JP4289155B2 - ギヤポンプ - Google Patents
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Description
本発明は、インナロータに形成した外歯とアウタロータに形成した内歯とが噛合するギヤポンプに関するものである。
背景技術
ポンプ回転体の回転によって吸入ポートから液体を吸入し、吐出ポートに吐出するギヤポンプにおいては、ポンプ回転体の回転速度が上昇すると、液体は遠心力の作用により吸入ポートの外周側を流れやすくなり、外周側の圧力は上昇するが、吸入ポートの内周側では液体が流れにくくなり圧力が低くなり、歯間室が吸入ポートの下流側端縁により遮断される直前で絞りが大きくなると外歯側でキャビテーションが発生しやすくなる。吸入ポートの底部に深さが液体の流れ方向で上流側から下流側に行くに従って浅くなる傾斜底面を形成し、該傾斜底面をポンプ回転体中心位置に近い内周側で深く、遠い外周側ほど浅くするように三次元的にねじることにより吸入ポートの内周側に液体が流れやすくし、歯間室の外歯側でのキャビテーションの発生を防止したギヤポンプが特許第2854903号公報に記載されている。
また、キャビテーションの発生を防止するために、吸入ポートの底部に深さが上流側から下流側に近づくにつれて連続的に浅くなる傾斜底面を形成し、吸入ポートの下流側端部に浅溝を傾斜底面に連続して形成したトロコイド式ギヤポンプが実用新案登録第2588113号公報に開示されている。
上記特許公報に記載された従来装置では、吸入ポートの底部の傾斜底面を、液体の流れ方向で上流側から下流側に行くに従って浅くなるように螺旋状にし、且つポンプ回転体中心位置に近い内周側で深く、遠い外周側ほど浅くするように三次元的にねじれた形状に形成しなければならないので、ギヤポンプの設計、製造が複雑でコストアップとなる問題があった。
また、上記実用新案登録公報に記載の従来装置では、吸入ポートの下流側端部に浅溝を傾斜底面に連続して吸入ポートの半径方向の全幅に亙って均等に形成しているので、液体の遠心力の作用により吸入ポートの内周側で液体が流れにくく歯間室の外歯側で圧力が低下してキャビテーションが発生しやすい不具合は解消されない。
本発明は、かかる従来の不具合を解消するためになされたもので、ギヤポンプの吸入領域でのキャビテーションの発生を簡単な構造で確実に防止することである。
発明の開示
本発明は、回転軸に連結され外周に外歯が形成されたインナロータと内周に前記外歯と噛合する内歯が形成されたアウタロータとをハウジングとカバーとの間に回転可能に収納し、前記外歯と前記内歯との間に形成される各歯間室が前記両ロータの回転につれて膨張する領域及び収縮する領域に夫々対向して吸入ポート及び吐出ポートを形成したギヤポンプにおいて、前記吸入ポートの底部に設けられた傾斜底面が、前記両ロータの回転方向の上流側から下流側に向かうにつれて前記内歯と外歯の側面に接近するように傾斜する一平面で形成され、前記傾斜底面の下流端線分のインナロータの回転軸線に遠い側の線端が近い側の線端より上流側に位置するように前記下流端線分が傾斜していることである。
これにより、インナロータの外周に形成された外歯とアウタロータの内周に形成され前記外歯と噛合する内歯との間に形成される各歯間室が両ロータの回転につれて膨張する領域では吸入ポートから液体を吸入し、収縮する領域では液体を吐出ポートに送出する。吸入ポートの底部には、両ロータの回転方向の上流側から下流側に向かうにつれて外歯と内歯の側面に接近するように傾斜された一平面で傾斜底面が形成され、吸入ポートを流れる液体は、傾斜底面により整流されて膨張する各歯間室に向かって円滑に案内される。吸入ポートの底部の傾斜底面が、螺旋、ねじり等のない一平面で形成されるので、ギヤポンプの設計、製造がきわめて容易になる。さらに、傾斜底面の下流端線分のインナロータの回転軸線に遠い側の線端が近い側の線端より上流側に位置するように、下流端線分を傾斜しているので、傾斜底面の半径方向外周側を半径方向内周側に比較して浅くすることができるため半径方向内周側の流量が増大され、キャビテーションの発生を防止することができる。
また、本発明は、上述の改良されたギヤポンプにおいて、一平面で形成される傾斜底面の開始部をなす上流端線分と終了部をなす下流端線分が平行となるように傾斜底面を隣接する底面と接続しているので、構造が簡単になり、液体の流れがスムーズになるとともに、設計、製造が容易になる。
