JP4263914B2 - トップコート組成物およびそれを用いた床構造体、並びにその床面維持管理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、トップコート組成物およびそれを用いた床構造体、並びにその維持管理方法に関し、より詳しくは、特定のトップコート組成物と、上記特定のトップコート皮膜を特定のベースコート皮膜上に積層形成してなる床構造体と、そのトップコート皮膜の摩耗の程度に応じて、上記トップコート皮膜を剥離洗浄し、トップコート組成物を再塗布してトップコート皮膜を再形成することを繰り返し行う床面維持管理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
木質系床材、合成樹脂からなる化学床材、コンクリートや大理石等の石床などの床面には、床材の美観を保つともに、床面の保護を目的として、フロアーポリッシュ用組成物による皮膜が形成されている。上記フロアーポリッシュ組成物としては、溶剤を使用する油性タイプのもの、水性または乳化状態のものが一般的で、その分類については、「JFPA(日本フロアーポリッシュ工業会)規格−00」、フロアーポリッシュ試験方法通則の用語の定義に規定されている。
【0003】
この規格にあるフロアーポリッシュのうち、主流となっているものは、水性のポリマータイプのものである。この水性ポリマータイプのフロアーポリッシュは、通常、アクリル系共重合物のエマルジョン、ポリエチレンワックスエマルジョン、アルカリ可溶性樹脂、可塑剤、その他の成分からなることが、特公昭44−24407号公報(特許文献1参照)、特公昭49−1458号公報(特許文献2を参照)、Cosmetic Chemical Specialities,61(9),86(1985)(非特許文献1参照)等に示されている。
【0004】
そして、特定のアクリル系共重合体の水溶液からなり、ツヤ出し効果が良好で、洗浄性、耐水性に優れたツヤ出し洗浄剤組成物が、特公昭61−18958号公報にある(特許文献3参照)。
【0005】
また、1分子中に2個以上のアクリロイル基を有する光硬化性樹脂、反応性希釈剤、ビニルエーテル類、および、ホスフィンオキサイド系光反応開始剤とを含有してなる、溶剤を使用せず、塗装作業者に無害な木質床材用光硬化性塗料組成物が、特開平8−253707号公報にある(特許文献4参照)。
【0006】
さらに、特定の光重合性不飽和ポリエステルと、特定の光重合性ゴム弾性不飽和ポリエステルと、光開始剤とを含有してなる、ブロッキングが生じることがなく、しかも、ノンスリップ性に優れた紫外線硬化型塗料組成物およびこの塗料組成物から得られる塗膜が、特開平8−188742号公報にある(特許文献5参照)。
【0007】
そして、特定の光重合性ポリウレタンアクリレートと、特定の光重合性ゴム弾性ポリウレタンアクリレートと、光開始剤とを含有してなる、ブロッキングが生じることがなく、しかも、ノンスリップ性に優れた紫外線硬化型塗料組成物およびこの塗料組成物から得られる塗膜が、特開平8−188743号公報にある(特許文献6参照)。
【0008】
また、床平面におけるX軸方向に移動可能なX方向移動輪と、Y軸方向に移動可能なY方向移動輪とを設け、さらに昇降機構によりX方向移動輪又はY方向移動輪を昇降させて何れか一方の移動輪を床に着地させ、台車をX軸方向或はY軸方向に選択的に移動させることにより、床面に塗布された紫外線硬化型塗料に対し効率良く紫外線を照射して良好に硬化させることができる紫外線照射装置が、特開平6−134381号公報にある(特許文献7参照)。
【0009】
さらに、紫外線硬化装置本体の上部に発信音器、発光器を配置し、作業者が紫外線硬化装置を移動する時に、常に一定のリズムで歩行できるように、一歩の間隔に合わせて少なくとも発信音器、発光器の何れかが信号を発信するように構成してある移動式紫外線硬化装置が、特開2001−121552号公報にある(特許文献8参照)。
【0010】
また、シリコーン系マクロモノマー由来の構造単位、スチレン系単量体由来の構造単位および他のラジカル重合性単量体由来の構造単位を有し、かつ全構造単位の合計重量に基づいて、各構造単位を所定の割合で含有する水性乳化分散体よりなるシリコーン系の床用艶出し剤が、特開2000−239614号公報にある(特許文献9参照)。
【0011】
そして、フローリングの長所である床全体の弾力性、ポリウレタン塗り床の長所である局部弾力性、耐久性、シームレス性等を兼ね備えた体育館用塗り床と被覆のためのポリウレタン材料が、特開昭56−34846号公報にある(特許文献10参照)。
【0012】
また、防水処理を施す工程と、床を水洗浄する工程と、前記水洗浄の汚水を除去し床を乾燥させる工程と、床の表面を研磨する工程と、床にウレタン系塗料を塗布・乾燥する工程とを含む、木質または樹脂製の床の洗浄再生方法が、特開2001−225035号公報にある(特許文献11参照)。
【0013】
さらに、ウレタン系樹脂コーティング剤を用いて塗布されている木質系床の表面を再塗装する方法において、木質系床に塗布されているウレタン系樹脂コーティング剤の塗装面を洗浄水で洗浄し、その後、水性ウレタン系樹脂コーティング剤で仕上げる木質系床の再塗装方法が、特開2001−25704号公報にある(特許文献12参照)。
【0014】
