JP5466361B2 - 晶析方法及び晶析装置 - Google Patents

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Description

本発明は、化合物が溶解している溶液から結晶を製造する晶析技術に関する。
従来、溶液から固体結晶を得るには、液温を低下させる(冷却晶析法)、加圧する(加圧晶析法)、溶媒を蒸発させて溶質濃度を上げる(蒸発晶析法)、あるいは、化学反応を用いて溶解度の高い原料から溶解度の低い生成物に変化させて結晶を作成する(反応晶析法)がある。いずれも溶解度を超えた分の物質が析出するメカニズムである。
一方、マイクロバブル(約1〜数百 ミクロン程度の気泡)等の微小気泡は、通常サイズの気泡(数mm〜数cm )と異なり、液中で非常にはやく溶解して体積を減少させ、収縮が生じることが知られている。こうした研究は超音波によるキャビテーション(例えば松本洋一郎氏、竹村文男氏ら)によってなされている。また、産業総合研究所の高橋正好氏はマイクロバブルが収縮した後、ナノサイズの「気泡」として存在すると報告している。
結晶の晶析方法として従来法には主に2つの問題がある。
ひとつの問題は、すべての晶析では溶液中の溶質の濃度が溶解度を超えていることが必要になる点である。すなわち、溶解度以下の溶質は析出せず、溶媒中に溶けたまま維持されてしまい、結晶とはならない。希薄な溶液では晶析は生じないとされている。
他の問題は、結晶のサイズと個数のコントロ一ルが難しい点である。結晶ができるメカニズムは2段階で「核発生」と「結晶成長」があり、多数の結晶を得るには多数の核が最初に発生することが必要である。一方、大きな結晶を得るには長い結晶成長時間が必要であり、成長した結晶の大きさを揃えることは、核の大きさの影響を受けるので、核の大きさを揃えることは大切である。しかし、これらを制御することは非常に困難である。
本発明は、溶質の濃度が溶解度以下の希薄な溶液でも、結晶を晶析させる技術を提示するものである。
本発明者は液中で溶解しつつ収縮する気泡を用いて、その表面に溶質を吸着させ、収縮によって界面積を減少させることにより溶質の凝集密度を上げ、局所的に溶解度を超えさせて結晶化させることに成功した。これによって溶液全体の溶質の濃度が、平均としては溶解度を超えていなくても、気泡表面で溶解度を超えていれば溶質が析出し、結晶を生じさせることができる発明を完成した。また、気泡1個から結晶1個ができるため、核発生を気泡の個数で制御できるので、結晶の目標個数や目標の大きさをコントロールすることが可能となる。
本発明の主な構成は次のとおりである。
(1)溶液中に溶解している溶質である化合物を析出させて晶析させる方法であって、液中の溶質の濃度が、溶解度以下である溶液中に溶質と反応しない物質からなる気泡を導入し、気泡を形成する気体が溶液中に溶解して気泡が収縮する過程において、気泡表面に前記化合物を凝集させて析出させ、密度を高めて結晶化させることを特徴とする晶析方法。
(2)気泡は、化合物が気泡表面で凝集を維持できる程度の浮遊状態に維持される状態であって、気泡表面に凝集した化合物が析出して密度を高めて結晶化するに十分な時間溶液中に存在することを特徴とする(1)記載の晶析方法。
(3)溶液は、粘性を高める物質が添加されていることを特徴とする(1)又は(2)記載の晶析方法。
(4)溶液中の溶質は電解質あるいは溶媒に対して非親和性を示す基をもつ物質であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の晶析方法。
(5)気泡を形成する気体は溶質と反応しない物質であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の晶析方法。
(6) 溶液中の溶質の濃度が溶解度以下である溶質化合物を析出させて晶析させる晶析装置であって、
溶液槽と溶液槽下部に気泡発生装置を配置し、溶質と反応しない物質からなる気泡を溶液中に供給し、気泡を形成する気体が溶液中に溶解して気泡が収縮する過程において、気泡表面に化合物を凝集させて密度を高めて結晶を製造する晶析装置であって、
