近年来のパーソナルコンピュータ等情報処理機器の普及に伴い、画像形成端末としての記録装置も急速に発展および普及してきた。特に種々の記録装置の中でも、インクを滴として吐出させて様々な記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置は、低騒音でありながら高密度かつ高速な記録動作が可能で、カラー記録にも容易に対応でき、低廉である。このように、極めて優れた特長を数々有していることから、インクジェット記録装置は今やパーソナルユースの記録装置の主流となりつつある。
インクジェット記録技術の進歩は記録の高画質化、高速化、低廉化を促進し、またパーソナルコンピュータやデジタルカメラ等の普及とも相俟って、パーソナルユーザにまで記録装置を普及させる効果に寄与すること大であった。しかしそのような広範な普及により、パーソナルユーザからも画質のより一層の向上が求められるようになってきており、特に近年では、家庭で手軽に写真をプリントできるようなプリントシステムおよび銀塩写真に見合う画像の品位が求められて来ている。
しかし、インクジェット記録ヘッドの複数のノズル間においては、その製造工程上、どうしてもインクを吐出する方向や量に僅かなばらつきが発生してしまう。また、シリアル型の記録装置においては、各記録走査の間に行われる副走査量(紙送り)に、多少なりとも構成上の誤差を含んでいる。このような誤差やばらつきは、インクが記録された記録媒体において、スジや濃度ムラのような画像弊害の原因となる。
このような画像弊害を回避するために、シリアル型のインクジェット記録装置においては、マルチパス記録という記録方法を採用することが多い。
図1は、マルチパス記録を説明するために、記録ヘッドおよび記録パターンを模式的に示した図である。1001は記録ヘッドを示し、ここでは簡単のため16個のノズルを有しているものとする。ノズルは、図のように第1〜第4の4つのノズル群に分割され、各ノズル群には4つずつのノズルが含まれている。1002はマスクパターンを示し、各ノズルが記録を行うことが可能なエリア(記録許容箇所)を黒塗りで示している。各ノズル群が記録するパターンは互いに補完の関係にあり、これらを重ね合わせると4×4のエリアに対応した領域の記録が完成される。
1003〜1006で示した各パターンは、記録走査を重ねていくことによって画像が完成されていく様子を示している。各記録走査が終了するたびに、記録媒体は図の矢印の方向にノズル群の幅分ずつ搬送される。よって、記録媒体の同一領域(各ノズル群の幅に対応する領域)は、4回の記録走査で画像が完成される。
このようなマルチパス記録を採用することによって、上述したスジや濃度ムラのような画像弊害を低減することが出来る。各ノズルの吐出特性や搬送量にばらつきがあったとしても、これらの特性が広範囲に分散され、目立たなくなるからである。
図1では、同一の画像領域に対して4回の記録走査を行う4パスのマルチパス記録を例に説明したが、マルチパス記録はこれに限定されるものではない。2回の記録走査で画像を完成させる2パス記録であっても、また5回以上の記録走査で画像を完成させる構成であっても良い。マルチパス数が多くなればなるほど、各ノズルの吐出特性や搬送量のばらつきは、より広い範囲に分散されるので、より滑らかな画像を得ることが出来る。
マルチパス記録が上記効果を十分に発揮するためには、特に中間調における画像のドット配置とマスクパターンの間に所定の条件が要される。
図2は、上記条件を説明するための図である。図において、2001は縦4エリア×横8エリアの領域に与えられたドットデータであり、黒はドットを記録するエリア、白はドットを記録しないエリアを示している。2002および2003は、上記画像領域に対して適用される互いに補間の関係にある2種類のマスクパターンであり、ここでは2002を第1記録走査で使用されるマスクパターン、2003を第2記録走査で使用されるマスクパターンとする。それぞれのマスクパターンにおいて、黒は記録走査でドットの記録を許容するエリア(以下、「記録許容エリア」ともいう)、白はドットの記録を許容しないエリア(以下、「非記録許容エリア」ともいう)を示している。それぞれの記録走査で実際に記録を行うエリアは、ドットデータ2001とマスクパターン2002あるいは2003の間で論理積をとることによって得られ、2004および2005がその結果を表している。ここでは、個々の記録走査で実際に記録を行うエリアを黒、記録を行わないエリアを白で表している。図からも判るように、本例の場合には、第1の記録走査と第2の記録走査で実際に記録が行われるエリアの数に大きな差が生じてしまっている。すなわち、第1の記録走査で用いられるノズルの吐出特性が画像に大きく影響し、マルチパス記録の効果が現れ難い。
以上より、マルチパス記録の効果を十分に得るためには、同一の画像領域に対して行われる複数の記録走査の夫々で、ほぼ同数ずつのドットが記録されることが要される。記録するドット数に極端な偏りがあると、各ノズルの吐出特性や搬送量のばらつきが分散されなくなり、スジや濃度ムラのような画像弊害が低減されないからである。
ここでは一例として2001のパターンを用いて説明したが、記録すべきドットデータは階調値や採用する面積階調法(量子化法)によって様々に変化する。このような状況に配慮し、マルチパス記録を行う際には採用される面積階調法と同期しないマスクパターンを用意する技術が既に開示されている(特許文献1参照。)。