一方、汚物およびワックスの除去、特に隅、すそ板、階段等掃除の不自由な場所からの汚物およびワックス等を除去するための洗浄組成物が、特公昭58−42239号公報にある(特許文献13参照)。
【0015】
また、特定のグリコール系水溶性有機溶剤、ベンジルアルコ−ルおよびアミン類を主要成分としてなる、水性ポリマータイプフロアーポリッシュの皮膜の除去性に優れ、水拭作業が簡単で、不快臭なく安全な水性ポリマ−タイプフロア−ポリッシュ用剥離剤が、特開平9−241687号公報にある(特許文献14参照)。
【0016】
そして、特定の溶剤、キレート化合物、界面活性剤および水を含有し、pHを特定範囲にすることにより、床材質を傷めず、隣接しているカーペットを損傷、変色させることがなく、しかも剥離性に優れたフロアーポリッシュ除去剤が、特開平10−298593号公報にある(特許文献15参照)。
【0017】
【特許文献1】
特公昭44−24407号公報
【特許文献2】
特公昭49−1458号公報
【非特許文献1】
Cosmetic Chemical Specialities,
61(9),86(1985)
【特許文献3】
特公昭61−18958号公報
【特許文献4】
特開平8−253707号公報
【特許文献5】
特開平8−188742号公報
【特許文献6】
特開平8−188743号公報
【特許文献7】
特開平6−134381号公報
【特許文献8】
特開2001−121552号公報
【特許文献9】
特開2000−239614号公報
【特許文献10】
特開昭56−34846号公報
【特許文献11】
特開2001−225035号公報
【特許文献12】
特開2001−25704号公報
【特許文献13】
特公昭58−42239号公報
【特許文献14】
特開平9−241687号公報
【特許文献15】
特開平10−298593号公報
【0018】
上記紫外線硬化型塗料,シリコーン塗料,ウレタン塗料,アクリル塗料等のベースコート組成物の皮膜は、床面に半永久的に光沢を与え、かつ床材を保護することを特徴としており、その上に、トップコート皮膜等の被覆層は設けないようになっている。しかしながら、土砂汚れを伴う歩行が行われた際には、塗料皮膜の表面に引っ掻き傷を生じてしまい、半永久的であるはずの床表面の光沢・美観に著しい低下を与えてしまうといった問題が発生している。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記各種塗料によるベースコート組成物の皮膜は、床材と強固に密着してしまっているため、一度傷ついてしまった塗料皮膜表面を回復させる方法としては、ヤスリや切削機等を用いて物理的に切削して除去するか、床材を張り替えるといった方法がとられている。
【0020】
上記塗料皮膜を物理的に切削・研磨する作業には、特殊な切削機器や器具等を必要で、しかも切削に伴う多量の粉塵が発生飛散するため、作業性が悪く、衛生上も問題となる。また、壁や天井等に飛散し付着した粉塵を清掃する作業を要する等の手間を要し、コスト的負担が大きいという問題もある。
【0021】
特に、ベースコートの再塗布作業において、紫外線硬化型塗料を塗布する場合には、紫外線照射装置等の特殊な装置を用いなければならず、紫外線を取り扱うための専門的な知識が必要となる。
【0022】
また、廃水等の環境負荷や作業性を軽減し、そして、特殊な装置を必要としない、簡便な床面の清浄・美観の維持管理方法が強く望まれている。
【0023】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、廃水等の環境負荷や作業労力を軽減し、また、特殊な装置を必要としない簡便な方法で維持管理することのできる特殊な床構造体を形成するのに用いられるトップコート組成物と、それを用いた床構造体と、その床面維持管理方法の提供を、その目的とする。
【0024】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明は、床材上に、紫外線硬化型塗料、シリコーン塗料、ウレタン塗料およびアクリル塗料から選ばれる少なくとも一つの塗料を塗布・乾燥してなるベースコート皮膜が形成され、さらにその上に、トップコート組成物を塗布・乾燥してなるトップコート皮膜が形成された床構造体に用いられるトップコート組成物であって、下記のアルカリ可溶性樹脂(R)が、塗布後のトップコート組成物乾燥皮膜中に25〜95質量%含有されるよう配合されているとともに、下記の水性樹脂分散体(P)が、塗布後のトップコート組成物乾燥皮膜中に5〜75質量%含有されるよう配合されており、JIS K−3304「石けん試験方法」2.1(5)にしたがって測定される遊離アルカリが、水酸化ナトリウム換算で1.5質量%以下である水溶液に可溶化および/または分散する皮膜を形成する物性を有しているトップコート組成物を第1の要旨とする。
(R)ガラス転移温度(Tg)70〜140℃、酸価(Av)50〜300、および平均分子量(Mw)4,000〜45,000であるアルカリ可溶性樹脂。
(P)ガラス転移温度(Tg)−30〜30℃、平均分子量(Mw)50,000〜1,000,000である水性樹脂分散体。
【0025】
