JP4410386B2 - カラーフィルター保護膜用塗工液及びカラーフィルター - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、カラーフィルター、特に液晶表示装置用カラーフィルターに関し、さらに詳しくは、透明性、硬度、パシベーション性あるいは平坦性などの諸特性に優れた透明保護膜で被覆されたカラーフィルターに関する。また、本発明は、そのような優れた保護膜を形成するための塗工液に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、パーソナルコンピューターなどのフラットディスプレーとして、カラー液晶表示装置が急速に普及してきている。一般にカラー液晶表示装置(101)は、図1に示すように、カラーフィルター1とTFT基板等の電極基板2とを対向させて1〜10μm程度の間隙部3を設け、当該間隙部3内に液晶化合物Lを充填し、その周囲をシール材4で密封した構造をとっている。カラーフィルター1は、透明基板5上に、画素間の境界部を遮光するために所定のパターンに形成されたブラックマトリックス層6と、各画素を形成するために複数の色(通常、赤(R)、緑(G)、青(B)の光の3原色)を所定順序に配列した着色層7又は最近ではカラーフィルターと、保護膜8と、透明電極膜9とが、透明基板に近い側からこの順に積層された構造をとっている。また、カラーフィルター1及びこれと対向する電極基板2の内面側には配向膜10が設けられる。さらに間隙部3には、カラーフィルター1と電極基板2の間のセルギャップを一定且つ均一に維持するために、スペーサーとして一定粒子径を有するパール11が分散されている。そして、各色に着色された画素それぞれ又はカラーフィルターの背後にある液晶層の光透過率を制御することによってカラー画像が得られる。
【0003】
スペーサーとして図1に示したような微粒子状のパール11を分散させる場合には、当該パールは、ブラックマトリックス層6の背後であるか画素の背後であるかは関係なく、ランダムに分散する。パールが表示領域すなわち画素部に配置された場合、パールの部分をバックライトの光が透過し、また、パール周辺の液晶の配向が乱れ、表示画像の品位を著しく低下させる。そこで図2に示すように、パールを分散させるかわりに、カラーフィルターの内面側であってブラックマトリックス層6が形成されている位置と重り合う領域に、セルギャップに対応する高さを有する柱状スペーサー12を形成する場合もある。
【0004】
カラーフィルターの着色層7を被覆する保護膜8には、着色層を保護するために、十分な硬度と密着性が求められる。また、当該保護膜には、画素の色彩に悪影響を及ぼさないように、優れた透明性および優れた膜厚均一性が求められる。さらに、当該保護膜には、間隙部3に封入された液晶化合物が汚染されないように非汚染性、例えば、着色層側から液晶へ汚染物質が移行するのを阻止し得るパシベーション性や保護膜自体が液晶に溶出しない非溶出性が求められる。
【0005】
液晶表示装置の製造工程においては、液晶を配向させるためにカラーフィルター1と電極基板2の表面にNMPやγブチロラクトンにポリイミドやポリアミック酸を溶解させた配向膜形成用塗工液を塗布し、250℃で乾燥、硬化させ、ラビングする。従って、保護膜には配向膜形成用塗工液の溶剤に溶解や膨潤しないように、十分な耐溶剤性を有することが求められる。また、保護膜には、配向膜を乾燥、硬化させる条件である250℃で1時間程度の環境下でも透明性を維持し、且つ熱収縮や膜減りを生じないように高い耐熱性を有することも求められる。
【0006】
また、カラーフィルター1と電極基板2は、所定のギャップを空けて向き合わせて貼り合わされ、その間隙に液晶が注入、封入されて液晶表示装置となる。カラーフィルター1と電極基板2の接合部には熱硬化性エポキシ接着剤を塗布し、両者を貼り合わせ、均一なギャップが得られるように所定の圧力をかけた状態で150〜160℃程度の加熱を1時間程度行うことにより接着するのが一般的である。このような貼り合わせ工程において、保護膜がある程度の硬度を有していないと、所定の且つ均一のギャップを保持できなくなり、表示不良を起こす。従って保護膜には、150〜160℃の温度領域でも硬度が極端に低下しないように、Tgが150℃以上であることが求められる。
【0007】
カラーフィルターは温純水やIPA(イソプロパノール)で洗浄してから液晶表示装置に組み込まれる。もしもカラーフィルターの保護膜が充分な耐温純水性や耐溶剤性を有していないと、洗浄時に保護膜が部分的に溶解し或いは密着性が弱くなり、その結果、膜減りを起こして膜厚均一性が悪くなったり、保護膜の脱落が起こったりするおそれがある。従って、カラーフィルターの保護膜には、充分な耐温純水性を有することも求められる。
【0008】
カラーフィルターの保護膜は、保護層用の樹脂を含有する塗工液を着色層の上に塗工し、乾燥または固化させ、必要に応じて塗工膜をさらに架橋反応などにより硬化させることによって形成する。もしも保護膜用塗工液が粘度変化(特に粘度上昇)を引き起こしやすいものであると、塗工膜を均一の膜厚に形成することが困難であり、膜厚を均一にするために塗工作業中に塗工条件を頻繁に調整し直すことが必要になったり、場合によってはそのような調整を繰り返しても膜厚の均一化が不可能になるおそれがある。従って、カラーフィルターの保護膜を形成するための塗工液には、充分な粘度安定性が求められる。
【0009】
上記のような諸特性が求められるカラーフィルターの保護膜を形成する方法としては、保護膜用材料としてUV硬化型樹脂または熱硬化型樹脂を用い、これら何れかの樹脂を含有する塗工液を着色層上に塗工し、乾燥させた後、得られた塗工膜をUV照射または加熱することにより保護膜を形成することが良く知られている。UV硬化型樹脂を用いる場合には、塗工膜を所望のパターン状に露光することにより着色層上の所望位置に所望パターンの保護膜を形成できるが、塗工液中に必須に存在するモノマーや光重合開始剤などの低分子量成分が液晶に移行して汚染し、表示不良を引き起こすおそれがある。
【0010】
一方、熱硬化型樹脂を用いる場合には、保護膜を複雑なパターン状に形成することはUV硬化型樹脂と比べて難しいが、着色層上にベタに或いは比較的簡単なパターン状に保護膜を形成することには、それほど困難は伴わない。また、熱硬化型樹脂を用いる場合には、保護膜から液晶に低分子量成分が移行して汚染するおそれがUV硬化型樹脂と比べて少ないと言う利点がある。
【0011】
熱硬化型樹脂の保護膜を形成する場合には、酸成分とエポキシ成分の重合および/または架橋反応を利用するのが一般的である。保護膜の硬度やパシベーション性を向上させるためには、保護膜の架橋密度を大きくするのが好ましい。エポキシ系熱硬化型保護膜の架橋密度を大きくためには、保護膜用塗工液または当該塗工液を用いて形成した塗工膜中の酸成分およびエポキシ成分それぞれの反応点濃度をできるだけ大きくし、且つ/または、酸成分およびエポキシ成分それぞれの反応当量をできるだけ等しくするのが好ましい。しかしながら、酸成分は有機溶剤に難溶性なので、塗工液中(反応系内)に多量の酸成分を共存させることが困難であった。また、仮にエポキシ成分の量に見合うような十分に多量の酸成分を塗工液中に共存させることができたとしても、塗工液の反応性が高すぎて経時安定性が悪くなり、その結果、粘度変化(特に粘度上昇)が短時間のうちに生じ易くなって、塗工膜を均一な膜厚に形成することが困難になるおそれがある。
【0012】