また、いかなる面積階調法によるいかなる階調の画像データが入力された場合であっても、極力上記条件を満たすマスクパターンとして、記録許容エリアと非記録許容エリアがランダムに配置されたマスクパターンを生成する技術や方法も開示されている。(例えば特許文献2参照。)
更に、マルチパス記録においては、上記条件に配慮しつつも、マスクパターンの配列を更に工夫することによって、記録装置特有の様々な機械的問題が画像に表れるのを抑制することが出来る。
例えば、特許文献3には、分散性に優れ低周波成分が抑えられたマスクパターンを適用する方法が開示されている。マルチパス記録では、1回の記録走査の記録位置が他の記録走査に対してずれてしまった場合、使用しているマスクパターンの模様(テクスチャー)が視認される。この様な場合であっても、特許文献3の方法を採用すれば、分散性に優れ視覚的に好ましいマスクパターン自体が目障りになり難い、すなわち目立ち難いため、画像品位への影響が現れ難いのである。
ところで、記録する画像の濃度を示す多値の階調データを、インク滴を記録媒体に記録するか否かのドットデータに変換する、いわゆる2値化処理については、既に多くの方法が提案および開示されており、基本的にはどのような方法を採用することもできる。ただし、近年のように、記録装置の記録解像度やインク色の種類が増加する傾向にあっては、全色の全画像処理を記録解像度と同等の解像度で行うには負担が大きすぎる場合がある。よって、例えば、主な画像処理はホスト装置において記録解像度よりも低解像な状態で行った後に、個々の画素について数段階の階調値にまで低減する量子化処理を行い、更に記録装置で最終的な2値化処理を行うような記録システムが近年提供されている。この場合、ホスト装置が出力する1画素を、複数段階の濃度によって階調表現することになるので、写真画質のような階調性を重視する用途には好適な方法といえる。
数段階の多値濃度データを2値データに変換する方法は、既にいくつかの提案および実施がなされている。例えば、特許文献4によれば、5段階の階調値を持つ1つの入力画素に対し、2×2のエリアの中で4つのドットの記録・非記録によって階調表現する方法が開示されている。更に同文献によれば、2×2のエリアの中でのドット配置を、同一の階調値に対して複数パターンを用意しておき、これら複数のドット配値パターンを、シーケンシャルにあるいはランダムに配列させる方法も開示されている。この様にすることは、各階調に対するドット配置パターンが固定されないので、擬似中間調処理を行った場合の擬似輪郭や画像のエッジ部に現れるいわゆる「はきよせ現象」などが低減される。また、記録ヘッドに配列された複数の記録素子の使用平均化への効果もあると述べられている。以上のように、低解像な画素が有する数段階の多値濃度データをより高解像な2値データに変換する方法は、微細なドットを高精細に記録するインクジェット記録装置においては有用な技術である。以下、このような処理方法を、本明細書においてはドット配置パターン化処理と称することとする。
以上説明したように近年のインクジェット記録システムにおいては、ドット配置パターン化処理を有用しつつ、ランダムマスクパターンや分散性の高いマスクパターンを用いることにより、写真画質にも相当する高画質な出力画像を実現している。
特開平5−31922号公報
特開平7−52390号公報
特開2002−144552号公報
特開平9−46522号公報
特開平6−22106号公報
米国特許第4,967,203号明細書
特開2006−44258号公報
「T. Mitsa and K. J. Parker, "Digital Halftoning using a Blue Noise Mask", Proc. SPIE 1452, pp.47-56(1991)」
以下に本発明の実施形態を詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図3は、本実施形態に係るデータ処理装置としてのパーソナルコンピュータ(以下、単にPCとも言う)のハードウエアおよびソフトウエアの構成を主に示すブロック図である。
図において、ホストコンピュータであるPC3000は、オペレーティングシステム(OS)3002によって、アプリケーションソフトウエア3001、プリンタドライバ3003、モニタドライバ3005の各ソフトウエアを動作させる。アプリケーションソフトウエア3001は、ワープロ、表計算、インターネットブラウザなどに関する処理のほか、画像の生成などを行う。モニタドライバ3005は、アプリケーションソフトウエア3001で作成した画像などをモニタ3006に表示するための処理を実行する。
プリンタドライバ3003は、アプリケーションソフトウエア3001からOS3002へ発信される画像データを処理し、記録装置3004で記録可能な2値の吐出データを生成する。このとき生成される吐出データは、記録装置3004で用いるインクの種類、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)およびブラック(K)の4色分となっている。プリンタドライバ3003で実行する画像処理の詳細については後述する。
ホストコンピュータ3000は、以上のソフトウエアを動作させるためのハードウエアとして、CPU3008、ハードディスク(HD)3007、RAM3009、ROM3010などを備えている。CPU3008は、ROM3010に格納されているプログラムに従って各ソフトウエアの処理を実行し、RAM3009はその際のワークエリアとして用いられる。
