JP4416362B2 - 半導体素子用放熱性部品及び半導体装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体素子用放熱性部品及び半導体装置の改良に係り、詳しくは高発熱量の半導体素子、例えば高出力インバーター等のパワーデバイスの構成に使用される放熱特性等に優れた半導体素子搭載用部品及び半導体装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体装置部品は半導体素子が搭載される回路基板とこれに接合される放熱部材とで構成される。回路基板は半導体素子と電気的絶縁を保つためにセラミックス基板等(アルミナ、窒化アルミニウム等)が使用され、放熱部材は、半導体素子の発生熱を効率よく外部に放散させ、半導体素子の動作特性が確保されるように熱伝導性の高い材料が適用される。近年、半導体素子の高集積化、高速演算化、高出力インバータ等のパワーデバイスの用途拡大等に伴い、半導体素子の発熱密度はますます増大し、半導体装置用部品の放熱特性をより向上させることが求められている。
【0003】
セラミックス基板に接合される放熱部材は、高い熱伝導性を有すると同時に、セラミックス基板及び搭載される半導体素子の熱膨張率に近似した低熱膨張率を有することが必要である。従来、放熱部材としてアルミニウム,銅あるいはモリブデン,タングステン等が使用されているが、熱膨張率・熱伝導率等の熱的特性に一長一短がある。近年、放熱部材として金属セラミックス複合体が注目されている。これは、セラミックス多孔体をプリフォームとし、気孔内にアルミニウム等の高熱伝導性金属を含浸させたものであり、セラミックスと金属の材種の選択・組合せ、セラミックス/金属の複合比率(体積比)等により、熱伝導率・熱膨張率を調節することができ、かつ比較的軽量である等の特長を有する。
【0004】
上記放熱部材の製造法として、セラミックス多孔体を鋳造用金型に設置し高熱伝導性金属の溶湯を加圧含浸させる方法が提案されている。鋳造法によれば、金型キャビティの形状設計により、図11に示すように、金属セラミックス複合体と高熱伝導性金属層とが一体成形された放熱性部品を製作することもできる。図中、2’は複合基板(金属セラミックス複合体)、3’は金属層(ヒートシンク)である。複合基板(2’)の含浸金属と金属層(3’)の材種は同一であり、両者の界面は連続的一体性を有している。金属層(3’)の下端側のフィン(3'f)は金型のキャビティ形状の設計により加圧鋳造時に同時に形成される。
【0005】
上記放熱性部品(1’)の複合基板(金属セラミックス複合体)(2’)に、電気絶縁層(7)としてセラミックス基板、回路形成金属層(8)として導電性金属の箔等の板状体等がろう材(半田等)を介して積層接合され、これに半導体素子(9)を搭載されて半導体素子モジュールが構成される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記放熱性部品(1’)は、複合基板(2’)と金属層(ヒートシンク)(3’)との一体品として作製されるので、両部材をグリス接合で組付けた構造(接合面にグリス層が介在し熱伝導の妨げとなる)と異なり、界面の一体的連続性の効果として放熱特性に優れている。しかし、その放熱性部品は、金型内での鋳造し、金型から抜型した後の冷却過程で、図12に示すように反り変形が生じ易い。これは、おもて側の層(L1)が複合基板(金属セラミックス複合体)(1’)を含む層である一方、背面側の層(L2)が金属単一層であることによる両者の熱膨張率の相違のために、冷却過程における両者の面方向の収縮量が大きく異なることによる。
【0007】
放熱性部品(1’)のおもて側層(L1)と背面側層(L2)の熱膨張率の相違により面方向の熱膨張・収縮量の差異が生じる現象は、これを半導体素子搭載用基板とするモジュールの組み立て工程において、電気絶縁層(7)、回路形成金属層(8)、半導体素子(9)等をろう接する際の熱影響を受ける場合や、半導体装置動作時のヒートサイクルを受ける場合にも発生し、その熱変形は、積層界面の健全性を失わせ、半導体素子の動作特性を損なう原因となる。