気泡発生装置が多数のガス放出スリットを備えたサブミリメートル以下のマイクロバブルを発生させる装置であり、溶液槽は、強制攪拌することなく静置状態においてマイクロバブルが収縮するに十分な深さを備えていることを特徴とする晶析装置。
(7)(6)に記載された晶析装置である微小結晶製造装置と結晶成長器である晶析槽を配置した結晶製造器であって、微小結晶装置によって生成された微小結晶を種晶として晶析槽に投入して成長させた結晶を製造する装置。
本発明では、溶質の濃度が溶解度以下の希薄な溶液でも、結晶を晶析させることができる。
本発明の晶析方法は、気泡の周りに溶質が吸着し、さらに吸着面積が狭くなることで、局所的に溶質の濃度を溶解度以上にすることにより微細結晶(結晶核)を生成させるものである。微細結晶の大きさは、気泡の大きさに依拠するので、気泡の大きさを揃えることにより、得られる微細結晶の大きさも揃えることができる。微細結晶は、種晶として必要個数の結晶核に利用し、従来の工業的な晶析プ口セスに適用して必要サイズまで結晶を成長させることが可能であり、種晶の大きさが揃っているので、大きさの揃った結晶を得ることができる。
また、微細結晶そのものを活用する技術にも適用することができる。粒度分布が狭く揃った微粉末は、各種の添加剤、顔料、医薬などの粉末、塗料用添加剤などに利用することができる。
[発明の概要]
<気泡晶析プロセスの開発>
微小気泡が液中で収縮することは知られていたが、それを利用して結晶をつくることは知られていない。
本発明者は、液中の微小気泡の性質及びその活用に関する研究開発を継続している。顕微鏡を用いたNaClなどを溶解した溶液中の微小気泡の観察過程において、気泡が消滅した後に小さなごみのような物体が見出された。この物体は溶液中に溶けている物質が析出したものと想定し、積極的に研究開発を続け本発明に至った。
まず、気泡を液中に置く。このとき気泡が高速で動いたり上昇したりすると、気泡消滅後に微小固形物は観察されない。これは、表面に吸着した分子がはがれるので、たとえ収縮がおこっても集合分子数が不足するため結晶が生じないことによる。そこで、気泡表面に吸着した分子がはがれないような環境に置くことが重要である。気泡が液中で静止状態に維持することが重要である。しかし気泡は浮力により上昇するため、それを抑制するためには浮力の小さい微小気泡が最適である。さらに、液中にわずかに降伏応力を持たせれば、浮力が小さい微小気泡のみを選択的に静止させることができる。そこで本発明では液中にアガロースゲル等の粘性付与剤を微量添加した。添加物は、気泡の浮力上昇を抑制する目的が果たせれば何でもよい。
晶析試験としては図6のように顕微鏡下でゲル溶液中に塩化ナトリウム(NaCl)を溶解させておいて水溶液中にシリンジを用いて気泡を1個置き、収縮状況を観察した。気泡は溶解をはじめついには消滅する。そのとき消滅した位置にほぼ確実に1個の結晶が観察された。ここで、析出した結晶がNaClであることは、溶液中に結晶を作り得る成分がNaClしかないことを考慮すれば、明らかである。
<気泡の収縮・内圧上昇・溶解>
本発明で利用できる気泡の大きさは、サブミリメートル以下の微小な気泡である。一般的にマイクロバブルと称するマイクロメートルサイズの大きさの微小気泡が扱いやすい。
微小気泡は直径が小さく液中での上昇速度が遅いため、液中での滞在時間が長いという特徴がある。一方、図1に示すように微小気泡内と液との間にはYoung−Laplaceの式に従う圧力差ΔPが生じる。この圧力差ΔPは気液間の界面張力σに比例し、微小気泡直径dに反比例する。気泡の直径が1mm程度では気泡内の圧力差はわずかであるが、1μmになると約3atmと大きくなる(表1参照)。

式1 Young−Laplace の式 ΔP=4σ/d
図2に示したように、気泡内圧Pが高くなるとHenryの法則に従って、気液界面での気体濃度Cが高くなる。すると、液バルク濃度Cと界面濃度との差C−Cが大きくなり、気体の溶解速度Nはより速くなる。すると、さらに気泡径dは収縮し、内圧Pは上昇し、界面濃度Cが高くなり、溶解速度Nが加速する。以上のサイクルを繰り返すので気泡は加速度的に収縮していく。この現象は自己加圧効果と呼ばれている。

式2 溶解速度 N=Ka(C−C)

式3 Henryの法則 C=P/H
<静止した単一マイクロバブルの収縮状況>
