリビニルアルコール系フィルムの延伸倍率(X’)が4〜10倍の範囲内である請求項1記載の偏光フィルム。
- 一軸延伸前のポリビニルアルコール系フィルムの幅をY、一軸延伸後のポリビニルアルコール系フィルムの幅をY’としたときに0.5Y<Y’<0.8Yの関係式を満足することを特徴とする請求項1または2記載の偏光フィルム。
- 偏光度が99.9%以上である請求項1、2または3記載の偏光フィルム。
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