JP4437669B2 - 紙壁紙 - Google Patents
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Description
紙壁紙は、裏打紙に1層以上の紙の層を接着剤を介して積層して構成されている。
また、古くから、裏打紙に積層する紙に、合成繊維を配合(混抄)した紙壁紙も知られている(特開昭50−161548号公報、同56−26098号公報、特開2000−96495号公報、同2001−303491号公報、同2002−54099号公報、同2003−13397号公報など参照)。
この特性により、壁面への貼着施工の後、施工用接着剤の乾燥、あるいは室内の湿度の変化により、紙壁紙同士のジョイント部、あるいは壁紙と柱や梁等の構築物との間に目開きが発生することがある。
このような壁面に、上記のような紙壁紙を施工する場合、紙壁紙の表面に意匠とは異なる凹凸が発生して、仕上り面の美観を損なうことがある。
また、エンボス加工を施したとしても、紙壁紙の水分・湿分の吸・放出の繰返しにより、エンボス加工による凹凸紋が変形することがあるばかりか、この凹凸紋は、紙壁紙を施工する際のローラー掛けによっても変形したり、潰れたりすることもある。
しかも、これらエンボス意匠の変形や潰れにより、不陸の影響による仕上り面の美観がさらに損なわれることとなる。
このとき、(1)上記表層紙は、裏打紙側面に接着剤層を介して中紙が積層されてなるものであってよく、また(2)前記表層紙と前記中紙の積層体へのエンボス加工は、これらを裏打紙に積層する前に施されてなることが好ましく、さらに(3)表層紙の厚さ、または前記表層紙と前記中紙の積層体の厚さは、エンボス加工後において、エンボス加工前の厚さの101〜300%であることが好ましい。
混抄する合成繊維は、ポリエステル、ポリアクリル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリ尿素等の合成樹脂繊維が使用でき、これらは単独で使用してもよいし、適宜の2種以上を組み合わせて使用することもできる。
合成繊維の混抄割合は、少なすぎると、合成繊維を混抄する技術的意義が生じず、特に上記の水中伸度を1%以下に抑えることができなくなったり、所望の付形性を得ることができないため良好なエンボス加工ができなくなり、エンボス加工後の表層紙の厚さを、エンボス加工前の表層紙の厚さの101〜300%にすることが困難になることに加え、紙壁紙の施工に際して要するローラー掛け等によって、折角良好に入ったエンボス加工による凹凸紋が変形したり、潰れたりする。
逆に、多すぎると、表層紙としての風合が劣ったり、コストアップの原因ともなる。
これらを考慮して、本発明では、合成繊維の混抄割合を5〜60重量%とする。
この水中伸度は、壁紙の品質を評価する方法として、JISに「壁紙原紙の試験方法」が規定されており、その試験項目中に挙げられている「水中伸度(20℃、10分浸漬)」(JIS P−8127)を指す。なお、JISの「壁紙原紙」は、この原紙の表面側に模様印刷等を施して壁紙とするものであって、本発明における表層紙ではなく、むしろ裏打紙に相当するものである。
この水中伸度は、一般には、壁紙中、裏打紙の施工糊に対する物性等を評価するために用いられるものである。
これに対し、本発明では、この水中伸度を、表層紙の特性を示す指標とし、この指標によって、本発明に係る紙壁紙の施工後の目開き防止を、裏打紙とは無関係に、表層紙において図るものである。
先ず、300mm(紙の幅方向の寸法)×50mm(紙の縦方向の寸法)の試験片2枚を、標準状態の空気中に2時間以上放置し、幅方向および縦方向の中心にそれぞれ鉛筆で直線を引き、この2本の直線上の紙の長さを少数点以下1桁まで測定する。
次に、これらの試験片を、水を入れた水槽中に10分間浸漬した後、ガラス板でシワのないように掬い上げ、直ちに同じ測定個所を測定する。
これらの測定値を使用し、次式による計算を行う。
なお、計算は少数点以下1桁まで表示し、2枚の平均値を表す。
〔{(浸漬後の長さ)−(浸漬前の長さ)}/(浸漬前の長さ)〕×100(%)
このエンボス加工は、紙壁紙において通常使用されているエンボス加工により行うことができ、本発明では、エンボス加工後の表層紙の厚さが、エンボス加工前の表層紙の厚さの101〜300%となることが好ましく、この厚さを確実かつ正確に得るためには、混抄されている合成繊維が軟化する程度の加熱を行いながら、エンボス加工することが好ましい。
