JP4311836B2 - ポリイミド金属箔積層板の製造方法 - Google Patents

ポリイミド金属箔積層板の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリイミド金属箔積層板の製造方法に関する。詳しくは、塗工抜け、塗工むらのないフレキシブルポリイミド金属箔積層板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、フレキシブル金属ポリイミド積層板(Flexible Metal Clad Laminate、以下、FMCLという)は、ポリイミド樹脂の優れた耐熱性、電気絶縁性及び機械特性により、広く工業材料として用いられてきた。FMCLは、他のポリマー積層板に比べ種々の優れた特徴を持つが、技術の進歩によりFMCLに求められる特性も高度化しており、用途に応じて種々の性能を合わせ持つことが望ましい。
【0003】
特に近年、ポリイミド樹脂の優れた耐熱性、電気絶縁性及び機械特性をより高めるために、ポリイミド層が2層または多層であるポリイミド積層板への要求が高まってきている。また、一方ではプリント配線基板の容器の大きさ、加工の自由度などからポリイミド層の厚みを薄くする要求も高い。
【0004】
そこで、2層または多層のポリイミド層を有するFMCLは、ポリイミド層全体の厚みを薄くするために、少なくとも1層を極めて薄くする必要がある。厚みの薄いポリイミドフィルムの形成方法としては、フィルムを延伸する方法、樹脂溶液等を塗工する方法などが挙げられる。しかし、フィルムを延伸する方法は、金属と積層化する時に接着層を介するためポリイミドの優れた性質が損なわれてしまう。また、樹脂溶液等を塗工する方法は、特に、ポリイミド層を薄く成形する場合には厚みムラが顕著になる傾向にある。これは見かけの平均厚みと実際の厚みに差が生じるためである。
【0005】
通常、基材表面に塗布液を塗布する場合、コートロールとバックアップロールを用いて基材を挟持しながらコートロールから基材表面へ転写する。この際、塗布厚みを薄くし、且つ、転写を上手く行うためには、基材とコートロールの間隙はより小さい方が望ましい。しかし、ロールの振れ精度があるため、実際にはバックアップロールとコートロールの振れ精度分の厚みムラが発生する。また、この厚みムラを解消するためにバックアップロールを若干歪ませるほど強くコートロールに押し付けて塗布する方法も挙げられる。一方、近年の金属箔は表面に接着性の向上を目的として表面処理が施されており、バックアップロールなどによる外力が加わると表面処理物が剥がれてしまい、接着力の低下につながることがあった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、金属箔の表面を損傷することなく、塗布液の均一塗工が可能であるポリイミド金属箔積層板の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討した結果、平板性に優れた弛みの少ない金属箔を用い、金属箔の走行速度とコートロールの周速度、及び、金属箔がコートロールに接触する際の角度(抱き込み角)をそれぞれ特定の範囲に制御することにより上記課題が解決し得ることを見出し、本発明に到った。
【0008】
即ち、本発明の要旨は、金属箔の表面にポリアミド酸溶液及びポリイミド溶液から選ばれた少なくとも1種の塗布液を塗布、加熱してポリイミド層を形成するポリイミド金属箔積層板の製造方法において、弛みが6mm以下である金属箔を用い、該金属箔を前ガイドロール、コートロール、及び後ガイドロールの3個のロールを用いて支持し、該金属箔がコートロールに接する際の抱き込み角度が1〜180度になるように制御し、且つ、コートロール周速度を金属箔の走行速度に対して115〜200%の範囲に制御してコートロール上の塗布液を金属箔表面へ転写することを特徴とするポリイミド金属箔積層板の製造方法である。
【0009】
本発明に係わるポリイミド金属箔積層板の製造方法は、通常、塗布液を金属箔表面へ転写した後、80〜300℃において乾燥し、次いで、200〜450℃においてイミド化する方法である。好ましい態様として、上記抱き込み角度が1〜30度になるように制御する方法が挙げられる。また、本発明に係わるポリイミド層は、熱可塑性ポリイミドで形成されることが好ましい。
【0010】
本発明によれば、塗布液の塗工工程において、バックアップロールを用いることなしに、前ガイドロール、コートロール、及び後ガイドロールの3個のロールを用いて金属箔を支持するために、金属箔表面を損傷することがない。また、金属箔の走行速度とコートロールの周速度、及び、金属箔がコートロールに接触する際の角度をそれぞれ特定の範囲に制御するために、塗布液の均一な塗工が可能である。その結果、得られる積層体のポリイミド層の厚みが均一である。従って、本発明により製造されるポリイミド金属箔積層板は、プリント基板等として、電気工業分野、電子工業分野等において極めて有用である。
