JP4470234B2 - 駆動制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、車輪からの動力により機械式オイルポンプを駆動することのできる駆動制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、車両用の変速機として、遊星歯車機構と、遊星歯車機構のトルク伝達経路を切り換える摩擦係合装置とを有する自動変速機が多用されている。このような自動変速機においては、摩擦係合装置に作用する油圧を電気的に制御することにより、その摩擦係合装置の係合・解放がおこなわれている。このような電子制御式の油圧制御装置を有するエンジンの動力伝達制御装置の一例が、特許第2705957号公報に記載されている。
【0003】
ところで、このような電子制御式の油圧制御装置の油圧回路で使用される油圧の元圧を発生するオイルポンプを有するシステムの一例が、特開昭48−28855号公報に記載されている。すなわち、この公報においては、ステアリングギヤおよび伝動制御器などに流体圧力を供給する制御弁が流体ポンプに接続されている。一方、多速度遊星歯車装置の入力側にはトルクコンバータが設けられており、このトルクコンバータは、羽根車およびタービンならびにステータを有する。そして、羽根車およびタービンが流体ポンプに接続されており、エンジンの動力により車両が走行している状態では、エンジンの動力の一部が流体ポンプに伝達されて油圧が発生する。これに対して、車両が惰力走行している、いわゆるコースト状態においては、車輪からの動力が、多速度遊星歯車装置および入力軸ならびにトルクコンバータを介して流体ポンプに伝達され、流体ポンプが駆動される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報のような駆動形式のオイルポンプを有する車両においては、コースト状態で車輪からの動力によりオイルポンプを駆動する場合に、車輪からの動力の一部がエンジンの引きずり損失で消費され、オイルポンプの吐出量が低下する可能性があった。
【0005】
この発明は、上記の事情を背景としてなされたものであり、車両のコースト状態で車輪からの動力によりオイルポンプを駆動する場合に、その吐出量を可及的に増加させることのできる駆動制御装置を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段およびその作用】
上記の目的を達成するため請求項1の発明は、駆動力源と車輪との間の動力伝達経路に配置されている入力クラッチと、前記動力伝達経路における前記入力クラッチと前記車輪との間に配置され、かつ、前記車輪からの動力により駆動することのできる第1のオイルポンプとを備えている駆動制御装置において、前記動力伝達経路における前記入力クラッチと前記車輪との間に、第1回転部材と第2回転部材との間で流体により動力の伝達をおこなうことのできる流体式動力伝達装置が配置され、前記第1回転部材が前記入力クラッチを介在させて前記駆動力源に接続され、かつ、前記第2回転部材が前記車輪に接続されており、前記第1のオイルポンプが前記第1回転部材に接続されているとともに、前記第1回転部材と前記第2回転部材とを機械的に接続することのできるロックアップクラッチが設けられており、車両のコースト状態で前記車輪からの動力により前記第1のオイルポンプを駆動する際に、前記入力クラッチを解放させ、さらに、前記ロックアップクラッチを係合させる入力クラッチ制御手段を備えていることを特徴とするものである。
【0007】
請求項1の発明によれば、車輪からの動力により第1のオイルポンプを駆動する際には入力クラッチが解放されるため、駆動力源側の引きずりトルクが低減される。
【0009】
また、請求項1の発明によれば、車輪からの動力により第1のオイルポンプを駆動する際に、入力クラッチを解放させ、さらに、ロックアップクラッチが係合されて、第1回転部材と第2回転部材との間で動力が機械的に伝達されるため、その動力の損失が抑制される。また、入力クラッチが解放されているために、駆動力源の状態に関わりなくロックアップクラッチを係合させることができ、ロックアップクラッチの係合領域が拡大される。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の構成に加えて、前記第1のオイルポンプの機能を補い、かつ、電力の供給により駆動される第2のオイルポンプが設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明と同様の作用が生じるほか、第1のオイルポンプの吐出量が増加するため、第2のオイルポンプの駆動に必要な電力が低減され、かつ、第2のオイルポンプの駆動頻度が減少する。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1または2の構成に加えて、前記コースト状態が所定車速以下で発生していることを特徴とするものである。
【0013】
請求項3の発明によれば、請求項1または2の発明と同様の作用が生じるほか、低車速領域において、第1のオイルポンプを駆動するための動力が確保される。したがって、低車速領域における第1のオイルポンプの吐出量が可及的に増加される。
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの構成に加えて、前記流体式動力伝達装置と前記車輪との間の動力伝達経路に、摩擦係合装置の係合・解放により複数の変速比を段階的に変更することのできる変速機が設けられており、前記入力クラッチ制御手段は、前記駆動力源の動力が前記車輪に伝達されて前記車両が走行するときには係合されない摩擦係合装置を前記車両のコースト状態で係合させる手段を含むことを特徴とするものである。請求項4の発明によれば、請求項1ないし3のいずれかの発明と同様の作用が生じる。
