JP4433515B2 - 自動車電装部品ハウジング用ポリアミド樹脂組成物 - Google Patents

自動車電装部品ハウジング用ポリアミド樹脂組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性、耐衝撃性に優れ、吸水時の寸法変化が少ないコネクター、リレーボックス、ジャンクションボックス、ヒューズボックスなど自動車電装部品ハウジング用ポリアミド樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車部品の分野でポリアミド樹脂は耐熱性や、耐薬品性に優れることからコネクター、リレーボックス、ジャンクションボックス、ヒューズボックスなど電装部品のハウジング材料として広く使用されている。しかし、ポリアミド樹脂成形品は吸水によって寸法が変化するため、射出成形直後の成形品を強制的に吸水させその後の吸水による寸法変化を小さくする目的で、アニール処理が行われているのが現状であり、この工程を省くことが望まれている。
【0003】
このため吸水性のほとんどないポリオレフィン樹脂をポリアミドに配合することで吸水性を低下させ、吸水時の寸法変化を小さくしようとする試みがなされている。例えば特開平1−313555号公報にはポリアミドと変性ポリプロピレンおよび変性液状オレフィンからなる組成物を成形した自動車用ジャンクションブロックが開示されている。しかしながら、これらの方法では吸水性は低下するものの、ポリアミドより耐熱性や機械物性の低いポリオレフィンを配合することにより、得られる組成物の耐熱性や機械物性も低下するという欠点があった。さらに、特開昭58−23850号公報にはポリアミドに2種類のポリオレフィンとさらにガラス繊維などの無機充填材を配合した組成物が開示されているが、無機充填材を配合することで、得られる組成物の引張伸度などの延性が犠牲になり、またコネクターやジャンクションボックスのような複雑な形状を持った成形品を射出成形した場合には成形品にソリが生じるという問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は上述の問題を解消することすなわち、吸水による寸法変化が少なく、機械強度や耐熱性に優れ、ソリの少ない自動車電装部品ハウジングを得ることを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点を解決するために鋭意検討を重ねた結果
(A)〜(D)の合計100重量部に対して
(A)ポリアミド樹脂30〜80重量部
(B)シランカップリング剤で処理した焼成カオリン5〜40重量部
(C)不飽和ジカルボン酸および/または不飽和ジカルボン酸誘導体でグラフト変性されたオレフィン系重合体5〜40重量部および
(D)エチレン系アイオノマー2.5〜40重量部
を配合してなる樹脂組成物であって、該樹脂組成物のジャンクションブロック成形品の外枠の中心部分から超薄切片を切削し、透過型電子顕微鏡(TEM)で観測したとき、(B)カオリンの分散粒子数が最低50観察される視野について、(B)の全粒子に対して(C)や(D)と界面を接しておらず(A)中に独立して存在している(B)の粒子が、50%以上であることを特徴とする自動車電装部品ハウジング用ポリアミド樹脂組成物を見出し本発明に至った。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳細に説明する。
【0007】
本発明における自動車電装部品ハウジングとはワイヤーハーネスコネクター、リレーボックス、ジャンクションボックス、ヒューズボックスなど自動車用の電装部品のハウジングである。
【0008】
本発明で用いられる(A)ポリアミド樹脂とは、アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸を主たる原料とするポリアミドである。その原料の代表例としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂肪族、脂環族、芳香族のジアミン、およびアジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂肪族、脂環族、芳香族のジカルボン酸が挙げられ、本発明においては、これらの原料から誘導されるポリアミドホモポリマーまたはコポリマーを各々単独または混合物の形で用いることができる。
【0009】
本発明において、とくに有用なポリアミド樹脂は、200℃以上の融点を有する耐熱性や強度に優れたポリアミド樹脂であり、具体的な例としてはポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ナイロン6T/6)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ(2−メチルペンタメチレン)テレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/M5T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンセバカミド/ポリカプロアミドコポリマー(ナイロン6T/610/6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6T/12/66)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/12/6I)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)およびこれらの混合物ないし共重合体などが挙げられる。
