JP4349708B2 - 構造物の地下外壁およびその構築工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は構造物の地下外壁およびその構築工法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ソイルセメント柱列壁または泥水固化壁(以下、連続壁という)は仮設構造物として構築され、本体構造物である地下外壁の構築後に地盤内に埋め殺しされるのが一般的であった。しかし近年において連続壁を本体構造物の一部として有効利用するために、図10に示すように、外壁と一体化した合成壁の開発が進められている。この連続壁24と外壁25との一体化はスタッドボルト26で行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のようなスタッドボルトによる連続壁と外壁との合成壁には、以下のような問題がある。
▲1▼ 芯材におけるスタッドボルトの溶接箇所の下地処理が必要になる。
▲2▼ スタッドボルトの現場溶接は、高所作業のため危険である他、品質が低 下し、全体の工期および工費がかかる。
▲3▼ スタッドボルトの数は、外壁と芯材との間に作用するせん断力および引張力によって決定される。
▲4▼ 連続壁内を浸透して外壁に達した地下水がその表面に広く滞留している。
▲5▼ 芯材は面外力に対しては十分に抵抗するが、面内力に対しては抵抗できなかった。
【0004】
本発明は上記のような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、連続壁と地下外壁とが簡単に一体化できるとともに、面内力に対しても十分に抵抗できる構造物の地下外壁およびその構築工法を提供することである。
【0005】
以上の課題を解決するための構造物の地下外壁の構築工法は、形鋼からなる芯材のウエブ中央部に継手部材が設けられ、フランジ近傍のウエブには鉄筋貫通孔が設けられ、かつ該フランジからウエブの一部にかけて鉄筋貫通孔を覆うようにカバーが被覆されてなる山留壁用の芯材を、掘削孔に充填されたソイルセメント内に適宜間隔ごとに挿入するとともに、各芯材の継手部材に鋼矢板を接続して土留め板を形成し、前記ソイルセメントが硬化して連続壁を構築した後、該連続壁を内側地盤の根切りとともに鋼矢板まではつって芯材の一部を露出させ、ここに被覆されたカバーを除去してフランジとウエブの一部を露出し、該露出したウエブの鉄筋貫通孔に外壁の横筋を貫通させるとともに他の鉄筋を配筋して外壁用型枠を組み立て、該外壁用型枠内にコンクリートを打設することを特徴とする。
また構造物の地下外壁の構築工法は、形鋼からなる芯材のウエブ中央部に継手部材が設けられ、フランジ近傍のウエブには鉄筋貫通孔が設けられ、かつ該フランジからウエブの一部にかけて鉄筋貫通孔を覆うようにカバーが被覆されてなる山留壁用の芯材を、掘削孔に充填された安定液内に適宜間隔ごとに挿入するとともに、各芯材の継手部材に鋼矢板を接続して土留め板を形成し、前記安定液が硬化して連続壁を構築した後、該連続壁を内側地盤の根切りとともに鋼矢板まではつって芯材の一部を露出させ、ここに被覆されたカバーを除去してフランジとウエブの一部を露出し、該露出したウエブの鉄筋貫通孔に外壁の横筋を貫通させるとともに他の鉄筋を配筋して外壁用型枠を組み立て、該外壁用型枠内にコンクリートを打設することを特徴とする。
【0006】
連続壁の芯材の一部が外壁内に埋設されるため、これらの合成度が大きくなる。また芯材が面外力に対して十分に抵抗することができる。また面外力に十分に抵抗できる地下外壁が簡単に構築できる。また鋼矢板で土留を行うので、はつり作業時の安全性が高まる。また芯材の一部のはつり出しが容易にできるとともに、芯材の一部にソイルセメントが付着するのを防ぐことができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、構造物の地下外壁およびその構築工法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。はじめに構造物の地下外壁について説明し、その後にその構築工法について説明する。