初期気泡径220μmの空気の気泡を発生させて観察した結果、徐々に収縮し7分34秒後に消滅した。収縮状況を図3に示す。なお、本例では、気泡の収縮状況を示すために、NaClは含まれていない。
[飽和濃度以下の溶液による結晶成長]
顕微鏡観察によって、微小気泡の収縮と同時に、表面に固相が徐々に析出していることが確認できた。これら全てが固体結晶になったのちは長時間(観察時間)安定に存在することが確認できた。溶質として用いたNaClの濃度が、溶解度より極めて小さい1%以下の希薄溶液であっても、本発明の収縮晶析法では析出が生じた。この希薄溶液では従来の晶析方法では結晶が析出することはない。
[微小気泡収縮晶析メカニズム]
<電気的吸着メカニズム>
図4にその晶析メカニズムを示す。静止液中におかれた微小気泡の表面は一般的な条件下では負に帯電している。液中に正に帯電した陽イオンまたは分子・微粒子が存在すると電気的吸着により微小気泡表面を覆う。そのため微小気泡内のガス分子の溶解速度は低下するが、さらに収縮が進むと表面吸着物は非常に狭い空間に押し詰められることになる。その狭い空間内での吸着物濃度が溶解度を超えると溶解していることができなくなって固体結晶として析出すると考えられる。
したがって、本発明の晶析法によって得られる結晶のひとつは、電解質化合物である。
さらに、適度なタイミングで微小気泡の収縮を止めると、中空殻状の固体微粒子を製造することも可能である。この中空殻は、気泡が消滅する前に気泡表面全体を覆うように硬い殻を形成することにより、殻が崩壊することなく存在すると考えられる。また、他の現象として、析出物質が気泡表面を密閉して覆うことにより、気体が液中に分散できなくなることによると考えられる。
<溶媒非親和性基吸着メカニズム>
例えば、水溶液中において疎水基をもつ化合物は、液中の気泡に吸着して凝集するので、疎水基をもつ化合物についても、上記した電気的吸着と同様のメカニズムにより固体結晶を析出させることが可能である。
溶媒として水以外にアルコール類や油類等の液体を使用した場合は、溶媒に対して非親和性を示す基を有する溶質は、水溶液の場合と同様に晶析対象となり得る。
[気泡の大きさ、気体の種類]
気泡生成気体の種類は問わない。窒素、酸素、水素、ヘリウム、二酸化炭素など汎用されている気体を使用することができる。この気体は混合して用いることもできる。また、溶質と反応して反応成分が気泡表面に析出する気体も使用することができる。例えば、反応の組み合わせを、カルシウムイオンと二酸化炭素とすることによって、炭酸カルシウム結晶を得ることができる。
気体の種類と溶液濃度に応じて、気泡の収縮挙動が変化するので、目標とする結晶の大きさや構造に応じて、気体の種類、気泡の大きさ及び溶解濃度などを設計する。
気泡の大きさは問わないが、液中に穏やかな状態で留まっている状態が保たれる大きさが必要である。穏やかに留まる程度とは、気泡表面に凝集し析出した物質が気泡表面から剥がれ落ちない程度に制御されることである。このような環境は、気泡の大きさの他、溶液の粘性にも影響される。気泡の大きさは、例えば、0.5mm〜マイクロバブルの大きさまで利用可能である。数百〜数十マイクロメートルの気泡を一般的にマイクロバブルと云うことがある。
晶析により得られる微細結晶の大きさは、溶質が気泡の表面に凝集して析出できる量に応じて決まるので、一義的には気泡の大きさに依拠する。気泡の収縮スピードを遅くすると凝集量が多くなることもあるので、気泡の収縮スピードをコントロールすることによって結晶の大きさを調整することもできる。微小気泡等の気泡1個から種晶1個が生成し、微小気泡の初期表面積は限界吸着物量(種晶質量)に関係するので、微小気泡導入時に気泡の大きさや個数をコントロールすることで種晶のサイズや個数の制御が可能となる。
<結晶について>
晶析物質は、電解質物質、疎水基を有する物質など気泡に吸着する性質の化合物が適用できる。溶媒中に溶解した際に、陽イオンと陰イオンに電離する物質であればどのような化合物でも利用することができる。例えば、ナトリウムイオン (Na+)、カリウムイオン (K+)、カルシウムイオン (Ca2+)、マグネシウムイオン (Mg2+)、銅イオンなど塩の形で存在し生成する物質を用いることができる。