【0010】
とりわけ好ましいものとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン6/66コポリマー、ナイロン6/12コポリマーなどの例を挙げることができ、更にこれらのナイロン樹脂を成形性、耐熱性、靱性、表面性などの必要特性に応じて混合物として用いることも実用上好適である。
【0011】
これらナイロン樹脂の重合度にはとくに制限がなく、1%の濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度が、1.5〜5.0の範囲、特に2.0〜4.0の範囲のものが好ましい。
【0012】
本発明では、(B)シランカップリング剤で処理した焼成カオリンを用いる。
【0013】
(B)シランカップリング剤で処理した焼成カオリンの平均粒子径は、得られる組成物の延性、成形性の点から0.05〜10μmであることが好ましい。平均粒子径はより好ましくは0.1〜5μm、さらに好ましくは0.1〜3μmである。なお、これらの平均粒子径は、沈降法によって測定される。
【0014】
また、焼成カオリンを、有機シラン系化合物からなるカップリング剤で予備処理して使用すること、より優れた機械的強度を得ることができるの具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプト基含有アルコキシシラン化合物、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリクロロシランなどのイソシアナト基含有アルコキシシラン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物、γ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリエトキシシランなどの水酸基含有アルコキシシラン化合物、γ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N―β―(N−ビニルベンジルアミノエチル)―γ―アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩等の炭素炭素不飽和基含有アルコキシシラン化合物などが挙げられる。特に、γ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランが好ましく用いられる。これらの、シランカップリング剤は常法に従って、予め充填剤を表面処理し、ついでポリアミド樹脂と溶融混練する方法が好ましく用いられるが、予め充填剤の表面処理を行わずに、充填材とポリアミド樹脂を溶融混練する際に、これらカップリング剤を添加するいわゆるインテグラルブレンド法を用いてもよい。
【0016】
本発明で用いられる(C)不飽和ジカルボン酸および/または不飽和ジカルボン酸誘導体でグラフト変性されたオレフィン系重合体におけるオレフィン系重合体としては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテニレン−1等のα−オレフィンの単独重合体もしくは共重合体(例えばエチレン系共重合体、共役ジエン系共重合体、共役ジエン−芳香族ビニル炭化水素系共重合体など)またはこれらのブレンド物が挙げられる。
【0017】
ここでいう単独重合体としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等が挙げられる。ポリエチレンとしてはLLDPE、HDPE、LDPEなどいずれの分子構造を持ったものも好ましく使用できる。
【0018】
さらにエチレン系共重合体とは、エチレンと他の単量体との共重合体および多元共重合体をさす。なお、エチレンの共重合量は50〜99モル%であることが好ましい。エチレンと共重合する他の単量体としては炭素数3以上のα−オレフィン、非共役ジエン、酢酸ビニル、ビニルアルコール、α,β−不飽和カルボン酸およびその誘導体などの中から選択することができる。
【0019】