【0014】
【発明の実施の形態】
つぎにこの発明を図に示す具体例に基づいて説明する。図2はこの発明の一実施形態であるハイブリッド車のパワープラントの一例を示している。車両の駆動力源としての内燃機関1は、要は、燃料を燃焼させて動力を出力する装置であって、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン、LPGエンジンなどを採用することができる。また内燃機関1において、熱エネルギーを機械的エネルギーに変換するための形式には、レシプロエンジンとロータリーエンジンとタービンエンジンが含まれる。なお、以下の説明では、内燃機関1をエンジン1と記す。
【0015】
またエンジン1は、電子スロットルバルブ1Aの開度や燃料噴射量あるいは点火時期などを電気的に制御できるように構成されているとともに、エンジン1を始動させるスタータ1Bが設けられている。そして、エンジン1を制御するための電子制御装置(E/G−ECU)8が設けられている。この電子制御装置8は、演算処理装置(CPUまたはMPU)および記憶装置(RAMおよびROM)ならびに入出力インターフェースを主体とするマイクロコンピュータにより構成されている。以下、各種の電子制御装置が説明されているが、その構成はこれとほぼ同様である。そして、この電子制御装置8において、アクセル開度や車速、変速信号、エンジン水温などの入力データに基づいて予め記憶しているプログラムに従って演算をおこない、その演算結果に基づいて制御信号を出力するように構成されている。
【0016】
さらに、内燃機関1の出力側に入力クラッチ122を介して、ほかの駆動力源としての機能を有する電動機(MG)2が接続されている。さらにまた、電動機2の出力側にはトルクコンバータ(T/C)4を介して自動変速機3が配置されている。この自動変速機3は、変速機構5と、この変速機構5およびトルクコンバータ4を制御する油圧制御部7とを有している。
【0017】
また、電動機2は、要は、電力が供給されてトルクを出力する装置であり、直流モータや交流モータを採用することができ、さらには固定永久磁石型同期モータなどの発電機能を兼ね備えたいわゆるモータ・ジェネレータを使用することができる。なお、以下の説明では、電動機2をモータ・ジェネレータ2と記す。また、モータ・ジェネレータ2の回転数および回転角度を検出するレゾルバ2Aが設けられている。さらに、モータ・ジェネレータ2には、インバータ9を介してバッテリ10が接続されている。
【0018】
そして、モータ・ジェネレータ2を制御するコントローラとしての電子制御装置(MG−ECU)11が設けられている。この電子制御装置11に入力されるデータに基づいて演算をおこなって、モータ・ジェネレータ2に供給する電流や周波数、モータ・ジェネレータ2を発電機として用いてバッテリ10に充電する電力、モータ・ジェネレータ2を発電機として機能させる場合の回生制動トルクなどを制御するように構成されている。
【0019】
図3は、この発明のハイブリッド車のパワープラントを示すスケルトン図である。エンジン1のクランクシャフト1Cと、トルクコンバータ4のフロントカバー120が接続された動力伝達軸121との間に、前記入力クラッチ122が配置されている。この入力クラッチ122は、エンジン1と動力伝達軸121との間の動力伝達状態を制御する機能を有している。この実施形態では、入力クラッチ122として公知の摩擦式クラッチが用いられている。すなわち、入力クラッチ122は、シリンダおよびピストンならびにリターンスプリング(いずれも図示せず)などを有する。そして、入力クラッチ122は、ピストンに作用する油圧により、入力クラッチ122の係合・解放を制御するように構成されている。また、この動力伝達軸121に対して、モータ・ジェネレータ2のロータ(図示せず)が取り付けられている。
【0020】
前記トルクコンバータ4は、油圧により動作が制御されるように構成されており、フロントカバー120に一体的に結合されたポンプインペラ47と、変速機構5の入力軸57に取り付けられたタービンランナ61と、トルクコンバータ4の一部を構成しているケーシング内部のオイルの流れの向きを変えるステータ56と、フロントカバー120と入力軸57との間の動力伝達状態を切り換えるロックアップクラッチ62とを有している。
【0021】
ロックアップクラッチ62が解放されると流体による動力伝達状態になり、ロックアップクラッチ63が係合されると機械的な動力伝達状態になる。なお、ロックアップクラッチ62が解放された状態では、ステータ56の機能により、ポンプインペラ47からタービンランナ61に伝達されるトルクを増幅することができる。
【0022】
また、トルクコンバータ4と変速機構5との間には、機械式オイルポンプ6が配置されている。この機械式オイルポンプ6の回転軸は、ポンプインペラ47に接続されている。したがって、この機械式オイルポンプ6は、エンジン1またはモータ・ジェネレータ2の動力により駆動することができる。また、車輪39Aから入力される動力を機械式オイルポンプ6に伝達することにより、機械式オイルポンプ6を駆動することもできる。機械式オイルポンプ6は、入力クラッチ122およびトルクコンバータ4ならびに自動変速機3に供給する油圧の元圧を発生する機能を有している。
【0023】
一方、図3に示す自動変速機3は、前進5段・後進1段の変速段を設定することができるように構成されている。すなわちここに示す自動変速機3は、トルクコンバータ4および機械式オイルポンプ6に続けて副変速部81と、主変速部82とを備えている。その副変速部81は、いわゆるオーバードライブ部であって1組のシングルピニオン型遊星歯車機構83によって構成され、キャリヤ84が前記入力軸57に連結され、またこのキャリヤ84とサンギヤ85との間に一方向クラッチF0 と一体化クラッチC0 とが並列に配置されている。なお、この一方向クラッチF0 はサンギヤ85がキャリヤ84に対して相対的に正回転(入力軸57の回転方向の回転)する場合に係合するようになっている。またサンギヤ85の回転を選択的に止める多板ブレーキB0 が設けられている。そしてこの副変速部81の出力要素であるリングギヤ86が、主変速部82の入力要素である中間軸87に接続されている。
