以下において本発明を詳しく説明する。なお本発明において光には、可視及び非可視領域の波長の電磁波、さらには放射線が含まれ、放射線には、例えばマイクロ波、電子線が含まれる。具体的には、波長5μm以下の電磁波、及び電子線のことを言う。また本発明において(メタ)アクリルとはアクリル又はメタクリルのいずれかであることを意味し、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はメタクリレートのいずれかであることを意味し、(メタ)アクリロイルとはアクリロイル又はメタクリロイルのいずれかであることを意味する。
1.カラーフィルター用硬化性樹脂組成物
本発明に係るカラーフィルター用硬化性樹脂組成物は、少なくとも硬化性樹脂を含有する組成物であって、当該組成物の固形分中の有機成分のみからなる硬化物のISO−14577による押込み試験における弾性変形割合が40%以上となり得ることを特徴とする。
なお、カラーフィルター用硬化性樹脂組成物の固形分中の有機成分には、バインダー成分全部、顔料分散剤、紫外線吸収剤などが含まれる。顔料(有機顔料及び無機顔料)、無機充填剤などは含まれない。顔料は、有機成分であっても本発明の上記固形分中の有機成分には含まれない。また、レベリング剤のシリコンポリマーや、密着促進剤のシランカップリング剤なども含まれない。従って、カラーフィルター用硬化性樹脂組成物の固形分中の有機成分は、バインダー成分が主成分であり、バインダー成分のみから構成される場合もある。
本発明においては、組成物において、1種又は2種以上の成分からなるバインダー成分が主成分である固形分中の有機成分のみからなる硬化物のISO−14577による押込み試験における弾性変形割合が40%以上となり得るように固形分中の有機成分を選択して、当該有機成分のみからなる硬化物がISO−14577による押込み試験における弾性変形割合が40%以上となる硬化条件で当該組成物を硬化させることにより、当該組成物の硬化膜が熱膨張収縮し難く、しわやクラックを生じにくいため、その上に透明電極膜等の無機材料薄膜を高温及び真空による超低圧下で形成しても、当該無機材料薄膜にしわやクラックが生じにくい。
固形分中の有機成分のみからなる硬化物のISO−14577による押込み試験における弾性変形割合が40%以上となり得るように固形分中の有機成分を選択して、当該有機成分のみからなる硬化物がISO−14577による押込み試験における弾性変形割合が40%以上となる条件で当該組成物を硬化させることにより、当該組成物の硬化膜がシワやクラックを生じにくいのは、有機成分の硬化物の弾性変形率が高いことで無機材料薄膜形成時に発生する内部応力の歪を緩和させる働きがあるからだと推定される。
前記有機成分のみからなる硬化物自体のしわも少ない方が好ましく、表面粗度(Ra)は10nm以下であることが好ましく、更に7nm以下、特に5nm以下であることが好ましい。ここで、表面粗度(Ra)は、下記式で求められる算術平均粗さをいう。
式中、Nは測定の際の基準長さに対する分割数であり、Rnは、表面に対する厚み方向を高さとした時の、分割した区画nの平均高さからの偏差である。表面粗度(Ra)は、AFM(atomic force microscope;原子間力顕微鏡)により測定することができる。
本発明に係るカラーフィルター用硬化性樹脂組成物を用いてカラーフィルターの着色層、ブラックマトリックス、保護膜、及びインクジェット方式用隔壁等を形成すると、これらの少なくともいずれかに隣接する無機材料薄膜はしわやクラックが生じにくい。
(弾性変形割合)
本発明において弾性変形割合とは、ISO−14577による硬さおよび各種材料パラメータの計装化押込み試験において求められる、塑性変形仕事(Wplast)及び弾性変形仕事(Welast)からなる押し込み仕事中に示される全機械的仕事(Wtotal)のうち弾性変形仕事(Welast)が占める割合(Welast/Wtotal×100)をいう。図4に押込み試験における荷重(F)/押込み深さ(h)曲線を示す。ここで、全機械的仕事(Wtotal)はA−B−D−A、塑性変形仕事(Wplast)はA−B−C−A、弾性変形仕事(Welast)は、C−B−D−Cである。なお、ISO−14577による硬さおよび各種材料パラメータの計装化押込み試験は、従来のユニバーサル硬さ試験と同等のものである。
また、本発明において固形分中の有機成分のみからなる硬化物とは、本発明の組成物の固形分中には少なくとも硬化性樹脂を含むため、当該硬化性樹脂中の、例えばエチレン性二重結合やエポキシ基等の架橋要素が反応する条件下で硬化反応を進行させた後の固形分中の有機成分全体をいうが、ISO−14577による押込み試験における弾性変形割合が40%以上となれば、硬化性樹脂の架橋要素、すなわち架橋可能な官能基の全てが反応していなくても良い。
本発明における組成物の固形分中の有機成分のみからなる硬化物のISO−14577による押込み試験における弾性変形割合は、ISO−14577に準拠して測定でき、次のようにして測定することができる。試験機は、ISO−14577−2の条件を満足するものを用いる。ISO−14577−2の条件を満足する試験機としては、微小硬さ測定装置が挙げられる。具体的には、例えば、フィッシャースコープH100V(Helmut Fischer製)が挙げられる。
測定サンプルとしては、例えば、組成物における固形分中の有機成分のみからなる組成物を固形分30%となるように溶剤に溶かして塗工液を調製し、当該塗工液を基板上に塗布し、加熱減圧乾燥(例えば、ホットプレート上で80℃、5分間、150Torr条件下)し、硬化性樹脂として光硬化性樹脂を含有する場合には、光源として超高圧水銀灯を用いて365nm換算で30mW/cm2の照度にて3〜10秒間光照射して、更に200℃〜240℃で30分〜60分加熱して、或いは、硬化性樹脂として熱硬化性樹脂のみを含有する場合には、200℃〜260℃で30分〜60分加熱して、最終的な硬化後の膜厚が約2μmとなるように塗膜を形成したものを、固形分中の有機成分のみからなる硬化物として用いることができる。
上記のようにして得られた固形分中の有機成分のみからなる硬化物を、上記試験機を用いて測定する。膜厚が約2μmの硬化膜の場合、例えば、温度23℃、湿度45%の下で、圧子として基部が正方形の角錐形ダイヤモンド圧子(例えば、フィッシャースコープH100VにおけるMK320)を用いて、例えば、荷重制御方式により、荷重負荷速度を30mN/min、最大荷重30mN、最大荷重における保持時間5秒として、試験中の荷重Fとそれに対応する押込み深さh及び時間を記録し、押し込み仕事中に示される仕事量を測定する。
測定された仕事量をη=Welast/Wtotal×100のようにして処理し、弾性変形割合を求めることができる。
本発明の組成物は、組成物の固形分中の有機成分のみからなる硬化物のISO−14577による押込み試験における弾性変形割合が40%以上となり得るものであるが、さらに、弾性変形割合が41%以上となり得るものが好ましく、特に、弾性変形割合が42%以上となり得るものが好ましい。
ISO−14577による押込み試験における弾性変形割合が40%以上となり得る、固形分中の有機成分のみからなる硬化物は、より多く加熱したり、光照射したりする方が、弾性変形割合が高くなる傾向が見出された。しかしながら、より多く加熱したり、光照射する場合には、硬化膜が黄変する場合がある。カラーフィルターにおいて表示領域に用いられる硬化膜が黄変するとカラーフィルターの輝度低下につながる。従って、有機成分のみからなる硬化物のISO−14577による押込み試験における弾性変形割合は、60%以下、さらに55%以下、特に50%以下であることが好ましい。
また、硬化膜の黄変を生じ難くする点から、ISO−14577による押込み試験を行う硬化の条件としては、硬化性樹脂として光硬化性樹脂を含有する場合には、光源として超高圧水銀灯を用いて365nm換算で30mW/cm2の照度にて3〜10秒間光照射して、更に200℃〜240℃で30分〜60分加熱して、或いは、硬化性樹脂として熱硬化性樹脂のみを含有する場合には、200℃〜240℃で30分〜90分加熱するような条件であることが好ましく、更に、硬化性樹脂として光硬化性樹脂を含有する場合には、光源として超高圧水銀灯を用いて365nm換算で30mW/cm2の照度にて3〜5秒間光照射して、更に220℃〜240℃で30分〜60分加熱して、或いは、硬化性樹脂として熱硬化性樹脂のみを含有する場合には、220℃〜240℃で30分〜90分加熱するような条件であることが好ましい。
また本発明において、前記有機成分のみからなる硬化物が、光硬化性樹脂を含有する場合には、更に光源として超高圧水銀灯を用いて365nm換算で30mW/cm2の照度にて30秒間光照射、及び240℃で60分加熱する前後で、或いは、硬化性樹脂として熱硬化性樹脂のみを含有する場合には、更に240℃で60分加熱する前後で、架橋要素の変化量が測定誤差範囲内であって、且つISO−14577による押込み試験における弾性変形割合が増大するものであることが、隣接して形成する無機材料薄膜にしわやクラックが生じにくい点から好ましい。
なお、ここでいう架橋要素の変化量が測定誤差範囲内とは、例えば、加熱IR測定装置(例えば、日本分光(株)製、FT/IR610)にて、熱硬化性樹脂の代表的な架橋要素であるエポキシ基や、光硬化性樹脂の代表的な架橋要素であるエチレン性二重結合(C=C)についての変化量を測定して指標にすることができる。具体的には、例えば、1つの測定において、加熱や光照射しても変化しないエステル基(例えば1720cm-1前後)等の官能基を基準ピークに選択してピーク面積を求め、エポキシ基に由来する986cm-1前後(890〜990cm-1)のピークについてもピーク面積を求め、基準ピークに対するエポキシピークの面積比を算出し、硬化後に更に過酷に加熱や光照射する前と後について当該ピーク面積比を比較して、実質的にゼロといえる範囲内、具体的に0.002%以下であることをいう。ここでピーク面積は、例えばピークトップに対する2つの谷を直線で結んで面積を算出したものとすることができる。光硬化性樹脂の場合についても同様に、例えば、1つの測定において、加熱や光照射しても変化しないエステル基(例えば1720cm-1前後)等の官能基を基準ピークに選択してピーク面積を求め、エチレン性二重結合(C=C)に由来する810cm-1前後(800〜830cm-1)のピークについてもピーク面積を求め、基準ピークに対するエポキシピークの面積比を算出することができる。
(バインダー成分)
本発明に用いられるバインダー成分は、少なくとも硬化性樹脂を含むものであり、固形分中の有機成分のみからなる硬化物の主成分となり得るものである。従って、本発明に用いられるバインダー成分の硬化物のISO−14577による押込み試験における弾性変形割合は、40%以上となり得ることが好ましい。
次に、本発明に用いられるバインダー成分を具体的に説明する。
本発明に用いられるバインダー成分は、少なくとも硬化性樹脂を含むものであり、1又は2種以上の硬化性樹脂を含むものであっても良いし、成膜性や被塗工面に対する密着性を付与する点から、硬化性がない樹脂を含んでいても良い。本発明に用いられるバインダー成分は、固形分中の有機成分のみからなる硬化物のISO−14577による押込み試験における弾性変形割合が40%以上となり得るものであれば特に限定されず、当該有機成分のみからなる硬化物のISO−14577による押込み試験における弾性変形割合が40%以上となるように、適宜選択して又は組み合わせて用いる。
バインダー成分に含まれる硬化性樹脂としては、例えば、可視光線、紫外線、電子線等により重合硬化させることができる光硬化性樹脂や、加熱により重合硬化させることができる熱硬化性樹脂が挙げられる。本発明のバインダー成分としては、光硬化性樹脂を含む光硬化性バインダー系や、加熱により重合硬化させることができる熱硬化性樹脂を含む熱硬化性バインダー系、さらには、光硬化性バインダー系及び熱硬化性バインダー系の両方を含むものを用いることができる。
(1)光硬化性バインダー系
紫外線、電子線等の光により重合硬化させることができる光硬化性樹脂を含むバインダー系においては、成膜性や被塗工面に対する密着性を付与することを目的として比較的分子量の高い重合体を含むことが好ましい。ここでいう比較的分子量が高いとは、所謂モノマーやオリゴマーよりも分子量が高いことをいい、重量平均分子量5,000以上を目安にすることができる。比較的分子量の高い重合体としては、それ自体は重合反応性のない重合体、及び、それ自体が重合反応性を有する重合体のいずれを用いてもよく、また、2種以上を組み合わせて用いても良い。そして、比較的分子量の高い重合体を主体とし、必要に応じて、多官能のモノマーやオリゴマー、単官能のモノマーやオリゴマー、光により活性化する光重合開始材、及び、増感剤などを配合して、光硬化性バインダー系を構成する。
それ自体は重合反応性のない重合体を比較的分子量の高い重合体として用いる場合には、バインダー系に、2官能以上の多官能モノマー、オリゴマーのような多官能重合性成分を配合する。この場合、バインダー系内において、多官能重合性成分が光照射によりそれ自体が自発的に重合するか、或いは、光照射により活性化した光重合開始剤等の他の成分の作用により重合して塗工膜中にネットワーク構造を形成し、当該ネットワーク構造内に重合反応性のない樹脂や顔料などの成分が包み込まれて硬化する。
そのような重合反応性のない重合体としては、例えば、次のモノマーの2種以上からなる共重合体を用いることができる:アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、スチレン、ポリスチレンマクロモノマー、及びポリメチルメタクリレートマクロモノマー。
より具体的には、メタクリル酸/ベンジルメタクリレート共重合体、メタクリル酸/ベンジルメタクリレート/スチレン共重合体、ベンジルメタクリレート/スチレン共重合体、ベンジルメタクリレートマクロモノマー/スチレン共重合体、ベンジルメタクリレート/スチレンマクロモノマー共重合体などを例示することができる。