図4は、記録装置3004を説明するための斜視図である。本実施形態の記録装置3004はシリアル型のインクジェット記録装置であり、インクを吐出するノズルを複数備えた記録ヘッドJ0010用いて記録媒体に画像を形成する。記録ヘッドJ0010には、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)およびブラック(K)のインクのそれぞれに対応した複数ヘッドが備えられ、これらインクを収容したインクタンクH1900から夫々のヘッドにインクが供給される。キャリッジM4000は記録ヘッドJ0010とインクタンクH1900を搭載した状態で図のX方向(主走査方向)に移動し、この移動中の所定のタイミングで、記録ヘッドJ0010の各ノズルは2値の吐出データに基づいてインク吐出する。このような記録ヘッドJ0010による1回の記録主走査が終了すると、記録媒体は図のY方向(副走査方向)に所定量だけ搬送される。以上の記録主走査と副走査とを交互に繰り返すことにより、記録媒体に画像が順次形成されていく。
本実施形態の記録ヘッドJ0010において、各色のノズルは1200dpi(ドット/インチ;参考値)の密度で副走査方向に128個ずつ配列しており、それぞれのノズルからは約2ピコリットルのインク滴が吐出される。
図5は、主にホストPC3000で行う画像処理の流れを説明するためのブロック図である。記録実行時、アプリケーション3001で作成された画像データは、OS3002を介してプリンタドライバ3003に渡される。プリンタドライバ3003は、受け取った画像データに対し、前段処理J0002、後段処理J0003、γ補正J0004、ハーフトーニングJ0005、ドット配置パターン化処理J0007およびマスクデータ変換処理J0008を実行する。以下に、各処理を簡単に説明する。
前段処理J0002は色域(Gamut)のマッピングを行う。この処理は、sRGB規格の画像データR、G、Bによって再現される色域を、記録装置によって再現される色域内に写像するためのデータ変換となる。具体的にはR、G、Bのそれぞれが8bitで表現された256階調のデータを、3次元のLUTを用いることにより、異なる内容のR、G、Bの8bitのデータに変換する。
後段処理J0003は、上記色域のマッピングがなされたR、G、Bデータに基づき、このデータが表す色を再現するインクの組み合わせに対応した色分解データY、M、CおよびKを求める。ここでは前段処理と同様に、3次元LUTにて補間演算を併用して処理を行う。
γ補正J0004は、後段処理J0003によって求められた色分解データの各色のデータごとに、その濃度値(階調値)変換を行う。具体的には、記録装置の各色インクの階調特性に応じた1次元LUTを用い、上記色分解データが記録装置の階調特性に線形的に対応づけられるような変換を行う。
ハーフトーニングJ0005は、8ビットの色分解データY、M、C、Kのそれぞれについて、量子化処理を行い4ビットのデータに変換する。本実施形態では、多値誤差拡散法を用いて、256階調の8ビットデータを、9階調の4ビットデータに変換する。この4ビットデータは、次処理であるドット配置パターン化処理のドット配置パターンを示すためのインデックスとなる階調値情報である。
本実施形態のドット配置パターン化処理J0007では、4ビットデータからなる9階調の濃度データ(レベル0〜レベル8)を、予め記憶されたドット配置パターンを参照することによって、ドットの記録・非記録が定められた2値のパターンデータに変換する。
図6は、レベル0〜8に対してそれぞれ変換するドット配値パターンを示している。図の左に示した各レベル値は、ハーフトーン処理部J0005からの出力値であるレベル0〜レベル8に相当している。右側に配列した横4エリア×縦2エリアで構成される各領域は、ハーフトーン処理で出力された1画素(ピクセル)の領域に対応するものである。1画素は、縦横ともに600dpiの画素密度に対応する大きさとなっている。1画素内の各エリアは、ドットの記録・非記録が定義される最小単位に相当する。1つのエリアは、縦が1200dpi(ドット/インチ)、横が2400dpiの記録密度に対応している。本実施形態の記録装置では、縦が約20μm、横が約10μmで表現される1つのエリアに対し、2plのインク滴が各色で1つずつ記録可能なように設計されている。また、図の縦方向は記録ヘッドの吐出口が配列する方向である。エリアの配列密度と吐出口の配列密度とは、1200dpiという値で一致している。横方向は記録ヘッドの走査方向を示している。本実施形態では、走査方向に対し2400dpiの密度で記録を行う構成となっている。ここでは、同じレベル値であってもインク色ごとにドット配置パターンを異ならせる例を示しているが、これは本発明を限定するものではなく、全色で同じドット配置パターンを用いても良い。また、同じインク色の同じレベル値であっても、複数種類のドット配置パターンを、シーケンシャルにまたはランダムに用いる形態であっても構わない。
ドット配置パターン化処理J0007においては、このように1画素を形成する複数のエリア各々について、ドットの記録・非記録を定義している。これにより、各エリアに対応する記録素子や記録するカラムに対し、「1」または「0」の1ビットの吐出データが生成される。図6において、丸印を記入したエリアは、ドットを記録するエリアを示している。レベル数が上がるに従って、記録するドット数も1つずつ増加している。
