JP4430483B2 - パワーステアリング装置 - Google Patents
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車両が直進走行する場合、例えば走行中の道路に横断勾配があると、車両が道路の低い方に流される傾向がある。このときステアリングホイールを中立位置にしたままでは、車両が安定して直進走行することができない。すなわち、横断勾配のある道路で車両の直進状態を維持しようとする場合、ステアリングホイールを中立位置から道路の高いほうに転舵させた状態にしなければならない。
走行路の横断勾配について、例えば特許文献1ではその検出方法が開示されている。
また、特許文献1では、横断勾配の検出方法こそ示されているが、検出の結果を利用して運転者の操舵を補助するようなことは特に示されていない。横断勾配の検出結果について例えばモニタ表示して運転者に示すことも考えられるが、操舵負担自体を軽減することはできない。
本発明は、前記従来の問題点に鑑み、横断勾配のある道路で車両を安定して直進させることを可能とし、運転者の操舵負担を軽減可能なパワーステアリング装置を提供することを課題をとしている。
図1に示すパワーステアリング装置は、ピニオン・ラック機構25を備えており、ピニオン・ラック機構25のピニオン側にはステアリング軸22を介してステアリングホイール21が連結されている。ステアリングホイール21を回転させると、それに連結されているピニオンが回転し、左右方向にラックが移動することによって転舵輪24R、24Lが方向転換される。
ステアリング軸22にトルクセンサ16が設けられ、このトルクセンサ16は、操舵時すなわちステアリングホイール21を回転させるときの操舵トルクを検出する。検出された操舵トルクはECU(電子制御装置)20に出力される。
ピニオン・ラックのピニオン側にモータ23が設けられ、ECU20はトルクセンサ16からの操舵トルクにより補助操舵トルクを決定しそれに応じた駆動電流Ic’をモータ23に出力してモータ23を駆動させる。したがって、操舵時には、ピニオン・ラック機構25に運転者からの操舵トルク以外にモータによる補助操舵トルクも加えられ、これにより運転者が大きな操舵トルクを発生させることなく、操舵を行うことができる。
ECU20は、横断勾配検出部1、オフセット量設定部2、減算器3、補正制御量設定部4、ゲイン設定部5、乗算器6、加算器7、制御量設定部8および制御部9を有している。
オフセット量設定部2は、車速に応じて横断勾配の車速に対する不感領域を設定するためのオフセット量SLToを設定する。設定されたオフセット量SLToは減算器3の負端子に出力される。
減算器3で横断勾配SLTとオフセット量SLToとの減算が行われ、その減算値が補正制御量設定部4に出力される。
補正制御量設定部4は、横断勾配SLTとオフセット量SLToとの減算値に基づいて補正制御量Isを設定する。設定された補正制御量Isは乗算器6に出力される。
ゲイン設定部5は、車速Vに応じて補正制御量IsのゲインSLTrを設定する。これは、横断勾配に応じて補助操舵トルクを発生させる場合の感度を調整するためのものである。設定されたゲインSLTrは乗算器6に出力される。
乗算器6でゲインSLTrと補正制御量Isとの乗算演算が行われる。演算された乗算値すなわち横断勾配に基づく補正制御量Isについてゲイン調整された補正制御量Is’が加算器7に出力される。
制御部9では、補正制御量Is’と制御量Icとの加算値に応じた駆動電流Ic’をモータ23に出力する。
まず、制御量設定部8は、トルクセンサ16から操舵トルクTRを読み込み(S1)、読み込んだ操舵トルクに応じて所定の補助操舵トルクを発生するようにモータ23の制御量Icを設定する(S2)。設定された制御量Icは加算器7に出力される。
横断勾配検出部1は、車速センサ17が検出した車速Vを読み込み(S3)、トルクセンサ16から操舵トルクTRを読み込み(S4)、ヨーレイトセンサ18から車両のヨーレイトYRを読み込む(S5)。
読み込んだ車速V、操舵トルクTRおよびヨーレイトYRに基づいて、横断勾配検出部1が走行路の横断勾配SLTを演算する(S6)。演算の方法については後記する。
