JP5179646B2 - 偏光フィルム - Google Patents
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Description
すなわち、本発明は、クラックを含有していることを特徴とする偏光フィルムを提供する。
まず、本発明で言うクラックとは、偏光フィルム中に存在する微小な空隙であり、偏光フィルムの厚み方向には貫通していないものである。このクラックは、水溶性無機塩の粒子状物が分散しているポリビニルアルコールフィルム(以下、「ポリビニルアルコールフィルム」を「PVAフィルム」と略記することがある)を延伸することにより、あるいは水溶性無機塩の粒子状物が分散しているPVAフィルムを水に浸漬し、水溶性無機塩を溶出させた後で延伸することにより、偏光フィルム中に形成することができる。
そのうち、変性PVA系重合体の例としては、不飽和カルボン酸またはその誘導体、不飽和スルホン酸またはその誘導体、炭素数2〜30のα−オレフィンなどを5モル%未満の割合でグラフト共重合した変性ポリビニルエステルをけん化することにより製造される変性PVA系ポリマーや、未変性または変性PVA系重合体を挙げることができる。
特に、他の共重合性単量体が、(メタ)アクリル酸、スルホン酸などのような、PVA系重合体の水溶解性を促進する単量体である場合は、PVAフィルムから偏光フィルムを作製する際の水溶液中での処理時にフィルムが溶解したり溶断するのを防止するために、水溶解性単量体の重合割合を5モル%以下、特に3モル%以下にするのがよい。
なお、本明細書におけるPVAのケン化度とは、重合体を構成する構造単位のうちで、ケン化によってビニルアルコール単位に変換され得る単位(典型的にはビニルエステル単位)の全モル数に対して実際にビニルアルコール単位にケン化されている単位の割合(モル%)をいう。ケン化度はJIS K6726に記載されている方法に準じて測定することができる。
水溶性無機塩の粒子状物が分散するPVAフィルムを用いて偏光フィルムを製造した場合、偏光フィルム中に水溶性無機塩が残存すると耐久性能等の悪化の原因となるため、水溶性無機塩は、偏光フィルムの製造工程でPVAフィルムから速やかに溶出するのが好ましく、この点から水溶性無機塩としては硝酸マグネシウムが特に好ましい。
PVAフィルムを適切な状態に調整するためには、熱処理装置や調湿装置、さらにはそれぞれのロール駆動用のモータや変速機などの速度調整機構が付設されることが望ましい。
PVAフィルムの製造工程での乾燥処理は、一般に、乾燥温度は50〜150℃、特に60℃〜120℃の温度で行うことが、偏光フィルムを製造する際の延伸性、染色性に優れ、しかも得られる偏光フィルムの偏光性能や耐久性が良好になる点から好ましい。
PVAフィルムから偏光フィルムを製造するには、例えば、PVAフィルムの水分調整、染色、一軸延伸、固定処理、乾燥処理、さらに必要に応じて熱処理を行えばよく、染色、一軸延伸、固定処理等の操作の順序は特に制限されない。また一軸延伸を二段以上の多段で行ってもよいし、染色や固定処理などと同時に行っても構わない。
延伸温度は、特に限定されないが、PVAフィルムを湿式延伸する場合は30〜90℃が好ましく、乾熱延伸する場合は50〜180℃が好ましい。
また、一軸延伸の延伸倍率(多段で一軸延伸する場合には合計の延伸倍率)は、得られる偏光フィルムの偏光性能の点から4倍以上、特に5倍以上であることが好ましい。延伸倍率の上限は特に制限されないが、均一延伸の点から8倍以下であることが好ましい。
(i)透過率
以下の実施例または比較例で得られた偏光フィルムの幅方向の中央部から、偏光フィルムの配向方向に平行に4cm×4cmの正方形のサンプルを2枚採取し、それぞれについて日立製作所製の分光光度計U−4100(積分球付属)を用いて、JIS Z 8722(物体色の測定方法)に準拠し、C光源、2度視野の可視光領域の視感度補正を行い、1枚の偏光フィルムサンプルについて、延伸軸方向に対して45度傾けた場合の光の透過率と−45度傾けた場合の光の透過率を測定して、それらの平均値(Y1)を求めた。
もう一枚の偏光フィルムサンプルについても、前記と同様にして45度傾けた場合の光の透過率と−45度傾けた場合の光の透過率を測定して、それらの平均値(Y2)を求めた。
前記で求めたY1とY2を平均して偏光フィルムの透過率(Y)(%)とした。
