JP4404466B2 - ダビット式揚艇装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、救助艇や高速等の搭載を吊り下げて母船に搬入出するダビット式揚装置の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ダビット式揚装置は、母船に対して回動するダビットと呼ばれる構造物を備え、このダビットを介して吊り下げられる搭載を母船の内側から外側へと振出すようなっている。
【0003】
ダビットの先端部からワイヤロープが繰り出され、ワイヤロープに搭載が吊り下げられる。ワイヤロープはダビットに取り付けられたシーブに掛け回されてウィンチへと案内される。揚装置は、ダビットとウィンチをそれぞれ駆動してワイヤロープに吊り下げられる搭載を母船に搬入出する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のダビット式揚装置は、ウィンチから送られるワイヤロープをダビットの回動基端部に沿って案内するシーブを備えるが、ダビットが回動するのに伴ってワイヤロープがシーブに巻き付けられて、ワイヤロープがダビットの回動先端部から引き込まれるため、ワイヤロープの張力が過大に高まったり、ウィンチに過大な負荷がかかる可能性がある。
【0005】
また、搭載を揚降する際に、ワイヤロープに吊り下げられた搭載が揺れたり、海上に降ろされて流されるような場合に、ワイヤロープがダビットの回動先端部に設けられたシーブの溝部やそのまわりの部材等にこすれて磨耗する可能性がある。
【0006】
本発明は上記の問題点を鑑みてなされたものであり、ダビット式揚装置において、ワイヤロープの取り回しを円滑にすることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、母船に対して回動するダビットと、ダビットの回動先端部から出入りするワイヤロープと、ワイヤロープを駆動するウィンチとを備え、ダビットを回動させてワイヤロープに吊り下げられる搭載を母船に搬入出するダビット式揚装置に適用する。
【0008】
そして、ウィンチから送られるワイヤロープをダビットの回動基端部に沿って案内するベースシーブを備え、ダビットの回動に伴ってワイヤロープが巻き取られるのを抑えるようにベースシーブの回転中心をダビットの回動中心に対してオフセットしたことを特徴とするものとした。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、ダビットの回動に伴ってダビットの回動先端部から出入りするワイヤロープの長さを略零としたことを特徴とするものとした。
【0010】
第3の発明は、第1、2の発明において、母船に対して回動するダビットと、ダビットの回動先端部から出入りするワイヤロープと、ワイヤロープを駆動するウィンチとを備え、ワイヤロープに吊り下げられる搭載艇を母船に搬入出するダビット式揚装置に適用する。
【0011】
そして、ダビットの回動先端部から出入りするワイヤロープを案内するトップシーブと、トップシーブの回転軸を支持する支持部材と、支持部材をダビットに対して回動可能に支持する軸受とを備えたことを特徴とするものとした。
【0012】
第4の発明は、第3の発明において、ワイヤロープにストッパを結合し、支持部材にストッパに当接してワイヤロープの移動を係止する係止部を設けたことを特徴とするものとした。
【0013】
【発明の作用および効果】
第1の発明によると、ベースシーブの回転中心をダビットの回動中心に対してオフセットしたため、ダビットの回動に伴ってワイヤロープが引き込まれることが抑えられる。このため、ワイヤロープの張力が過大に高まったり、ウィンチに過大な負荷がかかることを回避できる。この結果、ダビットの回動時に搭載をダビットに近づけて吊り下げることが可能となり、揚装置のコンパクト化がはかれる。
【0014】
