JP4289571B2 - 粘性調整剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は新規な粘性調整剤及びそれを使用した組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来粘性調整剤、即ち増粘剤としては天然物、半合成物(カルボキシメチルセルロース等)、合成物と多くのものが知られており、ポリオキシエチレングリコール誘導体についても脂肪酸エステル、エポキシドとの反応物等多くが知られている。中でも、ポリオキシアルキレングリコールとポリイソシアネートからなるポリウレタン系増粘剤は水性塗料の増粘剤として検討されている。
例えば、特公昭52―25840号公報には、ポリエーテルポリオールと、ジイソシアネートと、1価の活性水素含有化合物から製造される、非イオン性の系に高粘度を与える表面活性剤が記載されている。該1価の活性水素含有化合物としては、実施例において直鎖の脂肪族アルコール、ノニルフェノール、ステアリン酸等が使用されている。その他、特公平1−55292号公報、特公平3−52766号公報、特開昭58―213074号公報等にポリエーテルポリオールと、ジイソシアネートと、1価の活性水素含有化合物から製造されるウレタン系増粘剤が記載されている。
【0003】
しかし、これらに代表される既知の増粘剤は、温度によって粘度が変化してしまうという問題があった。一般に、粘度は温度が高くなるに従って低下する傾向があるが、この粘度の温度依存性が大きい場合、増粘剤を配合した塗料を夏場に塗布する場合と冬場に塗布する場合では当然に塗料の粘度に影響がでてくる。特に日本の様な四季のはっきりしている地域では、温度差は冬と夏では最大30〜40℃の幅があるために、その時々によって粘度が変化する事は実際に塗布等の作業をするには問題があった。又、一日の内でも朝方や夜間といった低温時と、日中のような高温時でも同じような問題が生じていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
特開平9−71766号公報、特開平9−71767号公報では、増粘剤の構造末端に分枝鎖又は2級の炭化水素基を導入することによってこのような問題を解決した増粘剤を提案している。
しかし、この場合はエマルジョンや塗料の液性、即ちpHによって粘度が変化するという問題が発生した。つまり、現実のエマルジョン又は塗料は、様々な組成であり、添加剤等も含有しているため、液のpHも様々である。液のpHによって増粘剤の粘性が変化してしまっては、汎用的に使用することができない。
即ち本発明の目的は、温度の変化及びpHの変化によっても粘性が変化しない粘性調整剤を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は下記の一般式(1)
【0006】
【化3】
【0007】
(式中、R1はエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビット、マンニット、蔗糖のいずれかより選択される多価アルコールから水酸基を除いた基を表し、R2は炭素数2〜4のアルキレン基もしくはフェニルエチレン基を表し、R3は炭化水素基又はウレタン結合を有する炭化水素基を表わし、R4は分枝鎖の炭化水素基を表わし、mは2、3、4、6または8の数を表わし、hは1以上の数を表わし、kは10〜500の数を表わす。)で表わされる粘性調整剤である。又、本発明は、上記の粘性調整剤を含有するエマルジョン組成物、又は、上記の粘性調整剤を含有するエマルジョン塗料組成物である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の一般式(1)で表わされる粘性調整剤は、例えば、R1−[(O−R2)k−OH]mで表わされるポリエーテルポリオールと、R3−(NCO)h+1で表わされるポリイソシアネートと、HO−R4で表わされるモノオールを反応させることにより得ることができる。この場合、一般式(1)中のR1〜R 4 は、用いるR1−[(O−R2)k−OH]m、R3−(NCO)h+1、HO−R4により決定される。
【0009】
上記のR1−[(O−R2)k−OH]mで表わされるポリエーテルポリオール化合物は、m価の多価アルコール及びこの多価アルコールにアルキレンオキサイド、スチレンオキサイド等が付加したポリエーテル化合物であれば特に限定されないがポリエーテル化合物が好ましい。このようなポリエーテル化合物は、m価のポリオールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、エピクロルヒドリン等のアルキレンオキサイド又はスチレンオキサイド等を付加重合することにより得ることができる。