【0024】
したがって副変速部81は、一体化クラッチC0 もしくは一方向クラッチF0 が係合した状態では遊星歯車機構83の全体が一体となって回転するため、中間軸87が入力軸57と同速度で回転し、低速段となる。またブレーキB0 を係合させてサンギヤ85の回転を止めた状態では、リングギヤ86が入力軸57に対して増速されて正回転し、高速段となる。
【0025】
他方、主変速部82は三組の遊星歯車機構88,89,90を備えており、それらの回転要素が以下のように連結されている。すなわち第1遊星歯車機構88のサンギヤ91と第2遊星歯車機構89のサンギヤ92とが互いに一体的に連結され、また第1遊星歯車機構88のリングギヤ93と第2遊星歯車機構89のキャリヤ94と第3遊星歯車機構90のキャリヤ95との三者が連結され、かつそのキャリヤ95に出力軸96が連結されている。この出力軸96が、動力伝達装置(図示せず)を介して車輪96Aに接続されている。にがさらに第2遊星歯車機構89のリングギヤ97が第3遊星歯車機構90のサンギヤ98に連結されている。
【0026】
この主変速部82の歯車列では後進段と前進側の四つの変速段とを設定することができ、そのためのクラッチおよびブレーキが以下のように設けられている。先ずクラッチについて述べると、互いに連結されている第2遊星歯車機構89のリングギヤ97および第3遊星歯車機構90のサンギヤ98と中間軸87との間に第1クラッチC1 が設けられ、また互いに連結された第1遊星歯車機構88のサンギヤ91および第2遊星歯車機構89のサンギヤ92と中間軸87との間に第2クラッチC2 が設けられている。
【0027】
つぎにブレーキについて述べると、第1ブレーキB1 はバンドブレーキであって、第1遊星歯車機構88および第2遊星歯車機構89のサンギヤ91,89の回転を止めるように配置されている。またこれらのサンギヤ91,89(すなわち共通サンギヤ軸)とトランスミッションハウジング20との間には、第1一方向クラッチF1 と多板ブレーキである第2ブレーキB2 とが直列に配列されており、その第1一方向クラッチF1 はサンギヤ91,89が逆回転(入力軸57の回転方向とは反対方向の回転)しようとする際に係合するようになっている。多板ブレーキである第3ブレーキB3 は第1遊星歯車機構88のキャリヤ99とトランスミッションハウジング20との間に設けられている。
【0028】
そして第3遊星歯車機構90のリングギヤ100の回転を止めるブレーキとして多板ブレーキである第4ブレーキB4 と第2一方向クラッチF2 とがトランスミッションハウジング20との間に並列に配置されている。なお、この第2一方向クラッチF2 はリングギヤ100が逆回転しようとする際に係合するようになっている。上述した各変速部81,82の回転部材のうち副変速部81のクラッチC0 の回転数を検出するタービン回転数センサ101と、出力軸96の回転数を検出する出力軸回転数センサ102とが設けられている。上記変速機構5の一部を構成する各種のクラッチやブレーキには、いわゆる、湿式油圧多板クラッチが用いられている。
【0029】
上記の自動変速機3では、各クラッチやブレーキなどの摩擦係合装置を、図4に示すように係合・解放することにより、前進第1段ないし第5段の変速段と、後進1段の変速段とを設定することができる。すなわち、自動変速機3は、その変速比を段階的に変更することのできる、いわゆる有段式の自動変速機である。なお、図4において、○印は摩擦係合装置が係合されることを意味し、空欄は摩擦係合装置が解放されることを意味し、◎印は、エンジンブレーキ時に摩擦係合装置が係合されることを意味し、△印は摩擦係合装置が係合されるものの、その摩擦係合装置は動力伝達に関係しないことを意味している。
【0030】
一方、図2に示すように、自動変速機3の変速比の制御範囲を設定するシフトレバー127が設けられている。このシフトレバー127と油圧制御部7とが機械的に連結されている。このシフトレバー127の操作により選択されるシフトポジションの一例が図5に示されている。すなわち、P(パーキング)ポジション、R(リバース)ポジション、N(ニュートラル)ポジション、D(ドライブ)ポジション、4ポジション、3ポジション、2ポジション、Lポジションを選択することができる。
【0031】
そして、シフトレバー127の操作により、非駆動ポジション、例えばPポジションまたはNポジションが選択された場合は、自動変速機3が入力軸57と出力軸96との間で動力(トルク)の伝達ができない状態になる。また、駆動ポジション、例えば、Rポジション、Dポジション、4ポジション、3ポジション、2ポジション、Lポジションのうちのいずれかが選択された場合は、自動変速機3が入力軸57と出力軸96との間で動力の伝達をおこなうことができる状態になる。
【0032】
ここで、Dポジションは車速やアクセル開度などの車両の走行状態に基づいて、自動変速機3で前進第1速ないし第5速のいずれかを設定するためのポジションであり、また4ポジションは、第1速ないし第4速のいずれか、3ポジションは第1速ないし第3速のいずれか、2ポジションは第1速または第2速、Lポジションは第1速をそれぞれ設定するためのポジションである。3ポジションないしLポジションは、車両の惰力走行状態、つまりコースト状態でエンジンブレーキレンジを設定するポジションであり、それぞれのポジションで設定可能な変速段のうち最も高速側の変速段でエンジンブレーキを効かせるように構成されている。このエンジンブレーキ力は、図4の図表において、各変速段で「◎」印に対応する摩擦係合装置の係合により強められる。これら「◎」印に対応する摩擦係合装置は、各一方向クラッチに対して並列に設けられている。