さらに、本発明は、上述の改良されたギヤポンプにおいて、一平面で形成される傾斜底面の開始部をなす上流端線分がインナロータの回転軸線と直交するので、傾斜底面はインナロータ半径の延長線上では半径方向内側の方が外側より深くなり、半径方向内側の流量が増大傾向となって、遠心力による歯間室内の液体の外歯側への付勢と相殺され、吸入ポートを流れる液体は各歯間室の外歯側及び内歯側に略均等に吸入され、吸入領域にある各歯間室内の圧力が均等に維持され、キャビテーションの発生を防止することができる。
さらに、本発明は、上述の改良されたギヤポンプにおいて、吸入ポートから遮断される直前の歯間室の外歯側及び内歯側が両ロータの回転につれて吸入ポートの下流側端縁により同時に閉鎖されるので、歯間室の外歯側又は内歯側の圧力が不均一に低下してキャビテーションが発生することを防止することができる。
また、本発明は、上述の改良されたギヤポンプにおいて、吸入ポートの下流側端部の内歯と対向する部分の底部に傾斜底面をなす一平面と交叉する浅底平面を設けたことである。
これにより、吸入ポートから遮断される直前の歯間室では、流入する液体は吸入ポートの下流側端縁により絞られ、ロータの遠心力により液体は内歯側に付勢されるが、歯間室の内歯側に吸入ポートから流入する液体が吸入ポートの下流側端部の内歯と対向する部分に形成された浅底平面により制限されるので、歯間室の外歯側に吸入ポートから流入する流量が増加し、外歯側の圧力低下を防いでキャビテーションを確実に防止することができる。
さらに、本発明は、上述の改良されたギヤポンプにおいて、前記吸入ポートの下流側端部を前記外歯に対向するインナ端部と前記内歯に対向するアウタ端部とに分離する分離突起を前記吸入ポートの下流側端から上流側に向けて突設し、前記浅底平面を前記分離突起の突出端部分から半径方向外方に向かうにつれて円周方向に長く形成し、前記浅底平面の上流側縁に前記一平面を前記下流端線分に沿って接続したことである。
これにより、吸入ポートから遮断される直前の歯間室の内歯側に吸入ポートのアウタ端部から流入する液体は浅底平面により制限され、歯間室の外歯側にはインナ端部から液体が流入するので、吸入ポートの下流側端部から歯間室への液体の流入を内歯側と外歯側とに分離して制御することができ、外歯内側に発生することがあったキャビテーションを一層確実に防止することができる。
発明を実施するための最良の形態
以下、自動車の自動変速機に作動油を供給するギヤポンプに本発明を実施した実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、ハウジング10の平坦な一側面には、インナロータ11,アウタロータ12を回転自在に収納する円形で一定深さの収納室13が形成されている。14は収納室13の内底面に開口する中心孔で、収納室13の中心に対し、両ロータ11,12の間の偏心量と同じ量だけ偏心して、ハウジング10を貫通して穿設されている。カバー15は平坦な一側面により収納室13を液密的に覆うようにハウジング10にボルト止めされている。中心孔14に圧入された軸受ブッシュ16によりハウジング10に回転自在に軸承された駆動軸17にインナロータ11がスプライン嵌合されている。駆動軸17とハウジング10の間はオイルシール18によりシールされている。
インナロータ11の外周にはトロコイド歯形、インボリュート歯形などの外歯19が形成され、アウタロータ12の内周には外歯19より歯数が1歯多く外歯19と噛合する内歯20が形成されている。アウタロータ12は収納室13に回転可能に嵌合され、インナロータ11は外歯19が内歯20と噛合した状態で収納室13に収納され、駆動軸17にスプライン嵌合されている。インナロータ11及びアウタロータ12の側面は収納室13の底面及びカバー15の側面により液密的に覆われている。これにより駆動軸17に連結され外歯19が形成されたインナロータ11と外歯19と噛合する内歯20が形成されたアウタロータ12とは、ハウジング10とカバー15との間に偏心して回転可能に収納されている。
図2に示すように、インナロータ11とアウタロータ12との間には、各外歯19と各内歯20との間に複数の歯間室21が形成され、各歯間室21は、ロータ11,12の回転方向前方の吸入領域ではロータの回転につれて容積が増大し、後方の吐出領域では減少する。収納室13の底面には吸入領域にある歯間室21を形成する外歯19及び内歯20の側面に対向して円弧状の吸入ポート22が形成され、吐出領域にある歯間室21を形成する外歯19及び内歯20の側面に対向して円弧状の吐出ポート23が設けられている。吐出領域の終了端と吸入領域の開始端とは、外歯19と内歯20の各ピッチ円の接点近傍の分離領域で分離され、分離領域から円周方向に180度離れた箇所には、最大容積に膨張した歯間室21が吸入ポート22、吐出ポート23から遮断される密封領域が設けられている。