【0022】
図1は第1の実施の形態の地下外壁の断面図であり、該地下外壁1は地山2a側の連続壁であるソイルセメント柱列壁(以下柱列壁という)2と鉄筋コンクリート製の外壁3とから構成されている。
【0023】
柱列壁2は貧配合のソイルセメントが使用され、芯材4であるH形鋼のフランジ5とウエブ6の一部が外壁3内に埋設され、前記ウエブ6の鉄筋貫通孔7に外壁3の横筋3aが貫通している。また、これらフランジ5とウエブ6の一部はコンクリート8との付着力を増するために粗面仕上げされている。
【0024】
また、H形鋼のウエブ6には継手部材9が設けられ、これに鋼矢板10が接続されて土留め壁11を形成することにより、該土留め壁11が芯材4間に配設された状態になる。この土留め壁11により土水圧に対しても十分に抵抗でき、柱列壁2に貧配合のソイルセメントを使用することができるようになり、発生する残土を軽減することができる。また面内力に対しても十分に抵抗できる。
【0025】
図2は、柱列壁2から浸透した地下水12がH形鋼のウエブ6で遮断されている状態を示したものであり、ウエブ6や土留め壁11が止水板としての機能を果たして柱列壁2内を流れる地下水12を完全に遮断している。なお、芯材4はH形鋼に限らずI形鋼やその他の形鋼を使用することもできる。
【0026】
図3は第2の実施の形態の地下外壁13を示し、ウエブ6に直交して鉄筋棒などのシアコネクタ14が設けられたものであり、これ以外は第1の実施の形態の地下外壁1と同じ構成である。このシアコネクタ14により柱列壁2と外壁3との合成度がさらに大きくなる。
【0027】
図4および図5は第3および第4の実施の形態の地下外壁15、16を示し、図4はウエブ6に沿って山形鋼や鉄筋棒などのシアコネクタ17が設けられたものであり、図5はウエブ6と直交したシアコネクタ14と、ウエブ6に沿ったシアコネクタ17とを組み合わせたものである。これらはいずれも第2の実施の形態と同じ効果を奏する。なお、第1〜第4の実施の形態において連続壁は柱列壁であるが、この柱列壁を泥水固化壁にすることもできる。
【0028】
次に、第1の実施の形態の地下外壁についての構築方法を図6〜図9に基づいて説明する。この地下外壁1にはウエブ6に鉄筋貫通孔7と継手部材9とを設けた芯材4を使用し、前記鉄筋貫通孔7はフランジ5の近くに開口されるとともに、継手部材9はウエブ6の中央部両側に突設されている。
【0029】
はじめに、図6および図7に示すように、掘削孔18に貧配合のソイルセメント19を充填し、ここに芯材4であるH形鋼を適宜間隔ごとに挿入するとともに、各芯材4の継手部材9に軽量鋼矢板などの鋼矢板10を接続して土留め板11を形成する。このとき各H形鋼の一方のフランジ5からウエブ6の一部にかけてはソイルセメント19の付着を防止する硬質プラスチックなどのカバー20が被覆され、鉄筋貫通孔7も被覆される。
【0030】
次に、図8に示すように、前記ソイルセメント19が硬化して柱列壁2を構築した後、該柱列壁2の内側地盤(図示せず)を根切りするとともに、柱列壁2を前記土留め板11まではつって芯材4の一部を露出させ、ここに被覆されているカバー20を除去すると、フランジ5とウエブ6の一部が露出して、鉄筋貫通孔7も露出する。この柱列壁2は貧配合のソイルセメント19を使用しているため簡単に芯材4のはつり出しができるとともに、鋼矢板による土留によりはつり出しが安全に行える。次いで、露出したウエブ6の鉄筋貫通孔7に横筋3aを貫通させるとともに他の鉄筋21を配筋して外壁用の型枠22を組み立て、ここにコンクリート23を打設すると、図9に示すように、柱列壁2と外壁3とが一体となった地下外壁1が構築される(図1参照)。なお第2〜第4の実施の形態の地下外壁13、15、16も同じ方法で構築する。
【0031】
