JP4362878B2 - 熱可塑性芳香族ポリスルホン樹脂 - Google Patents

熱可塑性芳香族ポリスルホン樹脂 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性芳香族ポリスルホン樹脂に関するものであり、詳しくは特定の還元粘度を有し、かつ重合体反復単位あたりにおけるフェノール性ヒドロキシル基とその金属塩の個数の総和が、特定の値を有することを特徴とする熱可塑性芳香族ポリスルホン樹脂に関するものである。
【0002】
【従来の技術、発明が解決しようとする課題】
芳香族ポリスルホン樹脂は、耐熱性、難燃性、耐薬品性などに優れるのみならず金属、ガラス、セラミック、種々の樹脂、炭素化合物などの素材との密着性が良好であるため、各種コーティング、接着剤、複合材の構成材料として使用されている。 その使用方法としては、例えば有機溶媒溶液を基材に塗布した後、加熱処理することにより高分子量化、不活性化せしめる方法等が採用されている。
【0003】
なかでもフェノール性ヒドロキシル基を有する芳香族ポリスルホン樹脂が、このような用途に用いられ、例えば還元粘度(RV)と、重合体反復単位100個あたりに含まれるフェノール性ヒドロキシル基とその金属塩の個数の総和が、それぞれ0.41と0.9(特開昭47-1087号公報)、0.49と1.02(特開昭50-40700号公報)、0.16と12(特開昭52-16535号公報)、0.53と1(特開昭59-191767号公報)である熱可塑性芳香族ポリスルホン樹脂などが知られている。
しかしながら、これら熱可塑性芳香族ポリスルホン樹脂は、加熱処理する際の条件が厳しいすなわち高温で長時間を要するという問題点、更には有機溶媒溶液として基材に塗布する場合、塗膜の表面荒れ、接着性不良等の欠陥の原因となる不溶成分が生成するという問題点があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、このような問題点を解決すべく鋭意検討した結果、特定の還元粘度を有し、かつ重合体反復単位あたりにおけるフェノール性ヒドロキシル基とその金属塩の個数の総和が特定の値を有する熱可塑性芳香族ポリスルホン樹脂を使用すれば、温和な加熱条件下でも高分子量化、不活性化せしめることができるのみならず溶媒に溶解した際に、種々の欠陥を惹起せしめる不溶成分の生成も防止し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0005】
すなわち本発明は、0.36〜0.45dl/gの還元粘度(RV)を有し、かつ、重合体反復単位100個あたりに含まれるフェノール性ヒドロキシル基とその金属塩の個数の総和Aが1.6以上であることを特徴とする実用的に優れた熱可塑性芳香族ポリスルホン樹脂を提供するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の熱可塑性芳香族ポリスルホン樹脂は0.36〜0.45dl/gの還元粘度(RV)を有するものである。
ここで、還元粘度(RV)は、オストワルド型粘度管を使用して、25℃で、樹脂溶液の濃度がN,N-ジメチルホルムアミド溶液中1.0g/100mlで測定した値である。
芳香族ポリスルホン樹脂は、還元粘度が0.45dl/gよりも高いと、溶媒に不溶で高温でも溶融しないゲル状の成分が生成し、コーティング、接着剤、複合材として使用する際の欠陥の原因となり、還元粘度が0.36dl/gよりも低いと、加熱処理による分子量増加効果が低下し、処理に高温、長時間を要するようになる。還元粘度が0.38〜0.45dl/gであることが加熱処理時の分子量の増加効果が増大するので好ましい。
【0007】
また、本発明の熱可塑性芳香族ポリスルホン樹脂は、重合体反復単位100個あたりに含まれるフェノール性ヒドロキシル基とその金属塩の個数の総和Aが1.6以上である。
ここで、総和Aが1.6未満であると、加熱処理による分子量増加効果が低下し、処理に高温、長時間を要するようになる。分子量の増加効果を考慮すると、総和Aと還元粘度(RV)とが下式を満足することが好ましい。
0.45/(RV)1.56≦A≦0.74/(RV)1.56
【0008】
また本発明の芳香族ポリスルホン樹脂における重合体反復単位は、下式(1)である。
