JP4440949B2 - 電気車の駆動装置 - Google Patents
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なお、その脈動周波数成分は直流ステージに設けられる平滑コンデンサの容量を大きくすれば低減できるが、完全には低減できず、それによる平滑コンデンサの体格の増大で装置としての小型軽量化が阻害される。
そして、上記脈動の有した直流電圧をインバータにより可変周波数・可変電圧の交流に変換し、それを交流モータ等の負荷に給電した場合、インバータ出力電圧およびモータ電流には、インバータ動作周波数成分の他に上記脈動周波数とインバータ動作周波数の差の成分及び和の成分が含まれることになる。それら成分のうち、動作周波数と脈動周波数が接近すると低周波成分となる前記差の成分は、モータにおいて低周波数に対するインピーダンスが小さいため、この成分によって大きな脈動電流が流れ、モータ発生トルクが脈動するといったビート現象が発生する。
このビート現象の発生原理及びその抑制方式が例えば特許文献1に記載されている。同公報によるビート現象の抑制方式は、インバータの直流入力電圧の脈動度合を検出し、この脈動度合に対して動作周波数に応じた補償ゲイン,補償位相差で周波数脈動度合を求め、この周波数度合に応じてインバータ周波数を調整することでビート現象を抑制するものである。
しかしながら、インバータの動作周波数,モータ出力を考慮して補償ゲイン,位相差を調整することは実施上複雑(煩雑)となるという課題がある。
また、近年、電気車を駆動する誘導電動機の制御装置として、例えば特開平5−83976号公報に記載するベクトル制御のインバータが用いられるようになってきているが、ベクトル制御の持つ特徴を活かして上記ビート現象を抑制することに関する記載はなく、又、その他の刊行物にもその技術に関するものは見当たらない。
前記2軸の電流成分の少なくとも何れか一方の電流成分より該電流成分に含まれるコンバータの整流に伴う脈動周波数の電流成分を検出する脈動成分検出手段と、該脈動成分の検出値が小さくなる方向に該検出値に基づいて電圧指令における位相を調整するフィードバック補償手段と、前記補償は、インバータの出力周波数がコンバータの整流に伴う脈動周波数を通過する脈動周波数近傍の帯域のみとする手段とを備える。
また、前記2軸の電流成分の少なくとも何れか一方の電流成分より該電流成分に含まれるコンバータの整流に伴う脈動周波数の電流成分を検出する脈動成分検出手段と、該脈動成分の検出値が小さくなる方向に該検出値に基づいて電圧指令における位相を調整するフィードバック補償手段と、前記補償は、インバータの出力電圧の半周期に含まれるパルスが1パルスでのみ動作する手段とを備える。
また、これにより、インバータ入力の直流電圧に脈動があっても、ビート現象を抑制するので、平滑コンデンサの容量を小さくできるという効果も得られる。
先ず、図2について説明する。架線9に給電された単相交流電源11からの入力をパンタグラフ10,リアクトル12を介して整流し直流に変換するコンバータ13と、コンバータ13の直流側に接続されコンバータ13が整流した直流電圧を平滑する平滑コンデンサ14と、平滑コンデンサ14によって平滑された直流電圧edを入力電圧とし、3相交流モータ16(ここでは誘導電動機を示す)に可変周波数・可変電圧の交流を供給するインバータ15からなる。尚、同図には、後述する制御装置に用いるための検出器として、平滑コンデンサの電圧edを検出する電圧検出器141、インバータから交流モータへの3相出力電流(U〜W各相電流iu〜iw)を検出する電流検出器151〜153、及びインバータの3相出力電圧(Vu〜Vw)を検出する電圧検出器161、交流モータの回転周波数frを検出する速度検出器154が設けられていることを示している。
