JP4298127B2 - 画像記録方法、画像記録装置、該画像記録装置の制御方法、コンピュータ可読記憶媒体及び画像処理方法 - Google Patents

画像記録方法、画像記録装置、該画像記録装置の制御方法、コンピュータ可読記憶媒体及び画像処理方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は画像記録方法及び画像記録装置に関し、特に、ドット情報が格納されたドットパターンを用いて記録を行う画像記録方法及び画像記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、多値画像を2値画像に変換して階調表現するための擬似中間調処理の方法として、濃度パターン法と呼ばれるものがある。これは、2値しか表現できない画像出力装置において階調を表現するために、2値の画素を複数個集めてブロック化し、そのブロック化した画素群によって階調表現を実現する方法である。ただし、この濃度パターン法の問題点としては、ブロックサイズを大きくすると解像度が低下し、また逆に小さくすると階調表現能力が低下する。
【0003】
この濃度パターン法の問題を解決する一つの方法として、画素ブロックで表現する階調値と入力階調値との誤差を保存し、未入力の画素値に加算して、擬似的に階調を表規する方法が存在した。この方法によれば、解像性と階調性を両立した画像出力を行うことができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記従来例では以下のような問題点があった。
【0005】
即ち、各階調毎に固定のドットパターンが画素ブロックで表現されるので、各入力画素の値(階調)に応じて、そのドットパターンが周期的に配置されると画像出力装置に固有の特性の影響を受けやすい。
【0006】
この影響について、インクジェットプリンタのようなシリアルプリンタを画像出力装置とした例を考える。この装置では、所定幅のノズル列を持った記録ヘッドを往復走査しながら、記録媒体にインクを吐出することで画像を形成する。さて、このインク滴を吐出する複数のノズルには、各ノズルに関して、液滴の吐出方向のばらつきや、吐出量のばらつき等が存在するので、各階調に固定のドットパターンを用いて記録を行うと、ノズル毎のばらつきの影響を受けやすく、記録画像にはスジムラが発生し、その画像品位を著しく低下させていた。
【0007】
このスジムラを低減させるために、従来のインクジェットプリンタではマルチパス記録制御を採用し、記録媒体上の同一領域に対して複数回記録ヘッドを走査(パス)させ、各パス毎に記録ヘッドの異なるノズルを用いて前記同一領域を記録するようにしているが、上記のように出力されるドットパターンが固定ドットパターンであると、マルチパス記録制御によっても画像品位の劣化を十分に抑えることができない場合もあった。
【0008】
本発明は上記従来例に鑑みてなされたものであり、擬似中間調処理を行って画像を記録する場合、濃度ムラ・スジムラ等を低減させ、高品位な画像を記録することができる画像記録方法、その画像記録装置、該画像記録装置の制御方法、コンピュータ可読記憶媒体及び画像処理方法を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、画素の階調値に対応したドットパターンを用いて記録ヘッドにより前記画素の記録を行うための画像記録装置であって、前記記録ヘッドのノズルの配列方向に相当する第1の方向および前記第1の方向と直交する第2の方向の2次元に配列される画素の位置に対応付けられた、所定の階調値に対応する複数のドットパターンを有するドットパターンテーブルを格納した格納部と、前記格納部に格納されたドットパターンテーブルから、前記所定の階調値を有する画素の位置に基づいて、当該画素の位置に対応付けられたドットパターンを選択する選択手段とを備え、前記第1の方向に沿って配列される画素の位置に対応付けられた前記所定の階調値の複数のドットパターンは、ドット数が同じでドット配置が異なるドットパターンを含み、前記第2の方向に沿って配列される画素の位置に対応付けられた前記所定の階調値の複数のドットパターンは、前記ドット数が同じでドット配置が異なるドットパターンを含むことを特徴とする。
【0010】
また、別の本発明は、画素の階調値に対応したドットパターンを用いて記録ヘッドにより前記画素の記録を行うための画像記録装置であって、 前記記録ヘッドのノズルの配列方向に相当する第1の方向および当該第1の方向と直交する第2の方向の2次元に配列される画素の位置に対応付けられた複数のドットパターンを有するドットパターンテーブルを階調値毎に格納した格納部と、前記格納部に格納されたドットパターンテーブルから、前記画素の階調値および位置に基づいて、当該画素の位置に対応付けられたドットパターンを選択する選択手段とを備え、所定の階調値に対応するドットパターンテーブルでは、前記第1の方向に沿って配列される画素の位置に対してドット数が同じでドット配置が異なるドットパターンが対応付けられており、且つ、前記第2の方向に沿って配列される画素の位置に対して前記異なるドットパターンが対応付けられていることを特徴とする。
【0011】
ここで、前記ドットパターンテーブルの前記第1の方向に対応するサイズをL、前記第2の方向に対応するサイズをKとし、前記ドットパターンの前記第1の方向に対応するサイズをl、前記第2の方向に対応するサイズをkとした場合、L=α×l(αは自然数)、K=β×k(αは自然数)なる関係を満たし、前記ドットパターンテーブルの前記第1の方向に対応するドットパターンの数はα個、前記第2の方向に対応するドットパターンの数はβ個であることが望ましい。
【0012】
さらに、上記ドットパターンテーブルは、前記第1の方向に関してL画素毎に繰り返し用いられ、前記第2の方向に関してK画素毎に繰り返し用いられる。
【0013】
また、前記第1の方向におけるドットパターンテーブルのセル数Lと前記記録ヘッドのノズル数Aとの関係は、L=γ×A(γは自然数)であることが望ましい。
【0014】
また、前記画素の位置は、2次元座標のx座標値およびy座標値で示され、前記選択手段は、前記ドットパターンテーブル内において、前記x座標値、前記y座標値、前記α値、前記β値に基づいて特定される位置に対応付けられたドットパターンを選択することが好ましい。
【0015】
また、上記ドットパターンテーブルは、前記記録ヘッドの複数のノズルの各々の特性を考慮して決定されることが望ましい。
【0016】
この場合、前記N個の階調値の各々に対して設けられているN個のドットパターンテーブルのうち、前記ノズルの各々の特性を考慮して決定されるドットパターンテーブルはH(N>H、Hは自然数)個であることが望ましい。
【0017】
さらに、前記ノズルの各々の特性を考慮して決定されるドットパターンテーブルは、画素内に付与されるドットの割合D(%)が25≦D≦50である階調値に対応するドットパターンテーブルであるが望ましい。
【0018】
また、前記記録ヘッドの端部のノズルが使用されないように、前記ドットパターンテーブル内の前記複数の異なるドットパターンは配列されていることが好ましい。
【0020】
また、前記ドットパターンテーブル内の複数のドットパターンによって定められるドット配置がブルーノイズ特性を有するように、前記ドットパターンテーブル内の前記複数の異なるドットパターンは配列されていることが好ましい。
【0021】