第2の発明によると、ダビットの回動に伴ってダビットの回動先端部から出入りするワイヤロープの長さを略零としたため、ダビットの回動時にダビットと搭載の間でワイヤロープの長さを最小限にすることが可能となり、揚搭載装置のコンパクト化がはかれる。
【0015】
第3の発明によると、ワイヤロープに吊り下げられた搭載艇が揺れたり、海上に降ろされて流されるような場合に、トップシーブの支持部材がワイヤロープの動きに追従して首振り作動し、ワイヤロープがトップシーブの溝部や支持部材等にこすれることを防止できる。
【0016】
第4の発明によると、操作者がスイッチ操作を忘れたり、故障によりウィンチの巻き取りを自動的に停止する制御が行われなかった場合に、ストッパが支持部材に当接することにより、ワイヤロープがそれ以上に引き込まれず、搭載がダビットに衝突することを回避できる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0018】
図1〜図4に示すように、母船1の甲板2上には搭載4を載せるレスト11が設置され、この搭載艇4を吊り下げて搬入出するダビット式揚装置5を備える。
【0019】
装置5は甲板2上から振出されるダビット6と、ダビット6を駆動する油圧シリンダ8と、ダビット6の回動先端部から繰り出される一対のワイヤロープ7と、各ワイヤロープ7を巻き取るウィンチ9とを備える。各ワイヤロープ7の先端にはボール状のフック19が結合され、このフック19が搭載4の前後部に設けられたジョイントに対して着脱可能に連結される。
【0020】
ダビット6は、その基端部が甲板2上に回動可能に連結される一対のクレードル12と呼ばれる支柱を備え、各クレードル12の回動先端部からワイヤロープ7が繰り出される。各クレードル12の基端部はピン15を介して回動可能に支持される。
【0021】
ダビット6は各クレードル12を梁状に連結する連結ビーム13,14を備え、各クレードル12が連結ビーム13,14を介して一体化する。一方の連結ビーム13は各クレードル12の先端部を連結し、他方の連結ビーム14は各クレードル12の途中を連結する。
【0022】
ダビット6と甲板2の間に一対の油圧シリンダ21が各クレードル12と並んで設けられる。各油圧シリンダ21はその伸縮作動によってダビット6を回動させる働きをするとともに、図4に示す振出状態で各油圧シリンダ21が伸びきって各クレードル12を甲板2に対して支持する働きをする。
【0023】
各油圧シリンダ21は図示しない油圧配管を介して油圧源からの作動油が導かれることによりそのシリンダ25からロッド26が突出して伸張し、作動油がタンクへと戻されることによりシリンダ25にロッド26が引き込まれて収縮する。
【0024】
各クレードル12は搭載4を抱え込むようにコの字状に曲折して形成される。各クレードル12はその回動基端部から略水平方向に延びる水平部12aと、この水平部12aから略直立して延びる直立部12bと、直立部12bから斜め上方に傾斜して延びる傾斜部12cとを有する。
【0025】
図1、図2に示すように、各連結ビーム13,14は各クレードル12の側部から突出する接合フランジ部16,17と、各接合フランジ部16,17の間に渡される梁部材46,47とによって形成される。各梁部材46,47は箱形の断面を持つ梁状に形成されるが、これに限らず円形の断面を持つパイプ材を用いてもよい。
【0026】
各接合フランジ部17は各クレードル12の直立部12bと傾斜部12が交わる曲折部12dに沿って箱状に形成される。各クレードル12は各接合フランジ部17によって曲げ剛性を高められる。
【0027】
各油圧シリンダ21は甲板2と各接合フランジ部17の間に設けられる。各油圧シリンダ21はシリンダ25の基端部がピン22を介して甲板2上に回動可能に連結され、ロッド26の先端部がピン23を介して接合フランジ部17に連結される。各接合フランジ部17にはピン23を支持するブラケット24が突出して形成される。
【0028】
各油圧シリンダ21の回動中心となる各ピン22は、甲板2上においてダビット6の回動中心となる各ピン15より船体内側に配置される。これにより、油圧シリンダ21が伸張すると、ダビット6が船体外側へと回動する。
