JP4310453B2 - 紙敷設装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、甘しょ苗等のつる苗を植え付けた畝に乾燥防止等の目的で紙を敷設する紙敷設装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の紙敷設装置は、ペーパーロールから引き出した保水用の紙を甘しょ苗を植え付けた畝表面に被覆し、畝の溝部の土を掻き取り搬送装置により掻き取り、掻き取った土を上方に搬送してガイド筒に供給し、ガイド筒から紙の左右両側部に落下させて、紙を畝上に敷設する構成である(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−125419号公報(第13頁、第1図)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来装置では、畝に敷設した紙が風で飛ばないようにするために、掻き取り搬送装置により畝の溝部の土を掻き取り、その土を上方に搬送し紙の左右両側部に落下させる構成であるので、装置が大型化しコスト高となる問題点があった。
【0005】
そこで、この発明は、このような問題点を解消し、紙敷設装置の簡素化を図ろうとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記問題点を解決するために、請求項1の発明は、フレーム(68)の下部に、紙ロール(53)の支持装置(55)と、紙ロール(53)から引き出された紙(56)を畝上面に接触させて押圧する敷設ローラー(57)を設け、フレーム(68)の上部にハンドル(71)を設け、敷設ローラー(57)の上方に糊用タンク(69)を設け、該糊用タンク(69)の下方に糊付着ローラー(70)を支持して設け、糊用タンク(69)の底部は液体糊が少しずつ滲み出し、紙ロール(53)の紙(56)は糊付着ローラー(70)と敷設ローラー(57)に挟まれて敷設ローラー(57)の回転により引き出され、この紙(56)の引き出し移動により糊付着ローラー(70)が回転し紙(56)に糊が付着される構成とし、フレーム(68)に糊用タンク(69)を上下回動自在に取り付け、糊用タンク(69)の姿勢を変更することにより液体糊の底部からの滲み出しを防止するための突出貯留部(69a)を糊用タンク(69)に設け紙敷設装置とする。
【0007】
請求項1の発明では、ハンドル(71)を操作しながら、甘しょ苗の植え付けられた畝に沿って敷設ローラー(57)を回転しながら前進させる。支持装置(55)に支持された紙ロール(53)から機体の進行に伴って紙(56)が引き出され、引き出された紙(56)は敷設ローラー(57)の回転により畝上面に案内されながら押圧され、紙ロール(53)から引き出された紙(56)に糊が付着され、糊の付着された紙(56)は敷設ローラー(57)の回転により畝上面に案内されながら押圧され畝上面に貼り付けられる。そして、糊用タンク(69)の姿勢を変更することにより糊用タンク(69)の液体糊を底部から突出貯留部(69a)に移動させると、不要時における液体糊の底部からの滲み出しを防止することができる。
【0008】
請求項2の発明は、敷設ローラー(57)をフレーム(68)に上下回動自在に支持した請求項1に記載の紙敷設装置とする。
【0009】
請求項2の発明では、請求項1の発明の作用に加えて、畝表面や溝部に凹凸があっても、敷設ローラー(57)、糊付着ローラー(70)及び糊用タンク(69)が上下動して対応し、畝表面に安定して紙(56)を敷設することができる。
【0010】
【発明の効果】
請求項1の発明は、紙ロール53から引き出した紙56を敷設ローラー57により畝上面に押圧しながら液体糊を利用して貼り付けるので、畝に敷設した紙が風で飛ばないように畝上面に紙を敷設でき、簡単な構成の紙敷設装置によって容易且つ確実に行うことができる。そして、糊用タンク69の姿勢を変更することにより糊用タンク69の液体糊を底部から突出貯留部69aに移動させると、不要時における液体糊の底部からの滲み出しを防止することができる。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明の効果に加えて、畝表面や溝部に凹凸があっても、畝表面に安定して紙56を敷設することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面に示すこの発明の実施例の形態について説明する。
