JP4805117B2 - 偏光フィルムの製造方法 - Google Patents
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このようにして得られる偏光板には、因果関係は必ずしも明確ではないが、ポリビニルアルコール系フィルムの延伸時の張力むらに起因すると考えられる位相差むらが低減するという効果も認められ、偏光板の収率向上への寄与も期待できる。
しかして、本発明の製造方法により製造される偏光フィルムは、上記した優れた特性を活かして、電卓、腕時計、ノートパソコン、液晶モニター、液晶カラープロジェクター、液晶テレビ、車載用ナビゲーションシステム、携帯電話、屋内外で用いられる計測機器などの高い表示品質を求められる液晶表示装置の構成部品である偏光板の作製に有効に用いることができる。
本発明において用いられるポリビニルアルコール系フィルム(以下、「PVA系フィルム」と略記することがある)を構成するポリビニルアルコール系重合体(以下、「PVA系重合体」と略記することがある)は、例えば、ビニルエステルを重合して得られるポリビニルエステルをけん化することにより製造することができる。この他にPVA系重合体としては、PVAの主鎖に不飽和カルボン酸またはその誘導体、不飽和スルホン酸またはその誘導体、炭素数2〜30のα−オレフィンなどをグラフト共重合させた変性PVA系重合体、ビニルエステルと不飽和カルボン酸またはその誘導体、不飽和スルホン酸またはその誘導体、炭素数2〜30のα−オレフィンなどを共重合させた変性ポリビニルエステルをけん化することにより製造される変性PVA系重合体、未変性または変性PVA系重合体の水酸基の一部をホルマリン、ブチルアルデヒド、ベンズアルデヒドなどのアルデヒド類で架橋したいわゆるポリビニルアセタール樹脂などを挙げることができる。
変性PVA系重合体における変性量は15モル%未満であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましい。
本明細書におけるけん化度とは、けん化によりビニルアルコール単位に変換されうる単位の中で、実際にビニルアルコール単位にけん化されている単位の割合を示したものであって、JIS K 6726に記載の方法により測定したけん化度を意味する。
本明細書におけるPVA系重合体の重合度は、JIS K 6726に準じて測定される重合度をいい、PVA系重合体を再けん化し、精製した後に30℃の水中で測定した極限粘度から求められる。
また、硫酸エステル塩としては、ヘキシル硫酸ナトリウム、ヘプチル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、ノニル硫酸ナトリウム、デシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ヘキサデシル硫酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、エイコシル硫酸ナトリウム、あるいはこれらのカリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等の有機アミン塩等に代表されるアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンヘキシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンヘプチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオクチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンテトラデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオクタデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンエイコシルエーテル硫酸ナトリウム、あるいはこれらのカリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩等の有機アミン塩等に代表されるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、およびカプロン酸エタノールアミド硫酸ナトリウム、カプリル酸エタノールアミド硫酸ナトリウム、カプリン酸エタノールアミド硫酸ナトリウム、ラウリン酸エタノールアミド硫酸ナトリウム、パルミチン酸エタノールアミド硫酸ナトリウム、ステアリン酸エタノールアミド硫酸ナトリウム、オレイン酸エタノールアミド硫酸ナトリウムあるいはこれらのカリウム塩、更にはこれらエタノールアミドに変えてプロパノールアミド、ブタノールアミド等に代表される脂肪酸アルカノールアミド硫酸エステル塩などが挙げられる。
これらの界面活性剤は1種または2種以上を組合せて用いることができる。
PVA系フィルムは、ブロッキングの防止を目的として、フィルムの表面に、酸化硅素、二酸化チタン、クレー、ベントナイト、ステアリン酸またはその塩などのブロッキング防止剤を塗布してもよい。
PVA系フィルムの幅は、一般的には30cm〜5mであり、該PVA系フィルムから製造される偏光フィルムの用途などに応じて決めることができる。近年、液晶ディスプレイの大画面化が進行しており、その要求に合わせて、PVA系フィルムの幅を2m以上、好ましくは2.5m以上、特に3m以上にすると、本発明の効果が一層顕著に発現する。