それ自体が重合反応性を有する重合体としては、非重合性バインダーの分子に重合性の官能基を導入してなるオリゴマー又はオリゴマーよりも大分子量のポリマーであって、光照射を受けてそれ自体が重合反応を生じるか、或いは、光照射を受けて活性化した光重合開始剤などの他の成分の作用により重合反応を誘起するものを用いることができる。
各種のエチレン性二重結合含有化合物は、それ自体が重合反応性を有し、光硬化性樹脂として利用できる。従来において、例えばインク、塗料、接着剤などの各種分野で用いられているUV硬化性樹脂組成物に配合されているプレポリマーは、本発明における比較的分子量の高い重合体として使用できる。従来から知られているプレポリマーとしては、ラジカル重合型プレポリマー、カチオン重合型プレポリマー、チオール・エン付加型プレポリマーなどがあるが、いずれを用いてもよい。
この中で、ラジカル重合型プレポリマーは、市場において最も容易に入手でき、例えば、エステルアクリレート類、エーテルアクリレート類、ウレタンアクリレート類、エポキシアクリレート類、アミノ樹脂アクリレート類、アクリル樹脂アクリレート類、不飽和ポリエステル類などを例示できる。
中でも、本発明において好適に用いることができる比較的分子量の高い重合体としては、以下の二種のグラフトポリマーが挙げられる。
第一のグラフトポリマーは、重量平均分子量が5,000以上であり、且つ、主鎖及びグラフト部分のうちの一方がスチレン系モノマー単位を含有するスチレン系ポリマー鎖により構成され、他方がメタクリレート系モノマー単位を含有するメタクリレート系ポリマー鎖により構成されるグラフトポリマーである。
上記第一のグラフトポリマーは、スチレン系ポリマー鎖により主鎖(幹部)が構成され、メタクリレート系ポリマー鎖によりグラフト部分が構成された構造を有していても良いし、逆に、メタクリレート系ポリマー鎖により主鎖が構成され、スチレン系ポリマー鎖によりグラフト部分が構成された構造を有していても良い。上記したうちでも、スチレン系ポリマー鎖により主鎖が構成され、メタクリレート系ポリマー鎖によりグラフト部分が構成された構造を有するものの方が好ましい。
スチレン系ポリマー鎖は、スチレン系モノマーを主成分とするポリマー鎖であって、ただ1種類のスチレン系モノマーの単独重合体であってもよいし、2種類以上のスチレン系モノマーの共重合体であってもよいし、スチレン系モノマーと他のモノマーとの共重合体であってもよい。
スチレン系モノマーとは、スチレンの他、アルキル置換スチレン(メチルスチレン、エチルスチレン、トリメチルスチレン、オクチルスチレンなど)、メトキシスチレン、αメチルスチレン等の、置換基が付いたスチレンモノマーを含む。
スチレン系モノマーと共重合させることができるモノマーとしては、各種の(メタ)アクリレートモノマーや、アクリロニトリル、アミド系モノマー等が挙げられる。
本発明に係る硬化性樹脂組成物に顔料を含む場合には、顔料分散性の観点からスチレン系ポリマー鎖は、スチレン系モノマー単位を50重量%以上の割合で含有するのが好ましく、さらには60重量%以上の割合で含有するのが特に好ましい。
メタクリレート系ポリマー鎖は、メタクリレートを主成分とするポリマー鎖であり、ただ1種類のメタクリレートの単独重合体であってもよいし、2種類以上のメタクリレートの共重合体であってもよいし、メタクリレートと他のモノマーとの共重合体であってもよい。
メタクリレート系モノマーとしては、アルキルメタクリレート(メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n‐ブチルメタクリレート、iso‐ブチルメタクリレート、tert‐ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ラウリルメタクリレートなど)、ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフタルイミドエチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、等が挙げられる。Tgが30℃以上のグラフトポリマーが得られるようにメタクリレート系モノマーを選択して用いるのが好ましい。Tgが30℃未満のグラフトポリマーは、硬化後の皮膜硬さが
低下するため、好ましくない。
また、メタクリレートと共重合させるモノマーとしては、アルキルアクリレート、ヒドロキシアルキルアクリレート、アミドモノマー、イミド基含有モノマー、アルキレングリコール(メタ)アクリレート、ダイセル化学製の商品名プラクセルFMシリーズ等を用いることができる。
メタクリレート系ポリマーは、比較的高いTgを有し、且つ、スチレンとミクロ相分離を起こすことから硬度・分散性の点で優れている。かかる観点から、メタクリレート系ポリマー鎖はメタクリレート系モノマー単位を50重量%以上の割合で含有するのが好ましく、さらに70重量%以上の割合で含有するのが特に好ましい。
第一のグラフトポリマーは、エチレン性不飽和結合やエポキシ基等の重合性基を有していてもよい。グラフトポリマーに重合性基を導入することによって、反応硬化性を付与することができる。当該重合性基が導入されたグラフトポリマーは、架橋点が向上して表面硬度が向上する点から、本発明において比較的分子量が高い光硬化性樹脂として好適に用いることができる。グラフトポリマーの重合性基がエチレン性不飽和結合である場合には、光又は熱ラジカル重合反応により硬化可能であり、当該重合性基がエポキシ基である場合には、熱重合又は光カチオン重合が可能である。特に、エチレン性不飽和結合を有するグラフトポリマーは、(メタ)アクリル系モノマー等のエチレン性不飽和結合含有モノマー及び/又はオリゴマーと組み合わせて用いることにより、反応硬化性に優れる硬化性樹脂組成物が得られる。重合性基は、第一のグラフトポリマーのスチレン系ポリマー鎖又はメタクリレート系ポリマー鎖の一方又は両方に導入してよく、或いは、主鎖又はグラフト部の一方又は両方に導入してよい。
上記第一のグラフトポリマーは、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が5,000以上の範囲にある必要があり、特に本発明に係る硬化性樹脂組成物がインクジェット方式のインクに用いられる場合には、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が20,000以下、更には、5,000〜15,000の範囲にあることが好ましい。重量平均分子量が5,000未満では、得られる皮膜の強度や硬度が不足しやすい。重量平均分子量が20,000を超えるとインクジェット用インクの溶剤に溶解しにくくなったり、或いは溶剤に溶解した時の粘度が高くなってインクの流動性、及び、インクジェットヘッドからの吐出性が悪くなる。
また、グラフトポリマーのグラフト部分は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が5,000〜20,000の範囲にある必要があり、5,000〜15,000の範囲にあることが好ましい。
グラフトポリマーのグラフト(枝)部分/主鎖(幹)部分の重量比は、20/80〜80/20が好ましく、30/70〜70/30であることが好ましい。グラフト部分の重量比が20%を下回ると溶解性、粘度、流動性、吐出性等が悪くなるため、好ましくない。また主鎖部分の重量比が20%を下回ると、顔料分散性が悪くなり好ましくない。
さらに、第一のグラフトポリマーの酸価やアミン価を変えることによって、インクの溶剤に対する溶解性、皮膜の耐溶剤性、顔料の分散安定性、染色性、膜硬度、膜強度、などの諸物性を調節できる。
第二のグラフトポリマーとしては、グラフトポリマーとして、エチレン性不飽和結合をエチレン性不飽和結合当量で1200g/eq以下の割合で有し、且つ、主鎖及びグラフト部分のうちの一方がスチレン系モノマー単位を含有するスチレン系ポリマー鎖により構成され、他方がベンジルメタクリレートから誘導されるモノマー単位を含有するベンジルメタクリレート系ポリマー鎖により構成されるグラフトポリマーが挙げられる。
上記第二のグラフトポリマーは、スチレン系ポリマー鎖により主鎖(幹部)が構成され、ベンジルメタクリレート系ポリマー鎖によりグラフト部分が構成された構造を有していても良いし、逆に、ベンジルメタクリレート系ポリマー鎖により主鎖が構成され、スチレン系ポリマー鎖によりグラフト部分が構成された構造を有していても良い。上記したうちでも、スチレン系ポリマー鎖により主鎖が構成され、ベンジルメタクリレート系ポリマー鎖によりグラフト部分が構成された構造を有するものの方が好ましい。
第二のグラフトポリマーのスチレン系ポリマー鎖は、第一のポリマー鎖と同様にスチレン系モノマーを主成分とするポリマー鎖である。
一方、第二のグラフトポリマーのベンジルメタクリレート系ポリマー鎖は、ベンジルメタクリレートを主成分とするポリマー鎖であり、ベンジルメタクリレートの単独重合体であってもよいし、ベンジルメタクリレートと他のモノマーとの共重合体であってもよい。
ベンジルメタクリレートと共重合させるモノマーとしては、上述した第一のメインポリマーのメタクリレート系ポリマー鎖を形成するためにメタクリレートと共重合させるモノマーを用いることができる。また、ベンジルメタクリレートを他のメタクリレート系モノマーと共重合させてベンジルメタクリレート系ポリマー鎖を形成してもよく、その場合には、上述した第一のグラフトポリマーのメタクリレート系ポリマー鎖を形成し得る各種のメタクリレート系モノマーを、ベンジルメタクリレートと共重合させることができる。
メタクリレートモノマーの中でも、ベンジルメタクリレートは特に顔料分散性に優れているため、第二のグラフトポリマーは、着色層やブラックマトリックス層を形成するためのカラーフィルター用硬化性樹脂組成物に用いられることが好ましい。ベンジルメタクリレート系ポリマー鎖は、ベンジルメタクリレートモノマー単位を30重量%以上の割合で含有するのが好ましく、50重量%以上の割合で含有するのが特に好ましい。
第二のグラフトポリマーは、主鎖又はグラフト部分の少なくとも一方がエチレン性不飽和結合を有しており、光又は熱ラジカル重合反応により硬化可能である。
主鎖は、スチレン系ポリマー鎖又はベンジルメタクリレート系ポリマー鎖のいずれにより構成されている場合であっても、エチレン性不飽和結合を有するモノマー単位を含有していてよい。一方、グラフト部分も同様に、スチレン系ポリマー鎖又はベンジルメタクリレート系ポリマー鎖のいずれにより構成されている場合であっても、エチレン性不飽和結合を有するモノマー単位を含有していてよい。
第二のグラフトポリマーのエチレン性不飽和結合当量は、1200g/eq以下である必要があり、700g/eq以下であるのが好ましい。ここで、エチレン性不飽和結合当量とは、グラフトポリマーの1グラム分子の重量を一分子中に含有されるエチレン性不飽和結合の数で除した値である。グラフトポリマーのエチレン性不飽和結合当量が1200g/eqを超える場合には、硬化後の皮膜硬度、本発明に係る弾性変形割合、及び耐溶剤性が不充分であり好ましくない。これに対して、エチレン性不飽和結合当量が1200g/eq以下のグラフトポリマーは、一分子中に含まれるエチレン性不飽和結合が多いので本発明に係る弾性変形割合、耐溶剤性、硬度、強度、密着性などの諸物性に優れる。そして、インクジェット方式に用いる場合であって、吐出性を向上させるために分子量が比較的小さいグラフトポリマーを用いる場合でも、エチレン性不飽和結合当量が1200g/eq以下であれば充分に硬化させることができるで、吐出性に優れたインク組成物が得られ、且つ、本発明に係る弾性変形割合を含む諸物性に優れる硬化皮膜を形成できる。
さらに、第二のグラフトポリマーの酸価やアミン価を変えることによって、第一のグラフトポリマーと同様に、インクの溶剤に対する溶解性、皮膜の耐溶剤性、顔料の分散安定性、染色性、膜硬度、膜強度などの諸物性を調節できる。
本発明においては、第一のグラフトポリマーと第二のメインポリマーの両性質を有するグラフトポリマー、すなわち、重量平均分子量が5,000以上であり、エチレン性不飽和結合をエチレン性不飽和結合当量で1200g/eq以下の割合で有し、且つ、主鎖及びグラフト部分のうちの一方がスチレン系モノマー単位を含有するスチレン系ポリマー鎖により構成され、他方がメタクリレート系モノマー単位としてのベンジルメタクリレート単位を含有するベンジルメタクリレート系ポリマー鎖により構成されるグラフトポリマーを用いるのが、本発明に係る弾性変形割合を高くする点から更に好ましい。
中でも、本発明において比較的分子量が高い光硬化性樹脂として好適に用いることができる、重合性基が導入されたグラフトポリマーとしては、重量平均分子量が5,000以上であり、エチレン性不飽和結合をエチレン性不飽和結合当量で1200g/eq以下の割合で有し、且つ、主鎖がスチレン系ポリマー鎖により構成され、グラフト部分がベンジルメタクリレート単位を含有するベンジルメタクリレート系ポリマー鎖により構成されるグラフトポリマー、或いは、重量平均分子量が5,000以上であり、エチレン性不飽和結合をエチレン性不飽和結合当量で1200g/eq以下の割合で有し、且つ、主鎖がスチレン系ポリマー鎖により構成され、グラフト部分がメチルメタクリレート単位を含有するメチルメタクリレート系ポリマー鎖により構成されるグラフトポリマーが挙げられる。これらは、再溶解性が良好な点からも好適である。
上記第一又は第二のグラフトポリマーとして用いられるグラフトポリマーの製造方法としては、(1)ポリマーとパーオキサイド触媒下で、モノマーを重合させて水素引き抜きにより後グラフトする方法、(2)片末端に官能基がついたポリマーと他の官能基がついたポリマーを付加反応させる方法、及び、(3)重合性ポリマー(マクロモノマー)とモノマーを共重合させる方法などを利用できるが、生成物の純度が高い点で、マクロモノマー法が好ましい。
マクロモノマー法により得られたグラフトポリマーの主鎖骨格(幹部分)は、重合性ポリマー末端のエチレン性不飽和結合とモノマーのエチレン性不飽和結合の重合によって成長したポリマー鎖によって形成され、グラフト部分は重合性ポリマーから誘導されたポリマー鎖によって形成される。