まず、苗移植機について説明する。この苗移植機は、走行部1及び操縦ハンドル2を備えた機体と、甘しょ苗Nを搬送する苗搬送部3と、苗搬送部3により搬送された苗Nを圃場に植え付ける苗植付体4とを備えている。
【0013】
走行部1は、エンジン5と、エンジン5の動力が伝達されて駆動される左右一対の後輪6,6と、機体前部に遊転自在に支持した左右一対の前輪7,7とを備えている。
【0014】
前記エンジン5の後方にはミッションケース8を配置し、ミッションケース8はエンジン5の左側後部に連結ケース部を介して連結されていている。そして、エンジン5の出力軸が連結ケース部にまで突出していて、出力軸を介してミッションケース8内の伝動機構に動力が伝達されている。ミッションケース8の左右両側部には、左右の伝動ケース9,9を上下回動自在に取り付け、伝動ケース9,9の回動中心部にミッションケース8から左右両側に延出した車輪駆動軸の先端を入り込ませて、伝動ケース9,9内の伝動機構に走行用動力を伝達し、この伝動機構を経て左右の車軸10,10を介して左右の後輪6,6に動力が伝達される。
【0015】
また、伝動ケース9,9のミッションケース8への取付部には、上方に延びるアーム11,11を一体的に取り付けている。ミッションケース8には昇降用油圧シリンダ12の一端を取り付け、この昇降用油圧シリンダ12のピストンロッド先端部に、上下方向の軸芯回りに回動する天秤杆13の中間部を取り付け、天秤杆13の右端部をロッド14を介して右側の伝動ケース9のアーム11にピン連結し、また、天秤杆13の左端部を伸縮作動可能な左右水平制御用油圧シリンダ15を介して左側の伝動ケース9のアーム11にピン連結している。
【0016】
しかして、昇降用油圧シリンダ12が作動して、そのピストンロッド部が後方に突出すると、左右のアーム11,11は後方に回動し、伝動ケース9,9は下方に回動し機体が上昇し、また、昇降用油圧シリンダ12のピストンロッドが前側に引っ込むと、機体が下降する。そして、この昇降用油圧シリンダ12は、機体に対する畝上面の高さをセンサSにより検出し、この検出結果に基づき機体を畝の上面から所定の高さに保持するように構成している。なお、操縦ハンドル2の近傍の操作具を人為操作することにより、機体の高さを昇降できる。
【0017】
また、前記左右水平用油圧シリンダ15が伸縮すると、天秤杆13の両端部が前後に回動して、左右の伝動ケース9,9が互い違いに上下動し、機体を左右に傾斜させる。なお、この左右水平制御用油圧シリンダ15は、左右の傾斜を検出する傾斜センサの検出結果に基づいて機体を左右水平になるように制御される。
【0018】
エンジン5の下方の左右中央位置には、前後方向の軸芯回りに前輪支持フレーム16を取り付け、この前輪支持フレーム16の左右両端部から下方に延びるアーム部の下端部に車軸17,17を取り付け、車軸17,17に左右の前輪7,7を取り付け、前輪7,7をローリング自在に構成している。
【0019】
ミッションケース8から後方に向けてハンドルフレーム2bを延出し、ハンドルフレーム2bの後端部に操縦ハンドル2を取り付けている。ハンドルフレーム2bは、機体の左右中心部から右側に偏位して配置されている。操縦用ハンドル2はハンドルフレーム2bの後端部から左右後側に延出し、その左右両端部をグリップ部2a,2aとしている。
【0020】
次に、苗植付体4について説明する。
苗植付体4は、その苗植付作用部4aを昇降させる駆動部に連結し、苗植付体4の苗植付作用部4aが、苗搬送部3により搬送された苗を取って圃場に植え付ける構成である。
【0021】
苗植付体4を駆動する駆動部は、ミッションケース8内から苗植付具駆動用の動力を受けて駆動される伝動機構を内争する植付伝動ケース18に設けている。植付伝動ケース18は、その前側部がミッションケース8の後端部に連結されていて、後斜め上方に延びる第1ケース部18aと、この第1ケース部18aの上部左側に円筒状に突出するボス18a’に左右軸心回りに回動自在に取り付けられている第2ケース部18bと、第2ケース部18bの左側端部に固定されていて後斜め下方に延びる第3ケース部18cと、第3ケース部18cの下端部外側に固定されていて左側に延びる第4ケース部18dと、第4ケース部18dの左側端部に固定されていて後方に水平に延びる第5ケース部18eと、から構成されている。
