JP2000265458A - ＰＣａ杭地中壁による地下構造物の床版連結構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】プレストレストコンクリート製のＰＣａ杭を使
用した地中壁を損傷させることなく、床版との結合がよ
り強固になされ、且つ、現場における作業工数が少なく
て済むＰＣａ杭地中壁による地下構造物の床版連結構造
の提供。 【解決手段】地中に多数の中空筒状のプレストレストコ
ンクリート製のプレキャスト杭１０を並べて打設したＰ
Ｃａ杭地中壁からなる側壁１に対し、現場打ちコンクリ
ートによって床版を一体化させるに際し、プレキャスト
杭１０側面の床版連結高さ位置に、床版連結用鋼製プレ
ート１６を設け、その背面の両側部に縦向きの板状アン
カー２０を一体に備え、その板状アンカーをプレキャス
ト杭１０に内蔵されたプレストレス導入用のＰＣ鋼材ａ
間、及び補強鉄筋が内蔵されている場合にはそれらの間
を通して、肉厚内に埋め込むことによりプレート１６を
杭１０に一体化させ、そのプレート１６に床版補強鋼材
を一体化させる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、地中に多数のプレ
キャストコンクリート杭(以下ＰＣａ杭と記す)を打設し
て構築するＰＣａ杭地中壁に対して水平方向の床版を一
体化させるＰＣａ杭地中壁による地下構造物の床版連結
構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、地表から地面を掘削して地中に地
下室や通路、水路等の地下構造物を構築する工法として
は、地表より鋼やコンクリート製の矢板を打ち込んで仮
設山留め壁を構築し、その仮設山留め壁間に支保工を架
設しつつ根切り掘削行い、形成される地下空間内に底部
床版、側壁、頂版からなる矩形断面躯体を構築し、必要
に応じて１もしくは複数の中間床版を同時に設ける方法
がある。

【０００３】この方法では、構築しようとする地下構造
物の躯体外面から余裕をもって離れた位置に、矢板等を
打設する必要があるため、既存の構造物に接近した躯体
構築が困難となる。また、仮設山留め壁体の引き抜き撤
去を行う場合、固定地盤の移動、沈下等の変状を伴いか
つ工期が長い等の問題がある。

【０００４】また、従来、仮設山留め壁を構築すること
なく、構築しようとする構造物の側壁となる地中連続壁
を現場打ちコンクリートによって構築し、その連続壁間
を掘削しつつ、頂版、底部床版及び必要な中間床版を現
場打ちコンクリートによって構築し、矩形断面躯体を構
築する方法があるが、この方法では、大規模なヤード及
びプラントを必要とし、また、連続地中壁面をそのまま
地下構築物内面とすることができず、側壁内面に現場打
ちコンクリートによる仕上げを施す必要があり、工期が
長く、施工費も大きくならざるを得ないという問題があ
る。

【０００５】このような従来の問題を解決せんとして、
近年、地中に多数のプレキャストコンクリート杭を並べ
て打設することによって、ＰＣａ杭地中壁を互いに対向
配置若しくは環状配置に構築した後、該地中壁間を掘削
し、該地中壁の上端と一体に頂版を現場打ちコンクリー
トをもって構築するとともに、該地中壁の中間に底部床
版を現場打ちコンクリートによって構築する方法が開発
されている。

【０００６】この種の工法では、地中壁と頂版、底部床
版、中間床などの水平方向の床版を、先に構築した地中
壁と一体化させる必要があるが、従来、地中壁と床版と
の結合に際しては、地中壁にアンカー用の穴を開け、こ
のアンカー穴を利用して鋼製の連結材を壁面に固定し、
これに鋼製梁や鉄筋を溶接などによって一体化させ、こ
れらを埋め込んで現場内コンクリート製の床版を構築し
ている。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】上述のようなＰＣａ杭
地中壁に使用するＰＣａ杭は、軽量でしかも曲げ応力が
大きいものであることが好ましく、このため中空のプレ
ストレストコンクリート体を使用することが検討されて
いる。

【０００８】しかし、中空構造のプレストレストコンク
リート製のＰＣａ杭を使用する場合、ＰＣａ杭地中壁と
水平方向の底部床版、中間床等の床版を一体化させる場
合、ＰＣａ杭の耐力を低下させずに施工がなされるもの
である必要があるため、上述した従来技術の如き、壁面
にアンカーを打ち込む方法は、プレストレスコンクリー
ト製のＰＣａ杭を大きく損傷させることとなり採用でき
ない。

