JP4390237B2 - 感光性化合物及び感光性樹脂 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な感光性化合物及び感光性樹脂に関し、特に、例えば、カラーブラウン管用、スクリーン印刷用、その他表示管用、固定化酵素用、PS板用、エッチングレジスト用、サンドブラスト用などの用途で使用可能な感光性化合物及び感光性樹脂に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、感光性ユニットとして、未変性ポリビニルアルコールにスチリルピリジウム塩化合物又はスチリルキノリウム塩化合物などの第4級アンモニウム塩を縮合反応させた感光性樹脂を含有するもの(以下、PVA−SbQ系レジストという)が知られている(特公昭56−5761号公報、特公昭56−5762号公報、特開昭56−11906号公報)。
【0003】
かかるPVA−SbQ系レジストは、感光速度が速い等の利点を有しているが、イオン的にはカチオン性のものに限定されてしまうので、用途及び組成物の制限が出てくる。また、露光光源として、水銀灯(365nm)の他、メタルハライド(400nm)の光源を用いるため、感光波長を長波長に設定するには、4−メチルキノリン等を使用する必要があり、コスト高になるという欠点がある。従って、例えば、カラーブラウン管用、スクリーン印刷用、その他表示管用などの用途においては、400nmという長波長で感光性が良好で、水系溶媒に溶解乃至分散できるものが要望されている。また、特に、蛍光体パターン形成用途としては、バインダポリマーとしてポリビニルアルコール(以下、PVAと略す)が優れているので、PVA系レジストで、PVA−SbQ系レジストより感光波長が長く、且つイオン性についても用途によりアニオン、ノニオンの使い分けが可能な感光性樹脂が要望されている。
【0004】
そこで、本発明者等はこのような要望を満たす感光性樹脂として、変成又は未変成ポリビニルアルコールにロダニン骨格を有するアジド化合物をアセタール化反応で導入した感光性樹脂(以下、PVA−ARB系レジストという)を開発して特許出願した(特開平10−310769号公報)。この出願で提案されたPVA−ARB系レジストは、長波長で感光可能な高感度の優れたフォトレジストである。また、かかるPVA−ARB系レジストの感光基ユニットとなるロダニン骨格及びアセタール基を有するアジド化合物の合成工程には、アセタール基を有するアミンをロダニン環化する反応が含まれる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、アセタール基を有するアミンは比較的高価であり、且つ、ロダニン環化反応の合成収率が高いものではないため、製造コストが高いという欠点がある。また、上述したPVA−ARB系レジストの感光基ユニットは水溶性が低いため、水溶性ポリマーへの導入量が制限され、且つ、導入量を増やすと未露光部の水現像性の悪化を招き、さらに導入反応時に使用する水溶媒に溶解するまでに時間がかかるという製造上の問題点も有している。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑み、新規な感光性樹脂が調製可能な感光性化合物及びこれを用いた感光性樹脂を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決する本発明の感光性化合物は、下記一般式(III)又は(V)で示されるユニットを有することを特徴とする。
【0008】
【化10】
【0009】
ここで、R 4 はC6までのアルキル基,及び二つのR 4 が一緒になって形成する−(CH 2 ) m −(mは2又は3)から選択される。また、nは1,2又は3である。さらに、R 5 は水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。アルキル基としてはC 1 〜C 5 までのアルキル基が好ましい。アリール基又はアラルキル基としてはフェニル基、ナフチル基、ベンジル基などが挙げられる。また、Yは、下記から選択され、下記R 2 又はR 3 は、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表し、lは1〜5の整数である。
【0010】
【化17】
【0011】
また、Arは下記から選択され、下記Xは、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、アルキル基がC1〜C5のモノアルキルアンモニウム、ジアルキルアンモニウム、トリアルキルアンモニウム、又はテトラアルキルアンモニウムを表す。
【0012】
【化18】
【0017】
また、特に、本発明の感光性樹脂は、下記一般式(VII)で示される構成単位を有することを特徴とする。
