JP4712154B2 - ポリビニルアルコールフィルムの製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学的欠点となる異物が少なく、高精細液晶ディスプレイ用偏光板の素材として好適なポリビニルアルコールフィルムとその製造法および偏光フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光の透過および遮蔽機能を有する偏光板は、光のスイッチング機能を有する液晶とともに、液晶ディスプレイ(LCD)の基本的な構成要素である。このLCDの適用分野も、開発初期の頃の電卓および腕時計などの小型機器から、近年では、ラップトップパソコン、ワープロ、液晶カラープロジェクター、車載用ナビゲーションシステム、液晶テレビ等の広範囲に広がり、従来品以上に光学的欠点の少ない偏光板が求められている。
【0003】
偏光板は、一般にポリビニルアルコールフィルム(以下、これを「PVAフィルム」、これの原料であるポリビニルアルコール系重合体を「PVA」と略記することがある)を一軸延伸して染色して得られた偏光フィルムの両面に、三酢酸セルロース(TAC)膜などの保護膜を貼り合わせた構成となっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記偏光板の光学的欠点となる光学的異物は、上記偏光板製造工程でのコンタミ等以外に、原料となるPVAフィルム中の異物(PVAフィルム製造工程でのコンタミや、製膜原料中に含まれるPVAの未溶解物等)も発生要因の一つである。ここで、異物(光学的異物)とは、PVAフィルムの透過率、屈折率のような光学的特性に影響を与える物をいう。PVAフィルム中の異物は、PVAフィルムと異なる物性を有するため、偏光板の作製時に延伸ムラや染色ムラを引き起こし、前記PVAフィルムからなる偏光板を液晶ディスプレイ等に組み込んだ場合、画素の輝度低下や発色異常などの問題を引き起こす場合がある。特に近年液晶ディスプレイの解像度が上がり、1画素当たりの面積が減少していることから、PVAフィルム中の異物に対する対策が求められていた。
【0005】
従来より、PVAフィルム中の異物は、延伸時の切断開始点になったりするため、製膜原液を濾過精度が20μm〜50μm程度のフィルターで濾過することが行われていた。しかし、近年の液晶ディスプレイの高精細化に対応できる充分なレベルには達していない。
【0006】
そこで、本発明の目的は、光学的欠点となる光学的異物が少なくて、高精細液晶ディスプレイ用偏光板の素材として好適なPVAフィルムとその製造法および偏光フィルムを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のPVAフィルムの製造法は、製膜原液として濾過精度が10μm以下のフィルターで濾過したものを用い、かつ、製膜時のPVAフィルムの乾燥工程で、揮発分率40重量%以上のPVAフィルムを、揮発分率40重量%になるまではクリーン度1000000以下の気体を用いて乾燥することを特徴とする。
なお、以下の説明において、光学的異物の大きさは、PVAフィルムの主面と直交する方向から見た光学的異物の長さ寸法で示される。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
この発明のPVAフィルムを構成するポリビニルアルコール系重合体(PVA)としては、ビニルエステル系モノマーを重合して得られたビニルエステル系重合体をけん化し、ビニルエステル単位をビニルアルコール単位としたものを用いることができる。該ビニルエステル系モノマーとしては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル等を挙げることができ、これらのなかでも酢酸ビニルを用いるのが好ましい。
【0009】
ビニルエステル系モノマーを重合させる際に、必要に応じて共重合可能な他のモノマーを、発明の趣旨を損なわない範囲内(好ましくは15モル%以下、より好ましくは5モル%以下の割合)で共重合させることもできる。
【0010】