【0022】
これらの第1ケース部18aから第5ケース部18e内に、苗植付体4駆動用動力を伝達する伝動機構を内装している。なお、第1ケース部18aに内装した伝動機構には、苗植付体4を最上昇位置あるいはその近傍で所定時間停止させる間欠駆動機構と、苗植付体4及び苗搬送部3を停止させるクラッチ機構を備えている。間欠駆動機構によって停止する時間は、間欠駆動機構が備える変速装置により調節され、この調節によって苗植付体4の苗植付株間が変更調節される。
【0023】
そして、苗植付体4は、駆動アーム19に連結されて駆動される構成である。駆動アーム19は、前記第5ケース部18eの後部から右側に突出した駆動軸20に取り付けられている。そして、駆動アーム19の先端部に、苗植付体4の支持リンク21の上端部を枢支連結し、支持リンク21の下端部に揺動リンク22の前端部を枢支連結している。揺動リンク22の後端部は、第5ケース部18eに前部が固着する支持フレーム23の後端部と、前記第1ケース部18aの上部左側に左右軸心回りに回動自在に取り付けられている第2ケース部18bに固着した支持フレーム33と連結する後部側の支持フレーム24の後端部とを左右に連結する連結軸25に回動自在に取付けている。
【0024】
また、支持リンク21の側方に、板状の苗植付作用部4a,4aを下端部に有する左右一対の苗植付アーム4b,4bを装着している。この苗植付アーム4b,4bの上部側を左右に交叉させ、その交叉部で回動軸4cにより軸支連結している。そして、苗植付アーム4b,4bの回動軸4cから上側部分及び下側部分を、支持リンク21の上部に設けた支持ピン、及び、支持リンク21と揺動リンク22とを軸支する連結軸により、左右軸芯方向に移動自在に支持している。更に、駆動アーム19も先端部側方に円盤状のカム体4dを一体作動するように取り付け、このカム体4dの左右側面周部に凹凸状のカム部を形成し、このカム部を苗植付アーム4b,4bの上端部間に入り込むように構成している。また、左右の苗植付アーム4b,4bの上端部が互いに接近するように付勢するスプリング等の弾性部材4eを、左右の苗植付アーム4b,4b間に装着し、左右の苗植付アーム4b,4bの上端部がカム体4dのカム部を左右両側から弾性的に挟み込むように構成している。
【0025】
しかして、苗植付体4は、駆動アーム19の回転により、苗植付作用部4a,4aの下端部は、畝Uに対して軌跡Tを描くように作動し、また、作業時に所定速度で機体が前進すると、苗植付作用部4a,4aの下端部は軌跡T’を描くように作動する。また、カム体4dにより、苗植付作用部4a,4aが所定のタイミングで開閉する。
【0026】
次に、苗搬送部3について説明する。
苗搬送部3は、甘しょ苗Nを基部側部分kが前後方向の姿勢で1本づつ収容する苗収容部26,…を多数設けて、複数の前後方向の軸回りに苗収容部26を列状に周回動させて苗を搬送する構成である。
【0027】
また、苗搬送部3は、苗収容部26,…を機体上部側で左右一側に搬送する上部横搬送部3aと、上部横搬送部3aで搬送されてきた苗収容部26,…を下方に搬送する下降搬送部3bと、下降搬送部3bで搬送されてきた苗収容部26,…を上方に搬送し、上部横搬送部3aの始端側に戻す上昇搬送部3cとから構成されている。
【0028】
そして、上部横搬送部3aで搬送される苗収容部26,…に作業者が苗を載置供給する構成とし、下降搬送部3bにより所定位置に下降した苗収容部26,…から苗植付体4の苗植付作用部4a,4aが苗を取り出し、圃場に植え付ける構成である。なお、オペレータは図2の作業位置WPに位置して、操縦ハンドル2を操作しながら、前方に位置する上部横搬送部3aに苗供給をする。
【0029】
苗収容部26は、前後方向に長い樋状に構成されていて、上部横搬送部3aで苗Nを載置する受板部26aと、隣接する苗収容部26,26を仕切る側板部26b,26bとを備え、上部横搬送部3aで上方に開口部の構成される形態である。また、前後方向にも開放された形状であり、その後側部には、苗収容部26,…に収容された苗Nの基部側部分kを挟持する左右の挟持部材27a,27aからなる苗挟持部27を設けている。
【0030】
