JP2004020631A - 偏光フィルムの製造法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】フィルム表面に存在する20μm以上の大きさの異物が1平方m当たり10個以下のポリビニルアルコールフィルムを乾式法で延伸することを特徴とする偏光フィルムの製造法。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶ディスプレイ装置の部品として用いられる偏光板の材料として有用な偏光フィルムの製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光の透過および遮蔽機能を有する偏光板は、光のスイッチング機能を有する液晶とともに、液晶ディスプレイ装置(LCD)の基本的な構成要素である。このLCDの適用分野も、開発初期の頃の電卓および腕時計などの小型機器から、近年では、ラップトップパソコン、ワープロ、液晶カラープロジェクター、車載用ナビゲーションシステム、液晶テレビ、パーソナルホンおよび屋内外の計測機器などの広範囲に広がり、従来品以上に色斑が少なくて大面積の偏光板が求められるようになってきている。
【0003】
偏光板は、一般にポリビニルアルコールフィルム(以下、ポリビニルアルコールを「PVA」、ポリビニルアルコールフィルムを「PVAフィルム」と略記することがある)を一軸延伸して染色するか、または染色して一軸延伸した後、ホウ素化合物で固定処理を行うことにより(染色と固定処理が同時の場合もある)得られた偏光フィルムに、三酢酸セルロース(TAC)フィルムや酢酸・酪酸セルロース(CAB)フィルムなどの保護膜を貼り合わせた構成となっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
外観的には均一に見えるPVAフィルムであっても、これを一軸延伸することにより得られる偏光フィルムには判別が困難な色斑やスジ状の欠点が内在していることがある。この色斑は保護膜などを積層した最終製品(偏光板)でないと確認しにくい。この最終製品の段階で色斑が発現すると、品質的には全く問題のない保護膜などの副資材も偏光板と共に不良品として廃棄されるので、大きな損失となる。従来色斑を減少させる方法として、特開平6−138319号公報などで提案されているように、PVAフィルムの厚み斑や複屈折斑を減少させる検討がなされてきた。PVAフィルムの厚み斑や複屈折斑を減少させるという方法により、偏光板の色斑をある程度減少させることができ、当時の要求レベルを満足させることは可能となったが、近年の性能が向上した最終製品(偏光板および液晶ディスプレイ装置)で問題となるようなレベルの色斑を減少させることは困難であることが分かってきた。
【0005】
また、液晶ディスプレイ装置の大型化に伴い大面積の偏光フィルムが要求されるようになってきた。従来の液晶ディスプレイ装置は表示面積が比較的小さいうえに偏光板が単独で用いられていたために、色斑が問題にされることはほとんどなかったが、表示面積が大きくなると、表示面積全体の均一性が要求されることや、視野角を補正するフィルムなど他のフィルムと組み合わせて用いられることが多くなってきたことなどのため、色斑の問題が顕在化してきた。特にPVAフィルムをフィルムの流れ方向に一軸に延伸して製造される偏光フィルムの場合には、フィルムの流れ方向にスジ状の色斑が発生しやすい。これはフィルムの幅方向に厚み変動が存在し、それを流れ方向に一軸延伸するため強調されて見えるものと考えられる。偏光フィルムの厚み変動は透過率斑などを引き起こすため、偏光フィルムが液晶ディスプレイ装置等に組み込まれた場合に、品質が低下する原因となるという問題がある。特に液晶ディスプレイ装置の表示画面が大型化するにつれて、流れ方向に連続したスジが存在した場合に、その箇所を避けて製品を採取することが困難となるため、工業的に大きな問題となる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、色斑が少なく、高品質な液晶ディスプレイ用の製造原料として有用な偏光フィルムの製造法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、フィルムの表面に存在する20μm以上の大きさの異物が1平方m当たり10個以下のポリビニルアルコールフィルムを乾式法で延伸することにより、色斑の発生の程度が著しく低減した偏光フィルムが得られることを見出し、本発明を完成した。
