JP4472835B2 - エンジンの点火時期制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、モトクロスレーサーなどにおけるエンジンの点火時期制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のモトクロスレーサーにおけるエンジンの点火時期制御装置には、例えばスロットル開度、エンジン回転数、エンジン回転加速度、車両スタートからの経過時間、およびトランスミッションのギヤポジションの各項目をパラメータとし、これらの各パラメータがそれぞれ指定した条件を全て満たすとき、エンジンの点火時期を遅延させて、周回コース外からスタートするときのタイヤのグリップ性を向上させるようにしたものがある。前記各パラメータは、例えば以下のように条件が設定される。
▲1▼ スロットル開度≧1/2
▲2▼ エンジン回転数<5000rpm
▲3▼ エンジン回転加速度(回転数の時間に対する上昇率)が2000rpm /sec 〜8000rpm /sec の範囲内
▲4▼ エンジンスタート後の経過時間<2sec
▲5▼ ギヤポジション≦3速
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記構成のエンジンの点火時期制御装置では、モトクロスレーサーが周回コース内で再スタートするときにも、上述した各パラメータが前記条件を満たすときエンジンの点火時期を遅らせるので、再スタート時のパワーフィーリングやコーナリングが十分でなくなる。
【0004】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたもので、エンジンの点火時期をスタート時には遅らせ、それ以外の時には遅らせないようにできるエンジンの点火時期制御装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の第1構成に係るエンジンの点火時期制御装置は、自動二輪車のハンドルのスロットルグリップ近傍に設置され、エンジンスタート後に手動操作可能なスタートスイッチと、車両のスタート走行状態を検出するスタート走行検出手段と、エンジンスタート後に前記スタートスイッチが操作され、かつ前記スタート走行検出手段によりスタート走行状態が検出されたときエンジンの点火時期を遅延させる点火時期制御手段とを備えている。
【0006】
前記エンジンの点火時期制御装置によれば、例えばモトクロスレーサーに用いた場合に、周回コース外からのスタート時にスタートスイッチを手動で操作し、かつ車両のスロットル開度やギヤポジションなどが所定のスタート走行状態となったことをスタート走行検出手段が検出した時点で、点火時期制御手段がエンジンの点火時期を遅延させるので、スタート時のタイヤのグリップ性が向上する。また、モトクロスレーサーを周回コース内で再スタートさせる場合、手動でスタートスイッチを操作しない限り、点火時期制御手段はエンジンの点火時期を遅延させないので、再スタート時のパワーフィーリングやコーナリングが良くなり、ラップタイムが良くなる。ここで、スタート時とは、停止状態から走行を開始するときをいい、走行中に一旦停止したのち再度走行を開始する場合を含まない。
【0007】
また、本発明の第2構成に係るエンジンの点火時期制御装置は、走行を一旦停止した後の再スタート状態を除いて、車両のスタート時を検知するスタート検知手段と、車両のスタート走行状態を検出するスタート走行検出手段と、前記スタート検出手段によりスタートが検知され、かつ前記スタート走行検出手段によりスタート走行状態が検出されたときエンジンの点火時期を遅延させる点火時期制御手段とを備え、前記スタート検知手段は、ブレーキレバーの操作に応動するスイッチである。
【0008】
前記エンジンの点火時期制御装置によれば、例えばモトクロスレーサーに用いた場合に、周回コース外からの車両のスタートをスタート検知手段が検知し、かつ車両のスロットル開度やギヤポジションなどが所定のスタート走行状態となったことをスタート走行検出手段が検出した時点で、点火時期制御手段がエンジンの点火時期を遅延させるので、スタート時のタイヤのグリップ性が向上する。車両のスタートも自動的に検知されるので、スタート時にエンジンの点火時期を遅延させることができる。また、モトクロスレーサーを周回コース内で再スタートさせる場合、スタート検知手段は再スタートを検知しないから、点火時期制御手段がエンジンの点火時期を遅延させないので、再スタート時のパワーフィーリングやコーナリングが良くなり、ラップタイムが良くなる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら詳述する。
図1は本発明の一実施形態であるエンジンの点火時期制御装置の概略構成を示すブロック図である。この点火時期制御装置は、モトクロスレーサー用の自動二輪車に搭載されるエンジンの点火時期制御装置であって、スタートスイッチ1と、スタート走行検出手段2と、点火時期制御手段3とを備える。