特開平4−218561号公報には、多塩基カルボン酸のカルボキシル基をビニル型二重結合含有化合物によりブロックしてなるカルボン酸ブロック体と、当該カルボン酸ブロック体から再生されるカルボン酸と化学結合し得る反応性官能基を2個以上含有する化合物とを含有する一液型の熱硬化性組成物が記載されている。この熱硬化性組成物は、多塩基カルボン酸をブロック体にしてエポキシ基などの反応性官能基と反応しない形で熱硬化反応系に共存させているので、貯蔵安定性が良好で、塗料、インク、接着剤、成形品などに利用できる。しかしながら、特開平4−218561号公報においては、熱硬化性組成物をカラーフィルターの保護膜として利用するための検討は行われていない。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実状に鑑みて成し遂げられたものであり、その第一の目的は、架橋密度の高い熱硬化型樹脂の保護膜によって着色層を被覆したカラーフィルターを提供することにある。また、本発明の第二の目的は、熱硬化型樹脂の保護膜を形成するための塗工液であって、エポキシ成分と共に酸成分を多量に含有していて架橋密度の高い保護膜を形成し得ると共に、保存中および塗工作業時の経時安定性、特に粘度安定性にも優れており、カラーフィルターの着色層を被覆する保護膜を形成するのに好適な塗工液を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明において提供されるカラーフィルターは、(A)少なくとも下記式1で表される構成単位及び下記式2で表される構成単位
【0015】
【化6】
(R1は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基であり、R2は主環構成炭素数3〜12の脂環式炭化水素基である。)
【0016】
【化7】
(R3は水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基である。)
から構成され且つグリシジル基を2個以上有するポリマーと、
【0017】
(B)下記式3aまたは式3b
【化8】
(R4、R5、R6、R4’、R5’及びR6’はそれぞれ水素原子または炭素数1〜18の有機基であり、R7及びR8はそれぞれ炭素数1〜18の有機基であり、Y1及びY1’はそれぞれ酸素原子またはイオウ原子である。R6とR7は互いに結合してY1をヘテロ原子とする複素環を形成していてもよい。また、R4’、R5’、R6’及びY1’は、それらがそれぞれ対応しているR4、R5、R6及びY1と同じであってもよい。)
で表される官能基を2個以上有する化合物とを、水酸基を含有しない溶剤に溶解または分散させた塗工液を、カラーフィルターの着色層を形成した側の表面に塗工し、架橋反応により硬化させて保護膜を形成したことを特徴とする。
【0018】
本発明において上記カラーフィルターの着色層上に形成された保護膜は、透明性、硬度、耐熱性、その他の諸要求特性に優れている。本発明においてはカラーフィルターの着色層上に、下記の透明性、硬度および耐熱性を兼ね備えた保護膜を作成することができる。
【0019】
a)透明性:400nm〜700nmの可視領域における透過率が90%以上である。
b)硬度:JIS K5400(1990)に規定される鉛筆引っ掻き試験のうち8.4・1試験法で2H以上の鉛筆硬度を示す。
c)耐熱性:カラーフィルターを250℃で1時間放置後の保護膜の膜厚減少が10%以下で、且つ、当該放置前後の色差が1以下である。
【0020】
本発明においてカラーフィルターの保護膜は耐溶剤性にも優れており、例えば、保護膜を設けたカラーフィルターをイソプロピルアルコール、N−メチルピロリドンまたはγ−ブチロラクトンいずれかの溶剤に液温40℃で1時間浸漬した後に保護膜の膜厚を測定して算出される膜厚減少を、いずれの溶剤に浸漬した場合でも10%以下とすることができる。
【0021】
本発明においてカラーフィルターの保護膜は耐温純水性にも優れており、例えば、保護膜を設けたカラーフィルターを80℃の純水に1時間浸漬後にJIS K5400(1990)8.5に規定される碁盤目テープ剥離試験を行った結果を6点以上とすることができる。
【0022】
上記カラーフィルターの保護膜を作成するために本発明において提供されるカラーフィルター保護膜用塗工液は、(A)少なくとも下記式1で表される構成単位及び下記式2で表される構成単位
【0023】
【化9】
(R1は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基であり、R2は主環構成炭素数3〜12の脂環式炭化水素基である。)
【0024】
【化10】
(R3は水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基である。)
から構成され且つグリシジル基を2個以上有するポリマーと、
【0025】
(B)下記式3aまたは式3b
【化11】
(R4、R5、R6、R4’、R5’及びR6’はそれぞれ水素原子または炭素数1〜18の有機基であり、R7及びR8はそれぞれ炭素数1〜18の有機基であり、Y1及びY1’はそれぞれ酸素原子またはイオウ原子である。R6とR7は互いに結合してY1をヘテロ原子とする複素環を形成していてもよい。また、R4’、R5’、R6’及びY1’は、それらがそれぞれ対応しているR4、R5、R6及びY1と同じであってもよい。)
で表される官能基を2個以上有する化合物とを、水酸基を含有しない溶剤に溶解または分散させてなることを特徴とする。
【0026】
本発明により提供されるカラーフィルターの保護膜用塗工液には、難溶性の多塩基カルボン酸を、当該多塩基カルボン酸のカルボキシル基をブロック(キャップ、保護)することにより溶解性の高い化合物(B)の形にしてから溶解、分散させる。従って、塗工液中にカルボキシル基の反応点を高濃度でエポキシ基と共存させることができ、かかる塗工液を塗工して塗膜を形成し加熱すると高い架橋密度が得られる。また、化合物(B)は当該化合物に応じた所定の温度以上に加熱しなければカルボキシル基を再生しない。従って、カルボキシル基およびエポキシ基それぞれの反応点濃度が高いにもかかわらず、塗工液の状態では保存安定性に非常に優れており、調製直後から長期間に渡り良好な塗工性を保持し続ける。
【0027】
上記の保護膜用塗工液の粘度は、調製直後の初期粘度が0.1〜1,000cpsであり、且つ、調製してすぐ密閉容器中に入れ20℃で40日間放置後の粘度を初期粘度の2倍以下となるように調節することができる。
【0028】
前記ポリマー(A)中の式1で表される構成単位においては、R1が水素またはメチル基であり、R2が未置換または炭素数1〜5のアルキル基が置換したシクロヘキシル基であることが好ましい。
【0029】
前記ポリマー(A)のポリスチレン換算重量平均分子量は、3,000〜100,000の範囲にあるのが好ましい。
【0030】
カルボキシル基の反応点密度を大きくするために、前記化合物(B)の式3aまたは式3bで表される官能基を分解することにより再生させ得る多塩基カルボン酸の酸当量は50g/mol以上であることが好ましい。
【0031】
保護膜用塗工液の保存安定性を良くするために、前記化合物(B)の式3aまたは式3bで表される官能基を分解することにより再生させ得る多塩基カルボン酸のポリスチレン換算重量平均分子量は10,000以下であることが好ましい。
【0032】
前記化合物(B)は、下記式4で表される芳香族カルボン酸誘導体であることが好ましく、その中でも下記式5で表される単環芳香族カルボン酸誘導体であることが特に好ましい。
【0033】
【化12】
(Aで表される環状構造は芳香族炭化水素環であり、F3は式3で表される官能基であり、nは2以上の整数である。)
【0034】
【化13】
(F3は上記と同じであり、mは3以上の整数である。)
【0035】
前記溶剤の水に対する溶解性は、20℃の水100重量部に対して20重量部以下であることが好ましい。酸−エポキシ間の架橋反応系から水分を実質的に排除するために、水との混和性の低い溶剤を用いて塗工液を調製するのが好ましいからである。