【0018】
【化20】
【0019】
ここで、nは1,2又は3であり、R5は水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。アルキル基としてはC1〜C5までのアルキル基が好ましい。アリール基又はアラルキル基としてはフェニル基、ナフチル基、ベンジル基などが挙げられる。また、Y及びArは上述したものと同様である。
【0020】
また、本発明の感光性組成物は、本発明の感光性樹脂を含有することを特徴とする。
【0021】
さらに、本発明の感光性化合物の製造方法は、アジド基を有する感光性化合物又は感光性樹脂の製造方法において、下記式(1)で示される反応のステップを含むことを特徴とする。
【0022】
【化21】
【0023】
ここで、Rzはアセタール基又はアルデヒド基を有する置換基である。なお、R1 は水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表し、アルキル基としてはC 1 〜C 5 までのアルキル基が好ましい。アリール基又はアラルキル基としてはフェニル基、ナフチル基、ベンジル基などが挙げられる。Y及びArは上述したものと同様である。
【0024】
また、本発明の感光性樹脂の製造方法は、さらに、前記アセタール基又はアルデヒド基をポリ酢酸ビニルけん化物に反応させるステップを有することができる。
【0025】
本発明者らは上述した課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、アセタール基等の種々の置換基及びアミド結合部位を有するロダニン化合物と、アジド基を有する水溶性アルデヒド又はアジド基を有する芳香環を具備するアルデヒドとを縮合することにより、新規なロダニン骨格を有するアジド化合物とすることを知見し、本発明を完成させた。
本発明に係る下記一般式(I)で表されるユニットを有する感光性化合物又は感光性樹脂は、アジドタイプの感光性を有し、長波長で感光可能で且つ安定性の高いものである。また、かかるユニットを導入することにより比較的容易に種々の感光性化合物又は感光性樹脂が設計できる。ユニットにアミド部位を有しているため、水溶性が高く、水現像性も良好である。
【0026】
【化15】
【0027】
かかるユニットの代表的な例として下記のものを挙げることができる。
【0028】
【化22】
【0029】
本発明に係る上記一般式(I)で表されるユニットを有する感光性化合物は、一級アミン又は二級アミンを有する化合物又はポリマーに、N置換基にカルボン酸基を有するロダニン化合物の、酸クロライド又は酸の活性化物を反応し、その後、上記式(1)の方法でアジド化合物を縮合する方法、又は、N置換基にカルボン酸基を有するロダニン化合物を上記式(1)の方法で縮合後、カルボン酸基を、酸クロライド又は酸の活性化物として反応させることで得られる。
【0030】
N置換基にカルボン酸基を有するロダニン化合物は、各種アミノ酸化合物のロダニン化により得ることができる。
【0031】
ロダニン化反応は、各種アミノ酸を、アンモニア、トリエチルアミン、NaOH、KOH等の塩基存在下で二硫化炭素と反応させて、ジチオカルバミン酸塩を合成し、続いて、クロロ酢酸ナトリウム又はクロロ酢酸エチルと反応させ、さらに塩酸、硫酸等の酸性条件下で環化反応させることにより得ることができる。この場合の溶媒は、使用するアミノ酸により、水、エーテル、DMF等を選択して使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0032】
原料となるアミノ酸化合物としては、グリシン、β−アラニン、DL−メチオニン、6−アミノカプロン酸、L−グルタミン、L−チロシン、フェニルアラニン、ロイシン、バリン、アスパラギン、トリオニン、アミノ安息香酸等が挙げられる。
【0034】
カルボン酸基を酸クロライドとする試薬、又は、アミド化又はエステル化するように活性化する試薬としては、例えば、塩化チオニル、塩化オキザリル、ジシクロヘキシルカルボジイミド、カルボニルイミダゾール、ヨウ化−2−クロロ−1−メチルピリジニウム塩、塩化トリメチルアセチル、ジスクシンイミドカーボナート、燐酸系縮合剤等を挙げることができる。
【0035】
また、アミド化材料となる一級アミン、又は二級アミンを有する化合物は広く使用可能であるが、あえて例を挙げると、アニリン、スルファニル酸、アミノ安息香酸、アリルアミン、アミノ酸類、N−フェニルアミノブチルアルデヒドジメチルアセタール、N−ベンジルアミノブチルアルデヒドジメチルアセタール、アミノブチルアルデヒドジメチルアセタール、N−メチルアミノアセトアルデヒドジメチルアセタール、アミノアルデヒドジメチルアセタール、エチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジアミノプタン、ジアミノヘキサン、ジアミノヘプタン、フェニレンジアミン、ポリビニルアミン、ジアミノシロキサン、ジェファーミン(ポリエーテルアミン、D−400、ED−600、ED−900、EDR−148)などが挙げられる。