このようなビニルエステル系モノマーと共重合可能なモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等の炭素数3〜30のオレフィン類;アクリル酸およびその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸およびその塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル等のメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩、N−メチロールアクリルアミドおよびその誘導体等のアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩、N−メチロールメタクリルアミドおよびその誘導体等のメタクリルアミド誘導体;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン等のN−ビニルアミド類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸およびその塩またはそのエステル;イタコン酸およびその塩またはそのエステル;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニル等を挙げることができる。
【0011】
前記PVAフィルムを構成するPVAの重合度は、フィルムの強度の点からは1000以上が好ましく、偏光性能の点からは1500以上がより好ましく、2000以上がさらに好ましく、3500以上が最も好ましい。さらに、PVAの重合度の上限は、フィルムの製膜性の点から10000以下が好ましい。
【0012】
前記PVAの重合度Po は、JIS K 6726に準じて測定される。すなわちPVAを再けん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η](単位:デシリットル/g)から次式により求められる。
Po =([η]×103 /8.29)(1/0.62)
【0013】
前記PVAフィルムを構成するPVAのけん化度は、偏光フィルムの耐久性の点からは95モル%以上が好ましく、98モル%以上がより好ましく、99モル%以上がさらに好ましく、99.9モル%以上が最も好ましい。また、PVAフィルムの染色性の点からは99.99モル%以下が好ましい。前記けん化度とは、けん化によりビニルアルコール単位に変換されうる単位の中で、実際にビニルアルコール単位にけん化されている単位の割合を示したものである。なお、PVAのけん化度は、JIS記載の方法により測定を行った。
【0014】
前記PVAフィルムを製造する際には、可塑剤として多価アルコールを添加することが好ましい。多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン等を挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を使用することができる。これらの中でも延伸性の向上効果からエチレングリコールまたはグリセリンが好適に使用される。
【0015】
多価アルコールの添加量としては、PVA100重量部に対して1〜30重量部が好ましく、3〜25重量部がより好ましく、5〜20重量部が最も好ましい。1重量部より少ないと、染色性や延伸性が低下する場合があり、30重量部より多いと、フィルムが柔軟になりすぎて取り扱い性が低下する場合がある。
【0016】
また、前記PVAフィルムを製造する際には、界面活性剤を添加することが好ましい。界面活性剤の種類としては特に限定はないが、アニオン性またはノニオン性の界面活性剤が好ましい。アニオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸カリウムなどのカルボン酸型、オクチルサルフェートなどの硫酸エステル型、ドデシルベンゼンスルホネートなどのスルホン酸型のアニオン性界面活性剤が好適である。ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのアルキルエーテル型、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどのアルキルフェニルエーテル型、ポリオキシエチレンラウレートなどのアルキルエステル型、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテルなどのアルキルアミン型、ポリオキシエチレンラウリン酸アミドなどのアルキルアミド型、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテルなどのポリプロピレングリコールエーテル型、オレイン酸ジエタノールアミドなどのアルカノールアミド型、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテルなどのアリルフェニルエーテル型などのノニオン性界面活性剤が好適である。これらの界面活性剤の1種または2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0017】
界面活性剤の添加量としては、PVA100重量部に対して0.01〜1重量部が好ましく、0.02〜0.5重量部がより好ましく、0.05〜0.3重量部が最も好ましい。0.01重量部より少ないと、延伸性向上や染色性向上の効果が現れにくく、1重量部より多いと、フィルム表面に溶出してブロッキングの原因になり、取り扱い性が低下する場合がある。
【0018】
前記PVAフィルムを製造する方法としては、例えば、PVAを溶剤に溶解したPVA溶液を使用して、流延製膜法、湿式製膜法(貧溶媒中への吐出)、ゲル製膜法(PVA水溶液を一旦冷却ゲル化した後、溶媒を抽出除去し、PVAフィルムを得る方法)、およびこれらの組み合わせによる方法や、含水PVA(有機溶剤などを含んでいても良い)を溶融して行う溶融押出製膜法などを採用することができる。これらのなかでも流延製膜法および溶融押出製膜法が、透明性の高いPVAフィルムが得られることから好ましい。このPVAフィルムを製造する際に使用されるPVA溶液または含水PVAの揮発分率は50重量%以上が好ましく、60重量%以上がより好ましく、70重量%以上が最も好ましい。揮発分率が50重量%より小さいと、粘度が高くなるため濾過が困難となる。また、揮発分率が高いほど製膜原液の粘度が低くなり異物の濾過が容易となるため、揮発分率は高いほど好ましいが、揮発分率が90重量%より大きいと粘度が低くなり過ぎて、PVAフィルムの厚さ均一性が損なわれ易いため好ましくない。
【0019】
本発明で用いるフィルターとしては、従来周知の材質、形状のものが好適に使用される。工業的な実施の点からは、PVA製膜原液は粘度が高くなることが多いため、金属製フィルターが好ましく、腐食の点からはステンレス製が特に好ましい。形状としては、スクリーンタイプのものが好ましく、ディスクフィルターが特に好ましい。濾過圧力の低減のためには、多葉式フィルターであることが好ましい。また、前記フィルターの上流側にプレフィルターを設置することも好ましい。
【0020】
前記フィルターの濾過精度は、10μm以下であることが重要であり、5μm以下のものがより好ましく、3μm以下のものがさらに好ましく、特に1μm以下のものが最も好ましい。10μmを超えると、濾過で除去不可能な異物によりフィルム延伸時の切断が発生したり、偏光フィルムを製造した際の光学的欠点となり、液晶ディスプレイに組み込んだときの発光異常が発生する恐れがある。濾過精度の下限は、通常、濾過圧力の問題から0.1μmであることが好ましい。ここで、前記フィルターの濾過精度とは、捕集効率が90%以上となる粒子径のことである。
【0021】
また、前記PVAフィルムを製膜する際の乾燥工程において、揮発分率40重量%以上のPVAフィルムを、クリーン度1000000以下の気体により乾燥することが重要である。すなわち、PVAフィルムの揮発分率が40重量%以上であると、該PVAフィルムに気体中の異物が付着して光学的な欠点となりやすいので、クリーン度1000000以下の気体で乾燥する必要がある。一方、PVAフィルムの揮発分率が40重量%未満に乾燥されていると、気体中のゴミがPVAフィルムに接触しても付着しにくいため異物となることが少ない。また、付着した場合にも、偏光フィルムの製造工程で異物は剥離することが多く、光学的な欠点となりにくい。
【0022】
前記PVAフィルムの乾燥工程で使用する気体のクリーン度は、1000000以下であり、100000以下が好ましく、20000以下がより好ましく、特に10000以下が最も好ましい。クリーン度が1000000を超えると、気体中のゴミがPVAフィルムに付着して異物となることが多いため、偏光フィルムを製造した際に光学的な欠点となり、液晶ディスプレイの発光異常が発生する。