【0036】
前記塗工液中には、(C)一分子中にエポキシ基を2個以上有する多官能エポキシ樹脂がさらに溶解または分散していることが好ましい。保護膜用塗工液に多官能エポキシ樹脂(C)を添加すると、塗工液中にエポキシ基が補充されてエポキシの反応点密度が増加し、架橋密度を高めることができるからである。
【0037】
前記保護膜用塗工液に存在する前記式3aまたは式3bの官能基とエポキシ基の当量比(式3aまたは式3bの官能基/エポキシ基)は0.2以上2.0以下の範囲にあるのが好ましい。
【0038】
前記塗工液中には、酸−エポキシ間の熱硬化反応を促進するために、(D)ハロゲンフリーの酸性触媒をさらに溶解または分散させてもよい。
【0039】
本発明のカラーフィルター保護膜用塗工液は優れた粘度安定性を有するので、これを用いてカラーフィルターの着色層上に保護膜を形成する場合には、塗工作業の間は粘度の上昇を生じずに初期の良好な塗工性を維持し続け、塗工条件を頻繁に変更する必要はない。従って、作業開始時に設定した塗工条件の下で高速且つ連続的に均一性の高い塗膜を形成することができる。
【0040】
【発明の実施の形態】
本発明においてはカラーフィルターの着色層を形成した側の表面がエポキシ系硬化樹脂の保護膜で被覆されている。当該保護膜は、(A)少なくとも下記式1で表される構成単位及び下記式2で表される構成単位
【0041】
【化14】
(R1は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基であり、R2は主環構成炭素数3〜12の脂環式炭化水素基である。)
【0042】
【化15】
(R3は水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基である。)
から構成され且つグリシジル基を2個以上有するポリマーと、
(C)多塩基カルボン酸とが架橋結合したものである。
【0043】
この保護膜は、(A)少なくとも下記式1で表される構成単位及び下記式2で表される構成単位
【0044】
【化16】
(R1およびR2は上記と同じである。)
【0045】
【化17】
(R3は上記と同じである。)
から構成され且つグリシジル基を2個以上有するポリマーと、
【0046】
(B)下記式3aまたは式3b
【化18】
(R4、R5、R6、R4’、R5’及びR6’はそれぞれ水素原子または炭素数1〜18の有機基であり、R7及びR8はそれぞれ炭素数1〜18の有機基であり、Y1及びY1’はそれぞれ酸素原子またはイオウ原子である。R6とR7は互いに結合してY1をヘテロ原子とする複素環を形成していてもよい。また、R4’、R5’、R6’及びY1’は、それらがそれぞれ対応しているR4、R5、R6及びY1と同じであってもよい。)
で表される官能基を2個以上有する化合物とを、水酸基を含有しない溶剤に溶解または分散させた塗工液を、カラーフィルターの着色層を形成した側の表面に塗工し、塗膜を架橋反応により硬化させることによって形成することができる。
【0047】
塗工液中のポリマー成分(A)(メインポリマー)は、少なくとも式1で表される構成単位及び下記式2で表される構成単位から構成され、式2で表される構成単位に含まれるグリシジル基を2個以上有している。式1で表される構成単位は、下記式8で表されるモノマーから誘導される。
【0048】
【化19】
(R1およびR2は式1と同じである。)
【0049】
式8で表されるモノマーは、保護膜に充分な硬度および透明性を付与するために用いられる。式8において、R2は、主環構成炭素数3〜12の脂環式炭化水素基であれば、付加的な構造、例えば環内二重結合、炭化水素基の側鎖、スピロ環の側鎖、環内架橋炭化水素基を含んでいてもよい。本発明において式1または式8の構造中R2の部分は、保護膜の塗膜硬度および透明性におおいに影響する。式8で表されるモノマーの代わりに、スチレン(R2の部分がフェニル基)やメチルメタクリレート(R2の部分がメチル基)を用いると、最終的な保護膜の硬度および透明性に劣る。
【0050】
式8において、R1として好ましいのは水素またはメチル基であり、R2として好ましいのは未置換または炭素数1〜5のアルキル基が置換したシクロヘキシル基である。
【0051】
上記式8で表されるモノマーとしては、具体的には、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロデカトリエンアクリレート、パラ−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート等を例示することができる。ここで、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートのいずれであっても良いことを意味する。
【0052】
これらの中では、シクロヘキシルメタクリレート、パラ−t−ブチルシクロヘキシルメタクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート等が好ましい。
【0053】
ポリマー(A)中の式2で表される構成単位は、下記式9で表されるモノマーから誘導される。
【0054】
【化20】
(R3は式2と同じである。)
【0055】
式9で表されるモノマーは、ポリマー(A)中にエポキシ基(エポキシの反応点)を導入するために用いられる。ポリマー(A)を含有する保護膜用塗工液は保存安定性に優れており、保存中および塗工作業中に粘度上昇を生じ難いが、その理由の一つは式2または式9中のエポキシ基がグリシジル基だからであると推測される。式9で表されるモノマーの代わりに脂環式エポキシアクリレートを用いると、保護膜用塗工液の粘度が上昇しやすい。
【0056】
式9において、R3として好ましいのは水素またはメチル基である。式9で表されるモノマーとしては、具体的には、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等を例示することができ、その中ではグリシジルメタクリレート(GMA)が好ましい。
【0057】
ポリマー(A)は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。また、ポリマー(A)は、保護膜に必要とされる程度の硬度と透明性が確保できる限り、式1あるいは式2以外の主鎖構成単位を含んでいてよい。ポリマー(A)中の式1の構成単位と式2の構成単位の含有量は、式1の構成単位を誘導する単量体と式2の構成単位を誘導する単量体との仕込み重量比(式1を誘導する単量体:式2を誘導する単量体)で表した時に、10:90〜90:10の範囲にあるのが好ましい。式1の構成単位の量が過剰な場合には、硬化の反応点が少なくなって架橋密度が低くなるおそれがあり、一方、式2の構成単位の量が過剰な場合には、嵩高い骨格が少なくなって硬化収縮が大きくなるおそれがある。また、ポリマー(A)の分子量は、ポリスチレン換算重量平均分子量で表した時に3,000〜100,000の範囲にあるのが好ましい。ポリマー(A)の分子量が小さすぎると、塗工膜にタック(べとつき)が生じ、一方、当該分子量が大きすぎると、均一な膜厚に塗工するのが難しくなる。
【0058】
ポリマー(A)の合成例としては、温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下ロートを備えた4つ口フラスコに、水酸基を含有しない溶剤を仕込み、攪拌しながら80℃に昇温する。次いで上記式8で表されるモノマー、上記式9で表されるモノマー、及び、必要に応じて他のモノマーを組み合わせた組成物と重合開始剤の混合物(滴下成分)を、2時間かけて滴下ロートより等速滴下する。滴下終了後、80℃の温度を5時間保ったところで反応を終了することにより、ポリマー(A)が得られる。