炭素数3以上のα−オレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、3−メチルペンテン−1、オクタセン−1などが挙げられ、プロピレン、ブテン−1が好ましく使用できる。非共役系ジエンとしては5−メチリデン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−プロペニル−2−ノルボルネン、5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、5−クロチル−2−ノルボルネン、5−(2−メチル−2−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(2−エチル−2−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−メチル−5−ビニルノルボルネンなどのノルボルネン化合物、ジシクロペンタジエン、メチルテトラヒドロインデン、4,7,8,9−テトラヒドロインデン、1,5−シクロオクタジエン、1,4−ヘキサジエン、イソプレン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、11−トリデカジエンなどが挙げられ、好ましくは5−メチリデン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエンなどが使用できる。α,β−不飽和カルボン酸としてはアクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ブテンジカルボン酸などが挙げられ、その誘導体としてはアルキルエステル、アリールエステル、グリシジルエステル、酸無水物、イミドを例として挙げることができる。
【0020】
エチレン系共重合体の具体例としては、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、エチレン−プロピレン−ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体などを挙げることができる。
【0021】
これらのなかではエチレンと炭素数3以上のα−オレフィンの共重合体が好ましく、具体的にはエチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体などが挙げられる。
【0022】
また、共役ジエン系重合体とは1種以上の共役ジエン単量体に由来する共重合体すなわち単一の共役ジエン例えば1,3−ブタジエンの単独重合体あるいは2種またはそれ以上の共役ジエン例えば1,3−ブタジエン、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンの共重合体が挙げられる。これらの重合体の不飽和結合の一部または全部が水添により還元されたものも好ましく使用できる。
【0023】
さらに、共役ジエン−芳香族ビニル炭化水素系共重合体とは共役ジエンと芳香族ビニル炭化水素との比がさまざまのブロック共重合体またはランダム共重合体であり、これを構成する共役ジエンの例としては前記の単量体が挙げられ、特に1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。芳香族ビニル炭化水素の例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、ビニルナフタレンなどが挙げられ、なかでもスチレンが好ましく使用できる。また、共役ジエン−芳香族ビニル炭化水素系重合体の芳香環以外の不飽和結合の一部または全部が水添により還元されているものも好ましく使用できる。好ましい例として、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体を部分水添してなる共重合体が挙げられる。
【0024】
これらのオレフィン系重合体のなかでも、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体を部分水添してなる共重合体をその最も好ましい例として挙げることができる。
【0025】
不飽和ジカルボン酸または不飽和ジカルボン酸誘導体としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ノルボルネンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、ノルボルネンジカルボン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、マレイン酸イミド、イタコン酸イミド、シトラコン酸イミド、N−フェニルマレイミドなどが挙げられ、特に無水マレイン酸、無水イタコン酸、マレイン酸イミド、N−フェニルマレイミドが好ましく使用できる。これらの不飽和ジカルボン酸またはその誘導体は2種以上を併用してもよく、無水マレイン酸とN−フェニルマレイミドの組み合わせなどが好ましく使用できる。なお、これら不飽和カルボン酸またはその誘導体をグラフトさせる方法については公知の手法を用いることができる。
【0026】
グラフト反応されている不飽和ジカルボン酸および/またはその誘導体の量はオレフィン系重合体に対して0.01〜20重量%が好ましい。
【0027】
本発明で使用される(C)不飽和ジカルボン酸および/または不飽和ジカルボン酸誘導体でグラフト変性されたオレフィン系重合体のASTM D1238の方法による溶融流動指数(温度190℃、荷重2160gで10分間にオリフィスから押し出される量)は0.05〜3.0g/10分が好ましく、0.1〜1.6g/10分がより好ましい。
【0028】