オフセット量設定部2は、車速Vに応じてオフセット量SLToを設定する(S7)。これには、例えば図4に示すようにあらかじめ設定された車速Vとオフセット量SLToの関係を記憶したテーブルをオフセット量設定部2が所有し、このテーブルを検索することによって設定することができる。図4では、車速Vが大きいほどオフセット量が小さくなっている。これによって、横断勾配に応じて補助操舵トルクを発生させる際、車速Vが大きいほど横断勾配の不感領域が小さくなる。
補正制御量設定部4は、減算値がゼロより大きいか否かを判定する(S9)。大きい場合は、横断勾配SLTが不感領域外にあると判定し、横断勾配に応じた補助操舵トルクを発生するようにステップS10へ進む。そうでない場合には、横断勾配SLTが不感領域内にあると判定し、横断勾配に応じる補助操舵トルクの発生を行わないようにステップS14へ進む。
ゲイン設定部5は、車速Vにより、補正制御量IsのゲインSLTrを設定する(S11)。これには、例えば図6に示すように車速VとゲインSLTrとの関係を記憶したテーブルをゲイン設定部5が所有し、このテーブルを検索することによって設定することができる。設定されたゲインSLTrは乗算器6に出力される。
加算器7で、ステップS2で設定された制御量IcとステップS12で演算された補正制御量Is’とが加算される(S13)。その加算値は制御部9に出力される。
制御部9は加算器7の出力すなわち補正制御量Is’と制御量Icとの加算値に応じた駆動電流Ic’をモータ23に出力してモータ23を駆動制御する(S14)。
そして、ステップS9で横断勾配SLTが不感領域内であると判定した場合、横断勾配に応じた補助操舵トルクを発生させないため、補正制御量4からゼロの値が出力される。このとき、ゲイン設定部5はゲイン設定を行わない。したがって、制御部9にはステップ2で設定された制御量Icだけが入力され、モータ23には、制御量Icに応じた駆動電流Ic’が出力される(S14)。
さらに、横断勾配SLTが検出された場合、車速に応じてそのゲインを演算しゲイン調整を行って横断勾配に応じた補助操舵トルクを発生させるようにしているので、車速Vに応じてその感度が調整される。なお、感度が低いと、横断勾配SLTに応じた補助操舵トルクで車両の直進状態を維持できなくなるおそれがあるが、この場合、運転者が操舵トルクを多くさせてそれを補えばよい。
図7は横断勾配検出部の構成を示すブロック図である。
横断勾配検出部1は、図示のように、横断勾配量演算部11、乗算器14、横断勾配補正比演算部12、横断勾配算出条件判定部13、出力部15、基準値保持部19で構成される。
横断勾配補正比演算部12は、前記演算された横断勾配量SLTBのベース値に対して車速に応じた補正を行うための横断勾配補正比SLTRを演算するものである。例えば図9に示す路面の横断勾配補正比SLTRと車速Vとの対応関係を記憶させたテーブルを備え、前記検出された車速Vに基づいてテーブルを検索することによって横断勾配補正比SLTRを演算する。
横断勾配算出条件判定部13は、トルクセンサ16、車速センサ17、ヨーレイトセンサ18で検出された操舵トルクTR、車速V、ヨーレイトYRに基づいて論理演算を行い、操舵トルクに基づく横断勾配の算出条件が満たされたか否かを判定するものである(論理演算は図10を参照して後記する)。換言すると、横断勾配算出条件判定部13は、乗算器14により乗算された結果を勾配とするか、基準値保持部19に保持された基準値を勾配とするかを、出力部15で選択させるものである。
出力部15は、横断勾配算出条件判定部13の判定結果に基づいて乗算器14から演算された横断勾配量SLTまたは基準値保持部19で保持された基準値ゼロを選択して横断勾配の検出値SLTとして出力するものである。横断勾配の検出値SLTは、減算器3の正端子に出力される。
まず。操舵トルクTRに基づく横断勾配の算出条件が満たされたか否かを判定するため、ステップS21において、横断勾配算出条件判定部13が車速センサ17で検出された車速Vを読み込み、所定の速度閾値VELとを比較する。車速Vが速度閾値VEL以上の場合(YES)、車両が所定速度以上で走行していると判定しステップS22へ進む。そうでない場合(NO)にはステップS30へ進む。
ステップS22においては、横断勾配算出条件判定部13が、ヨーレイトセンサ18で検出された車両のヨーレイトYRを読み込み、ヨーレイトYRの絶対値とヨー閾値YRDとを比較する。ヨーレイトYRの絶対値がヨー閾値YRD以上の場合(YES)、車両のヨーレイトが中立付近にあると判定し、ステップS23へ進む。そうでない場合(NO)にはステップS30へ進む。