グラフトポリマーの合成原料である重合性ポリマーは、グラフトポリマーのグラフト部分を構成すべきポリマー鎖の部分と、その末端のエチレン性不飽和結合を有する基からなる。
重合性ポリマーのポリマー鎖は、スチレン系ポリマー鎖又はメタクリレート系ポリマー鎖であり、スチレン系モノマー又はメタクリレート系モノマーを単独で重合させるか、或いは、必要に応じて他のモノマーと共に共重合させることにより形成できる。
重合性ポリマー末端のエチレン性不飽和結合含有基は、通常、重合性ポリマーのポリマー鎖部分を合成した後に導入される。重合性ポリマー末端のエチレン性不飽和結合含有基としては、(メタ)アクリロイル基又はビニル基が好ましく、特に(メタ)アクリロイル基が好ましい。エチレン性不飽和結合を有する基は、重合性ポリマーの片末端にのみ有するのが好ましい。
一方、上記重合性ポリマーと共重合させて主鎖を形成するモノマーとしては、重合性ポリマーがスチレン系ポリマー鎖を有する場合には、1又は2種以上のメタクリレート系モノマーを用い、重合性ポリマーがメタクリレート系ポリマー鎖を有する場合には、スチレン系モノマーを用いる。重合性ポリマーと共重合させるモノマーとしては、スチレン系モノマー又はメタクリレート系モノマーと共に、他のモノマーを組み合わせて用いてもよく、その場合には、重合性ポリマーのポリマー鎖を形成する場合と同様のモノマーを用いることができる。
グラフトポリマーのグラフト部分又は主鎖部分にエチレン性不飽和結合を導入したい場合には、スチレン系モノマー又はメタクリレート系モノマーに、エチレン性不飽和結合を導入するための足場となり得る官能基を有するモノマーを適量混合して共重合を行ってグラフト部分及び/又は主鎖部分を合成し、最終的にグラフトポリマーのグラフト部分及び/又は主鎖部分に残された官能基に、当該官能基に対して縮合又は重付加する官能基とエチレン性不飽和結合とを有する化合物を反応させればよい。
すなわち、グラフトポリマーのグラフト部分にエチレン性不飽和結合を導入したい場合には、スチレン系モノマー又はメタクリレート系モノマーに、エチレン性不飽和結合を導入するための足場となり得る官能基を有するモノマーを適量混合して共重合させ、得られた重合性ポリマーをモノマーと重合させてグラフトポリマーを形成し、その後、グラフトポリマーのグラフト部分に残された官能基に、当該官能基に対して縮合又は重付加する官能基とエチレン性不飽和結合とを有する化合物を反応させることによって、グラフト部分にエチレン性不飽和結合が導入されたグラフトポリマーが得られる。
また、グラフトポリマーの主鎖部分にエチレン性不飽和結合を導入したい場合には、主鎖を形成するモノマーに、エチレン性不飽和結合を導入するための足場となり得る官能基を有するモノマーを適量混合して共重合を行ってグラフトポリマーを形成し、その後、グラフトポリマーの主鎖部分に残された官能基に、当該官能基に対して縮合又は重付加する官能基とエチレン性不飽和結合とを有する化合物を反応させることによって、主鎖部分にエチレン性不飽和結合が導入されたグラフトポリマーが得られる。
片末端以外の位置にもエチレン性不飽和結合を有する多官能重合性ポリマーや、2以上のエチレン性不飽和結合を有する多官能重合性モノマーを用いてグラフトポリマーを合成すると、架橋反応が起きてしまうが、単官能オリゴマーと単官能モノマーを共重合させた後でエチレン性二重結合を導入する場合には、このような架橋反応を引き起こすこと無く、エチレン性二重結合を有する感光性のグラフトポリマーが得られる。
エチレン性不飽和結合を導入するための足場となり得る官能基を有するモノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのようなヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートやその他の水酸基含有モノマー、或いは、(メタ)アクリル酸のような不飽和カルボン酸やその他のカルボキシル基含有モノマーが好ましい。
水酸基含有モノマーを用いる場合には、重合性ポリマーと重合性モノマーを共重合させてグラフトポリマーを合成した後、グラフト部分及び/又は主鎖部分に残された水酸基に、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートのようなイソシアネート基含有アクリル系モノマーを付加反応によりウレタン結合させることによって、エチレン性不飽和結合を導入することができる。
また、カルボキシル基含有モノマーを用いる場合には、重合性ポリマーと重合性モノマーを共重合させてグラフトポリマーを合成した後、グラフト部分及び/又は主鎖部分に残されたカルボキシル基に、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレートをエポキシ反応により結合させることによって、エチレン性不飽和結合を導入することができる。
上記いずれかの方法によれば、エチレン性不飽和結合は(メタ)アクリロイルオキシ基の形でポリマー鎖に導入される。
上記グラフトポリマーの合成手順としては、特開2002−201387号公報の段落番号0094〜0105の具体例を参考にすることができる。
なお、特に本発明に係る樹脂組成物をインクジェット方式のインクとして用いる場合には、組成物の粘度が高すぎて吐出ヘッドからの吐出性に悪影響を及ぼさないように、比較的分子量の高い重合体の分子量は、重量平均分子量で25,000以下であることが好ましい。
比較的分子量の高い重合体は、硬化性樹脂組成物の固形分全量に対して、1〜50重量%の割合で配合するのが好ましい。ここで、配合割合を特定するための硬化性組成物の固形分とは、溶剤を除く全ての成分を含み、液状の重合性モノマー等も固形分に含まれる。
それ自体が重合硬化できるバインダー成分を用いる場合にも、塗膜の強度や基盤に対する密着性を向上させるためには、多官能のモノマーやオリゴマーなどの多官能重合性成分を配合するのが好ましい。重合性を有する比較的分子量の高い重合体の分子は、比較的分子量の高い重合体同士で重合するだけでなく、多官能モノマー等の他の重合性成分とも重合してネットワークを形成し、硬化する。
塗工膜のネットワーク構造を形成する多官能重合性成分としては、2官能以上のモノマー又はオリゴマーを用いることができる。光硬化性樹脂に十分な膜強度や密着性を付与するために、通常は4官能以上のモノマーやオリゴマーが用いられている。
しかしながら、特に、本発明に係る硬化性樹脂組成物をインクジェット方式のインクとして用いる場合には、比較的分子量の高い重合体以外の重合性成分としては、官能基数が比較的少ない2官能乃至3官能のモノマー又はオリゴマー、特にモノマーを主体として用いるのが好ましく、粘度が100cps以下の2乃至3官能モノマーを用いるのが特に好ましい。インクジェット方式の吹き付け作業中に、ヘッドの先端での粘度上昇が起こり難くなり、ヘッドの目詰まりが発生せず、作業中におけるインクの吐出性が安定するため、インクの吐出量や吐出方向が安定し、インクを基板上に所定のパターン通り正確に、且つ、均一に付着させることができるからである。
2官能乃至3官能のモノマーとしては、例えば、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、3−ブチレングリコールジメタクリレート等を例示することができる。
本発明に係る硬化性樹脂組成物をインクジェット方式のインクとして用いる場合には特に、2乃至3官能モノマーの配合割合は、硬化性樹脂組成物の固形分全量に対して、20〜70重量%の割合で配合することが好ましい。
2乃至3官能モノマーの配合割合が全固形分の20重量%に満たない場合には、硬化性樹脂組成物がモノマーによって十分に希釈されず、インクの粘度が初めから高いか或いは溶剤分の揮発後に高くなり、インクジェットヘッドのノズルの目詰まりを起こすおそれがある。また、2乃至3官能モノマーの配合割合が全固形分の70重量%を超える場合には、塗膜の架橋密度が低くなり、弾性変形割合が低下する上、塗膜の耐溶剤性、密着性、硬さが劣り、十分な特性が得られなくなるおそれがあるからである。
ただし、硬化性樹脂組成物中に配合される多官能モノマーが全て2乃至3官能性モノマーである場合には、インクの乾燥による粘度上昇が起こり難いので、インクジェットヘッドの吐出性が安定するが、その反面、インク層を硬化して得られた硬化層の膜強度、基板に対する密着性、耐溶剤性等が不十分となる場合がある。そこで、上記の2乃至3官能モノマーと共に、4官能以上の多官能モノマーやオリゴマーを適量配合することにより架橋密度を上げて、硬化層のパターンに十分な膜強度と密着性を付与することができる。
4官能のモノマー、オリゴマーとしては、例えば、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート等を例示することができる。
4官能以上の多官能成分は、硬化性樹脂組成物の固形分全量に対して、通常、1〜30重量%の割合で配合することが好ましい。本発明に係る硬化性樹脂組成物をインクジェット方式のインクとして用いる場合には特に、2乃至3官能性モノマーによる吐出性安定化と、4官能以上の多官能成分による強度及び密着性向上のバランスをとるために、2乃至3官能性モノマー100重量部に対して、4官能以上の多官能成分の配合割合を、通常は1〜50重量部とし、好ましくは当該配合割合の下限を2重量部以上とし、且つ/又は、当該配合割合の上限を35重量部以下とするのが好ましい。
4官能以上の多官能成分の配合割合が前記2乃至3官能性モノマー100重量部に対して1重量部に満たない場合には、インクを硬化させた後の硬さ、耐溶剤性などの特性が十分に得られないおそれがある。また、4官能以上の多官能成分の前記配合割合が50重量部を超える場合には、インクの硬化速度が遅くなり、プロセススピードが遅くなるおそれがあるからである。
また、光硬化性のバインダー系には、必要に応じて、単官能のモノマー、オリゴマーを配合してもよい。
単官能のモノマー、オリゴマーとしては、例えば、スチレン、酢酸ビニル等のビニルモノマーや、n−ヘキシルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート等の単官能アクリルモノマーを例示することができる。
光硬化性バインダー系には、通常、使用する光源の波長に対して活性を有する光重合開始剤が配合される。光重合開始剤は、バインダーや多官能モノマーの反応形式の違い(例えばラジカル重合やカチオン重合など)や、各材料の種類を考慮して適宜選択されるが、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モンフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビスアシルフォスフィンオキサイド、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシプロポキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オンメソクロライド、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4'−メチル−ジフェニルサルファイド、3,3',4,4'−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、1,3,5−トリアクロイルヘキサヒドロ−s−トリアジン、2−〔2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔2−(フラン−2−イル)エテニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、メチルベンゾイルホルメート、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドなどの光重合開始剤を用いることができる。
(2)熱硬化性バインダー系
熱硬化性バインダー系としては、1分子中に熱硬化性官能基を2個以上有する化合物と硬化剤の組み合わせが通常用いられ、更に、熱硬化反応を促進できる触媒を添加しても良い。熱硬化性官能基としてはエポキシ基が好ましく用いられる。また、これらに上述のような、それ自体は重合反応性のない重合体を更に用いても良い。
1分子中に熱硬化性官能基を2個以上有する化合物として、通常は、1分子中にエポキシ基2個以上を有するエポキシ化合物が用いられる。1分子中にエポキシ基2個以上を有するエポキシ化合物は、エポキシ基を2個以上、好ましくは2〜50個、より好ましくは2〜20個を1分子中に有するエポキシ化合物(エポキシ樹脂と称されるものを含む)である。エポキシ基は、オキシラン環構造を有する構造であればよく、例えば、グリシジル基、オキシエチレン基、エポキシシクロヘキシル基等を示すことができる。エポキシ化合物としては、カルボン酸により硬化しうる公知の多価エポキシ化合物を挙げることができ、このようなエポキシ化合物は、例えば、新保正樹編「エポキシ樹脂ハンドブック」日刊工業新聞社刊(昭和62年)等に広く開示されており、これらを用いることが可能である。
エポキシ化合物としては、硬化膜に耐溶剤性や耐熱性を付与するために、比較的分子量の高い重合体と、硬化膜の架橋密度を高くしたり、低粘度化によりインクジェット吐出性能を向上させるために、比較的分子量の低い化合物とを併用することが好ましい。
通常バインダー成分として用いられる比較的分子量の高い重合体であるエポキシ化合物(以下、「バインダー性エポキシ化合物」ということがある)としては、少なくとも下記式(1)で表される構成単位及び下記式(2)で表される構成単位から構成され且つグリシジル基を2個以上有する重合体を用いることができる。
(R
1は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基であり、R
2は炭素数1〜12
の炭化水素基である。)
(R
3は水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基である。)
式(1)で表される構成単位は、下記式(3)で表されるモノマーから誘導される。