【0008】
更に、上記問題のほかに、半導体装置の積層構造の簡素化および半田(鉛含有合金である)の使用に付随する環境汚染問題の対策として、電気絶縁層(セラミックス基板)や回路形成金属層等の積載接合に、半田を使用せず、直接接合することも検討されている。
本発明の第1の課題は、複合基板と金属層(ヒートシンク)との一体構造を有する放熱性部品について、その長所を損なうことなく熱膨張率の差異による熱変形を緩和解消することにあり、第2の課題は、熱変形の問題を緩和解消すると共に、電気絶縁層や回路形成用金属層等の接合工程を削減し、積層構造が簡素・コンパクト化された半導体装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の半導体素子用放熱性部品は、セラミックス多孔体の気孔内に高熱伝導性金属を含浸された金属セラミックス複合体である複合基板と、その背面に複合基板と一体成形された、前記含浸金属と同一種の高熱伝導性金属からなる金属基盤層とを有し、複合基板のおもて面に半導体素子を搭載される半導体素子用放熱性部品において、複数個に分割された複合基板(2)が、隣合う複合基板(2)との間に隙間(D)を与えられ、かつ搭載される半導体素子の配置パターンに応じた分布パターンをもって金属基盤層(3)に固定された構造を有している。
【0010】
本発明の半導体装置は、上記放熱性部品(1)を半導体素子搭載用基板とし、複合基板(2)のうえに、電気絶縁層(7)、回路用金属層(8)等を積層形成し、半導体素子を搭載することにより組み立てられる。そのモジュール構成は、電気絶縁層としてセラミックス基板(7A)、回路用金属層として導電性金属の板状体ないし箔(8A)を積層接合した層構造、または溶射の手法を適用して、電気絶縁層としてセラミックスの溶射膜(7B)、回路形成金属層として導電性金属溶の射膜(8B)を積層成膜した層構造等が与えられる。
【0011】
本発明は複合基板を、複数個に分割し、隣合う複合基板(2)同士の間に隙間(D)をもたせて分散配置しているので、図11のように面積サイズの大きい1枚の複合基板(2’)に複数個の半導体素子(9)を搭載している従来の構造と異なり、分割構造の効果として、複合基板(2)を含むおもて側層(L1)と金属単一層である背面側層(L2)とにおける面方向の熱膨張・収縮量の差異が小さくなり熱変形が低減緩和される。この熱変形の低減緩和の効果は、後記のように、隣合う複合基板(2)同士の隙間(D)に溝(4)を設け(図3)、または層厚方向に金属/セラミックスの混在比(体積比)を漸次変化させた傾斜構造(図4,図5)とすることにより更に増強される。
【0012】
また、上記放熱性部品を半導体素子搭載用基板とする半導体素子モジュールの構成において、電気絶縁層(7)や回路形成金属層(8)の形成に溶射手法を採用することにより、複合基板(2)と電気絶縁層(7)との界面、および電気絶縁層(7)と回路形成金属層(8)の界面に対するろう接(半田接合等)が不要となる。この場合も、複合基板(2)の分割・分散配列の効果として、半導体素子が搭載されるおもて側層(L1)と金属単一層である背面側層(L2)との熱膨張・収縮量の差異とそれによる熱変形が低減緩和される。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明について実施例を示す図面を参照して説明する。
図1および図2は、複合基板(2)と金属基盤層(3)を有する放熱性部品(1)を示している(図1は平面図、図2は図1のI−I矢視断面図)。
複合基板(2)は、隣合う複合基板(2)との間に隙間(D)を与えられ所定の分布パターンをもって分散配置されている。この例における複合基板(2)は、おもて面(21)を金属基盤層(3)の表面(31)の高さレベルに一致させて金属基盤層(3)に固定されている。各複合基板(2)のそれぞれには1個又は複数個の半導体素子が搭載される。