【0059】
上記式3aまたは式3bで表される官能基を2個以上有する化合物(B)は、多塩基カルボン酸にビニル型二重結合を持つ化合物を反応させることによってカルボキシル基をブロック(保護)したキャップ体である。化合物(B)のうち、式3aで表される官能基を2個以上有する化合物は、多塩基カルボン酸に下記式10で表されるビニルエーテル化合物、ビニルチオエーテル化合物あるいは酸素原子またはイオウ原子をヘテロ原子とするビニル型二重結合を持つ複素環式化合物を反応させることによって得られる。
【0060】
【化21】
(R4、R5、R6、R7、およびY1は、式3aと同じである。)
【0061】
前記式3aおよび式10におけるR4、R5およびR6は、それぞれ水素原子または炭素数1〜18のアルキル基、アリール基、アルカリール基などの有機基、R7は炭素数1〜18のアルキル基、アリール基、アルカリール基などの有機基であって、これらの有機基は適当な置換基を有していてもよく、またR6とR7は互いに結合してY1をヘテロ原子とする複素環を形成していてもよい。
【0062】
式10で表される化合物の具体例としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどの脂肪族ビニルエーテル化合物およびこれらに対応する脂肪族ビニルチオエーテル化合物、さらには2,3−ジヒドロフラン、3,4−ジヒドロフラン、2,3−ジヒドロ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−2−メトキシ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−4,4−ジメチル−2H−ピラン−2−オン、3,4−ジヒドロ−2−エトキシ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン−2−カルボン酸ナトリウムなどの環状ビニルエーテル化合物およびこれらに対応する環状ビニルチオエーテル化合物などが挙げられる。
【0063】
化合物(B)のうち、式3bで表される官能基を2個以上有する化合物は、多塩基カルボン酸に下記式11で表されるジビニルエーテル化合物またはジビニルチオエーテル化合物を反応させることによって得られる。
【0064】
【化22】
(式11)
(R4、R5、R6、Y1、R4’、R5’、R6’、Y1’及びR8は式3bと同じである。)
【0065】
上記式11で表されるジビニルエーテル化合物またはジビニルチオエーテル化合物の分子中には、カルボキシル基を保護することのできるビニル構造が2つ存在している。そのため、多価カルボン酸、特にジカルボン酸に上記式11で表されるジビニルエーテル化合物またはジビニルチオエーテル化合物を反応させると、主鎖構成単位として式3bで表される官能基を2個以上有するポリマータイプの化合物(B)が得られる。
【0066】
上記式11で表される化合物としては、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、1,9−ノナンジオールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ビスフェノールAジビニルエーテル、水添ビスフェノールAジビニルエーテルなどのジビニルエーテル化合物、及び、これらに対応するジビニルチオエーテル化合物が挙げられる。
【0067】
式10または式11で表されるビニル型二重結合含有化合物によって保護される多塩基カルボン酸としては、例えばコハク酸、アジピン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカメチレンジカルボン酸などの脂肪族ポリカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの芳香族ポリカルボン酸;テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸などの脂環式ポリカルボン酸;及び、1分子中にカルボキシル基2個以上を有するポリエステル樹脂、アクリル樹脂、マレイン化ポリブタジエン樹脂などのポリマーカルボン酸;等が挙げられる。
【0068】
その他の多塩基カルボン酸としては、例えば、(1)一分子当たりヒドロキシル基2個以上を有するポリオールと酸無水物とをハーフエステル化させる、(2)一分子当たりイソシアネート基2個以上を有するポリイソシアネート化合物とヒドロキシカルボン酸またはアミノ酸とを付加させる、(3)カルボキシル基含有α,β−不飽和単量体を単独重合または他のα,β−不飽和単量体と共重合させる、(4)カルボキシル基末端のポリエステル樹脂を合成するなどの方法により得られるものが挙げられる。
【0069】
これらの方法において、ポリオールとしては例えばエチレングリコール、1,2−及び1,3−プロピレングリコールなどを用いることができ、酸無水物としては例えばコハク酸やグルタル酸やアジピン酸のような多価カルボン酸の無水物を用いることができ、ポリイソシアネート化合物としては例えばp−フェニレンジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネートなどを用いることができ、ヒドロキシカルボン酸としては例えばクエン酸、ヒドロキシピバリン酸などを用いることができ、アミノ酸としては例えばDL−アラニン、L−グルタミン酸などを用いることができ、カルボキシル基含有α,β−不飽和単量体としては例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸などを用いることができ、他のα,β−不飽和単量体としては例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレートなどを用いることができる。また、カルボキシル基末端のポリエステル樹脂は、多価アルコールに対して多塩基酸過剰下での通常のポリエステル樹脂の合成方法に従い、容易に形成させることができる。
【0070】
通常は、上記した多塩基カルボン酸と式10または式11で表されるビニル型二重結合含有化合物とを酸触媒の存在下、室温〜100℃の温度で反応させることによってカルボキシル基が保護(ブロック)すると、式3aまたは式3bで表される官能基を2個以上有する化合物(B)が得られる。多塩基カルボン酸は、一分子中に2〜14個程度のカルボキシル基を有しているのが適切である。化合物(B)中に大量のカルボキシル基を導入して酸の反応点密度を大きくするために、多塩基カルボン酸は、酸当量が50g/mol以上あるのが好ましい。また、保護膜用塗工液の保存安定性(粘度安定性)を良くするためには、ポリスチレン換算重量平均分子量が10,000以下であるのが好ましい。
【0071】
化合物(B)として具体的に好ましいものとしては、下記式4で表される芳香族カルボン酸誘導体が挙げられる。
【0072】
【化23】
(Aで表される環状構造は芳香族炭化水素環であり、F3は式3で表される官能基であり、nは2以上の整数である。)
【0073】
式4で表される芳香族カルボン酸誘導体は、下記式6で表される芳香族多塩基カルボン酸をブロックすることにより得られる。
【0074】
【化24】
(Aで表される環状構造、及びnは上記と同じである。)
式6で表される芳香族多塩基カルボン酸としては、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、1,3,5−トリメシン酸、1,2,4−トリメリット酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ピロメリット酸などが挙げられる。