また、本発明は、上記トップコート組成物のなかでも、特に、上記アルカリ可溶性樹脂(R)が、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−αメチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−αメチルスチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−αメチルスチレン−アクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、スチレン−αメチルスチレン−メタクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、スチレン−αメチルスチレン−メタクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体、アクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ジイソブチレン−無水マレイン酸共重合体、ロジン変性マレイン酸、シェラックから選ばれる少なくとも一種を含有 するものであるトップコート組成物を第2の要旨とし、そのなかでも、特に、上記アルカリ可溶性樹脂(R)が、アクリル酸およびメタクリル酸の少なくとも一方と共重合可能な単量体との共重合体からなるものであるトップコート組成物を第3の要旨とする。
【0026】
さらに、本発明は、前記第1の要旨であるトップコート組成物のなかでも、特に、上記水性樹脂分散体(P)における各単量体の割合が、全単量体の合計量を基準として下記の割合に設定されているトップコート組成物を第4の要旨とする。
(a)α,β−カルボン酸単量体:2〜40質量%。
(b)アクリル酸アルキルエステル単量体およびメタクリル酸アルキルエステル単量体の少なくとも一方:20〜90質量%。
(c)上記(a)および(b)単量体と共重合可能な単量体:0〜78質量%。
【0027】
また、本発明は、上記トップコート組成物のなかでも、特に、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、酸化ポリプロピレンワックスから選ばれる少なくとも一種の滑り調整剤が、塗布後のトップコート組成物乾燥皮膜中に5〜40質量%含有されるよう配合されているトップコート組成物を第5の要旨とし、原液におけるpH(JIS−Z−8802:1984「pH測定方法」)が、25℃で7〜10に設定され、かつ、外観が透明〜乳白色であるトップコート組成物を第6の要旨とする。
【0028】
さらに、本発明は、床材上に、紫外線硬化型塗料、シリコーン塗料、ウレタン塗料およびアクリル塗料から選ばれる少なくとも一つの塗料を塗布・乾燥してなるベースコート皮膜が形成され、さらにその上に、上記第1〜第6のいずれかの要旨であるトップコート組成物を塗布・乾燥してなるトップコート皮膜が形成されている床構造体を第7の要旨とする。
【0029】
また、本発明は、上記床構造体の床面を維持管理する方法であって、上記トップコート皮膜からなる床表面の摩耗に応じて、(イ)JIS K−3304「石けん試験方法」2.1(5)にしたがって測定される遊離アルカリが、水酸化ナトリウム換算で1.5質量%以下である洗浄剤水溶液で、摩耗したトップコート皮膜を洗浄剥離する工程と、(ロ)トップコート組成物を塗布・乾燥してトップコート皮膜を再形成する工程を含む床面維持管理方法を第8の要旨とし、そのなかでも、特に、上記トップコート皮膜を剥離洗浄する工程(イ)において用いられる洗浄剤水溶液が、JIS K−3304「石けん試験方法」2.1(5)にしたがって測定される遊離アルカリが、水酸化ナトリウム換算で0.5質量%以下である床面維持管理方法を第9の要旨とする。
【0030】
そして、本発明は、上記床面維持管理方法のなかでも、特に、上記トップコート皮膜を剥離洗浄する工程(イ)において、ポリッシャーもしくは自動床用洗浄機を用いるようにした床面維持管理方法を第10の要旨とし、そのなかでも、特に、上記ポリッシャーもしくは自動床用洗浄機に装着されるフロアパッドが、白パッド、赤パッドおよびモッピングパッドのいずれかである床面維持管理方法を第11の要旨とし、上記トップコート皮膜を剥離洗浄する工程(イ)において用いられる洗浄剤水溶液が、アルカリクリーナーである床面維持管理方法を第12の要旨とする。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0032】
本発明の床構造体は、床材上に、半永久的に光沢を与え、かつ床材を保護するためのベースコート皮膜が形成され、さらにその上に、本発明のトップコート組成物を塗布・乾燥してなるトップコート皮膜が形成された構成になっている。
【0033】
上記床材としては、特に限定はないが、ビニル系、合成樹脂塗り床等のプラスチック系床、石床、セメント系床、フローリング床(木床)等、各種の床を構成する床材があげられる。
【0034】
また、上記ベースコート皮膜は、紫外線硬化型塗料、シリコーン塗料、ウレタン塗料、アクリル塗料から選ばれる少なくとも一つの塗料を塗布・乾燥して得られるものである。
【0035】
上記紫外線硬化型塗料としては、商品名:トップコートT(ウィンテック社製)、商品名:ウルトラレジン(アシレ社製)等があげられ、上記シリコーン塗料としては、商品名:光触媒ニューリスタコート(九州リフォーム技術社製)等があげられる。また、ウレタン塗料としては、商品名:ワシンフロア(和信化学工業社製)、商品名:ジムフィニッシュ(ジョンソン・プロフェッショナル社製)等があげられ、上記アクリル塗料としては、商品名:ブレイザー(ジョンソン・プロフェッショナル社製)、商品名:VONCORT EC−100(大日本インキ化学工業社製)等があげられる。
