JP2011119653A - ヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法、ヒートシンク付パワーモジュール用基板及びパワーモジュール - Google Patents
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Abstract
【解決手段】第二の金属板の他面にヒートシンクを接合するヒートシンク接合工程は、第二の金属板の他面とヒートシンクの接合面のうち少なくとも一方にSi層を形成するSi層形成工程S01と、Si層を介して第二の金属板とヒートシンクとを積層するヒートシンク積層工程S02と、第二の金属板とヒートシンクとを積層方向に加圧するとともに加熱し、Si層のSiを第二の金属板及びヒートシンクに拡散させることによって溶融金属領域を形成するヒートシンク加熱工程S03と、この溶融金属領域を凝固させることによって第二の金属板とヒートシンクとを接合する溶融金属凝固工程S04と、を有することを特徴とする。
【選択図】図3
Description
このようなヒートシンク付パワーモジュール用基板では、第一の金属板は回路層として形成され、第一の金属板の上には、はんだ材を介してパワー素子の半導体チップが搭載される。
まず、セラミックス基板の一方の面にろう材を介して第一の金属板を積層し、セラミックス基板の他方の面にろう材を介して第二の金属板を積層して、これを積層方向に所定の圧力で加圧するとともに加熱し、セラミックス基板と第一の金属板及び第二の金属板とを接合させる(セラミックス基板接合工程)。
次に、第二の金属板のうちセラミックス基板とは反対側の面に、ろう材を介してヒートシンクを積層し、積層方向に所定の圧力で加圧するとともに加熱し、これにより第二の金属板とヒートシンクとを接合させる(ヒートシンク接合工程)。
特に、近年では、一つのパワーモジュール用基板に複数の半導体素子を実装するものが提案されており、ヒートシンクと第二の金属板との接合面積が大型化する傾向にあり、前述したボイド発生の危険性が増している。
さらに、ヒートシンクと第二の金属板との間にろう材箔を配置し、これらを積層方向に加圧して加熱することになるが、この加圧に際してろう材箔の位置がずれないように、ろう材箔、ヒートシンク及び第二の金属板を積層配置する必要があった。
そして、第二の金属板及びヒートシンクに直接Siを固着しているので、酸化被膜は、第二の金属板及びヒートシンクの表面にのみ形成されることになり、第二の金属板及びヒートシンクの界面に存在する酸化被膜の合計厚さが、ろう材箔を使用した場合に比べて薄くなる。よって、接合時において、酸化被膜を確実に除去することが可能となり、第二の金属板とヒートシンクとの接合界面にボイドが発生することが抑制され、第二の金属板及びヒートシンクとの接合強度を向上させることができる。
さらに、ろう材箔を使用せずに、前記ヒートシンクの接合面及び前記第二の金属板の他面のうち少なくとも一方に直接Siを固着しているので、ろう材箔の位置合わせ作業等を行う必要がない。
この場合、第二の金属板とヒートシンクとの接合界面には、Siに加えて、Cu,Zn,Ge,Ag,Mg,Ca,Ga及びLiから選択される1種又は2種以上の添加元素が介在することになる。ここで、Cu,Zn,Ge,Ag,Mg,Ca,Ga及びLiといった元素は、アルミニウムの融点を降下させる元素であるため、比較的低温条件において、第二の金属板とヒートシンクとの界面に確実に溶融金属領域を形成することができる。
よって、比較的低温、短時間の接合条件で接合しても、第二の金属板とヒートシンクとをさらに強固に接合することが可能となる。
この場合、SiとともにAlを固着させているので、形成されるSi層がAlを含有することになり、加熱工程において、このSi層が優先的に溶融し、第二の金属板とヒートシンクとの界面に溶融金属領域を確実に形成することが可能となり、第二の金属板とヒートシンクとを強固に接合することができる。なお、SiとともにAlを固着させるには、SiとAlとを同時に蒸着してもよいし、SiとAlの合金をターゲットとしてスパッタリングしてもよい。さらに、SiとAlを積層してもよい。
また、セラミックス基板と第一の金属板及び第二の金属板の接合界面には、Si又はCuの少なくとも1種が介在することになるので、比較的短時間の接合条件で接合しても、セラミックス基板と金属板とを強固に接合することが可能となる。
よって、比較的低温、短時間の接合条件で接合しても、セラミックス基板と第一の金属板及び第二の金属板とをさらに強固に接合することが可能となる。
