JP4323086B2 - 積層二軸配向ポリエステルフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は積層二軸配向ポリエステルフィルムに関する。さらに詳しくは、耐ブロッキング性、巻き取り性、加工適性にすぐれ、特にヘリカル記録方式のメタル塗布型磁気記録媒体としたときに高記録密度を実現でき、電磁変換特性に優れる積層二軸配向ポリエステルフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレートフィルムに代表される二軸配向ポリエステルフィルムは、その優れた物理的、化学的特性の故に広い用途に、特に磁気記録媒体のベースフィルムとして用いられている。
【0003】
近年、磁気記録媒体においては、高密度化や高容量化が進められており、それに伴ってベースフィルムのさらなる表面平坦化や厚みの薄膜化が要望されている。特に最近、蒸着型磁気テープに匹敵する性能を有する重層メタル方式の磁気テープが開発され、ベースフィルムに対する表面平坦化の要求はより一層高まってきている。
【0004】
しかしながら、優れた電磁変換特性を維持するためにフィルム表面を平坦化すると、フィルムの滑り性またはエアースクイズ性が悪くなり、ロール状に巻き上げる場合にシワやブツが入りやすくなり、良好に巻き上げることが非常に難しくなる。また、フィルム加工工程においても滑り性が悪いと、接触する金属ロールとの摩擦が増加し、フィルムにシワが入って磁性層の円滑な塗布を妨げたり、またカレンダー処理が円滑にできないなどの問題が生じる。
【0005】
一般に、ポリエステルフィルムの滑り性改良には、(1)原料ポリマー中に、製造過程で触媒残渣による不活性粒子を析出させる方法、(2)不活性粒子を添加する方法等によってフィルム表面に微細凹凸を付与する方法が採用されている。フィルム中のこれら粒子は、その大きさが大きい程またはその含有量が多い程、滑り性の改良が大きいのが一般的である。
【0006】
一方、前述のように、電磁変換特性向上の点よりベースフィルムの表面はできるだけ平坦であることが求められている。ベースフィルムの表面が粗いと、磁気記録媒体に加工する場合、該フイルムの表面突起が磁性層塗布後も磁性層面に突き上げ、電磁変換特性を悪化させる。この場合、ベースフィルム中の粒子の大きさが大きい程、また、その含有量が多い程、フィルム表面が粗くなり、電磁変換特性は悪化する。
【0007】
この滑り性の改良と電磁変換特性の向上という相反する特性を両立させる手段として、両面の表面粗さの異なる積層フィルムにすることによって、磁性層を塗布する面は平坦にして電磁変換特性を改善し、反対面は粗面化して滑り性を向上させる手段が広く知られている。
【0008】
しかしながら、上記のような積層二軸配向ポリエステルフィルムを用い、磁性層を塗布する面の反対面(以下、粗面と称する)を粗化した場合でも、該フィルムの厚みが薄いとき、粗面側層に含有させる滑剤の種類、粒径あるいは添加量によっては、磁性層を塗布する面(平坦面)にまで影響をおよぼし、平坦な面にうねり等を生じさせ、その平坦性を悪くするという問題を生じる。特に、最近の高密度磁気記録媒体では磁性層の更なる平坦化が求められ、線厚の高いメタルカレンダーが使用されるようになり、粗面側層中の滑剤による平坦面への突き上げが及ぼす表面性への悪影響が大きくなってきている。
【0009】
このような粗面側からの平坦面の突き上げ突起を少なくするために、粗面側に含有させる滑剤の粒径を小さくする方法、あるいは粒径の大きいものを少し含有させる方法が提案されている。しかし、前者の場合には粗面側表面に形成される突起の高さが低いが故に、十分なエアースクイズ性が得られず、また後者の場合には該表面に形成される突起頻度が少ないが故に十分なフィルムの滑り性が得られない。更にフィルムをロール状に巻いたとき、前者の場合は縦シワが入り、また後者の場合はブツが発生し、十分な製品歩留りが得られない、という問題が生じている。
【0010】
また一方、電磁変換特性向上のための、磁性層面側のフィルム表面の更なる平坦化の点から、実質的に滑剤を含まない平坦層も提案されているが、この場合テープ加工時の平坦面側の搬送性が不良となり、その工程でシワが入って製品歩留りが大きく低下するという新たな問題が生じている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述の従来技術の欠点を解消し、平坦面を平坦化しつつ、巻き取り性や加工性に優れ、磁気記録媒体、特にメタル塗布型の高記録密度磁気記録媒体としたときに優れた電磁変換特性を発現する積層二軸配向ポリエステルフィルムおよびそれを用いた磁気記録媒体を提供することにある。
【0012】
また、本発明の他の課題は、平坦面だけでなく粗面も平坦化させるという新規な要求に対応しつつ、巻き取り性や加工性に優れ、磁気記録媒体、特にメタル塗布型の高記録密度磁気記録媒体としたときに優れた電磁変換特性を発現する積層二軸配向ポリエステルフィルムおよびそれを用いた磁気記録媒体を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上述の課題を解決しようと鋭意研究した結果、2つのポリエステル層(A層およびB層)からなる積層フィルムを用い、A層とB層のそれぞれの表面粗さを特定範囲に規定し、且つ、B層(非磁性面)に特定のエステルワックスを含有させることにより、目的が達成できることを見出し、本発明に到達した。
【0014】
かくして本発明によれば、ポリエステルA層の片面に、炭素数が8個以上の脂肪族モノカルボン酸および多価アルコールからなる(部分ケン化)エステルワックスを含有するポリエステルB層を積層した積層フィルムであって、以下の(1)〜(5)
(1)B層と隣接していない側のA層表面は、磁性層を形成する側の表面でかつ表面粗さ(WRaA)が4nmを超え10nm以下の範囲にあること;
(2)A層と隣接していない側のB層表面は、磁性層を形成しない側の表面でかつ表面粗さ(WRaB)が5〜20nmの範囲にあること;
(3)A層と隣接していない側のB層表面は、10点平均粗さ(WRzB)が100〜300nmの範囲にあること;
(4)B層は、エステルワックス含有量が0.001〜1重量%の範囲にあること;および
(5)積層フィルムは、縦方向のヤング率(EMD)が4GPa以上、横方向のヤング率(ETD)が6GPa以上およびETDがEMD以上であることを満足することを特徴とする塗布型磁気記録媒体用積層二軸配向ポリエステルフィルムが提供される。
【0015】
また、本発明によれば、上述の積層二軸配向ポリエステルフィルムの好ましい態様として、B層が平均粒径0.05〜1.0μmの不活性粒子PBを、B層の重量を基準として、0.001〜1重量%含有する積層二軸配向ポリエステルフィルム、B層が平均粒径の異なる2種の不活性粒子PB1およびPB2を、B層の重量を基準として、それぞれ0.001〜0.5重量%および0.01〜1重量%含有しており、PB1が平均粒径(DPB1)0.2〜1.0μmで且つ粒径分布の相対標準偏差0.5以下であり、PB2が平均粒径(DPB2)0.05〜0.5μmであり、そして、DPB1からDPB2を差し引いた平均粒径の差(DPB1−DPB2)が0.1〜0.6μmで、より好ましくはPB1が耐熱性高分子粒子で、PB2が耐熱性高分子粒子あるいは不活性無機粒子である積層二軸配向ポリエステルフィルム、または、B層が平均粒径の異なる不活性粒子PB1、PB2およびPB3を、B層の重量を基準として、それぞれ0.001〜0.1重量%、0.01〜0.5量%および0.01〜1.0量%含有し、PB1が平均粒径(DPB1)が0.4〜1.0μmで且つ粒径分布の相対標準偏差0.5以下で、PB2が平均粒径(DPB2)0.2〜0.5μmで且つ粒径分布の相対標準偏差0.5以下で、PB3が平均粒径(DPB3)0.05〜0.3μmで、DPB1からDPB2を差し引いた平均粒径の差(DPB1−DPB2)が0.1〜0.5m、そして、DPB2からDPB3を差し引いた平均粒径の差(DPB2−DPB3)が0.1〜0.4μmの範囲で、より好ましくはPB1およびPB2が耐熱性高分子粒子で、PB3が耐熱性高分子粒子または不活性無機粒子である積層二軸配向ポリエステルフィルムも提供される。
【0016】