【0023】
前記PVAフィルムの平均厚さは5〜150μmが好ましく、30〜100μmがより好ましい。
【0024】
本発明のPVAフィルムに含まれる光学的異物は、5μm(長さ寸法)以上のものが100cm2 当たり500個以下であることが重要である。これによれば、前記PVAフィルムから得られる偏光フィルムを、液晶ディスプレイに偏光板として組み込んだとき、画素の輝度低下や発色異常などを引き起こすことなく良好な性能が得られるので、高精細液晶ディスプレイ用素材として好適となる。なお、5μm以上の光学的異物が100cm2 当たり500個を超えると、性能が悪化して高精細液晶ディスプレイ用素材としては不適となる。
【0025】
特に、光学的異物は、10μm以上のものが100cm2 当たり50個以下であり、100μm以上のものが100cm2 当たり20個以下であることが好ましい。これによれば、より良好な光学性能が得られ、高精細液晶ディスプレイ用素材としては最適なものとなる。
【0026】
前記PVAフィルムから偏光フィルムを製造するには、例えばPVAフィルムを染色、一軸延伸、固定処理、乾燥処理、さらに必要に応じて熱処理を行えばよい。各工程の順序は特に限定はなく、また染色と一軸延伸などの二つの工程を同時に実施しても良い。また、各工程を複数回繰り返しても良い。
【0027】
染色は、一軸延伸前、一軸延伸時、一軸延伸後のいずれでも可能であるが、PVAは、一軸延伸により結晶化度が上がりやすく染色性が低下することがあるため、一軸延伸に先立つ任意の工程または一軸延伸工程中において染色するのが好ましい。
【0028】
染色に用いる染料としては、ヨウ素−ヨウ化カリウム;ダイレクトブラック 17、19、154;ダイレクトブラウン 44、106、195、210、223;ダイレクトレッド 2、23、28、31、37、39、79、81、240、242、247;ダイレクトブルー 1、15、22、78、90、98、151、168、202、236、249、270;ダイレクトバイオレット9、12、51、98;ダイレクトグリーン 1、85;ダイレクトイエロー8、12、44、86、87;ダイレクトオレンジ 26、39、106、107等の二色性染料などを使用できる。染色は、通常、PVAフィルムを上記染料を含有する溶液中に浸漬させることにより行うことができるが、その処理条件や処理方法は特に制限されるものではない。
【0029】
前記PVAフィルムの長さ方向に行う一軸延伸は、湿式延伸法または乾熱延伸法を使用でき、温水中(前記染料を含有する溶液中や後記固定処理浴中でもよい)または吸水後のフィルムを用いて空気中で行ってもよい。延伸倍率は、4倍以上が好ましく、5倍以上が最も好ましい。延伸倍率が4倍より小さいと、実用的に十分な偏光性能や耐久性能が得られにくい。延伸は一段階で目的の延伸倍率まで行ってもよいが、二段階以上の多段延伸を行った方がさらにネックインが小さくなり、光学性能の均一性に効果がある。
【0030】
延伸温度は特に限定されないが、PVAフィルムを温水中で延伸(湿式延伸)する場合は30〜90℃が、また乾熱延伸する場合は50〜180℃が好適である。延伸後のPVAフィルムの厚みは、3〜75μmが好ましく、10〜50μmがより好ましい。
【0031】
前記PVAフィルムへの上記染料の吸着を強固にすることを目的に、固定処理を行う。固定処理に使用する処理浴には、通常、ホウ酸およびホウ素化合物が添加される。また、必要に応じて処理浴中にヨウ素化合物を添加してもよい。
【0032】
前記PVAフィルムの乾燥処理(熱処理)は30〜150℃で行うのが好ましく、50〜150℃で行うのがより好ましい。
【0033】
以上のようにして得られる本発明の偏光フィルムは、通常、その両面または片面に、光学的に透明で、かつ機械的強度を有した保護膜を貼り合わせて偏光板として使用される。保護膜としては、通常、セルロースアセテート系フィルム、アクリル系フィルム、ポリエステル系フィルム等が使用される。
【0034】