この場合、前記セラミックス基板接合工程と前記ヒートシンク接合工程とを同時に行うことにより、接合に掛かるコストを大幅に削減することができる。また、繰り返し加熱、冷却を行わずに済むので、このヒートシンク付パワーモジュール用基板の反りの低減も図ることができる。
この場合、めっき、蒸着、CVD、スパッタリング、コールドスプレー、又は、粉末が分散しているペースト及びインクなどの塗布によって、Siが前記ヒートシンクの接合面及び前記第二の金属板の他面のうち少なくとも一方に確実に固着されるので、ヒートシンクと第二の金属板との接合界面にSiを確実に介在させることが可能となる。また、Siの固着量を精度良く調整することができ、溶融金属領域を確実に形成して、ヒートシンクと第二の金属板とを強固に接合することが可能となる。
この場合、第二の金属板が、複数の金属板が積層された構造とされているので、ヒートシンクとセラミックス基板との熱膨張係数の差に起因する熱歪みをこの第二の金属板で十分に緩和することができ、セラミックス基板での割れの発生を抑制することができる。
ここで、前記第二の金属板及び前記ヒートシンクの接合界面近傍におけるSi濃度が0.05質量%以上とされているので、前記第二の金属板及び前記ヒートシンクの接合界面側部分を確実に固溶強化することができる。また、前記第二の金属板及び前記ヒートシンクの接合界面近傍におけるSi濃度が0.6質量%以下とされているので、前記第二の金属板及び前記ヒートシンクの接合界面の強度が過剰に高くなることを防止でき、熱歪みを前記第二の金属板及び前記ヒートシンクで吸収することができる。
この場合、前記第二の金属板及び前記ヒートシンクに、Siに加えて、Cu,Zn,Ge,Ag,Mg,Ca,Ga及びLiから選択される1種又は2種以上の添加元素が固溶しているので、前記第二の金属板及び前記ヒートシンクの接合界面側部分を確実に固溶強化させることができる。
この場合、前記第一の金属板と前記セラミックス基板との接合界面近傍、あるいは、前記第二の金属板と前記セラミックス基板との接合界面近傍に、Cu又はSiのうちの1種以上に加えてZn,Ge,Ag,Mg,Ca,Ga及びLiから選択される1種又は2種以上の添加元素が固溶しているので、前記第一の金属板及び前記第二の金属板のうち前記セラミックス基板との接合界面側部分を確実に固溶強化させることができる。
この場合、ヒートシンクが設けられている側の剛性を、その反対側の剛性と比較して高くすることができ、これにより冷却後の反りを抑えることができる。
この場合、第二の金属板が、複数の金属板が積層された構造とされているので、ヒートシンクとセラミックス基板との熱膨張係数の差に起因する熱歪みをこの第二の金属板で十分に緩和することができ、セラミックス基板での割れの発生を抑制することができる。
この構成のパワーモジュールによれば、ヒートシンクと第二の金属板との接合強度が高く、使用環境が厳しい場合であっても、半導体素子等の電子部品からの熱を放散させることができる。
図1に本発明の第1の実施形態であるヒートシンク付パワーモジュール用基板及びパワーモジュールを示す。
このパワーモジュール1は、回路層12が配設されたパワーモジュール用基板10と、回路層12の表面にはんだ層2を介して接合された半導体チップ3と、ヒートシンク40とを備えている。ここで、はんだ層2は、例えばSn−Ag系、Sn−In系、若しくはSn−Ag−Cu系のはんだ材とされている。なお、本実施形態では、回路層12とはんだ層2との間にNiメッキ層(図示なし)が設けられている。
セラミックス基板11は、回路層12と金属層13との間の電気的接続を防止するものであって、絶縁性の高いAlN(窒化アルミ)で構成されている。また、セラミックス基板11の厚さは、0.2〜1.5mmの範囲内に設定されており、本実施形態では、0.635mmに設定されている。なお、本実施形態では、図1に示すように、セラミック基板11の幅は、回路層12及び金属層13の幅より広く設定されている。
金属層13は、セラミックス基板11の他方の面に金属板23が接合されることにより形成されている。本実施形態においては、金属層13は、回路層12と同様に、純度が99.99%以上のアルミニウム(いわゆる4Nアルミニウム)の圧延板からなる金属板23がセラミックス基板11に接合されることで形成されている。
なお、金属層13及びヒートシンク40の接合界面30近傍のSiの濃度は、EPMA分析(スポット径30μm)によって、接合界面30から50μmの位置で5点測定した平均値である。また、図2のグラフは、金属層13(金属板23)及びヒートシンク40(天板部41)の幅中央部分において積層方向にライン分析を行い、前述の50μm位置での濃度を基準として求めたものである。