さらにまた、本発明によれば、上述の積層二軸配向ポリエステルフィルムの好ましい態様として、A層が、平均粒径0.05〜0.5μmの不活性粒子PAを、A層の重量を基準として、0.001〜0.5重量%含有する積層二軸配向ポリエステルフィルム、または、A層が平均粒径の異なる不活性粒子PA1およびPA2を、A層の重量を基準として、それぞれ0.001〜0.5重量%および0.01〜1重量%含有し、PA1が平均粒径(DPA1)0.2〜0.5μmで且つ粒径分布の相対標準偏差0.5以下で、PA2が平均粒径(DPA2)が0.05〜0.3μmで、DPA1からDPA2を差し引いた平均粒径の差(DPA1−DPA2)が0.1〜0.4μmの範囲で、より好ましくはPA1が耐熱性高分子粒子で、PA2が耐熱性高分子粒子あるいは不活性無機粒子である積層二軸配向ポリエステルフィルムも提供される。
【0017】
さらにまた、本発明によれば、上述の積層2軸配向ポリエステルフィルムの好ましい態様として、A層に隣接していないB層の表面の水の接触角が68〜90°の範囲にある、B層に隣接していないA層の表面に易接着層および/または易滑層を積層している、または、ポリエステルフィルムがポリエチレンテレフタレートもしくはポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムである積層二軸配向ポリエステルフィルムも提供され、これらの積層2軸配向ポリエステルフィルムは塗布型磁気記録媒体用やヘリカル記録方式のディジタル記録型磁気記録媒体用として好適に使用できる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の積層2軸配向ポリエステルフィルムは、ポリエステル層Aの片面に、ポリエステル層Bを積層したものであり、ポリエステル層Bは炭素数が8個以上の脂肪族モノカルボン酸および多価アルコールからなる(部分ケン化)エステルワックスを0.001〜1重量%含有したものである。また、本発明の積層2軸配向ポリエステルフィルムは、B層と隣接していないA層はその表面粗さ(WRaA)が4nmを超え10nm以下の範囲にあり、A層と隣接していないB層の表面は、その表面粗さ(WRaB)が5〜20nmおよび10点平均粗さ(WRzB)が100〜300nmの範囲にあるといった表面特性を満足すること、ならびに、フィルムの製膜方向(縦方向)のヤング率(EMD)およびフィルムの製膜方向および厚み方向に直交する方向(横方向)のヤング率(ETD)がそれぞれ4GPa以上および6GPa以上で、且つ、横方向のヤング率(ETD)が縦方向のヤング率(EMD)と等しいかそれよりも大きいといった力学特性も満足することが必要である。以下、本発明の積層2軸配向ポリエステルフィルムについて、詳述する。
【0019】
<ポリエステル>
本発明において、ポリエステル層AおよびBを形成するポリエステル系樹脂は、特に芳香族ポリエステルが好ましい。芳香族ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートなどを例示することができる。これらのうち、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートが好ましい。
【0020】
これらポリエステルは、ホモポリエステルであっても、コポリエステルであっても良い。コポリエステルの場合、例えば、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートの共重合成分としては、例えばジエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、p−キシリレングリコールなどの他のジオール成分、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸(ただし、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートの場合)、2,6−ナフタレンジカルボン酸(ただし、ポリエチレンテレフタレートの場合)、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの他のジカルボン酸成分、p−オキシエトキシ安息香酸などのオキシカルボン酸成分などが挙げられる。これら共重合成分の量は、20モル%以下、さらには10モル%以下であることが好ましい。また、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主たる成分とするコポリエステルは、トリメリット酸、ピロメリット酸などの3官能以上の多官能化合物を、共重合させることも出来る。この場合、ポリマーが実質的に線状である量、例えば2モル%以下で、共重合させるのが良い。なお、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート以外のポリエステルの場合、その共重合成分は上記のポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主たる成分とするコポリエステルと同様に考えてよい。
【0021】
上記ポリエステルは、それ自体公知であり、かつそれ自体公知の方法で製造することができ、O−クロロフェノール中の溶液として35℃で測定した固有粘度が0.4〜0.9の範囲にあるものが好ましく、さらに0.5〜0.7の範囲、特に0.55〜0.65の範囲にあるものが好ましい。
【0022】
<エステルワックス>
本発明の積層二軸配向ポリエステルフィルムのポリエステルB層は、炭素数が8個以上の脂肪族モノカルボン酸および多価アルコールからなる(部分ケン化)エステルワックスを0.001〜1重量%含有する。
【0023】
まず、エステルワックスを構成する脂肪族モノカルボン酸の炭素数は、8個以上であることが必要であり、その上限は高々34個であることが好ましい。この炭素数が8個未満であると、得られたエステルワックスの耐熱性が不十分で、ポリエステルB層に分散させる際の加熱条件で、脂肪族モノカルボン酸が容易に分解されてしまうため不適切である。好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、例えばペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ペヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、ヘントリアコンタン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸およびこれらを含む酸の混合物などが挙げられる。
【0024】
次に、(部分ケン化)エステルワックスを構成するアルコール成分は、水酸基を2個以上有する多価アルコールであり、耐熱性の観点から、水酸基を3個以上有する多価アルコールであることが好ましい。このアルコール成分として、モノアルコールを用いたのでは、生成した(部分ケン化)エステルワックスの耐熱性が不足する。前記水酸基を2個有する多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどを好ましく例示することができる。また、水酸基を3個以上有する多価アルコールとしては、グリセリン、エリスリット、トレイット、ペンタエリスリット、アラビット、キシリット、タリット、ソルビット、マンニットなどを好ましく例示することができる。
【0025】
そして、上記脂肪族モノカルボン酸および多価アルコールから得られるエステルワックスとしては、多価アルコールの水酸基の数にもよるが、モノエステル、ジエステル、トリエステルなどが挙げられ、耐熱性の観点から、モノエステルよりもジエステルが、ジエステルよりもトリエステルが好ましい。好ましいエステルワックスとしては、具体的にはソルビタントリステアレート、ペンタエリスリットトリペヘネート、ペンタエリスリトールジステアレート、グリセリントリステアレート、グリセリントリパルミテートおよびポリオキシエチレンジステアレートなどを例示することができる。
【0026】