なお、前記ブルーノイズ特性とは、低周波数領域のパワースペクトルが高周波数数領域のパワースペクトルより小さい特性である。
【0024】
また、本発明は、画素の階調値に対応したドットパターンを選択するための画像処理装置であって、前記画素の記録を行う記録ヘッドのノズルの配列方向に相当する第1の方向および前記第1の方向と直交する第2の方向の2次元に配列される画素の位置に対応付けられた、所定の階調値に対応する複数のドットパターンを有するドットパターンテーブルを格納した格納部と、前記格納部に格納されたドットパターンテーブルから、前記所定の階調値を有する画素の位置に基づいて、当該画素の位置に対応付けられたドットパターンを選択する選択手段とを備え、前記第1の方向に沿って配列される画素の位置に対応付けられた前記所定の階調値の複数のドットパターンは、ドット数が同じでドット配置が異なるドットパターンを含み、前記第2の方向に沿って配列される画素の位置に対応付けられた前記所定の階調値の複数のドットパターンは、前記ドット数が同じでドット配置が異なるドットパターンを含むことを特徴とする。
【0025】
また、本発明は、画素の階調値に対応したドットパターンを選択するための画像処理装置であって、前記画素の記録を行う記録ヘッドのノズルの配列方向に相当する第1の方向および前記第1の方向と直交する第2の方向の2次元に配列される画素の位置に対応付けられた、同じ階調値に対応する複数のドットパターンを有するドットパターンテーブルを階調値毎に格納した格納部と、前記格納部に格納されたドットパターンテーブルから、前記画素の階調値および位置に基づいて、当該画素の位置に対応付けられたドットパターンを選択する選択手段とを備え、前記第1の方向に沿って配列される画素の位置に対応付けられた前記所定の階調値の複数のドットパターンは、ドット数が同じでドット配置が異なるドットパターンを含み、前記第2の方向に沿って配列される画素の位置に対応付けられた前記所定の階調値の複数のドットパターンは、前記ドット数が同じでドット配置が異なるドットパターンを含むことを特徴とする。
【0028】
以上の構成よれば、記録ヘッドのノズルの配列方向に相当する第1の方向(副走査方向)および当該第1方向とは直交する第2方向(主走査方向)の夫々に関して、同じ階調値についてドット数が同じでドット配置が異なる複数の異なるドットパターンが選択可能であるので、同じドットパターンしか選択できない場合に比べて、濃度ムラを抑制できる。更に、ドットパターンテーブル内のドットパターンの配列を工夫することにより、ノズルの使用頻度の偏りを軽減したり、画像のざらつき感を軽減できたりすることできる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下添付図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0030】
図1は本発明の代表的な実施形態である画像処理システムの構成図を簡単に示したブロック図である。図1において、10はスキャナやデジタルカメラ等の画像入力機器からの多値画像データやハードディスク等の各種記録媒体に保存されている多値画像データを入力する画像入力部、11は画像入力部11より入力された多値画像データに後述する画像処理を施して2値画像データに変換する画像処理部、12は画像処理部11で変換された2値画像データを入力して、実際の画像形成を行う画像出力部である。なお、図示はしていないが、このシステムを構成する各部には、各部自身の動作及び他の部との連携動作を制御するCPUやそのCPUが実行する制御プログラムを格納したROM、また、その制御プログラムを実行するための作業領域として用いられるRAMなどが搭載されている。
【0031】
図2は画像出力部12の代表例であるインクジェットプリンタIJRAの構成の概要を示す外観斜視図である。図2において、駆動モータ5013の正逆回転に連動して駆動力伝達ギア5009〜5011を介して回転するリードスクリュー5005の螺旋溝5004に対して係合するキャリッジHCはピン(不図示)を有し、ガイドレール5003に支持されて矢印a,b方向を往復移動する。キャリッジHCには、記録ヘッドIJHとインクタンクITとを内蔵した一体型インクジェットカートリッジIJCが搭載されている。5002は紙押え板であり、キャリッジHCの移動方向に亙って記録用紙Pをプラテン5000に対して押圧する。5007,5008はフォトカプラで、キャリッジのレバー5006のこの域での存在を確認して、モータ5013の回転方向切り換え等を行うためのホームポジション検知器である。5016は記録ヘッドIJHの前面をキャップするキャップ部材5022を支持する部材で、5015はこのキャップ内を吸引する吸引器で、キャップ内開口5023を介して記録ヘッドの吸引回復を行う。5017はクリーニングブレードで、5019はこのブレードを前後方向に移動可能にする部材であり、本体支持板5018にこれらが支持されている。ブレードは、この形態でなく周知のクリーニングブレードが本例に適用できることは言うまでもない。又、5021は、吸引回復の吸引を開始するためのレバーで、キャリッジと係合するカム5020の移動に伴って移動し、駆動モータからの駆動力がクラッチ切り換え等の公知の伝達機構で移動制御される。
【0032】
これらのキャッピング、クリーニング、吸引回復は、キャリッジがホームポジション側の領域に来た時にリードスクリュー5005の作用によってそれらの対応位置で所望の処理が行えるように構成されているが、周知のタイミングで所望の動作を行うようにすれば、本例にはいずれも適用できる。
【0033】
図21は、図2に示すインクジェットプリンタIJRAの制御回路の構成を示すブロック図である。制御回路を示す同図において、1700は記録信号を入力するインタフェース、1701はMPU、1702はMPU1701が実行する制御プログラムを格納するROM、1703は各種データ(上記記録信号やヘッドに供給される記録データ等)を保存しておくDRAMである。1704は記録ヘッドIJHに対する記録データの供給制御を行うゲートアレイ(G.A.)であり、インタフェース1700、MPU1701、RAM1703間のデータ転送制御も行う。
【0034】
1710は記録ヘッドIJHを搬送するためのキャリッジモータ、1709は記録紙を搬送するための搬送モータである。1705は記録ヘッドを駆動するヘッドドライバ、1706,1707はそれぞれ搬送モータ1709、キャリッジモータ1710を駆動するためのモータドライバである。
【0035】
上記制御構成の動作を説明すると、インタフェース1700に記録信号が入るとゲートアレイ1704とMPU1701との間で記録信号がプリント用の記録データに変換される。そして、モータドライバ1706、1707が駆動されると共に、ヘッドドライバ1705に送られた記録データに従って記録ヘッドが駆動され、記録が行われる。
【0036】
ここでは、MPU1701が実行する制御プログラムをROM1702に格納するものとしたが、EEPROM等の消去/書き込みが可能な記憶媒体を更に追加して、記録装置と接続されたホストコンピュータから制御プログラムを変更できるように構成することもできる。
【0037】
なお、上述のように、インクタンクITと記録ヘッドIJHとは一体的に形成されて交換可能なインクカートリッジIJCを構成しても良いが、これらインクタンクITと記録ヘッドIJHとを分離可能に構成して、インクがなくなったときにインクタンクITだけを交換できるようにしても良い。
【0038】