【０００９】本発明はこのような状況に鑑み、特にプレ
ストレストコンクリート製のＰＣａ杭を使用した地中壁
を損傷させることなく、床版との結合がより強固になさ
れ、且つ、現場における作業工数が少なくて済むＰＣａ
杭地中壁による地下構造物の床版連結構造の提供を目的
としてなされたものである。

【００１０】

【課題を解決するための手段】上述の如き従来の問題を
解決し、所期の目的を達成するための本発明の特徴は、
地中に多数の中空筒状のプレストレストコンクリート製
のプレキャスト杭を並べて打設したＰＣａ杭地中壁から
なる側壁に対し、現場打ちコンクリートによって床版を
一体化させるＰＣａ杭地中壁による地下構造物の床版連
結構造において、前記プレキャスト杭側面の床版連結高
さ位置に、床版連結用鋼製プレートを設け、該プレート
の背面の両側部に縦向きの板状アンカーを一体に備え、
該板状アンカーを前記プレキャスト杭に内蔵されたプレ
ストレス導入用のＰＣ鋼材間、及び補強鉄筋が内蔵され
ている場合にはそれらの間を通して、該プレキャスト杭
の肉厚内に埋め込むことにより該プレートを杭に一体化
させ、該プレートに床版補強鋼材を一体化させたことを
特徴としてなるＰＣａ杭地中壁による地下構造物の床版
連結構造にある。

【００１１】尚、板状アンカーには、その根元部分にフ
ープ筋貫通孔を開口させるとともに、該板状アンカーの
表裏の両面に周縁部の環状の突出部を交互に突出させた
貫通孔を一体に備え、前記フープ筋貫通孔にＰＣａ杭の
フープ筋を貫通させること、及び、床版連結用鋼製プレ
ートの背面に板状アンカー及び多数の棒状アンカーを一
体に突設することが好ましい。

【００１２】

【発明の実施の形態】次に本発明の実施の形態を図面に
ついて説明する。

【００１３】図１は、本発明を用いて構築する矩形断面
の地下道、共同溝等の地下構造物を示しており、図にお
いて、１，１はＰＣａ杭によって地中に形成された地中
壁からなる側壁、２は両側壁１，１の上端間に掛け渡し
て現場打ちコンクリートによって構築された頂版、３は
両側壁１，１の中間高さ位置間に掛け渡して現場打ちコ
ンクリートによって構築された底部床版であり、両側壁
１，１、頂版２、底部床版３によって囲まれた矩形断面
の空間Ａを有する地下構造物が構築されている。図中４
は上部埋め戻し土である。

【００１４】この地下構造物の構築に際しては、図２
（ａ）に示すように所定の一次掘削を行って側壁１，１
を地中に並べて構築する。この側壁１，１の構築に際し
ては、図３、図４に示すように多数のＰＣａ杭１０，１
０…を並べて地中に打設し、各ＰＣａ杭１０，１０間に
設けたグラウト孔１１内に無収縮性又は膨脹性の止水グ
ラウト１２を注入して連続した地中壁を構築する。

【００１５】ＰＣａ杭としては、中心に円形の中空部１
０ａを有し、肉厚内に多数のＰＣ鋼線ａ，ａ……を埋設
して、長手方向に圧縮方向のプレストレスを付与したプ
レストレストコンクリート製の杭を使用する。

【００１６】次いで、図２（ｂ）に示すように両側壁
１，１間を該側壁１，１の頂部が露出する高さまで掘削
し、掘削部の地表に必要な型枠等（図示せず）を組み、
両側壁１，１の頂部と一体化させて頂版２を現場打ちコ
ンクリートによって構築する。

【００１７】頂版２の構築に際しては、全てのＰＣａ杭
１０上端の中空部１０ａの内に、図５に示すように中詰
め補強鉄筋１３ａを挿入し、中詰めコンクリート１４を
充填するとともに、ＰＣａ杭１０上端面のＰＣ鋼線定着
座板１０ｂにスタッド鉄筋１３ｂを溶接する。

【００１８】このようにしてＰＣａ杭上端部を補強する
と同時に必要な頂版鉄筋１５を組み立て、側壁１の上端
を包み込むようにしてこれを一体化させた頂版２を両側
壁１，１間に掛け渡した状態に構築する。