上記脂肪族モノカルボン酸および多価アルコールからなる部分ケン化エステルワックスは、炭素数が8個以上の高級脂肪酸を多価アルコールで部分エステル化したのち、2価以上の金属水酸化物でケン化することにより得られる。具体的には、モンタン酸ジオールエステルを水酸化カルシウムでケン化した、ワックスE・ワックスOP、ワックスO、ワックスOM、ワックスFL(全て、ヘキスト(株)社製商品名)などが挙げられる。もちろん、これらの(部分ケン化)エステルワックスは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
本発明において、ポリエステル層Bに含有させる前記(部分ケン化)エステルワックスの量は、B層の重量を基準として、0.001〜1重量%、好ましくは0.01〜0.5重量%、さらに好ましくは0.05〜0.3重量%、特に好ましくは0.1〜0.2重量%である。(部分ケン化)エステルワックスの含有量が、0.001重量%未満であると、巻き取り性の改良効果が得られない。一方、1重量%を超えると、加工工程で滑りやすくなって、反ってハンドリング性が劣るという問題や、B層の表面にブリードアウトによって多量に発現したエステルワックスが、フィルム製造工程でロール上に巻き上げたときに、B層の表面と接するA層の表面に転写し、A層の表面にメタル塗布層などの磁性層を設ける際に、A層の表面とメタル塗布層などとの接着性を低下させたりするなどの問題がある。
【0028】
<積層フィルム>
本発明の積層2軸配向ポリエステルフィルムは、ポリエステル層Aの片面にポリエステル層Bが積層されたものである。そして、この積層2軸配向ポリエステルフィルムを磁気記録媒体として用いる場合、ポリエステル層Bと隣接していないポリエステル層Aの表面は、磁気記録を行なうための磁性層が設けられ、ポリエステル層Aと隣接していないポリエステル層Bの表面は主に磁気記録媒体の走行性を維持するのに用いられ、その表面にバックコート層などが形成されることもある。以下、説明の便宜上、ポリエステル層Bと隣接していないポリエステル層Aの表面を平坦面、ポリエステル層Aと隣接していないポリエステル層Bの表面を走行面と称することがある。
【0029】
また、本発明における積層二軸配向ポリエステルフィルムは、全厚が好ましくは2〜10μm、より好ましくは3〜7μm、特に好ましくは4〜6μmのものである。積層二軸配向ポリエステルフィルムのA層とB層の厚み構成は、好ましくはB層の厚みが積層二軸配向ポリエステルフィルムの全厚みの2/3以下、さらに好ましくは1/2以下、特に好ましくは1/3以下である。
【0030】
<ポリエステル層A(A層)>
本発明におけるポリエステル層Aのポリエステル層Bと隣接していない側の表面(平坦面)は、その表面粗さ(WRaA)が4nmを超え10nm以下であることが必要で、5〜8nm、特に5〜7nmの範囲にあることが好ましい。表面粗さ(WRaA)が4nm以下であると巻き取り性や加工工程での搬送性が悪くなる。一方、10nmを超えると電磁変換特性が低下する。平坦面の表面粗さ(WRaA)を上記範囲にするには、ポリエステル層Aに不滑性粒子PAを含有させることが好ましい。該不活性粒子PAの平均粒径(DPA)は好ましくは0.05〜0.5μm、より好ましく0.1〜0.4μm、更に好ましくは0.1〜0.3μmである。また、かかる不活性粒子PAの含有量は、A層の重量を基準として、好ましくは0.001〜0.5重量%、より好ましくは0.01〜0.4重量%、更に好ましくは0.05〜0.3重量%である。
【0031】
前記不活性粒子PAの平均粒径が0.05μm未満、または含有量が0.001重量%未満では巻き取り性や加工工程での搬送性が悪くなる場合がある。一方、平均粒径が0.5μmを超えるか、または含有量が0.5重量%を超えると、電磁変換特性を悪化させ易い。
【0032】
本発明における好ましい不活性粒子PAは、例えば(1)耐熱性ポリマー粒子(例えば、架橋シリコーン樹脂、架橋ポリスチレン、架橋アクリル樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、架橋ポリエステルなどの1種以上からなる粒子)、ならびに、(2)金属酸化物(例えば、三二酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素(シリカ)、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウムなど)、(3)金属の炭酸塩(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなど)、(4)金属の硫酸塩(例えば、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなど)、(5)炭素(例えば、カーボンブラック、グラファイト、ダイアモンドなど)および(6)粘土鉱物(例えば、カオリン、クレー、ベントナイトなど)などの無機化合物からなる微粒子が挙げられる。これらのうち、架橋シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン樹脂粒子、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂粒子、ポリアミドイミド樹脂粒子、三二酸化アルミニウム(アルミナ)粒子、二酸化チタン粒子、二酸化ケイ素粒子、酸化ジルコニウム粒子、合成炭酸カルシウム粒子、硫酸バリウム粒子、ダイアモンド粒子、およびカオリン粒子が好ましい。さらにこれらの中でも、架橋シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン樹脂粒子、三二酸化アルミニウム(アルミナ)粒子、二酸化チタン粒子、二酸化ケイ素粒子、および炭酸カルシウム粒子が好ましい。なお、不活性粒子PAは、1種または2種以上のものを混合して使用してもよい。
【0033】
不活性粒子PAが2種以上の粒子からなり、それぞれの不活性粒子を平均粒径の大きなものから、PA1、PA2、PA3、PA4、・・・とした場合、PA1は前述の不活性粒子PAとして例示した粒子を好ましく採用でき、PA1よりも平均粒径の小さいPA2またはPA3といった第2、第3の粒子(微細粒子)として、例えば、コロイダルシリカ、α、γ、δ、θなどの結晶形態を有するアルミナなどの微粒子も好ましく用いることができる。
【0034】
不活性粒子PAが平均粒径の異なる少なくとも2種の不活性粒子PA1およびPA2を含有する場合、不活性粒子PA1は、平均粒径が0.2〜0.5μmでその粒径分布の相対標準偏差が0.5以下でA層の重量を基準としてときの含有量が0.001〜0.5重量%の範囲にあることが好ましく、不活性粒子PA1よりも平均粒径の小さい不活性粒子PA2は、平均粒径が0.05〜0.3μmでA層の重量を基準としたときの含有量が0.01〜1.0重量%の範囲にあることが好ましく、不活性粒子PA1の平均粒径(DPA1)からPA2の平均粒径(DPA2)を差し引いた平均粒径の差(DPA1−DPA2)が0.1〜0.4μmであることが好ましい。なお、上記の2種の不活性粒子PA1およびPA2は、それらの粒径分布曲線において、上記平均粒径の範囲内にそれぞれ存在する明瞭に区別し得る2つの粒径のピークを示すことで明瞭に区別される。
【0035】
不活性粒子PA1の平均粒径が0.2μm未満、またA層に対する添加量が0.001重量%未満であると、巻き取り性や加工工程での搬送性が悪くなりやすい。他方、不活性粒子PA1の平均粒径が0.5μmを超えたり、A層に対する不活性粒子PA1の添加量が0.5重量%を超えると、電磁変換特性が低下しやすい。また、不活性粒子PA2の平均粒径が0.05μm未満であるかA層に対する添加量が0.01重量%未満であると巻き取り性や加工工程での搬送性が悪くなりやすい。他方、不活性粒子PA2の平均粒径が0.3μmを超えるかA層に対する添加量が1.0重量%を超えると電磁変換特性が低下しやすい。さらにまた、不活性粒子PA1とPA2の平均粒径の差(DPA1−DPA2)が0.1μm未満であると、不活性粒子を2成分添加した効果が十分に発揮されず、巻き取り性や加工工程での搬送性などの改善効果が悪くなる。平均粒径の異なる2種の不活性粒子PA1およびPA2は、それぞれ不活性粒子PA1が前記耐熱性高分子であり、不活性粒子PA2が前記耐熱性高分子あるいは前記不活性無機粒子であることが好ましい。
【0036】
