JP2002014224A - 偏光フィルムの製造法 - Google Patents

偏光フィルムの製造法

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JP2002014224A JP2000194516A JP2000194516A JP2002014224A JP 2002014224 A JP2002014224 A JP 2002014224A JP 2000194516 A JP2000194516 A JP 2000194516A JP 2000194516 A JP2000194516 A JP 2000194516A JP 2002014224 A JP2002014224 A JP 2002014224A
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孝徳 磯▲ざき▼
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明の目的は、ポリビニルアルコール系重
合体粒子に起因する欠点数の少ない偏光フィルムの製造
法を提供することにある。 【解決手段】 ポリビニルアルコール系重合体フィルム
からなる偏光フィルムを製造する工程において、ポリビ
ニルアルコール系重合体フィルムを処理する洗浄槽、膨
潤槽、延伸槽、染色槽、固定処理槽の少なくとも一つの
槽内の処理液を抜き取り、処理液中に溶解したポリビニ
ルアルコール系重合体を除去してから、その処理液を当
該槽に戻すものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリビニルアルコ
ール系重合体粒子に起因する欠点数の少ない偏光フィル
ムの製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】光の透過および遮蔽機能を有する偏光板
は、光のスイッチング機能を有する液晶とともに、液晶
ディスプレイ(LCD)の基本的な構成要素である。こ
のLCDの適用分野も、開発初期の頃の電卓および腕時
計などの小型機器から、近年では、ラップトップパソコ
ン、ワープロ、液晶カラープロジェクター、車載用ナビ
ゲーションシステム、液晶テレビ、パーソナルホンおよ
び屋内外の計測機器などの広範囲に広がり、従来以上に
安価な偏光板が求められている。
【0003】偏光板は、一般にポリビニルアルコール系
重合体フィルム(以下、ポリビニルアルコール系重合体
を「PVA」、ポリビニルアルコール系重合体フィルム
を「PVAフィルム」と略記することがある)を一軸延
伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、ホ
ウ素化合物で固定処理を行った(染色と固定処理また
は、一軸延伸と固定処理が同時の場合もある)偏光フィ
ルムに、三酢酸セルロース(TAC)フィルムや酢酸・
酪酸セルロース(CAB)フィルムなどの保護膜を貼り
合わせた構成となっている。
【0004】ところで、PVAフィルムの延伸を行うと
き、乾式で延伸する場合は染色工程やホウ素化合物での
固定処理工程で、湿式で延伸する場合にはそれに加えて
延伸前の洗浄工程や膨潤工程や延伸工程でも、PVAフ
ィルムを構成するPVAの一部が溶解することがある。
この場合に各工程で連続運転を行うと、PVA濃度が上
昇し、連続運転後特に運転停止した時の槽内温度が低下
した時に、溶解していたPVAが槽内で析出してPVA
フィルムや偏光フィルムに付着したり、PVAフィルム
上や偏光フィルム上に析出して欠点となり、偏光フィル
ムの収率を低下させる問題があった。
【0005】前記フィルム上の析出対策として各槽の処
理液を更新することで対応している。しかし、固定処理
液にはホウ酸が使用されており、活性汚泥中の菌を殺す
問題があった。また、染色液にはヨウ素・ヨウ化カリウ
ムが使われることが多く、ハロゲンの排出による環境問
題とコスト高の問題があった。さらに、析出せずに溶解
したままのPVAは、廃水処理に費用が掛かり問題とな
っている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、前記
問題点を解決して、PVA粒子に起因する欠点数の少な
い偏光フィルムの製造法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するた
め、本発明にかかる偏光フィルムの製造法は、PVAフ
ィルムから偏光フィルムを製造する工程において、PV
Aフィルムを処理する洗浄槽、膨潤槽、延伸槽、染色
槽、固定処理槽の少なくとも一つの槽内の処理液を抜き
取り、処理液中に溶解したPVAを除去してから、その
