JP3849509B2 - オイルポンプ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車の自動変速機などに作動油を供給するオイルポンプに関する。
【0002】
【従来の技術】
この種のオイルポンプには、図6および図7に示すように、ドライブギヤ30とこれに噛合する内歯のドリブンギヤ31をポンプボデー1に形成した円形の収容凹部2内に収納してポンプカバー3により液密に覆い、ポンプボデー1およびポンプカバー3の各内面には、互いに噛合する両ギヤ30,31の各歯の間に形成される作動室Rの容積が次第に増大する吸入領域と対応する位置に互いに対向する1対の吸入側凹溝4a,4bを開口し、また作動室Rの容積が次第に減少する吐出領域と対応する位置に互いに対向する1対の吐出側凹溝6a,6bを開口したものがある。
【0003】
図示の例では、各吸入側凹溝4a,4bは吸入通路5に連通される吸入ポート4a,4bであり、ポンプボデー1側の吐出側凹溝6aは吐出通路7に連通される吐出ポート6aであり、ポンプカバー3側の吐出側凹溝6bは吐出通路7に連通されていない凹溝である。またドライブギヤ30は、軸受ブッシュ9を介してポンプボデー1の中心孔に支持された入力軸8の先端に支持し、ドライブギヤ30の内面から突出した1対のキー30aを入力軸8の先端に形成したキー溝8aに係合して回転駆動するようにしている。
【0004】
ドライブギヤ30が図7の二点鎖線矢印に示すように時計回転方向に回転されればドリブンギヤ31も同方向に回転され、作動油は吸入通路5を通り両側の吸入ポート4a,4bから両ギヤ30,31の間の吸入領域内に吸入され、吐出領域から吐出ポート6a内に吐出され、吐出通路7を通って供給先に供給される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
図7に示すように、ドライブギヤ30の回転により吸入領域において両ギヤ30,31の歯の間の各作動室Rに吸入された作動油は、吸入側凹溝4a,4bの後端と吐出側凹溝6a,6bの前端の間ではポンプボデー1およびポンプカバー3と両ギヤ30,31の歯の間に閉じ込められて、両ギヤ30,31の回転とともに時計回転方向に移動される。このように閉じ込められた作動油は、作動室Rの先端部が吐出側凹溝6a,6bの前端と連通した瞬間に吐出側凹溝6a,6b内に連通され、圧力が急激に上昇して吐出側凹溝6a,6bの前端のすぐ前側となるポンプボデー1およびポンプカバー3の内面にキャビテーションによるエロージョン(以下単にキャビテーションエロージョンという)が生じて浸食され、オイルポンプの内部漏れが増大してオイルポンプの吐出性能が低下するという問題を生じる。
【0006】
このような内部漏れによる吐出性能の低下は、軽量化のためにポンプボデー1およびポンプカバー3を軽合金(例えばアルミニウム)のダイカスト製品などとした場合に特に問題となる。このような問題を解決する手段として、例えば実開平5−6167号公報に開示されたように、ドライブギヤとドリブンギヤの軸方向一端面と外周面を覆うライナーを収容凹部の内側に設け、このライナーをキャビテーションエロージョンに対する耐性が高いジュラルミンなどの材料とすることが考えられる。しかしながらそのようにすると大形のライナーを必要とするので、製造コストが増大するという問題がある。
【0007】
本発明は、このようなオイルポンプにおいてキャビテーションエロージョンを防止して内部漏れの増大によるオイルポンプの吐出性能の低下を防止し、しかもそれに要する製造コストの増大を抑制することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
このために、本発明によるオイルポンプは、吸入通路、ギヤ室および吐出通路が形成されたハウジングと、このハウジングのギヤ室内に同ギヤ室の両内側面に両側面が摺動するように回転可能に配設されたロータと、ハウジングとロータの間に同ロータの外周に沿って形成され同ロータの回転とともに移動しながら容積が増減する多数に仕切られた作動室を有し、ロータの回転により吸入通路から作動油を吸入しこの作動油を吐出通路から吐出するオイルポンプにおいて、ロータが摺動するギヤ室の内側面の一部に形成した丸い有底の取付孔に補強部材を圧入して埋設固定し、取付孔の底面と圧入した補強部材の間の空間を外部に連通する通気孔をハウジングに形成したことを特徴とするものである。
