JP4433512B2 - ポリアミド樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents
ポリアミド樹脂組成物およびその製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はポリアミド樹脂の有する機械特性や耐熱性を維持しながら吸水率が低く、かつ射出成形した際に成形品表面の剥離が少なく、寸法精度の高い成形品を与えるポリアミド樹脂組成物およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリアミド樹脂は機械的性質と成形性に優れ、自動車部品、電気部品などのエンジニアリングプラスチックスとして使用されている。しかし、吸水によって成形品の寸法が変化したり、機械強度が低下するという問題があり、改良が続けられている。
【0003】
なかでも、吸水性のほとんどないポリオレフィン樹脂をポリアミドに配合することで吸水性を低下させようとする多くの試みがなされている。しかしながら、これらの方法では吸水性は低下するものの、ポリアミドより耐熱性や機械物性の低いポリオレフィンを配合することにより、得られる組成物の耐熱性や機械物性も低下するという欠点があった。さらに、特開昭58−23850号公報にはポリアミドに2種類のポリオレフィンとさらに無機充填材を配合することが開示されているが、無機充填材を配合することで、得られる組成物の引張伸度などの延性が犠牲になり、また複雑な部品を射出成形した場合に成形品表面に剥離を生じるという問題が生じ、改良が求められていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は上述の問題を解消することすなわち、吸水性が低く、機械強度や耐熱性に優れ、しかも成形時に剥離を生じないポリアミド樹脂組成物を得ることを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点を解決するために鋭意検討を重ねた結果
全組成物を100重量部とした際に、
(A)ポリアミド樹脂30〜90重量部
(B)シランカップリング剤で処理した焼成カオリン5〜40重量部
(C)不飽和ジカルボン酸および/または不飽和ジカルボン酸誘導体でグラフト変性されたオレフィン系重合体2.5〜40重量部および
(D)エチレン系アイオノマー2.5〜40重量部
を配合してなる樹脂組成物であって、該樹脂組成物のASTM1号ダンベル試験片から超薄切片を切削し、透過型電子顕微鏡(TEM)で観測したとき、(B)カオリンの分散粒子数が最低50観察される視野について、(B)の全粒子に対して(C)や(D)と界面を接しておらず(A)中に独立して存在している(B)の粒子が、50%以上であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物、
および
(A)ポリアミド樹脂と(B)シランカップリング剤で処理した焼成カオリンを溶融混合した後に、(C)不飽和ジカルボン酸および/または不飽和ジカルボン酸誘導体でグラフト変性された弾性重合体および(D)エチレン系アイオノマーをさらに溶融混合することにより請求項1〜5のいずれか記載のポリアミド樹脂組成物を製造することを特徴とする樹脂組成物の製造方法
を見出し本発明に至った。
【0006】
【発明の実施の形態】
下本発明を詳細に説明する。
【0007】
本発明で用いられる(A)ポリアミド樹脂とは、アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸を主たる原料とするポリアミドである。その原料の代表例としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、テトラメチレンジアミン、ヘキサメレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂肪族、脂環族、芳香族のジアミン、およびアジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂肪族、脂環族、芳香族のジカルボン酸が挙げられ、本発明においては、これらの原料から誘導されるポリアミドホモポリマーまたはコポリマーを各々単独または混合物の形で用いることができる。
【0008】
本発明において、とくに有用なポリアミド樹脂は、200℃以上の融点を有する耐熱性や強度に優れたポリアミド樹脂であり、具体的な例としてはポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ナイロン6T/6)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ(2−メチルペンタメチレン)テレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/M5T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンセバカミド/ポリカプロアミドコポリマー(ナイロン6T/610/6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6T/12/66)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/12/6I)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)およびこれらの混合物ないし共重合体などが挙げられる。
【0009】