【0036】
そして、本発明においては、特に、光沢度、耐久性の点から、紫外線硬化型塗料、シリコーン塗料が好ましい。
【0037】
また、用いる床材の種類によっては、多孔質の床材表面の凹凸等をシーリングする目的やベースコート皮膜の密着性を高める目的から、ベースコート組成物の皮膜を形成させる前に、各種塗料、水性フロアーポリッシュ、油性フロアーポリッシュ等、通常、床材の保護・被覆に用いられる被覆剤を「フロアーシーラー組成物」として、塗布してもよい。
【0038】
上記ベースコート皮膜の上に形成されるトップコート皮膜は、特定のアルカリ性可溶性樹脂(R)および特定の水性樹脂分散体(P)を含有する、本発明のトップコート組成物を塗布乾燥して得られるものである。そして、上記トップコート皮膜は、単層であっても、2種類以上の複数層であってもよいが、通常、経済性、作業性の点から、単層で形成されることが好ましい。
【0039】
上記トップコート組成物に用いられるアルカリ可溶性樹脂(R)としては、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−αメチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−αメチルスチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−αメチルスチレン−アクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、スチレン−αメチルスチレン−メタクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、スチレン−αメチルスチレン−メタクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体、アクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ジイソブチレン−無水マレイン酸共重合体、ロジン変性マレイン酸、シェラック等があげられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
これらのなかでも、特に、本発明に用いられるアルカリ性可溶性樹脂(R)は、ガラス転移温度(Tg)が50〜140℃、酸価(Av)が50〜300、平均分子量(Mw)が4,000〜45,000でなければならない。そして、トップコート組成物およびその皮膜への着色を防ぎ(非着色性)、他成分との組み合わせの容易性の点から、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−αメチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−αメチルスチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−αメチルスチレン−アクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、スチレン−αメチルスチレン−メタクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、スチレン−αメチルスチレン−メタクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体を用いることが好適である。
【0041】
上記アルカリ可溶性樹脂(R)のガラス転移温度(Tg)が、50℃未満である場合には、トップコート組成物の乾燥皮膜が柔らかかったり、べたついたりするため、耐久性の乏しいものとなるおそれがある。一方、140℃を超えると、耐粉化性に劣るために好ましくない。また、酸価(Av)が、50未満である場合には、自己再分散性に乏しく、一方、300を超えると、耐水性に劣るために好ましくない。そしてまた、平均分子量(Mw)が、4,000未満である場合には、耐水性に劣るために好ましくなく、一方、45,000を超えると、自己再分散性に劣るために好ましくない。このため、ガラス転移温度(Tg)、酸価(Av)および平均分子量(Mw)は、上記の範囲に設定することが必要である。なお、他の成分とのバランスから、ガラス転移温度(Tg)が70〜140であることが好ましい。
【0042】
そして、上記アルカリ可溶性樹脂(R)は、上記トップコート組成物中において、塗布後の乾燥皮膜固形分中において25〜95質量%の割合となるように配合することが必要である。すなわち、25質量%未満では、剥離性に乏しく、一方、95質量%を超えると耐水性に劣るために好ましくない。なかでも、特に、トップコート組成物皮膜の耐ブラックヒールマーク(BHM)性、耐スカッフ性、耐久性、耐水性を向上させるために配合する他成分とのバランスから、塗布後の乾燥皮膜固形分中において40〜80質量%の範囲となるように配合することが好ましい。
【0043】
上記アルカリ可溶性樹脂(R)の製造方法については、特に制限はないが、乳化重合法、溶液重合法および塊状重合法を採用することが好ましい。