【0010】
多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビット、マンニット、蔗糖である。
【0011】
又、付加させるアルキレンオキサイド又はスチレンオキサイド等によりR2が決定され、特に、入手が容易であり優れた粘性調整効果を発揮させるためには、炭素数2〜4のアルキレンオキサイド、又はスチレンオキサイドを使用する。付加させるアルキレンオキサイド又はスチレンオキサイド等は単独重合、2種類以上のランダム共重合又はブロック共重合であってよい。付加の方法は通常の方法であってよい。又、重合度kは10〜500であり、好ましくは10〜200がよい。又、R2に占めるエチレン基の割合が、好ましくは全R2の50〜100重量%、更に好ましくは65〜100重量%であると、良好な粘性調整性が得られる。
【0012】
R1−[(O−R2)k−OH]mで表わされるポリエーテルポリオール化合物を具体的に例示すれば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン/ポリプロピレングリコール、グリセリン−アルキレンオキサイド付加物、ネオペンチルグリコール−アルキレンオキサイド付加物、トリメチロールエタン−アルキレンオキサイド付加物、トリメチロールプロパン−アルキレンオキサイド付加物、ペンタエリスリトール−アルキレンオキサイド付加物、ジペンタエリスリトール−アルキレンオキサイド付加物、ソルビット−アルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。これらは分子量が500〜5万のものが好ましく、1,000〜2万のものが特に好ましい。あまりに分子量が大きいと粘度が高くなり、製造時に使用しずらくなるからである。
【0013】
本発明の一般式(1)で表わされる粘性調整剤を得るのに好ましく用いることができるR3−(NCO)h+1で表わされるポリイソシアネートは、分子中に2個以上のイソシアネート基を有するものであれば特に限定されない。ポリイソシアネートとしては例えば、脂肪族ジイソシアネート、芳香核ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、フェニルメタン誘導体のジイソシアネート等が挙げられる。
【0014】
脂肪族ジイソシアネートとしては例えば、メチレンジイソシアネート、ジメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジプロピルエーテルジイソシアネート、2,2−ジメチルペンタンジイソシアネート、3−メトキシヘキサンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルペンタンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、3−ブトキシヘキサンジイソシアネート、1,4−ブチレングリコールジプロピルエーテルジイソシアネート、チオジヘキシルジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、パラキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0015】
芳香核ジイソシアネートとしては例えば、メタフェニレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ジメチルベンゼンジイソシアネート、エチルベンゼンジイソシアネート、イソプロピルベンゼンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、2,6−ナフタレンジイソシアネート、2,7−ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0016】
脂環族ジイソシアネートとしては例えば、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等が挙げられる。
ビフェニルジイソシアネートとしては例えば、ビフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチルビフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4−ビフェニレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0017】