【0033】
また、この実施形態においては、自動変速機3の変速比を、電子制御装置12に入力される信号に基づいて自動的に制御することのできる自動変速制御状態と、手動操作により制御することのできる手動変速制御状態とを相互に切り換えることができる。図6は、スポーツモードスイッチ76を示し、このスポーツモードスイッチ76は、例えばインストルメントパネル(図示せず)付近またはコンソールボックス(図示せず)付近などに配置されている。このスポーツモードスイッチ76がオンされると、前記手動変速制御状態が設定され、スポーツモードスイッチ76がオフされると、手動変速制御状態が解除される。
【0034】
図7はダウンシフトスイッチ78およびアップシフトスイッチ80の配置位置の一例を示す図である。このダウンシフトスイッチ78およびアップシフトスイッチ80は、手動変速制御状態が設定されている際に、自動変速機3の変速段をダウンシフトまたはアップシフトさせるためのものである。具体的には、ステアリングホイール79の表面側にダウンシフトスイッチ78が設けられており、ステアリングホイール79の裏面側にアップシフトスイッチ80が設けられている。なお、図7においては便宜上、ダウンシフトスイッチ78およびアップシフトスイッチ80を共にステアリングホイール79の表面側に表示している。そして、シフトレバー127により例えばDポジションが選択され、かつ、スポーツモードスイッチ76がオンされた状態において、アップシフトスイッチ80が操作されると変速機構5の変速段がアップシフトされ、ダウンシフトスイッチ78が操作されると変速機構5の変速段がダウンシフトされる。
【0035】
ところで、図2に示すハイブリッド車には、前記機械式オイルポンプ6とは別の電動オイルポンプ110が設けられている。また、電動オイルポンプ110を駆動するための電動機110Aが設けられているとともに、電動機110Aにはインバータ110Cを介してバッテリ110Bが接続されている。そして、インバータ110Cおよびバッテリ110Bを制御するコントローラとしての電子制御装置(ECU)110Dが設けられている。この電子制御装置110Dは、入力されるデータに基づいて演算をおこなって、電動機110Aを制御するように構成されている。この電動機110Aの回転数を制御することにより、電動オイルポンプ110の吐出量が増減される。そして、電動オイルポンプ110は、エンジン1の停止時などに駆動されるもので、機械式オイルポンプ6の機能と同じ機能を有している。
【0036】
つまり、機械式オイルポンプ6および電動オイルポンプ110は、共に、自動変速機3およびトルクコンバータ4ならびに入力クラッチ122などの油圧式動作システムに供給される油圧の油圧源となっている。図8は、油圧制御部7を構成する油圧回路のうち、自動変速機3の摩擦係合装置および入力クラッチ122に対応する油圧回路の一部を示す図である。
【0037】
すなわち、オイルパン123とチェックボール機構150との間の油路には、機械式オイルポンプ6および電動オイルポンプ110が相互に並列に配置されている。チェックボール機構150の出力側にはプライマリレギュレータバルブ124が接続され、このプライマリレギュレータバルブ124の出力側には、マニュアルバルブ125および入力クラッチコントロールソレノイド(リニアソレノイド)126が相互に並列に接続されている。マニュアルバルブ125の出力ポートには、第1クラッチC1 および第2クラッチC2 が接続されている。このマニュアルバルブ125はシフトレバー127の操作により動作し、マニュアルバルブ125の動作により、マニュアルバルブ125と第1クラッチC1 および第2クラッチC2 とを接続するポートが開閉される。なお、第1クラッチC1 とマニュアルバルブ125との間にアキュムレータ(図示せず)を設けるとともに、第2クラッチC2 とマニュアルバルブ125との間にアキュムレータ(図示せず)を設けることもできる。また、入力クラッチコントロールソレノイド126の出力ポートには、入力クラッチ122が接続されている。
【0038】
そして、機械式オイルポンプ6および電動オイルポンプ110により、オイルパン123のオイルが汲み上げられるとともに、吐出圧の高いポンプの油圧が、チェックボール機構150を経由してプライマリレギュレータバルブ124の入力ポートに供給される。そして、プライマリレギュレータバルブ124により、ライン圧が、スロットル開度あるいはアクセル開度に応じた圧力に調圧される。このプライマリレギュレータバルブ124から出力される油圧が、マニュアルバルブ125の動作により、第1クラッチC1 または第2クラッチC2 に供給される。なお、前記アキュムレータにより、第1クラッチC1 または第2クラッチC2 に供給される油圧の急激な立ち上がりが抑制される。
【0039】
また、プライマリレギュレータバルブ124から出力された油圧が、入力クラッチ126の動作により入力クラッチ122に作用する。このように、入力クラッチコントロールソレノイド126は、入力クラッチ122とプライマリレギュレータバルブ124とを接続する油路に設けられており、入力クラッチ126に作用する油圧が、入力クラッチコントロールソレノイド126の機能により直接的に制御される。したがって、入力クラッチコントロールソレノイド126以外に格別の部品を設ける必要がなく、自動変速機3の製造コストを低減することができる。
【0040】