まず、図4、図5に示すように、回路層12となる金属板22の一面に、スパッタリングによってSiを固着して第1Si層24を形成するとともに、金属層13となる金属板23の一面に、スパッタリングによってSiを固着して第2Si層25を形成する(Si固着工程S11)。
また、金属層13となる金属板23の他面に、スパッタリングによってSiを固着してSi層26を形成する(Si層形成工程S01)。
ここで、本実施形態では、第1Si層24、第2Si層25及びSi層26におけるSi量は、0.002mg/cm2以上1.2mg/cm2以下に設定されている。
次に、図4に示すように、金属板22をセラミックス基板11の一方の面側に積層し、かつ、金属板23をセラミックス基板11の他方の面側に積層する(セラミックス基板積層工程S12)。このとき、図4に示すように、金属板22の第1Si層24、金属板23の第2Si層25が形成された面がセラミックス基板11を向くように、金属板22、23を積層する。
さらに、金属板23の他方の面側に、ヒートシンク40を積層する(ヒートシンク積層工程S02)。このとき、図4に示すように、金属板23のSi層26が形成された面がヒートシンク40を向くように、金属板23とヒートシンク40とを積層する。
すなわち、金属板22、23とセラミックス基板11との間にそれぞれ第1Si層24、第2Si層25を介在させ、金属板23とヒートシンク40との間にSi層26を介在させているのである。
次に、金属板22、セラミックス基板11、金属板23、ヒートシンク40を積層方向に加圧(圧力1〜35kgf/cm2)した状態で真空加熱炉内に装入して加熱し、金属板22、23とセラミックス基板11との界面にそれぞれ第一溶融金属領域27、第二溶融金属領域28を形成する(セラミックス基板加熱工程S13)。
また、同時に、金属板23とヒートシンク40との間に溶融金属領域29を形成する(ヒートシンク加熱工程S03)。
溶融金属領域29は、図5に示すように、Si層26のSiが金属板23側及びヒートシンク40側に拡散することによって、金属板23及びヒートシンク40のSi層26近傍のSi濃度が上昇して融点が低くなることにより形成されるものである。
なお、上述の圧力が1kgf/cm2未満の場合には、セラミックス基板11と金属板22、23との接合及び金属板23とヒートシンク40との接合を良好に行うことができなくなるおそれがある。また、上述の圧力が35kgf/cm2を超えた場合には、金属板22,23及びヒートシンク40が変形するおそれがある。よって、上述の加圧圧力は、1〜35kgf/cm2の範囲内とすることが好ましい。
ここで、本実施形態では、真空加熱炉内の圧力は10−6Pa以上10−3Pa以下の範囲内に、加熱温度は600℃以上650℃以下の範囲内に設定している。
次に、溶融金属領域29が形成された状態で温度を一定に保持しておく。すると、溶融金属領域29中のSiが、さらに金属板23側及びヒートシンク40側へと拡散していくことになる。これにより、溶融金属領域29であった部分のSi濃度が徐々に低下していき融点が上昇することになり、温度を一定に保持した状態で凝固が進行していくことになる。つまり、ヒートシンク40と金属板23とは、いわゆる拡散接合(Transient Liquid Phase Diffusion Bonding)によって接合されているのである。このようにして凝固が進行した後に、常温にまで冷却を行う。
このパワーモジュール101は、回路層112が配設されたパワーモジュール用基板110と、回路層112の表面にはんだ層2を介して接合された半導体チップ3と、ヒートシンク140とを備えている。
また、セラミックス基板111は、絶縁性の高いAlN(窒化アルミ)で構成されている。
金属層113は、回路層112と同様に、純度が99.99%以上のアルミニウム(いわゆる4Nアルミニウム)の圧延板からなる金属板123がセラミックス基板111に接合されることで形成されている。
なお、本実施形態では、図6に示すように、金属層113の厚さが回路層112の厚さよりも厚くなるように設定されている。
なお、金属層113及びヒートシンク140の接合界面130近傍のSi濃度及びGe濃度は、EPMA分析(スポット径30μm)によって、接合界面130から50μmの位置で5点測定した平均値である。また、図7のグラフは、金属層113(金属板123)及びヒートシンク140(天板部141)の幅中央部分において積層方向にライン分析を行い、前述の50μm位置での濃度を基準として求めたものである。