フェニルメタン誘導体のジイソシアネートとしては例えば、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルジメチルメタン−4,4’−ジイソシアネート、2,5,2’,5’−テトラメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、シクロヘキシルビス(4−イソシアントフェニル)メタン、3,3’−ジメトキシジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジメトキシジフェニルメタン−3,3’−ジイソシアネート、4,4’−ジエトキシジフェニルメタン−3,3’−ジイソシアネート、2,2’−ジメチル−5,5’−ジメトキシジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジクロロジフェニルジメチルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ベンゾフェノン−3,3’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート等が挙げられる。
【0018】
トリイソシアネートとしては、例えば、1−メチルベンゼン−2,4,6−トリイソシアネート、1,3,5−トリメチルベンゼン−2,4,6−トリイソシアネート、1,3,7−ナフタレントリイソシアネート、ビフェニル−2,4,4’−トリイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4,4’−トリイソシアネート、3−メチルジフェニルメタン4,6,4’−トリイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェート等が挙げられる。
【0019】
これらの中でも、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート等のジイソシアネートが好ましい。
又、これらのポリイソシアネート化合物はダイマー、トリマー(イソシアヌレート結合)で用いられてもよく、又、アミンと反応させてビウレットとして用いてもよい。
【0020】
更に、これらのポリイソシアネート化合物とポリオールを反応させたウレタン結合を有するポリイソシアネートも用いることができる。ポリオールとしては、前述の2〜8価のポリオールが好ましい。具体的には、グリセリン−トリレンジイソシアネート反応物、グリセリン−ヘキサメチレンジイソシアネート反応物等が挙げられる。3価以上のポリイソシアネートを使用する場合は、ジイソシアネートとポリオールを反応させたウレタン結合含有ポリイソシアネートを使用することが好ましい。
【0021】
本発明の一般式(1)で表わされる粘性調整剤を得るのに好ましく用いることができるHO−R4で表わされるモノオールは、分枝鎖のアルコールである。分枝鎖のアルコールとしては、次の一般式(2)で表わされる炭化水素基の末端に水酸基が結合した構造のモノオールが好ましい。
【0022】
【化4】
【0023】
一般式(2)において、R5、R6は炭化水素基を表わす。炭化水素基としては、例えばアルキル基又はアルケニル基等が挙げられ、特に炭素数1〜36のアルキル基又はアルケニル基が好ましい。
【0024】
アルキル基としては例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、2級ブチル、ターシャリブチル、ペンチル、イソペンチル、2級ペンチル、ネオペンチル、ターシャリペンチル、ヘキシル、2級ヘキシル、ヘプチル、2級ヘプチル、オクチル、2―エチルヘキシル、2級オクチル、ノニル、2級ノニル、デシル、2級デシル、ウンデシル、2級ウンデシル、ドデシル、2級ドデシル、トリデシル、イソトリデシル、2級トリデシル、テトラデシル、2級テトラデシル、ヘキサデシル、2級ヘキサデシル、ステアリル、イコシル、ドコシル、テトラコシル、トリアコンチル、2―ブチルオクチル、2―ブチルデシル、2―ヘキシルオクチル、2―ヘキシルデシル、2―オクチルデシル、2―ヘキシルドデシル、2―オクチルドデシル、2―デシルテトラデシル、2―ドデシルヘキサデシル、2―ヘキサデシルオクタデシル、2―テトラデシルオクタデシル、モノメチル分枝―イソステアリル等が挙げられる。
アルケニル基としては例えば、ビニル、アリル、プロペニル、ブテニル、イソブテニル、ペンテニル、イソペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、テトラデセニル、オレイル等が挙げられる。