ドット配置パターン化処理J0007から出力された2値データは、次にマスクデータ変換処理J0008が施される。マスクデータ変換処理J0008では、既に図1を用いて説明したように、ドット配置パターン化処理J0007により決定された各色のドットデータと、予め定められたマスクパターンとの間で論理積がとられる。本実施形態においては、4パスのマルチパス記録を行うものとし、採用するマスクパターンは記録許容率が25%となっている。本実施形態で用いられるマスクパターンの特徴については、後に詳しく説明する。論理積の結果得られた2値データが、次の記録走査で記録されるドットデータとなり、記録装置3004へ転送される。
記録装置では、受信した2値データをヘッド駆動回路J0009へ転送する。駆動回路J0009に入力された各色の1bitデータは、記録ヘッドJ0010の駆動パルスに変換され、各色の記録ヘッドJ0010より所定のタイミングでインクが吐出される。これにより、1回分の記録主走査が実行される。
図7は、本実施形態で適用する4パス用のマスクパターンを示している。本マスクパターンは、縦方向、横方向共に128エリアで構成されており、縦方向は記録ヘッドのノズル数と一致している。4パスのマルチパス記録を行う場合、記録ヘッドJ0010に配列する128個のノズルは第1グループ〜第4グループの4つのグループに分割して考えることが出来、それぞれのグループには32個ずつのノズルが含まれている。ここでも図1と同様に、記録を許容するエリア(記録許容エリア)は黒、記録を許容しないエリア(非記録許容エリア)は白で表している。
本実施形態のマスクパターンの特徴の1つは、記録の許容・非許容を定める最小の単位(以下クラスタサイズと称する)をドット配置パターン化処理における1画素、すなわち4エリア×2エリアとしていることである。以下、このようなクラスタサイズにすることの利点を、以下に図面を用いて説明する。
図8は、クラスタサイズを4エリア×2エリアとした場合のマスクパターンを説明するための図である。1501は、1色分の記録ヘッドを示し、ここでは簡単のため32個のノズルを有するものとする。4パスのマルチパス記録を行うため、32個のノズルは8個ずつのグループに分割され、各領域はA〜Dで示すマスクパターンが対応づけられている。マスクパターンA〜Dにおいて、記録の許容(黒)および非許容(白)は4エリア×2エリアの単位で定められており、互いに補間の関係を保っている。右側に示した各パターンは、記録走査夫々を重ねていくことによって画像が完成されていく様子を示したものである。各記録走査夫々が終了するたびに、1画素単位(すなわち4エリア×2エリア単位)で複数画素の記録が完了し、記録媒体は図の矢印の方向に8ノズル分ずつ搬送される。記録媒体の同一領域(各ノズルグループに対応する領域)は4回の記録走査によって画像が完成される。
図9は、本実施形態のドット配置パターン化処理における出力データの一例を示した図である。既に図6を用いて説明したように、本実施形態のドット配置パターン化処理ではレベル0〜レベル8のデータのそれぞれに対し、予め用意されているドット配置パターンを割当てる。本例においては、レベル3の入力信号が一様に入力された状況において、2種類のドット配置パターン901および902を副走査方向にシーケンシャルに対応させた例を示し、得られたドットデータを903に示している。
このようなドットデータに対し、図1で示したような1エリア単位のマスクパターンを用いて記録した場合を考える。各画素(4エリア×2エリア)の内部に配置された3つの記録エリアのそれぞれは、4回の記録走査のうちのいずれかによって記録はされるが、画素によって、これらはばらばらに記録されたり、まとめて記録されたり、様々である。すなわち、課題の項で説明したように、1つの画素内の全ドットが1度に記録されてしまう画素と、複数回走査に分割されて記録される画素とが混在する状況が生じ、画素間における発色が不安定な状態となってしまうのである。
これに対し、図8で示したマスクパターンを用いて記録した場合には、個々の画素に対応されるドット配置パターンが901であろうと902であろうと、内部に配置された3つの記録エリアは、同一の記録走査で記録される。すなわち、いずれの画素においても、同一の階調レベルに対する発色は安定する。以上の理由により、本実施形態においては、ドット配置パターンの1画素領域に対応する4エリア×2エリアの領域をクラスタサイズとして、マスクパターンが定められている。
なお、1エリアよりも大きいクラスタサイズを有するマスクパターンについては、既に特許文献5などに開示されている。しかしながら、この特許文献5に記載のクラスタサイズは、他の様々な目的を達成するために複数エリアから構成されているものの、ドット配置パターンの1画素領域とはなんら関係を持っていない。すなわち、単に特許文献5などに開示されている手法を用いても、上述した本実施形態の効果(各画素の発色を安定させる効果)を得ることは出来ない。
これに対し、特許文献6には、上記ドット配置パターンの1画素に相当する領域を1つのスーパーピクセルとし、当該スーパーピクセル単位でマルチパス記録を行う内容が開示されている。同文献によれば、スーパーピクセル内のドット間のにじみは奨励するものであるが、互いのスーパーピクセル間のにじみは回避すべきものとし、同一の記録走査では互いに隣接するスーパーピクセルの記録を行わない内容が記載されている。このようなスーパーピクセルが本発明におけるドット配置パターン化処理の1画素に相当する場合、例えば図8に示したようなマスクパターンにおいては、特許文献6と同様な記録方法と認識される。