図22は、インクタンクITと記録ヘッドIJHとが分離可能なインクカートリッジIJCの構成を示す外観斜視図である。インクカートリッジIJCは、図22に示すように、境界線Fの位置でインクタンクITと記録ヘッドIJHとが分離可能である。インクカートリッジIJCにはこれがキャリッジHCに搭載されたときには、キャリッジHC側から供給される電気信号を受け取るための電極(不図示)が設けられており、この電気信号によって、前述のように記録ヘッドIJHが駆動されてインクが吐出される。
【0039】
なお、図22において、500はインク吐出口列である。また、インクタンクITにはインクを保持するために繊維質状もしくは多孔質状のインク吸収体が設けられており、そのインク吸収体によってインクが保持される。
【0040】
なお、以上の説明では、記録ヘッドから吐出される液滴はインクであるとして説明し、さらにインクタンクに収容される液体はインクであるとして説明したが、本実施形態ではその収容物はインクに限定されるものではない。例えば、記録画像の定着性や耐水性を高めたり、その画像品質を高めたりするために記録媒体に対して吐出される処理液のようなものがインクタンクに収容されていても良い。
【0041】
図3は画像処理部11の詳細な構成を示すブロック図である。図3において、20は画像入力部10からの多値画像データ、例えば、1画素8ビット(256階調)で表現される多値画像データを入力し、後述する、既に量子化された画素で発生した誤差データを現画素の画像データに加算することで、入力画像データの補正を行う入力データ補正部である。このとき、1画素分の入力画像データ(8ビット)が表現する0〜255の値に対して、9ビットで表現される誤差データ(-255〜255)が加算されるため、結果として、1画素について誤差を加算した画像データは10ビットで表現され、その値は-255〜510となる。しかし、この実施形態の入力データ補正部は、その画像データを0〜255の範囲にリミットし、1画素8ビットの画像データを出力する。
【0042】
また、21は入力データ補正部20で補正された多値画像データを“N”値の階調値に量子化を行う量子化部である。このN値は、入力解像度と出力解像度の関係で決定される。即ち、入力画像データの解像度をA、出力画像データの解像度をBとしたときに(ここでは簡単のために画像の縦横の解像度は同一とする)、入力画像データ1画素に対して、階調表現のために用いるドットは(B/A)2個のドットで形成されるため、(B/A)2ドットを1ブロックとした時に、1ブロックで表現可能な階調数は(B/A)2+1となる。
【0043】
例えば、入力解像度300dpi、出力解像度600dpiのときは、1画素8ビットの入力画像データに対して、出力データのドットは2×2の4ドットで1ブロックとなり、その1ブロックで表現可能な階調数は5値となる。従って、量子化部21からは“0”、“64”、“128”、“192”、“255”の5値に量子化された量子化値が出力される。
【0044】
なお、本明細書においては階調のレベルを示す値に、階調値という表現を用いる。すなわち、階調数が5であれば、階調値“N“は“0“、“1“、“2“、“3“、“4で表される。そして、夫々の量子化値は階調値に対応しており、例えば、量子化値“0“,“64“,“128“,“192“,“255“の夫々は、階調値“0“、“1“、“2“、“3“、“4“に対応している。
【0045】
また、後述するドットパターンテーブル展開部304には、量子化部 301から量子化値が出力されるのであるが、その量子化値に対応した階調値(階調値の情報)が出力されるようにしてもよい。なお、以下において説明を分かりやすくするために、ドットパターンテーブル展開部304には、量子化部 301から階調値情報が出力されるものとして説明する。
【0046】
22は量子化部21で量子化した量子化値に対して、入力データ補正部20で補正された多値画像データとの誤差を演算する誤差演算部である。上述した例では量子化部で1画素8ビットの画像データは5値に量子化されるため、その量子化値は“0”、“64”、“128”、“192”、“255”の値を表現する8ビットデータが誤差演算部22に入力される。一方、入力データ補正部20からは1画素8ビット(0〜255)の画像データが入力されるため、その結果得られる誤差データの値は-255〜255となり、9ビットで表現されるデータとなる。
【0047】
23は誤差演算部22で発生した誤差を未処理の周囲の画素に対して、所定の比率分配して格納する誤差メモリである。実際の装置では誤差メモリはDRAMなどによって構成される。
【0048】
図4はその分配比率を示す図である。図4において、斜線の施された画素が注目画素(現画素位置)であり、白枠の画素が誤差が分配される画素、そして、示される数値が各画素への分配比率である。従って、誤差メモリ23は図4に示す分配比率で誤差を配分する場合には、少なくとも2ライン分のメモリが必要となる。
【0049】
また、量子化部21からは量子化された後の階調値情報(5値の場合には、“0”、“1”、“2”、“3”、“4”)が24のドットパターン展開部に対して出力される。
【0050】
24は量子化部21で量子化された階調値に基づいて、階調値毎に対応した複数個のドットパターンテーブル(夫々、K×Lドットのサイズ)の中から出力に用いるドットパターンテーブルを選択し、後述するドットパターンテーブル格納部から所望のドットパターンテーブルを取得するドットパターン展開部である。また、同時に現画素位置に対応するドットパターンアドレス情報が後述するドットパターンアドレス生成部から入力され、そのアドレスに従って、現画素に対応するドットパターンが展開され出力される。
【0051】
25は階調値の夫々に対応した複数のドットパターンテーブルが格納されているドットパターンテーブル格納部である。ドットパターンテーブル格納部25は、ドットパターン展開部24から入力されるドットパターンテーブル選択情報に基づいて、複数のドットパターンテーブルから所望のドットパターンテーブルを選択し、ドットパターン展開部24へ出力するものである。なお、1つのドットパターンテーブルは、階調値に対応した複数の異なるドットパターンから構成される。例えば、4×4のドットパターン(16個のセル)が複数集まって構成されるドットパターンテーブルにおいて、階調値“5“のドットパターンテーブルは、図20のように16個のセルの中に5つのドットが打たれる複数の異なるドットパターンから構成されるものである。なお、ドットパターンテーブル格納部はEEPROMなどの半導体メモリに設けられるが、処理の高速化を考慮して、本発明の画像記録装置においてはSRAMなどの高速メモリ複写して用いてもよい。
【0052】
ドットパターンテーブル格納部25に格納されているドットパターンテーブルは各階調値毎にK×Lドットサイズのパターンをもっている。このイメージを図19に示す。階調値が“0”、“1”、“2”、“3”、“4”の夫々に対して独立にK×Lドットサイズのドットパターンテーブルを有している。
【0053】
26はK×Lドットのサイズのドットパターンテーブルに対して、現画素のドットパターン(k×lドット)がどの位置に相当するかを示すアドレス情報を生成し、そのアドレス情報をドットパターン展開部24に出力するドットパターンアドレス生成部である。
【0054】