まず、図9に示すように、回路層112となる金属板122の一面に、スパッタリングによってSiを固着して第1Si層124を形成するとともに、金属層113となる金属板123の一面に、スパッタリングによってSiを固着して第2Si層125を形成する。なお、この第1Si層124、第2Si層125には、Siに加えてCu,Zn,Ge,Ag,Mg,Ca,Ga及びLiから選択される1種又は2種以上の添加元素が固着されており、本実施形態では、添加元素としてGeを用いている。
次に、金属板122をセラミックス基板111の一方の面側に積層し、かつ、金属板123をセラミックス基板111の他方の面側に積層する。このとき、金属板122の第1Si層124、金属板123の第2Si層125が形成された面がセラミックス基板111を向くように、金属板122、123を積層する。
次に、金属板122、セラミックス基板111、金属板123を積層方向に加圧(圧力1〜35kgf/cm2)した状態で真空加熱炉内に装入して加熱し、金属板122、123とセラミックス基板111との界面にそれぞれ第一溶融金属領域、第二溶融金属領域を形成する。
ここで、本実施形態では、真空加熱炉内の圧力は10−6Pa以上10−3Pa以下の範囲内に、加熱温度は600℃以上650℃以下の範囲内に設定している。
次に、第一溶融金属領域、第二溶融金属領域が形成された状態で温度を一定に保持しておき、第一溶融金属領域、第二溶融金属領域中のSiを、金属板122、123側へと拡散させ、温度を一定に保持した状態で凝固させ、セラミックス基板111と金属板122、123を接合する。このようにして、パワーモジュール用基板110を製出する。
次に、パワーモジュール用基板110の金属層113の他方の面側に、Si及びGeを固着してSi層126を形成する。このSi層126におけるSi量は、0.002mg/cm2以上1.2mg/cm2以下に設定されており、Ge量は、0.002mg/cm2以上2.5mg/cm2以下に設定されている。
そして、このSi層126を介して、金属層113の他方の面側にヒートシンク140を積層する。
次に、パワーモジュール用基板110とヒートシンク140を積層方向に加圧(圧力1〜35kgf/cm2)した状態で真空加熱炉内に装入して加熱し、金属層113とヒートシンク140との間に溶融金属領域を形成する。
ここで、本実施形態では、真空加熱炉内の圧力は10−6Pa以上10−3Pa以下の範囲内に、加熱温度は600℃以上650℃以下の範囲内に設定している。
次に、溶融金属領域が形成された状態で温度を一定に保持しておく。すると、溶融金属領域中のSi及びGeが、さらに金属層113側及びヒートシンク140側へと拡散していくことになる。これにより、溶融金属領域であった部分のSi濃度及びGe濃度が徐々に低下していき融点が上昇することになり、温度を一定に保持した状態で凝固が進行していくことになる。このようにして凝固が進行した後に、常温にまで冷却を行う。
このパワーモジュール201は、回路層212が配設されたパワーモジュール用基板210と、回路層212の表面にはんだ層2を介して接合された半導体チップ3と、ヒートシンク240とを備えている。
金属層213は、回路層212と同様に、純度が99.99%以上のアルミニウム(いわゆる4Nアルミニウム)の圧延板からなる金属板223がセラミックス基板211に接合されることで形成されている。
なお、金属層213及びヒートシンク240の接合界面230近傍のSi濃度及びAg濃度は、EPMA分析(スポット径30μm)によって、接合界面230から50μmの位置で5点測定した平均値である。また、図11のグラフは、金属層213(金属板223)及びヒートシンク240(天板部241)の幅中央部分において積層方向にライン分析を行い、前述の50μm位置での濃度を基準として求めたものである。
まず、図13に示すように、回路層212となる金属板222の一面に、スパッタリングによってSiを固着して第1Si層224を形成するとともに、金属層213となる金属板223の一面に、スパッタリングによってSiを固着して第2Si層225を形成する。なお、この第1Si層224、第2Si層225には、Siに加えてCu,Zn,Ge,Ag,Mg,Ca,Ga及びLiから選択される1種又は2種以上の添加元素が固着されており、本実施形態では、添加元素としてAgを用いている。
ここで、本実施形態では、第1Si層224、第2Si層225におけるSi量は、0.08mg/cm2以上2.7mg/cm2以下に設定されている。また、Ag量は、0.08mg/cm2以上5.4mg/cm2以下に設定されている。