【0009】
本発明によるオイルポンプは、ロータはドライブギヤとし、ハウジング内には両側および外周がギヤ室の内面と摺動するように回転自在に支持されてドライブギヤと噛合するドリブンギヤを設けてこの両ギヤの互いに噛合する歯部の間に作動室を形成するようにすることが好ましい。
【0010】
本発明によるオイルポンプの補強部材は、ギヤ室の内側面の少なくともキャビテーションエロージョンが発生する部分に埋設固定することが好ましい。
【0011】
本発明によるオイルポンプの補強部材は、同補強部材が埋設固定される部材を形成する材料よりも硬質の材料からなるものとすることが好ましい。またこの補強部材は、同補強部材が埋設固定される部材を形成する材料よりもキャビテーションエロージョンに対する耐性が高い材料からなるものとすることが特に好ましい。
【0012】
本発明によるオイルポンプのケーシングは、ポンプボデーと、このポンプボデーに結合固定されたポンプカバーからなるものとすることが好ましい。
【0013】
また本発明によるオイルポンプは、ロータは外歯のドライブギヤとし、ハウジング内には両側および外周がギヤ室の内面に回転自在に支持されてドライブギヤと噛合する内歯のドリブンギヤを設けてこの両ギヤの互いに噛合する歯部の間に作動室を形成し、補強部材は作動室の容積が次第に減少する吐出領域と対応するハウジングの内面に開口された吐出側凹溝の多少前側で両ギヤの両側に開放される作動室の両側が通過するハウジングの内側面に設けることが好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
先ず図1〜図3に示す第1の実施の形態の説明をする。この第1の実施の形態によるオイルポンプは自動車の自動変速機に作動油を供給するもので、主としてドライブギヤ(ロータ)30と、これと噛合する内歯のドリブンギヤ31と、この両ギヤ30,31を回転自在に収容するハウジングHよりなるもので、ハウジングHは互いに接合されたポンプボデー10とポンプカバー15により形成されている。
【0017】
主として図1に示すように、鋳鉄よりなるポンプボデー10の平坦な一側面には、両ギヤ30,31を回転自在に収納する円形で浅い一定の深さの収容凹部11が形成され、収容凹部11の内底面には収容凹部11の中心に対し、両ギヤ30,31の間の偏心量と同じ量だけ偏心して、ポンプボデー10を貫通する中心孔12が形成されている。アルミニウムよりなるポンプカバー15は平坦な一側面により両ギヤ30,31が収納された収容凹部11を液密に覆うようにポンプボデー10にボルト止めされ、ポンプボデー10の収容凹部11およびこれを覆うポンプカバー15により両ギヤ30,31を収納するギヤ室が形成されている。ポンプボデー10の中心孔12と同軸的にポンプカバー15に形成された中心孔16に圧入固定された管状のステータ軸17は中心孔12との間に隙間をおいてポンプボデー10内を通り抜けており、このステータ軸17と中心孔12の間に差し込まれる管状の入力軸35は、中心孔12の内面に固定した軸受ブッシュ13により回転自在に支持され、入力軸35とポンプボデー10の間はオイルシール36によりシールされている。
【0018】
外歯のドライブギヤ30と、これより歯数が1歯大きい内歯のドリブンギヤ31は同一の厚さで、互いに噛合するトロコイド歯形の歯を有しており、それらの両側面とポンプボデー10およびポンプカバー15により形成されるギヤ室の両内側面は作動油が実質的に洩れない程度の小さい隙間をおいて相対的に摺動回転自在である。ドライブギヤ30はその内周面を入力軸35先端部の外周面に嵌合させることにより支持され、内周面から突出する1対のキー30aが入力軸35の先端に形成したキー溝35aに係合されて回転駆動されるようになっている。ドリブンギヤ31の外周面は収容凹部11の内周面に回転自在に嵌合支持されている。
【0019】