また、本発明において、上記したポリビニルアルコールフィルムを乾式法で加熱して延伸する場合に、表面粗度が0.1〜1Sのロールを用いることにより、延伸時にシワの発生が防止され、フィルムの流れ方向に発生するスジ(色斑)が減少した偏光フィルムを製造することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の偏光フィルムの製造法において使用されるPVAフィルムは、フィルムの表面に存在する20μm以上の大きさの異物が1平方m当たり10個以下であることが必要であり、8個以下であることがより好ましく、5個以下であることが最も好ましい。フィルムの表面に存在する20μm以上の大きさの異物が10個を超える場合は、このようなPVAフィルムを乾式法で延伸した際に、偏光フィルムに色斑が発生し好ましくない。
【0009】
PVAフィルム中の異物を減少させる方法としては、従来公知の方法が好適に用いられる。中でも、フィルム製造時の原液をフィルターを用いてろ過する方法が特に好ましい。フィルターのろ過精度としてはろ過率80%になる大きさが、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがさらに好ましく、3μm以下であることが特に好ましい。ろ過率80%になる大きさが10μmを超えると、上記した、フィルムの表面に存在する20μm以上の大きさの異物が1平方m当たり10個以下のPVAフィルムを得ることが困難になる。また、フィルム製膜時の乾燥や熱処理に用いる熱風やその雰囲気のクリーン度がクラス10000以下であることが好ましく、1000以下であることがさらに好ましく、100以下であることが特に好ましい。クリーン度がクラス10000を超えると、フィルムの表面に存在する20μm以上の大きさの異物が1平方m当たり10個以下のPVAフィルムを得ることが困難になる。
【0010】
本発明において、フィルムの表面に存在する異物の大きさと数を規定したポリビニルアルコールフィルムを乾式法で延伸する場合に、表面粗度が0.1〜1Sのロールを用いることが好ましい。ロールの表面粗度が0.1S未満の場合には、フィルムの延伸時に空気の噛み込みが大きくなり、均一な延伸が阻害されることがある。また、ロールの表面粗度が1Sを超える場合は、ロールとPVAフィルムの密着性が低くなり、延伸時にフィルムのすべりが起こって、幅方向に均一な延伸を行うことが困難になり、フィルムが幅方向に均一に延伸されないと、色斑が発生する原因となることがある。
【0011】
また、本発明において用いられるロールは表面における粗度斑が0.2S以下であることが好ましく、0.1S以下であることが特に好ましい。ロールの表面粗度斑が0.2Sを超えると、幅方向に均一な延伸が出来難くなることがある。なお、本発明においてロールの表面の表面粗度斑とは、ロール上の任意の点を50箇所測定し、全測定値のうち最大値と最小値の差を算出して求めた値である。
【0012】
本発明において、ロールとPVAフィルムの静止摩擦係数は0.2〜1.0であることが好ましい。静止摩擦係数が0.2より小さい場合、延伸ロールと加熱ロールとの速度差から発生する張力が延伸されるフィルムに充分に伝わらず、ロール表面においてすべりが生じて延伸斑の原因となることがある。
【0013】
本発明において用いられるPVAは、例えば、ビニルエステルを重合して得られたポリビニルエステルをけん化することにより製造される。またPVAの主鎖に不飽和カルボン酸またはその誘導体、不飽和スルホン酸またはその誘導体、炭素数2〜30のα−オレフィンなどを5モル%未満の割合でグラフト共重合させた変性PVAや、ビニルエステルと不飽和カルボン酸またはその誘導体、不飽和スルホン酸またはその誘導体、炭素数2〜30のα−オレフィンなどを15モル%未満の割合で共重合させた変性ポリビニルエステルをけん化することにより製造される変性PVAや、未変性または変性PVAをホルマリン、ブチルアルデヒド、ベンズアルデヒドなどのアルデヒド類で水酸基の一部を架橋したいわゆるポリビニルアセタール樹脂などを挙げることができる。
【0014】