上記(i)で採取した2枚の偏光フィルムを、その配向方向が平行になるように重ねた場合の光の透過率(Y‖)、および配向方向が直交するように重ねた場合の光の透過率(Y⊥)を、上記透過率の測定方法と同様の方法にて測定し、下記の式から偏光度を求めた。
偏光度(V/%)={(Y‖―Y⊥)/(Y‖+Y⊥)}1/2×100
偏光フィルムの青色光の漏れの有無を評価するために、ハンターLab表色系により、b値を算出して評価した。上記(1)の(i)で採取した2枚の偏光フィルムサンプルをその延伸軸方向が平行になるように重ねた場合のb値(b‖)、および延伸軸方向が直交するように重ねた場合のb値(b⊥)を、上記透過率の測定方法と同様の方法にて測定し、下記の式からb値を求めた。
b値 = |b‖−b⊥|
(1)平均重合度2400、ケン化度99.95モル%のPVA100質量部と、硝酸マグネシウム無水物20質量部と可塑剤としてグリセリン12質量部のPVA10%水溶液を60℃の金属ロール上で乾燥して、厚みが75μmのPVAフィルムを得た。さらに得られたフィルムを枠に固定して、140℃で3分間熱処理をした。熱処理後のPVAフィルムの熱水切断温度は68.2℃、膨潤度は200%であった。
得られたPVAフィルムを位相差顕微鏡で観察したところ、PVAフィルム中に平均粒径3μmの粒子状物が生成しており、また粒子状物はフィルム面積100平方μmあたり平均で10個存在していることが確認された。なお、平均粒径は、フィルム中の粒子状物を無作為に5個選んでそれぞれの粒径を測定し、それを平均して求めた値であり、粒子状物の個数は、PVAフィルムから無作為に選んだ3箇所の粒子状物の個数を顕微鏡観察により数え、それを平均して求めた値である。
(2)上記(1)で得られたPVAフィルムを30℃の純水に3分間浸漬した後、ヨウ素を0.04質量%、ヨウ化カリウムを4質量%およびホウ酸を4質量%の割合で含有する水溶液(染色浴)(温度30℃)に30秒間浸漬してヨウ素を吸着させた。次いで、ホウ酸水溶液(ホウ酸濃度4重量%、50℃)中で5.4倍に一軸延伸した後、さらにヨウ化カリウムを6質量%およびホウ酸を4質量%の割合で含有する水溶液(35℃)に4分間浸漬した。その後、50℃で4分間乾燥して偏光フィルムを得た。
得られた偏光フィルムを位相差顕微鏡で観察したところ、延伸方向を長軸とする細長い形状のクラックが発生していてその大きさ(長軸の長さ)は約10μmであり、またクラックはフィルム面積100平方μmあたり平均で8個存在していることが確認された。なお、長軸の長さは偏光フィルム中のクラックを無作為に5個選んでそれぞれの長軸を計測し、それを平均して求めた値であり、クラックの個数は、偏光フィルムから無作為に選んだ3箇所のクラックの個数を顕微鏡観察により数え、それを平均して求めた値である。
この偏光フィルムの透過度は44.1%、偏光度は98.4%、b値は2.9であり、硝酸マグネシウムが未添加の場合に得られる偏光フィルム(比較例1)と比較して、b値が小さくて色相に優れていた。
(1)平均重合度2400、ケン化度99.95モル%のPVA100重量部と、硝酸マグネシウム無水物5重量部と可塑剤としてグリセリン12重量部のPVA10%水溶液を60℃の金属ロール上で乾燥して、厚みが75μmのPVAフィルムを得た。さらに得られたフィルムを枠に固定して、130℃で3分間熱処理をした。熱処理後のPVAフィルムの熱水切断温度は68.2℃、膨潤度は202%であった。
得られたPVAフィルムを実施例1と同様にして位相差顕微鏡で観察したところ、PVAフィルム中に平均粒径2μmの粒子状物が生成しており、また粒子状物はフィルム面積100平方μmあたり平均で5個存在していることが確認された。
(2)上記(1)で得られたPVAフィルムを用い、PVAフィルムを染色浴に浸漬する時間を75秒間にしたことと、ホウ酸水溶液中での一軸延伸の倍率を5.5倍に変更したこと以外は実施例1と同様にして偏光フィルムを得た。
得られたPVAフィルムを実施例1と同様にして位相差顕微鏡で観察したところ、延伸方向を長軸とする細長い形状のクラックが発生していてその大きさ(長軸の長さ)は約11μmであり、またクラックはフィルム面積100平方μmあたり平均で4個存在していることが確認された。
この偏光フィルムの透過度は43.6%、偏光度は99.7%、色相は4.0であり、硝酸マグネシウムが未添加の場合に得られる偏光フィルム(比較例1)と比較して、b値が小さくて色相に優れていた。
