JP4288720B2 - 電磁アクチュエータの磁路形成固定部材の製造方法、電磁アクチュエータの磁路形成固定部材並びに電磁弁 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、筒状の強磁性のスリーブと、前記スリーブ内に移動自在に配設された可動コアとの間で磁気ギャップを形成する固定コアとを備え、前記スリーブの前記磁気ギャップに対応する部位に弱磁性部又は非磁性部が形成された電磁アクチュエータの磁路形成固定部材、その製造方法並びに電磁弁に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の従来技術としては、特開平5−237678号公報に示されるものが知られている。この公報の従来技術の欄には、コイルの内周側に配置された筒状のボビンと、ボビンの内部に移動自在に配設される可動鉄心と、可動鉄心との間で磁気ギャップを形成するようにボビンの内部に設けられた固定鉄心とを備え、ボビンは強磁性体の一部に非磁性体を溶接した電磁アクチュエータが開示されている。そして、この従来技術では溶接欠陥や溶接ひずみによるボビンの変形が問題である旨記載されている。
【0003】
そこで、強磁性体の一部に欠陥や変形を生じることなく非磁性体部分を形成するために、強磁性のボビンの表面局部(改質部分)にオーステナイト生成元素を供給しながらレーザービーム等の高エネルギー密度ビームを照射してその照射部を合金化することによって、その部分を弱磁性化又は非磁性化する電磁アクチュエータの局部材料改質方法が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、この方法では、肉厚の薄い筒状のボビンの局部表面に高エネルギー密度ビームを照射するので、照射時において未だボビンに熱歪が発生し、具体的には、ボビンの照射部において婉曲する恐れがある。
【0005】
故に、本発明は、強磁性のスリーブ(ボビン)にオーステナイト生成元素を供給しながら高エネルギー密度ビームを照射して弱磁性部又は非磁性部を形成する際に、ボビンの熱歪を低減し得ることを、技術的課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記技術的課題を解決するため、請求項1の発明は、コイル部材の内側に配設された筒状のスリーブと、前記スリーブ内にその一端側にてその軸方向に移動自在に配設された可動コアとの間で磁気ギャップを形成し前記スリーブ内にその他端側に位置するように設けられた固定コアとを備え、前記スリーブは前記磁気ギャップに対応する部位にて強磁性体の一部が弱磁性体又は非磁性体に改質されている電磁アクチュエータの磁路形成固定部材を製造する方法であって、強磁性材料を用いて前記スリーブ及び前記固定コアを一体成形する一体成形工程と、前記一体成形工程の後、前記磁気ギャップに対応する前記スリーブの被改質部位にオーステナイト生成元素を供給しながら高エネルギー密度ビームを照射して、前記被改質部位を強磁性体から弱磁性体又は非磁性体に改質する材料改質工程とを有する電磁アクチュエータの磁路形成固定部材の製造方法を提供する。
【0007】
ここで、オーステナイト生成元素とは、弱磁性体又は非磁性体を生成する元素であり、例えばニッケル、マンガン、コバルト、炭素、窒素を用いることができる。また、高エネルギー密度ビームには、レーザービーム、電子ビーム等を用いることができる。
【0008】
請求項1の発明によれば、スリーブ及び固定コアを一体成形した後、スリーブの磁気ギャップに対応する部位にオーステナイト生成元素を供給しながら高エネルギー密度ビームを照射して弱磁性体又は非磁性体を形成するので、従来技術に比べて、照射部位の肉厚は固定コアの肉厚分だけ厚くなり、結果、照射時におけるスリーブの熱歪を低減することができる。また、コアを圧入する場合に比べて、圧入工程及び圧入のための加工工程を省くことができる。
【0009】
請求項1において、請求項2の発明に示すように、前記一体成形工程は、鍛造により前記スリーブ及び前記固定コアを一体成形すると、好ましい。この構成によれば、簡単にスリーブと固定コアを一体成形することができる。