前記のビニルエステルとしては、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニルなどが例示される。
【0015】
変性PVAに使用されるコモノマーは、主としてPVAの変性を目的に共重合させるもので、本発明の趣旨を損なわない範囲で使用される。このようなコモノマーとして、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテンなどのα−オレフィン類;アクリル酸およびその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシルなどのアクリル酸エステル類;メタクリル酸およびその塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシルなどのメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩、N−メチロールアクリルアミドおよびその誘導体などのアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩、N−メチロールメタクリルアミドおよびその誘導体などのメタクリルアミド誘導体;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニルアミド類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル類;酢酸アリル、塩化アリルなどのアリル化合物;マレイン酸およびその塩またはそのエステル;イタコン酸およびその塩またはそのエステル;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニルなどを挙げることができる。これらの中でもα−オレフィンが好ましく、特にエチレンが好ましい。変性PVAの変性量は15モル%未満であるのが好ましい。
【0016】
PVAのけん化度は、偏光性能と耐久性の点から95モル%以上が好ましく、98モル%以上がより好ましく、99モル%以上がさらに好ましく、特に99.5モル%以上が最も好ましい。
【0017】
前記PVAのけん化度とは、ポリビニルエステルをけん化した際にビニルアルコール単位に変換されうる単位の中で、実際にビニルアルコール単位にけん化された単位の割合を示したものである。なお、PVAのけん化度は、JIS記載の方法により測定を行った。
【0018】
PVAの重合度は、偏光性能と耐久性の点から500以上が好ましく、1000以上がより好ましく、1500以上がさらに好ましく、特に2500以上が最も好ましい。PVA重合度の上限は8000以下が好ましく、6000以下がより好ましい。
【0019】
PVAの重合度は、JIS K 6726に準じて測定される。すなわち、PVAを再けん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度から求められる。
【0020】
以上のPVAを使用してPVAフィルムを製造する方法として、含水PVAを使用した溶融押出方式による製膜法の他に、例えばPVAを溶剤に溶解したPVA溶液(ポリビニルアルコールフィルムの原液)を使用してキャスト面に流延する流延製膜法、湿式製膜法(貧溶媒中への吐出)、ゲル製膜法(PVA水溶液を一旦冷却ゲル化した後、溶媒を抽出除去し、PVAフィルムを得る方法)、およびこれらの組み合わせによる方法などを採用することができる。これらの中でも流延製膜法および溶融押出製膜法が、良好な偏光フィルムが得られることから好ましい。
【0021】
PVAフィルムを製造する際に使用されるPVAを溶解する溶剤としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、グリセリン、水などを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を使用することができる。これらのなかでも、ジメチルスルホキシド、水、またはグリセリンと水の混合溶媒が好適に使用される。
【0022】