【0075】
上記式4で表される芳香族カルボン酸誘導体のなかでも、下記式5で表される単環芳香族カルボン酸誘導体は特に好ましい。
【0076】
【化25】
(F3は式4と同じである。また、mは2以上の整数である。)
【0077】
式5で表される単環芳香族カルボン酸誘導体は、下記式7で表される単環芳香族多塩基カルボン酸をブロックすることにより得られる。
【0078】
【化26】
(mは上記と同じである。)
【0079】
式7で表される単環芳香族カルボン酸誘導体としては、上記式6で例示されたもののうちイソフタル酸、テレフタル酸、1,3,5−トリメシン酸、1,2,4−トリメリット酸が該当し、その中でもカルボキシル基が3つある1,3,5−トリメシン酸および1,2,4−トリメリット酸が好ましい。メインポリマー(A)中のエポキシ成分(式2の構成単位)としてグリシジルメタクリレートを用いる場合には、1,2,4−トリメリット酸を用いることによって優れた塗膜硬度が得られ、特に好ましい。
【0080】
本発明において保護膜用の塗工液には、さらに(C)一分子中にエポキシ基を2個以上有する多官能エポキシ樹脂を添加するのが好ましい。メインポリマー(A)には、エポキシ基(グリシジル基)が式2で表される構成単位によって導入されているが、メインポリマー(A)の分子内に導入できるエポキシ量には限界がある。保護膜用の塗工液に多官能エポキシ樹脂(C)を添加すると、塗工液中にエポキシ基が補充されてエポキシの反応点密度が増加し、架橋密度を高めることができる。
【0081】
多官能エポキシ樹脂(C)としては、一分子中にエポキシ基を2個以上含有するものであれば特に制限はなく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、3官能型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA含核ポリオール型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、脂環式型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂などを使用できる。
【0082】
より具体的には、商品名エピコート828(油化シェルエポキシ社製)などのビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名YDF−175S(東都化成社製)などのビスフェノールF型エポキシ樹脂、商品名YDB−715(東都化成社製)などの臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名EPICLON EXA1514(大日本インキ化学工業社製)などのビスフェノールS型エポキシ樹脂、商品名YDC−1312(東都化成社製)などのハイドロキノン型エポキシ樹脂、商品名EPICLON EXA4032(大日本インキ化学工業社製)などのナフタレン型エポキシ樹脂、商品名エピコートYX4000H(油化シェルエポキシ社製)などのビフェニル型エポキシ樹脂、商品名エピコート157S70(油化シェルエポキシ社製)などのビスフェノールA型ノボラック系エポキシ樹脂、商品名YDPN−638(東都化成社製)などのフェノールノボラック型エポキシ樹脂、商品名YDCN−701(東都化成社製)などのクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、商品名EPICLON HP−7200(大日本インキ化学工業社製)などのジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、商品名エピコート1032H60(油化シェルエポキシ社製)などのトリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、商品名VG3101M80(三井化学社製)などの3官能型エポキシ樹脂、商品名エピコート10315(油化シェルエポキシ社製)などのテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、商品名デナコールEX−411(ナガセ化成工業社製)などの4官能型エポキシ樹脂、商品名ST−3000(東都化成社製)などの水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名エピコート190P(油化シェルエポキシ社製)などのグリシジルエステル型エポキシ樹脂、商品名YH−434(東都化成社製)などのグリシジルアミン型エポキシ樹脂、商品名YDG−414(東都化成社製)などのグリオキザール型エポキシ樹脂、商品名エポリードGT−401(ダイセル化学社製)などの脂環式多官能エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアネート(TGIC)などの複素環型エポキシ樹脂などを例示することができる。また、必要であれば、エポキシ反応性希釈剤として、商品名ネオトートE(東都化成社製)などを混合することができる。
【0083】
保護膜用の塗工液には、保護膜の硬度および耐熱性を向上させるために、酸−エポキシ間の熱硬化反応を促進できる触媒を添加してもよい。触媒としては(D)ハロゲンフリーの酸性触媒を使用することができ、より具体的には例えば、ノフキュアーLCAT‐1、ノフキュアーLCAT‐2およびノフキュアーLCAT‐3(いずれも商品名、日本油脂(株)製)を例示することができる。
【0084】
保護膜用の塗工液には、必要に応じてその他の付加的成分を添加してもよく、例えば、ノニオン系界面活性剤などの一般的な添加剤を添加することができる。
【0085】
塗工液中の各材料の配合割合は適宜決定してよいが、保護膜の充分な架橋密度を得るためにメインポリマー(A)、カルボキシル基がブロックされた化合物(B)、および必要に応じて添加される多官能エポキシ樹脂(C)の配合割合は、化合物(B)に含有されている式3aまたは式3bで表される官能基と、メインポリマー(A)および多官能エポキシ樹脂(C)中に含有されている合計のエポキシ基の当量比(式3の官能基/エポキシ基)が0.2〜2.0の範囲となるように調節するのが好ましく、0.4以上且つ/又は0.8以下の範囲となるように調節するのが特に好ましい。この当量比(式3aまたは式3bの官能基/エポキシ基)が0.2未満だと反応が遅く、硬化不良となるおそれがあり、一方、この当量比が2.0を超えると、エポキシ基の残存量が少なくなるため、密着性が著しく低下するおそれがある。
【0086】
上述したメインポリマー(A)およびカルボキシル基がブロックされた化合物(B)、さらに必要に応じて多官能エポキシ樹脂(C)、触媒(D)およびその他の成分を適宜決定した配合割合で、水酸基を含有しない溶剤に溶解または分散させることによって、保護膜用の塗工液が得られる。
【0087】
保護膜用塗工液を調節するには、水酸基を含有しない溶剤を用いる。溶剤が水酸基を含有していると、ブロック化された化合物(B)のブロック剤解離を促進してカルボキシル基が発現するため、メインポリマー(A)および多官能エポキシ樹脂(C)が有するエポキシ基と反応して、保存安定性(粘度安定性)を損なうので好ましくない。
【0088】
また、溶剤中に水分が混入している場合も同様である。従って、酸−エポキシ間の架橋反応系から水分を実質的に排除するために、水との混和性の低い溶剤を用いて塗工液を調製するのが好ましい。かかる観点から、保護膜用塗工液を調製する溶剤の水に対する溶解性は、液温が20℃の水100重量部に対して20重量部以下であることが好ましい。
【0089】