図1の制御装置の構成は、上記特開平5−83976号公報に記載されるベクトル制御方式を基本としている。31は運転指令発生手段であり、駆動する交流モータの回転座標系において直交する2軸の電流成分の励磁電流指令Id*,トルク電流指令Iq*を発生する。21は電流ベクトル演算手段であり、検出したインバータの各相の瞬時出力電流iu,iv,iwを、インバータの基本周波数finv0で後述する(2)式に基づき回転座標系で座標変換し、直交する2軸の電流成分に分解して励磁電流成分Id,トルク電流成分Iqをベクトル演算する。32は電流制御手段であり、上記Id及びIqがそれぞれの指令Id*及びIq*に一致するように、インバータの出力電圧(実効値)V及びすべり周波数fsの各指令を演算する。34はインバータ補償周波数発生手段であり、上記演算したトルク電流成分Iqに基づきインバータ補償周波数fcを発生する。35,36は加算器であり、35により交流モータの回転周波数frとすべり周波数fsを加算してインバータ基本周波数finv0を演算し、さらに36によりインバータ基本周波数finv0にインバータ補償周波数fcを加算してインバータ動作周波数finvの指令を演算する。90はインバータ動作周波数finvを基にインバータ出力電圧の位相指令θ0(=2πfinvt,t:時間)を演算する位相演算手段である。33はPWMパルス発生手段であり、インバータの出力電圧の指令Vとインバータ位相指令θ0に基づき周知のパルス幅変調制御を行い、PWM信号を発生する。このPWM信号によりインバータ15を動作させる。
ここで本実施形態の特徴部は、34,36の構成にあり、これを従来のベクトル制御装置の基本構成に追加したものである。
ベクトル制御は、励磁電流とトルク電流を独立に制御するものであり、周知のことであるが、先ずはじめに、3相の交流モータの各相瞬時電流iu,iv,iwを上記2つのベクトル成分に分解する方法について説明する。
(1)式は、ビート現象を発生していないとき(fc=0,finv=finv0)の交流モータの3相の瞬時相電流を表し、ここにIMはモータ電流の実効値を、tは時間を、φはモータ電流の力率角である。
次に、インバータ入力の直流電圧に周波数がf0の脈動電圧が重畳した場合について説明する。インバータの交流出力電圧には、インバータ基本周波数finv0成分の他に、インバータ基本周波数finv0と直流電圧の脈動周波数f0の和の周波数成分finv0+f0、及び差の周波数成分finv0−f0の周波数成分が発生する。このため、モータ電流iu,iv,iwにもインバータ基本周波数finv0の他にfinv0+f0及びfinv0−f0の周波数成分が発生する。モータのインピーダンスは低い周波数になればなるほど低くなることを考慮すると、finv0−f0の周波数成分がビート現象を発生する主原因である。そこで、脈動周波数成分を含むモータ電流をfinv0及びfinv0−f0によって表すと以下の様になる。ここに、finv0成分の電流実効値をIM、finv0−f0成分の電流実効値をIBとする。
上記(3)式の3相の瞬時電流を2πfinv0の位相で回転する回転座標系で直交するd−q2軸成分(Id,Iq)に座標変換すると、(4)式で表せる。
すなわち、モータの電流をId,Iqという回転座標に変換して検出することで、基本波成分の電流は直流信号として現れるので、それに重畳する脈動周波数成分を取り出すことは容易となる。
本実施形態では、検出した3相のモータ電流を回転座標系に変換したId,Iqの少なくとも何れかよりf0の電流成分を取り出し、この成分が小さくなる方向にインバータの動作周波数(出力周波数)finvを制御することで、モータ電流がfinv0−f0の周波数でビートする現象を抑制するようにしたものである。
また、ビート現象はインバータの動作周波数が脈動周波数を通過するときに発生するので、インバータ基本周波数finv0への補償周波数fcの加算は脈動周波数近傍の帯域のみ行うようにしてもよい。
以上に述べた図3,図4の実施形態においては、トルク電流成分Iqの脈動成分に着目して制御を行っているが、励磁電流成分Idの脈動成分に着目してビート現象抑制制御を行っても良い。
同図の構成によるものでは、トルク脈動を制御対象としているので、より高いモータのトルク脈動抑制効果を得ることができるといった利点がある。
なお、上記補償要素の伝達関数は、(5)式に限らず、周波数f0近傍についてのみ高いゲインを有する伝達関数であれば良いことは勿論である。
なお、図5,図6ではIq,Idよりトルクを演算して行ったが、トルクはモータの出力に比例するので、同図におけるトルクの代わりにIq,Idから電力を演算して行ってもよいことは勿論である。