【0014】
図1は、同一形状・サイズの矩形平面形状を有する6個の複合基板(2)をタテ・ヨコ方向の格子模様状に並列配置しているが、これは1例であり、複合基板(2)の形状・サイズ及びその分布パターン等は、搭載される半導体素子のサイズ・搭載個数、搭載配置パターン等に応じて適宜設計される。典型的な例として、各複合基板(2)のそれぞれに半導体素子を1個ずつ搭載する場合は、半導体素子の搭載個数と同じ個数の複合基板(2)を半導体素子の搭載配置パターンに従って分散配置すればよい。複数個の半導体素子を搭載される複合基板(2)はそれに応じた面サイズを与えられると共に調整された分布パターンが与えられる。
【0015】
各複合基板(2)の大きさは、分割構造の効果を損なわない範囲に制限される。許容される大きさは、厳密には複合基板の材種、金属/セラミックス混合量比、金属材種等によるが、面サイズで表示すると約15000mm2を越えない大きさ、面方向の差し渡し径(矩形平面形状の場合は長辺の長さ)で表示すると約150mmを超えない大きさとするのが好ましい。隣合う複合基板(2)同士の隙間(D)の隙間幅(g)は例えば約3mm程度である。
【0016】
なお、金属基盤層(3)は分割された複数個の複合基板(2)を所定の分布パターンに保持する役目を有すると共に、ヒートシンクとして機能する。このため、金属基盤層(3)の背面側には、放熱特性を高める手段として前記図11の放熱性部品と同様のフィン(3f)が必要に応じ形成される。
【0017】
図3は、放熱性部品の他の例を示している。前記図2の放熱性部品と相違する点は、隣り合う複合基板(2)同士の隙間(D)に露出する金属基盤層(3)の表面を、複合基板の側面に沿って溝状に凹陥させていることである。溝(4)の溝幅(w)は例えば約1mm以上(複合基板同士の隙間幅を超えない)、溝深さは約5mm程度とすることができる。図は、隙間(D)の幅に等しい溝幅(w)の溝(4)を形成した例を示している。なお、溝深さ(d)は複合基板(2)のおもて面(21)を基準面とする深さであり、複合基板(2)の肉厚を超える深さが与えられることもある。このように複合基板(2)の隙間(D)に溝(4)を設けることは、複合基板(2)と金属基盤層(3)の熱膨張率の相違によるおもて側層(L1)と背面側層(L2)(図12)の面方向の熱膨張・収縮量の差異をより小さくするのに有効である。
【0018】
図4は、放熱性部品の他の実施例を示している。前記図2、図3の放熱性部品(複合基板2の背面22は層厚方向に直交する向きの平坦面である)と異なり、この複合基板(2)の背面は波状の凹凸(23)を有し、その凸部は下向きに細くなる断面形状を呈している。この凹凸波形の効果として、複合基板(2)から金属基盤層(3)へ移行する領域における組成(金属/セラミックスの混合量比)の層厚方向の変化が緩慢化される。すなわちセラミックス(複合基板2のセラミックス)と金属(複合基板2の含浸金属+金属基盤層3の金属)の体積比「金属/セラミックス」が層厚方向に漸次変化(下側に向かって金属の体積比が漸次増加)する傾斜構造が与えられる。凸部の形状は、刃状、円錐状など任意である。層厚方向の傾斜構造により、層厚方向の熱膨張率の変化が緩やかになり、放熱性部品(1)の熱変形が低減緩和される。
【0019】
図5は、放熱性部品の傾斜構造の他の例を示している。この放熱性部品(1)は、前記図4の傾斜構造と異なって、複合基板(2)が複数の層(2L1)〜(2L4)からなり、おもて面側の層(2L1)から背面側の層(2L4)に向かって、含浸金属(高熱伝導性金属)の体積比が漸次増加した傾斜構造を有している。この傾斜構造により、放熱性部品の層厚方向の組成変化(金属/セラミックスの混合体積比の変化)が緩徐となり、前記図5の傾斜構造と同じように放熱性部品の熱変形が低減緩和される。
【0020】