とりわけ好ましいものとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン6/66コポリマー、ナイロン6/12コポリマーなどの例を挙げることができ、更にこれらのナイロン樹脂を成形性、耐熱性、靱性、表面性などの必要特性に応じて混合物として用いることも実用上好適である。
【0010】
これらナイロン樹脂の重合度にはとくに制限がなく、1%の濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度が、1.5〜5.0の範囲、特に2.0〜4.0の範囲のものが好ましい。
【0011】
本発明では、特に延性、剛性をバランス良く付与するために(B)シランカップリング剤で処理した焼成カオリンを配合する。
【0012】
(B)シランカップリング剤で処理した焼成カオリンの形状は非繊維状であることが好ましい。非繊維状とは板状、棒状、球状などの形状を示す。また、その平均粒子径は、得られる組成物の延性、成形性の点から0.05〜10μmであることが好ましい。平均粒子径はより好ましくは0.1〜5μm、さらに好ましくは0.1〜3μmである。なお、これらの平均粒子径は、沈降法によって測定される。
【0013】
また、(B)焼成カオリンは、有機シラン系化合物からなるカップリング剤で予備処理して使用することで、より優れた機械的強度を得ることができる。その具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプト基含有アルコキシシラン化合物、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリクロロシランなどのイソシアナト基含有アルコキシシラン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物、γ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリエトキシシランなどの水酸基含有アルコキシシラン化合物、γ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N―β―(N−ビニルベンジルアミノエチル)―γ―アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩等の炭素炭素不飽和基含有アルコキシシラン化合物などが挙げられる。特に、γ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランが好ましく用いられる。これらの、シランカップリング剤は常法に従って、予め充填剤を表面処理し、ついでポリアミド樹脂と溶融混練する方法が好ましく用いられるが、予め充填剤の表面処理を行わずに、充填剤とポリアミド樹脂を溶融混練する際に、これらカップリング剤を添加するいわゆるインテグラルブレンド法を用いてもよい。
【0015】
本発明で用いられる(C)不飽和ジカルボン酸および/または不飽和ジカルボン酸誘導体でグラフト変性されたオレフィン系重合体におけるオレフィン系重合体としては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテニレン−1等のα−オレフィンの単独重合体もしくはエチレン系共重合体、共役ジエン系共重合体、共役ジエン−芳香族ビニル炭化水素系共重合体などが挙げられ、これらは1種以上で用いることができる。
【0016】
ここでいう単独重合体としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等が挙げられる。ポリエチレンとしてはLLDPE、HDPE、LDPEなどいずれの分子構造を持ったものも好ましく使用できる。
【0017】
さらにエチレン系共重合体とは、エチレンと他の単量体との共重合体および多元共重合体をさす。なお、エチレンの共重合量は50〜99モル%であることが好ましい。エチレンと共重合する他の単量体としては炭素数3以上のα−オレフィン、非共役ジエン、酢酸ビニル、ビニルアルコール、α,β−不飽和カルボン酸およびその誘導体などの中から選択することができる。
【0018】
炭素数3以上のα−オレフィンとは、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、3−メチルペンテン−1、オクタセン−1などであり、プロピレン、ブテン−1が好ましく使用できる。非共役系ジエンとは5−メチリデン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−プロペニル−2−ノルボルネン、5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、5−クロチル−2−ノルボルネン、5−(2−メチル−2−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(2−エチル−2−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−メチル−5−ビニルノルボルネンなどのノルボルネン化合物、ジシクロペンタジエン、メチルテトラヒドロインデン、4,7,8,9−テトラヒドロインデン、1,5−シクロオクタジエン、1,4−ヘキサジエン、イソプレン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、11−トリデカジエンなどであり、好ましくは5−メチリデン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエンなどである。α,β−不飽和カルボン酸とはアクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ブテンジカルボン酸などであり、その誘導体としてはアルキルエステル、アリールエステル、グリシジルエステル、酸無水物、イミドを例として挙げることができる。