このように本発明では、トルク電流成分に含まれる脈動周波数成分を検出し、インバータ出力周波数にフィードバックすることによって、モータ電流およびトルク脈動の発生が抑制され、ビート現象の発生が抑制されていることが確認できる。
また、本発明は、インバータ出力周波数を調整することによってビート現象を抑制する方式であるため、インバータの出力電圧が複数のパルスから構成され出力電圧を調整できる動作領域はもとより、鉄道車両用インバータの様にインバータの出力電圧一周期に含まれるパルスが幅180°(1パルス)であり、インバータの出力電圧を操作することができない動作領域(1パルスモード)においてもインバータの周波数を調整することにより、ビート現象を抑制することが可能である。
尚、その詳細は、特開昭64−77492号公報の特に4頁左下欄14〜右下欄13行及び同欄の(2)式に記載される。この同公報を引用して本願の実施形態に当てはめ、再記する。直流電圧edの直流分をE、その脈動分をΔE0、その脈動周波数をf0とすると、インバータ周波数指令finv0に加算する補償周波数fc2は、次式で表される。
このように、インバータの出力位相を直接に補償することによっても前述の実施形態の場合と同様のビート現象抑制効果が得られる。
図11は、電圧/周波数一定制御いわゆるV/F制御の装置で本発明を実施した例を示す。同図の構成において図1と符号が同じものは説明を省略する。50はすべり周波数指令発生手段で、同手段より出力されるすべり周波数指令fsと検出されたモータ回転周波数frとを加算して基本波周波数finv0を生成する。その周波数の位相を基準として電流ベクトル演算手段21よりモータ相電流iu〜iwを回転座標系で座標変換し、トルク電流成分Iqを演算する。52はV/F一定制御手段で、基本周波数finv0に比例した電圧指令Vを出力する。34はインバータ補償周波数発生手段で、上記演算したトルク電流成分Iqに基づきインバータ補償周波数fcを発生する。このfcと基本周波数finv0とを加算してインバータ動作周波数(出力周波数)の指令finvを生成する。33はPWMパルス発生手段で、インバータの出力電圧の指令Vと位相指令θ0に基づき周知のパルス幅変調制御を行いPWM信号を発生する。このPWM信号によりインバータ15を動作させる。ここで、インバータ補償周波数発生手段34は、図3〜図6の何れかで示されるもので構成する。ただし、図5,図6の構成を適用する場合には、電流ベクトル演算手段21により励磁電流成分も演算してその結果を用いるものとする。
本実施形態のV/F制御では、モータにおける励磁電流成分及びトルク電流成分がそれらの指令値になるように制御する制御系を有していないために、電流ベクトル演算手段21で演算されたトルク電流成分又は励磁電流成分は真のものとはならない。これは実際のモータの回転座標系におけるd−q軸とはずれることによるものである。この軸ずれはモータの周波数が低いほど大きくなることが分かっている。しかし、ビート現象が発生する周波数帯域は前述したように100Hz近辺であることを考えれば、この領域での軸ずれはわずかとなるので演算されるIq,Idの精度の低下も少ない。
そこで、本実施形態では、インバータ入力の直流電圧に重畳する整流に伴う脈動周波数近辺の領域のみインバータ補償周波数fcを基本周波数finv0に加算するようにすることで図1の実施形態で得られるものとほぼ同程度のビート現象の抑制効果が得られる。
このように本発明は、適用するインバータの制御方式がベクトル制御,V/F制御を問わず実施できるところにも特徴を有している。
以上、本発明の実施形態として、トルク電流成分Iq,励磁電流成分IdないしはモータトルクTの脈動成分を検出し、インバータ出力周波数にフィードバックすることによってビート現象の抑制する方式を示したが、インバータの直流入力電力の瞬時値すなわちインバータの直流電圧の瞬時値と直流入力電流の瞬時値の積は、モータトルクTの瞬時値と比例することから、インバータの直流入力電力の瞬時値の脈動成分を検出し、インバータ出力周波数にフィードバックすることによってもビート現象の抑制をはかることができることは明らかである。
本実施形態によれば、インバータの出力電圧が飽和しない領域では図1と同様の効果が得られる。