分枝鎖アルコールの場合はR7はアルキレン基であり、特にメチレン基が好ましく、2級アルコールの場合はR7は存在しない。
【0025】
R4として好ましい基は、例えば、2級ウンデシル、2級ドデシル、2級トリデシル、2級テトラデシル、2級ヘキサデシル、2−エチルヘキシル、2―ブチルオクチル、2―ブチルデシル、2―ヘキシルオクチル、2―ヘキシルデシル、2―オクチルデシル、2―ヘキシルドデシル、2―オクチルドデシル、2―デシルテトラデシル、2―ドデシルヘキサデシル、2―ヘキサデシルオクタデシル、2―テトラデシルオクタデシル、2−テトラデシルイコシル、2−ヘキサデシルイコシル等である。
【0026】
一般式(1)で表される化合物を製造する方法としては、上記R1−[(O−R2)k−OH]mで表わされるポリエーテルポリオールと、R3−(NCO)h+1で表わされるポリイソシアネートと、HO−R4で表わされるモノオールを、通常のポリエーテルとイソシアネートとの反応と同様にして、例えば80〜90℃で1〜3時間加熱し反応させれば得ることができる。
尚、R1−[(O−R2)k−OH]mで表わされるポリエーテルポリオール(a)と、R3−(NCO)h+1で表わされるポリイソシアネート(b)と、HO−R4で表わされるモノオール(c)とを反応させる場合は、一般式(1)の構造の化合物以外の化合物も副生することがある。例えば、ポリエーテルポリオール(a)としてポリエーテルジオールを、ポリイソシアネート(b)としてジイソシアネートを用いた場合に、主生成物としては一般式(1)で表わされるc−b−a−b−c型の化合物が生成するが、その他、c−b−c型、c−b−(a−b)x−a−b−c型等の化合物が副生することがある。この場合は、特に一般式(1)型の化合物のみを分離することなく、一般式(1)型の化合物を含む混合物の状態で粘性調整剤として使用することができる。ポリエーテルジオール以外のポリエーテルポリオール、ジイソシアネート以外のポリイソシアネートを使用した場合も同様である。
【0027】
本発明の粘性調整剤は前記のような既知の増粘剤には見出せなかった特性を提供する。例えば、本粘性調整剤は非イオン性であり、又比較的低分子量であるにもかかわらず、水性系への少量の添加において良好な増粘性を示す。又、水及びアルコールに対して安定である。特にエマルジョン塗料においては、単に増粘するだけではなく、多くの場合優れた流動性及び均展性を与え、そして低剪断及び高剪断の両条件下で優れた粘性調整効果を与える。
又、本発明の粘性調整剤は、既存の増粘剤では得られなかった、温感特性を有する。即ち、温度依存性が少なくどの条件下においても一定の範囲の粘度を保つため、四季を応じて作業性に優れている。これは、一般式(1)においてR4が分枝鎖の炭化水素基であるためである。更に、本発明の粘性調整剤は、既存の増粘剤では得られなかった、pH特性を有する。即ち、pH依存性が少なく、pHの高低にかかわらず一定の範囲の粘度を保つ。これは、一般式(1)においてR4とウレタン結合の間にポリオキシアルキレン基が無いためである。
【0028】
本発明の粘性調整剤は水性系におけるポリマーエマルジョン、ラテックス、分散体(サスペンション、ディスパージョン)等に用いることができる。ポリマーエマルジョン、ラテックスとしては以下のようなものが挙げられる。
酢酸ビニル系ポリマーエマルジョンとして、酢酸ビニル単独の他例えば、酢酸ビニル/スチレン、酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸、酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル/塩化ビニル、酢酸ビニル/アクリロニトリル、酢酸ビニル/マレイン酸(エステル)、酢酸ビニル/フマル酸(エステル)、酢酸ビニル/エチレン、酢酸ビニル/プロピレン、酢酸ビニル/イソブチレン、酢酸ビニル/塩化ビニリデン、酢酸ビニル/シクロペンタジエン、酢酸ビニル/クロトン酸、酢酸ビニル/アクロレイン、酢酸ビニル/ベオバ(3級炭素を有する脂肪酸のビニルエステル)、酢酸ビニル/アルキルビニルエーテル等が挙げられる。アクリル系ポリマーエマルジョンとしては例えば、(メタ)アクリル酸(エステル)同士、(メタ)アクリル酸(エステル)/スチレン、(メタ)アクリル酸(エステル)/酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸(エステル)/塩化ビニリデン、(メタ)アクリル酸(エステル)/アリルアミン、(メタ)アクリル酸(エステル)/ビニルピリジン、(メタ)アクリル酸(エステル)/N,N―ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸(エステル)/N,N−ジエチルアミノエチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0029】