図4及び図5に示した傾斜構造を有する放熱性部品(1)において、複合基板(2)同士の隙間に溝(4)を形成することとすれば、傾斜構造の効果と溝形成の効果とがあいまって放熱性部品の熱変形の抑制防止効果をより一層高めることが可能となる。
【0021】
本発明の放熱性部品(1)は、セラミックス多孔体(三次元網目構造体)をプリフォームとし、その気孔内に高熱伝導性金属の溶湯を含浸させる加圧鋳造法を適用して効率的に作製することができる。図6はその加圧鋳造(スクイズキャスト)の例を示している。50は金型(上型501と下型502の合せ型)、Pは金型のキャビティ(51)内に配置されたプリフォーム(セラミックス多孔体)である。金型(50)は製品放熱性部品のフィン(f)を形成するためのキャビティである櫛刃状空間(51f)を備えている。
【0022】
プリフォーム(P)は、製品放熱性部品(1)における複合基板(2)の分布パターンに対応するように位置決めされ、その上面および下面側の支持ピン(531),(532),隅部の支持ピン(533)およびプリフォーム間の支持ピン(534)を介してキャビティ内に設置される。なお、上下両面側に取付けられる支持ピンの一方、例えば上面側の支持ピン(531)として、弾性部材(バネピン等)を使用することは、金属溶湯の加圧注入工程で生じるプリフォーム(P)に加わる溶湯圧の衝撃を吸収緩和し、その損傷を防止し健全な複合形態を形成するのに有効である。
【0023】
上記の金型のキャビティ(51)内に金属溶湯を加圧注入すれば、プリフォーム(P)の気孔内に金属溶湯が浸入・含浸することによる複合基板(2)の形成とフィン(f)を備えた金属基盤層(3)の形成とが同じに達成される。加圧鋳造後、鋳造体を金型から取り出し、鋳造金属の余肉を除去する機械加工を施して,図2に示す形態を有する製品放熱性部品を得る。
【0024】
図7は、複合基板(2)同士の間に溝(4)を有する放熱性部品を加圧鋳造で製作する場合の鋳造方案の例を示している。52は溝(4)を形成するための中子であり、中子(52)はキャビティ内の隣合うプリフォーム(P)同士の間に介装され支持ピン(535)で保持されている。中子(52)が組み込まれている点を除いて、キャビティ内のプリフォーム(P)の配置は前記図6のそれと同じであり、支持ピンによる固定要領も前記図6のそれと同じであってよい。
【0025】
上記の中子(52)は、耐熱性(金属溶湯の接触による溶損を生じない)、非反応性(金属溶湯を変質・汚染しない)、および易崩壊性ないし易離脱性(抜型後の放熱部品から容易に除去することができる)等の性質を具備することが必要である。そのような中子は、例えばカルシウム粉末に適当な結合剤(水ガラス等)を加えて調製したペーストを用いて形成することができる。加圧鋳造後、鋳造体を抜型し中子(52)を取り除けば溝(4)が現れる。これに余肉等を除去する機械加工を施すことにより溝付き放熱性部品(図3)を得る。なお、中子(52)を使用する鋳造方案に代え、キャビティ内壁面にそれの相応する突起を設けた金型を使用して製作することも可能である。
【0026】
こうして得られる放熱性部品(1)は、複合基板(2)と金属基盤層(3)との一体成形物である。すなわちその層間には、ろう接剤等の異種相(層間の熱移動の妨げとなる)が介在せず、界面は一体的連続性を有している。
【0027】
上記した加圧鋳造を適用して前記図4のように複合基板(2)の背面が凹凸形状(23)をなす傾斜構造の放熱性部品(1)を製作するには、金型キャビティ内に設置されるプリフォーム(P)として、その片側面(複合基板の背面となる側)を凹凸形状に成形したものを使用すればよい。また、前記図5のように複合基板(2)の金属/セラミックス混合比率が層厚方向に漸次変化した傾斜構造を有する放熱性部品(1)は、プリフォーム(P)として、その気孔率を、おもて面側から背面側に向かって漸次増加させたセラミックス多孔体を使用することにより作製することができる。
【0028】