本発明のPVAフィルムから得られる偏光フィルムは、5μm×5μm(2次元寸法)以上の大きさを有する光学的異物が、100cm2 当たり5個以下であることが好ましく、3個以下であることがより好ましく、特に1個以下であることが最も好ましい。5個を超えると、前記偏光フィルムから偏光板を作製して液晶ディスプレイに組み込んだ際に、画素の輝度低下や発色異常などの問題を引き起こす確率が高くなるため好ましくない。本発明の偏光フィルムは、特に画素サイズが小さくなることが多い高精細液晶ディスプレイ用途、液晶プロジェクターやライトバルブ用途、液晶テレビ用途、プラズマアドレス液晶用途などに好適に用いられる。
【0035】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、実施例中の二色性比の評価、クリーン度の測定、揮発分率(水分率)の測定、PVAフィルム中の光学的異物数の測定は、以下の方法により行った。
【0036】
二色性比:
得られた偏光フィルムの偏光性能を評価する指標として二色性比を使用した。この二色性比は、日本電子機械工業会規格(EIAJ)LD−201−1983に準拠し、分光光度計を用いて、C光源、2度視野にて測定・計算して得た透過率Ts(%)と偏光度P(%)を使用して下記の式から求めた。
二色性比=log(Ts/100−Ts/100×P/100)
/log(Ts/100+Ts/100×P/100)
【0037】
クリーン度の測定:
パーティクルカウンターを用いて、乾燥に用いる気体のクリーン度を測定した。気体2.83リットル当たりの0.5μm以上の大きさの塵埃の個数をクリーン度とした。
【0038】
揮発分率(水分率)の測定:
ファイバー式赤外水分計(IM−3SCV MODEL−1900(L)、株式会社フジワーク製)を用いて、PVAフィルムの水分率を測定した。
【0039】
PVAフィルム中の光学的異物数の測定:
PVAフィルムのサンプルを20×20cmに切り、その中央部10×10cmを顕微鏡で観察して光学的異物の大きさと数を調べた。光学的異物の大きさは円形以外の場合、光学的異物を囲む最小限の長方形を仮定してその長辺方向の長さとした。
【0040】
偏光フィルム中の光学的異物数の測定:
偏光フィルムのサンプルを20×20cmに切り、その中央部10×10cmを顕微鏡で観察した。偏光顕微鏡でクロスニコル状態の偏光フィルムのサンプルを観察し、5μm×5μmより大きな光学的異物による異常偏光(光の漏れなど)状態の数を調べた。
【0041】
実施例1
けん化度99.7モル%で重合度8000のPVA100重量部、グリセリン10重量部、ポリオキシエチレンラウリルサルフェート0.1重量部および水を120℃でタンク溶解し、揮発分率90重量%のPVA溶液を作製した。このPVA溶液を熱交換機で100℃に冷却後、1μmのディスクフィルターで濾過した。そして、95℃の金属ベルトに流延製膜した後、クリーン度2500の100℃の空気を用いて揮発分率40重量%まで乾燥し、さらにクリーン度2500の100℃の空気を用いて揮発分率5重量%まで乾燥し、フィルム幅1.2mで平均厚さ50μmのPVAフィルムを得た。
【0042】
得られたPVAフィルム中の光学的異物数を測定した結果、5μm以上の光学的異物が1個、このうち10μm以上および100μm以上の光学的異物は0個であった。
【0043】
このPVAフィルムを一軸延伸、染色、固定処理、乾燥、熱処理の順に処理して偏光フィルムを作製した。すなわち、PVAフィルムを110℃で4.5倍に一軸延伸を行った。この一軸延伸PVAフィルムを、緊張状態に保ったまま、ヨウ素濃度0.8g/リットル、ヨウ化カリウム濃度40g/リットルの40℃の水溶液中に1分間浸漬した。次に、ヨウ化カリウム60g/リットル、ホウ酸60g/リットルの55℃の水溶液中に5分間浸漬して固定処理を行った。これを20℃の蒸留水で10秒間水洗した後、定長下、40℃で熱風乾燥し、さらに100℃で5分間熱処理した。
【0044】
得られた偏光フィルムの幅方向中心部の厚さは27μmであり、透過率は42.8%、偏光度は99.8%、二色性比は45.1であった。この偏光フィルムの100cm2 を偏光顕微鏡で観察したところ、5μm角以上の大きさの光学的異物は0個であった。
【0045】
実施例2
けん化度99.9モル%で重合度4000のPVA100重量部、グリセリン10重量部、ラウリン酸ジエタノールアミド0.1重量部および水を120℃でタンク溶解し、揮発分率80重量%のPVA溶液を作製した。このPVA溶液を熱交換機で100℃に冷却後、3μmのディスクフィルターで濾過した。そして、95℃の金属ドラムに流延製膜した後、クリーン度7700の100℃の空気を用いて揮発分率40重量%まで乾燥し、さらにクリーン度7700の100℃の空気を用いて揮発分率5重量%まで乾燥し、フィルム幅1.5mで平均厚さ50μmのPVAフィルムを得た。