(−Ph−SO 2 −Ph−O−) (1)
【0010】
かかる本発明の芳香族ポリスルホン樹脂は公知の方法により製造されたものの中から選定し得る。
また還元粘度がいずれも0.45dl/g以下のものであれば、樹脂どうしを混合することにより、還元粘度、ならびに、重合体反復単位100個あたりに含まれるフェノール性ヒドロキシル基とその金属塩の個数を制御することができる。この場合の混合手段としては得に制限はなく、例えば粉末どうしの混合、溶液を用いた混合などが挙げられる。
【0011】
ここで、公知の製造方法としては、例えば対応する2価のフェノールとジハロゲノベンゼノイド化合物との混合物とアルカリ金属の炭酸塩、重炭酸塩またはそれらの混合物とを用い、有機高極性溶媒中で重合する方法が挙げられる。
ジハロゲノベンゼノイド化合物の使用量は、2価フェノールに対して、80〜110モル%の範囲内で使用するのが好ましい。
また、有機高極性溶媒としては、例えばジメチルスルホキシド、1-メチル-2-ピロリドン、スルホラン(1,1-ジオキソチラン)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、ジエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、ジフェニルスルホンなどが挙げられる。
【0012】
アルカリ金属の炭酸塩または重炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムまたはそれらの重炭酸塩等が好ましく用いられる。
その使用量は、フェノール基に対して少なくとも0.95当量のアルカリ金属原子数となるような量であるが、フェノール基に対してアルカリ金属原子が0.001〜0.25当量過剰になるような量を用いることが好ましい。
【0013】
本発明における熱可塑性芳香族ポリスルホン樹脂の粒径は、平均粒径が50〜2000μm程度であることが好ましい。50μmよりも小さいと、溶液加工する際、特に20wt%以上の濃度に溶解させようとした場合に粉末同士が凝集、凝集塊がゲル化して不溶成分を生成する傾向にありまた2000μmよりも大きいと、溶解に長時間を要する傾向にある。より好ましくは100〜1000μmである。
【0014】
本発明の熱可塑性芳香族ポリスルホン樹脂を有機溶媒溶液として使用する場合の溶媒としては、この樹脂を溶解する溶媒であれば特に制限されるものではないが、通常、塩化メチレン、1,1,2-トリクロロエタン、N,N-ジメチルホルムアミド、1-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ピリジン、キノリン、アニリン、o-クロロフェノール、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド、アニソール、γ―ブチロラクトン、ジオキソラン等が使用される。
また熱可塑性芳香族ポリスルホン樹脂としては、重合体反復単位100個あたりに含まれるフェノール性ヒドロキシル基の金属塩の個数が、重合体反復単位100個あたりに含まれるフェノール性ヒドロキシル基とその金属塩の個数の総和Aの25%以下であることが好ましく、このことにより、粘度の低い有機溶媒溶液が得られる。
【0015】
溶媒は単独でも、2種以上の混合溶媒でも良く、むしろ表面平滑性に優れたコーティングの作成、溶液安定性に優れた加工中間体を製造する際には積極的に2種以上の混合溶媒を使用することが好ましい。この場合、芳香族ポリスルホンの溶解性に影響しない範囲であれば、上記以外の溶媒を併用してもなんら差し支えがない。
【0016】
有機溶媒溶液の調製方法には特に制約はなく、樹脂に溶媒を添加しても、溶媒に樹脂を添加しても良い。
また、本発明では製造されるコーティング、接着剤、複合材等に様々な機能を付与するために、添加剤を添加することができる。かかる添加剤としては、染料、顔料、可塑剤、各種光線吸収剤、安定剤、導電材料などが挙げられる。
【0017】
また本発明の熱可塑性芳香族ポリスルホン樹脂は、基材を被覆、基材と他の基材を結合、あるいは、他の材料と混合させた後、加熱処理することにより高分子量化、安定化させるが、その加熱処理方法には特に制限はなく、得られるコーティング、接着、ならびに、複合材の機械物性、光学物性などの物性や、加工プロセスの装置の性能、経済性等を考慮して決定される。