植付伝動ケース18の第2ケース部18bの後部に支持フレーム33を固着し、この支持フレーム33に支持部材34,35を介して、機体の上部左右両側に位置するように軸36,37を軸架している。また、植付伝動ケース部18の第5ケース部18eに支持フレーム23の前側を固着し、支持フレーム23に固着した支持部材38にて機体下部に配置した前後方向の軸39,40を接近して取付けている。
【0031】
そして、苗収容部26,…を前後のチエン28,28に多数並べて取り付け、前記軸36,37の前後に設けたスプロケット29,29,30,30、及び、前記軸39,40の前後に設けたスプロケット31,31,32,32に、前記チエン28,28を巻き架けている。そして、上部右側のスプロケット29,29が駆動されると、苗収容部26,…が所定方向Dに沿って移動するように構成している。
【0032】
苗搬送部3の駆動部41は、苗植付体4に連動する揺動リンク22と一体的に上下揺動する連動リンク42と連動ロッド43を介して連動連結している。また、苗植付体4の苗植付作用部4a,4aが下降するときは、苗収容部26,…は停止し、苗植付体4の苗植付作用部4a,4aが上昇するときは、苗収容部26,…が移動するように、苗搬送部3が間欠駆動するように構成し、苗植付体4が苗を取り出して圃場に植え付ける毎に、隣接する苗収容部26が苗取り出し位置に一つづつ移動するように構成している。
【0033】
上記のように構成した苗搬送部3と苗植付体4とを支持するフレーム構造体は、植付伝動ケース18の第2ケース部18b、第3ケース部18c、第4ケース部18c、第5ケース部18eと、支持フレーム23,24,33と、連結軸25、及び、支持部材34,35,38等からなるフレーム構造体で構成しており、そして、このフレーム構造体は、第1ケース部18aの上部左側に円筒状に突出するボス18a’に左右軸心回りに回動自在に取り付けた第2ケース部18bを中心に回動自在に取付けられた構成となっている。更に、該フレーム構造体の後部には、植付けた苗に対して覆土鎮圧する接地転輪44,44を取付けていて、第2ケース部18bを中心に上下に回動する前記フレーム構造体の後部を畝Uの上面に支持させる構成としている。従って、圃場面の凹凸などにより走行部1と畝Uの上面との相対的な上下位置関係が変動しても、前記フレーム構造体は上下回動して接地転輪44,44による支持状態が継続し、畝Uの上面に対するフレーム構造体の高さが設定高さ(接地転輪44,44による支持高さ)に略々維持される。従って、上記フレーム構造体に支持される苗搬送部3と苗植付体4とは、走行部1側に対して上下回動可能で、且つ、接地転輪44,44によって支持される構成となるので、畝Uの上面に対して設定高さに略々維持されるように上下動し得るものとなる。なお、植付伝動ケース18の第1ケース部18aの上部から第3ケース部18c内への伝動は、第1ケース部18aの上部から、該第1ケース部18aのボス18a’内を通過させて左外側方に突出させた伝動軸18sを介して伝動する構成で、この伝動軸18sの左右方向の軸心が第1ケース部18aのボス18a’に回動自在に取り付けている第2ケース部18bの回動中心となるように設定している。
【0034】
次に、図5〜図6に基づき甘しょ苗の植え付けられた畝上面に紙を敷設する紙敷設装置50(A)について説明する。
紙敷設装置50(A)は、苗移植機の後部にあって、苗植付体4より後側で且つ植付けた苗に対して覆土鎮圧する接地転輪44,44より後側に装着している。図例では、具体的に、前記支持フレーム23,24の後端部からリヤフレーム51,51を後方に延出し、該リヤフレーム51,51の後部に上下に位置調節可能に取付けフレーム52を装着し、該取付けフレーム52に、紙ロール53のロール中心を支持する軸54を備えて紙ロール53を回転自在に支持する支持装置55と、紙ロール53から引き出した紙56を畝上面に案内しながら押圧する敷設ローラー57とを取付けている。また、取付けフレーム52には、敷設ローラー57を畝上面にスプリング等の弾性部材58によって押圧する押圧装置59を取付け、該押圧装置59の押圧作用側部を敷設ローラー57の支持部材60に連結している。そして、水を含む液体を貯留する液タンク61を走行部1側に取付け、その液タンク61内の液体を、ポンプ等の圧送手段によってホース62内を通して散水ノズル63から噴出させる構成とする。散水ノズル63は、苗植付体4より後側で且つ植付けた苗に対して覆土鎮圧する接地転輪44,44より後側に配置する。図例では、散水ノズル63は、支持フレーム23に取付けた取付部材64で機体に取付け、接地転輪44,44と敷設ローラー57の前後間の畝上面の土に散布するように配置している。なお、引き出し途中の紙56、あるいは、畝上面に敷設された紙56aに対して、前記液体を散布するように散布ノズル63を配置してもよい。