このアドレス情報は、入力画像データが示す画素位置情報と、ドットパターンテーブル全体のサイズ(K×Lドット)、及び、出力するドットパターンのサイズ(k×lドット)により決定される。入力画像データの画素位置情報を2次元の座標として(x,y)としたとき、xをK/kで割った剰余の値(=Dxとする)と、yをL/lで割ったときの剰余の値(=Dyとする)が、それぞれドットパターンテーブル内の現画素に対するアドレス情報となる。
【0055】
図5はドットパターンテーブルとドットパターンとの関係を示す図である。
【0056】
図5(a)は一般的なサイズにおけるドットパターンテーブル(K×Lサイズ)とドットパターン(k×lサイズ)との関係を示しており、第1の方向(L方向)にα個のドットパターンが格納され、第2の方向(K方向)にβ個のドットパターンが格納されている。つまり、ドットパターンテーブルのサイズとドットパターンのサイズとの関係は、K=β×k(βは自然数)、L=α×l(αは自然数)で示されることになる。なお、k×lのドットパターンとは、k×l個のセルから構成されるものである。
【0057】
また、図5(b)はドットパターンテーブルが64×64ドットのサイズを有し、入力画像データ1画素に対応するドットパターンが2×2ドットであるとした場合のドットパターンテーブルとドットパターンとの関係を示している。従って、この図5(b)に示した例では、ドットパターンテーブル全体としては、入力画像データの32画素×32画素分に相当するドットパターンを有していることになる。言い換えると、この例では、入力画像データに関し縦横両方向に32画素毎に同じドットパターンを示すアドレスが与えられる。例えば、入力画像データの画素位置情報(x,y)が(100,100)であるとき、x座標値、y座標値それぞれを“32”で割って得られる剰余の値“4”がドットパターンのアドレス情報となる。従って、現画素位置に対するドットパターンは図5(b)に示すように、ドットパターンテーブルの中の斜線の位置のドットパターンとなる。
【0058】
ドットパターンテーブルは出力する記録媒体上に対して巡回して使用される。ただし、この際にドットパターンテーブルのサイズと出力画像の解像度によってはドットパターンテーブルの周期が目立ち、テクスチュアとして認識されてしまうこともある。そこで、ドットパターンテーブルからドットパターンを展開させる際にドットパターン内のアドレスをシフトさせて使用することでドットパターンテーブルの繰り返しを目立たなくさせることが可能である。
【0059】
この点について、図18を参照して説明する。
【0060】
図18において、1800〜1802はドットパターンテーブル、1803は記録媒体上に記録する画像全体である。このドットパターンテーブルは3×3のドットパターンから成っている。これらドットパターンの中に{*,*}で示しているのがドットパターンテーブル内のアドレスである。図18によれば、ドットパターンテーブル1800を構成するドットパターンの配列に対して、ドットパターンテーブル1801では主走査方向にドットパターンテーブル内のアドレスを1つシフトさせたドットパターン配列とする。同様に、ドットパターンテーブル1802では副走査方向にドットパターンテーブル内のアドレスを1つシフトさせる。
【0061】
このようにすることにより、ドットパターン配列はシフトさせないときには3×3の単位で周期的に並んでしまうのに対し、主走査方向と副走査方向に対してシフトさせることで9×9の単位が1周期となる。
【0062】
このようなアドレスシフトはドットパターンアドレス生成部26で行い、周期的或いはランダム的にシフトを行うことができる。
【0063】
ここで、図2に示した画像出力部12として用いられるインクジェットプリンタの記録動作について簡単にまとめておく。このインクジェットプリンタには複数のインク吐出ノズル(以下、ノズルという)を所定のピッチで複数個配列した記録ヘッドIJHが備えられている。インクジェットプリンタは記録ヘッドIJHを往復走査しながらインクを吐出することで、各走査毎にノズルが配列された幅(記録幅)ずつ記録用紙等の記録媒体に記録がされていく。
【0064】
図6は記録ヘッドの記録幅とその記録走査の関係を示した図である。この図では説明を簡単にするために、ノズル個数を“8”とした記録ヘッドを示している。
【0065】
図6に示すように複数(8個)のノズルを持つ記録ヘッドIJHをキャリッジに搭載し、キャリッジ移動方向(主走査方向)に記録ヘッドを走査しながらインクを吐出して画像を記録する。1走査(図6では、nスキャン)が終った後に、記録ヘッドをホームポジションに戻すとともに、ノズル配列方向(副走査方向)記録媒体の搬送を行って、次の画像データを用いて、次の走査(図6では、n+1スキャン、n+2スキャン)を行い記録していく。
【0066】
図7は記録ヘッドのノズルとそのノズルからインクを吐出して実際に記録されるドット配置との関係を示す図である。図7では、説明を簡単にするために、ドットパターンのサイズを2×2ドットとしているが、もちろん本発明で適用可能なドットパターンのサイズはこれに限定されるものではなく、他のサイズのドットパターンを用いても良い。
【0067】
さて、2×2ドットのドットパターン中に1ドットのみドットを配置するドットパターン、即ち、5値に量子化された階調値で階調値“1”を示すドットパターンに対して、図7に示すように、どの画素位置でも同じ位置にドットを配置するドットパターンを固定的に使用すると、記録ヘッドIJHのある特定のノズルからのインク吐出頻度が高くなる。従って、記録される画像にはその特定ノズルの特性(例えば、インク吐出方向のばらつき、インク吐出量のばらつき等)が強く反映される。従って、そのノズルが上記のばらつきが大きい特性を有していると、記録される画像にスジムラが発生しやすい。
【0068】
従って本実施形態では、図8に示すように、階調値“1”のドットパターンを記録する場合でも、そのドット配置を画素位置で異ならせ、各ノズルから均等にインク吐出が行われるようにしている。つまり、ノズルの使用頻度を均等にしているのである。
【0069】
以上のように本実施形態では、図8に示すドット配置を実現するためにドットパターンテーブルを用いているのである。
【0070】
次に、そのドットパターンテーブルの特徴と、ドットパターンテーブルからドットパターンを選択する処理について、図9に示すフローチャートを参照して説明する。
【0071】
このドットパターンテーブルは、記録ヘッドIJHのノズル数と同じセル数を縦方向(副走査方向)のサイズとし、横方向(主走査方向)についてはノズルのばらつきの影響を吸収できるだけのセル数を有するサイズとすることを特徴にしている。従って、図8に示す例では、記録ヘッドのノズル数は“8”なので、ドットパターンテーブルの縦方向の大きさは“8”であり、また、横方向には、ノズルのばらつきの影響を抑えるために縦方向と同じサイズとしている。
【0072】
なお、横方向のサイズについては、ノズルのばらつきの影響をどの程度抑えるかによっては変わってくる。
【0073】
このドットパターンテーブルからのドットパターンの選択は以下のような処理を行うことによって実行される。
【0074】
まず、ステップS10では、入力画像の位置座標(x,y)を入力し、次のステップS20では、その座標(x,y)における量子化された階調値(QV)を求める。さらに、ステップS30では、求められた階調値に対応したドットパターンテーブルを選択する。
【0075】
ステップS40では、入力座標値とドットパターンテーブルサイズとドットパターンサイズとの比率からドットパターンテーブルへのアクセスアドレス(Dx,Dy)を計算する。さらに、ステップS50ではそのアドレスでドットパターンテーブルにアクセスして、ドットパターンを得る。