一方、図2に示すように、エンジン1のクランクシャフト1Cに対して、駆動装置127を介してモータ・ジェネレータ(MG)128が連結されている。モータ・ジェネレータ128は、エンジン1に動力を伝達する機能と、エアコン用コンプレッサなどの補機(図示せず)を駆動する機能と、エンジン1の動力により駆動される発電機としての機能とを有している。この駆動装置127は、遊星歯車機構(図示せず)、およびこの遊星歯車機構によるトルク伝達状態を切り換える摩擦係合装置(図示せず)ならびに一方向クラッチ(図示せず)などを有する減速装置(図示せず)を備えている。また、駆動装置127は、エンジン1とモータ・ジェネレータ128との間の動力伝達経路を接続・遮断するクラッチ機構(図示せず)を備えている。また、モータ・ジェネレータ128には、インバータ129を介してバッテリ130が電気的に接続されているとともに、インバータ129およびバッテリ130を制御する電子制御装置(MG−ECU)131が設けられている。
【0041】
図9には、上記ハイブリッド車のシステムを総合的に制御する総合制御装置(ECU)104が示されている。そして、図2に示された各種の電子制御装置8,11,12,110D,131と総合制御装置104とが相互にデータ通信可能に接続されている。そして、エンジン1、駆動装置127の減速装置、モータ・ジェネレータ2,128、自動変速機3およびロックアップクラッチ62ならびに油圧制御部7、入力クラッチ122などの各装置は、車両の状態を示す各種のデータに基づいて制御される。
【0042】
具体的には、総合制御装置104に各種の信号を入力し、その入力された信号に基づく演算結果を制御信号として出力するようになっている。この総合制御装置104には、ABS(アンチロックブレーキ)コンピュータからの信号、車両安定化制御(VSC:商標)コンピュータからの信号、エンジン回転数NE 、エンジン水温、イグニッションスイッチからの信号、バッテリ19のSOC(State of Charge:充電状態)を含むモータ・ジェネレータ2の機能検出信号などが入力される。
【0043】
また、総合制御装置104には、ヘッドライトのオン・オフ信号、デフォッガのオン・オフ信号、エアコンのオン・オフ信号、車速(出力軸回転数)信号、油温センサ3Aの信号、シフトポジションセンサの信号、サイドブレーキのオン・オフ信号、フットブレーキのオン・オフ信号、触媒(排気浄化触媒)温度、アクセル開度、カム角センサからの信号、スポーツシフト(スポーツモードスイッチ76およびダウンシフトスイッチ78ならびにアップシフトスイッチ80の操作を示す)信号、車両加速度センサからの信号、駆動力源ブレーキ力スイッチからの信号、タービン回転数NT センサからの信号、レゾルバ2Aの信号などが入力される。
【0044】
また、出力信号の例を挙げると、点火信号、噴射(燃料の噴射)信号、スタータ1Bへの信号、前記モータ・ジェネレータ2,128を制御するコントローラとしての電子制御装置11,131への信号、駆動装置127の減速装置またはクラッチ機構に対する制御信号、ATソレノイドへの信号、ATライン圧コントロールソレノイドへの信号、ABSアクチュエータへの信号、入力クラッチコントロールソレノイド126に対する制御信号、電子スロットルバルブ1Aに対する制御信号、スポーツモードインジケータへの信号、VSCアクチュエータへの信号、ATロックアップコントロールバルブへの信号、電動オイルポンプ110を制御する電子制御装置110Dに対する信号などである。
【0045】
ここで、この発明の構成と実施形態の構成との対応関係を説明する。すなわち、エンジン1がこの発明の駆動力源に相当し、クランクシャフト1Cと動力伝達軸121とトルクコンバータ4と自動変速機3とがこの発明の動力伝達経路に相当し、機械式オイルポンプ6がこの発明の第1のオイルポンプに相当し、トルクコンバータ4がこの発明の流体式動力伝達装置に相当し、フロントカバー120およびポンプインペラ47がこの発明の第1回転部材に相当し、入力軸57およびタービンランナ61がこの発明の第2回転部材に相当し、電動オイルポンプ110および電動機110Aがこの発明の第2のオイルポンプに相当する。
【0046】
つぎに、上記ハード構成を有するハイブリッド車の制御例を図1のフローチャートに基づいて説明する。まず、各種の電子制御装置8,11,12,13,110Dおよび総合制御装置104により、入力信号の処理がおこなわれる(ステップS1)。そして、車両の状態に基づいて、エンジン1およびモータ・ジェネレータ2を駆動・停止する制御がおこなわれる。この実施形態においては、シフトレバー127により選択される各シフトポジションに対応して、エンジン1およびモータ・ジェネレータ2の駆動・停止を切り換えるための制御態様、すなわち、駆動力源切り換えマップが予め設定されている。
【0047】
図10ないし図13には、各シフトポジションに対応する駆動力源切り換えマップの一例と、各シフトポジションで自動変速機3の変速段を制御するための変速マップ(変速線図)の一例とが総括的に示されている。これらの駆動力源切り換えマップにおいては、車両の状態、具体的には車速およびアクセル開度をパラメータとし、かつ、実線で示す状態を境界として、エンジン駆動領域(運転領域)とモータ・ジェネレータ駆動領域とが設定され、車速およびアクセル開度をパラメータとして、破線で示す状態を境界として、自動変速機3の変速点(変速線)が設定されている。
【0048】
まず図10の駆動力源切り換えマップは、Dポジションまたは4ポジションまたは3ポジションに対応している。すなわち、車速V5以下であり、かつ、所定のアクセル開度以下の領域に、モータ・ジェネレータ駆動領域が設定され、モータ・ジェネレータ駆動領域以外の領域に、エンジン駆動領域が設定されている。このモータ・ジェネレータ駆動領域においては、自動変速機3が第1速〜第3速のいずれかの変速段に制御される。具体的には車速零〜車速V1の領域では第1速が設定され、車速V1〜車速V3の領域では第2速が設定され、車速V3〜車速V5の領域では第3速が設定される。なお、車速V3は車速V1よりも高速であり、車速V5は車速V3よりも高速である。これに対して、エンジン駆動領域においては、自動変速機ATが第1速〜第5速のうちのいずれかの変速段に制御される。