【0010】
上記技術的課題を解決するため、請求項3の発明は、コイルの内側に配設されたドーム状のスリーブと、前記スリーブ内にその開口側にてその軸方向に移動自在に配設された可動コアとの間で磁気ギャップを形成し前記スリーブ内にその底側に位置するように固定された固定コアとを備え、前記スリーブは前記磁気ギャップに対応する部位にて強磁性体の一部が弱磁性体又は非磁性体に改質されている電磁アクチュエータの磁路形成固定部材を製造する方法において、強磁性の前記スリーブの内底部に前記固定コアを圧入固定する圧入工程と、前記圧入工程の後、前記スリーブの前記磁気ギャップに対応する部位にオーステナイト生成元素を供給しながら高エネルギー密度ビームを照射して、弱磁性体又は非磁性体を形成する材料改質工程とを有する電磁アクチュエータの磁路形成固定部材の製造方法を提供する。
【0011】
請求項3の発明によれば、ドーム状の強磁性スリーブの内底部に固定コアを圧入した後、スリーブの磁気ギャップに対応する部位にオーステナイト生成元素を供給しながら高エネルギー密度ビームを照射して、前記スリーブの前記磁気ギャップに対応する部位を強磁性体から弱磁性体又は非磁性体に改質されるので、従来技術に比べて、照射部位の肉厚は固定コアの被改質部位の肉厚分だけ厚くなり、結果、照射時におけるスリーブの熱歪を低減することができる。また、スリーブ及び固定コアに異種の材料を用いることができる。
【0012】
上記技術的課題を解決するため、請求項4の発明は、コイルの内側に配設された筒状の強磁性のスリーブと、前記スリーブ内にその一端側にてその軸方向に移動自在に配設された可動コアと、前記可動コアとの間で磁気ギャップを形成し前記スリーブ内にその他端側に位置するように一体的に形成された固定コアとを備え、前記スリーブは前記磁気ギャップに対応する部位において、オーステナイト生成元素を供給しながら高エネルギー密度ビームを照射し、前記スリーブの前記磁気ギャップに対応する部位の強磁性体が弱磁性体又は非磁性体に改質されている改質部を有する電磁アクチュエータの磁路形成固定部材を提供する。
【0013】
請求項4の発明によれば、固定コアをスリーブの他端側に一体的に形成したため、スリーブの磁気ギャップに対応する部位の肉厚を確保でき、結果、(高エネルギー密度ビームにより)スリーブの磁気ギャップに対応する部位を弱磁性体又は非磁性体に改質する際にスリーブの熱歪を低減することができる。
【0014】
上記技術的課題を解決するため、請求項5の発明は、ボデーと、前記ボデー内に設けられた第1通路及び第2通路と、前記第1及び第2通路間に位置するよう前記ボデーに設けられた弁座と、前記ボデー内に前記弁座に着脱可能に配設され前記第1及び第2通路間を開閉する弁体と、一端が開口し他端が閉塞し前記ボデーに固定された筒状の強磁性のスリーブと、前記スリーブ内に前記他端側に一体的に形成された固定コアと、前記固定コアとの間で磁気ギャップを形成するよう前記スリーブ内に移動自在に配設され、その移動により前記弁体を作動させる可動コアと、前記弁体を前記弁座に着座する方向に前記可動コアを付勢するスプリングと、前記スリーブの周りに配設され電磁力により前記弁体を前記弁座から離脱する方向に前記可動コアを作動させる筒状のコイル部材とを備え、前記スリーブは前記磁気ギャップに対応する部位において、オーステナイト生成元素を供給しながら高エネルギー密度ビームを照射し、前記スリーブの前記磁気ギャップに対応する部位の強磁性体が弱磁性体又は非磁性体に改質されている改質部を有する電磁弁を提供する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の望ましい実施の形態を図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明に係る方法により製造された電磁アクチュエータの磁路形成固定部材を有する常閉型の電磁弁の断面図である。
【0017】