【0019】
これらのエチレン系共重合体のなかではエチレンと炭素数3以上のα−オレフィンの共重合体が好ましく、具体的にはエチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体などが挙げられる。
【0020】
また、共役ジエン系重合体とは1種以上の共役ジエン単量体に由来する共重合体すなわち単一の共役ジエン例えば1,3−ブタジエンの単独重合体あるいは2種またはそれ以上の共役ジエン例えば1,3−ブタジエン、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンの共重合体が挙げられる。これらの重合体の不飽和結合の一部または全部が水添により還元されたものも好ましく使用できる。
【0021】
さらに、共役ジエン−芳香族ビニル炭化水素系共重合体とは共役ジエンと芳香族ビニル炭化水素との比がさまざまのブロック共重合体またはランダム共重合体であり、これを構成する共役ジエンの例としては前記の単量体が挙げられ、特に1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。芳香族ビニル炭化水素の例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、ビニルナフタレンなどが挙げられ、なかでもスチレンが好ましく使用できる。また、共役ジエン−芳香族ビニル炭化水素系重合体の芳香環以外の不飽和結合の一部または全部が水添により還元されているものも好ましく使用できる。好ましい例として、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体を部分水添してなる共重合体が挙げられる。
【0022】
オレフィン系重合体としては、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体を部分水添してなる共重合体をその最も好ましい例として挙げることができる。
【0023】
不飽和ジカルボン酸または不飽和ジカルボン酸誘導体としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ノルボルネンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、ノルボルネンジカルボン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、マレイン酸イミド、イタコン酸イミド、シトラコン酸イミドなどであり、特に無水マレイン酸、無水イタコン酸、マレイン酸イミドが好ましく使用できる。これらの不飽和ジカルボン酸またはその誘導体は2種以上を併用してもよい。なお、これら不飽和カルボン酸またはその誘導体をグラフトさせる方法については公知の手法を用いることができる。
【0024】
グラフト反応されている不飽和ジカルボン酸および/またはその誘導体の量は(C)不飽和ジカルボン酸および/または不飽和ジカルボン酸誘導体でグラフト変性されたオレフィン系重合体に対して0.01〜20重量%が好ましい。
【0025】
本発明で使用される(C)不飽和ジカルボン酸および/または不飽和ジカルボン酸誘導体でグラフト変性されたオレフィン系重合体のASTM D1238の方法による溶融流動指数(温度190℃、荷重2160gで10分間にオリフィスから押し出される量)は0.05〜3.0g/10分が好ましく、0.1〜1.6g/10分がより好ましい。
【0026】
本発明で用いられる(D)エチレン系アイオノマーとしては、エチレン、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸金属塩また場合によってはさらに不飽和カルボン酸エステルのモノマーを主鎖中に共重合してなる共重合体が挙げられ、これらは1種又は2種以上で用いることが可能である。
【0027】
不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸などが挙げられる。不飽和カルボン酸金属塩の金属種としてはナトリウム、カリウム、マグネシウム、バリウム、亜鉛、アルミニウムなどが挙げられ、これらの中で亜鉛、ナトリウム、カリウム、マグネシウムが好ましい。不飽和カルボン酸エステルはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸などのメチル、エチル、ブチル、ヘキシルなどのアルキルエステルが挙げられる。本発明で使用される(D)エチレン系アイオノマーのASTM D1238の方法による溶融流動指数(温度190℃、荷重2160gで10分間にオリフィスから押し出される量)は0.3〜10.0g/10分が好ましく、0.6〜6.0g/10分がより好ましい。
【0028】
また、(D)エチレン系アイオノマーと(C)不飽和ジカルボン酸および/または不飽和ジカルボン酸誘導体でグラフト変性されたオレフィン系重合体との上記に定義される、溶融流動指数の比、即ち、(D)の溶融流動指数/(C)の溶融流動指数の値が、0.37以上が好ましく、0.40以上がさらに好ましい。
【0029】
なかでも(D)エチレン系アイオノマーの溶融流動指数が0.3〜10.0g/10分であり、(C)不飽和ジカルボン酸および/または不飽和ジカルボン誘導体でグラフト変性されたオレフィン系重合体の溶融流動指数が0.05〜3.0g/10分であり、かつ両者の比即ち、(D)の溶融流動指数/(C)の溶融流動指数の値が0.37以上であることが好ましく、特に(D)エチレン系アイオノマーの溶融流動指数が0.6〜6.0g/10分であり、(C)不飽和ジカルボン酸および/または不飽和ジカルボン誘導体でグラフト変性されたオレフィン系重合体の溶融流動指数が0.1〜1.6g/10分であり、かつ両者の比即ち、(D)の溶融流動指数/(C)の溶融流動指の値数が0.37以上であることが好ましい。