【0029】
図3に示すように各油圧シリンダ21が最も収縮することにより格納位置に駆動され、各クレードル12の水平部12aが甲板2上の受け部材20に着座する。この格納状態で各油圧シリンダ21は各クレードル12の直立部12bと略平行に並ぶように配置される。
【0030】
上記格納状態から各油圧シリンダ21が最大に伸張することにより、図4に示すようにダビット6が角度θだけ回動して振出位置に保持される。この振出状態では各クレードル12に作用する荷重がストロークの限界まで伸張した各油圧シリンダ21を介して甲板2に作用する。
【0031】
各クレードル12の側部には4つのシーブ(滑車)31〜34が取り付けられる。各ワイヤロープ7は各シーブ31〜34に掛け回されることにより各クレードル12に沿って案内される。
【0032】
ウィンチ9から繰り出される一方のワイヤロープ7は甲板2上に取り付けられたシーブ27,28を経由してクレードル12の回動基端部に取り付けられたベースシーブ34へと導かれる。ウィンチ9から繰り出される他方のワイヤロープ7は甲板2上に取り付けられたシーブ29,30,35を経由してクレードル12の回動基端部に取り付けられたベースシーブ34へと導かれる。
【0033】
そして本発明の要旨とするところであるが、各ベースシーブ34は、その回転中心がクレードル12の回動中心となるピン15より甲板2上のシーブ27,35に近接するようにオフセットして設けられる。これにより、ダビット6が振出位置から格納位置へと回動する過程でワイヤロープ7がトップシーブ31を介して引き込まれることが抑えられる。
【0034】
具体的には図5に示すように、ダビット6が振出位置から格納位置へと角度θだけ回動する過程で、ワイヤロープ7がベースシーブ34に長さΔLだけ巻き付けられるが、甲板2上のシーブ27,35とクレードル12のベースシーブ34間の距離がL1からL2へと縮小する構成とし、L1−L2がΔLと略等しくなるようにピン34に対するベースシーブ34のオフセット量Sを設定する。これにより、ダビット6が振出位置から格納位置へと回動する過程でワイヤロープ7がトップシーブ31を介して引き込まれる長さを略零とする。
【0035】
また、図6〜図8に示すように、トップシーブ31の回転軸となるピン45を支持する支持部材42が設けられ、この支持部材42はクレードル12に対して軸受41を介して回動可能に支持される。
【0036】
支持部材42はトップシーブ31を挟むように配置される2枚のサイドプレート48を有し、各サイドプレート48に渡ってピン45が支持される。
【0037】
ストッパ10に当接してワイヤロープ7の移動を係止する係止部として、各サイドプレート48の外周端には各エンドプレート43が固着され、ワイヤロープ7は各エンドプレート43の間を挿通する。操作ミス等によってワイヤロープ7が限度を超えて引き込まれようとするとき、ストッパ10が当接することによりワイヤロープ7がそれ以上に引き込まれないようになっている。
【0038】
エンドプレート43には図6に示すようにクレードル12の最大振出位置にある状態でストッパ10に対峙する段部43aが形成されるとともに、クレードル12の格納位置にある状態でストッパ10に対峙する凹部43bが形成される。操作ミス等によってワイヤロープ7が限度を超えてに引き込まれようとするとき、ストッパ10が段部43aまたは凹部43bに当接するようになっている。
【0039】
支持部材42はエンドプレート43とサイドプレート48を結ぶ複数のサイドリブ44を有し、その剛性が確保される。
【0040】
ウィンチ9は油圧モータ39によって駆動される。これにより、ウィンチ9は電動モータによって駆動される構造に比べて慣性質量が低減され、ストッパ10エンドプレート43に当接すると速やかに停止するようになっている。
【0041】
なお、ワイヤロープ7を巻き取るウィンチ9の制御は操作者によって行われるが、ストッパ10がエンドプレート43に当接する前に図示しないリミットスイッチが作動すると、ウィンチ9の巻き取りが自動的に停止するようになっている。