本発明の放熱性部品(1)の 複合基板(2)を形成するプリフォーム(セラミックス多孔体)のセラミックス材種は、窒化物系、炭化物系、酸化物系、硼化物系など広範囲に選択され、例えば窒化アルミニウム(AlN)、窒化珪素(Si3N4)、炭化珪素(SiC)、アルミナ(Al2O3)等が挙げられる。殊に炭化珪素は、低熱膨張率(約4.5×10−6/K)と高熱伝導率(約170〜270W/m・K)を具備することから好適に使用される。
【0029】
複合基板(2)の金属含浸率(複合体に占める含浸金属の体積率)は、例えば30%である。図5のように層厚方向に含浸体積率を変化させた傾斜構造とする場合は、例えばおもて側の層(21)の含浸率を約30%、背面側の層(24)の含浸率を約70%として層厚方向に段階的に変化する傾斜構造が与えられる。
【0030】
複合基板(2)の含浸金属および金属基盤層(3)の金属は、高熱伝導性金属であり、その代表的な金属材種として、アルミニウム(熱伝導率:約234W/m・K,熱膨張率:23.5×10−6)もしくはその合金、銅(熱伝導率:約393W/m・K,熱膨張率:17×10−6/K)もしくはその合金、又はマグネシウム(熱伝導率:約155W/m・K,
熱膨張率:26×10−6/K)もしくはその合金等が好適に使用される。
【0031】
次に本発明の放熱性部品を半導体素子搭載用基板として構成される半導体装置について説明する。
図8は、前記図2の放熱性部品を半導体素子搭載用基板として組み立てられたモジュールの例を示している。7Aは電気絶縁層、8Aは回路形成金属層である。このモジュール構成における電気絶縁層(7A)はセラミックス基板(焼成品)であり、回路形成金属層(8A)は導電性金属からなる箔等の板状体である。各複合基板(2)は、それぞれに電気絶縁層(7A)及び回路形成金属層(8A)が積層形成され、これに半導体素子(9)が搭載されている。
【0032】
セラミックス基板(7A)は、炭化物系、窒化物系、酸化物系、硼化物系等、例えば窒化アルミニウム、窒化珪素、アルミナ、炭化珪素等からなる焼成品である。殊に、窒化アルミニウムは、良好な絶縁性を有すると同時に高熱伝導率を備えた材種であり、電気絶縁層材種として好適である。
回路形成金属層(8A)を形成する導電性金属は、アルミニウムもしくはその合金、または銅もしくはその合金等である。
【0033】
図9は、上記半導体装置の積層接合構造の具体例を示している。セラミックス基板(電気絶縁層)(7A)は、金属板(6)を介して複合基板(2)に載置され、その上に回路形成金属層(8A)、半導体素子(9)が積載されている。各部品の積層界面はろう材層(s1)〜(s4)を介して接合されている。複合基板(2)の表面には、ろう接性を良好にするためにNi-Bめっき等を施しておくのがよい。また、複合基板(2)とセラミックス基板(7A)との間に介装される金属層(6)は、金属層(8)と同種の金属からなり、セラミックス基板(7A)の上下における熱応力のつり合いをとり、モジュール組立て時やモジュールの実使用時におけるセラミックス基板(7A)の熱的損傷(亀裂、接合界面の剥離など)を防止する。
【0034】
図10は、半導体装置の他の例を示している。この半導体素子モジュール構成は、電気絶縁層および回路形成金属層が溶射膜として形成されている。(7B)は、電気絶縁層として形成されたセラミックスからなる溶射膜、(8B)は回路形成金属層として形成された導電性金属の溶射膜であり、セラミックス溶射膜(7B)および導電性金属溶射膜(8B)は各複合基板(2)のそれぞれに積層形成されている。半導体素子(9)の搭載およびろう接構造は前記図9のそれと同じであってよい。
【0035】
セラミックス溶射膜(7B)は、前記図8における電気絶縁層のセラミックス基板(7A)と同じように、例えば窒化アルミニウム、窒化珪素、アルミナ、炭化珪素等の各種材種が適宜選択される。窒化アルミニウムは、電気絶縁性、高熱伝導性、低熱膨張性等の点から好適であるが、溶射膜の均質性や溶射施工の容易性等の点からはアルミナが有利に使用される。また、回路形成金属溶射膜(8B)の金属材種は、図8の半導体装置の回路形成金属材(8A)と同様にアルミニウムもしくはその合金、銅もしくはその合金等が適宜使用される。