【0076】
最後にステップS60では、そのドットパターンをメモリ上に展開する。
【0077】
なお、このような処理は、図3に示したドットパターン展開部24、ドットパターンテーブル格納部25、ドットパターンアドレス生成部26によって実行されるが、これらを専用の論理回路によって実現しても良いし、処理プログラムをCPUが実行することによって実現しても良い。
【0078】
このようにして展開されたドットパターンはインクジェットプリンタに転送され、そのパターンに基づいて記録ヘッドIJHはインクを吐出して記録を行う。
【0079】
従って以上説明した実施形態に従えば、量子化された階調値に対応したドットパターンに基づいて記録ヘッドからインクを吐出して記録を行う場合に、同じ階調値であってもインク吐出を行うノズルが同じノズルに集中しないように、同じ階調値に対しても複数のドットパターンを準備しておき、記録画素の位置に従って、異なるドットパターンが選択され、その結果、インク吐出を複数のノズルにわたって分散させることができる。
【0080】
これにより、特定の階調値に記録画像に対して、特定のノズルの特性が強く反映されないようにすることができ、記録画像にスジムラの発生など画質劣化の現象が発生するのを低減させることができる。
【0081】
なお、ドットパターンテーブルを構成するドットパターンは、上述した実施形態によって限定されるものではない。例えば、図7に示すような記録ヘッドのノズル構成において、上端のノズル701と下端のノズル702から吐出されるインクによって形成されるドットの径が変動しやすかったり、これらのノズルからのインク吐出方向のばらつきが他のノズルに比べて大きい傾向にある等、ドットが安定して記録されないような場合には、ドットパターンテーブルの中のドットパターンを図10に示すように配置することで、同じデューティ(この例では25%)でも、できるだけ記録ヘッドの端部のノズルは使用しないようにすることができる。
【0082】
このようにすることにより、記録ヘッドの端部のノズルからの吐出特性が他のノズルとは著しくことなる場合にも、その特性による記録画像の劣化を抑え、例えば、スジムラをさらに減少させることが可能となる。
【0083】
また、記録ヘッドを走査して画像を記録する場合に、記録ヘッドの端部のノズルからの吐出特性が他のノズルと異ならなくとも、例えば、図6に示すような各走査毎のつなぎ部601、602では、異なるスキャンで記録するドット間の重なりが発生し、同じスキャン内で発生するドット重なりよりも濃度が高くなってこれが記録画像上ではスジとなって見えることがある。
【0084】
このようなスジの発生を抑えるために、例えば、そのつなぎ部で発生する濃度上昇率が平均して25%程度であったとすると、このつなぎ部に相当するドットパターンの記録デューティを、図11に示すように、通常より25%少なくしたドットパターンをドットパターンテーブルに定義して、そのテーブルを用いるようにしても良い。
【0085】
例えば、ドットパターンを4×4ドットのサイズとすると、表現可能な階調数は4×4+1=17階調である。この17階調と4×4ドットのマトリクスでインク吐出がなされるドット数の割合(=デューティ)との対応関係は図12に示すようになる。一方、インクを吐出して記録を行うノズルの特性のばらつきによるスジムラへの影響はデューティが25%〜50%の近辺でもっとも顕著となることが経験的に分かっているため、スジムラの発生を抑えるために、このデューティに対応する階調値(図12の例で言えば、4〜8)のドットパターンテーブルのみ、例えば、図8に示すような記録されるドットの位置が分散されたようなパターンとしても良い。つまり、画素内に付与されるドットの割合D(%)が25≦D(%)≦50である階調値を示すドットパターンテーブルのみ、ノズルの特性を考慮することとしても良いのである。
【0086】
このように、濃度パターンの階調値の数に相当するドットパターンテーブルを持っていることを最大限に利用して、階調値に応じた最適なドットパターンを用いることができる。
【0087】
さらにまた以上説明した実施形態では、ドットパターンテーブルの副走査方向のサイズを記録ヘッドの記録幅となるようにしたが本発明はこれによって限定されるものではない。例えば、図7に示したように、ノズル数が非常に少ない記録ヘッドの場合、ドットパターンテーブルのノズル配列方向(副走査方向)のサイズがその記録幅しかない場合、副走査方向に関してかなり頻繁に同じドットパターンが並んでしまうことがある。このため、例えば、記録ヘッドをスキャンさせる際に用いるキャリッジモータの速度むら等の影響を受けやすくなる。
【0088】
このような影響を最小限に抑えるため、記録ヘッドのノズル数の整数倍、例えば、図7に示した例では、ドットパターンテーブルの副走査方向のサイズを、ノズル数“8”の4倍である“32”とし、副走査方向に同じドットパターンが使用される頻度を小さくすることができる。また、ノズル数が多い、例えばノズルを256個有するようなヘッドを用いる場合は、ノズル数と同じ大きさのドットパターンテーブル(256×256のセル数)を用いることにより十分ムラの低減を図ることができるので、ドットパターンサイズはこれ以上は大きくしなくても良い。
【0089】
以上から分かるように、ドットパターンテーブルの副走査方向のセル数(サイズ)をL(Lは自然数)とし、記録ヘッドのノズル数をA(Aは自然数)とした場合、前記Lと前記Aの関係をL=γ×A(γは自然数)とすることによって、効果的に濃度ムラ・スジムラの発生を抑制することができるのである。また、ドットパターンテーブルのサイズとヘッドのノズル数との関係がL=γ×Aを満たす場合、ドットパターンテーブルの副走査方向の大きさは少なくとも記録ヘッドの記録幅以上の大きさとなるので、複数ノズルにおける夫々のノズルの特性(吐出量・よれ等)を考慮してドットパターンテーブルを決定することができるのである。つまり、使用する全ノズルの特性を踏まえてドットパターンテーブルを定めることができるのである。そうすると、吐出量が極端に少ないノズルやよれが大きなノズル等、吐出不良のノズル使用頻度が少なくなるようなパターンテーブルを作成することができ、そのパターンテーブルに基づき記録を行うことで高品位な記録画像を得ることができるようになる。
【0090】
また、上記の説明では記録ヘッドのノズルの特性を考慮してドットパターンテーブルを作成することとしているが、本実施形態はこれには限定されず、ドットパターンテーブル内のドット配置をブルーノイズの特性を有するパターン(ブルーノイズパターン)とすることも可能である。このブルーノイズパターンは人間の視覚特性上好ましい特性を有するので、ブルーノイズパターンを利用することでノイズ感の少ない高品位な画像を得ることができる。
【0091】
ここでブルーノイズについて簡単に説明する。このブルーノイズのパターン(ブルーノイズマルク)の生成方法やその特徴については「Digital Halftoning」Robert Ulichneey(The Mit Press Cambridge,Massachusetts London、England)を始めとして多くの文献で開示されており、低周波数成分のパワースペクトルを抑えて出力画像のノイズ感を低減する方法である。低周波数成分のパワースペクトルを抑える理由は、人間の目の感度が高周波数領域よりも低周波数領域の方が格段に敏感であり、低周波数領域に一定量以上のパワースペクトルが存在すると人間の視覚特性上、ノイズ感(ざらつき感)を生じてしまう。このように低周波数領域にパワースペクトルが存在すると、画像に“ざらつき感”が生じるので、低周波数領域のパワースペクトルを抑え画像のパワースペクトルを高周波数領域に集中させたブルーノイズマスクを用いるのである。以上のように低周波数領域のスペクトルを抑えたブルーノイズを用いて中間調処理を行うことで、上記“ざらつき感”を解消することができる。