【0011】
尚、本発明における金属箔の弛みは、後述する実施例に記載した方法により測定した値を意味する。また、金属箔がコートロールに接する際の抱き込み角度については、次項において詳述する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明に係わるポリイミド金属箔積層板の製造方法は、ポリイミド金属箔積層板を製造するに際し、塗布液の塗工工程において、金属箔の走行速度とコートロールの周速度、及び、金属箔がコートロールに接触する際の角度をそれぞれ特定の範囲に制御してコートロール上の塗布液を金属箔表面へ転写することに特徴がある。通常、塗布液を金属箔表面へ転写した後、特定の温度において乾燥、及びイミド化する方法である。
【0013】
本発明に使用できる金属箔は、銅、軟化アルミニウム、ニッケル、金、銀、ステンレス、及びこれらを含有する合金箔などが挙げられる。これらの内、銅箔が好ましい。金属箔の厚みは、積層体全体の層厚み、フレキシビリティ等を考慮すると、5〜150μm程度が好ましい。また、ポリイミド層との粘着性、密着性を向上させることを考慮すると、電解メッキによる金属粒子の付着処理、交流エッチング等による表面処理が施されていることが好ましい。更に、塗布液の均一な塗工性、ポリイミド層の厚みの均一性等を考慮すると、歪みがなく良好な平板性を有するものが好ましい。平板性のバロメーターである弛みが6mm以下である。尚、金属箔の弛みの測定方法は、後述の実施例に示す。
【0014】
本発明に係わるポリイミド層は、熱可塑性ポリイミドで形成することが好ましい。該熱可塑性ポリイミドは、一般式(1)〔化4〕
【0015】
【化4】
Figure 0004311836
【0016】
{式中、Xは、一般式(2)の(a)、(b)及び(c)〔化5〕
【0017】
【化5】
Figure 0004311836
【0018】
からなる群より選ばれた一つの基を表し、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシル基、フェニル基、ビフェニル基、フェノキシ基、ビフェノキシ基、トリフルオロメチル基、塩素原子または臭素原子を表し、Yは、一般式(3)の(d)、(e)、(f),(g)及び(h)〔化6〕
【0019】
【化6】
Figure 0004311836
【0020】
からなる群より選ばれた1つの基を示す}で表される繰り返し構造単位を有するポリイミドであることが好ましい。一般式(2)において(a)の基が好ましい。また、一般式(3)において(g)の基が好ましい。
【0021】
上記構造を有する熱可塑性ポリイミド、又はその前駆体であるポリアミド酸の製造方法について説明する。先ず、撹拌機、還流冷却機及び窒素導入管を備えた容器中で、ジアミンを有機溶剤に溶解する。次に、この溶液に窒素雰囲気下において芳香族テトラカルボン酸二無水物をジアミンに対して0.9〜1.1モル当量になるように添加し、0〜90℃で24時間撹拌してポリアミド酸溶液を得る。このポリアミド酸溶液を100〜200℃で撹拌し、反応脱水することによりポリイミド溶液を得る。これらのポリアミド酸溶液及びポリイミド溶液は粘度調節のために、有機溶剤にて希釈しても差し支えない。
【0022】
上記ポリアミド酸、又はポリイミドは、ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物より合成される。具体的には、ジアミンとして、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノフェニル)スルホキシド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(3ーアミノフェニル)スルホン、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(4アミノフェニル)スルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(4−アミノフェニキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン等が挙げられる。
【0023】
上記ジアミンの内、好ましくは、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、及びビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホンである。更に好ましくは1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンである。ジアミンは単独で、または2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0024】
テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニルスルホン)二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、4,4’−(p−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、4,4’−(m−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6,−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げらる。
【0025】
上記テトラカルボン酸二無水物の内、好ましくは、ピロメリット酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、及び1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物である。更に好ましくは3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物である。テトラカルボン酸二無水物は単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0026】
本発明の熱可塑性ポリイミド層に係わる熱可塑性ポリイミドのポリマー末端を封止する目的として、ジカルボン酸無水物を添加しても良い。使用されるジカルボン酸無水物としては、無水フタル酸、2,3−ベンゾフェノンジカルボン酸無水物、3,4−ベンゾフェノンジカルボン酸無水物、2,3−ジカルボキシフェニルフェニルエーテル無水物、2,3−ビフェニルジカルボン酸無水物、3,4−ビフェニルジカルボン酸無水物、2,3−ジカルボキシフェニルフェニルスルホン無水物、3,4−ジカルボキシフェニルフェニルスルホン無水物、2,3−ジカルボキシフェニルフェニルスルフィド無水物、1,2−ナフタレンジカロボン酸無水物、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物、1,8−ナフタレンジカルボン酸無水物、1,2−アントラセンジカルボン酸無水物、2,3−アントラセンジカルボン酸無水物、1,9−アントラセンジカルボン酸無水物が挙げられる。
【0027】
これらのジカルボン酸無水物はアミンまたはジカルボン酸無水物と反応性を有しない基で置換されてもよい。ジカルボン酸無水物の添加量は、通常、主原料であるジアミンとテトラカルボン酸二無水物の合計量100モルに対して0.001〜0.5モルの範囲である。好ましくは0.005〜0.25モルの範囲である。
【0028】
同様に熱可塑ポリイミドのポリマー末端を封止する目的でモノアミンを添加してもよい。使用されるモノアミンとしては、次のようなものが挙げられる。例えば、アニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、2,3−キシリジン、2,4−キシリジン、2,5−キシリジン、2,6−キシリジン、3,4−キシリジン、3,5−キシリジン、o−クロロアニリン、m−クロロアニリン、p−クロロアニリン、o−ニトロアニリン、o−ブロモアニリン、m−ブロモアニリン、o−ニトロアニリン、m−ニトロアニリン、p−ニトロアニリン、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、o−アニリジン、m−アニリジン、p−アニリジン、o−フェネチジン、m−フェネチジン、p−フェネチジン、o−アミノベンツアルデヒド、m−アミノベンツアルデヒド、p−アミノベンツアルデヒド、o−アミノベンゾニトリル、m−アミノベンゾニトリル、p−アミノベンゾニトリル、2−アミノビフェニル、3−アミノビフェニル、4−アミノビフェニル、2−アミノフェノールフェニルエーテル、3−アミノフェノールフェニルエーテル、4−アミノフェノールフェニルエーテル、2−アミノベンゾフェノン、3−アミノベンゾフェノン、4−アミノベンゾフェノン、2−アミノフェノールフェニルスルフィド、3−アミノフェノールフェニルスルフィド、4−アミノフェノールフェニルスルフィド、2−アミノフェノールフェニルスルホン、3−アミノフェノールフェニルスルホン、4−アミノフェノールフェニルスルホン、α−ナフチルアミン、β−ナフチルアミン、1−アミノ−2−ナフトール、2−アミノ−1−ナフトール、4−アミノ−1−ナフトール、5−アミノ−1−ナフトール、5−アミノ−1−ナフトール、5−アミノ−2−ナフトール、7−アミノ−2−ナフトール、8−アミノ−2−ナフトール、1−アミノアントラセン、2−アミノアントラセン、9−アミノアントラセン等が挙げられる。