【0018】
加熱温度にも特に制約はなく、用途と装置の性能を考慮して決定される。一般には250℃から450℃の温度が用いられる。中でも300℃から400℃が適度に高分子量化した生成物を与え、着色などの劣化反応が抑制できるという点で好ましい。250℃よりも低いと分子量の増大に長時間を有し、生産性の上で好ましくない。また450℃を超えると樹脂の劣化反応が生じる可能性が高くなり、着色などの問題が生じることがあるので好ましくない。
また加熱時の雰囲気は空気下、酸素非存在下等特に制約はないが、酸素存在下で処理するほうが処理時間を短くし得る場合もある。
【0019】
【発明の効果】
本発明の熱可塑性芳香族ポリスルホン樹脂は、温和な加熱条件下でも高分子量化、不活性化せしめることができるのみならず溶媒に溶解した際に、種々の欠陥を惹起せしめる不溶成分の生成も防止し得るのでコーティング、接着、複合材等の原料として有利である。
【0020】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0021】
なお、測定方法および評価方法は次のとおりである。
(1)重合体反復単位100個あたりに含まれるフェノール性ヒドロキシル基とその金属塩の定量:
芳香族ポリスルホン樹脂の一定量をジメチルホルムアミドに溶解し、過剰量のパラトルエンスルホン酸を一定量加えた後、滴定試薬として0.05モル/Lのカリウムメトキシド/トルエン・メタノール溶液を用いて、電位差滴定装置にて残存パラトルエンスルホン酸の量と水酸基の量を測定した。この測定値と、芳香族ポリスルホン樹脂における繰り返し単位あたりの平均分子量からフェノール性ヒドロキシル基の金属塩の数とフェノール性ヒドロキシル基とその金属塩の総量を算出した。さらに両者の値より、フェノール性ヒドロキシル基の個数、ならびに、フェノール性ヒドロキシル基とその金属塩の個数の総和Aに対するフェノール性ヒドロキシル基の金属塩の個数比率を算出した。
【0022】
(2)不溶物観察:
芳香族ポリスルホン樹脂濃度が30重量%の1-メチル-2-ピロリドン溶液30mlをメスシリンダーを用いて100mlサンプル瓶に計りとり、目視観察により不溶成分を観察した。
【0023】
(3)GPC測定:
装置として東ソー(株)製GPCシステムHLC8020、カラムは東ソー(株)製TSKgelGMHHR−Hを使用した。展開溶媒、溶離液として、50mmol/Lの臭化リチウム一水和物を添加したN,N-ジメチルホルムアミドを用い、ポリマー濃度0.5重量%、流量1ml/分、カラムオーブン温度40℃、UV検出器(300nm)にて測定し、ポリスチレン換算相対分子量を求めた。
【0024】
実施例1
繰り返し構造単位が、前記式(1)からなる芳香族ポリスルホン樹脂を以下の方法で製造した。
撹拌機、窒素導入管、温度計、先端に受器を付したコンデンサーとを備えた容量2000mlの重合槽に、4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'-ジクロロジフェニルスルホンをそれぞれ525.0g、590.55g、重合溶媒としてジフェニルスルホンを980.0g仕込み、系内に窒素ガスを流通させながら180℃まで昇温した後、無水炭酸カリウムを295.7g添加した。
その後、290℃まで徐々に昇温し、同温度でさらに2時間反応させた。
【0025】
反応終了後、反応液を室温まで冷却し、固化した反応マスを、細かく粉砕した後、温水により洗浄して塩化カリウムを除去した。さらに、アセトンとメタノールの混合溶媒での洗浄を数回行い重合溶媒であるジフェニルスルホンを除去し、次いで水で洗浄した後150℃で加熱乾燥を行なった。
この樹脂粉末の平均粒径は500μmであった。また、電位差滴定の結果、重合体反復単位100個あたり、フェノール性ヒドロキシル基とそのアルカリ金属塩の個数の総和Aは2.6個であり、アルカリ金属塩は27%であった。還元粘度を測定した結果0.44dl/gであった。
【0026】
得られた樹脂粉末の30重量%の1-メチル-2-ピロリドン溶液を調整して、その溶液粘度を測定したところ、70ポイズであった。
また、この溶液を無作為に30ml取り出して観察したところ、不溶分は見られず完溶が確認された。