【0092】
〔他の実施形態〕
ここでは、記録媒体上の同一領域に対して複数回数記録ヘッドを走査させて前記同一領域の記録を完成させるマルチパス記録方式を行う場合について述べる。ここでは、説明を簡単にするために、同一領域を2回走査して記録する場合について述べる。
【0093】
図13は2パス記録を行う様子を模式的に示す図である。
【0094】
図13に示すように、記録ヘッドを1回走査させる毎に記録ヘッドの記録幅の1/2の幅分だけ記録媒体を搬送し、記録媒体の同一領域に対して2回走査させて記録を完成させる。尚、上記2回の走査の内の1回目の走査(始めに現在の記録領域を記録ヘッドが通過する時点)を1パス、2回目の走査を2パスと呼ぶ。このとき、図13からわかるように、記録ヘッドの下半分は常に1パス目の記録に用いられ、上半分は常に2パス目の記録に用いられる。
【0095】
上記の実施形態で説明したように、ドットパターンテーブルの副走査方向のサイズは記録ヘッドの記録幅に相当するサイズを持っているため、図7〜図8に示したドットパターンテーブルの下半分は1パス目のドットパターンのために、上半分は2パス目のドットパターンのために用いられる。
【0096】
さて、マルチパス記録方式を採用した場合でも、図13の1001〜1003で示す位置、即ち、パス間のつなぎ目においてスジムラが発生しやすい。これは、ノズルからのインク吐出方向のばらつき、記録媒体搬送誤差、及び、各走査間の時間差による画像濃度の変化等によって発生するものである。
【0097】
ここで、例えば、図14(a)に示すように、ドットを50%デューティで記録するのに、図14(b)に示すようなドットパターンテーブルを用いて、記録ヘッドの上半分で1パス目を、下半分で2パス目を記録することを考える。この場合、図15に示すように、2パス目で記録を行うときの、記録ヘッドIJHの記録媒体に対する相対位置が本来あるべき搬送位置よりも大幅にずれてしまったときには、図15の矢印と斜線で示した部分にドットが記録されなくなり、これが人間の眼には、スジとして認識されてしまう。
【0098】
従って、この実施形態では、図14(a)に示したドットを記録する場合でも、図16に示すようなドットパターンテーブルを用いる。このドットパターンテーブルを用いてドットパターンを選択して2パス記録を行った場合、図17に示すような記録結果となる。図17と図15とを比較すれば明らかなように、図15で示したのと同じ位置で搬送誤差が発生しても、図15に示したようなドットが記録されない領域は発生しない。従って、人間の眼にはスジムラとして認識されにくくなっている。
【0099】
従って、以上説明した実施形態に従えば、ドットパターンテーブルに格納するドットパターンとして、マルチパス記録におけるパスの境界位置を考慮して、スジが発生しにくいような予めドットパターンを設定することが可能であるため、従来のようにドットパターンをあらかじめ決めてから、マルチパス記録におけるマスクパターンでそのドットパターンのマスクをするよりも最適な記録を行うことが可能である。
【0100】
なお、以上の実施形態において、記録ヘッドから吐出される液滴はインクであるとして説明し、さらにインクタンクに収容される液体はインクであるとして説明したが、その収容物はインクに限定されるものではない。例えば、記録画像の定着性や耐水性を高めたり、その画像品質を高めたりするために記録媒体に対して吐出される処理液のようなものがインクタンクに収容されていても良い。
【0101】
以上の実施形態は、特にインクジェット記録方式の中でも、インク吐出を行わせるために利用されるエネルギーとして熱エネルギーを発生する手段(例えば電気熱変換体やレーザ光等)を備え、前記熱エネルギーによりインクの状態変化を生起させる方式を用いることにより記録の高密度化、高精細化が達成できる。
【0102】
その代表的な構成や原理については、例えば、米国特許第4723129号明細書、同第4740796号明細書に開示されている基本的な原理を用いて行うものが好ましい。この方式はいわゆるオンデマンド型、コンティニュアス型のいずれにも適用可能であるが、特に、オンデマンド型の場合には、液体(インク)が保持されているシートや液路に対応して配置されている電気熱変換体に、記録情報に対応していて膜沸騰を越える急速な温度上昇を与える少なくとも1つの駆動信号を印加することによって、電気熱変換体に熱エネルギーを発生せしめ、記録ヘッドの熱作用面に膜沸騰を生じさせて、結果的にこの駆動信号に1対1で対応した液体(インク)内の気泡を形成できるので有効である。この気泡の成長、収縮により吐出用開口を介して液体(インク)を吐出させて、少なくとも1つの滴を形成する。この駆動信号をパルス形状をすると、即時適切に気泡の成長収縮が行われるので、特に応答性に優れた液体(インク)の吐出が達成でき、より好ましい。
【0103】
このパルス形状の駆動信号としては、米国特許第4463359号明細書、同第4345262号明細書に記載されているようなものが適している。なお、上記熱作用面の温度上昇率に関する発明の米国特許第4313124号明細書に記載されている条件を採用すると、さらに優れた記録を行うことができる。
【0104】
記録ヘッドの構成としては、上述の各明細書に開示されているような吐出口、液路、電気熱変換体の組み合わせ構成(直線状液流路または直角液流路)の他に熱作用面が屈曲する領域に配置されている構成を開示する米国特許第4558333号明細書、米国特許第4459600号明細書を用いた構成も本発明に含まれるものである。加えて、複数の電気熱変換体に対して、共通するスロットを電気熱変換体の吐出部とする構成を開示する特開昭59-123670号公報や熱エネルギーの圧力波を吸収する開口を吐出部に対応させる構成を開示する特開昭59-138461号公報に基づいた構成としても良い。
【0105】
さらに、記録装置が記録できる最大記録媒体の幅に対応した長さを有するフルラインタイプの記録ヘッドとしては、上述した明細書に開示されているような複数記録ヘッドの組み合わせによってその長さを満たす構成や、一体的に形成された1個の記録ヘッドとしての構成のいずれでもよい。
【0106】
加えて、上記の実施形態で説明した記録ヘッド自体に一体的にインクタンクが設けられたカートリッジタイプの記録ヘッドのみならず、装置本体に装着されることで、装置本体との電気的な接続や装置本体からのインクの供給が可能になる交換自在のチップタイプの記録ヘッドを用いてもよい。
【0107】
また、以上説明した記録装置の構成に、記録ヘッドに対する回復手段、予備的な手段等を付加することは記録動作を一層安定にできるので好ましいものである。これらを具体的に挙げれば、記録ヘッドに対してのキャッピング手段、クリーニング手段、加圧あるいは吸引手段、電気熱変換体あるいはこれとは別の加熱素子あるいはこれらの組み合わせによる予備加熱手段などがある。また、記録とは別の吐出を行う予備吐出モードを備えることも安定した記録を行うために有効である。
【0108】