【0030】
本発明で必要に応じて用いる(E)難燃剤としてはハロゲン元素、特に臭素を分子内に有するハロゲン系難燃剤、燐元素を分子内に有する燐系難燃剤、トリアジン化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸から誘導される塩が好ましく使用できる。特に好ましい難燃剤の例としては、ハロゲン系難燃剤としては臭素化ポリスチレン(ポリ(2臭素化スチレン)も含む)、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシなどが挙げられる。これらのハロゲン系難燃剤としてはとりわけ、分子量が1000以上の高分子量のものが好ましい。また、これらの難燃剤は2種類以上併用することも可能である。かかる難燃剤を配合する場合の配合量は、ハロゲン系難燃剤の場合、全組成物100重量部に含まれるハロゲン量が0.1〜25重量部になるように配合することが好ましく、特に全組成物100重量部に対しハロゲン含量が0.5〜20重量部になるように配合することが好ましい。ハロゲン含量が少なすぎると、得られる樹脂組成物の難燃性が不十分となる傾向があり、またハロゲン含量が多すぎると耐衝撃性や靱性の低下が顕著となる傾向がある。なお、全組成物中のハロゲン含量は元素分析によって定量することができる。
【0031】
また、好ましい(E)難燃剤としての燐系難燃剤とは燐元素を含有する化合物であり、具体的には、赤燐、ポリ燐酸アンモニウム、芳香族ホスフェート系化合物、芳香族ビスホスフェート系化合物などが挙げられる。これらの中でも赤燐が好ましく用いることができ、熱硬化性樹脂で被覆された赤燐が特に好ましく使用することができる。燐系難燃剤を配合する場合の配合量としては、全組成物を100重量部としたときに、0.1〜50重量部が好ましく、0.5〜40重量部がより好ましく、1〜30重量部がさらに好ましい。燐系難燃剤量が少なすぎると、得られる樹脂組成物の難燃性が不十分となる傾向があり、また燐系難燃剤の量が多すぎると、溶融成形時の揮散や耐熱性の低下などの悪影響が発生しやすくなる。
【0032】
赤燐はそのままでは不安定であり、また、水に徐々に溶解したり、水と徐々に反応する性質を有するので、好ましい様態としてこれを防止する処理を施したものが好ましく用いられる。即ちこのような赤燐の処理方法としては、特開平5−229806号公報に記載の赤燐の粉砕を行わず、赤燐表面に水や酸素との反応性が高い破砕面を形成させずに赤燐を微粒子化する方法、赤燐に水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムを微量添加して赤燐の酸化を触媒的に抑制する方法、赤燐をパラフィンやワックスで被覆し、水分との接触を抑制する方法、ε−カプロラクタムやトリオキサンと混合することにより安定化させる方法、赤燐をフェノール系、メラミン系、エポキシ系、不飽和ポリエステル系などの熱硬化性樹脂で被覆することにより安定化させる方法、赤燐を銅、ニッケル、銀、鉄、アルミニウムおよびチタンなどの金属塩の水溶液で処理して、赤燐表面に金属リン化合物を析出させて安定化させる方法、赤燐を水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化チタン、水酸化亜鉛などで被覆する方法、赤燐表面に鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、スズなどで無電解メッキ被覆することにより安定化させる方法およびこれらを組合せた方法が挙げられるが、好ましくは、赤燐の粉砕を行わず、赤燐表面に破砕面を形成させずに赤燐を微粒子化する方法、赤燐をフェノール系、メラミン系、エポキシ系、不飽和ポリエステル系などの熱硬化性樹脂で被覆することにより安定化させる方法、赤燐を水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化チタン、水酸化亜鉛などで被覆することにより安定化させる方法であり、特に好ましくは、赤燐表面に破砕面を形成させずに赤燐を微粒子化する方法、赤燐をフェノール系、メラミン系、エポキシ系、不飽和ポリエステル系などの熱硬化性樹脂で被覆することにより安定化させる方法である。これらの熱硬化性樹脂の中で、フェノール系熱硬化性樹脂、エポキシ系熱硬化性樹脂で被覆された赤燐が耐湿性の面から好ましく使用することができ、特に好ましくはフェノール系熱硬化性樹脂で被覆された赤燐である。
【0033】
また、樹脂に配合される前の赤燐の平均粒径は、成形品の難燃性、機械的強度や表面外観性の点から50〜0.01μmのものが好ましく、さらに好ましくは、45〜0.1μmのものである。なお赤燐の平均粒径は、一般的なレーザー回折式粒度分布測定装置により測定することが可能である。粒度分布測定装置には、湿式法と乾式法があるが、いずれを用いてもかまわない。湿式法の場合は、赤リンの分散溶媒として、水を使用することができる。この時アルコールや中性洗剤により赤リン表面処理を行ってもよい。また分散剤として、ヘキサメタ燐酸ナトリウムやピロ燐酸ナトリウムなどの燐酸塩を使用することも可能である。また分散装置として超音波バスを使用することも可能である。
【0034】
また、本発明で使用される赤燐の熱水中で抽出処理した時の導電率(ここで導電率は赤燐5gに純水100mLを加え、例えばオートクレーブ中で、121℃で100時間抽出処理し、赤燐ろ過後のろ液を250mLに希釈した抽出水の導電率を測定する)は、得られる成形品の耐湿性、機械的強度、耐トラッキング性、および表面性の点から通常0.1〜1000μS/cmであり、好ましくは0.1〜800μS/cm、さらに好ましくは0.1〜500μS/cmである。