【0011】
前記スタートスイッチ1は自動復帰型のものであって、ライダーまたは補助者が手動でオン操作できるように、例えば図2に示すハンドル4のスロットルグリップ40の近傍に設置される。
【0012】
図1の前記スタート走行検出手段2は車両のスタート走行状態を検出する手段である。この実施形態の場合、スタート走行検出手段2は、エンジン8のスロットル開度を検出するスロットル開度検出センサ5と、トランスミッションのギヤポジションを検出するギヤポジション検出センサ6とを備える。すなわち、このスタート走行検出手段2は、スロットル開度とギヤポジションとに基づいて車両のスタート走行状態を検出する。なお、ここでは、スロットル開度が1/2以下で、かつギヤポジションが3速以下の場合を、スタート走行状態として定めている。
【0013】
前記スロットル開度検出センサ5は、図2に示すエアクリーナ11から気化器12を通ってエンジン8の吸気ポートに至る吸気通路13内に設けられたスロットル弁14の開度を検出するもので、この例では、気化器12に取り付けられて、その内部のスロットル弁14に機械的に連動して作動し、スロットル開度を示す電気信号を出力する。ギヤポジション検出センサ6は、エンジン8に連結されたトランスミッション14に取り付けられて、シフトドラムの回転位置を検知することにより、ギヤポジションを検出する。
【0014】
図1の点火時期制御手段3は、前記スタートスイッチ1がオン操作され、かつ前記スタート走行検出手段2によりスタート走行状態が検出されたとき、点火回路7を制御してエンジン8における点火プラグ9の点火時期を通常の場合よりも遅延させる手段である。
【0015】
前記モトクロスレーサーに搭載されたエンジンの点火時期制御装置の動作を以下に説明する。周回コース外のスタート位置からモトクロスレーサーをスタートさせるとき、エンジンをスタートさせると、エンジン8は図3に破線で示す通常の点火時期で作動する。すなわち、このとき、スタート走行検出手段2は車両のスタート走行状態を検出しているが、スタートスイッチ1はまだオン操作されていないので、点火時期制御手段3はエンジン8の点火時期が通常の状態となるように点火回路7を制御する。
【0016】
エンジンスタートによりスタート走行検出手段2が車両のスタート走行状態を検出しているとき、つまりスロットル開度検出センサ5の検出するスロットル開度が1/2以下で、かつギヤポジション検出センサ6の検出するギヤポジションが3速以下のとき、手動によりスタートスイッチ1をオン操作すると、これに応答して、点火時期制御手段3はエンジン8の点火時期が通常の状態よりも遅延するように点火回路7を制御する。これにより、エンジン8は図3に実線で示すように通常の場合よりも遅延した点火時期で作動するので、タイヤのグリップ性が向上し、スタート時のタイム向上が可能となる。
【0017】
このあと、スロットル開度が1/2を越え、あるいはギヤポジションが3速を越えた状態となり、スタート走行検出手段2が車両のスタート走行状態を検出しなくなると、点火時期制御手段3は点火時期を遅延させるモードをキャンセルし、エンジン8の点火時期を通常の状態に戻す。これにより、周回コースを走行するとき最適の出力を得ることができる。
【0018】
また、周回コースにおいて、エンジンを再スタートさせる場合は、スタートスイッチ1はオン操作しない。これにより、点火時期制御手段3はエンジン8の点火時期が通常の状態となるように点火回路7を制御するので、周回コース内で再スタートさせるとき、タイヤをスリップさせながらのパワーフィーリングやコーナリングが可能となり、ラップタイムが向上する。
【0019】
図4は本発明の他の実施形態であるエンジンの点火時期制御装置の概略構成を示すブロック図である。この点火時期制御装置では、先の実施形態におけるスタートスイッチ1に代えて、車両のスタートを検知するスタート検知手段17を用いている。ここでは、スタート検知手段17は、図5に示すように、ブレーキレバー18のオン操作に応動するリミットスイッチ19からなり、このリミットスイッチ19を、ハンドルバー4に取り付けられてブレーキレバー18を支持するブラケット20に装着している。すなわち、この場合のスタート検知手段17は、ブレーキレバー18の操作による矢印A方向への回動により、ブレーキレバー18の基部18aで押し込まれて作動し、これによって、ブレーキレバー18のオン操作をスタートとして検知する。その他の構成は先の実施形態の場合と同様である。
【0020】