不活性粒子PA1の粒径の標準偏差は0.5以下であることが好ましい。また、不活性粒子PA2が不活性架橋高分子粒子やシリカ粒子などフィルム中に単分散している粒子の場合、不活性粒子PA2も粒径の標準偏差は0.5以下であることが好ましく、不活性粒子PA2がアルミナ粒子などフィルム中に凝集状態で存在する粒子の場合、2次粒径の平均粒径が0.05〜0.3μmの範囲にあることが好ましい。上記の2種の不活性粒子PA1およびPA2がこのような標準偏差をもつことで、これらの不活性粒子は粒径分布曲線において、それぞれの平均粒径の範囲内に存在する2つの粒径ピークが明瞭に区別し得るようになすことができる。
【0037】
なお、本発明におけるポリエステル層Aは、磁性層との接着性を損なわない範囲であれば、ポリエステル層Bに添加する前記エステルワックスを含んでいても良く、好ましいエステルワックスの添加量は、ポリエステル層Aの重量を基準として、高々1重量%である。
【0038】
<ポリエステル層B(B層)>
本発明におけるポリエステル層Bは、ポリエステル層Aと隣接していないその表面(走行面)、すなわち、反磁性塗膜側であるB層表面の表面粗さ(WRaB)が5〜20nm、好ましくは5〜15nm、特に好ましくは7〜12nmである。表面粗さWRaBが5nm未満であると、エステルワックスを含有させても滑り性が不足し、巻き取り性や加工工程でのハンドリング性が悪くなる。一方、20nmを超えるとカレンダー処理などによる突き上げ作用で磁性面を粗くし、エラーが発生しやすくなる。
【0039】
また、本発明におけるポリエステル層Bは、走行面の10点平均粗さWRzBが100〜300nm、好ましくは150〜250nm、特に好ましくは160〜230nmである。走行面の10点平均粗さWRzBが100nm未満の場合、滑り性が不足し、巻き取り性や加工工程でのハンドリング性が悪くなる。一方、WRzBが300nmを超えるとカレンダー処理などによる突き上げ作用で磁性面を粗くし、エラーが発生しやすくなる。
【0040】
走行面の表面粗さ(WRaB)および10点平均粗さ(WRzB)を上記範囲にするには、例えば、ポリエステル層Bに、平均粒径が0.05〜1.0μmの不活性粒子PBを、B層の重量を基準として、0.001〜1重量%含有させるのが好ましい。なお、ポリエステル層Bに使用する不活性粒子PBは、前述のポリエステル層Bに使用する不活性粒子PAとして例示したものが好適に使用できる。不活性粒子PBの平均粒径が0.05μm未満であるか、添加量が0.001重量%未満であると、滑り性が不足しやすく、巻き取り性や加工工程でのハンドリング性が悪くなりやすい。他方、不活性粒子PBの平均粒径が1.0μmを超えるか添加量が1重量%を超えるとカレンダー処理などによる突き上げ作用で磁性面を粗くしやすく、エラーが発生しやすくなる。
【0041】
ところで、不活性粒子PBは、1種に限らず、2種以上のものを混合して使用してもよく、不活性粒子の成分数が多いほど平坦易滑性が得やすいことから、むしろ、1種よりは2種、2種よりは3種の平均粒径が異なる不活性粒子を併用するのが好ましい。なお、平均粒径が異なる不活性粒子を3種以上併用してもよいが、その場合の平坦易滑性を向上させる効果は3種の平均粒径が異なる不活性粒子を併用したものとさほど変わらない。なお、説明の便宜上、不活性粒子PBが2種以上の粒子からなる場合、それぞれの不活性粒子を平均粒径の大きなものから、PB1、PB2、PB3、PB4、・・・と、以下称する。
【0042】
本発明におけるB層の好ましい不活性粒子の含有状態について、以下説明する。
まず、不活性粒子PBが平均粒径の異なる2種の不活性粒子PB1およびPB2を含有する場合、不活性粒子PB1は平均粒径が0.2〜1.0μmでその粒径分布の相対標準偏差が0.5以下でその添加量が、B層の重量を基準として、0.001〜0.5重量%の範囲にあるものが好ましく、不活性粒子PB2は平均粒径が0.05〜0.5μmでその添加量が、B層の重量を基準として、0.01〜1.重量%の範囲にあるものが好ましく、不活性粒子PB1の平均粒径(DPB1)からPB2の平均粒径(DPB2)を差し引いた平均粒径の差(DPB1−DPB2)が0.1〜0.6μmの範囲であるのが好ましい。また、平均粒径の異なる2種の不活性粒子PB1およびPB2は、それぞれ不活性粒子PB1が耐熱性高分子粒子、PB2が耐熱性高分子粒子あるいは不活性無機粒子であることが好ましい。
【0043】
上記の2種の不活性粒子PB1およびPB2は、それらの粒径分布曲線において、上記平均粒径の範囲内にそれぞれ存在する明瞭に区別し得る2つの粒径のピークを示すことで明瞭に区別される。ここで不活性粒子PB1の粒径の標準偏差は0.5以下であることが好ましい。また、不活性粒子PB2が不活性架橋高分子粒子やシリカ粒子などフィルム中に単分散している粒子の場合、不活性粒子PB2も粒径の標準偏差は0.5以下であることが好ましく、不活性粒子PB2がアルミナ粒子などフィルム中に凝集状態で存在する粒子の場合、2次粒径の平均粒径が0.05〜0.5μmの範囲にあることが好ましい。上記の2種の不活性粒子PB1およびPB2がこのような標準偏差をもつことで、これらの不活性粒子は粒径分布曲線において、それぞれの平均粒径の範囲内に存在する2つの粒径ピークが明瞭に区別し得るようになすことができる。
【0044】
不活性粒子が2成分の場合、平均粒径が上記範囲未満であるか、添加量が上記範囲未満であると、滑り性が不足し、巻き取り性や加工工程でのハンドリング性が悪くなり、他方、平均粒径が上記範囲を超えるか添加量が上記範囲を超えるとトラッキングサーボ信号を塗工した場合、エラーが発生しやすくなり、また、平均粒径の差が上記範囲未満だと、2成分を添加による効果が発現され難い。
【0045】
つぎに、不活性粒子PBが平均粒径の異なる3種の不活性粒子PB1、PB2およびPB3を含有する場合、不活性粒子PB1は平均粒径が0.4〜1.0μmでその粒径分布の相対標準偏差が0.5以下で添加量が、B層の重量を基準として、0.001〜0.1重量%の範囲にあるものが好ましく、不活性粒子PB2は平均粒径が0.2〜0.5μmでその粒径分布の相対標準偏差が0.5以下でその添加量が、B層の重量を基準として、0.01〜0.5量%の範囲にあるものが好ましく、不活性粒子PB3は平均粒径が0.05〜0.3μmでその添加量が、B層の重量を基準として、0.01〜1量%の範囲にあるものが好ましく、不活性粒子PB1の平均粒径(DPB1)からPB2の平均粒径(DPB2)を差し引いた平均粒径の差(DPB1−DPB2)は0.1〜0.5μmの範囲であるのが好ましく、また不活性粒子PB2の平均粒径(DPB2)からPB3の平均粒径(DPB3)を差し引いた平均粒径の差(DPB2−DPB3)は0.1〜0.4μmの範囲であるのが好ましい。また、不活性粒子PB1、PB2およびPB3は、不活性粒子PB1、PB2が耐熱性高分子粒子、PB3が耐熱性高分子粒子あるいは不活性無機粒子であるのが好ましい。
【0046】
上記の3種の不活性粒子PB1、PB2およびPB3は、それらの粒径分布曲線において、上記平均粒径の範囲内にそれぞれ存在する明瞭に区別し得る2つの粒径のピークを示すことで明瞭に区別される。ここで不活性粒子PB1およびPB2の粒径の標準偏差は0.5以下であることが好ましい。また、不活性粒子PB3が不活性架橋高分子粒子やシリカ粒子などフィルム中に単分散している粒子の場合、不活性粒子PB3も粒径の標準偏差は0.5以下であることが好ましく、不活性粒子PB3がアルミナ粒子などフィルム中に凝集状態で存在する粒子の場合、2次粒径の平均粒径が0.05〜0.3μmの範囲にあることが好ましい。上記の3種の不活性粒子PB1、PB2およびPB3がこのような標準偏差をもつことで、これらの不活性粒子は粒径分布曲線において、それぞれの平均粒径の範囲内に存在する2つの粒径ピークが明瞭に区別し得るようになすことができる。
【0047】
不活性粒子が3成分の場合、平均粒径が上記範囲未満であるか、添加量が上記範囲未満であると、滑り性が不足し、巻き取り性や加工工程でのハンドリング性が悪くなり、他方、平均粒径が上記範囲を超えるか添加量が上記範囲を超えるとトラッキングサーボ信号を塗工した場合、エラーが発生しやすくなり、また、平均粒径の差が上記範囲未満だと、3成分を添加による効果が発現され難い。
【0048】