【0035】
上記構成とした紙敷設装置50(A)は以下のように作用するものとなる。まず、エンジン5を駆動し機体の作動部を駆動可能にして、走行部1を作動させ機体を走行させる。作業者は、図2に示す苗搬送部3の後側の作業位置に立って、苗搬送部3の苗収容部26,…に甘しょ苗Nを収容させる。苗搬送部3と苗植付体4を作動させると、苗搬送部3は、甘しょ苗Nを収容した苗収容部26,…を、苗植付体4が苗を取出す個所に向けて搬送し、苗植付体4は、搬送されてきた苗収容部26から苗を取り出して畝Uの上面に植え付けていく。苗が植え付けられた後、接地転輪44,44が畝上面の苗植付け位置の左右両側近傍個所を転動して、植え付けた苗に対して覆土鎮圧する。
【0036】
そして、紙敷設装置50(A)が後続して畝上を移動する。先ず、散布ノズル63で畝上面に水を含む液体が散布される。次いで、紙ロール53から引き出された紙56は敷設ローラー57により畝上面に案内されて押圧され、紙56aは畝上面に貼り付けられていく。
【0037】
甘しょ苗の栽培では、畝上面にビニール製のマルチシートを被せて栽培する場合があり、この場合は、紙等を被せて乾燥防止等を図ることが多くある。このようなときに、上記のように構成した苗移植機を用いれば、苗植付体4がマルチシートを突き破って畝Uの上部の土中に甘しょ苗Nを植付けることができるとともに、植え付けた甘しょ苗を覆う状態で、紙56aが畝上面に貼り付けられていく。ビニール製のマルチシートの場合は、散布ノズル63から散布する液体を水としただけでも、紙56aを畝上面のマルチシート表面に良好に貼り付けることができる。また、散布する水に水溶性の糊剤を混合すれば、畝上面に対する紙56aの接着が強力になり、容易に風で剥がれることもない。
【0038】
以上のように、紙敷設装置を、苗移植機の苗植付体4による圃場への苗植え付け位置の後方に、紙ロール53を支持する支持装置55と、紙ロール53から引き出された紙56を畝上面に接触させて押圧する敷設ローラー57と、紙56を畝上面に密着させる水を含む液体を散水する散水ノズル63とを配置した構成としたので、紙ロール53から引き出した紙56を敷設ローラー57により畝上面に押圧しながら水等の液体を利用して貼り付けるので、畝に敷設した紙が風で飛ばないように畝上面に紙を敷設でき、且つ、紙敷設装置の簡素化が図れる。また、そのために散水した水を含む液体は、甘しょ苗の植付後に必要な水分を供給することにもなり、栽培作業の効率化も図れる。
【0039】
次に、図7に示した別構成の紙敷設装置について説明する。
この紙敷設装置50(B)は、苗移植機の苗植付体4による圃場への苗植え付け位置の後方に、紙ロール53を支持する支持装置55と、紙ロール53から引き出された紙56を畝上面に接触させて押圧する敷設ローラー57と、紙ロール53から引き出された紙に糊剤を付着する糊付着装置67とを配置した構成のものである。図例に示したものは、具体的には、リヤフレーム51,51の後部に取付けフレーム52を装着し、該取付けフレーム52に、紙ロール53のロール中心を支持する軸54を備えて紙ロール53を回転自在に支持する支持装置55と、紙ロール53から引き出した紙56を畝上面に案内しながら押圧する敷設ローラー57とを取付けている。更にまた、糊タンク65、糊タンク65に入れている糊剤A、糊剤Aを回転しながら繰り出して紙56に塗り付ける糊塗りローラー66を備えた糊付着装置67を取付けている。
【0040】
よって、上記構成の紙敷設装置50(B)は、苗植付体4により圃場に苗が植え付けられ、苗植付位置の後方では、支持装置55に支持された紙ロール53から機体の進行に伴って紙が引き出され、引き出された紙56に糊付着装置67により糊が付着され、糊の付着された紙は敷設ローラー57の回転により畝上面に案内されながら押圧され畝上面に貼り付けられる。従って、甘しょ苗の植え付けられた畝の上面に糊により紙を接着して敷設するので、紙の風による飛散防止が一層確実になる。