式(3)で表されるモノマーをバインダー性エポキシ化合物の構成単位として用いることにより、本発明の硬化性樹脂組成物から形成される硬化塗膜に充分な硬度および透明性を付与することができる。式(3)において、R2は、炭素数1〜12の炭化水素基であり、直鎖脂肪族、脂環式、芳香族いずれの炭化水素基であってもよく、さらに付加的な構造、例えば二重結合、炭化水素基の側鎖、スピロ環の側鎖、環内架橋炭化水素基等を含んでいてもよい。
上記式(3)で表されるモノマーとして具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、パラ−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート等を例示することができる。
式(3)において、R1として好ましいのは水素またはメチル基であり、R2として好ましいのは炭素数1〜12のアルキル基であり、そのなかでも特にメチル基及びシクロヘキシル基が好ましい。上記式(3)で表されるモノマーのなかで好ましいものとして、具体的にはメチルメタクリレート(MMA)及びシクロヘキシルメタクリレート(CHMA)を挙げることができる。
重合体中の式(2)で表される構成単位は、下記式(4)で表されるモノマーから誘導される。
式(4)で表されるモノマーは、重合体中にエポキシ基(エポキシの反応点)を導入するために用いられる。当該重合体を含有する硬化性樹脂組成物は保存安定性に優れており、保存中および吐出作業中に粘度上昇を生じ難いが、その理由の一つは式(2)または式(4)中のエポキシ基がグリシジル基だからであると推測される。式(4)で表されるモノマーの代わりに脂環式エポキシアクリレートを用いると、硬化性樹脂組成物の粘度が上昇しやすい。
式(4)において、R3として好ましいのは水素またはメチル基である。式(4)で表されるモノマーとして、具体的にはグリシジル(メタ)アクリレートを例示することができ、特にグリシジルメタクリレート(GMA)が好ましい。
上記重合体は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。また、上記重合体は、カラーフィルターの各細部に必要とされる性能、例えば硬度や透明性等が確保できる限り、式(1)あるいは式(2)以外の主鎖構成単位を含んでいてもよい。そのようなモノマーとして具体的には、アクリロニトリル、スチレン等を例示することができる。
上記バインダー性エポキシ化合物中の式(1)の構成単位と式(2)の構成単位の含有量は、式(1)の構成単位を誘導する単量体と式(2)の構成単位を誘導する単量体との仕込み重量比(式(1)を誘導する単量体:式(2)を誘導する単量体)で表した時に、10:90〜90:10の範囲にあるのが好ましい。
式(1)の構成単位の量が上記の比10:90よりも過剰な場合には、硬化の反応点が少なくなって架橋密度が低くなるおそれがあり、一方、式(2)の構成単位の量が上記の比90:10よりも過剰な場合には、嵩高い骨格が少なくなって硬化収縮が大きくなるおそれがある。
また、上記バインダー性エポキシ化合物の重量平均分子量は、ポリスチレン換算重量平均分子量で表した時に3,000以上、特に4,000以上であることが好ましい。上記バインダー性エポキシ化合物の分子量が3,000よりも小さすぎるとカラーフィルターの細部としての硬化樹脂層に要求される強度、耐溶剤性等の物性が不足し易いからである。一方、特に、本発明に係る硬化性樹脂組成物がインクジェット方式のインクとして用いられる場合には、上記バインダー性エポキシ化合物の重量平均分子量は、ポリスチレン換算重量平均分子量で表した時に20,000以下であることが好ましく、更に15,000以下であることが特に好ましい。当該分子量が20,000よりも大きすぎると粘度上昇が起こり易くなり、吐出ヘッドから吐出する時の吐出量の安定性や吐出方向の直進性が悪くなるおそれや、長期保存の安定性が悪くなるおそれがあるからである。
上記バインダー性エポキシ化合物としては、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が上記範囲にあるグリシジルメタクリレート(GMA)/メチルメタクリレート(MMA)系共重合体を用いるのが特に好ましい。なお、GMA/MMA系共重合体は本発明の目的を達成し得るものである限り、他のモノマー成分を含有していてもよい。
上記バインダー性エポキシ化合物の合成例としては、例えば、温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下ロートを備えた4つ口フラスコに、水酸基を含有しない溶剤を仕込み、攪拌しながら120℃に昇温する。水酸基を含有しない溶剤を用いるのは、合成反応の最中にエポキシ基が分解するのを避けるためである。次いで上記式(3)で表されるモノマー、上記式(4)で表されるモノマー、及び、必要に応じて他のモノマーを組み合わせた組成物と重合開始剤の混合物(滴下成分)を、2時間かけて滴下ロートより等速滴下する。滴下終了後、120℃に降温して触媒を追加し3時間反応させ、130℃に昇温し2時間保ったところで反応を終了することにより、上記バインダー性エポキシ化合物が得られる。
本発明に係る熱硬化性バインダー系には、一分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物(以下、「多官能エポキシ化合物」ということがある。)であって、上記バインダー性エポキシ化合物よりも分子量が小さいものを添加するのが好ましい。多官能エポキシ化合物のポリスチレン換算の重量平均分子量は、これと組み合わせるバインダー性エポキシ化合物よりも小さいことを条件に、4,000以下が好ましく、3,000以下が特に好ましい。
なお、エポキシ化合物のポリスチレン換算重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により求めることができ、測定条件としては、例えば、テトラヒドロフランを展開液とし、HLC−8029(東ソー株式会社製)を用いて測定することができる。
上記バインダー性エポキシ化合物には、エポキシ基(グリシジル基)が式(2)で表される構成単位によって導入されているため、上記共重合体の分子内に導入できるエポキシ量には限界がある。硬化性樹脂組成物に比較的分子量が小さい多官能エポキシ化合物を添加すると、硬化性樹脂組成物中にエポキシ基が補充されてエポキシの反応点濃度が増加し、架橋密度を高めることができる。
多官能エポキシ化合物の中でも、酸−エポキシ反応の架橋密度を上げるためには、一分子中にエポキシ基を4個以上有するエポキシ化合物を用いるのが好ましい。特に、本発明の硬化性樹脂組成物をインクジェット方式で用いる場合であって、インクジェット方式の吐出ヘッドからの吐出性を向上させるために前記バインダー性エポキシ化合物の重量平均分子量を10,000以下とした場合には、硬化樹脂層の強度や硬度が低下し易いので、そのような4官能以上の多官能エポキシ化合物を硬化性樹脂組成物に配合して架橋密度を充分に上げるのが好ましい。
多官能エポキシ化合物としては、一分子中にエポキシ基を2個以上含有するものであれば特に制限はなく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、3官能型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA含核ポリオール型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂などを使用できる。
より具体的には、商品名エピコート828(油化シェルエポキシ社製)などのビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名YDF−175S(東都化成社製)などのビスフェノールF型エポキシ樹脂、商品名YDB−715(東都化成社製)などの臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名EPICLON EXA1514(大日本インキ化学工業社製)などのビスフェノールS型エポキシ樹脂、商品名YDC−1312(東都化成社製)などのハイドロキノン型エポキシ樹脂、商品名EPICLON EXA4032(大日本インキ化学工業社製)などのナフタレン型エポキシ樹脂、商品名エピコートYX4000H(油化シェルエポキシ社製)などのビフェニル型エポキシ樹脂、商品名エピコート157S70(油化シェルエポキシ社製)などのビスフェノールA型ノボラック系エポキシ樹脂、商品名エピコート154(油化シェルエポキシ社製)、商品名YDPN−638(東都化成社製)などのフェノールノボラック型エポキシ樹脂、商品名YDCN−701(東都化成社製)などのクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、商品名EPICLON HP−7200(大日本インキ化学工業社製)などのジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、商品名エピコート1032H60(油化シェルエポキシ社製)などのトリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、商品名VG3101M80(三井化学社製)などの3官能型エポキシ樹脂、商品名エピコート1031S(油化シェルエポキシ社製)などのテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、商品名デナコールEX−411(ナガセ化成工業社製)などの4官能型エポキシ樹脂、商品名ST−3000(東都化成社製)などの水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名エピコート190P(油化シェルエポキシ社製)などのグリシジルエステル型エポキシ樹脂、商品名YH−434(東都化成社製)などのグリシジルアミン型エポキシ樹脂、商品名YDG−414(東都化成社製)などのグリオキザール型エポキシ樹脂、商品名エポリードGT−401(ダイセル化学社製)などの脂環式多官能エポキシ化合物、トリグリシジルイソシアネート(TGIC)などの複素環型エポキシ樹脂などを例示することができる。また、必要であれば、エポキシ反応性希釈剤として、商品名ネオトートE(東都化成社製)などを混合することができる。
これらの多官能エポキシ化合物の中でも、商品名エピコート157S70(油化シェルエポキシ社製)などのビスフェノールA型ノボラック系エポキシ樹脂、及び、商品名YDCN−701(東都化成社製)などのクレゾールノボラック型エポキシ樹脂が特に好ましい。
本発明に用いられる熱硬化性バインダー系には、通常、硬化剤が組み合わせて配合される。硬化剤としては、例えば、多価カルボン酸無水物または多価カルボン酸を用いる。
多価カルボン酸無水物の具体例としては、無水フタル酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、無水ドデセニルコハク酸、無水トリカルバリル酸、無水マレイン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ジメチルテトラヒドロフタル酸、無水ハイミック酸、無水ナジン酸などの脂肪族または脂環族ジカルボン酸無水物;1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物などの脂肪族多価カルボン酸二無水物;無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸などの芳香族多価カルボン酸無水物;エチレングリコールビストリメリテイト、グリセリントリストリメリテイトなどのエステル基含有酸無水物を挙げることができ、特に好ましくは、芳香族多価カルボン酸無水物を挙げることができる。また、市販のカルボン酸無水物からなるエポキシ樹脂硬化剤も好適に用いることができる。
また、本発明に用いられる多価カルボン酸の具体例としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ブタンテトラカルボン酸、マレイン酸、イタコン酸などの脂肪族多価カルボン酸;ヘキサヒドロフタル酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸などの脂肪族多価カルボン酸、およびフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸などの芳香族多価カルボン酸を挙げることができ、好ましくは芳香族多価カルボン酸を挙げることができる。
これら多価カルボン酸無水物および多価カルボン酸は、1種単独でも2種以上の混合でも用いることができる。本発明に用いられる硬化剤の配合量は、エポキシ基を含有する成分(モノマーと樹脂)100重量部当たり、通常は1〜100重量部の範囲であり、好ましくは5〜50重量部である。硬化剤の配合量が1重量部未満であると、硬化が不充分となり、強靭な塗膜を形成することができない。また、硬化剤の配合量が100重量部を超えると、塗膜の基板に対する密着性が劣るうえに、均一で平滑な塗膜を形成することができない。
本発明の熱硬化性バインダー系には、硬化樹脂層の硬度および耐熱性を向上させるために、酸−エポキシ間の熱硬化反応を促進できる触媒を添加してもよい。そのような触媒としては、加熱硬化時に活性を示す熱潜在性触媒を用いることができる。
熱潜在性触媒は、加熱されたとき、触媒活性を発揮し、硬化反応を促進し、硬化物に良好な物性を与えるものであり、必要により加えられるものである。この熱潜在性触媒は、60℃以上の温度で酸触媒活性を示すものが好ましく、このようなものとしてプロトン酸をルイス塩基で中和した化合物、ルイス酸をルイス塩基で中和した化合物、ルイス酸とトリアルキルホスフェートの混合物、スルホン酸エステル類、オニウム化合物類等が挙げられ、前記特開平4−218561号公報に記載されているような各種の化合物を使用することができる。具体的には、(イ)ハロゲノカルボン酸類、スルホン酸類、リン酸モノ及びジエステル類などを、アンモニア、モノメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、エタノールアミン類などの各種アミン若しくはトリアルキルホスフィン等で中和した化合