なお、本発明において、不活性粒子の成分数は、その成分数が多いほど、平坦易滑性を得やすいので、2成分よりは3成分が好ましい。ただし、3成分以上の場合の効果は限定的である。
【0049】
ところで、本発明におけるポリエステル層Bの、A層と接していない表面の水接触角は68〜90°の範囲にあることが好ましく、より好ましくは70〜85°、さらに好ましくは70〜80°、最も好ましくは70〜75°の範囲である。この水接触角が68°未満では、巻き取り性の改良効果が得られ難い。一方、90°を超えると、バックコート層を塗布する工程で、塗布斑などの問題が発生する。
<易滑または易接層>
本発明における積層二軸配向ポリエステルフィルムのA層表面には、接着性あるいは易滑性向上のため、塗布層をコーティングしてもよい。
【0050】
塗布層としてはポリエステル系、ポリウレタン系あるいはポリアクリル系の水性樹脂(例えば水溶性樹脂、水分散性樹脂等)を固形分中に50重量%以上含有するものが好ましい。前記水性樹脂は塗膜形成水性樹脂として公知のものを用いることが出来る。また、易滑性向上のために、塗布層に不活性粒子を含有してもよい。この不活性粒子としては、コロイダルシリカ等の無機粒子、あるいは架橋アクリル樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、ポリスチレン粒子等の有機粒子が挙げられるが、耐削れ性の観点からは無機粒子より、有機粒子の方がより好ましい。この粒子の平均粒径は、好ましくは5〜100nm、さらに好ましくは5〜50nm、特に好ましくは5〜30nmである。粒子の含有量は、塗剤固形分中、好ましくは0.5〜40重量%、さらに好ましくは1〜30重量%、特に好ましくは5〜20重量%である。粒子は球形に近いのものがより好ましく、また粒径もそろったものがより好ましい。また、塗布層には界面活性剤を固形分中に好ましくは1〜30重量%、さらに好ましくは5〜20重量%、特に好ましくは5〜15重量%含有させることが好ましい。塗布層の厚み(固形分)は、好ましくは1〜50nm、さらに好ましくは1〜30nm、特に好ましくは3〜20nmである。
【0051】
なお、塗布層の形成は、ポリエステルフィルムの製膜工程で一軸延伸後塗布し、二軸延伸時に乾燥して形成するインライン塗布方式でも、あるいは二軸配向フィルムに塗布するオフライン塗布方式でもよいが、インライン塗布方式の方が塗膜形成の観点からより好ましい。
【0052】
<ヤング率>
本発明における積層二軸配向ポリエステルフィルムは、縦方向のヤング率が4GPa以上であることを必要とし、さらには4.5GPa以上、特に5.0GPa以上であることが好ましい。このフィルム縦方向のヤング率が4GPa未満では、磁気テープに瞬間的に強い応力がかかったとき、テープが伸びて変形するので好ましくない。
【0053】
一方、横方向のヤング率は6GPa以上を必要とし、好ましくは7GPa以上、更に好ましくは8GPa以上である。横方向のヤング率が6GPa未満であると強度が不足し、テープのヘッド当たりが弱くなり、電磁変換特性が悪化し易く、またテープの端部が損傷を受けてワカメ状に変形し、更にはテープの横規制ガイドにあたり、テープ端部が折れ曲がったりしてテープの特性が損なわれるので好ましくない。
【0054】
また、本発明の積層二軸配向ポリエステルフィルムは、主としてヘリカル記録方式の磁気記録媒体用であり、横方向の伸びを少なくする点から、横方向のヤング率ETDが縦方向のヤング率EMD以上であることを必要とする。
【0055】
また、本発明の積層二軸配向ポリエステルフィルムは縦方向のヤング率と横方向のヤング率の和が10〜20GPa、更には12〜16GPaであることが好ましい。縦方向のヤング率と横方向のヤング率の和が10GPa未満であると、磁気テープの強度が弱くなり、テープが破断し易く、またテープのエッジダメージが大きくなり、記録・再生のエラーが発生し、満足し得る高密度磁気媒体が得られ難い。一方、縦方向のヤング率と横方向のヤング率の和が20GPaを超えると、フィルム製膜時、延伸倍率が高くなり、フィルム破断が多発し、製品歩留りが著しく悪くなる。
【0056】
<積層2軸配向ポリエステルフィルムの製膜法>
不活性粒子PAを含有させたポリエステルAと(部分ケン化)エステルワックスおよび不活性粒子PBを含有するポリエステルBを、それぞれ高精度ろ過したのち、押出し口金内または口金より上流の位置で、溶融状態にて積層複合(一般に、前者はマルチマニホールド方式、後者はフィードブロック方式と呼ぶ)し、次いで口金より融点(Tm)〜(Tm+70)℃の温度でフィルム状に共押出したのち、10〜70℃の冷却ロールで急冷固化して未延伸積層フィルムを得る。その後、該未延伸積層フィルムを常法に従い、縦方向に(Tg−10)〜(Tg+70)℃の温度(ただし、Tg:ポリエステルのガラス転移温度)で2.5〜4.5倍の倍率で、好ましくは3.0〜4.0倍の倍率で延伸し、次いで横方向に(Tg)〜(Tg+70)℃の温度で3.5〜8.0倍の倍率で、好ましくは4.0〜7.5倍の倍率で延伸する。さらに、必要に応じて、縦方向および/または横方向に再度延伸してもよい。すなわち、2段、3段、4段あるいはさらなる多段の延伸を行ってもよい。全延伸倍率としては、好ましくは10〜30倍、より好ましくは15〜30倍、さらに好ましくは20〜30倍である。また、横延伸倍率は縦延伸倍率以上であるのが、横方向のヤング率(ETD)を縦方向のヤング率(EMD)以上にしやすいことから好ましい。
【0057】
このように延伸されたフィルムを、さらに、(Tg+70)〜(Tm−10)℃の温度(ただし、Tm:ポリエステルの融点)、例えばポリエチレンテレフタレートフィルムの場合180〜250℃の温度で熱固定結晶化することによって、優れた寸法安定性が付与される。また、熱固定時問は1〜60秒が好ましい。
【0058】
なお、ポリエステルフィルムの製造する際に、ポリエステル層AまたはBは、所望により上記不活性粒子以外の添加剤、例えば安定剤、着色剤、溶融ポリマーの体積抵抗率調整剤などを添加含有させることができる。また、上記の不活性粒子を含有させる場合は、以下の(イ)、(ロ)または両方によって測定された平均粒径およびその粒径分布の相対標準偏差が、前述の範囲内に存在するものを含有させるのが好ましい。
(イ)平均粒径が60nm以上の不活性粒子の場合、株式会社島津製作所製「CP−50型セントリヒューグルパーテイクルサイズアナライザー(Centrifugal Particle Size Analyzer)」を用いて測定する。得られる遠心沈降曲線を基に算出した各粒径の粒子とその存在量との積算曲線から、50マスパーセントに相当する粒径「等価球直径」を読み取り、この値を上記平均粒径(nm)とする(「粒度測定技術」日刊工業新聞社発行、1975年、頁242〜247)とともに、積算曲線から標準偏差を求める。
(ロ)平均粒径が60nm以上の不活性粒子の場合、光散乱紙を用いて測定する。すなわち、ニコンインストゥルメント株式会社(Nicomp Instruments Inc.)製の商品名「NICOMP MODEL270 SUBMICRON PARTICLE SIZER」により求められる全粒子の50%の点にある粒子の「等価球直径」をもって、平均粒径(nm)とするとともに、相対標準偏差も併せて求める。
【0059】
さらにまた、本発明において、A層表面に易接着層および/または易滑層を塗布することができる。塗布の時期は限定されないが、縦延伸の後が好ましい。塗布方法としては特に限定されないが、例えばロールコート法、ダイコート法などが挙げられる。上記塗液、特に水性塗液の固形分濃度は0.2〜8重量%、さらには0.3〜6重量%、特に0.5〜4重量%であることが好ましい。そして、水性塗液には、本発明の効果を妨げない範囲で、他の成分、例えば他の界面活性剤、安定剤、分散剤、紫外線吸収剤、増粘剤などを添加することができる。
【0060】
<磁気記録媒体>