スチレン系ポリマーエマルジョンとしては、スチレン単独の他例えば、スチレン/アクリロニトリル、スチレン/フマルニトリル、スチレン/マレインニトリル、スチレン/シアノアクリル酸エステル、スチレン/酢酸フェニルビニル、スチレン/クロロメチルスチレン、スチレン/ジクロロスチレン、スチレン/ビニルカルバゾール、スチレン/N,N−ジフェニルアクリルアミド、スチレン/メチルスチレン、スチレン/アクリロニトリル/メチルスチレン、スチレン/アクリロニトリル/ビニルカルバゾール、スチレン/マレイン酸等が挙げられる。
【0030】
ハロゲン化オレフィン系ポリマーエマルジョンとしては例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化ビニル/マレイン酸(エステル)、塩化ビニル/フマル酸(エステル)、塩化ビニル/酢酸ビニル、塩化ビニル/塩化ビニリデン、塩化ビニリデン/酢酸ビニル、塩化ビニリデン/安息香酸ビニル等が挙げられる。
又、その他のエマルジョン、ラテックスとしては、例えば、ウレタン樹脂エマルジョン、シリコーン樹脂エマルジョン、エポキシ樹脂エマルジョン、フッ素樹脂エマルジョン、SBRラテックス、SBラテックス、ABSラテックス、NBRラテックス、CRラテックス、VPラテックス、BRラテックス、MBRラテックス、IRラテックス等が挙げられる。
【0031】
本発明の粘性調整剤は水に溶解或いは分散して粘性調整効果を示すので、通常添加量はポリマーエマルジョン、ラテックス等の固形分に対して好ましくは0.01〜10重量%、更に好ましくは0.01〜5重量%である。使用方法としては直接ポリマーエマルジョン、ラテックス等に配合してもよく、又配合前に適当な粘度になるよう水や溶剤で希釈してから配合することもできる。例えば本発明の粘性調整剤をエマルジョン塗料に対して使用する場合は、作業しやすくするため、エチルアルコール−水溶液とし、その0.01〜5重量%を混練工程に添加してもよく、又調整工程に添加してもよい。
【0032】
ポリマーエマルジョンは1種類以上のアニオン、カチオン又は非イオン型の乳化剤を使用し、調整することができる。2種類以上の乳化剤混合物もイオンの型に関係なく使用可能である。乳化剤の添加量はモノマー量に対して約0.1〜10重量%、又は場合によってはそれ以上の量が可能である。過硫酸塩型の開始剤を使用する場合は、乳化剤は不要な場合もある。一般にこれらのエマルジョンポリマーの平均分子量は、約10万〜1,000万で、多くは50万以上である。本発明の粘性調整剤は非イオン性であることから、アルカリ性であるポリマーエマルジョンに対しても有効である。本発明の粘性調整剤は、消泡剤、顔料分散剤及び他の界面活性剤と同時に添加することが可能である。又、本発明の粘性調整剤は酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐水化剤、防腐防菌剤、殺虫殺菌剤、分散剤、消泡剤、消臭剤、香料、増量剤、染料及び顔料等を含有又混合してもよい。
本発明の粘性調整剤は、水、低級アルコール等の溶剤、エマルジョン、顔料、消泡剤、顔料分散剤その他の添加剤と混合してエマルジョン塗料組成物の粘性調整剤として使用することができる。
本発明の粘性調整剤が有効なその他の水性系には紙、革及び繊維工業に対する水性塗料組成物、洗浄剤、接着剤、ワックス、磨き剤、化粧品及び洗面用化粧品、医薬品、農薬又は農業用組成物、水系潤滑油等が挙げられる。
【0033】
【実施例】
以下、本発明を製造例及び実施例により更に具体的に説明する。尚、実施例中、部及び%については特に記載が無い限り重量基準である。
【0034】
(製造例1)
温度計、窒素導入管及び攪拌機を付した容量1,000mLの4つ口フラスコにポリエチレングリコール(PEG)6,000(分子量6,000)を272.4部、構造式
【0035】
【化5】
【0036】
で表される分枝アルコール(2−エチルヘキサノール;i−C8と略記する)を11.8部仕込み、脱水し、次いでトリレンジイソシアネ−ト(TDI)を15.8部を加え窒素気流下80〜90℃にて2時間反応させて、常温で淡黄色固体の反応生成物を得た。これを本発明品の粘性調整剤1とする。
同様にして下記の表1に示す所定量のアルコール、ポリエーテルポリオール及びイソシアネートを用いて反応を行い、それぞれの反応物を得た。これらを本発明品の粘性調整剤2〜10、及び比較品の粘性調整剤1〜4とする。