【0041】
上記の紙敷設装置50(A),50(B)は、苗移植機に装着したものであるが、以下に説明するように、苗移植機に装着しない構成の紙敷設装置とすることもできる。
即ち、フレーム68の下部に、紙ロール53の支持装置55と、紙ロール53から引き出された紙56を畝上面に接触させて押圧する敷設ローラー57を設け、フレーム68の上部にハンドル71を設けた構成とする。
【0042】
上記構成の紙敷設装置は、ハンドル71を操作しながら、甘しょ苗の植え付けられた畝に沿って敷設ローラー57を回転しながら前進させる。このとき、紙ロール53から引き出された紙56は、敷設ローラー57の回転により畝上面に圧接されていく。従って、機械によらず移植した場合の紙の敷設作業を、簡単な構成の紙敷設装置によって容易且つ確実に行うことができる。
【0043】
以下、具体的な構成について説明する。
図8に示す紙敷設装置50(C)は、以下のように構成したものである。即ち、棒状の敷設フレーム68、敷設フレーム68の前側下端部に設けられていて、紙ロール53から引き出された紙56を畝Uの表面に案内接触させる敷設ローラー57、前記敷設ローラー57の上方に位置するように敷設フレーム68に取り付けられている液状糊用の糊用タンク69、前記糊用タンク69の下方に設けられている糊付着ローラー70、前記糊用タンク69の上方に設けられていて紙ロール53を支持する支持装置56、敷設フレーム68の後端部から後斜め上方に延びるハンドル71、等により構成されている。なお、紙ロール53の一面に接着剤が施されているものを使用すれば、糊用タンク69と糊付着ローラー70は不要となる。
【0044】
そして、糊用タンク69の底部には、例えば布69a,…を数枚重ねて、液体糊が少しづつ滲み出すように構成している。また、紙ロール53の紙56は糊付着ローラー70と敷設ローラー57に挟まれて敷設ローラー57の回転により引き出され、また、この紙56の引き出し移動により糊付着ローラー70が回転し、紙56に糊が付着される構成である。
【0045】
しかして、ハンドル71を押しながら、甘しょ苗の植え付けられたマルチフィルムで被覆された畝に沿って敷設ローラー57を回転しながら前進する。すると、紙ロール53から引き出された紙56は、糊付着ローラー70の下面と敷設ローラー57の上面との間に挟まれて引き出され、糊付着ローラー70により糊が塗り付けられ、次いで、敷設ローラー57により紙56の糊面を下向きにしながら畝U表面のマルチフィルムに圧接し貼り付けていく。
【0046】
前記のように、甘しょ苗の植え付けられたマルチフィルムの被覆された畝の表面に紙56を貼り付けて敷設するので、日除けと夜間の低温化防止の作業を簡略化し、作業負荷を軽減することができる。
図9に示す紙敷設装置50(D)は、以下のように構成したものである。即ち、敷設フレーム68の下部にU型パイプ72を介して左右車輪73,73を設け、左右車輪73,73が畝の溝部を走行するように構成してもよい。このようにすると、畝Uの表層部の崩れを防止しながら、直進性が安定し操作性を向上させることができる。
【0047】
図10、図11に示す紙敷設装置50(E)は、以下のように構成したものである。即ち、敷設フレーム68あるいはU型パイプ72に、U型の第1支持フレーム74を介して敷設ローラー57を上下回動自在に支持し、糊用タンク69の下方にアーム75,75を介して糊付着ローラー70を支持し、敷設フレーム68に第2支持フレーム76を介して糊用タンク69を上下回動自在に取り付ける構成としてもよい。
【0048】
このように構成すると、畝表面や溝部に凹凸があっても、敷設ローラー57、糊付着ローラー70及び糊用タンク69が上下動して対応し、畝表面に安定して紙56を敷設することができる。
図12に示す紙敷設装置に用いる糊用タンク69は、以下のように構成したものである。即ち、糊用タンク69の前面部に前側に突出した突出貯溜部69aを構成してもよい。このように構成すると、紙敷設装置52のハンドル71を前方に持ち上げるように回動し保持することにより、糊用タンク69の液体糊を底部から突出貯溜部69aに移動し、不要時における液体糊の底部からの滲み出しを防止することができる。
【0049】