【0035】
また、本発明で使用される赤燐のホスフィン発生量(ここでホスフィン発生量は、赤燐5gを窒素置換した内容量500mLの例えば試験管などの容器に入れ、10mmHgに減圧後、280℃で10分間加熱処理し、25℃に冷却し、窒素ガスで試験管内のガスを希釈して760mmHgに戻したのちホスフィン(リン化水素)検知管を用いて測定し、つぎの計算式で求める。ホスフィン発生量(ppm)=検知管指示値(ppm)×希釈倍率)は、得られる組成物の発生ガス量、押出し、成形時の安定性、溶融滞留時機械的強度、成形品の表面外観性、成形品による端子腐食などの点から通常100ppm以下のものが用いられ、好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは20ppm以下である。好ましい赤燐の市販品としては、燐化学工業社製“ノーバエクセル”140、“ノーバエクセル”F5などが挙げられる。
【0036】
(E)難燃剤として、赤燐を使用する場合、ポリエチレンテレフタレートを併用添加することで、さらに難燃性を高めることができる。ポリエチレンテレフタレートとしては、フェノール/テトラクロロエタンの1:1混合溶媒を用い、25℃で測定した固有粘度が0.25〜3.00dl/g、特に0.40〜2.25の範囲ものが好適である。ポリエチレンテレフタレートを添加する場合の添加量は、全組成物を100重量部としたときに、0.1〜50重量部が好ましく、0.1〜30重量部が特に好ましい。
【0037】
本発明に使用する好ましい(E)難燃剤のもう一つの例として、トリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸から誘導される塩が挙げられる。この塩はシアヌール酸またはイソシアヌール酸とトリアジン系化合物の1対1(モル)、場合により1対2(モル)の付加物である。トリアジン化合物でシアヌール酸またはイソシアヌール酸と塩を形成しないものはここでは除外する。シアヌール酸またはイソシアヌール酸と塩を形成するトリアジン系化合物としては、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、2−アミド−4,6−ジアミノ−1,3,5−トリアジン、モノ(ヒドロキシメチル)メラミン、ジ(ヒドロキシメチル)メラミン、トリ(ヒドロキシメチル)メラミンが好ましく、とりわけメラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミンが好ましい。
【0038】
トリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸との塩は、トリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸の混合物を水スラリーと成し、良く混合して両者の塩を微粒子状に形成させた後、このスラリーを濾過、乾燥して得られる粉末であり、単なる混合物とは異なる。この塩は完全に純粋である必要はなく、多少の未反応のトリアジン系化合物ないしシアヌール酸、イソシアヌール酸が残存していてもよい。
【0039】
本発明における難燃剤(E)としてトリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸との塩を使用する場合、その添加量は全組成物を100重量部とした場合、0.1〜50重量部が好ましく、0.5〜40重量部がより好ましく、1〜30重量部がさらに好ましい。
【0040】
難燃剤(E)として、上記燐系難燃剤とトリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸との塩を併用使用しても良い。
【0041】
本発明のポリアミド樹脂組成物はその構成成分として必要に応じ、(F)難燃助剤を用いてもよい。(F)難燃助剤としては金属酸化物およびホウ酸金属塩が好ましく用いられる。金属酸化物の具体例としては三酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、酸化亜鉛、酸化第一鉄、酸化第二鉄、酸化第一錫、酸化第二錫、酸化マグネシウムなどが挙げられる。ホウ酸金属塩の具体例としてはホウ酸ナトリウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸マンガンなどが挙げられる。これらは各々単独または2種以上の混合物の形で用いることができる。かかる(F)難燃助剤を用いる場合の添加量は、難燃剤の量に対し、重量で1/100〜1の範囲が好ましく選択され、特に1/20〜4/5の範囲が好ましい。難燃剤に対する難燃助剤量が少なすぎると、得られる樹脂組成物の難燃性が不十分であり、また難燃剤に対する難燃助剤量が多すぎると溶融成形時の流動性が低下するなど悪影響が生じる傾向がある。
【0042】
本発明における難燃性の付与は、上記(E)難燃剤の添加による効果であるが、難燃性の尺度として、ASTM D2863法により測定した限界酸素濃度指数(LOI)が24以上となるよう組成を選定することが好ましく、25.5以上とすることがより好ましく、27以上とすることがさらに好ましい。
【0043】
