JP4310899B2 - 高開口数プラスチック光ファイバ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、開口数が0.60以上と高く、しかも透光性、耐熱性、耐屈曲性、耐環境性などバランス良く優れたプラスチック光ファイバに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プラスチック光ファイバ(以下、POFと略記する)は加工性、取り扱い性、製造コストなどの面でガラス系光ファイバに比べて優れているので、短距離の光信号伝送、ライトガイドなどに使用されている。
【0003】
特にライトガイドの分野では広角な光量あるいは絶対的に多くの光量を伝送することが好まれ、開口数が0.50程度と高いPOFが使用されており、更なる高開口数のPOFも求められている。また、通信分野においても、特に自動車分野など狭い空間をはわせる必要のある用途においては、曲げ特性に優れた高開口数POFが求められている。
【0004】
なお、理論開口数は次式のようにコア、クラッドの屈折率差にて表わされる。
【0005】
開口数=((コアの屈折率)2 −(クラッドの屈折率)2 )1/2
POFは、通常コアとクラッドとの2層より構成されており、コアには、ポリメチルメタクリレート(以下、PMMAと略記する)に代表されるように、透明性に優れ耐候性の良好な重合体が一般に使用される。一方、クラッドには、コア内部に光を閉じ込めておくために、コアよりも低屈折率であることが必要であり、弗素含有重合体が広く使用されている。
【0006】
このクラッド用の弗素含有重合体としては、一般的に下記3種が使用されているが、それぞれ長所・短所を持っているので、開口数、耐熱性、機械特性などの観点から使い分けられている。
(1)弗化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体(特公昭63−67164号公報)、弗化ビニリデン/ヘキサフルオロアセトン共重合体(特開昭61−22305号公報)などの弗化ビニリデン系共重合体。
(2)フルオロアルキルメタクリレートとメチルメタクリレ−トとの共重合体(特公昭43−8978号公報)をクラッドに用いたPOF。
(3)長鎖フルオロアルキルメタクリレートとメチルメタクリレ−トとの共重合体(特開昭62−265606号、特開平4−204909号公報)をクラッドに用いたPOF。
【0007】
(1)の弗化ビニリデン系共重合体は、PMMAなどメチルメタクリレ−トを主成分とする重合体との相溶性が良いため、これらをクラッドに用いたPOFは、コアとの界面密着性が良く機械特性も良好である。しかしながら、これらをクラッドに用いたPOFは耐熱性が約70℃と低く用途も限定される。また、それら弗化ビニリデン系共重合体はいずれも結晶性の重合体であるため、弗化ビニリデン組成が実質的に70〜85モル%と限られた範囲内でしか無色透明性を示さない。そのため、弗化ビニリデン系共重合体をクラッドに用いた現行PMMA系POFの開口数は0.50前後であり、これ以上の開口数アップは望めない。
【0008】
(2)のフルオロアルキルメタクリレート系共重合体は、透明性に優れガラス転移温度は高いため、これらをクラッドに用いたPOFは、耐熱性は約85℃と優れるが脆く、メチルメタクリレ−トを主体とする重合体との相溶性が良くないため、これらをクラッドに用いたPOFは、耐屈曲性などの機械特性に劣っている。しかもフルオロアルキルメタクリレートの組成比が増大するに伴い機械特性に劣る傾向があるので、フルオロアルキルメタクリレート系共重合体をクラッドに用いた現行PMMA系POFの開口数は0.47前後であり、開口数アップは多くは望めない。
【0009】
一方、(3)の長鎖フルオロアルキルメタクリレート系共重合体は、(2)よりも機械特性が改善され、弗素含有率が高く、屈折率を低くできる可能性があるが、その共重合組成比を高くすると白濁したり熱安定性が劣って発泡して透光性を悪化する問題が生ずるため、長鎖フルオロアルキルメタクリレート系共重合体をクラッドに用いた現行PMMA系POFの開口数は0.50前後であり、開口数アップは多くは望めない。
【0010】
以上のことより、開口数の高いPOFとするためには、さらに屈折率の低い弗素含有率の高いモノマーを共重合する必要があり、そのひとつとして、弗化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体の透明性を向上すべく、特許第2857411号に示すように第3成分としてヘキサフルオロプロピレンを共重合して結晶性を抑えた重合体(Dyneon社の商品名”THV200”)をクラッドに用いたPOFを提案している。これは開口数が高く透光性に優れるが、クラッド材が柔軟で巻き取り時に粘着するなどの問題があったり、耐熱性が劣ったりして実用化が困難であった。
【0011】
その改良として、特開平11−95044号公報、あるいは特開平10−274716号公報に示すように、”THV200”をクラッド材に使用して上記(1)で示した弗化ビニリデン系共重合体あるいは弗化ビニリデンホモポリマー、ナイロン12などをさらに被せて保護層として保護して、二層クラッド構造としたPOFを提案している。しかしながら、二層クラッドは特殊な口金を必要とするため一層クラッドに比して生産能力が低くコスト高になったり、薄層のクラッドを2分割することになるため、密着性が劣ったり機械特性が劣ったりする等の問題がある。
【0012】