処理液を当該槽内に戻すものである。本発明によれば、
処理液中に溶解したPVAが除去されるので、PVA粒
子に起因する欠点数の少ないPVAフィルムからなる偏
光フィルムが得られる。
【0008】好ましくは、抜き取った処理液を放置・冷
却することで、 処理液中に溶解したポリビニルアルコー
ル系重合体を析出させて除去する。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いられるPVAフィルムを構成するPVA
は、例えば、ビニルエステルを重合して得られたポリビ
ニルエステルをけん化することにより製造される。また
該PVAを不飽和カルボン酸またはその誘導体、不飽和
スルホン酸またはその誘導体、炭素数2〜30のα−オ
レフィンなどを15モル%未満の割合でグラフト共重合
した変性PVAや、ビニルエステルと不飽和カルボン酸
またはその誘導体、不飽和スルホン酸またはその誘導
体、炭素数2〜30のα−オレフィンなどを15モル%
未満の割合で共重合した変性ポリビニルエステルをけん
化することにより製造される変性PVAや、未変性また
は変性PVAをホルマリン、ブチルアルデヒド、ベンツ
アルデヒドなどのアルデヒド類で水酸基の一部を架橋し
たいわゆるポリビニルアセタール樹脂などを挙げること
ができる。
【0010】前記のビニルエステルとしては、酢酸ビニ
ル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピ
バリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ラウリン酸
ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニルなどを挙
げることができ、また、これらの2種以上の混合物など
も挙げることができる。
【0011】一方、変性PVAに使用するコモノマーと
しては、主としてPVAの変性を目的に共重合させるも
ので、上記ビニルエステルと共重合可能なものであれ
ば、本発明の趣旨を損なわない範囲で使用される。この
ようなコモノマーとして、例えば、エチレン、プロピレ
ン、1−ブテン、イソブテンなどのα−オレフィン類;
アクリル酸およびその塩;アクリル酸メチル、アクリル
酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プ
ロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチ
ル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルへキ
シル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシルな
どのアクリル酸エステル類;メタクリル酸およびその
塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタク
リル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタ
クリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタク
リル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルへキシル、
メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシルなど
のメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、N−メチ
ルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N
−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミ
ド、アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、
アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩、
N−メチロールアクリルアミドおよびその誘導体などの
アクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N−メチル
メタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタ
クリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、メタク
リルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩、N−
メチロールメタクリルアミドおよびその誘導体などのメ
タクリルアミド誘導体;N−ビニルホルムアミド、N−
ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドンなどのN−
ビニルアミド類;メチルビニルエーテル、エチルビニル
エーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピル
ビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチ
ルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシ
ルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテルなどのビ
ニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリ
ルなどのニトリル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フ
ッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル
類;酢酸アリル、塩化アリルなどのアリル化合物;マレ
イン酸およびその塩またはそのエステル;イタコン酸お
よびその塩またはそのエステル;ビニルトリメトキシシ
ランなどのビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニルな
どを挙げることができる。これらのなかでもα−オレフ
ィンが好ましく、特にエチレンが好ましい。変性PVA
の変性量は15モル%未満であるのが好ましい。
【0012】PVAのけん化度は、溶出量と耐久性の点
から97モル%以上が好ましく、98モル%以上がより
好ましく、99モル%以上がさらに好ましく、99.5
モル%以上が最も好ましい。
【0013】なお、本明細書でいうけん化度とは、けん
化によりビニルアルコール単位に変換され得る単位の中
で、実際にビニルアルコール単位にけん化されている単
位の割合を示したものである。なお、PVAのけん化度
は、JIS記載の方法により測定を行った。
【0014】PVAの重合度は、PVAの溶出量を減ら
す点とPVAフィルム強度の点から1000以上が好ま
しく、偏光性能の点から1500以上がより好ましく、
2000以上がさらに好ましく、2500以上が最も好
ましい。PVAの重合度の上限は8000以下が好まし
く、6000以下がより好ましい。
【0015】なお、本明細書でいうPVAの重合度と
は、JIS K 6726に準じて測定される。すなわ
ちPVAを再けん化し、精製した後、30℃の水中で測
定した極限粘度から求められる。
【0016】偏光フィルム用PVAフィルムは、溶出量
を低減するために、下記のPVAフィルムを製造する際
に使用されるPVA溶液や含水PVAを調整する工程の
前に水または湯で洗浄し、溶出しやすいPVAを除去す
ることが望ましい。洗浄する水または湯には、本発明の
趣旨を損なわない範囲で、メタノール、グリセリン、酢
酸などの有機溶剤や可塑剤や界面活性剤などを含んでい
ても良い。
【0017】該PVAを使用してPVAフィルムを製造
する方法としては、PVAを溶剤に溶解したPVA溶液
を使用して、流延製膜法、湿式製膜法(貧溶媒中への吐
出)、ゲル製膜法(PVA水溶液を一旦冷却ゲル化した
後、水を抽出除去しPVAフィルムを得る方法)、およ
びこれらの組み合わせによる方法や、含水PVA(有機
溶剤などを含んでいても良い)を溶融して行う溶融押出
製膜法などで製造することができる。これらのなかでも
流延製膜法と溶融押出製膜法が、良好な偏光フィルムが
得られることから好ましい。
【0018】PVAフィルムを製造する際に使用される
PVAを溶解する溶剤としては、例えば、ジメチルスル
ホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミ
ド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、グリ
セリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、ジエチ
レングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチ
レングリコール、トリメチロールプロパン、エチレンジ
アミン、ジエチレントリアミン、グリセリン、水などを
挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を