物、(ロ)BF3、FeCl3、SnCl4、AlCl3、ZnCl2などのルイス酸を前述のルイス塩基で中和した化合物、(ハ)メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などと第一級アルコール、第二級アルコールとのエステル化合物、(ニ)第一級アルコール類、第二級アルコール類のリン酸モノエステル化合物、リン酸ジエステル化合物等を挙げることができる。また、オニウム化合物としては、アンモニウム化合物[R3NR']+X-、スルホニウム化合物[R3SR']+X-、オキソニウム化合物[R3OR']+X-等を挙げることができる。なお、ここでR及びR'はアルキル、アルケニル、アリール、アルコキシ等である。
以上のようなバインダー成分の中から、当該組成物の固形分中の有機成分のみからなる硬化物のISO−14577による押込み試験における弾性変形割合が40%以上となり易いように、硬化物のISO−14577による押込み試験における弾性変形割合が40%以上となり得るようなバインダー成分を選択する指標としては、例えば下記のものが挙げられる。
バインダー成分全体中の架橋要素は多い方が好ましい。架橋度が高いほど弾性変形割合が40%以上となりやすいからである。従って、例えば硬化性樹脂として光硬化性樹脂のみを含む場合には、エチレン性不飽和結合をエチレン性不飽和結合当量で1200g/eq以下の割合、更に好ましくはエチレン性不飽和結合をエチレン性不飽和結合当量で800g/eq以下の割合で有する光硬化性樹脂を、バインダー成分全体中に30重量%以上、更に、50重量%以上有することが好ましい。
また、硬化性樹脂として熱硬化性樹脂のみを含む場合には、架橋間分子量が300以下、更に好ましくは架橋間分子量が250以下の熱硬化性樹脂を、バインダー成分全体中に30重量%以上、更に、50重量%以上有することが好ましい。ここで、架橋間分子量とは、平均分子量を平均官能基数で割った値のことであり、Bergerの式(架橋間分子量:Mc=M0/(xF0−2)、ここで、M0は1分子当りの平均分子量、xは反応率(x≦1)、F0は1分子当りの平均官能基数)によって計算する。なお、1分子当り2個の官能基は鎖延長に用いられるので、その分は差し引いて計算する。
また、硬化性樹脂として光硬化性樹脂と熱硬化性樹脂の両方を含む場合には、エチレン性不飽和結合をエチレン性不飽和結合当量で1200g/eq以下の割合、更に好ましくはエチレン性不飽和結合をエチレン性不飽和結合当量で800g/eq以下の割合で有する光硬化性樹脂と、架橋間分子量が300以下、更に好ましくは架橋間分子量が250以下の熱硬化性樹脂とを、合計量でバインダー成分全体中に50重量%以上、更に、60重量%以上有することが好ましい。バインダー成分中に含まれる硬化性樹脂としては、光硬化性樹脂と熱硬化性樹脂の両方を含むことが好ましい。
また、バインダー成分全体の重量平均分子量が高いか、又はバインダー成分全体に平均分子量が高い成分を多く含むことが好ましい。従って、バインダー成分全体の重量平均分子量は、3000以上、更に4000以上であることが好ましい。また、重量平均分子量が8000以上である成分をバインダー成分中に30重量%以上、更に50重量%以上含むことが好ましい。なお、本発明における重量平均分子量は、GPC測定においてポリスチレン換算により求めたものである。
また、バインダー成分全体のTgは高いか、バインダー成分にTgが高い成分を多く含むことが好ましい。従って、バインダー成分のTgは20℃以上であるか、30℃以上であることが好ましい。また、Tgが30℃以上である成分をバインダー成分中に30重量%以上、更に50重量%以上含むことが好ましい。
以上、本発明に係るカラーフィルター用硬化性樹脂組成物において、必須成分である硬化性樹脂を含むバインダー成分について説明したが、本発明に係るカラーフィルター用硬化性樹脂組成物には、通常、塗布性を付与するために溶剤が含まれる。着色層やブラックマトリックス層を形成するために用いられる場合のカラーフィルター用硬化性樹脂組成物には、通常、更に顔料や顔料分散剤が含まれる。また、更にその他の成分を含んでいても良い。
(顔料)
着色剤としての顔料は、着色層(画素部)のR、G、B等やブラックマトリックス層の求める色に合わせて、有機着色剤及び無機着色剤の中から任意のものを選んで使用することができる。有機着色剤としては、例えば、染料、有機顔料、天然色素等を用いることができる。また、無機着色剤としては、例えば、無機顔料、体質顔料等を用いることができる。これらの中で有機顔料は、発色性が高く、耐熱性も高いので、好ましく用いられる。有機顔料としては、例えばカラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists 社発行) においてピグメント(Pigment)に分類されている化合物、具体的には、下記のようなカラーインデックス(C.I.)番号が付されているものを挙げることができる。
C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー16、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー20、C.I.ピグメントイエロー24、C.I.ピグメントイエロー31、C.I.ピグメントイエロー55、C.I.ピグメントイエロー60、C.I.ピグメントイエロー61、C.I.ピグメントイエロー65、C.I.ピグメントイエロー71、C.I.ピグメントイエロー73、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー81、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー98、C.I.ピグメントイエロー100、C.I.ピグメントイエロー101、C.I.ピグメントイエロー104、C.I.ピグメントイエロー106、C.I.ピグメントイエロー108、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー113、C.I.ピグメントイエロー114、C.I.ピグメントイエロー116、C.I.ピグメントイエロー117、C.I.ピグメントイエロー119、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー126、C.I.ピグメントイエロー127、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー152、C.I.ピグメントイエロー153、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー156、C.I.ピグメントイエロー166、C.I.ピグメントイエロー168、C.I.ピグメントイエロー175;
C.I.ピグメントオレンジ1、C.I.ピグメントオレンジ5、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ14、C.I.ピグメントオレンジ16、C.I.ピグメントオレンジ17、C.I.ピグメントオレンジ24、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ40、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ46、C.I.ピグメントオレンジ49、C.I.ピグメントオレンジ51、C.I.ピグメントオレンジ61、C.I.ピグメントオレンジ63、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントオレンジ71、C.I.ピグメントオレンジ73;C.I.ピグメントバイオレット1、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット29、C.I.ピグメントバイオレット32、C.I.ピグメントバイオレット36、C.I.ピグメントバイオレット38;
C.I.ピグメントレッド1、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド4、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド8、C.I.ピグメントレッド9、C.I.ピグメントレッド10、C.I.ピグメントレッド11、C.I.ピグメントレッド12、C.I.ピグメントレッド14、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド17、C.I.ピグメントレッド18、C.I.ピグメントレッド19、C.I.ピグメントレッド21、C.I.ピグメントレッド22、C.I.ピグメントレッド23、C.I.ピグメントレッド30、C.I.ピグメントレッド31、C.I.ピグメントレッド32、C.I.ピグメントレッド37、C.I.ピグメントレッド38、C.I.ピグメントレッド40、C.I.ピグメントレッド41、C.I.ピグメントレッド42、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド48:4、C.I.ピグメントレッド49:1、C.I.ピグメントレッド49:2、C.I.ピグメントレッド50:1、C.I.ピグメントレッド52:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド57:2、C.I.ピグメントレッド58:2、C.I.ピグメントレッド58:4、C.I.ピグメントレッド60:1、C.I.ピグメントレッド63:1、C.I.ピグメントレッド63:2、C.I.ピグメントレッド64:1、C.I.ピグメントレッド81:1、C.I.ピグメントレッド83、C.I.ピグメントレッド88、C.I.ピグメントレッド90:1、C.I.ピグメントレッド97、C.I.ピグメントレッド101、C.I.ピグメントレッド102、C.I.ピグメントレッド104、C.I.ピグメントレッド105、C.I.ピグメントレッド106、C.I.ピグメントレッド108、C.I.ピグメントレッド112、C.I.ピグメントレッド113、C.I.ピグメントレッド114、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド150、C.I.ピグメントレッド151、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントレッド170、C.I.ピグメントレッド171、C.I.ピグメントレッド172、C.I.ピグメントレッド174、C.I.ピグメントレッド175、C.I.ピグメントレッド176、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド179、C.I.ピグメントレッド180、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド187、C.I.ピグメントレッド188、C.I.ピグメントレッド190、C.I.ピグメントレッド193、C.I.ピグメントレッド194、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド206、C.I.ピグメントレッド207、C.I.ピグメントレッド208、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド215、C.I.ピグメントレッド216、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド226、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド243、C.I.ピグメントレッド245、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド265;
C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー60;C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36;C.I.ピグメントブラウン23、C.I.ピグメントブラウン25;C.I.ピグメントブラック1、ピグメントブラック7。
また、前記無機顔料あるいは体質顔料の具体例としては、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、カーボンブラック等を挙げることができる。本発明において、顔料は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
カラーフィルタの基板上に、本発明の硬化性樹脂組成物を用いてブラックマトリックス層のパターンを形成する場合には、硬化性樹脂組成物中に遮光性の高い黒色顔料を配合する。遮光性の高い黒色顔料としては、例えば、カーボンブラックや四三酸化鉄などの無機系着色剤、或いは、シアニンブラックなどの有機系着色剤を使用できる。
遮光性の高い顔料を含有する硬化性樹脂組成物で形成したインク層は、内部にまで光が到達し難いので、本発明の硬化性樹脂組成物を用いてブラックマトリックス層のパターンを形成する場合には、光硬化性のバインダー系を用いるよりも、熱硬化性バインダー系を用いるのが好ましい。ただし、インク層の厚さや露光時間を長くするなど硬化方法を調節することによって、光でも硬化させることが可能である。
着色層を形成する場合には、顔料を硬化性樹脂組成物の固形分全量に対して、通常は1〜60重量%、好ましくは15〜40重量%の割合で配合する。顔料が少なすぎると、硬化性樹脂組成物を所定の膜厚(通常は0.1〜2.0μm)に塗布した際の透過濃度が十分でないおそれがある。また、顔料が多すぎると、硬化性樹脂組成物を基板上へ塗布し硬化させた際の基板への密着性、硬化膜の表面荒れ、塗膜硬さ等の塗膜としての特性が不十分となるおそれがある。
(顔料分散剤)