【0046】
得られたPVAフィルム中の光学的異物数を測定した結果、5μm以上の光学的異物が2個、このうち10μm以上の光学的異物は1個、100μm以上の光学的異物は0個であった。
【0047】
このPVAフィルムを用いて、実施例1と同様にして偏光フィルムを作製したところ、得られた偏光フィルムの幅方向中心部の厚さは28μmであり、透過率は43.1%、偏光度は99.7%、二色性比は44.3であった。この偏光フィルムの100cm2 を偏光顕微鏡で観察したところ、5μm角以上の大きさの光学的異物は0個であった。
【0048】
実施例3
けん化度99.9モル%で重合度4000のPVA100重量部に、グリセリン10重量部とポリオキシエチレンラウリルサルフェート0.1重量部および水を含浸し、押出機で溶融し、揮発分率70重量%、130℃の溶融物を作製した。この溶融物を熱交換機で100℃に冷却後、5μmのディスクフィルターで濾過した。そして、95℃の金属ドラムに溶融押出製膜した後、クリーン度13200の100℃の空気を用いて揮発分率40重量%まで乾燥し、さらにクリーン度1280000の100℃の空気を用いて揮発分率5重量%まで乾燥し、フィルム幅2.5mで平均厚さ75μmのPVAフィルムを得た。
【0049】
得られたPVAフィルム中の光学的異物数を測定した結果、5μm以上の光学的異物が16個、このうち10μm以上の光学的異物は9個、100μm以上の光学的異物は2個であった。
【0050】
このPVAフィルムを用いて実施例1と同様にして偏光フィルムを作製したところ、得られた偏光フィルムの幅方向中心部の厚さは35μmであり、透過率は43.0%、偏光度は99.7%、二色性比は43.7であった。この偏光フィルムの100cm2 を偏光顕微鏡で観察したところ、5μm角以上の大きさの光学的異物は1個であった。
【0051】
実施例4
けん化度99.9モル%で重合度2400のPVA100重量部に、グリセリン10重量部とラウリン酸ジエタノールアミド0.1重量部および水を含浸し、押出機で溶融し、揮発分率60重量%、130℃の溶融物を作製した。この溶融物を熱交換機で100℃に冷却後、5μmのディスクフィルターで濾過した。そして、95℃の金属ドラムに溶融押出製膜した後、クリーン度13000の100℃の空気を用いて揮発分率40重量%まで乾燥し、さらにクリーン度1280000の100℃の空気を用いて揮発分率5重量%まで乾燥し、フィルム幅2.5mで平均厚さ75μmのPVAフィルムを得た。
【0052】
得られたPVAフィルム中の光学的異物数を測定した結果、5μm以上の光学的異物が15個、10μm以上の光学的異物は10個、100μm以上の光学的異物は1個であった。
【0053】
このPVAフィルムを用いて実施例1と同様にして偏光フィルムを作製したところ、得られた偏光フィルムの幅方向中心部の厚さは35μmであり、透過率は43.0%、偏光度は99.6%、二色性比は41.0であった。この偏光フィルムの100cm2 を偏光顕微鏡で観察したところ、5μm角以上の大きさの光学的異物は1個であった。
【0054】
比較例1
けん化度99.9モル%で重合度2400のPVA100重量部に、グリセリン10重量部とポリオキシエチレンラウリルエーテル0.1重量部および水を含浸し、押出機で溶融し、揮発分率60重量%、130℃の溶融物を作製した。この溶融物を熱交換機で100℃に冷却後、20μmのディスクフィルターで濾過した。そして、95℃の金属ドラムに溶融押出製膜した後、クリーン度2500の100℃の空気を用いて揮発分率40重量%まで乾燥し、さらにクリーン度2500の100℃の空気を用いて揮発分率5重量%まで乾燥し、フィルム幅2.5mで平均厚さ75μmのPVAフィルムを得た。
【0055】
得られたPVAフィルム中の光学的異物数を測定した結果、5μm以上の光学的異物が601個、このうち10μm以上の光学的異物は79個、100μm以上の光学的異物は28個であった。
【0056】