フィルムの長さは、一般的には1000m〜10000mである。
染色は、PVA系フィルムをヨウ素―ヨウ化カリウムを含有する溶液(特に水溶液)中に浸漬させることにより行うことが一般的であり、本発明においてもヨウ素およびヨウ化カリウムを含有する水溶液を用いる染色方法が好適に採用される。染色用水溶液におけるヨウ素の濃度を0.05〜2.0g/l、ヨウ素/ヨウ化カリウムの重量比を20〜100の範囲にすることが好ましい。また、染色浴の温度は20〜50℃、特に25〜40℃とすることが好ましい。染色浴には、ホウ酸などの架橋剤が含有されていてもよい。
場合によっては、染色浴を用いずに、ヨウ素、ヨウ化カリウムをPVA系フィルムを製造するための原液中に混ぜて製膜してもよく、その際の処理条件や処理方法は特に制限されない。また、ホウ酸、硼砂などのホウ素化合物を架橋剤として添加して製膜を行ってもよい。
界面活性剤としては、アルキルエーテル系非イオン性界面活性剤、またはアルキルエーテル硫酸塩のアニオン系界面活性剤が好適に用いられる。アルキルエーテル系非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどに代表されるアルキルエーテル類、ラウリルアミノエーテル、ステアリルアミノエーテル、オレイルアミノエーテルなどに代表されるアルキルアミノエーテル類、およびポリオキシエチレンラウリン酸アミド、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド、ポリオキシエチレンオレイン酸アミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミドなどに代表されるアルキルアミドエーテル類が挙げられる。また、アルキルエーテル硫酸塩としてはポリオキシエチレンヘキシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンヘプチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオクチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンテトラデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオクタデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンエイコシルエーテル硫酸ナトリウム、あるいはこれらのカリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩等の有機アミン塩等に代表されるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩が挙げられる。
延伸温度は、特に限定されないが、PVA系フィルムを温水中で湿式延伸する場合は30〜90℃が好ましく、乾熱延伸する場合は50〜180℃が好ましい。
また、一軸延伸の延伸倍率(多段で一軸延伸する場合には合計の延伸倍率)は、得られる偏光フィルムの偏光性能の点から4倍以上、特に5倍以上であることが好ましい。延伸倍率の上限は特に制限されないが、均一延伸の観点から8倍以下であることが好ましい。
PVA系フィルムに対して施される膨潤処理、一軸延伸、ヨウ素による染色、ホウ素化合物による処理等の操作は、必要に応じて、二回以上繰り返して行ってもよい。
このようにして得られた偏光フィルムを次いで乾燥処理する。乾燥処理の温度は40〜80が好ましく、乾燥処理の時間は1〜30分が好ましい。
なお、本明細書において接触角とは静止接触角を意味する。接触角の測定は、接触角計(協和界面科学株式会社製、固液界面解析装置(型番:Drop Master 500)を用いて20℃、65%RHの条件で体積4μlのPVA水溶液(PVA117((株)クラレ製)、4質量%)の水滴を針先に作り、これを偏光フィルムに接触させてフィルムの表面に液滴を作製し、このとき生じる液滴とフィルム界面との角度を静止接触角とした。
なお、以下の実施例および比較例において、「部」、「%」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
粘度平均重合度2400、ケン化度99.9モル%のPVA系樹脂100質量部、グリセリン12質量部、ラウリン酸ジエタノールアミド0.1質量部および水191質量部を押出機に供給し、融解して製膜原液[揮発分率(水分率)63質量%]を調製し、その製膜原液をT型ダイからドラム型ロール(ロール表面温度93℃)上に吐出した後、PVA膜の水分率が27質量%となった時点で剥離し、さらに金属ロール上で乾燥し、その際にトータルの製膜速度比(巻取り速度/最上流のドラム型ロールの周速度)を1.07にして、幅3.0m、厚さ75μm、含水率4質量%のPVA系フィルムを連続的に製造すると共に、ワインダーにてアルミ管にロール状に連続的に巻き取って、全長4000m(巻き取り長さ4000m)のPVA系フィルムを得た。なお、得られたPVA系フィルムのレタデーション値は23nmであった。
○:0〜1個
△:2〜3個
×:4個以上
その異物付着性の評価の結果、異物数は1個/m2であり、判定は○であった。
○:位相差むらが全く確認できないもの
△:スジ状の位相差むらがわずかに認められるもの