顔料分散剤は、顔料を良好に分散させるために硬化性樹脂組成物中に必要に応じて配合される。顔料分散剤としては、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、シリコーン系、フッ素系等の界面活性剤を使用できる。界面活性剤の中でも、次に例示するような高分子界面活性剤(高分子分散剤)が好ましい。
すなわち、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のポリエチレングリコールジエステル類;ソルビタン脂肪酸エステル類;脂肪酸変性ポリエステル類;3級アミン変性ポリウレタン類などの高分子界面活性剤が好ましく用いられる。
顔料分散剤の耐熱性は、しわやクラックが発生し難い点から、高いほうが好ましい。顔料分散剤の耐熱性は、例えばガラス転移温度(Tg)を1つの指標とすることができる。本発明に用いられる顔料分散剤のガラス転移温度(Tg)は、70℃以上であることが好ましく、更に150℃以上、特に180℃以上であることが好ましい。Tg測定においてTgを示すピークが2つ以上現われる場合には、耐熱性の観点から、チャートのピーク面積、すなわちベースラインから突出した部分の面積が最も大きいピーク点を急変点の代表値とする。なお、ガラス転移温度(Tg)はDSC法により測定することができる。
また、顔料分散剤の耐熱性は、70℃で30分間の熱処理を行って溶融するか否かの試験(以下、「溶融試験」ということがある)を1つの指標とすることができる。本発明に用いられる顔料分散剤は、70℃の熱処理を30分間行った場合に、溶融しないものであることが好ましく、タックが出現しない固体状態であることが更に好ましい。この溶融試験においては、150℃、30分間の加熱条件で溶融しないことが更に好ましく、180℃、30分間の加熱条件で溶融しないことが特に好ましい。
(その他の成分)
更に、本発明のカラーフィルター用硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、その他の添加剤を1種又は2種以上配合することができる。そのような添加剤としては、次のようなものを例示できる。中でも、本発明においては当該組成物の固形分中の有機成分のみからなる硬化物のISO−14577による押込み試験における弾性変形割合が40%以上となる硬化条件で硬化させて樹脂硬化膜を形成して、しわやクラックを防止する点から、密着性を補充することが好ましく、密着促進剤を添加することが好ましい。
a)充填剤:例えば、ガラス、アルミナなど。
b)密着促進剤:例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランなど。
c)紫外線吸収剤:例えば、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、アルコキシベンゾフェノンなど。
d)凝集防止剤:例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、或いは各種の界面活性剤など。
e)レベリング剤:例えば、市販のシリコン系、ポリオキシアルキレン系、脂肪酸エステル系、特殊アクリル系重合体など。
(有機溶剤)
本発明のカラーフィルター用硬化性樹脂組成物を、保存用の高濃度インク又は直ちに塗工可能な濃度のインクに調製するために、上記固形分を好適に溶解及び分散させる有機溶剤であれば、特に限定されない。
特に、本発明のカラーフィルター用硬化性樹脂組成物を、インクジェット方式に適用する場合には、ヘッドからの吐出性を向上させるために、沸点が180℃〜260℃、特に210℃〜260℃で且つ常温(特に18℃〜25℃の範囲)での蒸気圧が0.5mmHg以下、特に0.1mmHg以下の溶剤成分を主溶剤として用い、そのような主溶剤を有機溶剤の全量に対して80質量%以上、特に85質量%以上の割合で配合するのが好ましい。また、主溶剤の表面張力は、29dyn/cm以上であることが好ましい。
沸点が180℃〜260℃で且つ常温での蒸気圧が0.5mmHg以下の溶剤成分は適度な乾燥性及び蒸発性を有している。そのため、このような溶剤成分を高い配合割合で含有する単独溶剤又は混合溶剤を用いると、インクジェットインクとした場合に吐出ヘッドのノズル先端において急速には乾燥しないので、インクの急激な粘度上昇や目詰まりが発生せず、吐出の直進性や安定性に悪影響を及ぼさないで済む。それと共に、被吐出面に吹き付けた後は乾燥が適度な速度で進行するので、インクが被塗布面になじんで塗工膜表面が水平且つ滑らかになってから、自然乾燥又は一般的な加熱工程によってインクを速やかに且つ完全に乾燥させることができる。湿潤剤や極めて沸点の高い溶剤を用いる場合と比べて、乾燥工程後の塗膜中に溶剤が残留するおそれも少ない。
有機溶剤は、インクジェット方式に適用する場合であっても必要に応じて主溶剤以外の溶剤成分を少量ならば含有していても良い。しかしながら、その場合でも、上記した沸点と蒸気圧を有する主溶剤を溶剤全量に対して80質量%以上の割合で使用することが好ましい。主溶剤の割合が溶剤全量の80質量%に満たない場合には、インクジェット方式に適した乾燥性、蒸発性を確実に得ることができない場合がある。
主溶剤は、できるだけ高い配合割合で用いるのが望ましく、具体的には少なくとも80質量%以上、好ましくは85質量%以上とし、できるだけ100質量%とするのが望ましい。
基板表面に濡れ性可変層を形成し露光することにより、基板上のインク層を形成したい部分に親インク性領域を形成し、当該親インク性領域にインクジェット方式によって本発明の硬化性樹脂組成物を選択的に付着させる場合には、主溶剤として、JIS K6768に規定する濡れ性試験において示された標準液を用い、液滴を接触させて30秒後の接触角(θ)を測定し、ジスマンプロットのグラフにより求めた臨界表面張力が30mN/mの試験片の表面に対する接触角が25°以上、好ましくは30°以上を示し、且つ、同じ測定法により求めた臨界表面張力が70mN/mの試験片の表面に対する接触角が10°以下を示すものを選択して用いてもよい。
濡れ性に関して上記挙動を示す溶剤を用いてインクを調製すると、インクは、後述する濡れ性可変層の濡れ性を変化させる前は当該濡れ性可変層の表面に対して大きな反撥性を示し、当該濡れ性可変層の濡れ性を変化させて親水性が大きくなる方向に変化させた後は当該濡れ性可変層の表面に対して大きな親和性を示す。従って、濡れ性可変層の表面の一部を選択的に露光して形成した親インク性領域に対するインクの濡れ性と、その周囲の領域に対する撥インク性領域の濡れ性の差を大きくとることができるようになり、親インク性領域にインクジェット方式で吹き付けたインクが、親インク性領域の隅々にまで均一に濡れ広がる。その結果、微細且つ精緻なインク層のパターンをインクジェット方式により形成できるようになる。
ここで、臨界表面張力に関し上記特性を有する試験片は如何なる材料で形成されていても差し支えない。臨界表面張力30mN/mを示す試験片としては、例えば、表面が平滑なポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、平滑なガラス表面に前記ポリマーや表面改質剤等を塗布したものの中から実際に上記試験を行って該当するものを選択することができる。また、臨界表面張力70mN/mを示す試験片としては、例えば、ナイロンや親水化処理したガラス表面等を塗布したものの中から実際に上記試験を行って該当するものを選択することができる。
主溶剤は、以下に示すような溶剤の中から選んで用いることができる:エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルのようなグリコールエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートのようなグリコールエーテルエステル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルのようなグリコールオリゴマーエーテル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートのようなグリコールオリゴマーエーテルエステル類;酢酸エチル、安息香酸プロピルのような脂肪族又は芳香族エステル類;炭酸ジエチルのようなジカルボン酸ジエステル類;3−メトキシプロピオン酸メチルのようなアルコキシカルボン酸エステル類;アセト酢酸エチルのようなケトカルボン酸エステル類;エタノール、イソプロパノール、フェノールのようなアルコール類又はフェノール類;ジエチルエーテル、アニソールのような脂肪族又は芳香族エーテル類;2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノールのようなアルコキシアルコール類;ジエチレングリコール、トリプロピレングリコールのようなグリコールオリゴマー類;2−エトキシエチルアセテートのようなアルコキシアルコールエステル類;アセトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類。
また、本発明に係るカラーフィルター用硬化性樹脂組成物に顔料が含まれる場合には、有機溶剤、特に溶剤の大部分を占める主溶剤としては、顔料の分散性、分散安定性の点から、水酸基を含有しないものを用いることが好ましい。
主溶剤として好ましいものとしては、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、アジピン酸ジエチル、シュウ酸ジブチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、コハク酸ジメチル、及び、コハク酸ジエチルなどを例示することができる。これらの溶剤は、沸点が180℃〜260℃で且つ常温での蒸気圧が0.5mmHg以下の要求を満たしているだけでなく、分子中に水酸基を有していない点でも好ましい。さらに、これらの溶剤は、3−メトキシブチルアセテートやプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)のような従来から顔料分散液の調製に用いられている分散性の高い溶剤と混合し或いは混合せずそのまま分散溶剤として用い、顔料分散液を調製することができる。
好ましいものとして例示した上記溶剤は、JIS K6768に規定する濡れ性試験において示された標準液を用い、液滴を接触させて30秒後の接触角(θ)を測定し、ジスマンプロットのグラフにより求めた臨界表面張力が30mN/mの試験片の表面に対する接触角が25°以上を示し、且つ、同じ測定法により求めた臨界表面張力が70mN/mの試験片の表面に対する接触角が10°以下を示すという要求も満たしている。従って、これらの溶剤は、基板表面に濡れ性可変層を設けて露光し、露光部分と未露光部分の間の濡れ性の差を利用して硬化性樹脂組成物を選択的に付着させる場合にも、主溶剤として好適に用いることができる。
また、溶剤中に水分が混入している場合も溶剤中に水分子の水酸基が存在することになるので、水酸基を有する溶剤を用いる場合と同様の問題を生じるおそれがある。従って、酸−エポキシ間の架橋反応系から水分を実質的に排除するために、水との混和性の低い有機溶剤を用いて硬化性樹脂組成物を調製するのが好ましい。かかる観点から、硬化性樹脂組成物を調製する溶剤の水に対する溶解性は、液温が20℃の水100重量部に対して20重量部以下であることが好ましい。
具体例として挙げた上記主溶剤の中では、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートは水酸基を有しておらず、また、液温が20℃の水100重量部に対する溶解性も6.5重量部と低い水混和性を示すので、特に好ましい。
有機溶剤は、当該溶剤を含む硬化性樹脂組成物の全量に対して、通常は40〜95質量%の割合で用いて硬化性樹脂組成物を調製する。溶剤が少なすぎると、硬化性樹脂組成物の粘度が高く、インクジェットインクの場合にはインクジェットヘッドからの吐出が困難になる。また、溶剤が多すぎると、所定の濡れ性変化部位(インク層形成部位)に対するインク盛り量(インク堆積量)が充分でないうちに当該濡れ性変化部位に堆積させたインクの膜が決壊し、周囲の未露光部へはみ出し、さらには隣の濡れ性変化部位(インク層形成部位)にまで濡れ広がってしまう。言い換えれば、インクを付着させるべき濡れ性変化部位(インク層形成部位)からはみ出さないで堆積させることのできるインク盛り量が不充分となり、乾燥後の膜厚が薄すぎて、それに伴い充分な透過濃度を得ることができなくなる。
(組成物の製造方法)
本発明のカラーフィルター用硬化性樹脂組成物は、バインダー成分を必要に応じて他の配合成分と共に、単独溶剤又は混合溶剤である溶剤に投入して混合し、固形成分を溶解又は分散させて製造しても良い。
しかしながら、顔料を含む場合には、顔料をバインダー成分等の他の成分と共に溶剤全体中に直接投入し攪拌混合すると、顔料を溶剤中に十分に分散させられないことが多い。そこで通常は、顔料の分散性及び分散安定性が良好な溶剤を用意し、そこに顔料を分散剤と共に投入してディソルバーなどにより十分攪拌し、顔料分散液を調製する。そして、得られた顔料分散液を、顔料以外の成分と共に、ほとんど主溶剤からなるか又は主溶剤のみからなる溶剤に投入し、ディソルバーなどにより十分に攪拌混合することによって、本発明に係る硬化性樹脂組成物とすることができる。
顔料分散液を投入する残部の溶剤としては、最終的な溶剤全体の組成から顔料分散液の調製に用いた溶剤の分を差し引いた組成を有するものを用い、最終濃度にまで希釈して硬化性樹脂組成物を完成させても良い。また、顔料分散液を比較的少量の主溶剤に投入して高濃度の硬化性樹脂組成物を調製しても良い。高濃度の硬化性樹脂組成物は、そのまま保存し、使用直前に最終濃度に希釈してインクジェット方式に使用することができる。
本発明においては、特に、主溶剤として沸点が180℃〜260℃で且つ常温での蒸気圧が0.5mmHg以下の溶剤成分の配合割合を溶剤全体の90重量%以上用いる場合には、顔料分散液の調製時に3−メトキシブチルアセテートやプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)のような従来から用いられている分散溶剤を十分な量だけ用いることができない場合がある。その場合には、主溶剤として使用可能な溶剤の中から顔料の分散性、分散安定性が比較的良好なものを選択し、従来から用いられている分散溶剤と混合したものを分散溶剤として用いるか、或いは、主溶剤をそのまま分散溶剤として用いる。