使用することができる。これらのなかでも、水、ジメチ
ルスルホキシド、または水とグリセリンの混合溶剤が好
適に使用される。
【0019】PVAフィルムを製造する際に使用される
PVA溶液または含水PVAのPVA濃度は、3〜70
重量%が好適であり、10〜60重量%がより好適であ
り、13〜55重量%がさらに好適であり、15〜50
重量%が最も好適である。このPVA溶液または含水P
VAには、必要に応じて可塑剤、界面活性剤、二色性染
料などを含有させても良い。
【0020】PVAフィルムを製造する際に可塑剤とし
て、多価アルコールを添加することが好ましい。多価ア
ルコールとしては、例えば、エチレングリコール、グリ
セリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコー
ル、ジグリセリン、トリエチレングリコール、テトラエ
チレングリコール、トリメチロールプロパンなどを挙げ
ることができ、これらのうち1種または2種以上を使用
することができる。これらの中でも延伸性向上効果から
ジグリセリンやエチレングリコールやグリセリンが好適
に使用される。
【0021】多価アルコールの添加量としてはPVA1
00重量部に対して1〜30重量部が好ましく、3〜2
5重量部がさらに好ましく、5〜20重量部が特に好ま
しい。1重量部より少ないと、染色性や延伸性が低下す
る場合があり、30重量部より多いと、PVAフィルム
が柔軟になりすぎて、取り扱い性が低下する場合があ
る。
【0022】PVAフィルムを製造する際には界面活性
剤を添加することが好ましい。界面活性剤の種類として
は特に限定はないが、アニオン性またはノニオン性の界
面活性剤が好ましい。アニオン性界面活性剤としては、
例えば、ラウリン酸カリウムなどのカルボン酸型、オク
チルサルフェートなどの硫酸エステル型、ドデシルベン
ゼンスルホネートなどのスルホン酸型のアニオン性界面
活性剤が好適である。ノニオン性界面活性剤としては、
例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのア
ルキルエーテル型、ポリオキシエチレンオクチルフェニ
ルエーテルなどのアルキルフェニルエーテル型、ポリオ
キシエチレンラウレートなどのアルキルエステル型、ポ
リオキシエチレンラウリルアミノエーテルなどのアルキ
ルアミン型、ポリオキシエチレンラウリン酸アミドなど
のアルキルアミド型、ポリオキシエチレンポリオキシプ
ロピレンエーテルなどのポリプロピレングリコールエー
テル型、オレイン酸ジエタノールアミドなどのアルカノ
ールアミド型、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエ
ーテルなどのアリルフェニルエーテル型などのノニオン
性界面活性剤が好適である。これらの界面活性剤の1種
または2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0023】界面活性剤の添加量としてはPVA100
重量部に対して0.01〜1重量部が好ましく、0.0
2〜0.5重量部がさらに好ましく、0.05〜0.3
重量部が特に好ましい。0.01重量部より少ないと、
延伸性向上や染色性向上の効果が現れにくく、1重量部
より多いと、PVAフィルム表面に溶出し、ブロッキン
グの原因になり、取り扱い性が低下する場合がある。
【0024】PVAフィルムを製造する際に、前述の洗
浄と共に、PVA溶出量を低減するために、製膜後に充
分乾燥を行うことが望ましい。
【0025】PVAフィルムの厚みは、好ましくは5〜
150μmであり、より好ましくは20〜100μm、
さらに好ましくは30〜90μm、最も好ましくは35
〜80μmである。
【0026】本発明のPVAフィルムから、偏光フィル
ムを製造するには、例えば、該フィルムを洗浄、膨潤、
染色、一軸延伸、固定処理、および乾燥処理、さらに必
要に応じて熱処理を行えばよく、各操作順に特に制限は
なく、どれかの工程を二回またはそれ以上行っても良
い。
【0027】染色は一軸延伸前、一軸延伸時、一軸延伸
後のいずれでも可能である。染色に用いる染料として
は、ヨウ素−ヨウ化カリウム;ダイレクトブラック 1
7、19、154;ダイレクトブラウン 44、10
6、195、210、223;ダイレクトレッド 2、
23、28、31、37、39、79、81、240、
242、247;ダイレクトブルー 1、15、22、
78、90、98、151、168、202、236、
249、270;ダイレクトバイオレット 9、12、
51、98;ダイレクトグリーン 1、85;ダイレク
トイエロー 8、12、44、86、87;ダイレクト