次に、図13に示すように、金属板222をセラミックス基板211の一方の面側に積層し、かつ、金属板223をセラミックス基板211の他方の面側に積層する。このとき、図13に示すように、金属板222の第1Si層224、金属板223の第2Si層225が形成された面がセラミックス基板211を向くように、金属板222、223を積層する。すなわち、金属板222、223とセラミックス基板211との間にそれぞれ第1Si層224、第2Si層225を介在させているのである。
次に、金属板222、セラミックス基板211、金属板223を積層方向に加圧(圧力1〜35kgf/cm2)した状態で、真空加熱炉内に装入して加熱し、金属板222、223とセラミックス基板211との界面にそれぞれ第一溶融金属領域、第二溶融金属領域を形成する。
ここで、本実施形態では、真空加熱炉内の圧力は10−6Pa以上10−3Pa以下の範囲内に、加熱温度は600℃以上650℃以下の範囲内に設定している。
次に、第一溶融金属領域、第二溶融金属領域が形成された状態で温度を一定に保持しておく。すると、第一溶融金属領域、第二溶融金属領域中のSi及びAgが、さらに金属板222、223側へと拡散していくことになる。これにより、第一溶融金属領域、第二溶融金属領域であった部分のSi濃度及びAg濃度が徐々に低下していき融点が上昇することになり、温度を一定に保持した状態で凝固が進行していく。これにより、セラミックス基板211と金属板222、223とが接合され、パワーモジュール用基板210が製出されることになる。
次に、金属層213の他方の面に、スパッタリングによってSi及びAgを固着してSi層226を形成する。ここで、本実施形態では、Si層226におけるSi量は、0.08mg/cm2以上2.7mg/cm2以下に設定され、Ag量は、0.08mg/cm2以上5.4mg/cm2以下に設定されている。
次に、図14に示すように、パワーモジュール用基板210の金属層213の他方の面側に、ヒートシンク240を構成する天板部241、コルゲートフィン246、底板部245を積層する。このとき、天板部241の接合層241B及び底板部245の接合層245Bがコルゲートフィン246側を向くように、天板部241及び底板部245を積層する。そして、天板部241とコルゲートフィン246、底板部245とコルゲートフィン246との間に、例えば、KAlF4を主成分とするフラックス(図示なし)を介在させておく。
また、金属板223のSi層226が形成された面が、ヒートシンク240の天板部241を向くように配置し、金属板223とヒートシンク240との間にSi層226を介在させる。
次に、積層されたパワーモジュール用基板210、天板部241、コルゲートフィン246及び底板部245を積層方向に加圧(圧力1〜35kgf/cm2)した状態で、雰囲気加熱炉内に装入して加熱し、金属板223とヒートシンク240の天板部241との間に溶融金属領域を形成する。同時に、天板部241とコルゲートフィン246、底板部245とコルゲートフィン246との間に、接合層241B、245Bを溶融させた溶融金属層を形成する。
ここで、本実施形態では、雰囲気加熱炉内は、窒素ガス雰囲気とされており、加熱温度は550℃以上630℃以下の範囲内に設定されている。
次に、溶融金属領域が形成された状態で温度を一定に保持しておく。すると、溶融金属領域中のSi及びAgが、さらに金属板223側及びヒートシンク240の天板部241側へと拡散していくことになる。これにより、溶融金属領域であった部分のSi濃度及びAg濃度が徐々に低下していき融点が上昇することになり、温度を一定に保持した状態で凝固が進行していくことになる。つまり、ヒートシンク240の天板部241と金属板223とは、いわゆる拡散接合(Transient Liquid Phase Diffusion Bonding)によって接合されているのである。このようにして凝固が進行した後に、常温にまで冷却を行う。
このパワーモジュール301は、回路層312が配設されたパワーモジュール用基板310と、回路層312の表面にはんだ層2を介して接合された半導体チップ3と、ヒートシンク340とを備えている。
金属層313は、回路層312と同様に、純度が99.99%以上のアルミニウム(いわゆる4Nアルミニウム)の圧延板からなる金属板323がセラミックス基板311に接合されることで形成されている。