図1に示すように、ボデー10内には、第1通路11及び第2通路12が形成されている。第1通路11は、例えば車輪を制動するホイールシリンダ(図示せず)に接続され、第2通路12は、例えばホイールシリンダのブレーキ液圧を排出する補助リザーバ(図示せず)に接続されている。また、ボデー10には、第1及び第2通路11,12間に位置するように収容孔13が形成されている。
【0018】
ボデー10の収容孔13には、段付円筒状の保持部材14が固定され、保持部材14の内部には弁座シート15が圧入固定されている。弁座シート15は、一端に弁座15aを有すると共に、第2通路12に連通する内部通路15bを有する。収容孔13内には、ボール(弁体)16が弁座15aに着脱可能に配設されている。このボール16は、常態では図1に示すように、弁座15aに着座しており、第1及び第2通路11,12間の連通を遮断している。尚、保持部材14の周りには、第1通路11側からの異物等の進入を防ぐためのフィルタ部材17が設けられている。
【0019】
収容孔13にはドーム状のスリーブ18が下方に開口するように配置され、スペーサ19のボデー10への圧入によりボデー11に固定されている。スリーブ18の内底部には固定コア20が一体的に形成されている。スリーブ18内の開口端側には、可動コア21がスリーブ18の延在方向に移動自在に配設されている。この可動コア21の一端は固定コア20との間で磁気ギャップ22を形成しており、その他端には前述のボール16が固定されている。固定コア20及び可動コア21間にはスプリング23が配設され、磁気ギャップ22を大きくする方向に(即ちボール16を弁座15aに着座する方向に)可動コア21を付勢している。ここで、スリーブ18は強磁性体で構成されるが、スリーブ18の磁気ギャップ22に対応する部位及びその近傍には、強磁性体が非磁性体18aに改質されている。尚、スリーブ18及び固定コア20が、本発明の電磁アクチュエータの磁路形成固定部材に該当する。
【0020】
スリーブ18の外周には、円筒状のコイルアッセンブリ24が配設され、円筒状のボビン24aと、ボビン24aに巻回されたコイル24bと、コイル24bを囲むように設けられた第1及び第2ヨーク24c、24dと、ボビン24a及びコイル24bを図示上方に付勢する皿ばね24eとを備える。このコイル24bに通電されると、磁気ギャップ22に吸引力が発生して可動コア21がスプリング23の付勢力に抗して上方に移動する。
【0021】
次に、図2を用いてスリーブ18及び固定コア20で構成される磁路形成固定部材の製造方法について説明する。
【0022】
まず、の(a)に示すような円柱状の強磁性の素材(例えばSUS430)を用意し、冷鍛により(b)、(c)及び(d)の順に加工して強磁性の固定コア一体型スリーブを得る。次いで、(e)に示すように、固定コア一体型スリーブの被改質部位(即ち磁気ギャップ22に対応する部位18a)にオーステナイト生成元素(例えばニッケル)30を供給しながらレーザービーム40を照射する。その結果、照射部が合金化され、そこに非磁性体18aが形成される。その後、しごきにより矯正して仕上げ研磨を行うことにより磁路形成固定部材を得る。
【0023】
このように、固定コア一体型スリーブの磁気ギャップ22に対応する部位にレーザービーム40を照射するので、固定コア20の被改質部位18aの肉厚分だけ照射部位の肉厚を確保でき、照射時の熱歪を低減できる。
【0024】
尚、本実施形態では、コア一体型スリーブにレーザービーム40を照射する旨を説明したが、ドーム状のスリーブの内底部に固定コアを圧入した後、スリーブの磁気ギャップに対応する部位にレーザービーム40を照射することとしても良い。
【0025】
【発明の効果】
本発明によれば、スリーブ及び固定コアを一体成形した後、スリーブの磁気ギャップに対応する部位にオーステナイト生成元素を供給しながら高エネルギー密度ビームを照射して弱磁性体又は非磁性体を形成するので、従来技術に比べて、照射部位の肉厚は固定コアの肉厚分だけ厚くなり、結果、照射時におけるスリーブの熱歪を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る電磁アクチュエータの磁路形成固定部材が適用された電磁弁の断面図である。