また得られた樹脂粉末50gを500mlのフラスコにいれ、これにメタノール30mlを加えて12時間放置した。次いで濾過によりメタノールを除去した後、この濾過残と300mlの水を錨翼を有する500mlセパラブルフラスコに入れ、しかる後に酢酸を加えることによりpHが3〜5の間保持しながら4時間攪拌した。次いで濾過、150℃で12時間乾燥することにより、酸処理した樹脂粉末を得た。
酸処理した樹脂粉末は、重合体反復単位100個あたり、フェノール性ヒドロキシル基とそのアルカリ金属塩の個数の総和Aは2.8個であり、アルカリ金属塩は18%であった。 この樹脂粉末の30重量%の1-メチル-2-ピロリドン溶液を調整して、その溶液粘度を測定したところ、50ポイズであり、この溶液を無作為に30ml取り出して観察したところ、不溶分は見られず完溶が確認された。
【0027】
また得られた樹脂粉末(酸未処理品)を1.5gずつ4個のアルミ製カップに採り、200℃で6時間乾燥した。次いで余熱状態まま、あらかじめ350℃に昇温した電気炉に入れて空気下で加熱処理を行った。その際、加熱時間には1分間、2分間、8分間、15分間の4通りの条件を用いた。
加熱処理の終了したサンプルは冷却した後アルミカップから剥がし、樹脂0.05gに対してジメチルホルムアミド10mlを加えて溶解処理を行った。その結果、加熱処理時間が2分以上のサンプル(2分、8分、15分)は完溶せず、不溶分の残存が確認された。
【0028】
次に、同じく得られた樹脂粉末(酸未処理品)を1.5gずつ4個のアルミ製カップに採り、200℃で6時間乾燥した後、そのまま余熱状態であらかじめ300℃に昇温した電気炉に入れて空気下で加熱処理を行った。加熱時間として5分間、10分間、15分間、20分間、30分間の5通りの条件を用いた。
加熱処理の終了したサンプルは冷却した後アルミカップから剥がし、樹脂0.05gに対してジメチルホルムアミド10mlを加えて溶解処理を行った。その結果、加熱処理時間が20分以上(20分、30分)のサンプルは完溶せず、不溶分の残存が確認された。加熱前、加熱10分のサンプルについてGPC測定によりポリスチレン換算重量平均相対分子量を測定した結果、加熱前で47000、加熱10分で52100となり、分子量が増加して不溶化していくことが確かめられた。
【0029】
また得られた樹脂粉末(酸未処理品)を用いて20重量%の1-メチル-2-ピロリドン溶液を調整し、この溶液を、厚み2mmでサイズが100×100mmの2B仕上げのSUS430板上に2ml塗布した後、200℃のオーブンにて60分間乾燥処理をした。
乾燥処理終了後、余熱状態のままあらかじめ350℃に設定した電気炉に移し空気下で加熱処理を行った。加熱処理は2分、5分、10分の3条件にて行った。
後冷却し、各塗膜の鉛筆硬度を調べた結果、2分、5分のサンプルのHBに対して、10分のサンプルはFと、焼成に伴い塗膜の硬度が増加した。
塗膜を剥離して樹脂0.05gに対して10mlのジメチルホルムアミド(0.05mol/lの臭化リチウム一水和物を含有)を加えて溶液を調整した。その結果、加熱時間が2分のサンプルは完溶したものの、5分、10分のサンプルは不溶分が残存し完溶しなかった。
加熱時間0分、2分、5分、10分の各溶液サンプルをポアー径0.5μmのPTFE製メンブレンフィルターでろ過した後GPC測定を行った。その結果、ポリスチレン換算重量平均分子量が、未加熱サンプルは48200、2分加熱サンプルは56500、5分加熱サンプルは99300、10分加熱サンプルは52000となり、分子量の増加に伴い不溶化(最終的には溶解成分の減少によりGPC測定分子量は低下)していくことを確認した。
【0030】
この、SUS板上にて加熱処理したサンプルのうち、不溶成分の見られた5分加熱、10分加熱の2点について塗膜を剥離して、2×2mm角未満の大きさに裁断、裁断したサンプル約0.5gを正確に秤量して20mlのガラス製サンプル瓶にとり、10mlの1-メチル-2-ピロリドンを加えた。この混合物を室温にて15時間振とう攪拌(180回転/分)して溶出処理を施した。
この溶出処理を施したサンプル溶液混合物をあらかじめ重量を正確に測定したポアー径0.5μmのPTFE製メンブレンフィルターで加圧濾過し、さらに残さを1-メチル-2-ピロリドンで充分に洗浄した。