溶媒として水を用いた場合は、疎水性を示す物質も気泡に凝集し、吸着するので、疎水基を有する物質も晶析の対象とすることができる。溶媒に疎水性を示し、気体に対して親和性を示す組み合わせであれば、晶析対象とすることができる。
晶析して得られる結晶の形状は、中実結晶あるいは中空結晶を得ることができる。中実結晶は、気泡を構成する気体が液中に完全に溶解して消滅し、気泡の周りに析出した物質が結晶化して得られる。中空結晶は、気泡が収縮する過程において、気泡の周面に殻を形成するように析出して結晶化し、殻体が気体と溶液の接触を遮断するほど密集するケースや遮断するほどではないが、殻体が強固で中空殻状となることが想定される。
<溶媒>
溶媒は、特に限定はないが、経済性及び後処理の観点から水が一般的である。水以外にアルコール類、油類等の液体物質が挙げられる。
気泡が溶液中で穏やかに存在することが重要であって、かき回す等して気泡を激しく動かすことは適当ではない。特に、浮力による上昇運動を緩やかにするために、溶液の粘度を上げることが好ましい。
粘度上昇剤としてゲル化剤を用いることができる。例えば、アガロース、ゼラチン、ペクチン、カラギーナン、ジェラン、増粘多糖類などである。
<晶析装置>
溶液槽とこの溶液槽の下部に設ける気泡発生装置が基本構成である。基本的には、気泡がゆっくりと上昇しながら収縮する過程において、溶質が析出して結晶化できる程度の深さが必要となる。
溶液槽は、気泡が収縮時間を確保するために、十分な深さが必要である。
気泡発生装置は、静かに気泡を放出することと、気泡の大きさを揃えて発生させることが重要である。マイクロバブルは、微小であって、浮力が小さく溶液中に穏やかに浮遊させることができるので扱いやすい。
本発明の気泡収縮晶析法では、マイクロバブル等の気泡1個から種晶1個が生成し、マイクロバブルの初期表面積は限界吸着物量(種晶質量)に関係するので、マイクロバブル導入時の気泡の大きさや個数をコントロールすることで、種晶のサイズや個数の制御が可能となる。
<用途>
本発明で得られる結晶は、マイクロメートルサイズが中心であるので、微小粉末状の結晶が得られる。微粉として使用する用途、特に、サイズ分布が小さい粉体の利用に適している。各種の顔料、添加粉末剤、化粧品材料添加剤、医薬などが想定される。
また、結晶を成長させる種晶としても適している。結晶成長用の核物質として、大きさが揃っており、成長させて得られる結晶の大きさや数のコントロールも容易となる。
[マイクロバブル消滅に伴う晶析確認試験]
図5にプレパラート上での単一マイクロバブルの溶解・収縮による単結晶生成の観察実験装置を示す。図6にスライドガラス上でマイクロバブルを静止させるためにアガロースゲルを添加したNaCl水溶液(塩化ナトリウム水溶液)を1滴おき、滴内にマイクロシリンジとバイブレータを用いてマイクロバブルを1個置設けた操作の様子を示す。その後、その溶解・収縮の様子をデジタルマイクロスコープで観察・撮影した。
<実験条件>
気相:乾燥酸素,乾燥窒素、酸素−窒素混合(50:50)
液相:0.2wt%アガロースゲル水溶液(26℃)
液物性
酸素の拡散係数: D=1.1×10−9/s
窒素の拡散係数: D =0.98×10−9/s
界面張力 : σ = 62.3 mN/m
粘度 : わずかに非ニュートン性
<乾燥酸素による析出結果>
酸素を用いて、繰り返し行った実験によって、それぞれ固形物が気泡消滅後に生成していることが観察された。その状態を図7に示す。
<乾燥窒素による析出結果>
窒素を用いて、繰り返し行った実験によって、それぞれ固形物が気泡消滅後に生成していることが酸素と同様に観察された。その状態を図8に示す。
<濃度と気泡収縮について>
(酸素気泡の例)
NaCl濃度を0wt%、0.1wt%、1.0wt%と変えて、酸素気泡の収縮挙動を観察した。結果を図9に示す。低濃度ほど収縮スピードが速く、高濃度ほど酸素気泡は、収縮が遅い。1.0wt%では収縮が停滞し100分以上200μm程度の径を保っており、中空状態の結晶となっていると想定される。
(窒素気泡の例)
酸素と同様に窒素気泡について、NaCl濃度を0wt%、0.1wt%、1.0wt%と変えて、気泡の収縮挙動を観察した。結果を図10に示す。低濃度ほど収縮スピードが速く、高濃度ほど収縮が遅いことは酸素気泡と同様である。しかし、1.0wt%高濃度でも窒素気泡では8分程度で収縮して消滅した。