【0049】
また、図11の駆動力源切り換えマップは2ポジションに対応するものであり、この駆動力源切り換えマップにおいては、車速V4以下であり、かつ、所定のアクセル開度以下の領域に、モータ・ジェネレータ駆動領域が設定され、モータ・ジェネレータ駆動領域以外の領域に、エンジン駆動領域が設定されている。このモータ・ジェネレータ駆動領域においては、自動変速機3が第1速または第2速のいずれかの変速段に制御される。具体的には車速零〜車速V1の領域では第1速が設定され、車速V1〜車速V4の領域では第2速が設定される。なお、車速V4は前記車速V3よりも高速であり、かつ、前記車速V5よりも低速である。これに対して、エンジン駆動領域においては、自動変速機3が第1速または第2速のいずれかの変速段に制御される。
【0050】
さらに、図12の駆動力源切り換えマップはLポジションに対応するものであり、この駆動力源切り換えマップにおいては、車速V2以下であり、かつ、所定のアクセル開度以下の領域に、モータ・ジェネレータ駆動領域が設定され、モータ・ジェネレータ駆動領域以外の領域に、エンジン駆動領域が設定されている。このモータ・ジェネレータ駆動領域およびエンジン駆動領域においては、自動変速機3の変速段が第1速に固定される。
【0051】
さらにまた、図13の駆動力源切り換えマップはRポジションに対応するものであり、この駆動力源切り換えマップにおいては、車速V2以下であり、かつ、所定のアクセル開度以下の領域に、モータ・ジェネレータ駆動領域が設定され、モータ・ジェネレータ駆動領域以外の領域に、エンジン駆動領域が設定されている。
【0052】
このように、図10ないし図13の変速マップにおいて、所定の変速比、例えば第2速が設定される領域(車速)は、各シフトポジション毎に相違しており、高速側の変速段の設定がなくなると(言い換えれば設定できる最小変速比が大きくなることに比例して)、第2速の設定される領域が広くなっている。具体的には図10の変速マップよりも図11の変速マップの方が、第2速の設定される領域が広くなっている。このように設定することにより、モータ・ジェネレータ駆動領域が可及的に増やされ、騒音および排気ガスを低減することができる。
【0053】
なお、電子制御装置12には、ロックアップクラッチ62の状態を制御するロックアップクラッチ制御マップが記憶されている。このロックアップクラッチ制御マップは、車速およびアクセル開度をパラメータとしてロックアップクラッチ62の係合領域・半係合(スリップ)領域・解放領域を設定している。
【0054】
このようにして、車速およびアクセル開度に基づいて、エンジン1およびモータ・ジェネレータ2の駆動・停止が制御され、その動力が車輪96Aに伝達されて車両が走行する。また、車両の惰力走行時には、車輪96Aから入力される動力を、自動変速機3を経由して動力伝達軸121に伝達するとともに、この動力によりモータ・ジェネレータ2を発電機として機能させ、発生した電力をバッテリ10に充電することもできる。
【0055】
そして、図10ないし図13の制御マップに基づいてエンジン1およびモータ・ジェネレータ2の駆動・停止を制御することにともない、エンジン1の動力を車輪96Aに伝達する場合は入力クラッチ122が係合される。これに対して、エンジン1を停止してモータ・ジェネレータ2の動力を車輪96Aに伝達する場合、または車両の惰力走行時にモータ・ジェネレータ2を発電機として機能させる場合は、入力クラッチ122を解放または係合することができる。
【0056】
上記ステップS1についで、車速Vが所定値V1以下(つまり、極低車速)であるか否かが判断される(ステップS2)。ステップS2で否定的に判断された場合はそのままリターンされ、ステップS2で肯定的に判断された場合は、車両がコースト状態(言い換えれば惰力走行状態)にあるか否かが判断される(ステップS3)。このステップS3では、例えばエンジン回転数とタービン回転数との関係が、
エンジン回転数<タービン回転数
であるか否かにより、コースト状態を判断することができる。ステップS3で肯定的に判断された場合は、自動変速機3で設定されている変速段に対応して、コーストブレーキが係合される(ステップS4)。ここで、コーストブレーキとは、図4の図表において「◎」に対応する摩擦係合装置を意味している。このコーストブレーキの係合制御は、図4の図表に示す一方向クラッチの働きを制限することにより、惰力走行による車輪96Aの動力を、変速機構5を介して機械式オイルポンプ6に伝達する目的で実施する。
【0057】
ついで、入力クラッチ122を解放する制御がおこなわれる(ステップS5)。この制御は、エンジン1と、トルクコンバータ4の入力系のイナーシャ・マス(inertia mass)との接続を絶つ目的、言い換えれば、エンジン1とトルクコンバータ4および自動変速機3との間の動力伝達経路を遮断する目的で実施する。この制御により、車輪96Aの動力を変速機構5を介して機械式オイルポンプ6を駆動するにあたり、エンジン1を引きずり回転させることが防止される。言い換えれば、機械式オイルポンプ6を駆動するための動力の損失が抑制される。
【0058】
さらに、ロックアップクラッチ62を係合させる制御がおこなわれ(ステップS7)、リターンされる。つまり、ロックアップクラッチ62が解放された状態で、車輪96Aから入力される動力により機械式オイルポンプ6を駆動すると、タービンランナ61とポンプインペラ47との間で、流体による動力の伝達がおこなわれる。言い換えれば、タービンランナ61とポンプインペラ47との滑りにより、機械式オイルポンプ6を駆動する動力の損失が発生する。