PVAフィルムを製造する際に使用されるPVA溶液または含水PVAにおけるPVAの割合は、PVAの重合度によっても変わってくるが、20〜70重量%が好適であり、25〜60重量%がより好適であり、30〜55重量%がさらに好適であり、35〜50重量%が最も好適である。PVAの割合が多いと、粘度が高くなり過ぎて濾過や脱泡が困難となり、異物や欠点のないフィルムを得るのが困難になる。PVAの割合が少ないと、乾燥に多くの時間やエネルギーがかかるため工業的見地から好ましくない。また、このPVA溶液または含水PVAには、必要に応じて可塑剤、界面活性剤、二色性染料などが含有されていてもよい。
【0023】
PVAフィルムを製造する際に、可塑剤として多価アルコールを添加することが好ましい。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジグリセリン、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパンなどを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を使用することができる。これらの中でも、延伸性を向上させる効果が優れていることから、ジグリセリン、エチレングリコールおよびグリセリンが好適に使用され、グリセリンの使用が最も好ましい。
【0024】
可塑剤の添加量は、PVA100重量部に対して1〜30重量部が好ましく、5〜20重量部がさらに好ましく、8〜15重量部が最も好ましい。1重量部より少ないと、染色性や延伸性が低下する場合があり、30重量部より多いと、PVAフィルムが柔軟になり過ぎて、取り扱い性が低下する場合がある。
【0025】
PVAフィルムを製造する際には、界面活性剤を添加することが好ましい。界面活性剤の種類としては特に限定はないが、アニオン性またはノニオン性の界面活性剤が好ましい。アニオン性界面活性剤としては、たとえば、ラウリン酸カリウムなどのカルボン酸型、オクチルサルフェートなどの硫酸エステル型、ドデシルベンゼンスルホネートなどのスルホン酸型のアニオン性界面活性剤が好適である。ノニオン性界面活性剤としては、たとえば、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのアルキルエーテル型、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどのアルキルフェニルエーテル型、ポリオキシエチレンラウレートなどのアルキルエステル型、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテルなどのアルキルアミン型、ポリオキシエチレンラウリン酸アミドなどのアルキルアミド型、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテルなどのポリプロピレングリコールエーテル型、オレイン酸ジエタノールアミドなどのアルカノールアミド型、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテルなどのアリルフェニルエーテル型などのノニオン性界面活性剤が好適である。これらの界面活性剤は1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0026】
界面活性剤の添加量は、PVA100重量部に対して0.01〜1重量部が好ましく、0.02〜0.5重量部がさらに好ましく、0.05〜0.3重量部が最も好ましい。0.01重量部より少ないと、界面活性剤の添加によってもたらされるべき製膜性や剥離性の向上の効果が現れにくく、1重量部より多いと、PVAフィルムの表面に界面活性剤が溶出してブロッキングの原因になり、取り扱い性が低下する場合がある。
【0027】
本発明の偏光フィルムの製造法において使用されるPVAフィルムは、水分率が2〜5重量%の範囲に調整されていることが好ましい。フィルム中に含まれる水分率が2重量%より少ないと、PVAフィルムが硬くなり過ぎて、フィルムを乾式法で加熱して一軸延伸する際に延伸性が低下する傾向があり、5重量部を超える場合はPVAフィルムが柔らかくなり過ぎて、フィルムを乾式法で加熱して一軸延伸する際にシワなどが入りやすくなる。
PVAフィルム中に含まれる水分率は、PVAフィルムを30〜80℃の温風と接触させることにより調整することができる。
【0028】
本発明において使用されるPVAフィルムは、フィルムの幅が2m以上であることが好ましく、2.5m以上がより好ましく、2.8m以上がさらに好ましく、3m以上が特に好ましい。フィルムの幅が2mより小さいPVAフィルムは元々幅方向への均一な延伸が比較的容易であるために、色斑が発生し難く、本発明の効果が現れにくい。