その後、メンブレンフィルターごと200℃にて6時間真空乾燥後秤量し、濾過処理前のフィルター重量との差から、不溶残さの重量を定量し、溶解処理した元のサンプル重量との比をとって、加熱処理による不溶化率を求めた。
結果は、5分加熱で9%、10分加熱で80%であった。
【0031】
比較例1
住友化学工業株式会社製スミカエクセルPES5003P、ロットSS5016を用い、還元粘度を測定したところ0.51dl/gであり、電位差滴定結果よりフェノール性ヒドロキシル基とその金属塩の個数の総和は、重合体反復単位100個あたりに2.0個であった。また、樹脂パウダーの平均粒径は500μmであった。また、この樹脂の30重量%の1-メチル-2-ピロリドン溶液を調整して、その溶液粘度を測定したところ、160ポイズであった。また、この溶液を無作為に30ml取り出して観察したところ、ゲル状の不溶分が7個確認された。さらにこの溶液2mlを厚みが2mmでサイズが100×100mmの2B仕上げを施したSUS板状に塗布して短時間で乾燥させたところ、フィッシュアイ上の欠陥が生成、ゲル状の不溶物が核となっていることが判明した。
【0032】
また樹脂粉末を実施例1に準拠し、350℃に昇温した電気炉で加熱処理を行った後、溶解処理を行った。その結果、加熱処理時間が2分以上のサンプル(2分、8分、15分)は完溶せず、不溶分の残存が確認された。
次に、樹脂粉末を実施例1に準拠し、300℃に昇温した電気炉で加熱処理を行った後、溶解処理を行った。その結果、加熱処理時間が20分以上(20分、30分)のサンプルは完溶せず、不溶分の残存が確認された。加熱前、加熱10分のサンプルについてGPC測定によりポリスチレン換算重量平均相対分子量を測定した結果、加熱前で60500、加熱10分で93600となり、分子量の増加とともに不溶化していくことが確かめられた。
さらに、実施例1に準拠し、樹脂粉末の1-メチル-2-ピロリドン溶液をSUS板上に塗布、乾燥処理終了後、350℃に設定した電気炉で加熱処理を行た後、塗膜を剥離して溶解処理を行った。その結果、加熱時間が2分のサンプルは完溶したものの、5分、10分のサンプルは不溶分が残存し完溶しなかった。
また不溶成分の見られた5分加熱、10分加熱2点について実施例1に準拠し溶出処理を施し、加熱処理による不溶化率を求めた。結果は、5分加熱で32%、10分加熱で89%であった。
【0033】
比較例2
住友化学工業株式会社製スミカエクセルPES4100P、ロットSB5032を用い、還元粘度を測定したところ0.41dl/gであり、電位差滴定結果ではフェノール性ヒドロキシル基もその金属塩も検出されなかった。また、樹脂パウダーの平均粒径は500μmであった。
また、この樹脂の30重量%の1−メチル−2−ピロリドン溶液を調整して、その溶液粘度を測定したところ、70ポイズであった。
また、この溶液を無作為に30ml取り出して観察したところ、不溶分は見られず完溶が確認された。
【0034】
また樹脂粉末を実施例1に準拠し、350℃に昇温した電気炉で加熱処理を行った後、溶解処理を行った。その結果、加熱処理時間が15分のサンプルは完溶せず、不溶分の残存が確認された。
次に、樹脂粉末を実施例1に準拠し、300℃に昇温した電気炉で加熱処理を行った後、溶解処理を行った。その結果、すべてのサンプルについて完溶することが確認された。加熱前、加熱30分のサンプルについてGPC測定によりポリスチレン換算重量平均相対分子量を測定した結果、加熱前で73800、30分加熱後で73200となり、分子量の増加はまったく見られなかった。
【0035】
さらに、実施例1に準拠し、樹脂粉末の1-メチル-2-ピロリドン溶液をSUS板上に塗布、乾燥処理終了後、350℃に設定した電気炉で加熱処理を行った。冷却後各塗膜の鉛筆硬度を調べた結果、2分、5分のサンプルのBに対して、10分のサンプルはHBと、焼成に伴い塗膜の硬度は増加が認められたものの、実施例1に比べると低いレベルであった。
次に、塗膜を剥離して溶解処理を行った。その結果、加熱時間が2分のサンプルは完溶したものの、5分、10分のサンプルは不溶分が残存し完溶しなかった。
また不溶成分の見られた5分加熱、10分加熱2点について実施例1に準拠し溶出処理を施し、加熱処理による不溶化率を求めた。結果は、5分加熱で2%、10分加熱で22%であった。
【0036】
実施例2