【0059】
そこで、ロックアップクラッチ62を係合させてこの動力の損失をなくすことにより、機械式オイルオイルポンプ6の吐出量を一層増加することができる。また、入力クラッチ122が解放されているため、エンジン1の状態に関わりなく、ロックアップクラッチ62を係合させておくことができる。具体的には、エンストを引き起こすことなくロックアップクラッチ62を係合させておくことのできる領域を、可及的に低車速側まで拡大することができる。
【0060】
これに対して、前記ステップS3で否定的に判断された場合は、図10ないし図13の制御マップに基づいて、停止中のエンジン1を始動させる可能性がある。そこで、エンジン1の始動性が良好になる状態を確保しておくためにそのままリターンする。すなわち、停止中のエンジン1を始動させるにあたり、車輪96Aから入力される動力によりエンジン1を回転させている状態で、燃料噴射制御および点火制御をおこなえば、その始動応答性が向上する。そして、このようなエンジン始動制御をおこなうためには、入力クラッチ122を係合させ、車輪96Aの動力をエンジン1に伝達することができる状態に維持しておく必要があるからである。
【0061】
ここで、図1のフローチャートに示された機能的手段と、この発明の構成との対応関係を説明する。すなわち、ステップS2,〜ステップS6がこの発明の入力クラッチ制御手段に相当する。
【0062】
図14は、図1の制御例に対応するタイムチャートの一例である。まず、車速が低車速以下であることの判断が成立していない時刻t1以前においては、入力クラッチ122が係合されており、車速の低下と共に自動変速機3の入力軸回転数(言い換えればタービン回転数)Niが徐々に低下する。また、ロックアップクラッチ62は、ロックアップクラッチ制御マップに基づいて、解放または半係合されている。さらに、入力クラッチ油圧が所定の高圧状態に制御され、入力クラッチ122が係合されている。
【0063】
つぎに時刻t1において、車速が所定の低車速以下まで低下したことが判断されると、入力クラッチ油圧の低下が開始されて、トルクコンバータ4の入力系におけるエンジン1の引きずりが徐々に解消される。そして、時刻t3において、入力クラッチ122の解放が完了し、その後は入力クラッチ122が解放状態に制御されている。また、時刻t3以前にロックアップクラッチ62が解放されていた場合は、時刻t4以後にロックアップクラッチ係合油圧の上昇が開始される。一方、時刻t3以前にロックアップクラッチ62が半係合されていた場合は、時刻t4以後もその状態が維持され、時刻t5以後にロックアップクラッチ油圧の上昇が開始される。そして、車速の低下と共に、時刻t6から入力軸回転数が徐々に低下し、かつ、ロックアップクラッチ油圧が所定の高圧に制御されている。
【0064】
このように、上記制御例によれば、車両のコースト状態において、車輪39Aから入力される動力により機械式オイルポンプ6を駆動する際には入力クラッチ122が解放される。したがって、エンジン1の引きずりに消費される動力が低下し、機械式オイルポンプ6の吐出量を可及的に増加することができる。また、ロックアップクラッチ62を係合することにより、入力軸57とポンプインペラ47とが機械的に接続されて、流体伝達による動力の損失が抑制される。また、このような制御により、機械式オイルポンプ6の吐出量を増加して、その駆動領域が拡大されることにより、この機械式オイルポンプ6に代わって油圧を補償するための電動オイルポンプ110を駆動するべき状態が低減する。このため、電動機110Aの消費電力を抑制することができるとともに、その駆動頻度が少なくなる。したがって、電動機110Aが、整流子またはスリップリングにブラシを有するモータである場合には、そのブラシの摩耗が抑制されて寿命および耐久性を向上させることができる。
【0065】
ところで、車両を走行させるための駆動力源としてエンジンのみが搭載され、かつ、所定の停止条件の成立によりエンジンを自動停止させる一方、所定の運転条件の成立により停止中のエンジンを自動的に運転状態に復帰させることのできる、いわゆるエコランシステムを備えている車両もある。このようなエコランシステムを有する車両においては、エンジンの自動停止中には、車両の発進性を良好にするために、エンジンにより駆動される機械式オイルポンプのほかに、この機械式オイルポンプの機能を補う電動オイルポンプが設けられている。そこで、このような、エコラン車、もしくはモータ・ジェネレータの駆動領域が少ない設定のハイブリッド車に対して上記制御を適用すれば、低車速領域でも機械式オイルポンプを駆動して吐出量を増加することができるために、機械式オイルポンプの機能を補償するための電動オイルポンプのような補償手段が不要になる可能性がある。したがって、油圧補償装置のシンプル化を図ることができる。
【0066】
なお、この実施形態において、入力クラッチ122に用いられる摩擦式クラッチには、乾式クラッチおよび湿式クラッチが含まれる。この乾式クラッチおよび湿式クラッチには、単板クラッチおよび多板クラッチが含まれる。さらにまた、入力クラッチ122は、摩擦式クラッチに代えて電磁式クラッチを用いることもできる。また、この発明において、流体式動力伝達装置として、トルクを増幅する機能のないフルードカップリングを用いることもできる。
【0067】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1の発明によれば、車輪からの動力により第1のオイルポンプを駆動する際に入力クラッチを解放することにより、第1のオイルポンプを駆動する動力の損失を抑制することができ、第1のオイルポンプの吐出量を可及的に増加することができる。
【0068】