【0029】
本発明は特定のPVAフィルムを乾式法で一軸延伸することによる偏光フィルムの製造法に関する。この方法を用いて、PVAフィルムから偏光フィルムを製造するには、例えば、PVAフィルムを乾式法による一軸延伸、染色、必要に応じて乾式法または湿式法による二段目の一軸延伸、固定処理、乾燥処理、さらに必要に応じて熱処理を行えばよく、染色、乾式法または湿式法による二段目の一軸延伸、固定処理の操作の順番に特に制限はない。また、乾式法または湿式法による二段目の一軸延伸は二回またはそれ以上の回数行っても良い。
なお、本発明において乾式法による延伸とはPVAフィルムを空気中で延伸する操作のことを指しており、一方、湿式法による延伸とはPVAフィルムを水中やホウ酸水溶液などの水溶液中や可塑剤などの溶剤中で延伸する操作のことを指しており、両者は区別される。
【0030】
PVAフィルムの染色は、一軸延伸の前、一軸延伸時、一軸延伸後のいずれの段階で行っても良い。染色に用いる染料としては、ヨウ素−ヨウ化カリウム;ダイレクトブラック 17、19、154;ダイレクトブラウン 44、106、195、210、223;ダイレクトレッド 2、23、28、31、37、39、79、81、240、242、247;ダイレクトブルー 1、15、22、78、90、98、151、168、202、236、249、270;ダイレクトバイオレット 9、12、51、98;ダイレクトグリーン 1、85;ダイレクトイエロー 8、12、44、86、87;ダイレクトオレンジ 26、39、106、107などの二色性染料などが、1種または2種以上の混合物で使用できる。PVAフィルムの染色は、PVAフィルムを上記染料を含有する溶液中に浸漬させることにより行われるのが一般的であるが、染料をPVAフィルムに混ぜて製膜するなど、その処理方法や処理条件は特に制限されるものではない。
【0031】
二段目の一軸延伸には、PVAフィルムをホウ酸水溶液などの温水溶液中(前記染料を含有する溶液中や後述する固定処理浴中でもよい)で延伸する乾式延伸法、吸水後のPVAフィルムを空気中で延伸する乾式延伸法を使用することができる。延伸温度は特に限定されないが、PVAフィルムを温水溶液中などで延伸する場合は30〜90℃が、また空気中で延伸する場合は50〜180℃が好適である。また一軸延伸の延伸倍率(一軸延伸を多段で行う場合には、合計の延伸倍率)は、偏光性能の点から4倍以上が好ましく、5倍以上が特に好ましい。延伸倍率の上限について特に制限はないが、8倍以下であると均一な延伸が得られやすいので好ましい。特に幅方向に均一な延伸を行うためには、一段目の延伸倍率が4倍を越えることが好ましく、4.2倍以上がさらに好ましく、4.5倍以上が特に好ましい。延伸後のフィルムの厚さは、3〜75μmが好ましく、5〜50μmがより好ましい。
【0032】
PVAフィルムへの上記染料の吸着を強固にすることを目的にして、固定処理を行うことが多い。固定処理に使用する処理浴には、通常、ホウ酸および/またはホウ素化合物が添加される。また、必要に応じて処理浴中にヨウ素化合物を添加してもよい。
【0033】
得られた偏光フィルムの乾燥処理(熱処理)は、30〜150℃で行うのが好ましく、50〜150℃で行うのがより好ましい。
【0034】
以上のようにして得られた偏光フィルムは、通常、その両面または片面に、光学的に透明で、かつ機械的強度を有した保護膜を貼り合わせて偏光板として使用される。保護膜としては、三酢酸セルロース(TAC)フィルム、酢酸・酪酸セルロース(CAB)フィルム、アクリル系フィルム、ポリエステル系フィルムなどが使用される。また、貼り合わせに用いられる接着剤としては、PVA系の接着剤やウレタン系の接着剤などを挙げることができるが、なかでもPVA系の接着剤が好適である。このようにして得られる偏光板において、接着剤層の厚みは0.5〜10μmが好ましく、0.8〜8μmがさらに好ましく、1〜5μmが特に好ましい。接着層の厚みはフィルムの微細な凹凸より大きくして、接着後の偏光板の厚みを一定にすることが好ましい。厚さが0.5μmより小さいと均一な接着が困難となりやすく、気泡を形成したりして、光学的欠点が形成されやすいため問題となる場合がある。10μmより大きい場合には乾燥に時間がかかりやすく、乾燥が不十分なうちに不用意な力が加わると光学的欠点に成りやすいため、工業的生産に難点がある。また、気泡が入りやすくなるという欠点がある。