【0044】
乳化重合法によりアルカリ可溶性樹脂(R)を製造するには、以下に述べるような乳化剤、重合開始剤等を使用して行われる。
【0045】
上記乳化剤としては、ジアルキルコハク酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム、ジアルキルスルホ琥珀酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物等のアニオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン界面活性剤、スチレンスルホン酸ナトリウム、アルキルアリルスルホン酸ナトリウム、アルキルアリルスルホ琥珀酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルアリルグリセリンエーテルサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェノールアルキルグリセリンエーテルサルフェート等の反応性乳化剤、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、水溶性アクリル酸エステル共重合体、水溶性メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体およびその塩、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体およびそれらの塩、ポリアクリルアミド共重合体、ポリメタクリルアミド共重合体等の高分子界面活性剤等が使用でき、これらは単独でまたは2種以上併用して使用することができる。
【0046】
上記乳化剤の望ましい使用量は、通常単量体100質量部当たり0.05〜5質量部である。乳化剤の使用量が0.05質量部未満では乳化性に乏しく、一方5質量部を超えると耐水性に劣ることがある。
【0047】
また、上記重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、過酸化水素、ベンゾイルペルオキシド、t−ブチルヒドロキシペルオキシド等の過酸化物等が使用できる。これらは亜硫酸水素ナトリウム、ピロ重亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート等の還元剤を併用したレドックス系として使用してもよい。
【0048】
より具体的には、例えば、水性媒体中に上記単量体、乳化剤、重合開始剤、還元剤、連鎖移動剤、キレート化剤、pH調整剤等を添加し、温度30〜100℃で1〜30時間程度重合反応をおこなうこと等によりアルカリ可溶性樹脂(R)を得ることができる。
【0049】
また、本発明のトップコート組成物において、上記アルカリ可溶性樹脂(R)とともに用いられる水性樹脂分散体(P)としては、α,β−不飽和カルボン酸単量体(a成分)、アクリル酸エステル単量体およびメタクリル酸エステル単量体の少なくとも一方(b成分)、上記(a)成分および(b)成分と共重合可能な単量体(c成分)とで構成することができる。
【0050】
上記(a)成分であるα,β−不飽和カルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸などがあげられ、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸が用いられる。これらのα,β−不飽和カルボン酸単量体は単独で用いてもよく、あるいは2種以上を併用することができる。
【0051】
そして、上記(a)成分は、水性樹脂分散体中に2〜40質量%の割合で配合されることが好ましい。すなわち、2質量%未満では、耐久性に乏しく、一方、40質量%を超えて配合した場合にはレベリング性に劣り、好ましくない。なかでも、貯蔵安定性の点から、5〜25質量%の割合で共重合されることが好ましい。
【0052】
また、上記(b)成分であるアクリル酸エステル単量体およびメタクリル酸エステル単量体の少なくとも一方としては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸n−アミル、アクリル酸i−アミル、アクリル酸へキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸i−ノニル、アクリル酸デシル、ヒドロキシメチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシアミルアクリレート、ヒドロキシヘキシルアクリレート、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸n−アミル、メタクリル酸i−アミル、メタクリル酸へキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸i−ノニル、メタクリル酸デシル、ヒドロキシメチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ヒドロキシアミルメタクリレート、ヒドロキシヘキシルメタクリレート等があげられる。なかでも、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシルが、好適に用いられる。これらのアクリル酸エステル単量体、メタクリル酸エステル単量体は、単独で用いてもよく、あるいは2種以上を併用することができる。