主として図2に示すように、両ギヤ30,31とハウジングHの内面の間の空間は、互いに噛合する各歯によりドライブギヤ30の外周に沿った多数の作動室Rに仕切られ、各作動室Rは両ギヤ30,31の回転とともに移動しながら容積が増減する。そして、両ギヤ30,31のピッチ線の接触位置から両ギヤ30,31の回転方向で180度にわたる範囲には回転に伴い作動室Rの容積が次第に増大する吸入領域が形成され、またピッチ線の接触位置から回転方向と逆向きに180度にわたる範囲には回転に伴い作動室Rの容積が次第に減少する吐出領域が形成されている。
【0020】
ポンプボデー10の収容凹部11の内底面およびこれと対応するポンプカバー15の内面には、図1および図2に示すように、吸入領域と対応する相当な部分に沿って開口部の形状および面積が同一の1対の吸入ポート(吸入側凹溝)20a,20bが互いに対向して形成されており、各吸入ポート20a,20bの内側縁と外側縁はそれぞれ各ギヤ30,31の歯底円と一致している。この各吸入ポート20a,20bには、ポンプボデー10とポンプカバー15内に形成されてリザーバ(図示省略)からの作動油を導入する吸入通路21が連通されている。
【0021】
またポンプボデー10の収容凹部11の内底面およびこれと対応するポンプカバー15の内面には、図2および図3に示すように、吐出領域と対応する相当な部分に沿って開口部の形状および面積が同一の吐出ポート(吐出側凹溝)25aおよび吐出側凹溝25bが互いに対向して形成されている。吐出ポート25aと吐出側凹溝25bの内側縁と外側縁はそれぞれ各ギヤ30,31の歯底円と一致している。吐出ポート25aにはポンプボデー10とポンプカバー15内に形成されて作動油を供給先に供給する吐出通路26が連通されている。しかし吐出側凹溝25bは、ポンプカバー15内に形成する流体通路(図示省略)を避けるために吐出ポート25aより浅くし、吐出通路26には連通されていない。
【0022】
図2および図3に示すように、ポンプカバー15の内面には、吐出側凹溝25bの前端部より多少前側で作動室Rの側面が通過する位置に、機械加工により丸い有底の取付孔18aが形成され、この取付孔18aには、ポンプカバー15よりもキャビテーションエロージョンに対する耐性が大きい材料(例えばジュラルミン、ハイシリコン(高ケイ素アルミニウム合金)、鉄など)よりなる短い円柱状の補強ピン(補強部材)18が圧入固定され、その先端は取付孔18aの底面の周辺部に当接して停止されている。また、吐出側凹溝25bの後端と吸入ポート20bの間となるポンプカバー15の内面にも、取付孔18aと同様の取付孔19aが形成されて補強ピン18と同様の補強ピン19が圧入固定されている。この両補強ピン18,19を圧入固定した後に、ポンプカバー15の内面および両補強ピン18,19を加工して、補強ピン18,19の表面がポンプカバー15の内面の一部となるようにしている。またポンプカバー15には、取付孔18a,19aの底面とこれに圧入した補強ピン18,19の間の空間を外部に連通する通気孔18b,19bを形成し、オイルポンプの作動に伴う温度上昇による取付孔18a,19aの底面と補強ピン18,19の間の空気圧の上昇をなくして補強部材18,19の抜け出しを防止している。
【0023】
オイルポンプの作動時には、入力軸35の先端に支持されたドライブギヤ30は、図2の二点鎖線矢印に示すように時計回転方向に回転され、ドリブンギヤ31も同方向に回転され、作動室Rも同方向に移動される。これによりリザーバ内の作動油は吸入通路21を通り両側の吸入ポート20a,20bから吸入領域にある作動室R内に吸入され、吐出領域にある作動室Rから吐出ポート25a内に吐出され、吐出通路26を通って供給先に供給される。この際、作動室Rに吸入された作動油は、吸入側凹溝20a,20bの後端と吐出ポート25aおよび吐出側凹溝25bの前端の間ではポンプボデー10およびポンプカバー15と両ギヤ30,31の歯の間に閉じ込められて、両ギヤ30,31の回転とともに時計回転方向に移動される。そして閉じ込められた作動油は、作動室Rの先端部が吐出ポート25aおよび吐出側凹溝25bの前端と連通した瞬間に吐出ポート25aおよび吐出側凹溝25b内に連通されて圧力が急激に上昇するので、これと接するポンプカバー15の内面にキャビテーションエロージョンを生じようとする。
【0024】