本発明の積層二軸配向ポリエステルフィルムは、A層の表面に、鉄または鉄を主成分とする針状微細磁性粉(メタル粉)をポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体などのバインダーに均一に分散し、磁性層厚みが1μm以下、好ましくは0.1〜1μmとなるように塗布し、さらに必要により、B層の表面に、公知の方法でバックコート層を設けることにより、特に短波長領域での出力、S/N,C/Nなどの電磁変換特性に優れ、ドロップアウト、エラーレートの少ない高密度記録用メタル塗布型磁気記録媒体とすることができる。A層の表面に、上記メタル粉含有磁性層の下地層として微細な酸化チタン粒子などを含有する非磁性層を磁性層と同様の有機バインダー中に分散し、塗設することもできる。このメタル塗布型磁気記録媒体は、大容量コンピュータテープ、アナログ信号記録用8ミリビデオ、Hi8、βカムSP,W−VHS、ディジタル信号記録用ディジタルビデオカセットレコーダー(DVC)、データ8ミリ、DDSIV、ディジタルβカム、D2,D3,SXなどの磁気テープ用媒体、特にヘリカル記録方式の磁気テープに極めて有効である。
【0061】
【実施例】
以下、実施例によって本発明をさらに説明する。尚、本発明における種々の物性値及び特性は、以下のようにして測定されたものであり、かつ定義される。
【0062】
(1)ヤング率
フィルムを試料幅10mm、長さ15cmに切り、チャック間100mmにして引張速度10mm/分、チャート速度500mm/分でインストロンタイプの万能引張試験装にて引張り、得られる荷重―伸び曲線の立ち上がり部の接線よりヤング率を計算する。
【0063】
(2)表面粗さ(WRa、WRz)
WYKO社製非接触式三次元粗さ計(NT―2000)を用いて測定倍率25倍、測定面積246.6μm×187.5μm(0.0462mm2)の条件にて、測定数(n)10点で測定を行ない、該粗さ計に内蔵された表面解析ソフトにより、中心面平均粗さ(WRa)および10点平均粗さ(WRz)を求める。
なお、中心面平均粗さ(WRa)は以下の一般式によって計算される。
【0064】
【数1】
【0065】
ここで、Zjkは測定方向(246.6μm)、それと直行する方向(187.5μm)をそれぞれm分割、n分割したときの各方向のj番目、k番目の位置における2次元粗さチャート上の高さである。
【0066】
また、10点平均粗さ(WRz)は、ピーク(HP)の高い方から5点と谷(Hv)の低い方から5点をとり、以下の一般式によって計算される平均値である。
【0067】
【数2】
【0068】
(3)接触角
協和科学(株)製、接触角測定装置を用いて測定した。フィルムサンプルを、温度25℃、湿度50%の環境下に24時間以上置いたのち、フィルム上に蒸留水を5mg滴下し、水平の方向から20秒後に写真を撮影した。フィルムと水滴の接線が形成する角度を接触角(°)とする。
【0069】
(4)フィルム中のエステルワックスの含有量
(4−1)ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)の場合
フィルムサンプル30mgをCF3COOD(重水素化トリフルオロ酢酸):CDCl3(重水素化クロロホルム)=1:1の混合溶媒0.5mlに溶かし、600MHz−1H−NMRで1024回積算測定し、テレフタル酸ユニット由来のピーク積分値を100とした時の、ワックス由来のピーク積分値(例:本願記載のソルビタントリステアレートの場合、化学シフト値2.5ppm近傍に検出されるピーク積分値)をあらかじめ測定した検量線の式に代入し、ワックスの量を求めた。なお、積層フィルムについては、後述の(7)項に記載した方法にて積層フィルムの層厚みを測定し、全厚みに対するワックスを含有した層の厚みから、厚み換算し、ワックス量を求めた。また、積層フィルムの層厚みの測定が困難なサンプルについては、ワックスを含有した層のフィルムを削りとり、上記方法にてワックス量を直接求めた。
(4−2)ポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルム(PEN)の場合
フィルムサンプル30mgをCF3COOD(重水素化トリフルオロ酢酸):CDCl3(重水素化クロロホルム)=1:1の混合溶媒0.5mlに溶かし、600MHz−1H−NMRで1024回積算測定し、2,6−ナフタレンジカルボン酸ユニット芳香環プロトン由来のピーク積分値を100とした時のワックス由来のピークの積分値(例:本願記載のソルビタントリステアレートの場合、化学シフト値2.5ppm近傍に検出されるピーク積分値)をあらかじめ測定した検量線の式代入し、ワックスの量を求めた。なお、積層フィルムについては、後述の(7)項に記載した方法にて積層フィルムの層厚みを測定し、全厚みに対するワックスを含有した層の厚みから、厚み換算し、ワックス量を求めた。また、積層フィルムの層厚みの測定が困難なサンプルについては、ワックスを含有した層のフィルムを削りとり、上記方法にてワックス量を直接求めた。
【0070】
(5)粒子の平均粒径
(5−1)フィルム中の粒子の平均粒径
フィルム表面層のポリエステルをプラズマ低温灰化処理法(例えば、ヤマト科学製、PR−503)で除去し、粒子を露出させる。処理条件は、ポリエステルは灰化されるが粒子はダメージを受けない条件を選択する。これをSEM(走査型電子顕微鏡)にて1万倍程度の倍率で粒子を観察し、粒子の画像(粒子によってできる光の濃淡)をイメージアナライザー(例えば、ケンブリッジインストルメント製、QTM900)に結び付け、観察箇所を変えて少なくとも5,000個の粒子の面積円相当径(Di)を求める。この結果から粒子の粒径分布曲線を作成し、各ピークの個数割合(各ピークの領域は分布曲線の谷部を境界として決める。)を算出する。次いで、各ピークの領域にある粒子の粒径と個数の測定結果から次式で表される数平均値を求め、これを粒子の平均粒径(DA)とする。フィルム中に凝集状態で存在する粒子(例えばアルミナ粒子)の場合は、凝集状態での粒径(2次粒径)を測定し平均粒径(DA)を求める。なお、粒子種の同定は、SEM−XMA、ICPによる金属元素の定量分析などを使用して行なうことができる。
【0071】
【数3】
【0072】
(5−2)粒子の平均粒径の相対標準偏差
上記(5−1)で測定した各ピーク領域の各粒子の個数(n)と面積円相当径(Di)から、相対標準偏差を次式により求める。
【0073】
なお、本発明において、フィルム中に存在する不活性粒子は、粒径分布がシャープであることが好ましい。すなわち、不活性粒子が、不活性架橋高分子粒子やシリカ粒子などフィルム中に単分散している粒子の場合、粒度分布の相対標準偏差は0.5以下が好ましく、より0.4以下が好ましく、特に0.3以下が好ましい。また、不活性粒子が、アルミナ粒子などフィルム中に凝集状態で分散している粒子の場合、凝集状態での粒径(2次粒径)の平均値が0.05〜0.5μmの範囲、特に0.05〜0.3μmの範囲にあることが好ましい。
【0074】
【数4】
【0075】
(6)粒子の含有量
(6−1)各層中の粒子の総含有量
積層ポリエステルフィルムからポリエステル層Aおよびポリエステル層Bをそれぞれ100g程度削り取ってサンプリングし、ポリエステルは溶解し粒子は溶解させない溶媒を選択して、サンプルを溶解した後、粒子をポリエステルから遠心分離し、サンプル重量に対する粒子の比率(重量%)をもって各層中の粒子総含有量とする。
(6−2)各層中の無機粒子の総含有量
積層ポリエステルフィルム中に無機粒子が存在する場合は、ポリエステル層Aおよびポリエステル層Bをそれぞれ100g程度削り取ってサンプリングし、これを白金ルツボ中にて1,000℃の炉の中で3時間以上燃焼させ、次いでルツボ中の燃焼物をテレフタル酸(粉体)と混合し、50gの錠型のプレートを作成する。このプレートを波長分散型蛍光X線を用いて各元素のカウント値をあらかじめ作成してある元素毎の検量線より換算し各層中の無機粒子の総含有量を決定する。蛍光X線を測定する際のX線管はCr管が好ましくRh管で測定しても良い。X線出力は4KWと設定し分光結晶は測定する元素ごとに変更する。材質の異なる無機粒子が複数種類存在する場合は、この測定により各材質の無機粒子の含有量を決定する。
(6−3)各層中の各種粒子の含有量(無機粒子が存在しない場合)
層中に無機粒子が存在しない場合は、前記(5−1)により求めたピークを構成する各粒子の個数割合と平均粒径と粒子の密度から各ピーク領域に存在する粒子の割合を算出し、これと前記(6−1)で求めた各層中の粒子の総含有量とから、各ピーク領域に存在する粒子の含有量(重量%)を求める。
【0076】