保護膜用塗工液を調製する溶剤としては、例えば、酢酸−3メトキシブチルアセテート、3−エトキシエチルプロピオネート、メチル−β−メトキシイソブチレート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルエステルの混合物(商品名DBE、デュポン社製)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどを例示できる。このなかでも酢酸−3メトキシブチルアセテートは、水酸基を含有しないだけでなく、水100重量部に対する溶解性も6.5重量部と低い水混和性を示し、特に好ましい。
【0090】
メインポリマー(A)をはじめとする各材料を保護膜用の溶剤に溶解、分散する際の投入順序や作業条件は特に制約を受けない。ただし、溶剤の液温が高すぎると塗工液を調製している段階で化合物(B)の保護基が外れてカルボキシル基が再生してしまうので、溶剤の液温は化合物(B)のカルボキシル基が再生しない程度の温度、通常は20〜30℃程度の範囲に調節する。
【0091】
このようにして調製されるカラーフィルターの保護膜用塗工液には、難溶性の多塩基カルボン酸を、当該多塩基カルボン酸のカルボキシル基をブロック(キャップ、保護)することにより溶解性の高い化合物(B)の形にしてから溶解、分散させる。従って、塗工液中にカルボキシル基の反応点を高濃度でエポキシ基と共存させることができ、かかる塗工液を塗工して塗膜を形成し加熱すると高い架橋密度が得られる。また、化合物(B)は当該化合物に応じた所定の温度以上に加熱しなければカルボキシル基を再生しない。従って、カルボキシル基およびエポキシ基それぞれの反応点濃度が高いにもかかわらず、塗工液の状態では保存安定性に非常に優れており、調製直後から長期間に渡り良好な塗工性を保持し続ける。好ましいものでは、調製直後の初期粘度が0.1〜1,000cpsであり、且つ、調製してすぐ密閉容器中に入れ20℃で40日間放置後の粘度を初期粘度の2倍以下に押さえることができる。
【0092】
次に、この塗工液を用いてカラーフィルターの着色層上に保護膜を形成する方法について説明する。
【0093】
カラーフィルターは、透明基板に所定のパターンで形成されたブラックマトリックスと、当該ブラックマトリックス上に所定のパターンで形成した着色層と、当該着色層を覆うように形成された保護膜を備えている。保護膜上に必要に応じて液晶駆動用の透明電極が形成される場合もある。また、ブラックマトリックス層が形成された領域に合わせて、透明電極板上若しくは着色層上若しくは保護膜上に柱状スペーサーが形成される場合もある。
【0094】
着色層は赤色パターン、緑色パターン及び青色パターンがモザイク型、ストライプ型、トライアングル型、4画素配置型等の所望の形態で配列されてなり、ブラックマトリックスは各着色パターンの間及び着色層形成領域の外側の所定領域に設けられている。着色層は様々な方法で形成できる。例えば、顔料分散法による場合には、光硬化性樹脂組成物に着色顔料を分散させて塗工材料を調製し、透明基板の一面側に塗布し、フォトマスクを介して紫外線を照射することにより露光し、アルカリ現像後、クリーンオーブン等で加熱硬化することにより着色層を形成できる。着色層は、通常、1.5μm程度の厚さに形成する。
【0095】
ブラックマトリックスは、染色法、顔料分散法、印刷法、電着法のいずれを用いても形成することができ、また、クロム蒸着等により形成してもよい。
【0096】
保護膜は、上記した保護層用塗工液をカラーフィルターの着色層を形成した側の表面に、スピンコーター、ロールコーター、スプレイ、印刷等の方法により塗布し、得られた塗膜を乾燥し、さらに必要に応じてプリベークした後、加熱することにより形成される。スピンコーターを使用する場合、回転数は500〜1500回転/分の範囲内で設定する。保護膜は、例えば、2μm程度の厚さ(硬化完了後)に形成する。
【0097】
本発明の保護層用塗工液は安定性に優れるので、これを着色層上に塗工している間は粘度が上昇せず初期の良好な塗工性を維持し続け、塗工作業中に塗工条件を頻繁に変更する必要はない。従って、作業開始時に設定した塗工条件の下で高速且つ連続的に均一性の高い塗膜を形成することができる。そして、塗工終了後に塗膜を加熱すると、塗膜中に含有されている前述の化合物(B)の保護基が外れ、式3の官能基からカルボキシル基が再生し、メインポリマー(A)および多官能エポキシ樹脂が有するエポキシ基と架橋反応を起こし、塗膜が硬化する。
【0098】
本発明の保護層用塗工液の安定性は上述のように高いので、一旦使用に供して残った塗工液の残液は、短時間の作業ではまだ劣化していない。従って、そのような残液を回収したり或いは新鮮な塗工液を注ぎ足すなどして再使用することが可能であり、経済的である。
【0099】
保護膜上の透明電極は、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)等、およびそれらの合金等を用いて、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法等の一般的な方法により形成され、必要に応じてフォトレジストを用いたエッチング又は治具の使用により所定のパターンとしたものである。この透明電極の厚みは20〜500nm程度、好ましくは100〜300nm程度とすることできる。
【0100】
透明電極上に柱状スペーサーを形成する場合には、光硬化性樹脂組成物の塗工液を、スピンコーター、ロールコーター、スプレイ、印刷等の方法により塗布し、フォトマスクを介する紫外線照射により露光し、アルカリ現像後、クリーンオーブン等で加熱硬化することにより形成できる。柱状スペーサーは、例えば、5μm程度の高さに形成される。スピンコーターの回転数も保護膜を形成する場合と同様に、500〜1500回転/分の範囲内で設定すればよい。
【0101】
このようにして製造されたカラーフィルターの内面側に配向膜を形成し、電極基板と対向させ、間隙部に液晶を満たして密封することにより、液晶パネルが得られる。
【0102】
本発明においてカラーフィルターの着色層上に形成された保護膜は、透明性、硬度、耐熱性(加熱による膜減りや変色の程度など)、その他の諸要求特性に優れている。例えば、本発明においてはカラーフィルターの着色層上に、下記の透明性、硬度および耐熱性を兼ね備えた保護膜を作成することができる。
a)透明性:400nm〜700nmの可視領域における透過率が90%以上である。
b)硬度:JIS K5400(1990)に規定される鉛筆引っ掻き試験のうち8.4・1試験法で2H以上の鉛筆硬度を示す。
c)耐熱性:カラーフィルターを250℃で1時間放置後の保護膜の膜厚減少が10%以下で、且つ、当該放置前後の色差が1以下である。
【0103】
本発明の保護膜は耐溶剤性(耐薬品性)にも優れており、例えば、保護膜を設けたカラーフィルターをイソプロピルアルコール、N−メチルピロリドンまたはγ−ブチロラクトンいずれかの溶剤に液温40℃で1時間浸漬した後に保護膜の膜厚を測定して算出される膜厚減少を、いずれの溶剤に浸漬した場合でも10%以下とすることができる。
【0104】
本発明の保護膜は耐温純水性にも優れており、例えば、保護膜を設けたカラーフィルターを80℃の純水に1時間浸漬後にJIS K5400(1990)8.5に規定される碁盤目テープ剥離試験を行った結果を6点以上とすることができる。
【0105】
本発明において作成される保護膜が優れた硬度、耐溶剤性および耐温純水性を示すのは、保護膜の架橋密度が非常に高いことが多いに貢献しているものと推測される。
【0106】
また、本発明の保護膜は均一の膜厚に塗工することができ、例えば、当該保護膜の膜厚のばらつきを、所定の膜厚に対して±0.5μm以内に分布する程度に押さえることができる。さらに、本発明の保護膜は耐熱性に優れ加熱しても膜減りしにくく、耐薬品性および耐温純水性に優れ配向膜用塗工液を上塗りしたり純水で洗浄したりしても溶解しにくいので、一旦均一の膜厚に形成された後、いつまでも均一の膜厚を維持し続けることができる。