しかしながら、本発明においては上記第1の特徴に加えて第2の特徴を有することにより、特許文献6とは異なったマスクパターンを提供する。本発明の第2の特徴は、マスクパターンにおける個々のクラスタが、周期性を持って配列していないことである。特許文献6においては、隣接するスーパーピクセル同士が同一の記録走査で記録されないことが肝要とされており、これを実現するために各記録走査で記録されるドットは周期的に配列している。これに対し本発明者らは、周期性を有するマスクパターンよりも周期性を有さないマスクパターンの方が、滑らかな画像品位を得るためには有効であると認識している。よって、マスクパターンの中に互いに隣接するクラスタ(画素)を同時に記録する箇所が存在したとしても、これらが周期性を持たずに配列していれば、特許文献6に開示されているようなマスクパターンを用いる場合よりも高品位な画像が得られると判断した。
このように本発明の目的は、m×nエリア(mおよびnは正の整数、且つmおよびnの少なくとも一方は2以上の整数)の整数倍を単位としたクラスタが非周期性に配列されたマスクパターンによって実現される。しかし、本実施形態においては、更に改善を施したマスクパターンを適用する。具体的には、周期性を持たないのみでなく、個々のクラスタの配置が、低周波のノイズ成分が少なく、高周波側にピークを有するようなマスクパターンを適用する。
図10は、本実施形態で適用する図7に示したマスクパターンの周波数特性を、やはり4エリア×2エリアをクラスタサイズとして作成したランダムマスクの周波数特性と比較した図である。図において、横軸は空間周波数、縦軸は当該空間周波数に対するパワーを示しており、701は本実施形態のマスクパターンのパワースペクトル、702はランダムマスクパターンのパワースペクトルを示している。図によれば、ランダムマスクパターン702では全ての空間周波数においてほぼ安定したパワースペクトルを有しているが、本実施形態で用いたマスクパターン701は低周波成分が低く抑えられているのが判る。
なお、上記パワースペクトルは、2次元空間周波数を1次元として扱える、非特許文献1に記載のradically averaged power spectrum に相当する。また、「低周波数成分」とは、周波数成分が存在する空間周波数領域のうち、半分より低い側の周波数領域(低周波数領域)に存在する周波数成分を指す。また、「高周波数成分」とは、周波数成分が存在する空間周波数領域のうち、半分より高い側の周波数領域(高周波数領域)に存在する周波数成分を指す。更に、「低周波数成分が高周波数成分よりも少ない」とは、低周波数領域に存在する周波数成分(低周波数成分)の積分値が高周波数領域に存在する周波数成分(高周波数成分)の積分値よりも小さいことを指す。
空間周波数における低周波成分は、目視で確認した場合にザラツキ感として感知されることが多く、滑らかな印象を損なう原因となる。但し、このような低周波成分を有するマスクパターンを用いた場合であっても、各記録走査での記録位置が記録媒体上で完全に補完の関係が満たされれば問題はない。しかしながら、個々の記録走査には様々な機械的誤差に起因する多少の記録位置ずれがどうしても含まれており、この場合には使用したマスクパターンの模様が認識されて、画像品位を劣化させてしまう。よって、本実施形態のように、マスクパターンの模様自体が視覚的に滑らかな印象を与えるものを用いた方が、ランダムマスクパターンを用いた場合よりも安定した画像品位を得ることが出来るのである。本実施形態のような低周波成分が少なく、高周波領域側にピークが存在するマスクパターンは、例えば特許文献3に記載の方法を用いて作成することが出来る。
次に、高周波成分よりも低周波成分が少ないマスクパターンを使用する場合、すなわち本発明の第2の特徴が満たされた場合における、第1の特徴を有することの効果を具体的に説明する。
図11は、図7に示した本実施形態のマスクパターンと比較するための、クラスタサイズを1エリアとしたマスクパターンである。図7と同様に、記録許容エリアを黒、非許容エリアを白で表している。両図を比較した場合、個々のクラスタサイズは異なるが、ともに低周波成分を有さない状態で、128エリア×128エリア内にクラスタが配置されている。
図12(a)および(b)は、上記2種類のマスクパターンを用いて、図9に示した2値化後のドットパターンを記録する際の、1走査の記録状態を示している。図12(a)は図7に示した本実施形態のマスクパターンを用いた場合の記録状態、同図(b)は図11に示したマスクパターンを用いた場合の記録状態をそれぞれ示している。両図を比較すると分かるように、本実施形態のマスクパターンを用いた場合には、クラスタ内の3エリアは同時に記録されているが、これら3エリアの固まりは互いに分散性の高い状態で配置されており、画像全体の一様性は安定している。これに対し、図12(b)に示した記録状態においては、1エリア同士は比較的分散性の高い状態で記録されているものの、よりマクロ的に観察した場合、ドットの記録位置に粗密が生じてしまっている。すなわち、低周波成分を抑えるというマスクパターンの効果が十分に現れていない。
このような現象は、クラスタサイズの設定が、ドット配置パターンの1画素と無関係に定められてしまったことによって生じている。すなわち、いかに分散性の高く低周波成分を抑えたマスクパターンであっても、そのクラスタサイズがドット配置パターンの1画素領域を単位としていなければ、記録時においてマスクパターンの特徴を十分に発揮することが出来ないのである。