ここで、このヒートシンク340は、天板部341とコルゲートフィン346、コルゲートフィン346と底板部345が、それぞれろう付けされることによって構成されている。
また、回路層312(金属板322)とセラミックス基板311との接合界面、及び、金属層313(金属板323)とセラミックス基板311との接合界面においては、Siに加えてCu,Zn,Ge,Ag,Mg,Ca,Ga及びLiから選択される1種又は2種以上の添加元素が固溶しており、本実施形態ではAgが固溶している。
まず、図17に示すように、回路層312となる金属板322の一面に、スパッタリングによってSiを固着して第1Si層324を形成するとともに、金属層313となる金属板323の一面に、スパッタリングによってSiを固着して第2Si層325を形成する。さらに、金属板323の他面にもスパッタリングによってSiを固着してSi層326を形成する。
なお、この第1Si層324、第2Si層325、Si層326には、Siに加えてCu,Zn,Ge,Ag,Mg,Ca,Ga及びLiから選択される1種又は2種以上の添加元素が固着されており、本実施形態では、添加元素としてAgを用いている。
ここで、本実施形態では、第1Si層324、第2Si層325、Si層326におけるSi量は、0.08mg/cm2以上2.7mg/cm2以下に設定されている。また、Ag量は、0.08mg/cm2以上5.4mg/cm2以下に設定されている。
次に、図17に示すように、金属板322をセラミックス基板311の一方の面側に積層し、かつ、金属板323をセラミックス基板311の他方の面側に積層する。このとき、図17に示すように、金属板322の第1Si層324、金属板323の第2Si層325が形成された面がセラミックス基板311を向くように、金属板322、323を積層する。
さらに、金属板323のSi層326が形成された面側に、天板部341を積層配置する。
次に、金属板322、セラミックス基板311、金属板323、天板部341を積層方向に加圧(圧力1〜35kgf/cm2)した状態で、真空加熱炉内に装入して加熱し、金属板322、323とセラミックス基板311との界面にそれぞれ第一溶融金属領域、第二溶融金属領域を形成するとともに、金属板323と天板部341との間に、溶融金属領域を形成する。
ここで、本実施形態では、真空加熱炉内の圧力は10−6Pa以上10−3Pa以下の範囲内に、加熱温度は600℃以上650℃以下の範囲内に設定している。
次に、第一溶融金属領域、第二溶融金属領域が形成された状態で温度を一定に保持しておく。すると、第一溶融金属領域、第二溶融金属領域中のSi及びAgが、さらに金属板322、323側へと拡散していくことになる。すると、第一溶融金属領域、第二溶融金属領域であった部分のSi濃度及びAg濃度が徐々に低下していき融点が上昇することになり、温度を一定に保持した状態で凝固が進行していく。これにより、セラミックス基板311と金属板322、323とが接合される。
また、溶融金属領域が形成された状態で温度を一定に保持しておく。すると、溶融金属領域中のSi及びAgが、金属板323及び天板部341側へと拡散していくことになる。すると、溶融金属領域であった部分のSi濃度及びAg濃度が徐々に低下していき融点が上昇することになり、温度を一定に保持した状態で凝固が進行していく。これにより、金属板323と天板部341とが接合される。
次に、図18に示すように、天板部341の他方の面側に、ろう材箔347(例えば、Al−10%Si合金箔等の低融点アルミニウム合金箔)、コルゲートフィン346、底板部345を積層する。このとき、底板部345の接合層345Bがコルゲートフィン346側を向くように底板部345を積層する。また、天板部341とコルゲートフィン346、底板部345とコルゲートフィン346との間には、例えば、KAlF4を主成分とするフラックス(図示なし)を介在させておく。
次に、天板部341、コルゲートフィン346及び底板部345を積層方向に加圧(圧力1〜35kgf/cm2)した状態で、雰囲気加熱炉内に装入して加熱し、天板部341とコルゲートフィン346、底板部345とコルゲートフィン346との間に、ろう材箔347及び接合層345Bを溶融させた溶融金属層を形成する。
ここで、本実施形態では、雰囲気加熱炉内は、窒素ガス雰囲気とされており、加熱温度は550℃以上630℃以下の範囲内に設定している。
そして、冷却することによって、天板部341とコルゲートフィン346、底板部345とコルゲートフィン346の間に形成された溶融金属層を凝固させ、天板部341とコルゲートフィン346、底板部345とコルゲートフィン346とをろう付けする。このとき、天板部341、コルゲートフィン346、底板部345の表面には、酸化被膜が形成されているが、前述のフラックスによってこれらの酸化被膜が除去されることになる。