繰り返し構造単位が、前記式(1)からなる芳香族ポリスルホン樹脂を以下の方法で製造した。
実施例1において、4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'-ジクロロジフェニルスルホンをそれぞれ422.2g、497.5g、重合溶媒としてのジフェニルスルホンを784.0g仕込み、無水炭酸カリウムを239.0g添加する以外は実施例1に準拠して実施し、芳香族ポリスルホン樹脂粉末を得た。
【0037】
この樹脂粉末の平均粒径は500μmであった。また、電位差滴定の結果、フェノール性ヒドロキシル基とそのアルカリ金属塩の個数の総和は、重合体反復単位100個あたりに2.15個であり、還元粘度を測定した結果0.40dl/gであった。
この樹脂の30重量%の1-メチル-2-ピロリドン溶液を調整して、その溶液粘度を測定したところ、60ポイズであった。
また、この溶液を無作為に30ml取り出して観察したところ、不溶分は見られず完溶が確認された。
【0038】
また樹脂粉末を実施例1に準拠し、350℃に昇温した電気炉で加熱処理を行った後、溶解処理を行った。その結果、加熱処理時間が2分以上のサンプル(2分、8分、15分)は完溶せず、不溶分の残存が確認された。
次に、樹脂粉末を実施例1に準拠し、300℃に昇温した電気炉で加熱処理を行った後、溶解処理を行った。その結果、加熱処理時間が20分以上(20分、30分)のサンプルは完溶せず、不溶分の残存が確認された。
【0039】
実施例3
繰り返し構造単位が、前記式(1)からなる芳香族ポリスルホン樹脂を以下の方法で製造した。
実施例1において、4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'-ジクロロジフェニルスルホンをそれぞれ422.2g、481.0g、重合溶媒としてのジフェニルスルホンを784.0g仕込み、無水炭酸カリウムを236.6g添加する以外は実施例1に準拠して実施し、芳香族ポリスルホン樹脂粉末を得た。
【0040】
この樹脂粉末の平均粒径は500μmであった。また、電位差滴定の結果、フェノール性ヒドロキシル基とそのアルカリ金属塩の個数の総和は、重合体反復単位100個あたりに2.0個であり、還元粘度を測定した結果0.45dl/gであった。
この樹脂の30重量%の1-メチル-2-ピロリドン溶液を調整して、その溶液を無作為に30ml取り出して観察したところ、不溶分は見られず完溶が確認された。
【0041】
また樹脂粉末を実施例1に準拠し、350℃に昇温した電気炉で加熱処理を行った後、溶解処理を行った。その結果、加熱処理時間が2分以上のサンプル(2分、8分、15分)は完溶せず、不溶分の残存が確認された。
次に、樹脂粉末を実施例1に準拠し、300℃に昇温した電気炉で加熱処理を行った後、溶解処理を行った。その結果、加熱処理時間が20分以上(20分、30分)のサンプルは完溶せず、不溶分の残存が確認された。
【0042】
比較例3
繰り返し構造単位が、前記式(1)からなる芳香族ポリスルホン樹脂を以下の方法で製造した。
実施例1において、4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'-ジクロロジフェニルスルホンをそれぞれ422.2g、479.5g、重合溶媒としてのジフェニルスルホンを784.0g仕込み、無水炭酸カリウムを237.8g添加し、290℃で4時間反応させる以外は実施例1に準拠して実施し、芳香族ポリスルホン樹脂粉末を得た。
【0043】
この樹脂粉末の平均粒径は500μmであった。また、電位差滴定の結果、フェノール性ヒドロキシル基とそのアルカリ金属塩の個数の総和は、重合体反復単位100個あたりに2.19個であり、還元粘度を測定した結果0.48dl/gであった。
この樹脂の30重量%の1-メチル-2-ピロリドン溶液を調整して、その溶液を無作為に30ml取り出して観察したところ、ゲル状の不溶物が3個観察された。
【0044】
比較例4
繰り返し構造単位が、前記式(1)からなる芳香族ポリスルホン樹脂を以下の方法で製造した。
実施例1において、4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'-ジクロロジフェニルスルホンをそれぞれ525.0g、590.6g、重合溶媒としてのジフェニルスルホンを980.0g仕込み、無水炭酸カリウムを295.7g添加する以外は実施例1に準拠して実施し、芳香族ポリスルホン樹脂粉末を得た。