(硬化膜の物性)
本発明に係る硬化性樹脂組成物を用いて形成された硬化膜は、当該組成物の固形分中の有機成分のみからなる硬化物のISO−14577による押込み試験における弾性変形割合が40%以上となる硬化条件で、当該組成物を硬化させることにより、当該組成物の硬化膜がシワやクラックを生じにくい。バインダー成分がISO−14577による押込み試験における弾性変形割合が40%以上となる条件で、当該組成物を硬化させることにより得られた硬化膜の表面粗度(Ra)は、10nm以下であり、更に8nm以下であることが好ましく、特に5nm以下であることが好ましい。
また、本発明に係る硬化性樹脂組成物は、硬化後に、光硬化性樹脂を含有する場合には、更に光源として超高圧水銀灯を用いて365nm換算で30mW/cm2の照度にて30秒間光照射及び240℃で60分加熱する前後で、或いは、硬化性樹脂として熱硬化性樹脂のみを含有する場合には、更に240℃で60分加熱する前後で、架橋要素の変化量が測定誤差範囲内であって、且つISO−14577による押込み試験における弾性変形割合が増大するものであることが、無機材料成膜時の硬化膜の熱膨張収縮により無機材料薄膜にしわやクラックが生じにくい点から好ましい。ここでいう測定誤差範囲内とは、上記と同様である。
なお、本発明に係る硬化性樹脂組成物を用いて形成された硬化膜は、当該組成物の固形分中の有機成分のみからなる硬化物のISO−14577による押込み試験における弾性変形割合が40%以上となる硬化条件で当該組成物を硬化させた場合であっても、例えば無機顔料等の他の配合成分の影響を受けるため、ISO−14577による押込み試験における弾性変形割合は必ずしも40%以上とならない。
本発明に係るカラーフィルター用硬化性樹脂組成物は、種々の方式により硬化膜を作製することが可能であるが、コスト及び廃液や廃ガスなどの排出量を大幅に削減できる点からインクジェット方式を選択して用いることが好ましく、インクジェット用インクとして、好適に用いることができる。
2.カラーフィルター
本発明に係るカラーフィルターは、透明基板と、当該透明基板上に設けられた着色層を備え、さらに当該着色層間及び/又は当該着色層上に樹脂硬化膜を備えていてもよく、前記着色層及び/又は前記樹脂硬化膜に隣接した無機材料薄膜を備えるカラーフィルターであって、前記着色層及び/又は前記樹脂硬化膜が、前記本発明に係るカラーフィルター用硬化性樹脂組成物を硬化させて形成したものであることを特徴とする。
ここで、着色層間及び/又は着色層上に備わっている樹脂硬化膜としては、例えば、ブラックマトリックス、保護膜、インクジェット方式用隔壁等が挙げられる。
本発明に係るカラーフィルターは、前記着色層、及び/又は、ブラックマトリックス、保護膜、隔壁等の前記樹脂硬化膜が、前記本発明に係るカラーフィルター用硬化性樹脂組成物を硬化させて形成したものであることから、当該硬化性樹脂組成物を用いた前記着色層、及び/又は、ブラックマトリックス、保護膜、インクジェット方式用隔壁等の前記樹脂硬化膜は、しわやクラックが生じにくいため、これらのいずれかに隣接する無機材料薄膜は、シワやクラックが生じにくい。従って、本発明に係るカラーフィルターはシワやクラックによる導通の問題と画像不良の問題がなく、表示不良が低減したものである。中でも、前記の着色層及び更に保護膜を備える場合には保護膜が、前記本発明に係るカラーフィルター用硬化性樹脂組成物を硬化させて形成したものである場合には、透明電極膜などの無機材料薄膜等の隣接層との接触面積が大きいため効果的である。
図2は、本発明に係るカラーフィルターの一例(カラーフィルター103)を示す縦断面図である。この例において、本発明における前記無機材料薄膜は、透明電極膜であるが、透明電極膜の代わりに反射防止膜や、他の機能膜であっても良い。
このカラーフィルター103は、透明基板5に所定のパターンで形成されたブラックマトリックス6と、当該ブラックマトリックス上に所定のパターンで形成した着色層7(7R,7G,7B)と、当該着色層を覆うように形成された保護膜8を備えている。また、保護膜8上に液晶駆動用の透明電極膜9が形成されている。カラーフィルター103の最内面、この場合には透明電極上には、配向膜10が形成されている。
柱状スペーサー12は凸状スペーサーの一形状であり、ブラックマトリックス層6が形成された領域(非表示領域)に合わせて、透明電極9上の所定の複数箇所(図2では5箇所)に形成されている。柱状スペーサー12は、透明電極9上若しくは着色層7上若しくは保護膜8上に形成される。カラーフィルター102においては、保護膜8上に透明電極膜9を介して柱状スペーサーが海島状に形成されているが、保護膜8と柱状スペーサー12を一体的に形成し、その上を覆うように透明電極膜9を形成しても良い。また、カラーフィルターがブラックマトリックス層を備えていない場合には、着色層を形成していない領域に柱状スペーサーを形成することができる。
(透明基板)
透明基板5としては、従来よりカラーフィルターに用いられているものであれば特に限定されるものではないが、例えば石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の可とう性のない透明なリジット材、あるいは透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可とう性を有する透明なフレキシブル材を用いることができる。この中で特にコーニング社製7059ガラスは、熱膨脹率の小さい素材であり寸法安定性および高温加熱処理における作業性に優れ、また、ガラス中にアルカリ成分を含まない無アルカリガラスであるため、アクティブマトリックス方式によるカラー液晶表示装置用のカラーフィルターに適している。本発明においては、通常、透明基板を用いるが、反射性の基板や白色に着色した基板でも用いることは可能である。また、基板は、必要に応じてアルカリ溶出防止やガスバリア性付与その他の目的で表面処理を施したものを用いてもよい。
(着色層)
着色層7は、上記本発明に係る硬化性樹脂組成物を用いて形成することが、隣接する層にしわやクラックを発生し難い点から好ましい。このような着色層は、通常、赤(R)、緑(G)、および青(B)の3色で形成される。この着色層における着色パターン形状は、ストライプ型、モザイク型、トライアングル型、4画素配置型等の公知の配列とすることができ、着色面積は任意に設定することができる。
本発明において、この着色層を形成する方法としては特に限定されるものではなく、例えば、上記本発明に係る硬化性樹脂組成物を用いてフォトリソグラフィーを用いた顔料分散法、染色法、印刷法、電着法等の公知の方法等を挙げることができるが、本発明においては、後述するように、上記本発明に係る硬化性樹脂組成物を用いてインクジェット方式により形成されることが好ましい。これにより、高精細に着色層を形成することができるからである。
(ブラックマトリックス層)
ブラックマトリックス層6は、表示画像のコントラストを向上させるために、着色層7R,7G,7Bの間及び着色層形成領域の外側を取り囲むように設けられる。ブラックマトリックス層6を形成する方法としては、金属薄膜又は遮光性樹脂のいずれかと感光性レジストを用いる方法と、遮光性粒子を含有する硬化性樹脂組成物を用いる方法がある。本発明においては、ブラックマトリックス層6は、遮光性粒子を含有する上記本発明に係る硬化性樹脂組成物を用いて形成することが、隣接する層にしわやクラックを発生し難い点から好ましい。
(保護膜)
保護膜8は、カラーフィルターの表面を平坦化すると共に、着色層7に含有される成分が液晶層に溶出するのを防止するために設けられる。保護膜8は、透明な硬化性樹脂組成物を、スピンコーター、ロールコーター、スプレイ、印刷等の方法により、ブラックマトリックス層6及び着色層7を覆うように塗布し、光又は熱によって硬化させることによって形成できる。保護膜を形成するための透明な硬化性樹脂組成物としては、透明な前記本発明に係る硬化性樹脂組成物を用いることが好ましい。本発明に係る硬化性樹脂組成物を用いる場合には、隣接する層にしわやクラックを発生し難い保護膜を形成することができる。
(隔壁)
インクジェット方式用の隔壁については、後述する製造方法におけるインクジェット方式の説明のところで説明する。
(スペーサー)
凸状スペーサーは、カラーフィルター103をTFTアレイ基板等の液晶駆動側基板と貼り合わせた時にセルギャップを維持するために、基板上の非表示領域に複数設けられる。凸状スペーサーの形状及び寸法は、基板上の非表示領域に選択的に設けることができ、所定のセルギャップを基板全体に渡って維持することが可能であれば特に限定されない。凸状スペーサーとして図示したような柱状スペーサー12を形成する場合には、2〜10μm程度の範囲で一定の高さを持つものであり、突出高さ(パターンの厚み)は液晶層に要求される厚み等から適宜設定することができる。また、柱状スペーサー12の太さは5〜20μm程度の範囲で適宜設定することができる。また、柱状スペーサー12の形成密度(密集度)は、液晶層の厚みムラ、開口率、柱状スペーサーの形状、材質等を考慮して適宜設定することができるが、例えば、赤色、緑色及び青色の各画素の1組に1個の割合で必要充分なスペーサー機能を発現する。このような柱状スペーサーの形状は柱状であればよく、例えば、円柱状、角柱状、截頭錐体形状等であっても良い。
凸状スペーサーは、本発明に係る硬化性樹脂組成物を用いて形成してもよい。すなわち、先ず、本発明に係る硬化性樹脂組成物の塗工液をスピンコーター、ロールコーター、スプレイ、印刷等の方法により透明基板上に直接、又は、透明電極等の他の層を介して塗布し、乾燥して、硬化性樹脂層を形成する。スピンコーターの回転数は、保護膜を形成する場合と同様に500〜1500回転/分の範囲内で設定すればよい。通常、スペーサーを形成するための硬化性樹脂組成物は光硬化性樹脂組成物が好適に用いられるため、次に、この樹脂層を凸状スペーサー用フォトマスクを介して露光し、アルカリ液のような現像液により現像して所定の凸状パターンを形成し、この凸状パターンを必要に応じてクリーンオーブン等で加熱処理(ポストベーク)することによって凸状スペーサーが形成される。
凸状スペーサーは、カラーフィルター上に直接又は他の層を介して間接的に設けることができる。例えば、カラーフィルター上にITO等の透明電極又は保護膜を形成し、その上に凸状スペーサーを形成しても良いし、カラーフィルター上に保護膜と透明電極をこの順に形成し、さらに透明電極上に凸状スペーサーを形成しても良い。
(無機材料薄膜)
本発明に係るカラーフィルターにおいて、前記無機材料薄膜は、前記の着色層、ブラックマトリックス、保護膜及び隔壁等のいずれかに隣接して備わっている。なお、本発明において隣接するとは、隣り合って接していても、その他の層を介して隣り合っていても良い。
本発明に係るカラーフィルターにおいて、前記無機材料薄膜の一態様としては、透明電極膜9であるが、反射防止膜や、他の機能膜であっても良い。
また、本発明に係るカラーフィルターにおける前記無機材料薄膜の表面粗度(Ra)は、10nm以下、更に8nm以下、特に5nm以下であることが好ましい。前記無機材料薄膜は、隣接する着色層、ブラックマトリックス、保護膜及び隔壁等が上記本発明に係る硬化性樹脂組成物を用いて形成されているため、しわやクラックが発生し難いからである。
透明電極膜9は、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)等、およびそれらの合金等を用いて形成することができる。
無機材料薄膜が反射防止膜の場合、例えば、シリカや酸化インジウムスズ(ITO)を用いて形成することができる。
また、その他の無機材料薄膜からなる機能層としては、コンデンサ、光学素子、センサ、透光性電極等が挙げられるが、これらに限定されない。
(その他の層)
通常カラーフィルターに形成されるその他の部材をさらに含んでいても良い。配向膜やその他の部材においては、通常カラーフィルターに用いられるものを用いて、通常の方法で形成することができる。樹脂硬化膜からなる部材であって、隣接層のしわが問題になる場合には、本発明に係る硬化性樹脂組成物を用いて形成するのが好ましい。
3.液晶パネル
本発明に係る液晶パネルは、表示側基板と液晶駆動側基板とを対向させ、両者の間に液晶を封入してなる液晶パネルであって、前記表示側基板が前記本発明に係るカラーフィルターであることを特徴とする。
上記のようにして得られたカラーフィルター103(表示側基板)と、TFTアレイ基板(液晶駆動側基板)を対向させ、両基板の内面側周縁部をシール剤により接合すると、両基板は所定距離のセルギャップを保持した状態で貼り合わされる。そして、基板間の間隙部に液晶を満たして密封することにより、本発明に係る液晶パネルに属する、アクティブマトリックス方式のカラー液晶表示装置が得られる。
液晶パネルにおけるその他の構成及び製造方法は、通常用いられる構成及び方法を用いることができるので、ここでは説明を省略する。
以上のように液晶パネル等の表示パネル用のカラーフィルターの着色層、ブラックマトリックス層、保護膜、スペーサー等を、本発明に係る硬化性樹脂組成物を用いて形成する場合には、その後の透明電極膜等の無機材料薄膜や隣接する層を形成する工程で高温及び真空による超低圧にさらされても、本発明に係る硬化性樹脂組成物を用いて形成された着色層、ブラックマトリックス層、保護膜、スペーサーはしわ又はクラックを生じにくいから、透明電極膜等の隣接層を歪ませて、その表面に皺が発生するという問題を回避することができ、表示不良の少ないカラーフィルター及び表示パネルが得られる。
4.樹脂硬化膜と無機材料薄膜の積層体の製造方法
本発明に係る樹脂硬化膜と無機材料薄膜の積層体の製造方法は、基板上に硬化性樹脂組成物を、当該組成物の固形分中の有機成分のみからなる硬化物のISO−14577による押込み試験における弾性変形割合が40%以上となる条件で、硬化させて樹脂硬化膜を形成する工程と、前記樹脂硬化膜上に無機材料薄膜を形成する工程を有する。