本発明の組成物においては、(B)シランカップリング剤で処理した焼成カオリンの分散粒子の50%以上、好ましくは65%以上が(A)ポリアミド樹脂中に独立して分散していることが必要である。本発明の樹脂組成物においては(A)ポリアミド樹脂のマトリックス中に(B)シランカップリング剤で処理した焼成カオリン、(C)不飽和ジカルボン酸および/または不飽和ジカルボン酸誘導体でグラフト変性したオレフィン系重合体、(D)エチレン系アイオノマーや必要に応じ(E)難燃剤、(F)難燃助剤が分散した構造をとる。その場合に(B)の全分散粒子数のうち(C)や(D)の分散粒子中に存在せずに、(A)のマトリックス中に独立して存在しているものが50%以上であることを意味する。その定量方法としては透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、組成物の超薄切片を観察し、カオリン(B)の分散粒子数が最低50観察される視野について、(B)の全粒子数と(B)の分散粒子のうち(C)や(D)と界面を接しておらず(A)中に独立して存在している粒子の数を計測し、その個数の比率を求めたものである。
【0044】
(B)シランカップリング剤で処理した焼成カオリンの分散粒子のうち(A)ポリアミド樹脂中に独立して分散しているものの割合が50%に満たない場合には、得られる組成物の機械強度が低くなるので好ましくない。
【0045】
本発明の組成物は、好ましくは(A)ポリアミド樹脂と(B)シランカップリング剤で処理した焼成カオリンを溶融混合した後に、(C)不飽和ジカルボン酸および/または不飽和ジカルボン酸誘導体でグラフト変性されたオレフィン系重合体および(D)エチレン系アイオノマーをさらに溶融混合することによって製造される。
【0046】
溶融混合に用いる装置は特に限定されないが、単軸あるいは2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダーおよびミキシングロールなど公知の溶融混練機を用い、用いるポリアミド樹脂の融点に応じて220〜330℃の温度で溶融混練する方法などを挙げることができる。
【0047】
本発明のポリアミド組成物を各構成成分を溶融混合して製造する場合、その溶融混合する順序が重要である。すなわち、まず(A)ポリアミド樹脂と(B)シランカップリング剤で処理した焼成カオリンを溶融混合した後に、(C)不飽和ジカルボン酸および/または不飽和ジカルボン酸誘導体でグラフト変性されたオレフィン系重合体および(D)エチレン系アイオノマーをさらに溶融混合することが好ましい。
【0048】
具体的には、上記した溶融混合のための装置を用いて(A)と(B)を溶融混合し、いったん混合機から取り出した後、この混合物に(C)および(D)をさらに混合し、再度溶融混合する方法や、(A)と(B)を溶融混合し、一定時間が経過した後に(C)および(D)を添加し、さらに混合を続ける方法などがある。さらに、好ましい形態としてはフィーダー口を2個以上備えた二軸押出機を使用し、(A)と(B)を上流側のフィード口から供給し、(C)および(D)を下流側のフィード口から供給することが挙げられる。二軸押出機には溶融混練時に生じる揮発成分を除去するためのベント口を設けることも好んで用いられる。
【0049】
【0050】
また、(E)ハロゲン系難燃剤や(F)難燃助剤の添加は本発明の製造物を製造する任意の段階で行われる。好ましい製造方法の一例として(A)〜(D)成分で構成される組成物を作成した後、(E)や(F)と再度溶融混練する方法が挙げられる。
【0051】
本発明の組成物の各成分の比率は全組成物を100重量部とした場合に、(A)ポリアミド樹脂が30〜90重量部、より好ましくは40〜80重量部(B)シランカップリング剤で処理した焼成カオリンが5〜40重量部、より好ましくは10〜30重量部、(C)不飽和ジカルボン酸および/または不飽和ジカルボン酸誘導体でグラフト変性したエチレン系共重合体が2.5〜40重量部、より好ましくは5〜30重量部、(D)エチレン系アイオノマーが2.5〜40重量部、特に好ましくは5〜30重量部である。(C)と(D)の好ましい比率は(C)/(D)が1/4〜4/1である。
【0052】
(A)ポリアミド樹脂が少なすぎると、機械物性や成形性が必ずしも十分ではなく、また多すぎると吸水率を低減する効果が小さい。また(B)シランカップリング剤で処理した焼成カオリンが少なすぎると耐熱性が必ずしも十分ではなく、多すぎると流動性が損なわれる傾向がある。(C)不飽和ジカルボン酸および/または不飽和ジカルボン酸誘導体でグラフト変性されたオレフィン系重合体が少なすぎると、衝撃強度が不十分であり、多すぎると成形性が損なわれる傾向がある。(D)エチレン系アイオノマーが多すぎると成形時に剥離が生じやすくなる傾向がある。
【0053】
また、(E)難燃剤を用いる場合の各成分の比率は全組成物を100重量部とした場合に、(A)ポリアミド樹脂が30〜90重量部、より好ましくは40〜80重量部(B)シランカップリング剤で処理した焼成カオリンが5〜40重量部、より好ましくは10〜30重量部、(C)不飽和ジカルボン酸および/または不飽和ジカルボン酸誘導体でグラフト変性したオレフィン系共重合体が2.5〜40重量部、より好ましくは5〜30重量部、(D)エチレン系アイオノマーが2.5〜40重量部、より好ましくは5〜30重量部、(E)難燃剤が0.1〜50重量部、より好ましくは0.5〜40重量部である。
【0054】
(E)難燃剤としてハロゲン系難燃剤を用いる場合、全組成物中のハロゲン含量が0.1〜25重量部、特に0.5〜20重量部となるように配合量を設定することが好ましい。(F)難燃助剤は必須ではないが、使用する場合、(F)難燃助剤はハロゲン系難燃剤配合量に対し1/100〜1であることが好ましく、特に好ましくは1/20〜4/5である。
【0055】