図13に示す紙敷設装置50(F)は、以下のように構成したものである。即ち、糊用タンク69の後面部に突出貯溜部69aを構成し、敷設フレーム68に第2支持フレーム76を介して糊用タンク69を上下回動自在に支持して、糊用タンク69の底部及び突出貯溜部69aの位置を変更可能に構成し、ハンドル71に設けたタンク姿勢用レバー77を操作し、ワイヤ78を介して糊用タンク69の姿勢を変更し、液体糊の流下を防止するように構成してもよい。
【0050】
図14に示す紙敷設装置50(G)は、以下のように構成したものである。即ち、作業用台車79に紙敷設装置52を取り付けた実施例である。作業用台車79は、四辺形状の台車フレーム80と、台車フレーム80の前部左右両側に設けた左右前輪81,81と、台車フレーム80の後部左右両側に設けた左・右後輪82,82と、台車フレーム80の前部中央に設けた座席83とにより構成されている。そして、台車フレーム80の後部中央に紙敷設装置50(G)を配置している。この紙敷設装置50(G)は、台車フレーム80に取り付けられている敷設ローラー57、前記敷設ローラー57の上方に位置するように台車フレーム80に取り付けられている糊用タンク69、糊用タンク69の下方に支持されている糊付着ローラー70、糊用タンク69の上方に位置するように台車フレーム80に取り付けられていて、紙ロール53を支持する支持装置56により構成されている。
【0051】
前記のように構成することにより、作業者が座席83に坐り、作業用台車79を前進させて甘しょ苗を植え付けながら、同時に紙の敷設をすることができ、工程を半減させることができる。
なお、図15、図16に示すように、台車フレーム80の座席83前方にマルチフィルムの穴開け具84を設けてもよい。この穴開け具84は、フレームにブラケット85を介して軸架されている輪体86と、輪体86の外周部から突出するように所定間隔毎に設けられている開口刃体87,87により構成されている。このように作業用台車79を構成することにより、一工程でマルチフィルムの穴開け作業、作業者による甘しょ苗の植付作業、紙敷設装置52により畝表面への紙の敷設作業を一挙に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】苗移植機に装着した紙敷設装置の側面図
【図2】苗移植機に装着した紙敷設装置の平面図
【図3】苗移植部の要部の側面図
【図4】苗移植部の要部の背面図
【図5】紙敷設装置の要部の側面図
【図6】紙敷設装置の要部の平面図
【図7】別構成の紙敷設装置の要部の側面図
【図8】別構成の紙敷設装置の斜視図
【図9】別構成の紙敷設装置の斜視図
【図10】別構成の紙敷設装置の斜視図
【図11】別構成の紙敷設装置の側面図
【図12】別構成の紙敷設装置の要部の(a)斜視図,(b)側断面図,(c)角度変更した状態の側断面図
【図13】別構成の紙敷設装置の斜視図
【図14】別構成の紙敷設装置の斜視図
【図15】マルチフィルムの穴開け具の斜視図
【図16】マルチフィルムの穴開け具の斜視図
【符号の説明】
53:紙ロール、55:支持装置、56:紙、57:敷設ローラー、68:フレーム、69:糊用タンク、69a:突出貯留部、70:糊付着ローラー、71:ハンドル

Claims (2)

  1. フレーム(68)の下部に、紙ロール(53)の支持装置(55)と、紙ロール(53)から引き出された紙(56)を畝上面に接触させて押圧する敷設ローラー(57)を設け、フレーム(68)の上部にハンドル(71)を設け、敷設ローラー(57)の上方に糊用タンク(69)を設け、該糊用タンク(69)の下方に糊付着ローラー(70)を支持して設け、糊用タンク(69)の底部は液体糊が少しずつ滲み出し、紙ロール(53)の紙(56)は糊付着ローラー(70)と敷設ローラー(57)に挟まれて敷設ローラー(57)の回転により引き出され、この紙(56)の引き出し移動により糊付着ローラー(70)が回転し紙(56)に糊が付着される構成とし、フレーム(68)に糊用タンク(69)を上下回動自在に取り付け、糊用タンク(69)の姿勢を変更することにより液体糊の底部からの滲み出しを防止するための突出貯留部(69a)を糊用タンク(69)に設け紙敷設装置。
  2. 敷設ローラー(57)をフレーム(68)に上下回動自在に支持した請求項1に記載の紙敷設装置。
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