また、請求項1の発明によれば、車輪からの動力により第1のオイルポンプを駆動する際に入力クラッチを解放し、さらに、ロックアップクラッチが係合されて第2回転部材と第1回転部材との間で機械的に動力の伝達がおこなわれるため、流体伝達による動力の損失を抑制することができる。また、入力クラッチが解放されているために、駆動力源の状態に関わりなくロックアップクラッチ係合領域を拡大することができる。
【0069】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得られるほか、第1のオイルポンプの吐出量が増加するため、第2のオイルポンプを駆動するために必要な電力を低減することができるとともに、第2のオイルポンプの駆動頻度が減少し、その寿命および耐久性を向上することができる。
【0070】
請求項3の発明によれば、請求項1または2の発明と同様の効果を得られるほか、低車速領域において、第1のオイルポンプを駆動するための動力が確保される。したがって、低車速領域における第1のオイルポンプの吐出量を可及的に増加することができ、この第1のオイルポンプの油圧発生機能を補償するための油圧補償手段が不要になる可能性があり、システムをシンプル化することができる。請求項4の発明によれば、請求項1ないし3のいずれかの発明と同様の効果を得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の制御装置で実行される制御例を説明するためのフローチャートである。
【図2】 この発明の一実施形態であるハイブリッド車のパワートレーンおよび制御系統を模式的に示すブロック図である。
【図3】 図2に示すパワープラントを具体化したスケルトン図である。
【図4】 図3の自動変速機の各変速段を設定するためのクラッチおよびブレーキの係合・解放を示す図表である。
【図5】 図2に示す自動変速機を制御するシフトレバーの操作により選択されるシフトポジションを示す概念図である。
【図6】 図2に示す自動変速機の変速段を手動操作により変更できる状態を設定・解除するためのスポーツモードスイッチを示す概念図である。
【図7】 図6に示されたスポーツモードスイッチのオン状態において、自動変速機をダウンシフトまたはアップシフトするために、ステアリングホイールに設けられているスイッチの一例を示す図である。
【図8】 図2に示す油圧制御部の油圧回路の要部を示す図である。
【図9】 この発明の一例における総合制御装置における入出力信号を示す図である。
【図10】 図2に示されたハイブリッド車のエンジンおよびモータ・ジェネレータの駆動・停止を制御する制御態様と、自動変速機の変速段を制御する変速線図と総括的に示すマップである。
【図11】 図2に示されたハイブリッド車のエンジンおよびモータ・ジェネレータの駆動・停止を制御する制御態様と、自動変速機の変速段を制御する変速線図と総括的に示すマップである。
【図12】 図2に示されたハイブリッド車のエンジンおよびモータ・ジェネレータの駆動・停止を制御する制御態様と、自動変速機の変速段を制御する変速線図と総括的に示すマップである。
【図13】 図2に示されたハイブリッド車のエンジンおよびモータ・ジェネレータの駆動・停止を制御する制御態様と、自動変速機の変速段を制御する変速線図と総括的に示すマップである。
【図14】 図1の制御例に対応するタイムチャートである。
【符号の説明】
1…エンジン、 1C…クランクシャフト、 3…自動変速機、 4…流体式動力伝達装置、 6…機械式オイルポンプ、 39A…車輪、 47…ポンプインペラ、 57…入力軸、 61…タービンランナ、 62…ロックアップクラッチ、 110…電動オイルポンプ、 110A…電動機、 120…フロントカバー、121…動力伝達軸、 122…入力クラッチ。
Claims (4)
- 駆動力源と車輪との間の動力伝達経路に配置されている入力クラッチと、前記動力伝達経路における前記入力クラッチと前記車輪との間に配置され、かつ、前記車輪からの動力により駆動することのできる第1のオイルポンプとを備えている駆動制御装置において、
前記動力伝達経路における前記入力クラッチと前記車輪との間に、第1回転部材と第2回転部材との間で流体により動力の伝達をおこなうことのできる流体式動力伝達装置が配置され、前記第1回転部材が前記入力クラッチを介在させて前記駆動力源に接続され、かつ、前記第2回転部材が前記車輪に接続されており、前記第1のオイルポンプが前記第1回転部材に接続されているとともに、前記第1回転部材と前記第2回転部材とを機械的に接続することのできるロックアップクラッチが設けられており、
車両のコースト状態で前記車輪からの動力により前記第1のオイルポンプを駆動する際に、前記入力クラッチを解放させ、さらに、前記ロックアップクラッチを係合させる入力クラッチ制御手段を備えていることを特徴とする駆動制御装置。 - 前記第1のオイルポンプの機能を補い、かつ、電力の供給により駆動される第2のオイルポンプが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の駆動制御装置。
- 前記コースト状態が所定車速以下で発生していることを特徴とする請求項1または2に記載の駆動制御装置。
- 前記流体式動力伝達装置と前記車輪との間の動力伝達経路に、摩擦係合装置の係合・解放により複数の変速比を段階的に変更することのできる変速機が設けられており、
前記入力クラッチ制御手段は、前記駆動力源の動力が前記車輪に伝達されて前記車両が走行するときには係合されない摩擦係合装置を前記車両のコースト状態で係合させる手段を含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の駆動制御装置。
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