エンボス加工後の厚さが不十分であれば、裏打紙と表層紙との間に形成される微小な空隙の高さが十分にならず、良好な凹凸意匠が形成されない結果として製品紙壁紙に優れた不陸隠蔽性を付与することができず、余り厚くてもこの不陸隠蔽性の向上効果が飽和するばかりでなく、余り厚すぎるエンボス加工は、良好に施すことが困難であり、表層紙の破れ等が発生する可能性が生じる。
この積層は、どのような方法によってもよいが、一般には、裏打紙上面または表層紙裏面に接着剤を塗布し、この接着剤層上に上記の表層紙を積層すればよい。
このとき使用する接着剤は、特に限定しないが、例えば、本願出願人による先願の特許第3364436号に記載の酢酸ビニル−エチレン共重合樹脂(EVA)エマルジョン及び/又はポリ酢酸ビニル(PVAc)エマルジョンと石油ワックスエマルジョンとを含む接着剤により形成された接着剤層であることが、後述するように、紙壁紙を壁面に貼着施工する際に使用する施工糊中の水分が表層紙表面側に浸透移行するのを防止する点から好ましい。
PVAcエマルジョン及び/又はEVAエマルジョンが多すぎると、紙壁紙の透湿度が高くなりすぎ、壁面への貼着施工の際の施工糊中の水分の浸透移行により貼着作業性を低下させる。逆に石油ワックスエマルジョンが多すぎると、接着剤層の成膜性が悪化する(均一な被膜が形成されない)ため、やはり紙壁紙の透湿度が高くなり、施工糊の乾燥速度が速くなって、作業性を悪化させる。
なお、上記のPVAcエマルジョン及び/又はEVAエマルジョンと石油ワックスエマルジョンとを主体とする接着剤には、必要に応じて、通常使用されている増粘剤、減粘剤、乾燥遅延剤、湿潤剤、充填剤、分散剤等の各種添加剤を加えてもよい。
すなわち、壁紙を施工する際には、施工を容易にするために、壁紙の裏面に施工糊を塗布した後、壁紙の裏面同士が一部くっつくような状態(蛇腹状)に折りたたんでおき、壁紙が施工糊の水分を吸って柔らかくなったところで、再度裏面同士がくっついている壁紙を剥がし伸ばして壁に貼るという作業を行う。
しかし、紙壁紙は、透湿度が非常に高いため、施工糊の乾燥が非常に速く、壁紙が十分柔らかくなる前に施工糊が固まってしまい、壁紙をきれいに剥がすのが困難になるという問題がある。
この問題を解決するために、紙壁紙の表面に水分を通し難いフィルムを貼着して水の透湿度を下げたり、接着剤を大量に塗布して施工糊の乾燥を遅らせる等の工夫がなされるが、フィルムを貼着すると、水分を多量に吸って伸びる紙と、あまりのびないフィルムが接着されているため、施工糊塗布後に壁紙がカールしてしまい、また大量の接着剤を塗布すると、コスト高になったり、接着剤の乾燥に時間を要し、紙壁紙の施工効率が悪くなる。
このような事情を回避するために、本発明において、上記フィルムの貼着に代えて、本願出願人による先願の上記接着剤の層を、上記のように表層紙と裏打紙との接着剤層として、あるいは複数層からなる表層紙の少なくとも1層の接着剤層として設けておくこととする。
この表面処理層の材料は、特に制限ぜず、通常の紙壁紙の最上層に施されるものであれば、どのようなものであってもよい。
この表面処理層は、表層紙のエンボス加工の前または後の何れの時点で設けてもよい。
そして、このエンボス加工による凹凸紋は、環境の温度や湿度の変化によっては潰れ等の変形は発生しないことに加え、壁への貼着施工の際のローラー掛けによっても潰れ等の変形は発生しない。
さらに、本発明の紙壁紙によれば、優れた不陸隠蔽性を示し、釘が打ち付けられている壁や、切り傷、凹み傷、これらの不完全な修復箇所等による微小な凹凸が存在する壁面へも、良好な状態で貼着施工することができる。
図1に示す構成の紙壁紙1を、以下の要領で製造した。
表層紙2として、ポリエステル繊維15重量%を混抄した、坪量120g/m2で、幅方向および縦方向の水中伸度がいずれも0.8%の紙からなる単層のものを使用した。
この表層紙2の表面に、アクリル樹脂系エマルジョンを30g/m2となるように塗布し、乾燥して表面処理層3とした。
この後、表面処理層3を有する表層紙2につき、(加工後厚さ/加工前厚さ)×100≒200%となるようにメカニカルエンボス加工した後、EVA系エマルジョン50重量%と石油ワックスエマルジョン50重量%からなる接着剤4を使用して、表1に示す裏打紙5に積層した。
表層紙として、ポリエステル繊維を混抄していない、坪量120g/m2で、幅方向および縦方向の水中伸度がいずれも1.6%の紙からなる単層のものを使用する以外は、実施例1〜4と同様にして比較の紙壁紙を得た。
表層紙2として、ポリエステル繊維15重量%を混抄した、坪量120g/m2で、幅方向および縦方向の水中伸度がいずれも1.6%の紙からなる単層のものを使用する以外は、実施例1〜2、比較例1〜2と同様にして比較の紙壁紙を得た。