以上説明したように本実施形態においては、ドット配置パターンと同サイズの複数エリアをクラスタサイズとし、これらの配置が周期性を持たず、且つ低周波成分を有さないようなマスクパターンを用いた。これにより、各画素内の濃度や発色を安定させるとともに、低周波成分の少ない一様で高画質な画像品位を得ることが可能となった。
(第2の実施形態)
以下に、本発明の第2の実施形態を説明する。本実施形態においても第1の実施形態と同様に、図3〜図5に示した記録システムを用い、図6に示したドット配置パターンを適用するものとする。
第1の実施形態では、例えばブラックインクのような1色に関するドット配置パターンおよびマスクパターンの関係について説明したが、本実施形態においてはカラー間の関係についても言及する。そして、特に記録媒体上で生じるグレインに起因する画像弊害を、より積極的に低減するために、インク色ごとに配慮されたドット配置パターンとマスクパターンを用意する。
以下、グレインについて簡単に説明する。近年のインクジェット記録システムにおいては、記録素子(ノズル)の高密度化、吐出周波数の高速化およびインクの種類の多様化が著しく、記録媒体の単位面積に対し単位時間に付与されるインクの量が増大化しつつある。この様な状況において、記録媒体によっては、インクの吸収速度がインクの付与速度に十分対応しきれない状況が生じて来た。具体的には、付与された複数のインク滴が、吸収前の記録媒体表面で互いに接触および融合し、画像問題を引き起こしていたのである。記録媒体上の同一位置あるいは近傍位置に記録されたインク滴同士は、記録媒体への吸収が迅速に行われない場合、互いの表面張力によって引き合って大きな塊を形成する。このような塊を本明細書ではグレインと称する。一度このようなグレインが生成されると、次に同一位置あるいは近傍位置に付与されたインク滴はさらにこのグレインに引き寄せられやすくなる。すなわち、最初に発生したグレインが核となって徐々に成長し、やがて大きなグレインを生成してしまうのである。
このようなグレインが生じる場合であっても、例えば第1の実施形態で説明した図12(a)のように、クラスタ内で発生する同一色のグレイン同士が分散性の高い状態で配置されていれば、画像上然程問題にはならない。しかしながら、たとえばブルー、レッド、およびグリーンのように、2種類以上のインクを同一画素に記録する場合には、これらインクがすべてほぼ同時に付与されると、ここに発生するグレインは更に大きく、目立ちやすくなってしまう。
このような異色同士のグレインを抑えるには、マスクパターンの記録許容エリアの配置を各色で異ならせる方法が効果的である。このような方法を採用すれば、同一記録走査において各色のドットをなるべく異なる位置に記録させるように制御することが出来るからである。しかしながら、近年のようにインクの種類の多様化並びにパス数の減少化の傾向にある状況下において、同一記録走査における各色ドットの記録位置を完全に排他関係にすることは難しく、同一記録走査で異色ドットが重ねて記録される箇所も少なからず発生する。すると、異色同士のグレインも少なからず発生してしまう。
しかし、上述したような異色同士のグレインが存在する場合であっても、これらグレインが分散性の高い状態で配列していれば、画像上大きな弊害とならないことが、既に本発明者らによって確認されている。逆に、これらグレインが分散性の低い状態で配列されていると、ビ−ディングと称される画像弊害が招致されることも確認されている。特許文献7には、このような状況に配慮し、複数のインク種によってどうしても生成されてしまうグレインを分散性の高い状態で配置させるためのマスクパターンの構成および生成方法が開示されている。
しかしながら、特許文献7は、本発明が懸念するようなドット配置パターン化処理とマスクパターンとの干渉について着目されたものではなかった。よって、基本的には1エリア×1エリアあるいはドット配置パターンの1画素領域とは無関係なクラスタを単位として、分散性の高い状態でグレインが配置されるように各色のマスクパターンが設定されているに過ぎなかった。結果、2次色以上の混色部において、図12(b)で説明したような問題が解決されないままであった。
本実施形態においては、第1の実施形態で説明した本発明の第1の特徴および第2の特徴とともに、特許文献7に開示されているマスクパターンの特徴をも取り入れた構成とする。すなわち、ドット配置パターンのサイズの整数倍をクラスタサイズとしつつも、各色で重複したクラスタによって生成されるグレインが非周期で且つ低周波成分を殆ど持たずに配置するように、各色のマスクパターンが工夫されているのである。言い換えれば、各色マスクパターンの論理積によって得られるパターンが非周期で且つ低周波数成分が高周波成分よりも少ない特性を有するように、各色マスクパターンにおける記録許容エリアの配置を定めているのである。そして、このようなマスクパターンは、例えば、4エリア×2エリアを1つのクラスタとしながら、特許文献7に記載の方法を採用することによって作成することが出来る。本実施形態においては、このように生成されたマスクパターンを用いることによって、各画素内の濃度や発色を安定させるとともに、2次色以上の混色画像においても、ビ−ディングの抑えられた一様かつ高画質な画像品位を得ることが可能となる。特に、この構成によれば、ビ−ディングの発生を招きやすい位置、つまり、異色クラスタの重なり位置が良好に分散することになるので、仮にビ−ディングが生じたとしても、それが視覚的に目立たない。