本発明に係る樹脂硬化膜と無機材料薄膜の積層体の製造方法は、基板上に硬化性樹脂組成物を、当該組成物の固形分中の有機成分のみからなる硬化物のISO−14577による押込み試験における弾性変形割合が40%以上となる条件で、硬化させて樹脂硬化膜を形成する工程を有することにより、形成された当該樹脂硬化膜はシワやクラックを生じにくいため、当該樹脂硬化膜上に更に無機材料薄膜を形成しても、当該無機材料薄膜にしわやクラックが生じにくい。
本発明に係る樹脂硬化膜と無機材料薄膜の積層体の製造方法は、無機材料薄膜にしわやクラックが生じにくいことが好ましい積層体であれば、様々なものに応用可能である。例えば、IC用基板や耐摩耗性コーティングに用いられる樹脂硬化膜とAl2O3等の無機材料薄膜の積層体や、透光性電極に用いられる樹脂硬化膜と酸化インジウムスズ(ITO)やIn−Zn−O等の無機材料薄膜の積層体、コンデンサ素子やセンサ等に用いられる樹脂硬化膜とTiO2等の無機材料薄膜の積層体、表面被覆材や燃料電池隔壁材等に用いられる樹脂硬化膜とZrO2等の無機材料薄膜の積層体などが挙げられる。特に、着色層、ブラックマトリックス層、保護膜、インクジェット方式用隔壁等の樹脂硬化膜と透明電極膜等の無機材料薄膜の積層体を有するカラーフィルターの製造方法として用いる場合には、無機材料薄膜にしわやクラックが生じにくく、表示不良が低減したカラーフィルターが得られる点から好ましい。
以下、本発明に係る樹脂硬化膜と無機材料薄膜の積層体の製造方法を詳細に説明する。
(1)樹脂硬化膜を形成する工程
当該工程には、基板上に硬化性樹脂組成物を、当該組成物の固形分中の有機成分のみからなる硬化物のISO−14577による押込み試験における弾性変形割合が40%以上となる条件で、硬化させる工程を少なくとも有する。
当該工程に用いられる硬化性樹脂組成物は、当該組成物の固形分中の有機成分のみからなる硬化物のISO−14577による押込み試験における弾性変形割合が40%以上となり得る有機成分を選択する必要がある。このような組成物は、バインダー成分を含む有機成分を種々選択して、該有機成分の塗膜を形成し、該塗膜を様々な条件で硬化させて、得られた硬化膜のISO−14577による押込み試験における弾性変形割合を求めて、該弾性変形割合が40%以上となるバインダー成分を中から選び、当該選ばれたバインダー成分を用いて、適宜他の成分を混合して調製することができる。このような組成物としては、上記本発明に係る硬化性樹脂組成物を好適に用いることができる。
本発明における樹脂硬化膜を形成する工程では、基板上に硬化性樹脂組成物を塗布して塗膜を形成する工程と、当該組成物の固形分中の有機成分のみからなる硬化物のISO−14577による押込み試験における弾性変形割合が40%以上となる条件で、前記塗膜を硬化させる工程を有する。
硬化性樹脂組成物の塗膜を形成する方法は特に限定されず、パターニングが必要な場合には、フォトリソグラフィー法、染色法、印刷法、電着法、インクジェット法等の方法が挙げられる。また、パターニングが不要な場合には、例えば、スピンコーター、ロールコーター、スプレイ、印刷等の方法が挙げられる。後述する例示のように、作製する塗膜にあわせて各種方法を用いることができる。
また、当該組成物の固形分中の有機成分のみからなる硬化物のISO−14577による押込み試験における弾性変形割合が40%以上となる硬化条件は、上述の有機成分を選択する際に有機成分の硬化膜のISO−14577による押込み試験における弾性変形割合が40%以上となった条件を適宜用いる。
中でも特に、微細なパターンを有する樹脂硬化膜を形成する場合には、前記樹脂硬化膜を形成する工程は、基板上の所定領域に硬化性樹脂組成物をインクジェット方式によって選択的に付着させて、インキ層を形成する工程と、当該インキ層を加熱及び/又は光照射することにより硬化させて、所定パターンの樹脂硬化膜を形成する工程を含むものであることが好ましい。インクジェット方式により基板表面に所定のパターンに合わせて吐出することにより、所定の微細パターンを正確且つ均一に形成することができるからである。
また、前記樹脂硬化膜を形成する工程は、前記硬化性樹脂組成物の架橋反応の進行が停止した後も、更に加熱を続行して弾性変形割合を増大させる工程を含むことが、無機材料薄膜にしわやクラックが生じにくい点から好ましい。
次に、インクジェット方式を用いて樹脂硬化膜を形成する工程を、カラーフィルターの製造方法を一例として、更に詳細に説明する。
先ず、図3(A)に示すようにカラーフィルターの透明基板を準備する。
次に、図3(B)に示すように、透明基板5の一面側の画素部間の境界となる領域にブラックマトリックス層6を形成する。ブラックマトリックス層6としては、本発明における硬化膜を形成する工程を用いて形成することができる。この場合、ブラックマトリックス層6としては、樹脂バインダー中にカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた層となる。後述する着色層7と同様にインクジェット方式を用いて形成しても良いが、フォトリソグラフィー法、印刷法等一般的に用いられている方法を用いることができる。
先ず、透明基板5上に、カーボンブラックや金属酸化物等の遮光性粒子を含有させた硬化性樹脂組成物を塗布し、必要に応じて乾燥させて感光性塗膜を形成し、当該塗膜をブラックマトリックス用のフォトマスクを介して、当該組成物の固形分中の有機成分のみからなる硬化物のISO−14577による押込み試験における弾性変形割合が40%以上となる条件で、露光、現像し、必要に応じて加熱処理を施すことによって、ブラックマトリックス層6を形成することができる。
ブラックマトリックス層の厚さは、金属薄膜の場合は1000〜2000Å程度とし、遮光性樹脂層の場合は、0.5〜2.5μm程度とする。
なお、カラーフィルターにおいて、ブラックマトリックス層6は、スパッタリング法、真空蒸着法等により厚み1000〜2000Å程度のクロム等の金属薄膜を形成し、この薄膜をパターニングすることにより形成しても良い。
次に、図3(C)に示すように、ブラックマトリックス層のパターンの幅方向中央に、ブラックマトリックス層よりも幅の狭い撥インク性隔壁20を必要に応じて形成する。このような撥インク性隔壁の組成は、撥インク性を有する樹脂組成物であれば、特に限定されるものではない。また、特に透明である必要はなく、着色されたものであってもよい。例えば、ブラックマトリックス層に用いられる材料であって、黒色の材料を混入しない材料等を用いることができる。具体的には、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ゼラチン、カゼイン、セルロース等の水性樹脂を1種または2種以上混合した組成物や、O/Wエマルジョン型の樹脂組成物、例えば、反応性シリコーンをエマルジョン化したもの等を挙げることができる。取扱性および硬化が容易である点等の理由から、光硬化性樹脂が好適に用いられる。また、この撥インク性隔壁は、撥インク性が強いほど好ましいので、その表面をシリコーン化合物や含フッ素化合物等の撥インク処理剤で処理したものでもよい。また、上記本発明に係る硬化性樹脂組成物も好適に用いることができる。
撥インク性隔壁のパターニングは、撥インク性樹脂組成物の塗工液を用いる印刷や、光硬化性塗工液を用いるフォトリソグラフィーにより行うことができる。撥インク性隔壁の高さは、上述したようにインクジェット法により着色する際にインクが混色することを防止するために設けられるものであることから、ある程度高いことが好ましいが、カラーフィルターとした場合の全体の平坦性を考慮すると、着色層の厚さに近い厚さであることが好ましい。具体的には、吹き付けるインクの堆積量によっても異なるが、通常は0.1〜2.0μmの範囲内であることが好ましい。
次に、R、G又はBの顔料が配合された本発明に係る各色の着色層形成用硬化性樹脂組成物を用意する。そして、図3(D)に示すように、透明基板5の表面に、ブラックマトリックス層6のパターンにより画成された各色の着色層形成領域21R、21G、21Bに、対応する色の着色層形成用硬化性樹脂組成物をインクジェット方式により吹き付けてインク層を形成する。インク層は赤色パターン、緑色パターン及び青色パターンがモザイク型、ストライプ型、トライアングル型、4画素配置型等の所望の形態で配列されるように形成される。このインクの吹き付け工程において、着色層形成用硬化性樹脂組成物は、ヘッド22の先端部で粘度増大を起こし難く、良好な吐出性を維持し続ける必要がある。この場合、所定の着色層形成領域内に、対応する色のインクを正確に、且つ、均一に付着させることができ、正確なパターンで色ムラや色抜けのない画素部を形成することができる。また、各色の着色層形成用硬化性樹脂組成物を、複数のヘッドを使って同時に基板上に吹き付けることもできるので、印刷等の方法で各色ごとに画素部を形成する場合と比べて作業効率を向上させることができる。
次に、図3(E)に示すように、各色のインク層23R、23G、23Bを乾燥し必要に応じてプリベークした後、当該組成物の固形分中の有機成分のみからなる硬化物のISO−14577による押込み試験における弾性変形割合が40%以上となる硬化条件で、露光及び/又は加熱することにより硬化させる。インク層を露光及び/又は加熱すると、硬化性樹脂組成物中に含まれる硬化性樹脂の架橋要素が架橋反応を起こし、インク層が硬化する。着色層の厚さは、光学特性等を考慮して、通常は0.1〜2.0μm程度とする。
次に、図3(F)に示すように、透明基板の着色層24R、24G、24Bを形成した側に、保護膜8を形成する。保護膜8の厚みは、使用される材料の光透過率、カラーフィルターの表面状態等を考慮して設定することができ、例えば、0.1〜2.0μmの範囲で設定することができる。保護膜は、透明な硬化性樹脂組成物を用いて、スピンコーター、ロールコーター、スプレイ、印刷等の方法により形成できる。例えば、スピンコーターにより500〜1500回転/分の範囲内で塗工し、当該組成物の固形分中の有機成分のみからなる硬化物のISO−14577による押込み試験における弾性変形割合が40%以上となる条件で、露光及び/又は加熱することにより硬化させて形成することが好ましい。
(2)前記樹脂硬化膜上に無機材料薄膜を形成する工程
本発明に係る樹脂硬化膜と無機材料薄膜の積層体の製造方法において、前記無機材料薄膜を形成する工程は、物理蒸着法、化学蒸着法、又はゾルゲル法等の方法を用いることができる。
無機材料薄膜は、上記方法のいずれを用いても真空による超低圧条件及び/又は高温条件下で形成されるので、樹脂硬化膜と無機材料薄膜の積層体を形成する場合には、当該無機材料薄膜形成時に無機材料薄膜にしわやクラックが入る問題があったが、上記工程において形成された樹脂硬化膜はシワやクラックを生じにくいため、当該樹脂硬化膜上に更に無機材料薄膜を形成しても、当該無機材料薄膜にしわやクラックが生じにくい。
従って、本発明に係る樹脂硬化膜と無機材料薄膜の積層体の製造方法において、前記無機材料薄膜を形成する工程は、180℃以上という高温の加熱工程を含むものであっても、当該無機材料薄膜にしわやクラックが生じにくい。無機材料薄膜を形成する工程に、180℃以上という高温の加熱工程を含む場合には、無機材料薄膜の透過率が向上したり、抵抗値が下がるなどの効果がある場合がある。
また、本発明に係る樹脂硬化膜と無機材料薄膜の積層体の製造方法において、得られる前記無機材料薄膜の表面粗度(Ra)は、10nm以下、更に8nm以下、特に5nm以下であることが好ましい。
本発明において、無機材料薄膜を形成するのに用いられる無機材料は、特に限定されない。例えば、上述のように、無機材料薄膜が上記透明電極膜である場合や上記反射防止膜である場合、IC用基板や耐摩耗性コーティングである場合、コンデンサ素子やセンサである場合、表面被覆材や燃料電池隔壁材である場合など、それぞれの場合に応じて適切な無機材料を用いることができる。
前記物理蒸着法としては、特に限定されないが、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等が挙げられる。また、前記化学蒸着法としては、特に限定されないが、例えば、熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法、MO(Metal organic)CVD法、EA(Electron assisted)CVD法等が挙げられる。また、前記ゾルゲル法とは、一般に金属アルコキシドからなるゾルを加水分解・重縮合反応により、流動性を失ったゲルとし、このゲルを加熱して金属酸化物を得る方法をいう。例えば、一般式:
YnSiX(4−n)
(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基、クロロアルキル基、イソシアネート基、もしくはエポキシ基、またはこれらを含む有機基であり、Xはアルコキシル基、アセチル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)
で示される珪素化合物の1種または2種以上を含む無機材料を、加水分解重縮合して無機材料薄膜を形成する方法等が挙げられる。
本発明において形成される無機材料薄膜が、上記カラーフィルターの透明電極膜である場合、上述したような材料を用いて、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法等の一般的な方法により形成され、必要に応じてフォトレジストを用いたエッチング又は治具の使用により所定のパターンとする。この透明電極の厚みは20〜500nm程度、好ましくは100〜300nm程度とすることできる。
また、本発明において形成される無機材料薄膜が、上記カラーフィルターの反射防止膜である場合、上述したような材料を用いて、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法等の一般的な方法により形成される。この反射防止膜の厚みは10nm〜500nm程度、好ましくは50nm〜200nm程度とすることできる。