このPVAフィルムを用いて実施例1と同様にして偏光フィルムを作製したところ、得られた偏光フィルムの幅方向中心部の厚さは35μmであり、透過率は42.7%、偏光度は99.6%、二色性比は39.9であった。この偏光フィルムの100cm2 を偏光顕微鏡で観察したところ、5μm角以上の大きさの光学的異物が9個であった。
【0057】
比較例2
けん化度99.9モル%で重合度2400のPVA100重量部、グリセリン10重量部、ポリオキシエチレンラウリルエーテル0.1重量部を水に加えて、タンクで撹拌しながら加熱溶解し、揮発分率90重量%、130℃の混合溶液を作製した。この溶液を熱交換機で100℃に冷却後、1μmのディスクフィルターで濾過した。95℃の金属ベルトに流延製膜した後、クリーン度1280000の100℃の空気を用いて揮発分率40重量%まで乾燥し、さらにクリーン度1280000の100℃の空気を用いて揮発分率5重量%まで乾燥し、フィルム幅1.5mで平均厚さ50μmのPVAフィルムを得た。
【0058】
得られたPVAフィルム中の光学的異物数を測定した結果、5μm以上の光学的異物が1302個、このうち10μm以上の光学的異物は189個、100μm以上の光学的異物は63個であった。
【0059】
このPVAフィルムを用いて実施例1と同様にして偏光フィルムを作製したところ、得られた偏光フィルムの幅方向中心部の厚さは27μmであり、透過率は42.6%、偏光度は99.5%、二色性比は37.8であった。この偏光フィルムの100cm2 を偏光顕微鏡で観察したところ、5μm角以上の大きさの光学的異物が20個であった。
【0060】
比較例3
けん化度99.9モル%で重合度2400のPVA100重量部、グリセリン10重量部、ポリオキシエチレンラウリルエーテル0.1重量部を水に加えてタンクで撹拌しながら加熱溶解し、揮発分率90重量%、130℃の混合溶液を作製した。この溶液を熱交換機で100℃に冷却後、1μmのディスクフィルターで濾過を行った。95℃の金属ベルトに流延製膜した後、クリーン度13200の100℃の空気を用いて揮発分率60重量%まで乾燥し、さらにクリーン度1280000の100℃の空気を用いて揮発分率5重量%まで乾燥し、フィルム幅1.5mで平均厚さ50μmのPVAフィルムを得た。
【0061】
得られたPVAフィルム中の光学的異物数を測定した結果、5μm以上の光学的異物が963個、このうち10μm以上の光学的異物は164個、100μm以上の光学的異物は42個であった。
【0062】
このPVAフィルムを用いて実施例1と同様にして偏光フィルムを作製したところ、得られた偏光フィルムの幅方向中心部の厚さは27μmであり、透過率は42.7%、偏光度は99.5%、二色性比は38.4であった。この偏光フィルムの100cm2 を偏光顕微鏡で観察したところ、5μm角以上の大きさの光学的異物が31個であった。
【0063】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、光学的欠点となる光学的異物が少なくて、高精細液晶ディスプレイ用偏光フィルムの素材として好適なPVAフィルムを得ることができる。特に本発明のPVAフィルムからなる偏光フィルムを液晶ディスプレイ等に組み込んだ場合、画素の輝度低下や発色異常などの問題を引き起こすことが少なくなるため、従来の液晶ディスプレイ用に加え、より高精細が要求される液晶ディスプレイ用途、液晶プロジェクターやライトバルブ用途などに好適に用いることができる。
Claims (3)
- 製膜原液として濾過精度が10μm以下のフィルターで濾過したものを用い、かつ、製膜時のポリビニルアルコールフィルムの乾燥工程で、揮発分率40重量%以上のポリビニルアルコールフィルムを、揮発分率40重量%になるまではクリーン度1000000以下の気体を用いて乾燥することを特徴とするポリビニルアルコールフィルムの製造法。
- 揮発分率40重量%になるまでクリーン度1000000以下の気体を用いて乾燥した後、クリーン度2500〜1280000の空気を用いてさらに乾燥することを特徴とする請求項1記載のポリビニルアルコールフィルムの製造法。
- 偏光フィルム用ポリビニルアルコールフィルムの製造法である請求項1または2記載のポリビニルアルコールフィルムの製造法。
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