また連続壁を泥水固化壁とする第2の実施の形態の地下外壁の構築方法は、掘削孔18に充填された安定液(図示せず)内に芯材4であるH形鋼を適宜間隔ごとに挿入するとともに、各芯材4の継手部材9に鋼矢板10を接続して土留め板11を形成した後、前記安定液を直接固化または置換固化して柱列壁2を構築する。また各H形鋼の一方のフランジ5からウエブ6の一部にかけては、前記と同様にカバー20が被覆されている。このような柱列壁2を構築した後は、第1の実施の形態と同じ方法で地下外壁1を構築する。また第2〜第4の実施の形態の地下外壁13、15、16もこれと同じ方法で構築するものとする。
【0032】
【発明の効果】
連続壁の芯材の一部が外壁内に埋設されるため、これらの合成度が大きくなる。また土留め板により芯材が面外力および面内力の双方に対して十分に抵抗することができる。
【0033】
芯材と外壁のコンクリートとの付着力が大きくなる。
【0034】
ソイルセメントまたは泥水固化壁がはつりやすくなって、芯材を簡単にはつり出せるとともに、はつり作業の安全性が高くなる。
【0035】
芯材と外壁との合成度が大きく、かつ面外力および面内力の双方に十分に抵抗できる地下外壁を簡単に構築できる。
【0036】
芯材の一部にコンクリートが付着するのを防げる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1の実施の形態の地下外壁の断面図である。
【図2】 地下水の浸透を表した地下外壁の断面図である。
【図3】第2の実施の形態の地下外壁の断面図である。
【図4】第3の実施の形態の地下外壁の断面図である。
【図5】第4の実施の形態の地下外壁の断面図である。
【図6】 ソイルセメントに芯材を挿入した断面図である。
【図7】 継手部材を鋼矢板で接続して土留め板を形成した断面図である。
【図8】芯材をはつり出して鉄筋を配筋した断面図である。
【図9】型枠にコンクリートを打設した地下外壁の断面図である。
【図10】(1)および(2)は従来の地下外壁の斜視図と断面図である。
【符号の説明】
1、13、15、16 地下外壁
2、24 柱列壁
2a 地山
3、25 外壁
3a 横筋
4 芯材
5 フランジ
6 ウエブ
7 鉄筋貫通孔
8、23 コンクリート
9 継手部材
10 鋼矢板
11 土留め板
12 地下水
14、17 シアコネクタ
18 掘削孔
19 ソイルセメント
20 カバー
21 鉄筋
22 型枠
26 スタッドボルト
Claims (2)
- 形鋼からなる芯材のウエブ中央部に継手部材が設けられ、フランジ近傍のウエブには鉄筋貫通孔が設けられ、かつ該フランジからウエブの一部にかけて鉄筋貫通孔を覆うようにカバーが被覆されてなる山留壁用の芯材を、掘削孔に充填されたソイルセメント内に適宜間隔ごとに挿入するとともに、各芯材の継手部材に鋼矢板を接続して土留め板を形成し、前記ソイルセメントが硬化して連続壁を構築した後、該連続壁を内側地盤の根切りとともに鋼矢板まではつって芯材の一部を露出させ、ここに被覆されたカバーを除去してフランジとウエブの一部を露出し、該露出したウエブの鉄筋貫通孔に外壁の横筋を貫通させるとともに他の鉄筋を配筋して外壁用型枠を組み立て、該外壁用型枠内にコンクリートを打設することを特徴とする構造物の地下外壁の構築工法。
- 形鋼からなる芯材のウエブ中央部に継手部材が設けられ、フランジ近傍のウエブには鉄筋貫通孔が設けられ、かつ該フランジからウエブの一部にかけて鉄筋貫通孔を覆うようにカバーが被覆されてなる山留壁用の芯材を、掘削孔に充填された安定液内に適宜間隔ごとに挿入するとともに、各芯材の継手部材に鋼矢板を接続して土留め板を形成し、前記安定液が硬化して連続壁を構築した後、該連続壁を内側地盤の根切りとともに鋼矢板まではつって芯材の一部を露出させ、ここに被覆されたカバーを除去してフランジとウエブの一部を露出し、該露出したウエブの鉄筋貫通孔に外壁の横筋を貫通させるとともに他の鉄筋を配筋して外壁用型枠を組み立て、該外壁用型枠内にコンクリートを打設することを特徴とする構造物の地下外壁の構築工法。
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