さらに、記録装置の記録モードとしては黒色等の主流色のみの記録モードだけではなく、記録ヘッドを一体的に構成するか複数個の組み合わせによってでも良いが、異なる色の複色カラー、または混色によるフルカラーの少なくとも1つを備えた装置とすることもできる。
【0109】
以上説明した実施の形態においては、インクが液体であることを前提として説明しているが、室温やそれ以下で固化するインクであっても、室温で軟化もしくは液化するものを用いても良く、あるいはインクジェット方式ではインク自体を30°C以上70°C以下の範囲内で温度調整を行ってインクの粘性を安定吐出範囲にあるように温度制御するものが一般的であるから、使用記録信号付与時にインクが液状をなすものであればよい。
【0110】
加えて、積極的に熱エネルギーによる昇温をインクの固形状態から液体状態への状態変化のエネルギーとして使用せしめることで積極的に防止するため、またはインクの蒸発を防止するため、放置状態で固化し加熱によって液化するインクを用いても良い。いずれにしても熱エネルギーの記録信号に応じた付与によってインクが液化し、液状インクが吐出されるものや、記録媒体に到達する時点では既に固化し始めるもの等のような、熱エネルギーの付与によって初めて液化する性質のインクを使用する場合も本発明は適用可能である。このような場合インクは、特開昭54-56847号公報あるいは特開昭60-71260号公報に記載されるような、多孔質シート凹部または貫通孔に液状または固形物として保持された状態で、電気熱変換体に対して対向するような形態としてもよい。本発明においては、上述した各インクに対して最も有効なものは、上述した膜沸騰方式を実行するものである。
【0111】
さらに加えて、本発明に係る記録装置の形態としては、コンピュータ等の情報処理機器の画像出力端末として一体または別体に設けられるものの他、リーダ等と組み合わせた複写装置、さらには送受信機能を有するファクシミリ装置の形態を取るものであっても良い。
【0112】
なお、本発明は、複数の機器(例えばホストコンピュータ、インタフェース機器、リーダ、プリンタなど)から構成されるシステムに適用しても、一つの機器からなる装置(例えば、複写機、ファクシミリ装置など)に適用してもよい。
【0113】
また、本発明の目的は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体(または記録媒体)を、システムあるいは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成されることは言うまでもない。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているオペレーティングシステム(OS)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0114】
さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張カードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張カードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0115】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、記録ヘッドのノズルの配列方向に相当する第1の方向(副走査方向)および当該第1の方向とは直交する第2方向(主走査方向)の夫々に関して、特定の階調値について複数の異なるドットパターンが選択可能であるので、画像の濃度ムラを軽減することができる。
【0116】
上記のように特定の階調値について複数の異なるドットパターンが選択可能であるので、特定の階調値が連続するパターンを記録することになっても、記録に使用されるノズルの使用頻度は分散されることとなる。その結果、特定のノズルが集中して使用されることが軽減され、特定のノズルの特性の影響をあまり受けない記録画像を得ることができる。
【0117】
これにより、特定のノズルの特性のばらつきなどに起因する濃度ムラなどの画質劣化を抑え、高品位な画像を記録することができるようになる。
【0118】
また、ドットパターンを階調値毎に持つことで、各階調毎に最適なパターンを用いて、さらに高品位な画像記録を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の代表的な実施形態である画像処理システムの構成図を簡単に示したブロック図である。
【図2】画像出力部12の代表例であるインクジェットプリンタIJRAの構成の概要を示す外観斜視図である。
【図3】画像処理部11の詳細な構成を示すブロック図である。
【図4】誤差分配比率を示す図である。
【図5】ドットパターンテーブルとドットパターンとの関係を示す図である。
【図6】記録ヘッドの記録幅とその記録走査の関係を示した図である。
【図7】記録ヘッドのノズルとそのノズルからインクを吐出して実際に記録されるドット配置との関係を示す図である。
【図8】各ノズルから均等にインク吐出が発生するようにしたドットパターンテーブルの例を示す図である。
【図9】ドットパターン選択処理を示すフローチャートである。
【図10】ドットパターンテーブルの別の例を示す図である。
【図11】ドットパターンの記録デューティを通常より25%少なくしたドットパターンを格納したドットパターンテーブルを示す図である。
【図12】4×4ドットのマトリクスでインク吐出がなされるドット数の割合との階調との対応関係を示す図である。
【図13】2パス記録を行う様子を模式的に示す図である。
【図14】50%デューティで記録する場合のドットの例とその記録に用いるドットパターンテーブルを示す図である。
【図15】マルチパス記録におけるパスの境界にスジが発生する様子を示す図である。
【図16】他の実施形態に従うではドットパターンテーブルを示す図である。
【図17】図16に示すドットパターンテーブルを用いて記録した結果を示す図である。
【図18】ドットパターンテーブル内のアドレスシフトを説明する図である。
【図19】ドットパターンテーブル格納部に格納されるドットパターンテーブルの構成を示す図である。
【図20】階調値“5”に対応するドットパターンテーブルを示す図である。
【図21】図2に示すインクジェットプリンタの制御構成を示す図である。
【図22】インクカートリッジを示す斜視図である。
【符号の説明】
10 画像入力部
11 画像処理部
12 画像出力部
20 入力データ補正部
21 量子化部
22 誤差演算部
23 誤差メモリ
24 ドットパターン展開部
25 ドットパターンテーブル格納部
26 ドットパターンアドレス生成部
IJH 記録ヘッド

Claims (16)

  1. 画素の階調値に対応したドットパターンを用いて記録ヘッドにより前記画素の記録を行うための画像記録装置であって、
    前記記録ヘッドのノズルの配列方向に相当する第1の方向および当該第1の方向と直交する第2の方向の2次元に配列される画素の位置に対応付けられた、所定の階調値に対応する複数のドットパターンを有するドットパターンテーブルを格納した格納部と、
    前記格納部に格納されたドットパターンテーブルから、前記所定の階調値を有する画素の位置に基づいて、当該画素の位置に対応付けられたドットパターンを選択する選択手段とを備え、
    前記第1の方向に沿って配列される画素の位置に対応付けられた前記所定の階調値の複数のドットパターンは、ドット数が同じでドット配置が異なるドットパターンを含み、