【００１９】このように補強鉄筋１３ａとスタッド鉄筋
１３ｂを使用してＰＣａ杭１０の上端を補強することに
より、頂版２に対する外力によって大きな曲げモーメン
トが作用する側壁上端部が充分に補強され、より大きな
曲げ耐力が得られることとなるため、ＰＣａ杭全体の強
度を必要以上に高めることなく充分な強度が得られる。

【００２０】このようにして頂版２を構築した後、図２
（ｃ）に示すように頂版２下の側壁１，１間を所望の深
さまで掘削して地下空間Ａを形成する。然る後、図２
（ｄ）に示すように地下空間Ａの底部上に底部床版３を
現場打コンクリートによって構築する。

【００２１】この底部床版３の構築に際しては、図６、
図７に示すように各ＰＣａ杭１の側面に予め底部床版鉄
筋一体化用の鋼製プレート１６を複数のアンカーによっ
て外れ止めした状態で固着しておき、これに図７に示す
ように鉄筋一体化用のＬ型の横鋼材１７に底部床版鉄筋
１８を一体化させて配筋し、これを埋め込んで現場打コ
ンクリートを打設し、両側壁１，１間に掛け渡した状態
に一体化させた底部床版３を構築する。

【００２２】鋼製プレート１６の背面には、その両側に
鋼製の平板状をした板状アンカー２０，２０を溶接して
突設しておき、これをＰＣａ杭１０の製造時に、所定の
高さ位置に設置して一体化させている。

【００２３】各板状アンカー２０は、図８、図９に示す
ようにその根元部分にフープ筋挿通孔２１，２１…が所
定の間隔で開口されているとともに、先端側にはバーリ
ング加工によって片側に環状突出部２２ａを有する貫通
孔２２が２列配置に設けられている。そして、その貫通
孔２２は互いに隣り合うものの環状突出部２２ａが板状
アンカー表裏の互いに逆側の面に突出するように成形さ
れている。

【００２４】またこの一対の板状アンカー２０，２０は
それぞれＰＣ鋼線ａ，ａからなるＰＣ鋼材間を通り、Ｐ
Ｃａ杭１０の円形の中空部１０ａの両側部の肉圧１０
ｃ，１０ｃ内に配置される位置に延長させ、更に、根元
部のフープ筋挿通孔２１，２１…にフープ筋２３を通し
て配筋するとともに、側壁の表面に水膨脹性止水材１９
を１もしくは複数設置し、この状態でコンクリートを打
設してＰＣａ杭１０を成形することにより、該ＰＣａ杭
１０内にアンカープレート２０，２０を埋め込んだ状態
で床版連結用鋼製プレート１６を該杭表面に一体化させ
ている。

【００２５】尚、この鋼製プレート１６の背面には、図
６中仮線で示すように前述したアンカープレート２０，
２０の他に、棒状アンカー２４，２４…を一体に突出し
ておき、これをＰＣ鋼線ａ，ａ間に挿入させてコンクリ
ート一体化させてもよい。

【００２６】このようにして予め床版鋼製プレート１６
を所定の高さ位置となるようにＰＣａ杭１０の側面の設
置しておき、このプレート１６が同じ高さとなるように
ＰＣａ杭１０，１０…を打ち込んで、ＰＣａ杭連続壁１
を形成しておき、該連続壁１，１間を掘削して該プレー
ト１６を露出させた後、横鋼材１７を連続壁１，１表面
に添わせて溶接し、これに底版鉄筋１８，１８…からな
る床版補強鋼材を溶接するとともに、その他の必要な鉄
筋を組み、コンクリート打設して底版３を形成する。

【００２７】尚、各ＰＣａ杭１０，１０…間の隙間に
は、図３に示すようにバックアップ材２６を挿入して、
コーキング材２７を詰めて、止水の完全化を図ってい
る。

【００２８】また、床版連結用鋼製プレート１６の表裏
に多数のジベル筋２５，２５…を溶接若しくはねじ込み
により立設させてもよい。

【００２９】更に、上述の例では、ＰＣａ地中壁と底部
床版との連結構造について示しているが、頂部床版とＰ
Ｃａ地中壁との連結にも使用でき、また中間に床版を設
ける場合の連結にも使用できる。

【００３０】

【発明の効果】上述したように、本発明のＰＣａ杭地中
壁による地下構造物の床版連結構造においては、ＰＣａ
杭に板状アンカーを埋め込んだ床版連結用鋼製プレート
を一体に設置しておくこにより、プレストレストコンク
リート製のＰＣａ杭を傷つけることなく、床版の補強鋼
材を強固に一体化させることができ、また板状アンカー
を使用したことにより、狭いＰＣ鋼線の間でも断面積の
大きいアンカーが挿入でき、かつ、中空のＰＣａ抗であ
っても両側の肉厚部に達する深い位置まで挿入させるこ
とができ、床版連結用鋼製プレートのより強度の高い一
体化がなされる。