【0042】
以上のように構成される本発明の実施の形態につき、次に作用を説明する。
【0043】
図4に示す振出状態で、ワイヤロープ7に吊り下げられた搭載4は舷側3から外側に離れ、搭載4を海上で揚降することができる。
【0044】
ワイヤロープ7に吊り下げられた搭載4が前後方向に揺れたり、海上に降ろされて前後方向に流されるような場合に、トップシーブ31の支持部材42がワイヤロープ7の動きに追従して首振り作動し、ワイヤロープ7がトップシーブ31の溝部や支持部材42のサイドプレート48等にこすれることを防止できる。
【0045】
ワイヤロープ7に吊り下げられた搭載4を引き上げる際に、操作者がスイッチ操作を忘れたり、故障によりウィンチ9の巻き取りを自動的に停止する制御が行われなかった場合に、ストッパ10がエンドプレート43に当接することにより、ワイヤロープ7がそれ以上に引き込まれず、搭載4がダビット6に衝突することを回避できる。
【0046】
ワイヤロープ7に吊り下げられた搭載4を引き上げた後、ダビット6を図4に示す振出位置から図3に示す格納位置へと回動する。各ベースシーブ34の回転中心がクレードル12の回動中心となるピン15に対してオフセットされるため、ダビット6の回動に伴ってワイヤロープ7がトップシーブ31を介して引き込まれることがなく、ワイヤロープ7の張力が過大に高まったり、ウィンチ9に過大な負荷がかかることを防止できる。また、従来のようにワイヤロープ7のトップシーブ31からストッパ10までの長さを大きくする必要がなく、揚装置5のコンパクト化がはかれる。
【0047】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示すダビット式揚装置の平面図。
【図2】同じく側面図。
【図3】同じく格納状態における正面図。
【図4】同じく振出状態における正面図。
【図5】同じくヘースシーブの配置を示す図。
【図6】同じく支持部材の側面図。
【図7】同じく支持部材の斜視図。
【図8】同じく支持部材の断面図。
【符号の説明】
1 母船
2 甲板
4 搭載
5 揚装置
6 ダビット
7 ワイヤロープ
9 ウィンチ
12 クレードル
15 ピン(ダビットの回動中心)
31 トップシーブ
34 ベースシーブ
42 支持部材
43 エンドプレート
45 ピン(トップシーブの回動中心)

Claims (4)

  1. 母船に対して回動するダビットと、前記ダビットの回動先端部から出入りするワイヤロープと、前記ワイヤロープを駆動するウィンチとを備え、前記ダビットを回動させて各ワイヤロープに吊り下げられる搭載を母船に搬入出するダビット式揚装置において、前記ウィンチから送られる前記ワイヤロープを前記ダビットの回動基端部に沿って案内するベースシーブを備え、前記ダビットの回動に伴って前記ワイヤロープが巻き取られるのを抑えるように前記ベースシーブの回転中心を前記ダビットの回動中心に対してオフセットしたことを特徴とするダビット式揚装置。
  2. 前記ダビットの回動に伴って前記ダビットの回動先端部から出入りする前記ワイヤロープの長さを略零としたことを特徴とする請求項1に記載のダビット式揚装置。
  3. 前記母船に対して回動するダビットと、前記ダビットの回動先端部から出入りするワイヤロープと、前記ワイヤロープを駆動するウィンチとを備え、前記ワイヤロープに吊り下げられる搭載を前記母船に搬入出するダビット式揚装置において、前記ダビットの回動先端部から出入りする前記ワイヤロープを案内するトップシーブと、前記トップシーブの回転軸を支持する支持部材と、前記支持部材を前記ダビットに対して回動可能に支持する軸受とを備えたことを特徴とする請求項1または2に記載のダビット式揚装置。
  4. 前記ワイヤロープにストッパを結合し、前記支持部材に前記ストッパに当接して前記ワイヤロープの移動を係止する係止部を設けたことを特徴とする請求項3に記載のダビット式揚装置。
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