なお、代表的な耐熱性高分子粒子の密度は以下の通りである。
架橋シリコーン樹脂の密度:1.35g/cm3
架橋ポリスチレン樹脂の密度:1.05g/cm3
架橋アクリル樹脂の密度:1.20g/cm3
【0077】
なお、樹脂の密度は、(6−1)の方法でポリエステルから遠心分離した粒子をさらに分別し、例えば、ピクノメーターにより「微粒子ハンドブック:朝倉書店、1991年版、150頁」に記載の方法で測定することができる。
(6−4)各層中の各種粒子の含有量(無機粒子が存在する場合)
層中に無機粒子が存在する場合は、前記(6−1)で求めた各層中の粒子の総含有量と前記(6−2)で求めた各層中の無機粒子の総含有量とから層中の耐熱性高分子粒子と無機粒子の含有量をそれぞれ算出し、耐熱性高分子粒子の含有量は上記(6−3)の方法で、無機粒子の含有量は前記(6−2)の方法で、それぞれ含有量(重量%)を求める。
【0078】
(7)ポリエステル層AおよびBならびに積層フィルム全体の厚み
フィルム全体の厚みはマイクロメータにてランダムに10点測定し、その平均値を用いる。ポリエステル層Bの層厚は、薄いB層の層厚みを下記に述べる方法にて測定し、厚いA層の層厚みは、二次イオン質量分析装置(SIMS)を用いて、被覆層を除いた表層から深さ5,000nmの範囲のフィルム中の粒子の内最も高濃度の粒子に起因する金属元素(M+)とポリエステルの炭化水素(C+)の濃度比(M+/C+)を粒子濃度とし、表面から深さ5,000nmまで厚さ方向の分析を行う。表層では表面という界面のために粒子濃度は低く、表面から遠ざかるにつれて粒子濃度は高くなる。本発明の場合、粒子濃度は一旦安定値1になったのち、上昇して安定値2になる場合と、単調に減少する場合とがある。この分布曲線をもとに、前者の場合は、(安定値1+安定値2)/2の粒子濃度を与える深さをもって、また後者の場合は粒子濃度が安定値1の1/2になる深さ(この深さは安定値1を与える深さよりも深い)をもって、B層の厚み(μm)とする。
【0079】
なお、B層の測定は、二次イオン質量分析装置(SIMS)(パーキン・エルマー株式会社(PERKINELMER INC.)製、「6300」)によって、
一次イオン種:O2+、一次イオン加速電圧:12kV、一次イオン電流:200nA、ラスター領域:400μm、分析領域:ゲート30%、測定真空度:6.0×10-9Torr、E−GUNN:0.5KV−3.0Aの条件で行なわれた。
【0080】
また、表層から5,000nmの範囲に最も多く存在する粒子がシリコーン樹脂以外の有機高分子粒子の場合、SIMSでは測定が難しいので、表面からエッチングしながらFT−IR(フーリエトランスフォーム赤外分光法)、粒子によってはXPS(X線光電分光法)などで上記同様の濃度分布曲線を測定し、層厚(μm)を求める。
【0081】
ポリエステルA層の層厚みは、前述の全厚みより塗膜層およびB層の層厚を引き算して求める。
【0082】
(8)巻き取り性
スリット時の巻き取り条件を最適化したのち、幅1000mm×6000mのサイズで、30ロールを速度150m/分でスリットし、スリット後のフィルム表面に、ブツ状、突起やシワのないロールを良品として、以下の基準にて巻き取り性を評価する。
○:良品ロールの本数25以上
×;良品ロールの本数24本以下
【0083】
(9)磁気テープの製造および電磁変換特性
積層二軸配向ポリエステルフィルムのA層の表面に、針状鉄粒子を含む磁性塗料を0.5μm厚さになるように塗布し、直流磁場中で処理する。B層の表面にはバックコートを施す。これをテープ状にスリットし、電磁変換特性をシバソク(株)製ノイズメーターを使用し、ビデオ用磁気テープのS/N比を測定する。なお使用したVTRはソニー(株)製EVS700である。
なお、評価は、1分毎に起動停止を繰り返し120時間作動させた後、実施例1サンプルのS/N比を0dBとし、下記基準にて相対評価する。
◎:+2dB以上
○:−2dB以上+2dB未満
×:−2dB未満
【0084】
(10)(部分ケン化)エステルワックスの調製
炭素数が8個以上の脂肪族モノカルボン酸および多価アルコールからなる(部分ケン化)エステルワックスとして、下記のものを使用する。
(A);ソルビタントリステアレート(融点55℃)
(B);モンタン酸ジオールエステルを水酸化カルシウムでケン化したもの、
ヘキスト株式会社製、商品名「ワックスE」、(融点86℃)
【0085】
[実施例1]
平均粒径0.3μmの架橋シリコーン樹脂粒子(粒径分布の相対標準偏差:0.15)を0.06重量%および平均粒径0.1μmのアルミナ粒子を0.06重量%含有したA層用ポリエチレンテレフタレート(固有粘度:0.6)のペレットと、平均粒径0.6μmの架橋シリコーン樹脂粒子(粒径分布の相対標準偏差:0.15)を0.01重量%、平均粒径0.3μmの架橋シリコーン樹脂粒子(粒径分布の相対標準偏差:0.15)を0.15重量%、平均粒径0.1μmのアルミナ粒子を0.15重量%、および(部分ケン化)エステルワックスを0.15重量%含有したB層用ポリエチレンテレフタレート(固有粘度:0.6)のペレットとを170℃で3時間乾燥した後、2台の押出機ホッパーに供給し、溶融温度300℃で溶融し、マルチマニホールド型共押出ダイを用いてA層の片側にB層を積層させ、表面仕上げ0.3S程度、表面温度25℃のキャスティングドラム上に押出し、積層未延伸フイルムを得た。なお、層厚み構成は2台の押出機の吐出量にて調整した。
【0086】
このようにして得られた未延伸フィルムを75℃にて予熱し、更に低速、高速のロール間で14mm上方より830℃の表面温度の赤外線ヒーターにて加熱して3.2倍に延伸し、急冷し、続いてステンターに供給し、110℃にて横方向に4.5倍延伸し、210℃で10秒間熱固定し、全厚み5.0μm、B層厚み1.5μmの積層二軸配向フィルムを得た。このフィルムのヤング率は縦方向4.8GPa、横方向7.1GPaであった。得られたフィルムの物性および組成を表1に示す。
【0087】
一方、下記に示す組成物をボールミルに入れ、16時間混練して分散した後、イソシアネート化合物(バイエル社製のデスモジュールL)5重量部を加え、1時間高速剪断分散して磁性塗料とした。
磁性塗料の組成:
針状Fe粒子 100重量部
塩化ビニル―酢酸ビニル共重合体 15重量部
(積水化学製エスレック7A)
熱可塑性ポリウレタン樹脂 5重量部
酸化クロム 5重量部
カーボンブラック 5重量部
レシチン 2重量部
脂肪酸エステル 1重量部
トルエン 50重量部
メチルエチルケトン 50重量部
シクロヘキサノン 50重量部
【0088】
この磁性塗料を上述の積層二軸配向ポリエステルフィルムの片面(A層面)に、最終塗布厚さ0.5μmとなるように塗布し、次いで2500ガウスの直流磁場中で配向処理を行ない、100℃で加熱乾燥後、スーパーカレンダー処理(線圧200kg/cm、温度80℃)を行ない、巻き取った。この巻き取ったロールを55℃のオーブン中に3日間放置した。
【0089】
さらに下記組成のバックコート層塗料を、積層二軸配向ポリエステルフィルムの他の面(B層面)に、塗布厚さ1μmとなるように塗布し、乾燥させ、さらに幅12.7mmに裁断し、磁気テープを得た。
バックコート層塗料の組成:
カーボンブラック 100重量部
熱可塑性ポリウレタン樹脂 60重量部
イソシアネート化合物 18重量部
(日本ポリウレタン工業社製コロネートL)
シリコーンオイル 0.5重量部
メチルエチルケトン 250重量部
トルエン 50重量部
【0090】
得られたテープの特性を表1に示す。表1から明らかなように巻き取り性、電磁変換特性いずれも、良好であった。
【0091】
[実施例2]
添加粒子とワックス量を表1記載の如く変更した以外は実施例1と同様にして積層二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
【0092】
また、得られた積層二軸配向ポリエステルフィルムに、実施例1と同様な操作を繰り返して、磁気テープを得た。得られた磁気テープの評価結果を表1に示す。表1から明らかなように巻き取り性および電磁変換特性いずれも良好であった。
【0093】
[実施例3]
ポリエステルとしてポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを用い、各層に含有させる不活性粒子の種類、平均粒径、添加量および(部分ケン化)エステルワックスの添加量を表1に示すとおり変更した。そして、A層用およびB層用のポリマーを、それぞれ170℃で6時間乾燥後、実施例1と同様にして、各層厚みを調整し、未延伸積層ポリエステルフィルムを得た。
【0094】
得られた積層未延伸フィルムを予熱し、さらに低速・高速のロール問でフィルム温度135℃にて3.2倍に延伸し、急冷して縦延伸フィルムを得た。続いてステンターに供給し、155℃にて横方向に5.6倍に延伸した。得られた二軸延伸フィルムを、200℃の熱風で4秒間熱固定し、全厚み5.0μm、B層厚み1.8μmの積層二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた積層二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0095】
また、得られた積層二軸配向ポリエステルフィルムに実施例1と同様な操作を繰り返して磁気テープの作成した。得られた磁気テープの特性を表1に示す。表1から明らかなように、巻き取り性および電磁変換特性のいずれも良好であった。
【0096】
[比較例1]
(部分ケン化)エステルワックスを含有させない以外は、実施例1と同様にして積層二軸配向ポリエステルフィルムとそれを用いた磁気テープを得た。それらの特性を表1に示す。得られた積層二軸配向ポリエステルフィルムとそれを用いた磁気テープは滑り性が悪く、巻き取り性が不良であった。
【0097】
[比較例2]
実施例1と同様にして得られた未延伸フィルムを75℃にて予熱し、更に低速、高速のロール間で14mm上方より830℃の表面温度のIRヒーターにて加熱して2.25倍に延伸し、急冷し、続いてステンターに供給し、110℃にて横方向に3.6倍延伸した。さらに引き続いて110℃にて予熱し、低速、高速のロール間で2.6倍に縦方向に延伸し、更にステンターに供給し、210℃で10秒間熱固定し、全厚み5.0μm、B層厚み1.5μmの積層二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた積層二軸配向ポリエステルフィルムのヤング率は縦方向8.0GPa、横方向4.5GPaであった。得られた積層二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0098】
また、得られた積層二軸配向ポリエステルフィルムを用いて、実施例1と同様にして、磁気テープを作成した。得られた磁気テープは、横ヤング率が低く、電磁変換特性が悪かった。得られた磁気テープの特性を表1に示す。
【0099】
[比較例3]
不活性粒子およびエステルワックスを表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。得られた積層2軸配向ポリエステルフィルムおよびそれを用いた磁気テープは表面粗さが大きくて電磁変換特性が悪いものであった。それらの特性を表1に示す。
【0100】
【表1】
【0101】
ここで、上記表中の、PETはポリエチレンテレフタレートを、PENはポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを示し、エステルワックスのAはソルビタントリステアレート(融点55℃)を、Bはモンタン酸ジオールエステルを水酸化カルシウムでケン化した、ヘキスト株式会社製、商品名「ワックスE」、(融点86℃)を示す。
【0102】
【発明の効果】
本発明によれば、巻き取り性、加工適正に優れ、特にヘリカル記録方式のメタル塗布型磁気記録媒体としたときに電磁変換特性に優れ、高記録密度記録媒体用積層二軸配向ポリエステルフィルムを得ることができる。
Claims (14)
- ポリエステルA層の片面に、炭素数が8個以上の脂肪族モノカルボン酸および多価アルコールからなる(部分ケン化)エステルワックスを含有するポリエステルB層を積層した積層フィルムであって、以下の(1)〜(5)を満足することを特徴とする塗布型磁気記録媒体用積層二軸配向ポリエステルフィルム。
(1)B層と隣接していない側のA層表面は、磁性層を形成する側の表面でかつ表面粗さ(WRaA)が4nmを超え10nm以下の範囲にあること;
(2)A層と隣接していない側のB層表面は、磁性層を形成しない側の表面でかつ表面粗さ(WRaB)が5〜20nmの範囲にあること;
(3)A層と隣接していない側のB層表面は、10点平均粗さ(WRzB)が100〜300nmの範囲にあること;
(4)B層は、エステルワックス含有量が0.001〜1重量%の範囲にあること;および
(5)積層フィルムは、縦方向のヤング率(EMD)が4GPa以上、横方向のヤング率(ETD)が6GPa以上およびETDがEMD以上であること。 - B層が平均粒径0.05〜1.0μmの不活性粒子PBを、B層の重量を基準として、0.001〜1重量%含有する請求項1記載の積層二軸配向ポリエステルフィルム。
- B層が平均粒径の異なる2種の不活性粒子PB1およびPB2を、B層の重量を基準として、それぞれ0.001〜0.5重量%および0.01〜1重量%含有しており、PB1が平均粒径(DPB1)0.2〜1.0μmで且つ粒径分布の相対標準偏差0.5以下であり、PB2が平均粒径(DPB2)0.05〜0.5μmであり、そして、DPB1からDPB2を差し引いた平均粒径の差(DPB1−DPB2)が0.1〜0.6μmである請求項1記載の積層二軸配向ポリエステルフィルム。
- PB1が耐熱性高分子粒子で、PB2が耐熱性高分子粒子あるいは不活性無機粒子である請求項3記載の積層二軸配向ポリエステルフィルム。
- B層が平均粒径の異なる不活性粒子PB1、PB2およびPB3を、B層の重量を基準として、それぞれ0.001〜0.1重量%、0.01〜0.5量%および0.01〜1.0量%含有し、PB1が平均粒径(DPB1)が0.4〜1.0μmで且つ粒径分布の相対標準偏差0.5以下で、PB2が平均粒径(DPB2)0.2〜0.5μmで且つ粒径分布の相対標準偏差0.5以下で、PB3が平均粒径(DPB3)0.05〜0.3μmで、DPB1からDPB2を差し引いた平均粒径の差(DPB1−DPB2)が0.1〜0.5m、そして、DPB2からDPB3を差し引いた平均粒径の差(DPB2−DPB3)が0.1〜0.4μmの範囲である請求項1記載の積層二軸配向ポリエステルフィルム。
- PB1およびPB2が耐熱性高分子粒子で、PB3が耐熱性高分子粒子または不活性無機粒子である請求項5記載の積層二軸配向ポリエステルフィルム。
- A層が、平均粒径0.05〜0.5μmの不活性粒子PAを、A層の重量を基準として、0.001〜0.5重量%含有する請求項1記載の積層二軸配向ポリエステルフィルム。
- A層が平均粒径の異なる不活性粒子PA1およびPA2を、A層の重量を基準として、それぞれ0.001〜0.5重量%および0.01〜1重量%含有し、PA1が平均粒径(DPA1)0.2〜0.5μmで且つ粒径分布の相対標準偏差0.5以下で、PA2が平均粒径(DPA2)が0.05〜0.3μmで、DPA1からDPA2を差し引いた平均粒径の差(DPA1−DPA2)が0.1〜0.4μmの範囲である請求項1記載の積層二軸配向ポリエステルフィルム。
- PA1が耐熱性高分子粒子で、PA2が耐熱性高分子粒子あるいは不活性無機粒子である請求項8記載の積層二軸配向ポリエステルフィルム。
- A層と隣接していないB層の表面の水接触角が68〜90°の範囲にある請求項1記載の積層二軸配向ポリエステルフィルム。
- B層に隣接していないA層表面に易接着層および/または易滑層を塗布した請求項1記載の積層二軸配向ポリエステルフィルム。
- ポリエステルフィルムがポリエチレンテレフタレートである請求項1記載の積層二軸配向ポリエステルフィルム。
- ポリエステルフィルムがポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムである請求項1記載の積層二軸配向ポリエステルフィルム。
- ヘリカル記録方式のディジタル記録型磁気記録媒体用である請求項1〜13のいずれかに記載の積層二軸配向ポリエステルフィルム。
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