【0107】
【実施例】
次に、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。
【0108】
(製造例A−1:ポリマー(A)の合成)
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下ロートを備えた4つ口フラスコに、第1表に示す配合割合に従って、水酸基を含有しない溶剤3−メトキシブチルアセテートを40.0重量部仕込み、攪拌しながら加熱して80℃に昇温した。次いで、80℃の温度で第1表に記載した組成の単量体、重合開始剤、及び、水酸基を含有しない溶剤3−メトキシブチルアセテートの混合物(滴下成分)60.0重量部を、2時間かけて滴下ロートより等速滴下した。滴下終了後、80℃の温度を5時間保ったところで反応を終了することにより、第1表記載の特性を有するメインポリマー(A−1)が得られた。
【0109】
【表1】
【0110】
*1)表中の略号は以下の通りである。
GMA:グリシジルメタクリレート
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート
AIBN:2,2’−アゾビスイソブチロニトリル
*2)性状:目視による外観を示す。
*3)加熱残分:JIS−K5407、4.加熱残分により試験を行った。
*4)エポキシ当量:過剰の0.2N・塩酸ジオキサン溶液でエポキシ基の開環反応を行った後、未反応の塩酸を0.1N・KOHエタノール溶液にて逆滴定し、エポキシ当量を算出した。
*5)E型粘度計で測定した。
*6)重量平均分子量:ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算の値である。
【0111】
(比較製造例A−1’〜3’:比較ポリマー(A)の合成)
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下ロートを備えた4つ口フラスコに、第2表に示す配合割合に従って、水酸基を含有しない溶剤3−メトキシブチルアセテート又は水酸基を含有する溶剤2−エチルヘキサノールを仕込み、攪拌しながら加熱して80℃に昇温した。次いで、80℃の温度で第2表に記載した組成の単量体、重合開始剤、及び、溶剤の混合物(滴下成分)を、2時間かけて滴下ロートより等速滴下した。滴下終了後、80℃の温度を5時間保ったところで反応を終了することにより、第2表記載の特性を有する比較メインポリマー(A−1’)〜(A−3’)が得られた。
【0112】
【表2】
【0113】
*1)表中の略号は以下の通りである。
GMA:グリシジルメタクリレート
M−100(商品名):脂環式エポキシ基含有メタクリレート(ダイセル化学社製)
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート
St:スチレン
AIBN:2,2’−アゾビスイソブチロニトリル
P−O(商品名):t−ブチルパーオキシオクトエート(日本油脂(株)製)*2)〜*6)第1表と同じ。
【0114】
(製造例B−1、2:ブロック化カルボン酸化合物(B)の合成)
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下ロートを備えた4つ口フラスコに、第3表に示す配合割合に従って、溶剤、原料(多塩基カルボン酸)、ブロック化剤(ビニルエーテル)を仕込み、攪拌しながら加熱し70℃に昇温した。次いで、70℃の温度を保ちながら攪拌し続け、混合物の酸価が5以下になったところで反応を終了し、溶剤及び過剰のビニルエーテルを真空ポンプで留居することにより、第3表記載の特性を有するブロック化カルボン酸化合物(B−1)及び(B−2)が得られた。
【0115】
【表3】
【0116】
*1)溶液の酸価:0.1N・KOHエタノール溶液で滴定し、算出した。
*2)ブロック化率:溶液の酸価より、固形分換算し算出した。
*3)ブロック酸固形分:脱溶剤後の重量測定により算出した。
*4)溶液の酸当量:水・メタノール溶液にてブロック剤を解離後、酸価を測定した。
*5)重量平均分子量:ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算の値である。
【0117】
(比較製造例B−1’:比較ブロック化カルボン酸化合物(B)の合成)
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下ロートを備えた4つ口フラスコに、第4表に示す配合割合に従って、溶剤、原料を仕込み、攪拌しながら加熱し130℃に昇温した。次いで、130℃の温度を保ちながら攪拌し続け、約4時間後、反応率が96%以上になったところで反応を終了し、第4表記載の特性を有するカルボン酸化合物(B−1’)が得られた。
【0118】
【表4】
【0119】
*1)加熱残分:JIS−K5407、4.加熱残分により試験を行った。
*2)溶液の酸当量:0.1N・KOHエタノール溶液で滴定し、算出した。
*3)重量平均分子量:ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算の値である。
【0120】
(実施例1〜7)
(1)カラーフィルター用塗工液の調製
サンプル瓶(容量200ml)にテフロン被覆した回転子を入れ、マグネチックスターラーに設置した。このサンプル瓶の中に、第5表に示す配合割合に従って、前記製造例記載のメインポリマー(A)、前記製造例記載のブロック化カルボン酸化合物(B)、多官能エポキシ樹脂(C)、及び、ハロゲンフリーの酸性触媒(D)を加え、十分に攪拌溶解した後、粘度調整のために希釈溶剤を加えて、攪拌、溶解後、これを濾過してカラーフィルター保護膜用塗工液α−1乃至α−7を得た。
【0121】
(1)カラーフィルター用保護膜の作成
前記カラーフィルター保護膜用塗工液α−1乃至α−7を用いて、良く洗浄したガラス基板にスピンコーティングし、十分に乾燥した後、ホットプレートにて230℃で30分間、最終硬化を行うことによってカラーフィルター用透明保護膜を得た。得られた保護膜について塗膜性能試験行った結果を、第5表に示す。
【0122】
【表5】
【0123】
第5表に示すように、実施例1〜7のいずれの場合も、透明性、硬度、耐熱性試験後の残膜率及び色差、耐溶剤性試験後の残膜率、耐温純水性試験後の密着性、さらには貯蔵安定性に優れていた。
【0124】
*1)表中の略号は以下の通りである。
Ep#157:商品名エピコート157S70(油化シェルエポキシ社製)
ST−3000:商品名ST−3000(東都化成社製)
HP−7200:商品名EPICLON HP−7200(大日本インキ化学工業社製)
LCAT−1:商品名ノフキュアーLCAT−1(日本油脂(株)製)
LCAT−3:商品名ノフキュアーLCAT−3(日本油脂(株)製)
3−MBA:酢酸−3メトキシブチルアセテート
PMA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
2−EHOH:2−エチルヘキサノール
*2)(C)成分は、各希釈溶剤で50%に希釈したものを用いた。
*3)溶剤の水に対する溶解性:20℃の水100重量部に溶解する溶剤の量(重量部)を示す。
*4)貯蔵安定性:塗工液の初期粘度が0.1〜1,000cpsで、且つ、当該塗工液を密閉容器中に20℃で40日間放置後の粘度が初期粘度の2倍以下である時に良好と判定した。
*5)透明性:400nm〜700nmの可視領域における透過率が90%以上の時に良好と判定した。