ここで、インバータ補償周波数電圧発生手段73の詳細な構成は、図3,第4図に示した制御回路を適用する。例えば図3に示したものを適用する場合には脈動成分検出回路61でVqに含まれる脈動周波数f0の成分を検出し、補償器62においてf0の成分が0となるように補償周波数fcを出力する比例,積分等の補償要素で構成する。
本実施形態によれば、図1と比べ脈動周波数成分補償として特別にインバータの出力電圧の検出器や電圧ベクトル演算手段を設ける必要があるが、ビート現象を発生するインバータ出力電圧の正負極側の電圧アンバランスを直接的に検出して補償をかけるので、精度と応答性が優れるという効果がある。
なお、図13の実施形態はVqの脈動周波数成分に基づいて周波数を補償するものであるが、その代わりに位相θ0を補償するようにしてもよい。
本実施形態によれば、インバータの出力電圧が飽和しない領域では図13と同様の効果が得られる。
21…電流ベクトル演算手段、31…運転指令発生手段、32…電流制御手段、33…PWMパルス発生手段、34…インバータ補償周波数発生手段、35,36…加算器、90…位相演算手段
41…減算器、42…減算器、61…脈動成分検出器、62…補償器、63…脈動成分補償器、64…演算手段、65…脈動検出器、66…補償器、67…トルク演算手段、68…脈動成分補償器
37…加算器、38…補償周波数発生手段、39…加算器39、40…補償位相演算手段、50…すべり周波数指令発生手段、52…V/F一定制御手段、70…補償電圧発生手段、71…加算器、72…電圧ベクトル演算手段、73…インバータ補償周波数発生手段、74…補償電圧発生手段、75…加算器
Claims (2)
- 架線からの単相交流電圧を整流して直流電圧に変換するコンバータ、該コンバータの直流側に接続する平滑コンデンサ、該コンデンサの直流を可変電圧可変周波数の交流に変換し、その変換出力を電気車を駆動する交流モータに供給するインバータ、該インバータ出力の瞬時電流を検出する手段、該検出した電流を回転座標系で座標変換し、直交する2軸の電流成分(励磁電流成分、トルク電流成分)をベクトル演算する手段、該演算された2軸の電流成分がそれぞれの2軸に相当する電流指令に一致するように電圧指令を生成する手段と、前記電圧指令における位相を発生する手段と、該位相と前記電圧指令とに基づき前記インバータの出力電圧をパルス幅制御する手段を有する制御装置からなる電気車の駆動装置において、
前記2軸の電流成分の少なくとも何れか一方の電流成分より該電流成分に含まれる前記コンバータの整流に伴う脈動周波数の電流成分を検出する脈動成分検出手段と、該脈動成分の検出値が小さくなる方向に該検出値に基づいて前記電圧指令における位相を調整するフィードバック補償手段と、
前記補償は、前記インバータの出力周波数が前記コンバータの整流に伴う脈動周波数を通過する前記脈動周波数近傍の帯域のみとする手段とを備えることを特徴とする電気車の駆動装置。 - 架線からの単相交流電圧を整流して直流電圧に変換するコンバータ、該コンバータの直流側に接続する平滑コンデンサ、該コンデンサの直流を可変電圧可変周波数の交流に変換し、その変換出力を電気車を駆動する交流モータに供給するインバータ、該インバータ出力の瞬時電流を検出する手段、該検出した電流を回転座標系で座標変換し、直交する2軸の電流成分(励磁電流成分、トルク電流成分)をベクトル演算する手段、該演算された2軸の電流成分がそれぞれの2軸に相当する電流指令に一致するように電圧指令を生成する手段と、前記電圧指令における位相を発生する手段と、該位相と前記電圧指令とに基づき前記インバータの出力電圧をパルス幅制御する手段を有する制御装置からなる電気車の駆動装置において、
前記2軸の電流成分の少なくとも何れか一方の電流成分より該電流成分に含まれる前記コンバータの整流に伴う脈動周波数の電流成分を検出する脈動成分検出手段と、該脈動成分の検出値が小さくなる方向に該検出値に基づいて前記電圧指令における位相を調整するフィードバック補償手段と、
前記補償は、前記インバータの出力電圧の半周期に含まれるパルスが1パルスでのみ動作する手段とを備えることを特徴とする電気車の駆動装置。
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