(1)平均重合度2400、ケン化度99.95モル%のPVA100重量部と、硝酸マグネシウム無水物20重量部のPVA10%水溶液を60℃の金属ロール上で乾燥して、厚みが75μmのPVAフィルムを得た。さらに得られたフィルムを枠に固定して、140℃で3分間熱処理をした。熱処理後のPVAフィルムのフィルムの熱水切断温度は68.9℃、膨潤度は200%であった。
得られたPVAフィルムを実施例1と同様にして位相差顕微鏡で観察したところ、PVAフィルム中に平均粒径3μmの粒子状物が生成しており、また粒子状物はフィルム面積100平方μmあたり平均で10個存在していることが確認された。
(2)上記(1)で得られたPVAフィルムを用い、PVAフィルムを染色浴に浸漬する時間を60秒間にしたことと、ホウ酸水溶液中での一軸延伸の倍率を5.15倍に変更したこと以外は実施例1と同様にして偏光フィルムを得た。
得られたPVAフィルムを実施例1と同様にして位相差顕微鏡で観察したところ、延伸方向を長軸とする細長い形状のクラックが発生していてその大きさ(長軸の長さ)は約15μmであり、またクラックはフィルム面積100平方μmあたり平均で7個存在していることが確認された。
この偏光フィルムの透過度は43.6%、偏光度は99.65%、色相は3.8であり、硝酸マグネシウムが未添加の場合に得られる偏光フィルム(比較例1)と比較して、b値が小さくて色相に優れていた。
(1)平均重合度2400、ケン化度99.95モル%のPVA100重量部と、硝酸マグネシウム無水物20重量部と可塑剤としてグリセリン12重量部のPVA10%水溶液を60℃の金属ロール上で乾燥して、厚みが75μmのPVAフィルムを得た。さらに得られたフィルムを枠に固定して、140℃で3分間熱処理をした。熱処理後のPVAフィルムのフィルムの熱水切断温度は68.2℃、膨潤度は200%であった。
得られたPVAフィルムを実施例1と同様にして位相差顕微鏡で観察したところ、PVAフィルム中に平均粒径3μmの粒子状物が生成しており、また粒子状物はフィルム面積100平方μmあたり平均で10個存在していることが確認された。
(2)上記(1)で得られたPVAフィルムを用い、PVAフィルムを染色浴に浸漬する時間を45秒間にしたことと、ホウ酸水溶液の温度を55℃に変更したこと以外は実施例1と同様にして偏光フィルムを得た。
得られたPVAフィルムを実施例1と同様にして位相差顕微鏡で観察したところ、延伸方向を長軸とする細長い形状のクラックが発生していてその大きさ(長軸の長さ)は約16μmであり、またクラックはフィルム面積100平方μmあたり平均で4個存在していることが確認された。
この偏光フィルムの透過度は44.3%、偏光度は98.73%、色相は2.3であり、硝酸マグネシウムが未添加の場合に得られる偏光フィルム(比較例1)と比較して、b値が小さくて色相に優れていた。
(1)平均重合度2400、ケン化度99.95モル%のPVA100重量部と、可塑剤としてグリセリン12重量部のPVA10%水溶液を60℃の金属ロール上で乾燥して、厚みが75μmのPVAフィルムを得た。さらに得られたフィルムを枠に固定して、130℃で3分間熱処理をした。熱処理後のPVAフィルムの熱水切断温度は68.9℃、膨潤度は198%であった。
得られたPVAフィルムを位相差顕微鏡で観察したところ、フィルム中に粒子状物は生成していなかった。
(2)上記(1)で得られたPVAフィルムを用い、PVAフィルムを染色浴に浸漬する時間を3分間にしたことと、ホウ酸水溶液中での一軸延伸の倍率を5.3倍に変更したこと以外は実施例1と同様にして偏光フィルムを得た。
得られた偏光フィルムを位相差顕微鏡で観察したところ、クラックは発生していなかった。
この偏光フィルムの透過度は43.4%、偏光度は99.94%、色相は4.5であり、硝酸マグネシウムが添加されている場合に得られる偏光フィルム(実施例1〜4)と比較して、b値が大きくて色相に劣っていた。
本発明の偏光フィルムは色相が改善されており、特に高い色再現性が要求される液晶表示装置や液晶テレビの部品用の部材である偏光板の作製に有効に用いることができる。
Claims (2)
- クラックを含有している偏光フィルムであって、クラックが偏光フィルムの面積100平方μm当たり2〜15個存在することを特徴とする偏光フィルム。
- クラックの大きさが5〜25μmであることを特徴とする請求項1に記載の偏光フィルム。
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