しかしアルミニウムよりなるポンプカバー15の内面には、吐出側凹溝25bの前端部より多少前側で作動室Rの側面が通過する位置、すなわちこのキャビテーションエロージョンが生じる位置に、キャビテーションエロージョンに対する耐性が大きい材料よりなる補強ピン18が圧入固定されてその表面がポンプカバー15の内面の一部となるようにしているので、ポンプカバー15の内面に生じるキャビテーションエロージョンは補強ピン18により防止される。従ってポンプカバー15の内面がキャビテーションエロージョンにより浸食され、オイルポンプの内部漏れが増大してオイルポンプの吐出性能が低下するという問題は回避される。しかもこの補強ピン18はキャビテーションエロージョンが最も生じやすい部分の内面に設けており、少ない面積で足りるので、製造コストの増大は抑制される。
【0025】
また、ポンプボデー10側の吐出通路26が連通された吐出ポート25a内の作動油には大きな流れがあって各ギヤ30,31との相対速度が小さく、一方ポンプカバー15側の吐出通路26が連通されていない吐出側凹溝25b内の作動油はよどんで各ギヤ30,31との相対速度が大きくなるなどの理由により、吐出側凹溝25b内の作動油の圧力は吐出ポート25a内の作動油の圧力より小さくなる。これにより両ギヤ30,31は、ポンプカバー15側に押し付けられて、その側面がポンプカバー15の内面に当接される。しかし吸入ポート20bと吐出側凹溝25bの各前後端の間に圧入固定されたエロージョンに対する耐性が大きい材料よりなる2つの補強部材18,19はポンプカバー15の材料より硬質で耐摩耗性にも富んでいるのが普通であるので、ギヤ30,31との当接によるポンプカバー15の内面の摩耗は防止される。なお、吐出側凹溝25b内の作動油のよどみは両ギヤ30,31の回転方向の後部で大きく、従ってこの後部では吐出側凹溝25b内の圧力が特に減少するので、この後部で両ギヤ30,31は特に強くポンプカバー15の内面に当接される。しかしこれは主として補強ピン19により受け止められるので、この部分の局部的摩耗も防止される。
【0026】
この第1の実施の形態では、ポンプカバー15の内面に丸い取付孔18aを機械加工により形成して補強ピン18を圧入固定しており、このようにすれば補強ピン18の埋設固定をきわめて容易に行うことができるので、加工面における製造コストの増大も抑制される。しかしながら本発明はこれに限らず、前述したキャビテーションエロージョンが生じる位置にこれに対する耐性が大きい材料よりなる補強部材18を予め鋳込んだポンプカバー15の素材を加工してポンプカバー15としてもよい。このようにすればキャビテーションエロージョンが生じる範囲に合わせて補強部材18の形状を自由に調整することができる。
【0027】
なお、この実施の形態のように、鋳鉄のポンプボデー10とアルミニウムのポンプカバー15を採用した場合には、通常はポンプカバー15の内面にのみ補強ピン18を設ければ足りる。ポンプボデー10をアルミニウムとした場合には、ポンプカバー15に設ける補強部材18と同様の補強部材をポンプボデー10の収容凹部11の内底面にも設ければよい。また鋳鉄のポンプボデー10の場合でも、収容凹部11の内底面の吐出ポート25aの前端部より多少前側で作動室Rの側面が通過する位置にキャビテーションエロージョンが生じることがあるが、そのような場合にはその位置に、鋳鉄よりもキャビテーションエロージョンに対する耐性が大きい材料よりなる補強部材18を設ければよい。
【0028】
次に図4および図5に示す第2の実施の形態の説明をする。この第2の実施の形態も、第1の実施の形態と同様、主としてドライブギヤ30と、これと噛合する内歯のドリブンギヤ31と、この両ギヤ30,31を回転自在に収容するギヤ室を形成するハウジングHよりなり、ハウジングHをポンプボデー10とポンプカバー15により形成したものであるが、ドライブギヤ30,ドリブンギヤ31およびこれに直接関連する部分の構造が第1の実施の形態と異なっている。
【0029】
主として図4に示すように、ポンプボデー10の平坦な一側面に形成した両ギヤ30,31を収納する収容凹部11は第1の実施の形態と同様で、同様に偏心して中心孔12が形成されているが、後述する三日月形の仕切り14が収容凹部11の内底面から突出して形成されている点が異なっている。ポンプカバー15を液密に覆うポンプカバー15は、内面が仕切り14の頂面に当接され、中心孔12と同軸的に中心孔16が形成されている。
【0030】