【0037】
【表1】
【0038】
表1中のアルコールの欄及びイソシアネートの欄の記載は、それぞれ以下のものを示す。
i−C10:2−ブチルヘキサノール
i−C12:2−ブチルオクタノール
i−C16:2−ヘキシルデカノール
i−C20:2−オクチルドデカノール
i−C24:2−デシルテトラデカノール
i−C34:2−ヘキサデシルオクタデカノールを主成分とし、i−C32(2−テトラデシルオクタデカノール)、i−C36(2−ヘキサデシルイコサノール)を含有する混合アルコール。
sec-C12-C14:下記の構造からなる混合アルコール
【0039】
【化6】
【0040】
i−C18:下記の構造からなるアルコール
【0041】
【化7】
【0042】
TDI :トリレンジイソシアネート
IPDI:イソホロンジイソシアネート
HDI :ヘキサメチレンジイソシアネート
PMDI:ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート
CMDI:ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート
【0043】
(実施例1:エマルジョンでの増粘性及び温度依存性の評価)
下記の配合からなる混合物を、手で5分間攪拌した後、回転数1,000rpmで機械攪拌を行った。この混合物を温度25℃に2時間保持した後、粘度を測定して増粘性を評価した。又、粘性調整剤0.5部を添加した上記混合物について、5℃及び40℃における粘度を測定し、温度による粘度変化を評価した。
<配合>
グロス塗料用市販エマルジョン* 100部
粘性調整剤(10%水溶液) 所定量
消泡剤 0.2部
(アデカネ−トB−940;旭電化工業(株)製、鉱油系)
尚、グロス塗料用市販エマルジョンは、アクリル酸エステル系エマルジョンで、単独での粘度は600cPs(12rpm)であった。
<粘度測定条件>
粘度計:BM型粘度計、 ローター:No.4、 回転数:12回転
本発明品及び比較品のそれぞれの粘度調整剤についてのこれらの評価結果を表2に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
これらの結果から、本発明の粘度調整剤を使用した場合は優れた増粘性を示し、系の温度が5℃から40℃まで変化してもその粘度変化がわずかであるが、モノアルコールとして直鎖アルコールを使用したものの場合(比較品3及び4)は増粘効果は認められるが温度依存性が大きく、モノアルコールとして分枝鎖アルコールにエチレンオキサイドが10モル付加したものを使用したものの場合(比較品1及び2)は温度依存性は大きくないが増粘性が不十分である。
【0046】
(実施例2:エマルジョンでのpH依存性の評価)
下記の配合からなる混合物に所定のpHとなるように28%アンモニア水又は10%塩酸を添加してそのpHを6.0,7.0及び8.0に調整し、次いでこの混合物を手で5分間攪拌した後、回転数1,000rpmで機械攪拌を行った。これらの混合物を温度25℃に2時間保持した後、各pHにおける粘度を測定してpH依存性を評価した。粘度測定条件は実施例1と同じである。
【0047】
<配合>
グロス塗料用市販エマルジョン* 100部
粘性調整剤(10%水溶液) 所定量
消泡剤 0.2部
(アデカネ−トB−940;旭電化工業(株)製、鉱油系)
尚、グロス塗料用市販エマルジョンは、アクリル酸エステル系エマルジョンで、単独での粘度は600cPs(12rpm)であった。
本発明品及び比較品のそれぞれの粘度調整剤についてのこれらの評価結果を表3に示す。
【0048】
【表3】
【0049】
これらの結果から、本発明の粘度調整剤を使用した場合は系のpHが6.0から8.0まで変化してもその粘度変化がわずかであるが、比較品の場合は粘度変化が大きく、特にモノアルコールとして分枝鎖アルコールにエチレンオキサイドが10モル付加したものを使用したものの場合(比較品1及び2)は粘度のpH依存性が大きい。
【0050】
(実施例3:塗料での増粘性及び温度依存性の評価)
まず、下記の配合1のものを24時間攪拌してミルベースとした。
<配合1>
水 90部
顔料分散剤(25%ポリカルボン酸型) 10
凍結防止剤(エチレングリコール) 20
消泡剤 2
(アデカネ−トB−940;旭電化工業(株)製、鉱油系)
酸化チタン 140
炭酸カルシウム 160
【0051】
次に、このミルベースを用いて下記の配合2の混合物を調製し、これを5時間攪拌してエマルジョン塗料を得た。
<配合2>
ミルベース 422部
弾性塗料用市販エマルジョン 410