(酸素−窒素混合ガス気泡の例)
NaCl濃度を0wt%、0.1wt%、と変えて、酸素−窒素混合ガス(混合比50:50)気泡の収縮挙動を観察した。結果を図11に示す。酸素−窒素混合ガスについても、低濃度ほど収縮スピードが速く、高濃度ほど気泡収縮が遅い傾向は同様である。1.0wt%濃度では、窒素よりも収縮が早く、酸素より遅い結果であったが、約230秒後に消滅した。
(試験結果1−気泡収縮について−)
図9、図10,図11に示された静止液中の気泡の収縮経過によると、NaCl濃度が高いほど気泡の収縮速度が遅くなった。これはマイクロバブルと溶液との界面を気体分子が通過するときの抵抗が大きくなっていることを表している。さらに酸素ガスではNaCl濃度を増加した場合にはついに収縮の停止が観察された。これは、殻が形成され、中空結晶が生じている状態を示している。
溶液濃度に応じて、気泡収縮速度が変化し、高濃度では遅くなり、収縮が停止することも解る。そして、気泡の収縮は、溶液濃度の影響を受けるので、必要な時間、気泡を溶液中に停滞させるように溶液粘度や深さなどを調整する必要が生ずる。
(試験結果2−気体の種類について−)
気泡径dの収縮速度は気体の種類によらず、時間とともに増加した。酸素よりも窒素気泡の方がより大きな収縮速度が観察された(図12参照)。
アガロースゲル中では、酸素の拡散係数(D=1.1×10−9/s)が、窒素の拡散係数(D =0.98×10−9/s)より大きいにも関わらず、この実験結果では、窒素に比べて酸素の溶解が遅いことから、酸素の微小気泡表面で析出物により大きな拡散阻害が生じていると推察される。
また、これら図9〜11から気泡を構成する気体の種類や混合によって、気泡の収縮をコントロールできることが解る。
<晶析状況観察>
図13に窒素を用いた微小気泡の収縮過程を示す。これは図10に示したNaCl 1.0wt%の条件に相当する。図13−Aは、気泡収縮と晶析過程を示す。(c)の時点で析出の開始が認められ、微小気泡の収縮に伴い気泡を析出物質が覆っていく様子が観察された。(f)の時点でほぼ気泡が消滅した。(f)の時点から更に13分間観察を続けたが、結晶は変化が無く、再溶解することなく20μm程度に結晶化して安定した状態となっていることが確認された。図13−A(c)の状態のスナップ写真を図13−Bに示す。
この結果、微小気泡の収縮と同時に、表面に結晶が徐々に析出し、全てが固体結晶になったのちは長時間安定に存在することとなる。液相中のNaCl濃度は飽和濃度より極めて小さい1.0wt%であるので、通常の晶析では結晶が析出することはないが、微小気泡を利用した本発明である微小気泡収縮晶析法では希薄溶液でも析出させることができる。
晶析装置の例を図14に示す。本実施例の晶析装置は、十分な高さを備えた溶液槽とこの溶液槽の下部に設けた気泡発生装置及び気泡発生装置に気体を供給する装置から構成される。
本実施例ではマイクロバブルを発生させ、マイクロバブルがゆっくり上昇する間に気泡が収縮し、溶質が気泡表面に析出して、気泡が消滅した後に微小結晶が残ることとなる。
晶析装置の他の例を図15に示す。本実施例の晶析装置は、十分な高さを備えた溶液槽とこの溶液槽の下部に設けた気泡発生装置及び気泡発生装置に気体を供給する装置から構成される。
本実施例ではマイクロバブルを発生させ、マイクロバブルがゆっくり上昇する間に気泡が収縮し、溶質が気泡表面に析出して気泡が完全には消滅せずに中空となった状態の微小結晶が得られることとなる。このような中空結晶の例は、図4に示すNaCl1.0wt%−酸素気泡の例や、Ca溶液と二酸化炭素気泡の例が挙げられる。後者の例では、カルシウムが溶解した溶液中に気体として二酸化炭素を用い、マイクロバブルを放出することにより、二酸化炭素が溶解しカルシウムイオンと反応して炭酸カルシウムが気泡表面に析出し、気泡全体を殻状に覆い、硬い殻体状に結晶化して気相の溶解が停止して中空微小結晶が得られる。
結晶製造装置の例を図16に示す。微小結晶の製造機構は実施例1又は2と同様の機構である。この晶析した微細結晶を種晶として、結晶成長器の晶析槽に投入し、結晶を成長させる。図16の結晶製造装置は、模式的に表したものである。実際は結晶成長器は種晶製造器よりも格段に大きな容積であるので、種晶を含む希薄溶液をそのまま晶析槽に投入しても溶液濃度にはほとんど影響せず、結晶の成長には差し支えない。