【0045】
電位差滴定の結果、フェノール性ヒドロキシル基とそのアルカリ金属塩の個数の総和は、重合体反復単位100個あたりに3.6個であり、還元粘度を測定した結果0.34dl/gであった。
この樹脂の30重量%の1-メチル-2-ピロリドン溶液を調整して、その溶液を無作為に30ml取り出して観察したところ、不溶分は見られず完溶が確認された。
【0046】
また樹脂粉末を実施例1に準拠し、350℃に昇温した電気炉で加熱処理を行った後、溶解処理を行った。その結果、加熱処理時間が8分以上のサンプル(8分、15分)は完溶せず、不溶分の残存が確認された。
次に、樹脂粉末を実施例1に準拠し、300℃に昇温した電気炉で加熱処理を行った後、溶解処理を行った。その結果、加熱処理時間が30分のサンプルは完溶せず、不溶分の残存が確認された。
【0047】
比較例5
繰り返し構造単位が、前記式(1)からなる芳香族ポリスルホン樹脂を以下の方法で製造した。
実施例1において、4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'-ジクロロジフェニルスルホンをそれぞれ105.01g、119.28g、重合溶媒としてのジフェニルスルホンを196.00g仕込み、無水炭酸カリウムを57.12g添加する以外は実施例1に準拠して実施し、芳香族ポリスルホン樹脂粉末を得た。
【0048】
電位差滴定の結果、フェノール性ヒドロキシル基とそのアルカリ金属塩の個数の総和は、重合体反復単位100個あたりに2.47個であり、還元粘度を測定した結果0.33dl/gであった。
この樹脂の30重量%の1-メチル-2-ピロリドン溶液を調整して、その溶液を無作為に30ml取り出して観察したところ、不溶分は見られず完溶が確認された。
【0049】
また樹脂粉末を実施例1に準拠し、350℃に昇温した電気炉で加熱処理を行った後、溶解処理を行った。その結果、加熱処理時間が2分では完溶した。
【0050】
実施例4
繰り返し構造単位が、前記式(1)からなる芳香族ポリスルホン樹脂を以下の方法で製造した。
実施例1において、4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'-ジクロロジフェニルスルホンをそれぞれ105.01g、119.28g、重合溶媒としてのジフェニルスルホンを196.00g仕込み、無水炭酸カリウムを57.41g添加する以外は実施例1に準拠して実施し、芳香族ポリスルホン樹脂粉末を得た。
【0051】
電位差滴定の結果、フェノール性ヒドロキシル基とそのアルカリ金属塩の個数の総和は、重合体反復単位100個あたりに2.04個であり、還元粘度を測定した結果0.39dl/gであった。
この樹脂の30重量%の1-メチル-2-ピロリドン溶液を調整して、その溶液を無作為に30ml取り出して観察したところ、不溶分は見られず完溶が確認された。
【0052】
また樹脂粉末を実施例1に準拠し、350℃に昇温した電気炉で加熱処理を行った後、溶解処理を行った。その結果、加熱処理時間が2分にてサンプルは完溶せず、不溶分の残存が確認された。
【0053】
実施例5
繰り返し構造単位が、前記式(1)からなる芳香族ポリスルホン樹脂を以下の方法で製造した。
実施例1において、4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'-ジクロロジフェニルスルホンをそれぞれ104.48g、119.28g、重合溶媒としてのジフェニルスルホンを196.00g仕込み、無水炭酸カリウムを59.43g添加する以外は実施例1に準拠して実施し、芳香族ポリスルホン樹脂粉末を得た。
電位差滴定の結果、フェノール性ヒドロキシル基とそのアルカリ金属塩の個数の総和は、重合体反復単位100個あたりに1.63個であり、還元粘度を測定した結果0.45dl/gであった。
【0054】
この樹脂の30重量%の1-メチル-2-ピロリドン溶液を調整して、その溶液を無作為に30ml取り出して観察したところ、不溶分は見られず完溶が確認された。
【0055】