ステップS23においては、横断勾配算出条件判定部13が、トルクセンサ16で検出された操舵トルクTRを読み込み、操舵トルクTRの絶対値と所定のトルク閾値TRQとを比較する。操舵トルクTRの絶対値がトルク閾値TRQ以上の場合(YES)は、所定値以上の操舵トルクTRが発生したと判定し、ステップS24へ進む。そうでない場合(NO)には、ステップS30へ進む。
ステップS25において、横断勾配算出条件判定部13がタイマのタイマ値と設定値Sとを比較する。タイマ値が設定値Sを超えた場合、所定速度以上で車両が直進走行し、かつ所定値以上の操舵トルクが発生したことを検出してから所定時間を経過したとして、操舵トルクTRに基づく横断勾配の演算条件が満たされたと判定し、ステップS26へ進む。そうでない場合(NO)には、ステップS1に戻され前記判定が繰り返される(戻り→開始)。なお、このようにタイマ値を考慮するのは、安定的に横断勾配を検出するためである。
なお、横断勾配に応じた補助操舵トルクが発生した場合、車両の直進状態は、モータ23による補助操舵トルクと運転者の操舵トルクの両方で維持されるため、前記のように補助操舵トルクを推定または直接に検出し、補助操舵トルクと操舵トルクとの合計値に基づいて横断勾配量SLTBのベース値を演算するようにする。演算された横断勾配量SLTBのベース値は乗算器14に出力される。
ステップS27において、横断勾配補正比演算部12が、車速センサ17で検出された車速Vに基づいて、例えば図9に示す路面の横断勾配補正比SLTRと車速Vの関係を記憶させたテーブルを検索して、横断勾配補正比SLTRを演算する。演算された横断勾配補正比SLTRは乗算器14に出力される。
ステップS29において、出力部15が横断勾配算出条件判定部13での判定結果に基づいて、乗算器14からの横断勾配量SLTBを選択して横断勾配の検出値SLTとしてステアリング制御部10に出力する。
2 オフセット量設定部
3 減算器
4 補正制御量設定部
5 ゲイン設定部
6 乗算器
7 加算器
8 制御量設定部
9 制御部
16 トルクセンサ
17 車速センサ
18 ヨーレイトセンサ
20 ECU
21 ステアリングホイール
22 ステアリング軸
23 モータ(アクチュエータ)
24 転舵輪
11 横断勾配量演算部
12 横断勾配補正比演算部
13 横断勾配算出条件判定部
14 乗算器
15 出力部
Claims (4)
- 車両に搭載されるパワーステアリング装置であって、
補助操舵トルクを発生するアクチュエータと、
運転者の操舵トルクに応じて、前記アクチュエータを制御するための制御量を設定する制御量設定手段と、
前記車両が走行中の道路の横断勾配を、前記操舵トルクの値が大きいほど大きな勾配として検出する横断勾配検出手段と、
検出された横断勾配に応じて、前記アクチュエータを制御するための補正制御量を設定する補正制御量設定手段と、
設定された制御量と補正制御量とにより前記アクチュエータを駆動制御する制御手段とを備え、
前記横断勾配の検出時に、前記横断勾配検出手段は、前記アクチュエータが発生させる補助操舵トルクと前記運転者が発生させる操舵トルクの合計値を前記検出のための操舵トルクとして、前記横断勾配を検出することを特徴とするパワーステアリング装置。 - 前記車両の車速に応じて、前記横断勾配の車速に対する不感領域を設定するためのオフセット量を設定するオフセット量設定手段を設け、
前記補正制御量設定手段は、検出された横断勾配と設定されたオフセット量とに基づいて、前記補正制御量を設定することを特徴とする請求項1に記載のパワーステアリング装置。 - 前記車両の車速に応じて、前記補正制御量のゲインを設定するゲイン設定手段を設け、
前記制御手段は、前記制御量と設定されたゲインを乗じた前記補正制御量とにより前記アクチュエータを駆動制御することを特徴とする請求項1または2に記載のパワーステアリング装置。 - 前記横断勾配検出手段は、前記車両が直進走行状態で、前記操舵トルクが一定時間以上継続してかつ所定値以上であった場合に、前記操舵トルクに基づいて前記横断勾配を算出することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のパワーステアリング装置。
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