【００３１】更に、現場における壁面のはつりやアンカ
ーの設置が不要となり、少ない現場作業工数で床版の一
体化構築ができる。

【００３２】また、板状アンカーの表裏に周縁部の環状
突起を交互に突出させた貫通孔を設けるとともに、該板
状アンカーにフープ筋を貫通させることにより、少ない
数の板状アンカーでも抜けることのない強固な一体化構
造が得られる。

【００３３】更に、床版連結用金属プレートの背面に板
状アンカー及び多数の棒状アンカーを一体に突設するこ
とにより、更に強度を高めることができるとともに、床
版連結用金属プレートの表面に多数のジベル筋を一体に
突設し、該ジベル筋を床版コンクリート内に埋設させる
ことにより、更に強度の高い床版との一体化構造が得ら
れる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明を実施して構築される地下構造物の一例
の断面図である。

【図２】（ａ）〜（ｄ）は図１の構造物構築工程を示す
断面図である。

【図３】同上の地中壁構築状態の平面図である。

【図４】同正面図である。

【図５】図２（ｂ）に示す工程における側壁と頂版との
連結部分の断面図である。

【図６】本発明におけるＰＣａ杭の断面図である。

【図７】本発明における底版連結部分の断面図である。

【図８】本発明における板状アンカーの正面図である。

【図９】同断面図である。

【符号の説明】

ａ ＰＣ鋼線 １ 側壁（地中壁） ２ 頂版 ３ 底部床版 ４ 上部埋め戻し土 ５ 中間床版 １０ ＰＣａ杭 １０ａ 中空部 １０ｂ ＰＣ鋼線定着座板 １０ｃ 肉圧 １１ グラウト孔 １２ 止水グラウト １３ａ 中詰め補強鉄筋 １３ｂ スタッド鉄筋 １４ 中詰めコンクリート １５ 頂版鉄筋 １６ 鋼製プレート １６ａ アンカー １７ 横鋼材 １８ 底部床版鉄筋 ２０ 板状アンカー ２１ フープ筋挿通孔 ２２ａ 突出部 ２２ 貫通孔 ２３ フープ筋 ２４ 棒状アンカー ２５ ジベル筋 ２６ バックアップ材 ２７ コーキング材

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】地中に多数の中空筒状のプレストレストコ
   ンクリート製のプレキャスト杭を並べて打設したＰＣａ
   杭地中壁からなる側壁に対し、現場打ちコンクリートに
   よって床版を一体化させるＰＣａ杭地中壁による地下構
   造物の床版連結構造において、前記プレキャスト杭側面
   の床版連結高さ位置に、床版連結用鋼製プレートを設
   け、該プレートの背面の両側部に縦向きの板状アンカー
   を一体に備え、該板状アンカーを前記プレキャスト杭に
   内蔵されたプレストレス導入用のＰＣ鋼材間、及び補強
   鉄筋が内蔵されている場合にはそれらの間を通して、該
   プレキャスト杭の肉厚内に埋め込むことにより該プレー
   トを杭に一体化させ、該プレートに床版補強鋼材を一体
   化させたことを特徴としてなるＰＣａ杭地中壁による地
   下構造物の床版連結構造。
2. 【請求項２】板状アンカーには、その根元部分にフープ
   筋貫通孔を開口させるとともに、該板状アンカーの表裏
   の両面に周縁部の環状の突出部を交互に突出させた貫通
   孔を一体に備え、前記フープ筋貫通孔にＰＣａ杭のフー
   プ筋を貫通させてなる請求項１に記載のＰＣａ杭地中壁
   による地下構造物の床版連結構造。
3. 【請求項３】床版連結用鋼製プレートの背面に板状アン
   カー及び多数の棒状アンカーを一体に突設してなる請求
   項１若しくは２に記載のＰＣａ杭地中壁による地下構造
   物の床版連結構造。
4. 【請求項４】床版連結用鋼製プレートの表面に多数のジ
   ベル筋を一体に突設し、該ジベル筋を底部床版コンクリ
   ート内に埋め込んでなる請求項１、２若しくは３記載の
   ＰＣａ杭地中壁による地下構造物の床版連結構造。