×:スジ状の位相差むらが明らかに認められるもの
その位相差むらの評価の結果、位相差むらはなく、判定は○であった。
実施例1において、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテルの代わりにポリオキシエチレン2級アルキル(C12−14)エーテルを用いた以外は実施例1と同様にして偏光フィルムを製造し、さらに得られた偏光フィルムを用いて、実施例1と同様にして偏光板を製造した。
偏光フィルムのPVA水溶液による接触角は、45.2度であった。また、4000mのロール状PVA系フィルムを一軸延伸して偏光フィルムを製造する間で、PVA系フィルムの延伸による切断は0回であった。
得られた偏光板について異物付着性を評価した結果、異物数は0個/m2であり、判定は○であった。また、偏光板の位相差むらを評価した結果、位相差むらはなく、判定は○であった。
実施例1において、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテルの代わりにポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムを用いた以外は実施例1と同様にして偏光フィルムを製造し、さらに得られた偏光フィルムを用いて、実施例1と同様にして偏光板を製造した。
偏光フィルムのPVA水溶液による接触角は、48.1度であった。また、4000mのロール状PVA系フィルムを一軸延伸して偏光フィルムを製造する間で、PVA系フィルムの延伸による切断は0回であった。
得られた偏光板について異物付着性を評価した結果、異物数は1個/m2であり、判定は○であった。また、偏光板の位相差むらを評価した結果、位相差むらはなく、判定は○であった。
実施例1において、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテルを添加しなかった以外は実施例1と同様にして偏光フィルムを製造し、さらに得られた偏光フィルムを用いて、実施例1と同様にして偏光板を製造した。
偏光フィルムのPVA水溶液による接触角は、52.5度であった。また、4000mのロール状PVA系フィルムを一軸延伸して偏光フィルムを製造する間で、PVA系フィルムは延伸による切断は3回発生した。
得られた偏光板について異物付着性を評価した結果、異物数は5個/m2であり、判定は×であった。また、偏光板の位相差むらを評価した結果、位相差むらが確認され、判定は×であった。
実施例1で得られたPVA系フィルムを0.2m/分で巻き出しながら、水洗槽(30℃)で水洗および膨潤させた後、ヨウ素染色液に対してドデシル硫酸ナトリウムの濃度が5ppmとなるように調製したヨウ素染色槽(30℃、ヨウ素濃度0.1g/l、ヨウ化カリウム濃度4g/l)に浸漬し、2倍に一軸延伸した。続いて、ホウ素化合物処理槽(50℃、ヨウ化カリウム濃度40g/l、ホウ酸濃度40g/l)に浸漬し、2.5倍に一軸延伸をしつつ固定化処理を行い、トータルで5.0倍に一軸延伸した後、純水で洗浄し、乾燥機にて50℃に乾燥して偏光フィルムを得た。偏光フィルムのPVA水溶液による接触角は、54.1度であった。
4000mのロール状PVA系フィルムを一軸延伸して偏光フィルムを製造する間で、PVA系フィルムの延伸による切断は3回発生した。
得られた偏光板について異物付着性を評価した結果、異物数は3個/m2であり、判定は△であった。また、偏光板の位相差むらを評価した結果、スジ状の位相差むらがわずかに認められ、判定は△であった。
本発明の製造方法により製造される偏光フィルムは、高い表示品質が要求される液晶表示装置の構成部品である偏光板の作製に有効に用いることができる。
Claims (5)
- レタデーション値が10〜50nmであるポリビニルアルコール系フィルムに、膨潤処理、ヨウ素による染色、ホウ素化合物による処理および洗浄処理をこの順番で施し、かつ一軸延伸をホウ素化合物による処理と同時にまたはそれ以前の処理工程で行うとともに、洗浄処理においてホウ素化合物による処理が施されたポリビニルアルコール系フィルムを洗浄することにより偏光フィルムを製造するに際して、ホウ素化合物による処理に用いる処理液に界面活性剤を当該処理液に対して1〜40ppmとなる量で添加することを特徴とする偏光フィルムの製造方法。
- 界面活性剤がアルキルエーテル系非イオン性界面活性剤およびアルキルエーテル硫酸塩のアニオン系界面活性剤から選ばれる少なくとも一種の界面活性剤である請求項1に記載の偏光フィルムの製造方法。
- ヨウ素による染色において、ヨウ素染色槽に界面活性剤を添加しない、請求項1または2に記載の偏光フィルムの製造方法。
- ポリビニルアルコール系フィルムが脂肪酸アルカノールアミド系の非イオン界面活性剤および硫酸エステル塩型アニオン系界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤を含む製膜原液を製膜することにより製造されたものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の偏光フィルムの製造方法。
- 偏光フィルムの表面の4質量%ポリビニルアルコール系水溶液における接触角が40〜50度の範囲である請求項1〜4のいずれか1項に記載の偏光フィルムの製造方法。
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