【0036】
上記セラミックス溶射膜(7B)および導電性金属溶射膜(8B)の成膜施工は、プラズマアーク溶射等の公知の溶射手法を適用して行なわれる。
セラミックス溶射膜(7B)は、複合基板(2)の表面に直接溶射成膜して良好な密着性を得ることができる。セラミックス溶射膜(7B)は、膜構造(溶射粒滴の堆積凝集体である)の効果として、セラミックス基板(緻密性の焼成品)に比べて応力吸収能が高い。このため、複合基板(2)とセラミックス溶射膜(7B)との界面には、前記図9の積層構造(セラミックス基板7A使用)と異なって、熱応力吸収層としての金属層(6)を介在させる必要はない。
【0037】
セラミックス溶射膜(7B)は複合基板(2)の表面に直接成膜されるので、セラミックス基板(7A)を使用した積層構造(図9)と異なって、ろう接(半田接合)の必要がなく、従って複合基板(2)の表面に対するニッケルめっき(ろう接性を高めるための表面処理)も不要である。また、回路形成金属溶射膜(8B)についても、セラミックス溶射膜(7B)の膜面に直接、積層成膜して良好な密着力を得ることができるので、その積層界面も図9の積層構造と異なり、ろう接は不要となる。
【0038】
更に、セラミックス溶射膜(7B)は、セラミックス基板(焼成品)(7A)に比べて薄肉化し、回路形成金属溶射膜(8B)についても、金属板状体(7A)に比べて薄肉とすることができる。セラミックス基板(7A)および導電性金属板状体(8A)では、複合基板(2)に対する積載・ろう接のハンドリング性等を考慮した肉厚を必要とするのに対し、複合基板(2)の表面に直接成膜されるセラミックス溶射膜(7B)および回路形成金属溶射膜(8B)は、そのようなハンドリングのための余分の肉厚を必要としないからである。従ってセラミックス溶射膜(7B)は電気絶縁層としての機能を、回路形成金属溶射膜(8B)は配線機能を、それぞれ確保し得る最小限の肉厚とすることができる。
【0039】
上記のように電気絶縁層及び回路形成金属層を溶射成膜構造とすることにより、半導体装置の積層接合構造の簡素化、薄肉・コンパクト化等が可能となり、また半田接合が削減されることにより環境汚染(鉛害)の改善にも寄与する。なお、図8〜図10の半導体素子モジュールでは、半導体素子搭載用基板として図2の放熱性部品を使用しているが、むろんこれに限定されず、図3〜図5に示した放熱性部品を用いて半導体素子モジュールを組み立てる場合にも、上記と同じように構成され同様の作用効果が奏せられる。
【0040】
【発明の効果】
複合基板(金属セラミックス複合体)と金属盤部(ヒートシンク)との一体品として製造される本発明の放熱性部品は、複合基板の分割構造により、複合基板と金属盤部の熱膨張率の相違に起因する熱変形が効果的に抑制防止され、良好な平坦性を有する。また、放熱性部品を半導体素子搭載基板として半導体素子モジュールを組立てる加熱接合(部品のろう接)での熱影響や、実機使用における熱サイクルの付加に対しても半導体素子や電気絶縁層の剥離・亀裂等を生じ難い安定性を備えており、半導体装置の動作特性の安定維持等の効果を奏する。
更に、半導体素子モジュール構成において電気絶縁層や回路形成金属層に溶射成膜構造を採用する場合は、積層接合構造が簡素化され、モジュールの薄肉・コンパクト化が可能となり、かつ半田接合に付随する環境汚染の改善効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の放熱性部品の実施例を示す平面図である。
【図2】本発明の放熱性部品の実施例を示す正面断面図(図1のI-I矢視断面)である。
【図3】本発明の放熱性部品の他の実施例を示す正面断面図である。
【図4】本発明の放熱性部品における複合基板の傾斜構造の例を示す要部断面説明図である。
【図5】本発明の放熱性部品における複合基板の傾斜構造の他の例を示す要部断面説明図である。