    前記第2の方向に沿って配列される画素の位置に対応付けられた前記所定の階調値の複数のドットパターンは、前記ドット数が同じでドット配置が異なるドットパターンを含むことを特徴とする画像記録装置。
  2. 画素の階調値に対応したドットパターンを用いて記録ヘッドにより前記画素の記録を行うための画像記録装置であって、
    前記記録ヘッドのノズルの配列方向に相当する第1の方向および当該第1の方向と直交する第2の方向の2次元に配列される画素の位置に対応付けられた複数のドットパターンを有するドットパターンテーブルを階調値毎に格納した格納部と、
    前記格納部に格納されたドットパターンテーブルから、前記画素の階調値および位置に基づいて、当該画素の位置に対応付けられたドットパターンを選択する選択手段とを備え、
    所定の階調値に対応するドットパターンテーブルでは、前記第1の方向に沿って配列される画素の位置に対してドット数が同じでドット配置が異なるドットパターンが対応付けられており、且つ、前記第2の方向に沿って配列される画素の位置に対して前記異なるドットパターンが対応付けられていることを特徴とする画像記録装置。
  3. 前記ドットパターンテーブルの前記第1の方向に対応するサイズをL、前記第2の方向に対応するサイズをKとし、前記ドットパターンの前記第1の方向に対応するサイズをl、前記第2の方向に対応するサイズをkとした場合、L=α×l(αは自然数)、K=β×k(αは自然数)なる関係を満たし、
    前記ドットパターンテーブルの前記第1の方向に対応するドットパターンの数はα個、前記第2の方向に対応するドットパターンの数はβ個であることを特徴とする請求項1または2に記載の画像記録装置。
  4. 前記ドットパターンテーブルは、前記第1の方向に関してL画素毎に繰り返し用いられ、前記第2の方向に関してK画素毎に繰り返し用いられることを特徴とする請求項3に記載の画像記録装置。
  5. 前記ドットパターンテーブルの前記第1の方向に対応したセル数Lと前記記録ヘッドのノズルの数Aとの関係は、L=γ×A(γは自然数)であることを特徴とする請求項3または4に記載の画像記録装置。
  6. 前記画素の位置は、2次元座標のx座標値およびy座標値で示され、
    前記選択手段は、前記ドットパターンテーブル内において、前記x座標値、前記y座標値、前記α値、前記β値に基づいて特定される位置に対応付けられたドットパターンを選択することを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の画像記録装置。
  7. 前記ドットパターンテーブルは、前記記録ヘッドの複数のノズルの特性を考慮して決定されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の画像記録装置。
  8. 前記ドットパターンテーブルは、前記画素内に記録されるドットの割合D(%)が25≦D≦50である階調値に対応するドットパターンテーブルであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の画像記録装置。
  9. 前記記録ヘッドの端部のノズルが使用されないように、前記ドットパターンテーブル内の複数のドットパターンが配列されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の画像記録装置。
  10. 前記ドットパターンテーブル内の複数のドットパターンによって定められるドット配置がブルーノイズ特性を有するように、前記ドットパターンテーブル内の前記複数のドットパターンは配列されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の画像記録装置。
  11. 前記ブルーノイズ特性とは、低周波数領域のパワースペクトルが高周波数数領域のパワースペクトルより小さい特性であることを特徴とする請求項10に記載の画像記録装置。
  12. 画素の階調値に対応したドットパターンを選択するための画像処理装置であって、
    前記画素の記録を行う記録ヘッドのノズルの配列方向に相当する第1の方向および前記第1の方向と直交する第2の方向の2次元に配列される画素の位置に対応付けられた、所定の階調値に対応する複数のドットパターンを有するドットパターンテーブルを格納した格納部と、
    前記格納部に格納されたドットパターンテーブルから、前記所定の階調値を有する画素の位置に基づいて、当該画素の位置に対応付けられたドットパターンを選択する選択手段とを備え、
    前記第1の方向に沿って配列される画素の位置に対応付けられた前記所定の階調値の複数のドットパターンは、ドット数が同じでドット配置が異なるドットパターンを含み、
    前記第2の方向に沿って配列される画素の位置に対応付けられた前記所定の階調値の複数のドットパターンは、前記ドット数が同じでドット配置が異なるドットパターンを含むことを特徴とする画像処理装置。
  13. 画素の階調値に対応したドットパターンを選択するための画像処理装置であって、
    前記記録ヘッドのノズルの配列方向に相当する第1の方向および当該第1の方向と直交する第2の方向の2次元に配列される画素の位置に対応付けられた複数のドットパターンを有するドットパターンテーブルを階調値毎に格納した格納部と、
    前記格納部に格納されたドットパターンテーブルから、前記画素の階調値および位置に基づいて、当該画素の位置に対応付けられたドットパターンを選択する選択手段とを備え、
    所定の階調値に対応するドットパターンテーブルでは、前記第1の方向に沿って配列される画素の位置に対してドット数が同じでドット配置が異なるドットパターンが対応付けられており、且つ、前記第2の方向に沿って配列される画素の位置に対して前記異なるドットパターンが対応付けられている画像処理装置。
  14. 画素の階調値に対応したドットパターンを選択するための画像処理方法であって、
    前記画素の記録を行う記録ヘッドのノズルの配列方向に相当する第1の方向および当該第1の方向と直交する第2の方向の2次元に配列される画素の位置に対応付けられた、所定の階調値に対応する複数のドットパターンを有するドットパターンテーブルから、前記所定の階調値を有する画素の位置に基づいて、当該画素の位置に対応付けられたドットパターンを選択する工程とを有し、
    前記第1の方向に沿って配列される画素の位置に対応付けられた前記所定の階調値の複数のドットパターンは、ドット数が同じでドット配置が異なるドットパターンを含み、
    前記第2の方向に沿って配列される画素の位置に対応付けられた前記所定の階調値の複数のドットパターンは、前記ドット数が同じでドット配置が異なるドットパターンを含むことを特徴とする画像処理方法。
  15. 前記ドットパターンテーブル内の複数のドットパターンによって定められるドット配置がブルーノイズ特性を有するように、前記ドットパターンテーブル内の前記複数のドットパターンは配列されていることを特徴とする請求項14に記載の画像処理方法。
  16. 請求項14〜15に記載の画像処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムが格納されたコンピュータ可読記憶媒体。
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