本発明では、上記記載のポリアミド樹脂組成物に、必要に応じてさらにカルボン酸無水物基を分子内に有するオレフィン化合物またはこれらオレフィン化合物の重合体を添加することにより該樹脂組成物の機械特性を向上させることができる。本発明で用いられるカルボン酸無水物基を分子内に有するオレフィン化合物またはこれらオレフィン化合物の重合体の具体例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタコン酸、無水シトラコン酸、無水アコニット酸、ノルボルネンジカルボン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物またはこれらオレフィン化合物の重合体などが挙げられる。なお、オレフィン化合物の重合体には少量のカルボン酸無水物基を含まない置換オレフィンが共重合されていても差し支えないが、実質的にカルボン酸無水物基を分子内に有するオレフィン化合物の重合体からなることが好ましい。オレフィン化合物の重合体の重合度は2から100が好ましい。これらオレフィン化合物またはこれらオレフィン化合物の重合体を添加する場合、その添加量は衝撃強度の向上効果、流動性、成形性の点からポリアミド樹脂100重量部に対して0.05〜10重量部が好ましい。これらの中で無水マレイン酸、ポリ無水マレイン酸が衝撃強度の付与の効果が最も高く好ましく用いられる。ポリ無水マレイン酸としては、例えばJ.Macromol.Sci.-Revs.Macromol.Chem.,C13(2),235(1975)などに記載のものを用いることができる。
【0056】
なお、ここで用いるカルボン酸無水物基を分子内に有するオレフィン化合物またはこれらオレフィン化合物の重合体は実質的にポリアミド樹脂と溶融混練する際に無水物の構造を取ればよく、これらオレフィン化合物またはオレフィン化合物の重合体を加水分解してカルボン酸あるいはその水溶液のような形態で溶融混練に供し、溶融混練の際の加熱により脱水反応させ、実質的に無水酸の形でポリアミド樹脂と溶融混練しても構わない。
【0057】
さらに、本発明のポリアミド樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で常用の各種添加成分、結晶核剤、着色防止剤、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミンなどの酸化防止剤、エチレンビスステアリルアミドや高級脂肪酸エステルなどの離型剤、可塑剤、熱安定剤、滑剤、紫外線防止剤、着色剤などの添加剤を添加することができる。
【0058】
本発明のポリアミド樹脂組成物は押出成形、射出成形など通常の加工方法で容易に成形品とすることができる。
【0059】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。また、配合割合は全て重量部である。
【0060】
参考例1(無水マレイン酸変性EPRの製造)
エチレン−プロピレン共重合体(三井化学製タフマーP0680)100重量部に対し、無水マレイン酸2重量部および2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサン(日本油脂製パーヘキサ25B)0.7重量部を添加し、ドライブレンドを行った後、シリンダ温度210℃の30mmφ二軸押出機で混練し、無水マレイン酸変性エチレンプロピレン共重合体(MAH変性EPR)を得た。このもののASTM D1238の方法による溶融流動指数(温度190℃、荷重2160gで10分間にオリフィスから押し出される量)は0.20g/10分であった。
【0061】
参考例2(無水マレイン酸変性HDPEの製造)
高密度ポリエチレン(三井化学製ハイゼックス2200J)100重量部に対し、無水マレイン酸1重量部および2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサン(日本油脂製パーヘキサ25B)0.1重量部を添加し、ドライブレンドを行った後、シリンダ温度210℃の30mmφ二軸押出機で混練し、無水マレイン酸変性高密度ポリエチレン(MAH変性HDPE)を得た。このもののASTM D1238の方法による溶融流動指数(温度190℃、荷重2160gで10分間にオリフィスから押し出される量)は0.70g/10分であった。
【0062】
実施例1
280℃に設定した30mm二軸押出機(日本製鋼所製TEX−30)を用い、濃硫酸中、濃度1%、25℃で測定した相対粘度が2.75のナイロン66とシランカップリング剤処理されているカオリン(エンゲルハード製トランスリンク445平均粒子径1.4μm)を主フィーダーから、参考例1で製造したMAH変性EPRとエチレン系アイオノマー(三井デュポンポリケミカル製ハイミラン1706、ASTM D1238の方法による溶融流動指数(温度190℃、荷重2160gで10分間にオリフィスから押し出される量)は、2.70g/10分)をサイドフィーダーから供給し、連続的に溶融混練し、組成物ペレットを得た。組成はナイロン66が60重量部、カオリンが15重量部、MAH変性EPRが12.5重量部、アイオノマーが12.5重量部となるように調製した。
【0063】
得られた組成物ペレットを乾燥後、シリンダ温度280℃、金型温度80℃で射出成形して、厚み1/8”のASTM1号試験片、および1/2”×5”×1/4”厚の棒状試験片、1/8”厚みのアイゾット衝撃試験片を成形した。ASTM1号試験片を60℃、相対湿度95%の恒温恒湿器に400時間放置したときの吸水率を測定したところ、3.9%であった。
【0064】
ASTM1号試験片を用いASTM D638法に従い引張試験を、また棒状試験片を用いASTM D790法に従い曲げ試験およびASTM D648法に従い荷重たわみ温度(荷重18.6kg/cm2)を、衝撃試験片にカットノッチを付け、ASTM D256法に従いアイゾット衝撃強度を測定し、表1に示す結果を得た。
【0065】