【図6】加圧鋳造を行なう金型の鋳造方案の例を模式的に示す断面図である。
【図7】加圧鋳造を行なう金型の鋳造方案の例を模式的に示す断面図である。
【図8】本発明の半導体装置の実施例を示す正面断面図である。
【図9】半導体装置の積層接合構造の例を示す断面説明図である。
【図10】本発明の半導体装置の実施例を示す正面断面図である。
【図11】従来の放熱性部品およびそれを半導体素子搭載基板とする半導体装置を示す正面断面図である。
【図12】放熱性部品の熱変形を模式的に示す正面説明図である。
【符号の説明】
1 :放熱性部品(半導体素子搭載用基板)
2 :複合基板(金属セラミックス複合体)
21:複合基板の表面(半導体素子搭載面となる側の表面)
22:複合基板の背面
23:背面の凹凸
2L1〜2L4:複合基板構成層
3 :金属基盤層
31:金属基盤層の表面
3f:フィン
4 :溝
6 :金属層(応力吸収層)
7 :電気絶縁層
7A:セラミックス基板(電気絶縁層)
7B:セラミックス溶射膜(電気絶縁層)
8 :回路形成金属層
8A:導電性金属板状体(回路形成金属層)
8B:導電性金属溶射膜(回路形成金属層)
9 :半導体素子
50:鋳造用金型
51:金型キャビティ
51f:フィン形成空間部
52:溝形成用中子
531〜535:支持ピン
D:隣合う複合基板同士の隙間
P :プリフォーム(セラミックス多孔体)
L1:放熱性部品のおもて側層
L2:放熱性部品の背面側層
s1〜s4:ろう材層
Claims (9)
- セラミックス多孔体の気孔内に高熱伝導性金属を含浸された金属セラミックス複合体である複合基板と、その背面に複合基板と一体成形された、前記含浸金属と同一種の高熱伝導性金属からなる金属基盤層とを有し、複合基板のおもて面に半導体素子を搭載される半導体素子用放熱性部品において、複数個に分割された複合基板(2)が、隣合う複合基板(2)との間に隙間(D)を与えられ、かつ搭載される半導体素子の配置パターンに応じた分布パターンをもって金属基盤層(3)に固定されている半導体素子用放熱性部品。
- 隣合う複合基板(2)同士の隙間の金属基盤層(3)の表面に溝(4)が形成されている請求項1に記載の半導体素子用放熱性部品。
- 複合基板(2)の背面側は、下向に凸の波状ないし錐状の突起群(23)からなる凹凸を有し、金属/セラミックスの体積比が下方に向って漸次増加している傾斜構造を有する請求項1又は請求項2に記載の半導体素子用放熱性部品。
- 複合基板(2)の高熱伝導性金属の含浸体積比がおもて面側から背面側に向って漸次増加している傾斜構造を有する請求項1又は請求項2に記載の半導体素子用放熱性部品。
- 複合基板(2)のプリフォームであるセラミックス多孔体は、炭化珪素からなり、高熱伝導性金属は、アルミニウムもしくはアルミニウム合金、銅もしくは銅合金、又はマグネシウムもしくはマグネシウム合金である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の半導体素子用放熱性部品。
- 複合基板(2)のおもて面側に、電気絶縁層(7)および回路形成金属層(8)をこの順に積層形成し、半導体素子を搭載してなる請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の半導体装置。
- 複合基板(2)のおもて面側に応力吸収層である金属層(6)を設けて電気絶縁層であるセラミックス基板(7A)、回路形成金属層である導電性金属板状体(8A)を積層接合してなる請求項6に記載の半導体装置。
- 複合基板(2)のおもて面に、電気絶縁層であるセラミックス溶射膜(7B)および回路形成金属層である導電性金属溶射膜(8B)を積層形成してなる請求項6に記載の半導体装置。
- 電気絶縁層を形成するセラミックスは窒化アルミニウムである請求項7又は8に記載の半導体装置。
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