【0036】
本発明の感光性化合物の中では、特にポリビニルアルコール骨格にアセタール化反応により感光基を導入できる上記一般式(III)又は(V)に示した化合物が、重クロム酸フリーの感光材として、低公害化、高感度感光性ポリマーとして有用である。
【0037】
この場合は、アミド化材料して、アセタールユニットと、一級アミン又は二級アミンとを有する化合物が好ましい。代表的な例としては、下記の化合物が挙げられる。
【0038】
【化23】
【0039】
本発明の上記式(III)又は(V)で示される感光性化合物は、ポリ酢酸ビニルけん化物、又はビニルアルコールと他のビニル化合物との水溶性共重合体に、酸触媒下で反応させることにより、本発明の上記式(VII)で示される感光性樹脂とすることができる。
【0040】
ここで用いられるポリ酢酸ビニルけん化物としては、例えば、平均重合度200〜5000、けん化度60〜100%のものが好適である。また、このポリ酢酸ビニルけん化物としては、例えば、親水基変性、アニオン変性、カチオン変性、又はアセトアセチル基のような反応基変性などの変性酢酸ビニルけん化物を用いることができる。
【0041】
ここで、平均重合度が200より小さい場合には、十分な感度が得られ難く、また、平均重合度が5000より大きい場合には、感光性樹脂の溶液の粘度が高くなり、塗布性が悪くなるという不具合が発生し易く、さらに、粘度を下げるために濃度を低くすると、所望の塗布膜厚を得るのが困難となる。また、けん化度が60%より低いと十分な水溶性及び水現像性が得られ難い。
【0042】
一方、ビニルアルコールと他のビニル化合物との共重合体としては、例えば、平均重合度200〜5000のものが使用できる。なお、ビニルアルコールと共重合され得るビニルモノマーとしては、例えば、N−ビニルピロリドン、アクリルアミド等を挙げることができる。
【0043】
このようなポリ酢酸ビニルけん化物類と、上記式(III)又は(V)で示される感光性化合物とを酸触媒存在下で反応させて、上記式(VII)で示される感光性樹脂を得る場合、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類又はこれらのアセタール類を同時に反応させることもできる。
【0044】
ポリ酢酸ビニルけん化物類に対する一般式(III)又は(V)の感光性化合物の導入率は、モノマー単位当たり、0.3〜5モル%程度が好ましい。
【0045】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を各実施例に基づいて詳細に説明する。
【0046】
(実施例1)下記式で示されるロダニン−3−酢酸の合成
グリシン19g、水酸化ナトリウム20gを、水50gに溶解し、10℃に冷却した。攪拌下に二硫化炭素19gを30分かけて滴下し、その後、20℃で3日間反応した。次に、クロロ酢酸ナトリウム29gを水60gに溶解した溶液を15分で滴下し、その後、室温で24時間反応した。得られた反応混合物に濃塩酸90gと水32gとを加えて、80℃で5時間反応した。反応終了後、析出した目的物の結晶を濾別し、冷水で洗浄した後、50℃で一昼夜乾燥した。得られた結晶は24gで、液体クロマトグラフィー純度は98%であった。
【0047】
【化24】
【0048】
(実施例2)[3−(N−(4,4’−ジメトキシブチル)カルバモイル)メチル]ロダニンの合成
実施例1で合成したロダニン−3−酢酸19gと、アミノブチルアルデヒドジメチルアセタール13g、ヨウ化2−クロロ−1−メチルピリジニウム26gをアセトニトリル500mlに分散溶解し、10℃でトリエチルアミン10gを30分で滴下し、その後、10℃で2時間反応した。さらに室温で22時間反応し、下記式に示す目的物のアセトニトリル溶液を得た。
【0049】
【化25】
【0050】
(実施例3)[5−(4−アジドベンジリデン−2−スルホン酸ナトリウム)−3−(N−4,4’−ジメトキシブチル)カルバモイル)メチル]ロダニン
4−アジド−ベンズアルデヒド−2−スルホン酸ナトリウム25gを水1000mlに溶解した水溶液を調製し、これを10℃に冷却した後、これを実施例2のアセトニトリル溶液にゆっくりと加えた。その後、室温で3日間反応した。水4200mlを添加した後、NaCl741gを加えて、目的物を塩析し、さらに5時間撹拌後、目的物を濾別し、アセトンにて洗浄した。得られた結晶は43g(収率80%)、液体クロマトグラフィー純度は99%であった。また、吸収極大は,388nmであった。
【0051】
また、NMRデータを以下に示す。