一方、Dyneon社の商品で、同じ共重合成分を有する組成物で組成比を変えた三元共重合体として、弗化ビニリデン組成が少ない”THV400””THV500”などがある。しかしながら、これらのポリマーは、”THV200”のような粘着性の問題はないが、透明性に劣り、光ファイバ用途には適さなかった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明のおもな目的は、開口数が高く、しかも、透光性、耐熱性、耐屈曲性、耐環境性などバランス良い特性を有する保護層のないクラッド1層となるPOFを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は主として次の構成を有する。
【0015】
すなわち、本発明は、「メチルメタクリレ−トを主成分とする(共)重合体からなるコアと、
ヘキサフルオロプロピレン 10〜30重量%
テトラフルオロエチレン 45〜75重量%
弗化ビニリデン 10〜35重量%
パーフルオロアルキルビニルエーテル類 1〜10重量%
を共重合成分とし、かつ弗素組成重量率が70〜74%である共重合体からなるクラッドからなり、理論開口数がNA=0.60〜0.65であることを特徴とする高開口数プラスチック光ファイバ」である。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明のコアをなすメチルメタクリレートを主成分とする(共)重合体としては、PMMA、メチルメタクリレート主体の共重合体(例えば(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、置換スチレン、N−置換マレイミドなどを共重合)、あるいはそれらを高分子反応したグルタル酸無水物、グルタルイミドなどの変性重合体などが挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレ−ト、t−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ボルニルメタクリレート、アダマンチルメタクリレートなどが、置換スチレンとしては、スチレン、メチルスチレン、α−メチルスチレンなどが、N−置換マレイミドとしては、N−イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−o−メチルフェニルマレイミドなどが挙げられる。これら共重合成分は、複数で用いても良く、これら以外の成分を少量使用してもよい。また、耐酸化防止剤などの安定剤が透光性に悪影響しない量だけ含まれていても構わない。これらの重合体の中で、実質的にPMMAであることが、生産性、透光性、耐環境性などの点から最も好ましい。
【0017】
本発明のクラッドは、
ヘキサフルオロプロピレン 10〜30重量%
テトラフルオロエチレン 45〜75重量%
弗化ビニリデン 10〜35重量%
パーフルオロアルキルビニルエーテル類 1〜10重量%
からなる共重合体からなり、かつ弗素組成重量率が70〜74%であることが必要である。この範囲外の組成では、低屈折率化、低結晶化(無色透明化)が達成できなかったり、コアのメチルメタクリレ−ト主体の(共)重合体への密着性が劣ったり、耐屈曲性などの機械特性が大幅に低下したり、また粘着性がある、耐熱性が不十分であったりなどの問題を有する。その結果、高開口数を維持しバランス良いPOF特性とするためには、理論開口数はNA=0.60〜0.65であることが必要である。
【0018】
さらに、
ヘキサフルオロプロピレン 14〜25重量%
テトラフルオロエチレン 49〜70重量%
弗化ビニリデン 14〜30重量%
パーフルオロアルキルビニルエーテル類 2〜7重量%
からなる共重合体であることが好ましく、またクラッドの弗素組成重量率が71〜74%であり、プラスチック光ファイバの理論開口数がNA=0.61〜0.65であることが好ましい。
【0019】
他の共重合可能な成分として高開口数を維持するためには、パーフルオロアルキルビニルエーテル類を使用する。
【0020】
本発明のクラッドを構成する共重合体の好ましい物性としては、ショアD硬度(ASTM D2240)は35〜55の範囲にあり、メルトフローインデックス(265℃/5kg)が5〜80g/10分の範囲である。
【0021】
また、クラッドの厚みは2〜20μmであることが好ましい。
【0022】
なお、さらに保護層として、弗化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体、弗化ビニリデン/ヘキサフルオロアセトン共重合体、弗化ビニリデンホモポリマーなどの弗化ビニリデン系(共)重合体、あるいはコアと同様なメチルメタクリレ−ト主体の(共)重合体、ナイロン12などの重合体を2〜100μm程度被せた構造としても構わない。この保護層は例えばカーボンブラックなどの顔料を入れて着色することも可能である。
【0023】
本発明のPOFは一般的な製造法と同様にして製造することができる。例えば、コア材とクラッド材とを加熱溶融状態下で、同心円状複合用の複合口金から吐出してコア/クラッドの2層芯鞘構造を形成させる複合紡糸法が好ましく用いられる。続いて、機械特性を向上させる目的で1.2〜3倍程度の延伸処理が一般的に行なわれPOFとなる。このPOFの外径は通常0.1〜3mm程度であり、目的に応じて適宜選択すればよいが、取扱性などの面から0.5〜1.5mmのものが好ましい。また、保護層に設ける場合にも公知の方法によって製造することができるが、3層同時の複合紡糸法が好ましく用いられる。