【0035】
以上のようにして得られた偏光板は、アクリル系等の粘着剤をコートした後、ガラス基板に貼り合わせて液晶ディスプレイ装置の部品として使用される。ガラス基板に偏光板を貼り合わせる際に、位相差フィルムや視野角向上フィルム、輝度向上フィルム等を同時に貼り合わせてもよい。
【0036】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において、偏光フィルムの光学性能、および偏光板の色斑を以下の方法により評価した。
【0037】
偏光フィルムの光学性能:
約4cm×4cmの偏光フィルムのサンプルを島津製作所製の分光光度計UV−2200(積分球付属)を用い、日本電子機械工業会規格(EIAJ)LD−201−1983に準拠して、C光源、2度視野の可視光領域の視感度補正したY値を測定し、偏光フィルムの延伸軸方向に対して45度と−45度方向の平均値から透過率を求めた。これと同様の方法でパラレルニコルとクロスニコルのY値を測定し、偏光度を求めた。
【0038】
偏光板の色斑:
全幅の偏光板を観察用偏光板(パラレルニコルに2枚重ねたもの、偏光度99.99%以上)の間に直交方向に置き、色斑の程度を目視観察で判定した。
【0039】
実施例1
けん化度99.95モル%、重合度2400のPVA100重量部に、グリセリン10重量部および水170重量部を含浸させたものを溶融混練し、ろ過率80%になる大きさが3μmのフィルターを用いてろ過し、脱泡後、Tダイから金属ロール上に溶融押出し、製膜した。その後、乾燥・熱処理してPVAフィルムを得た。得られたPVAフィルムについて、フィルムの表面に存在する20μm以上の大きさの異物を目視で観察したところ、1平方mあたり2個であった。また、PVAフィルムは平均厚みが50μm、水分率が4.4%、フィルム幅が3mであった。
前記したPVAフィルムを乾式法による一軸延伸、予備膨潤、染色、湿式法にいよる一軸延伸、固定処理、乾燥、熱処理の順番で連続的に処理して偏光フィルムを作製した。まず、PVAフィルムを延伸ロールが配置された延伸装置に通して乾式法により一軸延伸を行い、フィルムを4.1倍に延伸した。このときに用いられた延伸ロールは表面粗度が0.6S(表面粗度斑が0.1S)、PVAフィルムとの静止摩擦係数が0.8であった。延伸に用いられたロールの温度は、加熱ロールが90℃、延伸ロールが20℃であった。延伸ロールはフリーロールであり、延伸ロールの周速とその上流側に配置されている駆動ロールの周速の差によって延伸が行われた。延伸の大部分はPVAフィルムが加熱ロールに接触している付近で行われていた。幅方向の延伸斑は目視観察では認められなかった。
乾式法による一軸延伸後のPVAフィルムを、30℃の水中に30秒間浸して予備膨潤し、ヨウ素濃度0.4g/リットル、ヨウ化カリウム濃度40g/リットルの35℃の水溶液中に3分間浸した。続いて、ホウ酸濃度4%の50℃の水溶液中で1.5倍に一軸延伸を行い、ヨウ化カリウム濃度40g/リットル、ホウ酸濃度40g/リットル、塩化亜鉛濃度10g/リットルの30℃の水溶液中に5分間浸漬して固定処理を行った。その後、PVAフィルムを取り出して40℃の熱風により乾燥し、さらに100℃で5分間熱処理を行った。このようにして得られた偏光フィルムの偏光性能は、透過率43.3%、偏光度99.4%、2色性比40.5であった。
得られた偏光フィルムを10%のPVA水溶液(クラレ製PVA117H)の接着剤を用いて、トリアセテートフィルムと貼り合わせ、偏光板を得た。偏光板の色斑を観察したところ、偏光板の全面にわたって色斑はなく良好であった。この偏光板を液晶ディスプレイ装置に組み込んだところ、色斑はなく良好であった。
【0040】
実施例2
けん化度99.95モル%、重合度2400のPVA100重量部に、グリセリン10重量部および水170重量部を含浸させたものを溶融混練し、ろ過率80%になる大きさが5μmのフィルターを用いてろ過し、脱泡後、Tダイから金属ロール上に溶融押出し、製膜した。その後、乾燥・熱処理してPVAフィルムを得た。得られたPVAフィルムについて、フィルムの表面に存在する20μm以上の大きさの異物を目視で観察したところ、1平方mあたり6個であった。また、PVAフィルムは平均厚みが48μm、水分率が4.3%、フィルム幅が3mであった。