粘性調整剤(10%水溶液) 所定量
消泡剤 3
(アデカネ−トB−190;旭電化工業(株)製、シリカ系)
尚、弾性塗料用市販エマルジョンは、スチレン−アクリル酸エステル系で、エマルジョン単独での粘度は1000cPs(12rpm)、配合2の粘性調整剤の添加前の混合物の粘度は900cPs(12rpm)であった。
この塗料を25℃に2時間保った後、粘度を測定して増粘性を評価した。又、粘性調整剤10部を添加した上記混合物について、5℃及び40℃における粘度を測定し、温度による粘度変化を評価した。粘度測定条件は実施例1と同じである。
これらの評価結果を表4に示す。
【0052】
【表4】
【0053】
これらの結果から、スチレン−アクリル酸エステル系塗料においても本発明の粘度調整剤を使用した場合は優れた増粘性を示し、系の温度が5℃から40℃まで変化してもその粘度変化がわずかであるが、比較品1及び2は温度依存性は大きくないが増粘性が不十分であり、比較品3及び4は増粘効果は認められるが温度依存性が大きい。
【0054】
(実施例4:塗料での調色性の評価)
実施例3の配合2と同一の配合からなる混合物(但し、攪拌後の混合物の粘度が3,000〜5,000cPsになるように粘性調整剤の添加量を調節した。)を、手で1分間攪拌した後、大型羽根タービンにて回転数1,000〜2,000rpmで10〜20分間機械攪拌を行い、塗料を均一化した。
この塗料をスレート板に塗布し、調色性を、1回塗りした塗膜の乾燥後に一部重ね塗りしたもの(観点1)、塗膜面の一部を指でこすった状態(観点2)、1回塗りした塗膜の一部に塗料を滴下して垂らした塗料のタレ(観点3)の3つの観点から、それぞれの塗面と1回塗りの塗面との色の度合いを比較観察し、以下の基準で評価した。
○:変化無し
△:少し違いが見られる
×:はっきり違いが見られる
これらの評価結果を表5に示す。
【0055】
【表5】
【0056】
(実施例5:塗料でのpH依存性の評価)
下記の配合からなる混合物に所定のpHとなるように28%アンモニア水又は10%塩酸を添加してそのpHを6.0,7.0及び8.0に調整し、次いでこの配合からなる混合物を、手で5分間攪拌した後、回転数1,000rpmで機械攪拌を行った。この混合物を温度25℃に2時間保持した後、各pHにおける粘度を測定してpH依存性を評価した。粘度の測定条件は実施例1と同じである。
【0057】
<配合>
実施例3で使用したミルベース 422部
弾性塗料用市販エマルジョン 410
粘性調整剤(10%水溶液) 所定量
消泡剤 3
(アデカネ−トB−190;旭電化工業(株)製、シリカ系)
尚、弾性塗料用市販エマルジョンは、スチレン−アクリル酸エステル系で、エマルジョン単独での粘度は1,000cPs(12rpm)、上記の配合の粘性調整剤の添加前の混合物の粘度は900cPs(12rpm)であった。
これらの評価結果を表6に示す。
【0058】
【表6】
【0059】
これらの結果から、スチレン−アクリル酸エステル系塗料においても、本発明の粘度調整剤を使用した場合は系のpHが6.0から8.0まで変化してもその粘度変化がわずかであるが、比較品の場合は粘度変化が大きく、特に比較品1及び2を使用した場合は粘度のpH依存性が大きい。
【0060】
【発明の効果】
本発明の効果は、温度依存性及びpH依存性が少ない新規な粘性調整剤を提供したことにある。本発明によれば、エマルジョン組成物は温度及び液のpHにかかわらず常にほぼ一定の粘性を示し、特にエマルジョン塗料組成物として使用する際に特に作業性が向上する。
Claims (5)
- R1−[(O−R2)k−OH]mで表わされるポリエーテルポリオールと、R3−(NCO)h+1で表わされるポリイソシアネートと、HO−R4で表わされるモノオールを反応させて得られる粘性調整剤。
(但し、各式中、R1はエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビット、マンニット、蔗糖のいずれかより選択される多価アルコールから水酸基を除いた基を表し、R2は炭素数2〜4のアルキレン基もしくはフェニルエチレン基を表し、R3は炭化水素基又はウレタン結合を有する炭化水素基を表わし、R4は分枝鎖の炭化水素基を表わし、mは2、3、4、6または8の数を表わし、hは1以上の数を表わし、kは10〜500の数を表わす。) - 請求項1乃至3の何れか1項に記載の粘性調整剤を含有するエマルジョン組成物。
- 請求項1乃至3の何れか1項に記載の粘性調整剤を含有するエマルジョン塗料組成物。
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