本発明で用いられる(D)エチレン系アイオノマーとしては、エチレン、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸金属塩また場合によってはさらに不飽和カルボン酸エステルのモノマーを主鎖中に共重合してなる共重合体を用いることが可能である。
【0029】
不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸などが挙げられる。不飽和カルボン酸金属塩の金属種としてはナトリウム、カリウム、マグネシウム、バリウム、亜鉛、アルミニウムなどが挙げられ、これらの中で亜鉛、ナトリウム、カリウム、マグネシウムが好ましい。不飽和カルボン酸エステルはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸などのメチル、エチル、ブチル、ヘキシルなどのアルキルエステルが挙げられる。これらのなかでもエチレン−メタクリル酸−メタクリル酸ナトリウム共重合体、エチレン−メタクリル酸−メタクリル酸亜鉛共重合体などが好ましく用いられる。
【0030】
本発明で使用される(D)エチレン系アイオノマーのASTM D1238の方法による溶融流動指数(温度190℃、荷重2160gで10分間にオリフィスから押し出される量)は0.3〜10.0g/10分が好ましく、0.6〜5.0g/10分がより好ましく、さらに0.6〜4.0g/10分が特に好ましい。
【0031】
本発明の自動車電装部品ハウジング用ポリアミド樹脂組成物においては、(B)シランカップリング剤で処理した焼成カオリンの分散粒子の50%以上、さらに好ましくは65%以上が(A)ポリアミド樹脂中に独立して分散していることが好ましい。本発明の自動車電装部品ハウジング用ポリアミド樹脂組成物においては(A)ポリアミド樹脂のマトリックス中に(B)シランカップリング剤で処理した焼成カオリン、および(C)不飽和ジカルボン酸および/または不飽和ジカルボン酸誘導体でグラフト変性したオレフィン系重合体、(D)エチレン系アイオノマーが分散した構造をとる。その場合に(B)の全分散粒子数のうち、(A)のマトリックス中に独立して存在しているものが50%以上であることを意味する。その定量方法としては透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、組成物の超薄切片を観察し、シランカップリング剤で処理した焼成カオリン(B)の分散粒子数が最低50観察される視野について、(B)の全粒子数と(B)の分散粒子のうち(C)や(D)と界面を接しておらず(A)とのみ界面を有する粒子の数を計測し、その個数の比率を求めたものである。
【0032】
(B)シランカップリング剤で処理した焼成カオリンの分散粒子のうち(A)ポリアミド樹脂中に独立して分散しているものの割合が少なすぎる場合には、得られる組成物の機械強度が低くなるので好ましくない。
【0033】
本発明の自動車電装部品ハウジング用ポリアミド樹脂組成物は、(A)ポリアミド樹脂と(B)シランカップリング剤で処理した焼成カオリンを溶融混合した後に、(C)不飽和ジカルボン酸および/または不飽和ジカルボン酸誘導体でグラフト変性されたオレフィン系重合体および(D)エチレン系アイオノマーをさらに溶融混合することによって得られる。
【0034】
溶融混合に用いる装置は特に限定されないが、単軸あるいは2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダーおよびミキシングロールなど公知の溶融混練機を用い、用いるポリアミド樹脂の融点に応じて220〜330℃の温度で溶融混練する方法などを挙げることができる。
【0035】
具体的には、上記した溶融混合のための装置を用いて(A)と(B)を溶融混合し、いったん混合機から取り出した後、この混合物に(C)および(D)をさらに混合し、再度溶融混合する方法や、(A)と(B)を溶融混合し、一定時間が経過した後に(C)および(D)を添加し、さらに混合を続ける方法などがある。さらに、好ましい形態としてはフィード口を2個以上備えた二軸押出機を使用し、(A)と(B)を上流側のフィード口から供給し、(C)および(D)を下流側のフィード口から供給することが挙げられる。二軸押出機には溶融混練時に生じる揮発成分を除去するためのベント口を設けることも好んで用いられる。
【0037】
本発明の組成物の好ましい各成分の比率は(A)〜(D)成分の合計を100重量部とした場合に、(A)ポリアミド樹脂が30〜80重量部、より好ましくは40〜80重量部(B)シランカップリング剤で処理した焼成カオリンが5〜40重量部、より好ましくは10〜30重量部、(C)不飽和ジカルボン酸および/または不飽和ジカルボン酸誘導体でグラフト変性したエチレン系共重合体が5〜40重量部、より好ましくは6〜30重量部、(D)エチレン系アイオノマーが2.5〜40重量部、好ましくは5〜30重量部である。(C)と(D)の好ましい比率は(C)/(D)が1/4〜4/1である。また、(C)成分と(D)成分の合計は5〜40重量部であることが好ましく、特に10〜30重量部であることが好ましい。
【0038】