【0029】
これらモノアミンは単独でまたは2種以上組み合わせて使用しても良い。モノアミンの添加量は、通常、主原料であるジアミンとテトラカルボン酸二無水物の合計100モルに対して0.001〜0.5モルの範囲である。好ましくは0.005〜0.25モルの範囲である。
【0030】
上記ポリイミド溶液、又はその前駆体であるポリアミド酸溶液の濃度は、通常、塗布性等を考慮して、5〜25重量%程度のものが用いられる。有機溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホルアミド、テトラメチル尿素、N−メチルカプロラクタム、プチロラクタム、テトラヒドロフラン、m−ジオキサン、p−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン、ビス2−(2−メトキシエトキシ)エチルエーテル、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、クレゾール酸,p−クロロフェノール、アニソール等を含む溶剤が挙げられ。好ましくは、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドが挙げられる。
【0031】
次いで、金属箔表面に対する塗布液の塗工方法について説明する。〔図1〕は、従来のロールコーター法の一例を示す模式図である。〔図1〕に示す如く、コートロール1により持ち上げられたワニスパン2中の塗布液がドクターロール3により計量され、バックアップロール4上の金属箔5に転写され、塗布される。また、グラビアロール法に関しても塗布液がグラビアロール上で計量され、バックアップロール上の金属箔5に転写され、塗布される。
【0032】
〔図2〕は、本発明が好ましく適用されるキス型リバースロールコーター法の一例を示す模式図である。〔図2〕に示す如く、コートロール1により持ち上げられたワニスパン2中の塗布液がドクターロール3により計量され、前ガイドロール6、コートロール1、及び、後ガイドロール7の3個のロールにて支持されている金属箔5に転写され、塗布される。本発明には、この他、キス型グラビアロール法、キス型リバースグラビアコーター法などのキス型の塗布方法も採用できる。
本発明においては、〔図1〕に示したようなバックアップロール4は使用しない。そのため、金属箔5が、コートロール1、及びバックアップロール4により挟持されることがなく、表面処理等が施されていても、それを損傷することがない。塗布液の塗工面を平滑に保持することができる利点がある。
【0033】
本発明では、塗工工程における金属箔の走行速度に対するコートロールの周速度の比が115〜200%に制御する。該速度比が115%未満では均一な塗工ができなくなり、ポリイミド層の厚みばらつきが発生する。また、200%を超えても塗工ムラ、ポリイミド層の厚みムラが発生する。通常、塗工工程における金属箔の走行速度は0.5〜5m/分程度、また、コートロールの周速度は0.6〜10m/分程度である。
【0034】
塗工工程において、コートロールへの金属箔の抱き込み角度は、1〜180度の範囲に保持することが好ましい。更に好ましくは1〜30度である。ここで、コートロールへの金属箔の抱き込み角度とは、コートロールと前後2本のガイドロールの三者にて支持されている基材がコートロールに対して抱き込んでいる角度である。即ち、〔図2〕において、金属箔5がコートロール1と接触した後、引き続き直線的に走行したと仮定したことを示す点線8と、実際に走行する金属箔5とのなす角(θ)を意味する。
【0035】
また、塗布工程において、金属箔の張力は0.0020〜0.1471N/mの範囲で保持することが好ましい。0.1471N/mを超える張力範囲では、金属箔にしわが発生することがある。0.0020N/mに未満では、金属箔がコートロールに幅方向に均一に接触しなくなる傾向がある。塗布液の塗工厚さは、イミド化後のポリイミド層の各層の厚みが25μm以下になる厚みが好ましい。更に好ましくは0.2〜10μmである。ポリイミド層は、2層以上形成してもよい。層数の上限には特に制限はないが、通常、3層程度である。
【0036】
金属箔に塗布液を塗布した後、乾燥する。乾燥方法としては、ロールサポート搬送、エアーフロート搬送など、公知の方法が採用できる。乾燥は、通常、80〜300℃の空気、又は窒素雰囲気下において、溶剤含有量がポリイミド100重量部に対して150重量部を超えない範囲まで乾燥する。乾燥後のイミド化方法は、イナートオーブンによるバッチ法、イミド化炉による連続式方法等の公知の方法が用いられる。特にその方法、条件に制限はないが、好ましくはイミド化炉による連続式方法である。イミド化は、通常、200〜450℃で行われ、溶剤含有量がポリイミド100重量部に対して0.5重量部を超えない範囲までイミド化する。