1H−NMR(DMSO−d6):δ=1.38−1.45(m,2H);δ=1.46−1.48(m,2H);δ=3.04−3.06(m,2H);δ=3.18(s,6H);δ=4.28−4.31(m,1H);δ=4.60(s,2H);δ=7.25−7.27(m,1H);δ=7.52−7.55(m,2H);δ=8.28−8.34(m,1H);δ=8.71(s,1H)。13C−NMR(DMSO−d6):δ=24.5;29.8;39.3;46.4;52.8;103.9;118.2;120.5;122.5;126.8;130.6;132.8;141.4;149.8;164.6;166.5;193.9。
【0052】
【化26】
【0053】
(実施例4)ロダニン−3−アセチルクロリドの合成
実施例1で合成したロダニン−3−酢酸19gと、塩化オキザリル32gとをベンゼン400mlに加え、20℃で2時間反応し、その後、還流条件下で2時間反応した。溶媒を留去した後、アセトニトリル500mlを加え、下記式に示される目的物のアセトニトリル溶液を得た。
【0054】
【化27】
【0055】
(実施例5)[3−(N−(4,4′−ジメトキシブチル)カルバモイル)メチル]ロダニンの合成
実施例4で合成したロダニン−3−アセチルクロリドのアセトニトリル溶液に、アミノブチルアルデヒドジメチルアセタール13gを加え、10℃でトリエチルアミン10gを30分で滴下し、その後、30〜40℃で2時間反応した。さらに、室温で22時間反応し、下記式に示す目的物のアセトニトリル溶液を得た。
【0056】
【化28】
【0057】
(実施例6)[5−(4−アジドベンジリデン−2−スルホン酸ナトリウム)−3−(N−(4,4′−ジメトキシブチル)カルバモイル)メチル]ロダニンの合成
実施例5の化合物を実施例3と同様に4−アジド−ベンズアルデヒド−2−スルホン酸ナトリウムと反応し、同様な目的物を得た。
【0058】
(実施例7)[5−(4−アジドベンジリデン−2−スルホン酸ナトリウム)−3−(N−(4,4′−ジメトキシブチル)カルバモイル)メチル]ロダニンの水に対する溶解度およびモル吸光係数の測定
実施例3又は6で得られた化合物と、下記式の化合物(特開平10−310769号公報の実施例2により得られる)とについて、25℃における水に対する溶解度を測定した。この結果、水100gに対して、前者は5.4g、後者は1.1gそれぞれ溶解し、前者はアミド結合部位を有することにより水への溶解度が約5倍に向上することが確認された。さらに水溶媒中でUVスペクトルを測定し、吸収極大におけるモル吸光係数εを調べた。その結果、前者は31120(λmax=388nm)、後者は30233(λmax=388nm)となり、ほぼ同様であることを確認した。
【0059】
【化29】
【0060】
(実施例8)[感光性PVAの合成]
ポリビニルアルコール(EG−30,日本合成製)100gを水900gに溶解し、これに、実施例3又は6の化合物11g、燐酸3gを加え、70℃で24時間反応した。アセタール化率は97%であった。燐酸をイオン交換処理により除去し、感光基がPVAに対して、1.0モル%導入された感光液を調製した。
【0061】
(試験例)
実施例8の感光液を5%に希釈し、ガラス版に膜厚1.0μm塗布した。この塗布膜のUVスペクトルを測定したところ、吸収極大は391nmであった。さらに、超高圧水銀灯(紫外線照度5mW/cm2:UV−35(オーク製照度計))にて、1mJ露光した。ついで、水現像した。この結果、現像残りのない、50μmの線幅がきれいに現像されていることを確認した。
【0062】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、アセタール基及びアミド結合部位を有するロダニン化合物と、アジド基を有する芳香族アルデヒドとを縮合することにより、新規なロダニン骨格を有する、長波長で感光可能な新規化合物を提供することができる。また、この感光性ユニットを水溶性ポリマーに導入することにより、、水現像性に優れた高感度のフォトレジストを提供することが可能となる。
Claims (5)
- 下記一般式(III)又は(V)で示されることを特徴とする感光性化合物。
- 下記一般式(VII)で示される構成単位を有することを特徴とする感光性樹脂。
- 請求項2の感光性樹脂を含有することを特徴とする感光性組成物。
- アジド基を有する感光性化合物の製造方法において、下記反応式(1)で示されるステップを含むことを特徴とする感光性化合物の製造方法。
- 請求項4において、さらに、前記アセタール基又はアルデヒド基をポリ酢酸ビニルけん化物に反応させるステップを有することを特徴とする感光性樹脂の製造方法。
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