例えば、回路層及び金属層を構成する金属板を純度99.99%の純アルミニウムの圧延板としたものとして説明したが、これに限定されることはなく、純度99%のアルミニウム(2Nアルミニウム)であってもよい。
また、セラミックス基板をAlNで構成されたものとして説明したが、これに限定されることはなく、Si3N4、Al2O3等の他のセラミックスで構成されていてもよい。
また、Si層形成工程において、スパッタによってSiを固着するものとして説明したが、これに限定されることはなく、めっき、蒸着、CVD、コールドスプレー、又は、粉末が分散しているペースト及びインクなどの塗布等でSiを固着させてもよい。
さらに、Si層形成工程において、SiとともにAlを固着する構成としてもよい。
さらに、セラミックス基板と金属板とをろう材を使用せずに接合したものとして説明したが、これに限定されることはなく、セラミックス基板と金属板とをろう材を使用して接合したパワーモジュール用基板を用いてもよい。
さらに、コルゲートフィンの形状等を含め、ヒートシンクの構造も本実施形態に限定されるものではない。例えば、第3、第4の実施形態における天板部のみを放熱板としてパワーモジュール用基板に接合したものであってもよい。
10、110、210、310、410 パワーモジュール用基板
11、111、211、311、411 セラミックス基板
12、112、212、312、412 回路層(第一の金属板)
13、113、213、313、413 金属層(第二の金属板)
40、140、240、340、440 ヒートシンク
24、124、224、324 第1Si層(第1金属層)
25、125、225、325 第2Si層(第2金属層)
26、126、226、326 Si層
27 第一溶融金属領域
28 第二溶融金属領域
29 溶融金属領域
30、130、230 接合界面
Claims (13)
- セラミックス基板と、該セラミックス基板の表面に一面が接合されたアルミニウムからなる第一の金属板と、前記セラミックス基板の裏面に一面が接合されたアルミニウムからなる第二の金属板と、該第二の金属板の前記セラミックス基板と接合された前記一面と反対側の他面に接合されたアルミニウムまたはアルミニウム合金からなるヒートシンクと、を備えるヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法であって、
前記セラミックス基板と前記第一の金属板、及び、前記セラミックス基板と前記第二の金属板とを接合するセラミックス基板接合工程と、
前記第二の金属板の他面に前記ヒートシンクを接合するヒートシンク接合工程と、を有し、
前記ヒートシンク接合工程は、
前記第二の金属板の他面と前記ヒートシンクの接合面のうち少なくとも一方にSiを固着してSi層を形成するSi層形成工程と、
前記Si層を介して前記第二の金属板と前記ヒートシンクとを積層するヒートシンク積層工程と、
積層された前記第二の金属板と前記ヒートシンクとを積層方向に加圧するとともに加熱し、前記第二の金属板と前記ヒートシンクとの界面に溶融金属領域を形成するヒートシンク加熱工程と、
この溶融金属領域を凝固させることによって、前記第二の金属板と前記ヒートシンクとを接合する溶融金属凝固工程と、を有し、
前記ヒートシンク加熱工程において、前記Si層のSiを前記第二の金属板及び前記ヒートシンクに拡散させることにより、前記第二の金属板と前記ヒートシンクとの界面に、前記溶融金属領域を形成することを特徴とするヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法。 - 前記Si層形成工程において、前記第二の金属板の他面と前記ヒートシンクの接合面のうち少なくとも一方に、Siに加えて、Cu,Zn,Ge,Ag,Mg,Ca,Ga及びLiから選択される1種又は2種以上の添加元素を固着することを特徴とする請求項1に記載のヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法。
- 前記Si層形成工程では、SiとともにAlを固着させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法。
- 前記セラミックス基板接合工程は、