【図2】図1の電磁アクチュエータの磁路形成固定部材の製造工程を説明する説明図である。
【符号の説明】
10 ボデー
11 第1通路
12 第2通路
15a 弁座
16 ボール(弁体)
18 スリーブ(磁路形成固定部材)
18a 非磁性体
20 固定コア(磁路形成固定部材)
21 可動コア
22 磁気ギャップ
23 スプリング
24 コイル部材
Claims (5)
- コイル部材の内側に配設された筒状のスリーブと、前記スリーブ内にその一端側にてその軸方向に移動自在に配設された可動コアとの間で磁気ギャップを形成し前記スリーブ内にその他端側に位置するように設けられた固定コアとを備え、前記スリーブは前記磁気ギャップに対応する部位において強磁性体の一部が弱磁性体又は非磁性体に改質されている電磁アクチュエータの磁路形成固定部材を製造する方法であって、
強磁性材料を用いて前記スリーブ及び前記固定コアを一体成形する一体成形工程と、
前記一体成形工程の後、前記磁気ギャップに対応する前記スリーブの被改質部位にオーステナイト生成元素を供給しながら高エネルギー密度ビームを照射して、前記被改質部位を強磁性体から弱磁性体又は非磁性体に改質する材料改質工程とを有することを特徴とする電磁アクチュエータの磁路形成固定部材の製造方法。 - 請求項1において、
前記一体成形工程は、鍛造により前記スリーブ及び前記固定コアを一体成形することを特徴とする電磁アクチュエータの磁路形成固定部材の製造方法。 - コイルの内側に配設されたドーム状のスリーブと、前記スリーブ内にその開口側にてその軸方向に移動自在に配設された可動コアとの間で磁気ギャップを形成し前記スリーブ内にその底側に位置するように固定された固定コアとを備え、前記スリーブは前記磁気ギャップに対応する部位にて強磁性体の一部が弱磁性体又は非磁性体に改質されている電磁アクチュエータの磁路形成固定部材を製造する方法において、
強磁性の前記スリーブの内底部に前記固定コアを圧入固定する圧入工程と、前記圧入工程の後、前記スリーブの前記磁気ギャップに対応する部位にオーステナイト生成元素を供給しながら高エネルギー密度ビームを照射して、前記スリーブの前記磁気ギャップに対応する部位を強磁性体から弱磁性体又は非磁性体に改質する材料改質工程とを有する電磁アクチュエータの磁路形成固定部材の製造方法。 - コイルの内側に配設された筒状の強磁性のスリーブと、前記スリーブ内にその一端側にてその軸方向に移動自在に配設された可動コアと、前記可動コアとの間で磁気ギャップを形成し前記スリーブ内にその他端側に位置するように一体的に形成された固定コアとを備え、前記スリーブは前記磁気ギャップに対応する部位に、オーステナイト生成元素を供給しながら高エネルギー密度ビームを照射し、前記スリーブの前記磁気ギャップに対応する部位の強磁性体が弱磁性体又は非磁性体に改質されている改質部を有する電磁アクチュエータの磁路形成固定部材。
- ボデーと、前記ボデー内に設けられた第1通路及び第2通路と、前記第1及び第2通路間に位置するよう前記ボデーに設けられた弁座と、前記ボデー内に前記弁座に着脱可能に配設され前記第1及び第2通路間を開閉する弁体と、一端が開口し他端が閉塞し前記ボデーに固定された筒状の強磁性のスリーブと、前記スリスリーブ内に前記他端側に一体的に形成された固定コアと、前記固定コアとの間で磁気ギャップを形成するよう前記スリーブ内に移動自在に配設され、その移動により前記弁体を作動させる可動コアと、前記弁体を前記弁座に着座する方向に前記可動コアを付勢するスプリングと、前記スリーブの周りに配設され電磁力により前記弁体を前記弁座から離脱する方向に前記可動コアを作動させる筒状のコイル部材とを備え、
前記スリーブは前記磁気ギャップに対応する部位に、オーステナイト生成元素を供給しながら高エネルギー密度ビームを照射し、前記スリーブの前記磁気ギャップに対応する部位の強磁性体が弱磁性体又は非磁性体に改質されている改質部を有することを特徴とする電磁弁。
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