(A)ポリアミド樹脂が少なすぎると、機械物性や成形性が必ずしも十分ではなく、また多すぎると吸水率を低減する効果が小さい。また(B)シランカップリング剤で処理した焼成カオリンが少なすぎると耐熱性が必ずしも十分ではなく、多すぎると流動性が損なわれる傾向がある。(C)不飽和ジカルボン酸および/または不飽和ジカルボン酸誘導体でグラフト変性したポリオレフィン系重合体が少なすぎると、衝撃強度が不十分であり、多すぎると成形性が損なわれる傾向がある。
【0039】
本発明では、上記記載の樹脂組成物に、必要に応じてさらにカルボン酸無水物基を分子内に有するオレフィン化合物またはこれらオレフィン化合物の重合体を添加することにより該樹脂組成物の機械特性を向上させることができる。本発明で用いられるカルボン酸無水物基を分子内に有するオレフィン化合物またはこれらオレフィン化合物の重合体の具体例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタコン酸、無水シトラコン酸、無水アコニット酸、ノルボルネンジカルボン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物またはこれらオレフィン化合物の重合体などが挙げられる。なお、オレフィン化合物の重合体には少量のカルボン酸無水物基を含まない置換オレフィンが共重合されていても差し支えないが、実質的にカルボン酸無水物基を分子内に有するオレフィン化合物の重合体からなることが好ましい。オレフィン化合物の重合体の重合度は2から100が好ましい。これらオレフィン化合物またはこれらオレフィン化合物の重合体を添加する場合、その添加量は衝撃強度の向上効果、流動性、成形性の点からポリアミド樹脂100重量部に対して0.05〜10重量部が好ましい。これらの中で無水マレイン酸、ポリ無水マレイン酸が衝撃強度の付与の効果が最も高く好ましく用いられる。ポリ無水マレイン酸としては、例えばJ. Macromol. Sci.-Revs. Macromol. Chem.,C13(2),235(1975)などに記載のものを用いることができる。
【0040】
なお、ここで用いるカルボン酸無水物基を分子内に有するオレフィン化合物またはこれらオレフィン化合物の重合体は実質的にポリアミド樹脂と溶融混練する際に無水物の構造を取ればよく、これらオレフィン化合物またはオレフィン化合物の重合体を加水分解してカルボン酸あるいはその水溶液のような形態で溶融混練に供し、溶融混練の際の加熱により脱水反応させ、実質的に無水酸の形でポリアミド樹脂と溶融混練しても構わない。
【0041】
さらに、本発明の組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で常用の各種添加成分、結晶核剤、着色防止剤、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミンなどの酸化防止剤、エチレンビスステアリルアミドや高級脂肪酸エステルなどの離型剤、可塑剤、熱安定剤、滑剤、紫外線防止剤、着色剤、難燃剤などの添加剤、および(A)、(C)、(D)以外の熱可塑性樹脂組成分を添加することができる。
【0042】
本発明のポリアミド樹脂組成物は射出成形など通常の加工方法で容易に自動車電装部品ハウジングに成形することができる。得られた自動車電装部品ハウジングは、ポリアミド樹脂中にケイ酸塩系無機充填材および、不飽和カルボン酸および/または不飽和ジカルボン酸誘導体でグラフト変性されたオレフィン系重合体が独立して存在するという分散構造を取ることによって、優れた機械強度、耐熱性と靭性を合わせ持ち、かつ吸水時の寸法変化が少ないという特徴を示す。
【0043】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。また、配合割合は全て重量部である。
【0044】
参考例1(無水マレイン酸変性EPRの製造)
エチレン−プロピレン共重合体(三井化学製P0680)100重量部に対し、無水マレイン酸2重量部および2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサン(日本油脂(株)製パーヘキサ25B)0.7重量部を添加し、ドライブレンドを行った後、シリンダ温度210℃の30mmφ二軸押出機で混練し、無水マレイン酸変性エチレンプロピレン共重合体(MAH変性EPR)を得た。このもののASTM D1238の方法による溶融流動指数(温度190℃、荷重2160gで10分間にオリフィスから押し出される量)は0.20g/10分であった。
【0045】
実施例1
280℃に設定した30mm二軸押出機(日本製鋼所製TEX−30)を用い、濃硫酸中、濃度1%、25℃で測定した相対粘度が2.75のナイロン66とシランカップリング剤処理されているカオリン(エンゲルハード製トランスリンク445平均粒子径1.4μm)を主フィーダーから、エチレン系アイオノマー(三井デュポンポリケミカル製ハイミラン1706、ASTM D1238の方法による溶融流動指数(温度190℃、荷重2160gで10分間にオリフィスから押し出される量)は、2.70g/10分)と参考例1で製造したMAH変性EPRをサイドフィーダーから供給し、連続的に溶融混練し、組成物ペレットを得た。組成はナイロン66が60重量部、カオリンが20重量部、アイオノマーが10重量部、MAH変性EPRが10重量部となるように調製した。