【0053】
そして、上記(b)成分は、水性樹脂分散体(P)中に20〜90質量%の割合で配合されることが好ましい。すなわち、20質量%未満では、耐水性、耐候性に乏しく、一方、90質量%を超えて配合した場合には光沢度に劣り、好ましくない。なかでも、貯蔵安定性の点から、40〜80質量%の割合で共重合されることが特に好ましい。
【0054】
さらに、上記(c)成分、すなわち上記(a)および(b)の単量体と共重合可能な単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メトキシスチレン、2−ヒドロキシメチルスチレン、4−エチルスチレン、4−エトキシスチレン、3,4−ジメチルスチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロー3−メチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、2,4−ジクロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン、1−ビニルナフタレン、ジビニルベンゼンなどの芳香族ビニル単量体、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、アルキルフェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、アルキルフェノールエチレンオキシドアクリレート、アルキルフェノールプロピレンオキシドアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、エチレングリコールアクリレートモノフタレート、エチレングリコールアクリレートヒドロキシエチルフタレート等のポリエステルアクリレート類、ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、アルキルフェノキシエチルメタクリレート、フェノキシジエチレングリコールメタクリレート、フェノキシボリエチレングリコールメタクリレート、アルキルフェノールエチレンオキシドメタクリレート、アルキルフェノールプロピレンオキシドメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルメタクリレート、エチレングリコールメタクリレートモノフタレート、エチレングリコールメタクリレートヒドロキシエチルフタレート等のポリエステルメタクリレート類、アリルグリシジルエーテル、グリシジルアクリレート、メチルグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、メチルグリシジルメタクリレート等のエポキシ化合物、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラプロピレングリコールジアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレー卜、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラプロピレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレー卜、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート等の多官能性単量体、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミド、N,N′−メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等の酸アミド化合物、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、脂肪酸ビニルエステルなどのビニル化合物、トリフルオロエチルアクリレート、ペンタデカフルオロオクチルアクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、ペンタデカフルオロオクチルメタクリレート等のフッ素原子含有単量体、γ−メタクリロイルプロパントリメトキシシラン、チッソ社製のサイラプレーンFMO711等の反応性シリコーン等のシリコーン化合物、アミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ブチルアミノエチルアクリレート等のエチレン系不飽和カルボン酸のアミノアルキルエステル、アミノエチルアクリルアミド、ジメチルアミノメチルメタクリルアミド、メチルアミノプロピルメタクリルアミド等のエチレン系不飽和カルボン酸のアミノアルキルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体等があげられ、好ましくは、スチレンが用いられる。
【0055】
これら(c)成分の単量体は、単独で用いてもよく、あるいは2種以上を併用することができる。そして、水性樹脂分散体(P)中に0〜78質量%の割合で配合されることが好ましい。すなわち、78質量%を超えて配合した場合には耐久性が劣り、好ましくないからである。なかでも、耐滑り性の点から、0〜50質量%の割合で共重合されることが好ましい。