また、乾燥させたペレットをシリンダ温度280℃、成形機ゲージ圧力33kgf/cm2で、厚み0.5mm×幅1cmの棒流動金型(型温80℃)で成形したところ、90mmの流動長があった。またこのとき成形品表面に剥離は全く見られなかった。
【0066】
ASTM1号ダンベル試験片から超薄切片を切削し、透過型電子顕微鏡(TEM)で観測し、ケイ酸塩系無機充填材(B)の分散粒子数が最低50観察される視野について、(B)の全粒子数と(B)の分散粒子のうち(C)や(D)と界面を接しておらず(A)中に独立して存在している粒子の数を計測し、その個数の比率を求めたところ、82%であった。
【0067】
実施例2、3
本発明の組成物を構成する各成分を表1に示した混合比とした以外は、実施例1と同様の方法で組成物を調製した。実施例1に記載の各方法により、物性評価を行った結果を表1に示す。
【0068】
成分(B)の独立分散比率はそれぞれ、75%、88%であった。
【0069】
【0070】
比較例1
成分(C)を使用せず、各成分を表1に記載の配合比率で組成物とした。製造方法は実施例1に記載の方法に準じ、ナイロン66とシランカップリング剤処理されているカオリンを主フィーダーから、エチレン系アイオノマーをサイドフィーダーから供給し、連続的に溶融混練し、組成物ペレットを得た。実施例1と同様に評価を行った。
【0071】
比較例2実施例1と同じ原料、同じ配合組成であるが製造方法を以下のように変えて溶融混練を行った。280℃に設定した30mm二軸押出機(日本製鋼所製TEX−30)を用い、ナイロン66とエチレン系アイオノマーおよび参考例1で製造したMAH変性EPRを主フィーダーから、シランカップリング剤処理されたカオリンをサイドフィーダーから供給し、連続的に溶融混練し、組成物ペレットを得た。得られた組成物ペレットを乾燥後、実施例1の方法で射出成形および評価を行った。成分(B)の単独分散比率を実施例1と同様の方法で求めたところ、42%であった。また、成形品の曲げ弾性率、衝撃強度などの機械的特性が実施例に比べ、著しく劣り、熱変形温度も低く、耐熱性にも劣ることがわかった。
【0072】
比較例3実施例1と同じ原料、同じ配合組成であるが製造方法を以下のように変えて溶融混練を行った。280℃に設定した30mm二軸押出機(日本製鋼所製TEX−30)を用い、ナイロン66、シランカップリング剤処理されているカオリン、エチレン系アイオノマーおよび参考例1で製造したMAH変性EPRのすべての成分を主フィーダーから供給し、連続的に溶融混練し、組成物ペレットを得た。得られた組成物ペレットを乾燥後、実施例1の方法で射出成形および評価を行った。成分(B)の単独分散比率は、30%であった。また、成形品の曲げ弾性率、衝撃強度などの機械的特性が実施例に比べ、著しく劣り、熱変形温度も低く、耐熱性にも劣ることがわかった。
【0073】
【0074】
【0075】
【表1】
【0076】
【0077】
【0081】
【0086】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のポリアミド樹脂組成物は、吸水率が低く、優れた機械強度、耐熱性と靱性を合わせ持ち、かつ流動性に優れ成形時にもハクリを生じないので、自動車部品や電気部品などの射出成形用に適している。
Claims (6)
- 全組成物を100重量部とした際に、
(A)ポリアミド樹脂30〜90重量部
(B)シランカップリング剤で処理した焼成カオリン5〜40重量部
(C)不飽和ジカルボン酸および/または不飽和ジカルボン酸誘導体でグラフト変性されたオレフィン系重合体2.5〜40重量部および
(D)エチレン系アイオノマー2.5〜40重量部
を配合してなる樹脂組成物であって、該樹脂組成物のASTM1号ダンベル試験片から超薄切片を切削し、透過型電子顕微鏡(TEM)で観測したとき、(B)カオリンの分散粒子数が最低50観察される視野について、(B)の全粒子に対して(C)や(D)と界面を接しておらず(A)中に独立して存在している(B)の粒子が、50%以上であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。 - (C)不飽和ジカルボン酸および/または不飽和ジカルボン酸誘導体でグラフト変性されたオレフィン系重合体と、(D)エチレン系アイオノマーの配合比((C)/(D))が1/4〜4/1(重量比)である請求項1記載のポリアミド樹脂組成物。
- シランカップリング剤がアミノ基含有アルコキシシラン化合物またはエポキシ基含有アルコキシシラン化合物であることを特徴とする請求項1または2記載のポリアミド樹脂組成物。
- (B)シランカップリング剤で処理した焼成カオリンが平均粒子径0.05〜10μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のポリアミド樹脂組成物。
- さらにカルボン酸無水物基を分子内に有するオレフィン化合物またはこれらオレフィン化合物の重合体を添加することを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載のポリアミド樹脂組成物。
- (A)ポリアミド樹脂と(B)シランカップリング剤で処理した焼成カオリンを溶融混合した後に、(C)不飽和ジカルボン酸および/または不飽和ジカルボン酸誘導体でグラフト変性された弾性重合体および(D)エチレン系アイオノマーをさらに溶融混合することにより請求項1〜5のいずれか記載のポリアミド樹脂組成物を製造することを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
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