上記のようにして製造される本発明のポリイミド金属箔積層板は、総厚みが6〜200μm程度であり、プリント基板等として、電気工業分野、電子工業分野等において使用される。
【0037】
【実施例】
次に、本発明の実施例を示し、本発明について更に詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。尚、実施例に示した金属箔の弛み、均一塗工性、及びと厚みムラは、下記方法により測定した。
【0038】
(1)金属箔の弛み(mm)
〔図3〕は金属箔の弛みの測定方法の概要を示す模式図である。〔図3〕に示す如く、幅が684mmである金属箔5を繰り出し軸から、前ガイドロール10と後ガイドロール11の上を通過させる。この時、2本のガイドロール10及び11間を走行する金属箔5を水平に保つ。金属箔5がガイドロール10及び11に接触する点間の距離は1000mmとする。後ガイドロール11を通過した金属箔に5kgの重り12を負荷させ、繰り出し軸にロックし、重り12が地面に接触しないようにする。金属箔5がガイドロール10及び11に接触する箇所の中央位置(一方の接触点から500mmの位置)の部分から金属箔の端面を基準とし、レーザー変位計(キーエンス(株)製、形式:LB−1000)13を用いて全幅についてその変位を測定する。
(2)均一塗布性
FMCL試料を縦横100mmの正方形に切り取り、塩化第二鉄水溶液(40重量%)を用いて金属箔層に化学エッチング処理を施し、ポリイミド層のみとする。ポリイミド層を透過光で観察して、直径10μm以上の穴の有無を観察する。
(3)ポリイミド層の厚みムラ(μm)
前項と同様にしてポリイミド層のみを得る。接触式膜厚計(Heidenhain(株)製、形式:200068G)を用いて、横方向に任意に10点厚みを測定し、その最大値と最低値の差を厚みムラとする。
【0039】
実施例1
撹拌機、還流冷却機及び窒素導入管を備えた容器を用いて、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン584g(2.0モル)をN,N−ジメチルアセトアミド4500gに溶解した。この溶液に窒素雰囲気下において3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物644g(2.0モル)を添加し、10℃で24時間撹拌してポリアミド酸溶液を得た。このポリアミド酸溶液をN,N−ジメチルアセトアミドで15.0重量%まで希釈し、25℃における粘度を0.2Pa・sに調節し、塗布液とした。
【0040】
〔図2〕に示したような、前ガイドロール、コートロール、及び、後ガイドロールの3個のロールにて金属箔(オーリン社製銅箔、商品名:C7025、厚さ:18μm、幅:68.4cm、弛み:6.0mm)を支持する形式のキス型リバースロールコーターを用いた。金属箔の走行速度に対するコートロールの周速度の相対速度を115%にして、イミド化後のポリイミド層の厚さが2μmになるように、金属箔の表面に上記塗布液(ポリアミック酸溶液)を転写、塗布した。金属箔のコートロールへの抱き込み角は30度、張力は0.01471N/mであった。ポリアミド酸塗工金属箔を熱風乾燥炉にて100℃で、樹脂固形分100重量部に対して溶剤含有量が5.0重量部になるまで乾燥した。さらに、350℃の窒素雰囲気(酸素濃度1容量%)の中で20分間加熱してイミド化してポリイミド層を形成し、ポリイミド金属箔積層板を得た。金属箔の弛み、得られたポリイミド金属箔積層板の均一塗布性、及びポリイミド層の厚みムラを上記方法により測定した。主な製造条件、及び得られた結果を〔表1〕に示す。
【0041】
実施例2
銅箔の弛みを4.0mm、張力を0.0294N/m、コートロールへの抱き込み角を15度、金属箔の走行速度に対するコートロールの相対速度を200%とした以外は、実施例1と同様にしてポリイミド金属箔積層板を得た。主な製造条件、及び得られた結果を〔表1〕に示す。
【0042】
実施例3
金属箔の走行速度に対するコートロールの相対速度を160%にした以外は、実施例1と同様にしてポリイミド金属箔積層板を得た。主な製造条件、及び得られた結果を〔表1〕に示す。
【0043】
比較例1
金属箔の走行速度に対するコートロールの相対速度を110%にした以外は、実施例1と同様にしてポリイミド金属箔積層板を得た。主な製造条件、及び得られた結果を〔表1〕に示す。
【0044】
比較例2
金属箔の走行速度に対するコートロールの相対速度を120%、金属箔の弛みを6.6mmにした以外は、実施例2と同様にしてポリイミド金属箔積層板を得た。主な製造条件、及び得られた結果を〔表1〕に示す。
【0045】
比較例3
金属箔の弛みを7.8mm、金属箔の走行速度に対するコートロールの相対速度を170%にした以外は、実施例1と同様にしてポリイミド金属箔積層板を得た。主な製造条件、及び得られた結果を〔表1〕に示す。