【0046】
得られた組成物ペレットを乾燥後、シリンダ温度280℃で射出成形して、図面に示す自動車用ジャンクションブロックおよび1/2”×5”×1/4”厚の棒状試験片、1/8”厚みのアイゾット衝撃試験片を成形した。
【0047】
図1は上記で成形した自動車用ジャンクションブロックの側面図であり、図2は同平面図である。なお、図面において1はジャンクションブロックの外枠、2はジャンクションブロック成形品、Lは外枠の寸法、dは外枠にソリが生じた場合のソリ量を示す。
【0048】
ジャンクションブロック成形品の外枠の中心部分から超薄切片を切削し、透過型電子顕微鏡(TEM)で観測し、ケイ酸塩系無機充填材(B)の分散粒子数が最低50観察される視野について、(B)の全粒子数と(B)の分散粒子のうち(C)や(D)と界面を接しておらず(A)とのみ界面を有する粒子の数を計測し、その個数の比率を求め表1に示す結果を得た。
【0049】
得られたジャンクションブロック成形品の外枠のソリ(図3のd)を測定した。また60℃、95%の恒温恒湿器に400時間放置したときの成形品の外枠の寸法(図2のL)の変化率を測定した。結果は表1に示した。
【0050】
図3はジャンクションプロック成形品の外枠にソリが生じた際の様子を示したジャンクションブロック成形品の平面概念図である。
【0051】
また棒状試験片を用いASTM D790法に従い曲げ試験およびASTM D648法に従い荷重たわみ温度(荷重0.46MPa)を、衝撃試験片にカットノッチを付け、ASTM D256法に従いアイゾット衝撃強度を測定し、表1に示す結果を得た。
【0052】
実施例
本発明の組成物を構成する各成分を表1に示した混合比とした以外は、実施例1と同様の方法でジャンクションブロックおよび試験片を得た。実施例1に記載の各方法により、特性評価を行った結果を表1に示す。
【0053】
比較例1
実施例1で用いたものと同じ原料をすべて押出機の主フィーダーから投入した以外は同様にして組成物を製造し、成形品を得た。実施例1と同様にして特性を評価し、表2に結果を示した。
【0054】
比較例2,3
表2に示した配合比率で実施例1と同様に組成物を製造し、特性評価を行い結果を表2に示した。
【0055】
比較例4
実施例1においてカオリンに換えてシランカップリング処理されているチョップドガラス繊維(繊維系13μm、長さ3mm)を用いた以外は同様にして組成物を製造し、特性評価を行い結果を表2に示した。
【0056】
比較例5
実施例1で用いたナイロン66だけを射出成形して特性評価を行い結果を表2に示した。
【0057】
【表1】
Figure 0004433515
【0058】
【表2】
Figure 0004433515
【0061】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の自動車電装部品ハウジング用ポリアミド樹脂組成物を成形して得られた成形品は、ソリが少なく、優れた機械強度、耐熱性と靱性を合わせ持ち、かつ吸水時の寸法変化が少ないので、強制吸水(アニール処理)を省いても他の電気部品との接続や、自動車本体への組み付けに問題が生じない。
【図面の簡単な説明】
【図1】性能評価に用いたジャンクションブロックの側面図である。
【図2】性能評価に用いたジャンクションブロックの平面図である。
【図3】ジャンクションブロックにソリが生じた場合の平面図である。
【符号の説明】
1 外枠
2 ジャンクションブロック成形品
L 外枠の寸法
d ソリの量

Claims (3)

  1. (A)〜(D)の合計100重量部に対して
    (A)ポリアミド樹脂30〜80重量部
    (B)シランカップリング剤で処理した焼成カオリン5〜40重量部
    (C)不飽和ジカルボン酸および/または不飽和ジカルボン酸誘導体でグラフト変性されたオレフィン系重合体5〜40重量部および
    (D)エチレン系アイオノマー2.5〜40重量部
    を配合してなる樹脂組成物であって、該樹脂組成物のジャンクションブロック成形品の外枠の中心部分から超薄切片を切削し、透過型電子顕微鏡(TEM)で観測したとき、(B)カオリンの分散粒子数が最低50観察される視野について、(B)の全粒子に対して(C)や(D)と界面を接しておらず(A)中に独立して存在している(B)の粒子が、50%以上であることを特徴とする自動車電装部品ハウジング用ポリアミド樹脂組成物。
  2. シランカップリング剤がアミノ基含有アルコキシシラン化合物またはエポキシ基含有アルコキシシラン化合物であることを特徴とする請求項1記載の自動車電装部品ハウジング用ポリアミド樹脂組成物。
  3. (B)シランカップリング剤で処理した焼成カオリンの平均粒子径が0.05〜10μmの非繊維状であることを特徴とする請求項1または2記載の自動車電装部品ハウジング用ポリアミド樹脂組成物。
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