ドライブギヤ30とドリブンギヤ31は互いに噛合するインボリュート歯形の歯を有しており、ドリブンギヤ31の歯数はドライブギヤ30の歯数より2枚以上大である。ドライブギヤ30は一体的に形成した入力軸35を介してポンプボデー10およびポンプカバー15の各中心孔12,16により回転自在に支持されている。各ギヤ30,31の歯先は、図5に示すように、三日月形の仕切り14の内周面および外周面と僅かな隙間をおいて摺動可能である。
【0031】
図5に示すように、両ギヤ30,31とハウジングHの内面の間にはドリブンギヤ31の外周に沿って形成された多数の作動室Rが形成され、両ギヤ30,31のピッチ線の接触位置から仕切り14の一方の先端の間には回転に伴い作動室Rの容積が次第に増大する吸入領域が形成され、またピッチ線の接触位置から仕切り14の他方の先端の間には回転に伴い作動室Rの容積が次第に減少する吐出領域が形成されている。
【0032】
第1の実施の形態と同様、ポンプボデー10の収容凹部11の内底面とポンプカバー15の内面には、吸入領域と対応する相当な部分に沿って、開口部の形状および面積が同一の吸入ポート20a,20bが互いに対向して形成され、各吸入ポート20a,20bには吸入通路21が連通されている。またポンプボデー10の収容凹部11の内底面とポンプカバー15の内面には、図4および図5に示すように、吐出領域と対応する相当な部分に沿って、開口部の形状および面積がほゞ同一の吐出ポート25aおよび吐出側凹溝25bが互いに対向して形成されている。吐出ポート25aにはポンプボデー10とポンプカバー15内に形成されて作動油を供給先に供給する吐出通路26が連通されているが、吐出側凹溝25bは、第1の実施の形態と同様、吐出ポート25aより浅くし、吐出通路26には連通されていない。
【0033】
図5に示すように、ポンプカバー15の内面には、第1の実施の形態と同様、吐出側凹溝25bの前端部より多少前側で作動室Rの側面が通過する位置に丸い有底の取付孔18aが形成され、この取付孔18aには、キャビテーションエロージョンに対する耐性が大きい材料よりなる短い円柱状の補強ピン18が圧入固定されている。また、吐出側凹溝25bの後端と吸入ポート20bの間となるポンプカバー15の内面にも、取付孔19aが形成されて補強ピン18と同様の補強ピン19が圧入固定されている。両補強ピン18,19は圧入固定後にポンプカバー15の内面と同時に加工され、またポンプカバー15には、取付孔18a,19aの底面と補強ピン18,19の間の空間を外部に連通する通気孔18b,19bが形成されている。上述した以外の第2の実施の形態の構成は第1の実施の形態と同じである。
【0034】
入力軸35の先端に支持されたドライブギヤ30が、図5の二点鎖線矢印に示すように時計回転方向に回転されれば、ドリブンギヤ31も同方向に回転され、作動油は吸入通路21を通り両側の吸入ポート20a,20bから吸入領域にある作動室R内に吸入され、吐出領域にある作動室Rから吐出ポート25a内に吐出され、吐出通路26を通って供給先に供給される。この際、第1の実施の形態で述べたのと同様な理由により、ポンプボデー10およびポンプカバー15と両ギヤ30,31の歯の間に閉じ込められた作動油は、作動室Rの先端部が吐出ポート25aおよび吐出側凹溝25bの先端と連通した瞬間に吐出ポート25aおよび吐出側凹溝25b内に連通されて圧力が急激に上昇するので、これと接するポンプカバー15の内面にキャビテーションエロージョンを生じようとする。
【0035】
しかしアルミニウムよりなるポンプカバー15の内面には、このキャビテーションエロージョンが生じる位置に、これに対する耐性が大きい材料よりなる補強ピン18が圧入固定されているので、ポンプカバー15の内面に生じるキャビテーションエロージョンは補強ピン18により防止される。従ってポンプカバー15の内面の浸食によりオイルポンプの内部漏れが増大してオイルポンプの吐出性能が低下するという問題は回避され、しかもこの補強ピン18は少ない面積で足りるので、製造コストの増大は抑制される。
【0036】