この実施形態のエンジンの点火時期制御装置では、モトクロスレーサーが周回コース外のスタート位置からスタートするとき、ライダーがブレーキレバー18をオン操作するのに伴いリミットスイッチ19がオン動作して、図4のスタート検知手段17がスタートを検知する。点火時期制御手段3は、前記スタートの検知と、スタート走行検出手段2によるスタート走行状態の検出とが揃ったとき、エンジン8の点火時期を遅延させる。このように、この実施形態では、先の実施形態においてスタートスイッチ1を手動でオン操作していた動作を、スタート検知手段17が自動的に行うことになるので、スタート時にエンジン8の点火時期を確実に遅延させることができる。
【0021】
周回コース内での再スタート時に、ライダーはブレーキレバー18をオン操作することはないので、このときスタート検知手段17は再スタートを検知せず、点火時期制御手段3がエンジン8の点火時期を遅延させることはない。したがって、周回コース内で再スタートさせるとき、タイヤをスリップさせながらのパワーフィーリングやコーナリングが可能となり、ラップタイムが向上する。
【0022】
なお、前記各実施形態では、車両がスタート走行状態にあることを検出する項目として、スロットル開度とギヤポジションを選んでいるが、これらの項目に加えて、エンジン回転数、エンジン回転加速度、エンジンスタートからの経過時間などを選んでも良い。
【0023】
【発明の効果】
以上のように、本発明の一構成に係るエンジンの点火時期制御装置によれば、例えばモトクロスレーサーに用いた場合に、周回コース外からのスタート時にスタートスイッチを手動操作し、かつ車両のスロットル開度やギヤポジションなどが所定のスタート走行状態となったことをスタート走行検出手段が検出した時点で、点火時期制御手段がエンジンの点火時期を遅延させるので、スタート時のタイヤのグリップ性が向上する。また、モトクロスレーサーを周回コース内で再スタートさせる場合、ライダーがスタートスイッチを操作しない限り、点火時期制御手段はエンジンの点火時期を遅延させないので、再スタート時のパワーフィーリングやコーナリングが良くなり、ラップタイムが良くなる。
【0024】
また、本発明の他の構成に係るエンジンの点火時期制御装置によれば、例えばモトクロスレーサーに用いた場合に、周回コース外からの車両のスタートをスタート検知手段が検知し、かつ車両のスロットル開度やギヤポジションなどが所定のスタート走行状態となったことをスタート走行検出手段が検出した時点で、点火時期制御手段がエンジンの点火時期を遅延させるので、スタート時のタイヤのグリップ性が向上する。車両のスタートも自動的に検知されるので、スタート時にエンジンの点火時期を遅延させることができる。また、モトクロスレーサーを周回コース内で再スタートさせる場合、スタート検知手段は再スタートを検知しないので、点火時期制御手段がエンジンの点火時期を遅延させず、再スタート時のパワーフィーリングやコーナリングが良くなり、ラップタイムが良くなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るエンジンの点火時期制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】同点火時期制御装置を構成するスタートスイッチの設置状態を示す概略図である。
【図3】同点火時期制御装置によるエンジンの点火時期を示す特性図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係るエンジンの点火時期制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図5】同点火時期制御装置を構成するスタート検知手段を示す概略図である。
【符号の説明】
1…スタートスイッチ、2…スタート走行検出手段、3…点火時期制御手段、5…スロットル開度検出センサ、6…ギヤポジション検出センサ、8…エンジン、17…スタート検知手段。
Claims (3)
- 自動二輪車のハンドルのスロットルグリップ近傍に設置され、エンジンスタート後に手動操作可能なスタートスイッチと、
車両のスタート走行状態を検出するスタート走行検出手段と、
エンジンスタート後に前記スタートスイッチが操作され、かつ前記スタート走行検出手段によりスタート走行状態が検出されたときエンジンの点火時期を遅延させる点火時期制御手段とを備えたエンジンの点火時期制御装置。 - 走行を一旦停止した後の再スタート状態を除いて車両のスタートを検知するスタート検知手段と、
車両のスタート走行状態を検出するスタート走行検出手段と、
前記スタート検出手段によりスタートが検知され、かつ前記スタート走行検出手段によりスタート走行状態が検出されたときエンジンの点火時期を遅延させる点火時期制御手段とを備え、
前記スタート検知手段は、ブレーキレバーの操作に応動するスイッチであるエンジンの点火時期制御装置。 - 請求項1または2において、前記スタート走行検出手段は、少なくともスロットル開度とトランスミッションのギヤポジションとに基づいてスタート走行状態を検出するエンジンの点火時期制御装置。
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