また樹脂粉末を実施例1に準拠し、350℃に昇温した電気炉で加熱処理を行った後、溶解処理を行った。その結果、加熱処理時間が2分にてサンプルは完溶せず、不溶分の残存が確認された。
【0056】
比較例6
比較例5で得られた芳香族ポリスルホン樹脂粉末と比較例2で用いた住友化学工業株式会社製スミカエクセルPES4100P、ロットSB5032を、重量比で1対1の割合で混合してフェノール性ヒドロキシル基とそのアルカリ金属塩の個数の総和が重合体反復単位100個あたりに1.24個の芳香族ポリスルホン樹脂粉末を得た。還元粘度を測定した結果0.38dl/gであった。
この樹脂の30重量%の1-メチル-2-ピロリドン溶液を調整して、その溶液を無作為に30ml取り出して観察したところ、不溶分は見られず完溶が確認された。
【0057】
また樹脂粉末を実施例1に準拠し、350℃に昇温した電気炉で加熱処理を行った後、溶解処理を行った。その結果、加熱処理時間が2分にてサンプルは完溶した。
【0058】
比較例7
実施例2で得られた芳香族ポリスルホン樹脂粉末と比較例2で用いた住友化学工業株式会社製スミカエクセルPES4100P、ロットSB5032を、重量比で1対1の割合で混合してフェノール性ヒドロキシル基とそのアルカリ金属塩の個数の総和が重合体反復単位100個あたりに1.08個の芳香族ポリスルホン樹脂粉末を得た。還元粘度を測定した結果0.41dl/gであった。
この樹脂の30重量%の1-メチル-2-ピロリドン溶液を調整して、その溶液を無作為に30ml取り出して観察したところ、不溶分は見られず完溶が確認された。
【0059】
また樹脂粉末を実施例1に準拠し、350℃に昇温した電気炉で加熱処理を行った後、溶解処理を行った。その結果、加熱処理時間が2分にてサンプルは完溶した。
【0060】
比較例8
実施例4で得られた芳香族ポリスルホン樹脂粉末と比較例2で用いた住友化学工業株式会社製スミカエクセルPES4100P、ロットSB5032を、重量比で1対1の割合で混合してフェノール性ヒドロキシル基とそのアルカリ金属塩の個数の総和が重合体反復単位100個あたりに1.02個の芳香族ポリスルホン樹脂粉末を得た。還元粘度を測定した結果0.41dl/gであった。
この樹脂の30重量%の1-メチル-2-ピロリドン溶液を調整して、その溶液を無作為に30ml取り出して観察したところ、不溶分は見られず完溶が確認された。
【0061】
また樹脂粉末を実施例1に準拠し、350℃に昇温した電気炉で加熱処理を行った後、溶解処理を行った。その結果、加熱処理時間が2分にてサンプルは完溶した。
【0062】
実施例6
実施例2で得られた芳香族ポリスルホン樹脂粉末と比較例5で得られた芳香族ポリスルホン樹脂粉末を、重量比で1対1の割合で混合してフェノール性ヒドロキシル基とそのアルカリ金属塩の個数の総和が重合体反復単位100個あたりに2.31個の芳香族ポリスルホン樹脂粉末を得た。還元粘度を測定した結果0.36dl/gであった。
この樹脂の30重量%の1-メチル-2-ピロリドン溶液を調整して、その溶液を無作為に30ml取り出して観察したところ、不溶分は見られず完溶が確認された。
【0063】
また樹脂粉末を実施例1に準拠し、350℃に昇温した電気炉で加熱処理を行った後、溶解処理を行った。その結果、加熱処理時間が2分にてサンプルは完溶せず、不溶分の残存が確認された。

Claims (3)

  1. 重合体反復単位が下式(1)からなり、0.36〜0.45dl/gの還元粘度(RV)を有し、かつ、重合体反復単位100個あたりに含まれるフェノール性ヒドロキシル基とその金属塩の個数の総和Aが1.6以上であって、前記RVと前記Aが下記式(10)を満たすことを特徴とする熱可塑性芳香族ポリスルホン樹脂。
    (−Ph−SO 2 −Ph−O−) (1)
    0.45/(RV)1.56≦A≦0.74/(RV)1.56 (10)
  2. 樹脂の平均粒径が50〜2000μmである請求項1に記載の熱可塑性芳香族ポリスルホン樹脂。
  3. 重合体反復単位100個あたりに含まれるフェノール性ヒドロキシル基の金属塩の個数が、重合体反復単位100個あたりに含まれるフェノール性ヒドロキシル基とその金属塩の個数の総和Aの25%以下である請求項1または2に記載の熱可塑性芳香族ポリスルホン樹脂。
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