前記セラミックス基板と前記第一の金属板との接合界面における前記セラミックス基板の接合面と前記第一の金属板の接合面のうちの少なくとも一方にCu又はSiのうちの1種以上を固着して第1金属層を形成するとともに、前記セラミックス基板と前記第二の金属板との接合界面における前記セラミックス基板の接合面と前記第二の金属板の接合面のうちの少なくとも一方にCu又はSiのうちの1種以上を固着して第2金属層を形成する金属固着工程と、
前記第1金属層を介して前記セラミックス基板と前記第一の金属板とを積層するとともに、前記第2金属層を介して前記セラミックス基板と前記第二の金属板とを積層するセラミックス基板積層工程と、
積層された前記第一の金属板と前記セラミックス基板と前記第二の金属板とを積層方向に加圧するとともに加熱し、前記第一の金属板と前記セラミックス基板との界面及び前記セラミックス基板と前記第二の金属板との界面に、第一溶融金属領域及び第二溶融金属領域を形成するセラミックス基板加熱工程と、
この第一溶融金属領域及び第二溶融金属領域を凝固させることによって、前記第一の金属板と前記セラミックス基板及び前記セラミックス基板と前記第二の金属板とを接合する第一溶融金属及び第二溶融金属凝固工程と、を有し、
前記セラミックス基板加熱工程において、前記第1金属層及び前記第2金属層のCu又はSiのうちの1種以上を前記第一の金属板及び前記第二の金属板に拡散させることにより、前記第一の金属板と前記セラミックス基板との界面及び前記セラミックス基板と前記第二の金属板との界面に、前記第一溶融金属領域及び前記第二溶融金属領域を形成することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法。 - 前記セラミックス基板接合工程と、前記ヒートシンク接合工程と、を同時に行うことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法。
- 前記Si層形成工程は、めっき、蒸着、CVD、スパッタリング、コールドスプレー、又は、粉末が分散しているペースト及びインクなどの塗布によって前記ヒートシンクの接合面及び前記第二の金属板の他面のうち少なくとも一方に、Siを固着させることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法。
- 前記第二の金属板が、複数の金属板が積層されて構成されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法。
- セラミックス基板と、
該セラミックス基板の表面に一面が接合されたアルミニウムからなる第一の金属板と、
前記セラミックス基板の裏面に一面が接合されたアルミニウムからなる第二の金属板と、
該第二の金属板の前記セラミックス基板と接合された前記一面と反対側の他面に接合されたアルミニウムまたはアルミニウム合金からなるヒートシンクとを備え、
前記第二の金属板及び前記ヒートシンクには、Siが固溶されており、前記第二の金属板及び前記ヒートシンクの接合界面近傍におけるSi濃度が0.05質量%以上0.6質量%以下の範囲内に設定されていることを特徴とするヒートシンク付パワーモジュール用基板。 - 前記第二の金属板及び前記ヒートシンクには、Siに加えて、Cu,Zn,Ge,Ag,Mg,Ca,Ga及びLiから選択される1種又は2種以上の添加元素が固溶されていることを特徴とする請求項8に記載のヒートシンク付パワーモジュール用基板。
- 前記第一の金属板と前記セラミックス基板との接合界面近傍、あるいは、前記第二の金属板と前記セラミックス基板との接合界面近傍において、Cu又はSiのうちの1種以上に加えてCu,Zn,Ge,Ag,Mg,Ca,Ga及びLiから選択される1種又は2種以上の添加元素が固溶されていることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載のヒートシンク付パワーモジュール用基板。
- 前記第二の金属板の厚さが、前記第一の金属板の厚さ以上となるように設定されていることを特徴とする請求項8から請求項10のいずれか一項に記載のヒートシンク付パワーモジュール用基板。
- 前記第二の金属板が、複数の金属板が積層されて構成されていることを特徴とする請求項8から請求項11のいずれか一項に記載のヒートシンク付パワーモジュール用基板。
- 請求項8から請求項12のいずれか一項に記載のヒートシンク付パワーモジュール用基板と、
該ヒートシンク付パワーモジュール用基板上に搭載される電子部品と、を備えたことを特徴とするパワーモジュール。
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