なお、以上では、図5および図6に示したように、各色について同じ解像度でデータ処理が実行され、同じエリアサイズ(4エリア×2エリア)のドット配置パターンが用いられる構成で説明した。しかし、本発明の効果はこれに限定されるものではない。複数のインク色のうち、所定のインクのみが、他とは異なる解像度でデータ処理が実行され、他とは異なるサイズを有するドット配置パターンを用いる場合であっても、本発明を有効に機能させることは出来る。
図18は、ブラックが他色とは異なるサイズのドット配置パターンを用いる例を説明するための模式図である。ここでは、シアン、マゼンタおよびイエローの3色が上記実施形態と同様に600ppiの解像度で処理され、ブラックデータのみが1200ppiの解像度で処理された場合を示している。また、記録装置の記録解像度については、全色ともに主走査方向が2400dpi、副走査方向が1200dpiであったとする。このような場合、シアン、マゼンタおよびイエローについては、図6と同様に4エリア×2エリアのドット配置パターンが適用されるが、ブラックについては2エリア×1エリアが適用される。すなわち、ブラックについては、2エリア×1エリアをクラスタとしたマスクパターンを用意すればよい。
しかしながら、この場合においては、ブラックに対してもクラスタサイズを4エリア×2エリアとすることも出来る。このようにした場合、個々のクラスタには4画素分(縦2×横2)のドット配置パターンが配列することになるが、この4画素ずつの塊が周期を有さない状態でマスクパターン内に配列していれば本発明の効果は得られるからである。
本発明において、クラスタサイズはドット配置パターンの1画素領域に一致している必要はない。クラスタサイズは、ドット配置パターンが主走査方向、副走査方向ともに整数個ずつ配列した大きさであればよい。このようなクラスタが非周期に配列して構成されるマスクパターンを用いていれば、本発明は有効となる。これは、本実施形態のみでなく本発明全体に言えることである。
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態を説明する。本実施形態においても上記実施形態と同様に、図3〜図5に示した記録システムを用い、図6に示したドット配置パターンを適用する。但し、本実施形態においては、各記録走査においてカラム間引き記録を実施するものとする。
図13は、カラム間引き記録を説明するための模式図である。カラム間引き記録とは、主走査方向に配列する2値のデータを所定の間隔ずつ間引きながら記録する記録方法であり、ここでは1つおきのカラムデータを交互に記録する場合を示している。1301は、レベル5のデータが入力された4画素の領域(8エリア×4エリア)に対し、1302および1303に示すドット配置パターンを用いて処理した後のドットパターンを示している。パターン1301の上部に記された0および1はカラム番号を示しており、交互に配列するカラム0とカラム1は異なる記録走査で記録される。1304および1305は、カラム0およびカラム1のみを集めたドットパターンを示している。
このようなカラム間引きを行いつつ、各カラムのデータを例えば1306および1307のような2パスのマスクパターンを用いて分割して記録する場合を考える。このとき、各記録走査で記録するドットパターンは1308〜1311に示したようになり、結果的には4パスのマルチパス記録を行ったのと同じ記録動作となる。但し、カラム間引き記録を行った場合には、個々のノズルからインクを吐出するための駆動周波数を、記録カラムの周期に合わせて設定することが出来る。結果、駆動周波数によって上限が定められている主走査速度をさらに上昇させることが出来、同じ4パスのマルチパス記録であっても、カラム間引き記録を併用した場合の方がより高速に画像を出力することが可能となる。
本実施形態においては、1304や1305のようにカラム毎に分割されたドットパターンに対してマルチパス記録を行う場合であっても、ドット配置パターンの1画素領域が1つの単位として記録されるようなマスクパターンを用意することを特徴とする。
図14は、レベル5のデータが一様に入力され、全ての画素に対し1401のドット配置パターンが使用された場合のドットデータと、これをカラム0とカラム1とに分割した後のドットデータを示している。図において、1402は、レベル5のデータが一様に入力された全ての画素に対し1401のドット配置パターンが適用された場合のドットデータを示している。また、1403および1404は、ドットデータ1402を、カラム0とカラム1とにそれぞれ分割した後のドットデータをしている。本実施形態では、このようなドットデータ1403および1404に対し、2エリア×2エリアを有するクラスタを単位とした分散性の高いマスクパターンを用いる。
図15は、本実施形態で用いるマスクパターンを示した図である。第1の実施形態と同様、縦方向、横方向共に128エリアで構成されており、縦方向は記録ヘッドのノズル数と一致している。本実施形態のマスクパターンは、カラム間引きによって2つに分割されたドットデータを更に2分割するためのものであるので、間引き率(記録許容率)は50%となっている。
図において、クラスタサイズは2エリア×2エリアとなっている。このようにすることにより、記録媒体上では4エリア×2エリアの領域を1単位とした記録が実現される。更に、個々のクラスタが分散性の高い状態で配列していることにより、上記実施形態と同様の効果をカラム間引き記録を行う本実施形態でも得ることが出来る。