本実施例のマイクロバブル収縮晶析法では、マイクロバブル1個から種晶1個が生成し、マイクロバブルの初期表面積は限界吸着物量(種晶質量)に関係するので、マイクロバブル導入時に気泡の大きさや個数をコントロールすることで、種晶のサイズや個数を制御できる。この大きさの揃った特定の数量の微小結晶を種晶として、結晶を成長させる晶析槽に投入することにより、目的とする大きさと個数の結晶を容易に製造することができる。
微小気泡発生装置の例
気泡発生は静かに行うことが重要であり、本発明者は図17に示す静置型で気泡発生をコントロールできる微小気泡発生装置を提案する。
複数のガス放出スリット7を形成する溝4を設けた中間枠体3を使用したガス分散器1を使用した例である。このように多数のスリット板を積層し、後面板体6と前面板体2を前後に合わせて、金具でとめ、両端面を閉じ、前板体2に形成した入気孔21から気体を供給すれば静かに気体を放出し気泡を発生させることができる。この例では、溝巾を小さくすれば小さな気泡を発生させることができる。気泡の大きさは溝の巾に規定され長さの影響は少ない。このような装置により孔数も積層枚数を変更するだけで自由に変えることができる
微小気泡内と液との間に圧力差ΔPが生じる模式図 微小気泡内の気体の溶解速度論を示す模式図 静止した単一マイクロバブルの収縮状況 微小気泡収縮晶析メカニズム マイクロバブルの溶解・収縮による単結晶生成の観察実験装置 マイクロバブル発生操作 酸素気泡による析出結果 窒素気泡による析出結果 酸素気泡の収縮状態を示すグラフ 窒素気泡の収縮状態を示すグラフ 酸素と窒素の混合ガス気泡の収縮状態を示すグラフ 酸素気泡と窒素気泡の収縮状態を示すグラフ 窒素を用いた微小気泡の収縮及び晶析過程 結晶が晶析し始めた状態のスナップ写真 晶析装置の例 晶析装置の他の例 結晶製造装置の例 微小気泡発生装置の例

Claims (7)

  1. 溶液中に溶解している溶質である化合物を析出させて晶析させる方法であって、
    溶液中の溶質の濃度が、溶解度以下である溶液中に溶質と反応しない物質からなる気泡を導入し、気泡を形成する気体が溶液中に溶解して気泡が収縮する過程において、気泡表面に前記化合物を凝集させて析出させ、密度を高めて結晶化させることを特徴とする晶析方法。
  2. 気泡は、化合物が気泡表面で凝集を維持できる程度の浮遊状態に維持される状態であって、気泡表面に凝集した化合物が析出して密度を高めて結晶化するに十分な時間溶液中に存在することを特徴とする請求項1記載の晶析方法。
  3. 溶液は、粘性を高める物質が添加されていることを特徴とする請求項1又は2記載の晶析方法。
  4. 溶液中の溶質は電解質あるいは溶媒に対して非親和性を示す基をもつ物質であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の晶析方法。
  5. 気泡を形成する気体は溶質と反応しない物質であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の晶析方法。
  6. 溶液中の溶質の濃度が溶解度以下である溶質化合物を析出させて晶析させる晶析装置であって、
    溶液槽と溶液槽下部に気泡発生装置を配置し、溶質と反応しない物質からなる気泡を溶液中に供給し、気泡を形成する気体が溶液中に溶解して気泡が収縮する過程において、気泡表面に化合物を凝集させて密度を高めて結晶を製造する晶析装置であって、
    気泡発生装置が多数のガス放出スリットを備えたサブミリメートル以下のマイクロバブルを発生させる装置であり、溶液槽は、強制攪拌することなく静置状態においてマイクロバブルが収縮するに十分な深さを備えていることを特徴とする晶析装置。
  7. 請求項6に記載された晶析装置である微小結晶製造装置と結晶成長器である晶析槽を配置した結晶製造器であって、微小結晶装置によって生成された微小結晶を種晶として晶析槽に投入して成長させた結晶を製造する装置。
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