(2)エンボス形状(凹凸紋)の変化:石膏ボードへの貼着施工前の紙壁紙を、温度20℃、湿度40%の雰囲気下に、表1に示すオープンタイムで放置し、目視によりエンボス形状(凹凸紋)の変化を観察した。
(3)ローラー掛けによるエンボス形状(凹凸紋)の変化:上記のオープンタイム後に、紙壁紙を上記のようにして石膏ボードに貼着し、該紙壁紙の表面をウレタン樹脂製のローラーにて5回強くローラー掛けして貼着施工を行った後、目視によりエンボス形状(凹凸紋)の変化を観察した。
実施例1で得た表面処理層3を有する表層紙2につき、表2に示す厚さとなるようにメカニカルエンボス加工す以外は、実施例1と同様にして本発明および比較の紙壁紙を得た。
これらの紙壁紙を、実施例1〜4および比較例1〜4で使用したものと同じ石膏ボードに厚さ0.2mmと0.1mmとなるようにタックシール(丸型・赤色)を貼り、この上に貼着施工し、次の評価を行い、結果を表2に示した。
(2)エンボス形状(凹凸紋)の変化:石膏ボードへの貼着施工前の紙壁紙を、温度20℃、湿度40%の雰囲気下に、60分間放置し、目視によりエンボス形状(凹凸紋)の変化を観察した。
(3)ローラー掛けによるエンボス形状(凹凸紋)の変化:上記の放置の後、紙壁紙を上記のようにして石膏ボードに貼着し、該紙壁紙の表面をウレタン樹脂製のローラーにて5回強くローラー掛けして貼着施工を行った後、目視によりエンボス形状(凹凸紋)の変化を観察した。
(4)不陸隠蔽性:上記の雰囲気で24時間放置した後、目視により観察し、次の基準で評価した。
◎;厚さ0.2mm、0.1mmのタックシールともに、これらに起因する凹凸が全く見られないもの。
○;厚さ0.1mmのタックシールには凹凸が見られないが、厚さ0.2mmのタックシールには若干の凹凸が見られるもの。
×;厚さ0.2mm、0.1mmのタックシールともに、凹凸が見られるもの。
図2に示す構成の紙壁紙11を、以下の要領で製造した。
表層紙として、ポリエステル繊維15重量%を混抄した、坪量120g/m2で、幅方向および縦方向の水中伸度がいずれも0.8%の紙21に、坪量120g/m2で、幅方向および縦方向の水中伸度がいずれも1.6%の紙22を、EVAエマルジョと石油ワックスエマルジョン(重量比が50/50《不揮発分換算》)からなる接着剤4′を用いて積層した複数層のものを使用した以外は、実施例1と同様にして本発明の紙壁紙を得た。
この紙壁紙について、実施例5〜8と同様にして次の評価を行い、この結果を表3に示す。
(2)エンボス形状(凹凸紋)の変化:石膏ボードへの貼着施工前の紙壁紙を、温度20℃、湿度40%の雰囲気下に、60分間放置し、目視によりエンボス形状(凹凸紋)の変化を観察した。
(3)ローラー掛けによるエンボス形状(凹凸紋)の変化:上記の放置の後、紙壁紙を上記のようにして石膏ボードに貼着し、該紙壁紙の表面をウレタン樹脂製のローラーにて5回強くローラー掛けして貼着施工を行った後、目視によりエンボス形状(凹凸紋)の変化を観察した。
(4)不陸隠蔽性:上記の雰囲気で24時間放置した後、目視により観察し、次の基準で評価した。
◎;厚さ0.2mm、0.1mmのタックシールともに、これらに起因する凹凸が全く見られないもの。
○;厚さ0.1mmのタックシールには凹凸が見られないが、厚さ0.2mmのタックシールには若干の凹凸が見られるもの。
×;厚さ0.2mm、0.1mmのタックシールともに、凹凸が見られるもの。
また、本発明の紙壁紙の表層紙に施されたエンボス加工による凹凸紋は、本発明の紙壁紙の使用環境における温度や湿度の変化によって変形することはなく、また壁への貼着施工の際のローラー掛けによっても変形することなく、上質の紙壁紙として、良好に使用することができる。
2 表層紙
3 表面処理層
4,4′ 接着剤層
5 裏打紙
Claims (3)
- 裏打紙に表層紙を積層してなる紙壁紙において、
前記表層紙は、天然パルプ95〜40重量%と合成繊維5〜60重量%を混抄してなり、水中伸度が1%以下であって、
前記裏打紙に前記表層紙を積層する前に該表層紙にエンボス加工を施して、前記表層紙と前記裏打紙との間に微小な空隙を形成してなる
ことを特徴とする紙壁紙。 - 前記表層紙が、該表層紙の前記裏打紙側面に接着剤層を介して中紙を積層してなることを特徴とする請求項1に記載の紙壁紙。
- 前記表層紙の厚さ、または前記表層紙と前記中紙の積層体の厚さが、エンボス加工後において、エンボス加工前の厚さの101〜300%であることを特徴とする請求項1または2に記載の紙壁紙。
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