なお、以上では、個々のカラムを2つに分割したカラム間引きについて説明したが、カラム間引きの分割数はこれに限られるものではない。例えば個々のカラムを0〜3の4つに分割して記録することも可能である。この場合、個々のカラムデータを更に2パスのマスクパターンで分割すると、結果としては8パスのマルチパス記録と同様の記録動作となる。この場合、記録媒体上の4エリア×2エリアの領域を1単位とした記録を実現するためには、クラスタサイズは1エリア×2エリアを1単位とすればよい。
(第4の実施形態)
以下、本発明の第4の実施形態について説明する。本実施形態においても上述した実施形態と同様に、図3〜図5に示した記録システムを用い、図6に示したドット配置パターンを適用する。但し、本実施形態においては、所定のインク色を吐出するノズル列が2列分用意されているものとする。
図16は、本実施形態で用いる記録ヘッドとドットデータの関係を説明するための模式図である。1601および1602は、同色のインクを吐出する2列のノズル列である。本実施形態の記録ヘッドにおいて、各ノズル列は実際には128個ずつのノズルが配列されているが、ここでは簡単のため16個ずつのノズルが副走査方向に配列されているものとする。図では、2つのノズル列は隣接して配置されているが、実際のノズル列は他色のノズル列を挟んで配置していてもよいし、副走査方向にずれた状態で分離して配置していても良い。また、2つのノズル列は、同一の記録ヘッドや同一の基板上に形成されていても良いが、異なる記録ヘッドや異なる基板上に形成されていても良い。
図において、1603は、2つのノズル列1601および1602のいずれかに記録されるべき2値のドットデータである。このドットデータは、600ppiの各画素にレベル5のデータが一様に入力され、全ての画素に対し1604に示すドット配置パターンが使用された結果となっている。このような2値のドットデータを、2つのノズル列1601および1602に分割して記録する場合においても、上述したようなマスクパターンは適用可能である。
図17は、本実施形態のマスクパターンとドット配置パターンの関係を説明するための模式図である。図において、斜線で示したエリアはノズル列1601によって記録するエリア、黒塗りで示したエリアはノズル列1602によって記録するエリアをそれぞれ示している。図からも判るように、本実施形態においては、4エリア×2エリアに相当するドット配置パターン化処理の1画素領域を1つのクラスタとしてマスクパターンが形成されおり、これによって2つのノズル列それぞれが記録するべきドットデータが決定されている。そして、これらマスクパターンにおいて個々のクラスタは周期性を有することなく配置していることが特徴となっている。
このように2つ以上のノズル列で分担して同一のドットデータを記録するような場合でも、上記マルチパス記録と同様の効果を得ることが出来る。そしてこのような形態においても、本発明のデータ処理方法は有効となる。
なお、図3〜図5を用いて説明した以上の実施形態においては、アプリケーションソフトによる画像生成からマスクデータ変換処理までの全ての画像処理をホスト装置(データ供給装置)によって行う内容で説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ドット配置パターンやマスクパターンは記録装置のメモリに格納しておき、ホスト装置では、ハーフトーニングまでの画像処理を行うようにしても良い。この場合、記録装置が本発明のデータ処理装置として機能することになる。更に、これら全ての処理が1つの装置によって行われる構成であっても構わない。ドット配置パターン化処理およびマスクデータ変換処理において、上述したような特徴的なデータ処理方法が採用されていれば、本発明の範疇に含まれる。
さらに、コンピュータが担当する機能を実現するためのソフトウエアまたはプリンタドライバのプログラムコードがコンピュータに読取られ、コンピュータに格納されたプログラムコードによって作動させるようにしたものも、本発明の範囲に含まれる。この場合、プログラムコード自体が本発明の新規な機能を実現することになり、そのプログラムコード自体、および通信や記憶媒体などによりプログラムコードをコンピュータに供給する手段も、本発明の範囲に含まれる。
プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスクやCD−ROMのほか、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−R、DVD、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどを用いることができる。
また、コンピュータが読み出したプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが実際の処理の一部または全部を行うことによって本実施形態の機能が実現される場合も含まれる。
さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれる様な形態であっても良い。この場合、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行うことによって本実施形態の機能が実現される。