図2,3に示すように、吸入ポート22の底部には、両ロータ11,12の回転方向の上流側から下流側に向かうにつれて外歯19および内歯20の側面に接近して吸入ポート22が浅くなるように傾斜した傾斜底面24が吸入領域の中央部分から終了点近傍に亙って設けられている。傾斜底面24は、その開始部をなす上流端線分32と、上流端線分32と平行で傾斜底面24の終了部をなす下流端線分33との間で延在し、両ロータ11,12の回転方向の上流側から下流側に向かうにつれて外歯19と内歯20の側面に接近するように傾斜する一平面34で形成されている。上流端線分32はインナロータ11の回転軸線Oと直交し、吸入ポート22の底部の傾斜底面24を上流端線分32、下流端線分33及び線分32,33と平行で傾斜底面24の中央部分の線分に沿って切断した各断面図(図4(イ)、(ハ)、(ロ)参照)に示すように、いずれの断面においても底面を示す線分は上流端線分32と平行であり、上流側から下流側に向かうにつれて浅くなっている。
吸入ポート22をインナロータ11の回転中心を含む平面で傾斜底面24の中間部分で切断した図5に示す断面図から明らかなように、傾斜底面24は、上流端線分22を離れて下流側に向かう程、インナロータ11の半径の延長線上においては半径方向内側の方が外側より深くなる。これにより、傾斜底面24に沿って流れる液体は、半径方向内側の方が外側より流量が増大傾向となる。
吸入ポート22の下流側端部のアウタロータ12の内歯20と対向する部分の底部には、傾斜底面24と下流端線分33に沿って接続する浅底平面25が傾斜底面24に隣接して形成されている。浅底平面25はロータ11,12の側面と僅かな間隔を隔ててロータ11,12の回転平面と平行に形成されている。吸入ポート22の下流側端から上流側に向けて分離突起29が突設され、吸入ポート22の下流側端部はインナロータ11の外歯19と対向するインナ端部27と、アウタロータ12の内歯20と対向するアウタ端部28とに分離されている。歯間室21の外歯側と内歯側とは、ロータ11,12の回転につれて分離突起29により分離され、インナ端部27とアウタ端部28に夫々対向する。吸入ポート22から遮断される直前の歯間室21の外歯側及び内歯側は、両ロータ11,12の回転につれて吸入ポート22の下流側端縁であるインナ端部27とアウタ端部28との各下流側端縁により同時に閉鎖されるようになっている。
浅底平面25は、分離突起29の突出端部分から半径方向外方に向かうにつれて円周方向に長く形成され、浅底平面25の上流端縁は下流端線分33に沿って傾斜底面24と接続し、分離突起29の突出端部分から僅かに下流側の吸入ポート22の半径方向外側壁に向けて傾斜して延在している。即ち、傾斜底面24の下流端線分33のインナロータ11の回転軸線に遠い側の線端が近い側の線端より上流側に位置するように下流端線分33が傾斜している。また、吸入ポート22の吸入領域の開始部分から中央部分までの間に底面は、ロータ11,12の回転平面と平行で上流端線分32を含む平面によって形成されている。吸入ポート22は吸入領域の開始部分でハウジング10に設けられた吸入通路30に接続され、吸入通路30は図略のタンクに連通されている。吐出ポート23はハウジング10に設けられた吐出通路31を介してアクチュエータに接続されている。
次に、上記実施形態に係るギヤポンプの作動について説明する。駆動軸17によりインナロータ11が回転されると、外歯19と内歯20との噛合によりアウタロータ12も回転され、吸入領域にある歯間室21の容積がロータ11,12の回転につれて増大し、タンクからの液体が吸入通路30を通って吸入ポート22から吸入され、吐出領域にある歯間室21の容積が収縮されて液体が吐出ポート23に吐出され、吐出通路31を介してアクチュエータに送出される。
吸入ポート22を流れる液体は、上流側から下流側に向けて浅くなるように傾斜した傾斜底面24により整流されて膨張する各歯間室21に円滑に吸入される。吸入ポート22の傾斜底面24は、インナロータ11の半径の延長線上においては半径方向内側の方が外側より深くなるので、吸入ポート22を流れる液体は、半径方向内側の流量が増大傾向となり、ロータ11,12の回転に基づく遠心力による歯間室12内の液体の外歯側への付勢を相殺し、吸入ポート22を流れる液体は各歯間室21の外歯側及び内歯側に略均等に吸入され、吸入領域にある各歯間室内の圧力が均等に維持され、歯間室21の外歯側でのキャビテーションの発生を防止することができる。