【0046】
比較例4
金属箔の弛みを6.7mm、金属箔の走行速度に対するコートロールの相対速度を160%にした以外は、実施例1と同様にしてポリイミド金属箔積層板を得た。主な製造条件、及び得られた結果を〔表1〕に示す。
【0047】
比較例5
金属箔の弛みを8.0mmにした以外は、実施例1と同様にしてポリイミド金属箔積層板を得た。主な製造条件、及び得られた結果を〔表1〕に示す。
【0048】
比較例6
金属箔の弛みを5.4mm、金属箔の走行速度に対するコートロールの相対速度を210%にした以外は、実施例1と同様にしてポリイミド金属箔積層板を得た。主な製造条件、及び得られた結果を〔表1〕に示す。
【0049】
【表1】
Figure 0004311836
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、塗布液の塗工工程において、バックアップロールを用いることなしに、前ガイドロール、コートロール、及び後ガイドロールの3個のロールを用いて金属箔を支持するために、金属箔表面を損傷することがない。また、金属箔の走行速度とコートロールの周速度、及び、金属箔がコートロールに接触する際の角度をそれぞれ特定の範囲に制御するために、塗布液の均一な塗工が可能である。その結果、得られる積層体のポリイミド層の厚みが均一である。従って、本発明により製造されるポリイミド金属箔積層板は、プリント基板等として、電気工業分野、電子工業分野等において極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、従来のロールコーター法の一例を示す模式図である。
【図2】は、本発明が好ましく適用されるキス型リバースロールコーター法の一例を示す模式図である。
【図3】は、金属箔の弛みの測定方法の概要を示す模式図である。
【符号の説明】
1 コートロール
2 ワニスパン
3 ドクターロール
4 バックアップロール
5 金属箔
6 前ガイドロール
7 後ガイドロール
8 点線
9 繰り出し軸
10 前ガイドロール
11 後ガイドロール10
12 重り
13 レーザー変位計
θ 抱き込み角

Claims (8)

  1. 金属箔の表面にポリアミド酸溶液及びポリイミド溶液から選ばれた少なくとも1種の塗布液を塗布、加熱してポリイミド層を形成するポリイミド金属箔積層板の製造方法において、弛みが6mm以下である金属箔を用い、該金属箔を前ガイドロール、コートロール、及び後ガイドロールの3個のロールを用いて支持し、該金属箔がコートロールに接する際の抱き込み角度が1〜180度になるように制御し、且つ、コートロール周速度を金属箔の走行速度に対して115〜200%の範囲に制御してコートロール上の塗布液を金属箔表面へ転写することを特徴とするポリイミド金属箔積層板の製造方法。
  2. 塗布液を金属箔表面へ転写した後、80〜300℃において乾燥し、次いで、200〜450℃においてイミド化することを特徴とする請求項1記載のポリイミド金属箔積層板の製造方法。
  3. 抱き込み角度が1〜30度になるように制御することを特徴とする請求項1記載のポリイミド金属箔積層板の製造方法。
  4. ポリイミド層が熱可塑性ポリイミドであることを特徴とする請求項1記載のポリイミド金属箔積層板の製造方法。
  5. 熱可塑性ポリイミドが、一般式(1)〔化1〕
    Figure 0004311836
    {一般式(1)中、Xは、一般式(2)の(a)、(b)及び(c)〔化2〕
    Figure 0004311836
    からなる群より選ばれた一つの基を表し、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシル基、フェニル基、ビフェニル基、フェノキシ基、ビフェノキシ基、トリフルオロメチル基、塩素原子または臭素原子を表し、Yは、一般式(3)の(d)、(e)、(f),(g)及び(h)〔化3〕
    Figure 0004311836
    からなる群より選ばれた1つの基を示す}で表される繰り返し構造単位を有するポリイミドであることを特徴とする請求項4記載のポリイミド金属箔積層板の製造方法。
  6. 前記一般式(1)におけるXが、前記一般式(2)の(a)の基であり、Yが、前記一般式(3)の(g)の基であることを特徴とする請求項5記載のポリイミド金属箔積層板の製造方法。
  7. 金属箔が銅箔であることを特徴とする請求項1記載のポリイミド金属箔積層板の製造方法。
  8. 金属箔の厚みが5〜150μm、ポリイミド層の各層の厚みが0.2〜10μmであることを特徴とする請求項1記載のポリイミド金属箔積層板の製造方法。
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