*6)硬度:JIS K5400(1990)に規定される鉛筆引っ掻き試験のうち8.4・1試験法で2H以上の鉛筆硬度を示す時に良好と判定した。
*7)耐熱性:保護膜を設けたカラーフィルターを、250℃で1時間放置後の保護膜の膜厚減少が10%以下で、且つ、当該放置前後の色差が1以下の時に良好と判定した。なお、色差は、CIE(国際照明委員会)によって1976年に定められたΔEabの色差式によって求めた。実際の測定は、顕微分光測定器(OSP−SP100、オリンパス光学工業(株)製)によって行った。
*8)耐溶剤性:保護膜を設けたカラーフィルターを、イソプロピルアルコール、N−メチルピロリドンまたはγ−ブチロラクトンいずれかの溶剤に液温40℃で1時間浸漬した後に保護膜の膜厚を測定して算出される膜厚減少が、いずれの溶剤に浸漬した場合でも10%以下である時に良好と判定した。
*9)耐温純水試験後密着性:保護膜を設けたカラーフィルターを80℃の純水に1時間浸漬後にJIS K5400(1990)8.5に規定される碁盤目テープ剥離試験を行った結果が6点以上になる時に良好と判定した。
【0125】
(比較例1〜4)
(1)カラーフィルター用塗工液の調製
第6表に示す配合割合に従って、前記比較製造例記載のメインポリマー(A)、前記比較製造例記載のカルボン酸化合物(B)、多官能エポキシ樹脂(C)、及び、ハロゲンフリーの酸性触媒(D)を用いた以外は、前記実施例と同様の操作を行うことにより、カラーフィルター保護膜用塗工液β−1乃至β−4を得た。
【0126】
(1)カラーフィルター用保護膜の作成
前記カラーフィルター保護膜用塗工液β−1乃至β−4を用いて、前記実施例と同様の操作を行うことにより、カラーフィルター用透明保護膜を得た。得られた保護膜について塗膜性能試験行った結果を、第6表に示す。
【0127】
【表6】
【0128】
*1)〜*9)は、第5表と同じである。
【0129】
比較例1においては、メインポリマー(A)中に脂環式エポキシアクリレートを用いているため、塗工液の貯蔵後に粘度上昇が認められ、安定性に劣っていた。比較例2においては、メインポリマー(A)中にスチレンを用いているため、最終的な保護膜の硬度及び透明性に劣っていた。比較例3においては、メインポリマー(A)中の溶剤及び希釈溶剤が水酸基を含有しているため、塗工液の保存安定性が著しく劣っていた。比較例4においては、(B)成分としてブロック化カルボン酸を使用していないため、塗工液の保存安定性が著しく劣っていた。
【0130】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明により提供される熱硬化型保護膜用塗工液は、エポキシ反応点の量に見合うほど高濃度に酸反応点を含有しており、架橋密度の高い保護膜を形成し得るものであり、しかも、保存性にも優れている。
【0131】
また、当該塗工液をカラーフィルターの着色層上に塗工する際には、塗工作業中の粘度上昇を起こさずに良好な塗工性を維持し得るので、均一な塗工膜を効率よく形成することができる。
【0132】
そして作成された保護膜はカラーフィルターの着色層を保護するのに十分な硬度、透明性、その他の諸要求特性を備えている。本発明の保護膜は架橋密度が高く、優れた塗膜硬度とパシベーション性が期待される。また、本発明の保護膜は透明性に優れ、加熱による変色が少なく、膜厚の均一性にも優れているので、カラーフィルターの着色層の色彩に対して悪影響を与えない。さらに、本発明の保護膜は耐温純水性や耐薬品性にも優れるので、洗浄や配向膜形成などの工程でもカラーフィルターの取り扱いが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】液晶パネルの一例についての模式的断面図である。
【図2】液晶パネルの別の例についての模式的断面図である。
【符号の説明】
1…カラーフィルター
2…電極基板
3…間隙部
4…シール材
5…透明基板
6…ブラックマトリックス層
7(7R、7G、7B)…着色層
8…保護膜
9…透明電極膜
10…配向膜
11…パール
12…柱状スペーサー
Claims (15)
- (A)少なくとも下記式1で表される構成単位及び下記式2で表される構成単位
(B)下記式3aまたは式3b
(C)一分子中にエポキシ基を2個以上有する多官能エポキシ樹脂とを、
水酸基を含有しない溶剤に溶解または分散させてなることを特徴とする、カラーフィルター保護膜用塗工液。 - 前記ポリマー(A)中の式1で表される構成単位において、R1が水素またはメチル基であり、R2が未置換または炭素数1〜5のアルキル基が置換したシクロヘキシル基であることを特徴とする、請求項1記載のカラーフィルター保護膜用塗工液。
- 前記ポリマー(A)のポリスチレン換算重量平均分子量が3,000〜100,000であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のカラーフィルター保護膜用塗工液。
- 前記化合物(B)の式3aまたは式3bで表される官能基を分解することにより再生させ得る多塩基カルボン酸の酸当量が50g/mol以上であることを特徴とする、請求項1乃至3いずれかに記載のカラーフィルター保護膜用塗工液。
- 前記化合物(B)の式3aまたは式3bで表される官能基を分解することにより再生させ得る多塩基カルボン酸のポリスチレン換算重量平均分子量が10,000以下であることを特徴とする、請求項1乃至4いずれかに記載のカラーフィルター保護膜用塗工液。
- 前記溶剤の水に対する溶解性が、20℃の水100重量部に対して20重量部以下であることを特徴とする、請求項1乃至7いずれかに記載のカラーフィルター保護膜用塗工液。
- 前記塗工液に存在する前記式3aまたは式3bの官能基とエポキシ基の当量比(式3aまたは式3bの官能基/エポキシ基)が0.2以上2.0以下であることを特徴とする、請求項1乃至8いずれかに記載のカラーフィルター保護膜用塗工液。
- 前記塗工液中に、(D)ハロゲンフリーの酸性触媒がさらに溶解または分散していることを特徴とする、請求項1乃至9いずれかに記載のカラーフィルター保護膜用塗工液。
- 前記塗工液の初期粘度が0.1〜1,000cpsで、且つ、当該塗工液を密閉容器中に20℃で40日間放置後の粘度が初期粘度の2倍以下であることを特徴とする、請求項1乃至10いずれかに記載のカラーフィルター保護膜用塗工液。
- 前記請求項1乃至11いずれかに記載のカラーフィルター保護膜用塗工液を、カラーフィルターの着色層を形成した側の表面に塗工し、架橋反応により硬化させて保護膜を形成したことを特徴とするカラーフィルター。
- 前記の保護膜が、下記の透明性、硬度および耐熱性a)透明性:400nm〜700nmの可視領域における透過率が90%以上、b)硬度:JIS K5400(1990)に規定される鉛筆引っ掻き試験のうち8.4・1試験法で2H以上の鉛筆硬度、および、c)耐熱性:カラーフィルターを250℃で1時間放置後の保護膜の膜厚減少が10%以下で、且つ、当該放置前後の色差が1以下、を有することを特徴とする、請求項12に記載のカラーフィルター。
- 前記保護膜は、カラーフィルターをイソプロピルアルコール、N−メチルピロリドンまたはγ−ブチロラクトンいずれかの溶剤に液温40℃で1時間浸漬した後の膜厚減少が、いずれの溶剤に浸漬した場合でも10%以下であることを特徴とする、請求項12又は13に記載のカラーフィルター。
- 前記保護膜は、カラーフィルターを80℃の純水に1時間浸漬後にJIS K5400(1990)8.5に規定される碁盤目テープ剥離試験で6点以上になることを特徴とする、請求項12乃至14いずれかに記載のカラーフィルター。
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