吸入ポート22から遮断される直前の歯間室21の外歯側には分離突起29により分離された吸入ポート22のインナ端部27から液体が流入し、内歯側には外歯側と分離してアウタ端部28から流入する。このとき、歯間室21の外歯側及び内歯側に流入する液体は吸入ポート22のインナ端部27及びアウタ端部28の各下流側端縁により絞られ、歯間室21内の液体は両ロータ11,12の回転に基づく遠心力により外歯側に付勢されるので、歯間室21の外歯側の圧力が低くなる傾向にある。ところが、歯間室21の内歯側にアウタ端部28から流入する液体が浅底平面25により制限されるので、歯間室21の外歯側にインナ端部27から流入する流量が増加し、外歯側の圧力低下が防止されてキャビテーションが発生しない。そして、係る歯間室21の外歯側及び内歯側が両ロータ11,12の回転につれてインナ端部27とアウタ端部28との各下流側端縁によりほぼ同時に閉鎖されるので、歯間室21の外歯側又は内歯側の圧力が不均一に低下することがない。
上記実施形態では、吸入ポート22のアウタ端部28のみに浅底平面25を形成したが、インナ端部27にも円周方向の長さが短い浅底平面を形成し、歯間室21の外歯側への液体の流入抵抗を調整するようにしてもよい。また、浅底平面25は両ロータ11,12の回転平面と平行にして設けたが、歯間室21の内歯側への液体の流入を制限できる程度の僅かな傾斜を設けてもよい。
さらに、吸入ポート22の終端部と吐出ポート23との開始端との間の密封領域に、三日月形状の仕切りをインナロータ11の外歯19とアウタロータ12の内歯20との間に介在したギヤポンプに本発明を適用してもよい。
産業上の利用可能性
本発明にかかるギヤポンプは、自動車に搭載する自動変速機において、各変速段を成立するためのブレーキ、クラッチを作動する油圧源としてのポンプとして用いるのに適している。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明に係る実施形態のギヤポンプの側面図であり、第2図は、図1の2−2線矢視図であり、第3図は、図2の3−3線に沿って切断した断面図であり、第4図は、傾斜底面を上流端線分、下流端線分および中央部分の線分に沿って切断した各断面図であり、第5図は、図2の5−5線に沿って切断した部分断面図である。
Claims (6)
- 回転軸に連結され外周に外歯が形成されたインナロータと内周に前記外歯と噛合する内歯が形成されたアウタロータとをハウジングとカバーとの間に回転可能に収納し、前記外歯と前記内歯との間に形成される各歯間室が前記両ロータの回転につれて膨張する領域及び収縮する領域に夫々対向して吸入ポート及び吐出ポートを形成したギヤポンプにおいて、前記吸入ポートの底部に設けられた傾斜底面が、前記両ロータの回転方向の上流側から下流側に向かうにつれて前記内歯と外歯の側面に接近するように傾斜する一平面で形成され、前記傾斜底面の下流端線分のインナロータの回転軸線に遠い側の線端が近い側の線端より上流側に位置するように前記下流端線分が傾斜していることを特徴とするギヤポンプ。
- 前記傾斜底面の開始部をなす上流端線分と終了部をなす下流端線分とが平行であることを特徴とする請求の範囲第1項記載のギヤポンプ。
- 前記傾斜底面の上流端線分が、前記インナロータの回転軸線と直交することを特徴とする請求の範囲第1項または第2項記載のギヤポンプ。
- 前記吸入ポートから遮断される直前の歯間室の外歯側及び内歯側が前記両ロータの回転につれて前記吸入ポートの下流側端縁により同時に閉鎖されることを特徴とする請求の範囲第1項乃至第3項のいずれかに記載のギヤポンプ。
- 前記吸入ポートの下流側端部の前記内歯と対向する部分の底部に前記傾斜底面をなす一平面と交叉する浅底平面を設けたことを特徴とする請求の範囲第1項乃至第4項のいずれかに記載のギヤポンプ。
- 前記吸入ポートの下流側端部を前記外歯に対向するインナ端部と前記内歯に対向するアウタ端部とに分離する分離突起を前記吸入ポートの下流側端から上流側に向けて突設し、前記浅底平面を前記分離突起の突出端部分から半径方向外方に向かうにつれて円周方向に長く形成し、前記浅底平面の上流側縁に前記一平面を前記下流端線分に沿って接続したことを特徴とする請求の範囲第5項記載のギヤポンプ。
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