また、第1の実施の形態で述べたのと同様な理由により、吐出側凹溝25b内後部の作動油の圧力は吐出ポート25a内の作動油の圧力より小さくなり、ドリブンギヤ31は、吐出ポート25aの後部付近においてポンプカバー15側に押し付けられて、その側面がポンプカバー15の内面に当接される。しかしポンプカバー15の内面に圧入固定されている補強ピン18,19は、耐摩耗性にも富んでいるので、ギヤ31との当接によりポンプカバー15の内面が摩耗されることもなくなる。なおこの第2の実施の形態のドライブギヤ30は、一体的に設けた入力軸35がポンプボデー10とポンプカバー15の中心孔12,16により支持されているので、ドリブンギヤ31のように傾斜するおそれはなく、また軸線方向の移動も入力軸35により拘束されているので、ポンプカバー15の内面に当接されることはない。その他の作用効果および変形例の説明は第1の実施の形態と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0037】
上述した2つの実施の形態では、外歯のドライブギヤ30と内歯のドリブンギヤ31よりなるギヤポンプの場合につき説明したが、本発明は、ハウジングのギヤ室の内周面とこれに対し偏心して回転されるロータの間の空間を、ロータに対し放射方向に摺動自在に設けられて先端をギヤ室の内周面に摺動自在に当接させた多数のベーンにより仕切って、ロータの回転とともに移動しながら容積が増減する多数の作動室を形成し、ギヤ室の内面には作動室の容積が増大する吸入領域に対応する位置に吸入ポートを開口し、作動室の容積が減少する吐出領域に対応する位置に吐出ポートを開口したベーンポンプに適用することもできる。このようなベーンポンプでも、作動室内に閉じ込められた作動油は、作動室の先端部が吐出ポートと連通された瞬間に圧力が急激に上昇するので、これと接する吐出ポートの前端部より多少前側となるハウジングの内面にキャビテーションエロージョンが生じて浸食されるという問題がある。しかし上述した各実施の形態と同様、各作動室が最初に連通される吐出側凹溝の前端部より多少前側となるハウジングの内面に、キャビテーションエロージョンに対する耐性が高い材料よりなる補強部材を埋設固定することにより、このような浸食の問題は解決され、しかも製造コストの増大は抑制される。
【0038】
【発明の効果】
上述のように、本発明によれば、ロータが摺動するギヤ室の内側面の一部に補強部材を埋設固定したので、この補強部材を埋設固定した部分に浸食や摩耗が生じることはなく、このような浸食や摩耗によりオイルポンプの内部漏れが増大してオイルポンプの吐出性能が低下するおそれはなくなる。また補強部材はギヤ室の内側面の浸食や摩耗が生じやすい部分に集中して形成すればよく、しかもロータが摺動するギヤ室の内側面の一部に形成した丸い有底の取付孔に圧入して埋設固定しており、補強部材の埋設固定をきわめて容易に行うことができるので、エロージョン防止のための製造コストの増大を大きく抑制することができる。さらに取付孔の底面とこれに圧入した補強部材の間の空間を外部に連通する通気孔をハウジングに形成しているので、オイルポンプの作動に伴う温度上昇により補強部材が抜け出るおそれはなくなる。
【0039】
ロータはドライブギヤとし、ハウジング内には両側および外周がギヤ室の内面と摺動するように回転自在に支持されてドライブギヤと噛合するドリブンギヤを設けてこの両ギヤの互いに噛合する歯部の間に作動室を形成したものによれば、ギヤポンプにおいて前述した各効果を得ることができる。
【0040】
補強部材を、ギヤ室の内側面の少なくともキャビテーションエロージョンが発生する部分に埋設固定したものによれば、キャビテーションによるギヤ室の内側面の浸食を防ぐことができる。
【0041】
また補強部材を、同補強部材が埋設固定される部材を形成する材料よりも硬質の材料、あるいは同補強部材が埋設固定される部材を形成する材料よりもキャビテーションエロージョンに対する耐性が高い材料からなるものととしたものによれば、ギヤ室の内側面の摩耗あるいはキャビテーションエロージョンによる浸食を一層効果的に防ぐことができる。
【0042】
オイルポンプのケーシングを、ポンプボデーと、このポンプボデーに結合固定されたポンプカバーからなるものとしたものによれば、オイルポンプの生産性が向上する。
【0043】