オレンジ 26、39、106、107などの二色性染
料などが、1種または2種以上の混合物で使用できる。
通常染色は、PVAフィルムを上記染料を含有する溶液
中に浸漬させることにより行うことが一般的であるが、
PVAフィルムに混ぜて製膜するなど、その処理条件や
処理方法は特に制限されるものではない。
【0028】一軸延伸は湿式延伸法または乾熱延伸法が
使用できる。延伸温度は特に限定されないが、PVAフ
ィルムを温水(前記染料を含有する溶液中や後記固定処
理浴中でも良い)中で延伸(湿式延伸)する場合は30
〜90℃が、また乾熱延伸する場合は50〜180℃が
好適である。また一軸延伸の延伸倍率(多段の一軸延伸
の場合には合計の延伸倍率)は、偏光性能の点から4倍
以上が好ましく、4.5倍以上がより好ましく、5倍以
上がさらに好ましい。延伸倍率の上限は特に制限はない
が、8倍以下であると均一な延伸が得られやすいので好
ましい。延伸後のフィルムの厚みは、3〜75μmが好
ましく、5〜50μmがより好ましい。
【0029】フィルムへの上記染料の吸着を強固にする
ことを目的に、固定処理を行うことが多い。固定処理に
使用する処理浴には、通常、ホウ酸および/またはホウ
素化合物が添加される。また、必要に応じて処理浴中に
ヨウ素化合物を添加しても良い。
【0030】一軸延伸後の偏光フィルムの乾燥処理(熱
処理)は、30〜150℃で行うのが好ましく、50〜
150℃で行うのがより好ましい。
【0031】本発明では、PVAフィルムを処理する洗
浄槽、膨潤槽、延伸槽、染色槽、固定処理槽の少なくと
も一つの槽内の処理液を抜き取り、処理液中に溶解した
PVAを除去してから、その処理液を当該槽内に戻すこ
とが、欠点数が少ない偏光フィルムを得るために重要で
ある。処理液中に溶解したPVAを除去してから、その
一部の処理液を当該槽に戻しても良いし、処理液中に溶
解したPVAの一部を除去してから、その一部またはす
べての処理液を当該槽に戻しても良い。処理液中に溶解
したPVAを除去する方法は、本願発明の趣旨を阻害し
ない方法であれば特に制限はないが、放置・冷却操作に
より析出したPVAを除去する方法が好ましい。
【0032】冷却方法としては、熱交換器を用いて冷媒
や冷風などを用いた強制冷却や、減圧などの手法で処理
液の一部を蒸発させ気化熱として除去して冷却する方法
や、自然放冷などが挙げられる。処理液の冷却温度は、
30℃以下が好ましく、25℃以下がより好ましく、2
0℃以下がさらに好ましく、10℃以下が特に好まし
く、処理液が凍結しない温度以上が好ましい。
【0033】前記槽から処理液の抜き取り速度は槽の大
きさにより一定しないが、槽内の処理液が理論的に更新
されるのに必要な所要時間は、6時間以上10日以下が
好ましく、12時間以上7日以下がより好ましく、1日
以上5日以下が特に好ましい。また、処理液の抜き取り
と処理液の戻しは連続で行うことが好ましいが、前記所
要時間に合致しているのであれば、抜き取りおよび/ま
たは注入を断続的に行っても良い。更新されるのに必要
な所要時間が6時間未満では薬液のロスが大きくなるの
で経済的でなく、10日を超えると運転条件が振れた場
合に欠点が発生しやすくなる。
【0034】PVAを析出させるための放置時間として
は、1時間以上が好ましく、8時間以上がより好まし
く、12時間以上がさらに好ましく、24時間以上が特
に好ましい。
【0035】析出したPVAを分離する方法としては、
ガラスフリット・焼結金属・ネット・布・不織布・紙な
どを用いた濾過、遠心分離、自然沈降、デカンテーショ
ンなどが挙げられる。
【0036】析出したPVAの一部またはすべてを分離
した後の処理液は、必要に応じて全量またはその一部を
元の槽に戻しても良いし、一部を元の槽と他の槽(複数
でも良い)に戻しても良いし、全量またはその一部を他
の槽(複数でも良い)に戻しても良い。槽に戻す処理液
は、直接槽に注入しても良く、槽に注入する薬液と混合
しても良く、槽に注入する薬液の調整に使用しても良
い。
【0037】本発明の偏光フィルムは、通常、その両面
または片面に、光学的に透明で、かつ機械的強度を有し
た保護膜を貼り合わせて偏光板として使用される。保護
膜としては、三酢酸セルロース(TAC)フィルム、酢
酸・酪酸セルロース(CAB)フィルム、アクリル系フ
ィルム、ポリエステル系フィルムなどが使用される。ま
た、貼り合わせのための接着剤としては、PVA系の接
着剤やウレタン系の接着剤などを挙げることができる
が、なかでもPVA系の接着剤が好適である。
【0038】以上のようにして得られた本発明の偏光フ
ィルムは、PVA粒子に起因する欠点数を3個以下/m
2 に減少させることができる。