【0024】
本発明のPOFには、更に、ポリエチレン、ポリプロピレンあるいはそれらの共重合体、ブレンド品、有機シラン基を含有するオレフィン系ポリマー、エチレン−酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ弗化ビニリデン、ナイロン12などのポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ナイロンエラストマー、ポリエステルエラストマーあるいはウレタン樹脂、弗素樹脂といった樹脂を被覆し、コードとすることができる。被覆層は1層でも多層でも良く、多層の場合は間にケブラーなどのテンションメンバーを入れても良い。これらの被覆材には、難燃剤の他、耐酸化防止剤、耐老化剤、UV安定剤などの安定剤などを含んでも良い。なお、被覆層はクロスヘッダダイを使用した溶融押し出し成形法等の公知の方法によって形成することができる。
【0025】
【実施例】
以下、本発明を実施例により、更に詳細に説明する。なお、作製したPOFの評価は以下の方法で行った。
【0026】
透光性:ハロゲン平行光(波長650nm)を使用して30/2mカットバック法により測定した。
【0027】
フッ素含有率:元素分析にて求めた。
【0028】
屈折率:測定装置としてアッベ屈折率計を使用して、室温25℃雰囲気にて測定した。
【0029】
連続屈曲破断回数:ファイバの一端に500gの荷重をかけ、直径30mmφのマンドレルで支持し、その支持点を中心にファイバの他端を角度90°で連続的に屈曲させて、ファイバが切断するまでの回数を測定した(n=5の平均値)。
【0030】
耐熱性:高温オーブン(タバイエスペック社製PHH−200)内に試長28mのファイバ(両末端各1mはオーブン外)を85℃、500時間投入し、試験前後の光量を測定してその変化量を指標とした(n=3の平均値。マイナスは光量ダウンを示す)。
【0031】
ヒートショック:複合環境試験機内に試長28mのファイバ(両末端各1mはオーブン外)を投入し、−40℃と85℃(5分で昇温あるいは降温、それぞれ240分保持)の変化50サイクル前後の光量を測定してその変化量を指標とした(n=3の平均値。マイナスは光量ダウンを示す)。
【0032】
[実施例1]
クラッド材として表1の共重合比の弗化ビニリデン(2F)/テトラフルオロエチレン(4F)/ヘキサフルオロプロピレン(6F)/ヘプタフルオロプロピルビニルエーテル共重合体(屈折率1.360、フッ素含有率71.7%)を複合紡糸機に供給した。さらに、連続魂状重合によって製造したPMMA((屈折率1.492)をコア材として複合紡糸機に供給して、235℃にてコア、クラッドを芯鞘複合溶融紡糸し、ファイバ径1000μm(コア径980μm、クラッド厚10.0μm)のベアファイバを得た。さらに、ポリエチレンを被覆して外径2.2mmのコードとした。
【0033】
こうして得られたPOFを前記の評価方法により評価し、その結果を表1に示した。表1からわかるように、透光性、繰り返し屈曲性、耐熱性、耐湿熱が良好であり、高開口数POFとして好適なものであった。
【0034】
[実施例2〜3、参考例1〜2および比較例1〜5]
クラッド材を表1のとおりに変更した以外は実施例1と同様にしてPOFを得た。これらのPOFを使用して実施例1と同じ評価を行い、その結果を表1に示した。
【0035】
本発明の実施例2〜3は透光性、繰り返し屈曲性、耐熱性、耐ヒートショック性がいずれも優れていた。
【0036】
すなわち、第4成分を有さない比較例1(Dyneon社”THV200”)、比較例2(Dyneon社”THV500”)および比較例3(Dyneon社”THV400”)に比べて、実施例2〜3は耐熱性、耐ヒートショック、透光性に優れる。また、第4成分としてヘキサフルオロアセトン12重量%共重合させた比較例4では耐屈曲性その他の物性バランスが悪かった。
【0037】
【表1】
【0038】
【発明の効果】
本発明は、弗化ビニリデン、テトラフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロピレンに更にパーフルオロアルキルビニルエーテル類を共重合したクラッドを使用することにより開口数が0.60以上と高いながらも、透光性、耐熱性、耐屈曲性、耐環境性などバランス良く優れたPOFをクラッド1層において提供できる。
Claims (3)
- メチルメタクリレ−トを主成分とする(共)重合体からなるコアと、
ヘキサフルオロプロピレン 10〜30重量%
テトラフルオロエチレン 45〜75重量%
弗化ビニリデン 10〜35重量%
パーフルオロアルキルビニルエーテル類 1〜10重量%
を共重合成分とし、かつ弗素組成重量率が70〜74%である共重合体からなるクラッドからなり、理論開口数がNA=0.60〜0.65であることを特徴とする高開口数プラスチック光ファイバ。 - クラッドが、弗素組成重量率が71〜74%の共重合体からなり、理論開口数がNA=0.61〜0.65であることを特徴とする請求項1記載の高開口数プラスチック光ファイバ。
- クラッドが
ヘキサフルオロプロピレン 14〜25重量%
テトラフルオロエチレン 49〜70重量%
弗化ビニリデン 14〜30重量%
パーフルオロアルキルビニルエーテル類 2〜7重量%
を共重合成分とする共重合体からなることを特徴とする請求項1または2いずれかに記載の高開口数プラスチック光ファイバ。
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