ロータを外歯のドライブギヤとし、ハウジング内には両側および外周がギヤ室の内面に回転自在に支持されてドライブギヤと噛合する内歯のドリブンギヤを設けてこの両ギヤの互いに噛合する歯部の間に容積が増減する作動室を形成し、補強部材は作動室の容積が次第に減少する吐出領域と対応するハウジングの内面に開口された吐出側凹溝の多少前側で両ギヤの両側に開放される作動室の両側が通過するハウジングの内側面に設けたものによれば、ハウジングの内面のうちキャビテーションエロージョンが生じるのは、主として吐出側凹溝の前端部より多少前側で両ギヤの両側に開放される作動室の両側が通過する範囲であるので、エロージョン防止のための補強部材はきわめて小さいもので足りる。従ってエロージョン防止のための製造コストの増大をさらに抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明によるオイルポンプの第1の実施形態の中央部の断面図である。
【図2】 図1の2−2線に沿ったポンプカバーの正面図である。
【図3】 図2の3−3断面図である。
【図4】 本発明によるオイルポンプの第2の実施形態の中央部の断面図である。
【図5】 図4の5−5線に沿ったポンプカバーの中央部の正面図である。
【図6】 従来技術によるオイルポンプの一例の中央部の断面図である。
【図7】 図6の7−7線に沿ったポンプカバーの中央部の正面図である。
【符号の説明】
18,19…補強部材(補強ピン)、18a…取付孔、18b…通気孔、20a,20b…吸入側凹溝(吸入ポート)、25a…吐出側凹溝(吐出ポート)、25b…吐出側凹溝、30…ロータ(ドライブギヤ)、31…ドリブンギヤ、H…ハウジング、R…作動室。

Claims (7)

  1. 吸入通路、ギヤ室および吐出通路が形成されたハウジングと、
    このハウジングのギヤ室内に同ギヤ室の両内側面に両側面が摺動するように回転可能に配設されたロータと、
    前記ハウジングとロータの間に同ロータの外周に沿って形成され同ロータの回転とともに移動しながら容積が増減する多数に仕切られた作動室を有し、
    前記ロータの回転により前記吸入通路から作動油を吸入し、この作動油を前記吐出通路から吐出するオイルポンプにおいて、
    前記ロータが摺動する前記ギヤ室の内側面の一部に形成した丸い有底の取付孔に補強部材を圧入して埋設固定し、前記取付孔の底面と圧入した前記補強部材の間の空間を外部に連通する通気孔を前記ハウジングに形成したことを特徴とするオイルポンプ。
  2. 請求項1に記載のオイルポンプにおいて、前記ロータはドライブギヤとし、前記ハウジング内には両側および外周が前記ギヤ室の内面と摺動するように回転自在に支持されて前記ドライブギヤと噛合するドリブンギヤを設けてこの両ギヤの互いに噛合する歯部の間に前記作動室を形成したことを特徴とするオイルポンプ。
  3. 請求項1または請求項2に記載のオイルポンプにおいて、前記補強部材は、前記ギヤ室の内側面の少なくともキャビテーションエロージョンが発生する部分に埋設固定したことを特徴とするオイルポンプ。
  4. 請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のオイルポンプにおいて、前記補強部材は同補強部材が埋設固定される部材を形成する材料よりも硬質の材料からなることを特徴とするオイルポンプ。
  5. 請求項4に記載のオイルポンプにおいて、前記補強部材は同補強部材が埋設固定される部材を形成する材料よりもキャビテーションエロージョンに対する耐性が高い材料からなることを特徴とするオイルポンプ。
  6. 請求項1〜請求項5の何れか1項に記載のオイルポンプにおいて、前記ケーシングはポンプボデーと、このポンプボデーに結合固定されたポンプカバーからなることを特徴とするオイルポンプ。
  7. 請求項1〜請求項6の何れか1項に記載のオイルポンプにおいて、前記ロータは外歯のドライブギヤとし、前記ハウジング内には両側および外周が前記ギヤ室の内面に回転自在に支持されて前記ドライブギヤと噛合する内歯のドリブンギヤを設けてこの両ギヤの互いに噛合する歯部の間に前記作動室を形成し、前記補強部材は前記作動室の容積が次第に減少する吐出領域と対応する前記ハウジングの内面に開口された吐出側凹溝の多少前側で前記両ギヤの両側に開放される前記作動室の両側が通過する前記ハウジングの内側面に設けたことを特徴とするオイルポンプ。
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