【0039】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明
するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものでは
ない。なお、実施例中の二色性比は以下の方法により評
価した。
【0040】二色性比:得られた偏光フィルムの偏光性
能を評価する指標として二色性比を使用した。この二色
性比は、日本電子機械工業会規格(EIAJ)LD−2
01−1983に準拠し、分光光度計を用いて、C光
源、2度視野にて測定・計算して得た透過率Ts(%)
と偏光度P(%)を使用して下記の式から求めた。 二色性比=log(Ts/100−Ts/100×P/100) /log(Ts/100+Ts/100×P/100)
【0041】実施例1 温水で洗浄した、けん化度99.9モル%、重合度17
50、PVA100重量部と、グリセリン10重量部を
含有する、PVA濃度が15重量%の水溶液を流延製膜
して乾燥し、厚さ75μmのPVAフィルムを得た。
【0042】該PVAフィルムを予備膨潤、染色、一軸
延伸、固定処理、乾燥、熱処理の順に処理して偏光フィ
ルムを作成した。すなわち、該PVAフィルムを30℃
の水中に5分間浸漬して予備膨潤し、ヨウ素濃度0.4
g/リットル、ヨウ化カリウム濃度40g/リットルの
35℃の水溶液中に3分間浸した。続いて、ホウ酸濃度
4%の40℃の水溶液中で5.3倍に一軸延伸を行い、
ヨウ化カリウム濃度40g/リットル、ホウ酸濃度40
g/リットル、塩化亜鉛濃度10g/リットルの30℃
の水溶液中に5分間浸して固定処理を行った。フィルム
を取り出し、40℃で熱風乾燥し、さらに100℃で5
分間熱処理を行った。得られた偏光フィルムの厚みは2
2μmであり、透過度は43.3%、偏光度は98.5
%、二色性比は33.3であった。
【0043】延伸槽内の9m3 の処理液を2リットル/
分で連続で抜き取り(理論更新時間75時間)、熱交換
器で10℃に冷却してから、容量が3m3 のタンクに入
れた。タンクが満杯になってから、タンクより2リット
ル/分で連続で抜き取りを開始し(タンクでの滞留時間
が25時間)、焼結金属を用いたフィルターで濾過し
て、濾液を延伸槽に注入した。連続運転においても、P
VA粒子に起因する欠点は見られなかった。
【0044】比較例1 実施例1において、処理液を更新しないこと以外は同様
にして偏光フィルムを得た。
【0045】生産初期は問題なく運転できたが、連続運
転を行ううちに、PVA粒子に起因する欠点が、偏光フ
ィルム上に散見され、収率は徐々に低下した。
【0046】実施例2 けん化度99.9モル%、重合度4000のポリビニル
アルコール100重量部と、グリセリン10重量部と、
水110重量部を、押出機中で溶融混練させ、金属ロー
ルに吐出させてPVAフィルムを得た。
【0047】該PVAフィルムを実施例1と同様に処理
し、偏光フィルムを得た。得られた偏光フィルムの厚み
は22μmであり、透過度は43.0%、偏光度は9
9.7%であり、二色性比は43.7であった。
【0048】膨潤槽内の15m3 の処理液を4リットル
/分で連続で抜き取り(理論更新時間62.5時間)、
そのうち3リットル/分は放流し、残りの1リットル/
分を熱交換器で10℃に冷却してから、容量が2m3
タンクに入れた。タンクが満杯になってから、タンクよ
り1リットル/分で連続で抜き取りを開始し(タンクで
の平均滞留時間が33.3時間)、焼結金属を用いたフ
ィルターで濾過して、濾液を膨潤槽に注入した。連続運
転においても、PVA粒子に起因する欠点は見られなか
った。
【0049】
【発明の効果】本発明の製造法を使用することで、PV
A粒子に起因する欠点数の少ない偏光フィルムが得られ
る。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリビニルアルコール系重合体フィルム
    から偏光フィルムを製造する工程において、ポリビニル
    アルコール系重合体フィルムを処理する洗浄槽、膨潤
    槽、延伸槽、染色槽、固定処理槽の少なくとも一つの槽
    内の処理液を抜き取り、処理液中に溶解したポリビニル
    アルコール系重合体を除去してから、その処理液を当該
    槽内に戻すことを特徴とする偏光フィルムの製造法。
  2. 【請求項2】 抜き取った処理液を放置・冷却すること
    で、 処理液中に溶解したポリビニルアルコール系重合体
    を析出させて除去する請求項1記載の偏光フィルムの製
    造法。
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