このPVAフィルムを用いて、表面粗度が0.3S(表面粗度斑が0.15S)、PVAフィルムとの静止摩擦係数が0.2の延伸ロールを用いた以外は実施例1と同様にしてPVAフィルムの一軸延伸を行い、偏光フィルムを作製した。得られた偏光フィルムの偏光性能は、透過率43.0%、偏光度99.5%、2色性比40.1であった。
得られた偏光フィルムを10%のPVA水溶液(クラレ製PVA117H)の接着剤を用いて、トリアセテートフィルムと貼り合わせ、偏光板を得た。偏光板の色斑を観察したところ、偏光板全面にわたって色斑はなく良好であった。この偏光板を液晶ディスプレイ装置に組み込んだところ、色斑はなく良好であった。
【0041】
比較例1
けん化度99.95モル%、重合度2400のPVA100重量部に、グリセリン10重量部および水170重量部を含浸させたものを溶融混練し、ろ過率80%になる大きさが20μmのフィルターを用いてろ過し、脱泡後、Tダイから金属ロール上に溶融押出し、製膜した。その後、乾燥・熱処理してPVAフィルムを得た。得られたPVAフィルムについて、フィルムの表面に存在する20μm以上の大きさの異物を目視で観察したところ、1平方mあたり14個であった。また、PVAフィルムは平均厚みが51μm、水分率が3.8%、フィルム幅が3mであった。
このPVAフィルムを用いて、実施例1と同様にして偏光フィルムを作製した。PVAフィルムの延伸操作中、異物による流れ方向の欠点がフィルム全面にわたって目視観察で認められた。得られた偏光フィルムの偏光性能は、透過率43.2%、偏光度99.4%、2色性比39.9であった。
得られた偏光フィルムを10%のPVA水溶液(クラレ製PVA117H)の接着剤を用いて、トリアセテートフィルムと貼り合わせ、偏光板を得た。偏光板の色斑を観察したところ、偏光板の全面にわたって異物による欠点が目視観察で存在し、商品レベルの偏光板として不適であった。この偏光板を液晶ディスプレイ装置に組み込んだところ、異物による流れ方向の欠点の付近が色斑として目視で認識可能であり、液晶ディスプレイ装置として不適であった。
【0042】
比較例2
実施例1で用いたのと同様のPVAフィルムを用い、表面粗度が10S(表面粗度斑が1S)、PVAフィルムとの静止摩擦係数が0.08の延伸ロールを用いた以外は実施例1と同様にして偏光フィルムを作製した。PVAフィルムの延伸時に、延伸ロール上でPVAフィルムがすべっているため、フィルムの流れ方向にスジが多数認められた。得られた偏光フィルムの偏光性能は、透過率43.5%、偏光度99.0%、2色性比37.7であった。
得られた偏光フィルムを10%のPVA水溶液(クラレ製PVA117H)の接着剤を用いて、トリアセテートフィルムと貼り合わせ、偏光板を得た。色斑を観察したところ、偏光板の全面にわたって流れ方向に無数の目視観察で目立つスジ状の色斑が存在し、商品レベルの偏光板として不適であった。この偏光板を液晶ディスプレイ装置に組み込んだところ、流れ方向の色斑が目視で認識可能であり、液晶ディスプレイ装置として不適であった。
【0043】
【発明の効果】
本発明の製造法によって得られる偏光フィルムは色斑が少なく、その特性を活かして、表示画面が大型化している液晶ディスプレイ装置の部品として有効に用いることができる。
Claims (5)
- フィルムの表面に存在する20μm以上の大きさの異物が1平方m当たり10個以下のポリビニルアルコールフィルムを乾式法で延伸することを特徴とする偏光フィルムの製造法。
- ポリビニルアルコールフィルムの水分率が2〜5重量%であることを特徴とする請求項1記載の偏光フィルムの製造法。
- 表面粗度が0.1〜1Sのロールを用いて乾式法で延伸することを特徴とする請求項1または2に記載の偏光フィルムの製造法。
- ロールの表面の表面粗度斑が0.2S以下であることを特徴とする請求項3に記載の偏光フィルムの製造法。
- ロールとポリビニルアルコールフィルムの静止摩擦係数が0.2〜1.0であることを特徴とする請求項3に記載の偏光フィルムの製造法。
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