【0056】
そして、上記(a)〜(c)成分を単量体単位として構成された水性樹脂分散体(P)は、上記トップコート組成物中において、塗布後の乾燥皮膜固形分中に5〜75質量%の範囲となるように配合される。なかでも、剥離性、分散性の点から、8〜50質量%の割合で配合することが、特に好ましい。
【0057】
上記水性樹脂分散体(P)は、以下に述べるような乳化剤、重合開始剤を使用して、広く知られている乳化重合法により製造することが好ましい。
【0058】
まず、乳化剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル流酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム、ジアルキルスルホ琥珀酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物等のアニオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン界面活性剤、スチレンスルホン酸ナトリウム、アルキルアリルスルホン酸ナトリウム、アルキルアリルスルホ琥珀酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルアリルグリセリンエーテルサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェノールアルキルグリセリンエーテルサルフェート等の反応性乳化剤、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、水溶性アクリル酸エステル共重合体、水溶性メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体およびそれらの塩、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体およびそれらの塩、ポリアクリルアミド共重合体、ポリメタクリルアミド共重合体等の高分子界面活性剤等が使用でき、これらは単独でまたは2種以上併用して使用することができる。乳化剤の望ましい使用量は、通常単量体100質量部当たり0.05〜5質量部である。乳化剤の使用量が0.05質量部未満では乳化性に乏しく、一方、5質量部を超えると耐水性に劣ることがある。
【0059】
また、重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、過酸化水素、ベンゾイルペルオキシド、t−ブチルヒドロキシペルオキシド等の過酸化物などが使用できる。これらは亜硫酸水素ナトリウム、ピロ重亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート等の還元剤を併用したレドックス系として使用してもよい。
【0060】
そして、重合反応の温度は、20〜95℃が好ましく、特に40〜90℃であることが好ましい。また、重合時間は1〜10時間であることが好ましい。
【0061】
上記水性樹脂分散体(P)は、耐粉化性の点から、共重合体のガラス転移温度(Tg)が、−30〜30℃、平均分子量(Mw)が50,000〜1,000,000に設定されたものでなければならない。すなわち、共重合体のガラス転移温度が−30℃未満の場合では、トップコート皮膜にべとつきを生じやすく、逆に30℃を超える場合には、耐粉化性が乏しくなる。また、平均分子量が50,000未満の場合では、耐粉化性に乏しく、1,000,000を超えると重合が困難になる場合があり、好ましくない。
【0062】
したがって、水性樹脂分散体(P)の設計にあたっては、前記(a)〜(c)成分の単量体単位のそれぞれ1種または2種以上を、得られる共重合体のガラス転移温度(Tg)が上記範囲内に設定されるよう選択して共重合させることが望ましい。本発明にて用いるガラス転移温度(Tg)は、次に示されるFoxの式(1)で求められる。
【0063】
【数1】
【0064】
上式において、ホモポリマー(単独重合体)のガラス転移温度(Tg)については、ポリマーハンドブックなどに記載されている値を用いることができる。例えば、ポリメタクリル酸メチル:105℃、ポリアクリル酸n−ブチル:−54℃、ポリアクリル酸2−エチルへキシル:−50℃、ポリアクリル酸シクロヘキシル:19℃、ポリメタクリル酸:228℃、ポリメタクリル酸シクロヘキシル:66℃、ポリアクリル酸:106℃、ポリスチレン:100℃、ポリα−メチルスチレン:168℃等である。
【0065】
上記水性樹脂分散体(P)は、例えば、固形分量10〜70質量%濃度の水性分散液として得られ、すでに述べたように、本発明のトップコート組成物中に、塗布後の乾燥皮膜中の含有割合が5〜75質量%の範囲となるよう配合される。
【0066】
また、アルカリ可溶性樹脂(R)と水性樹脂分散体(P)とは、剥離性、自己再分散性の点から、トップコート組成物中において、9:1〜4:6の割合(固形分比)で配合することが好ましい。すなわち、アルカリ可溶性樹脂(R)が上記範囲よりも多すぎると、耐水性、耐滑り性に劣り、逆に、水性樹脂分散体(P)が上記範囲よりも多すぎると、剥離性に劣るからである。
【0067】
また、本発明のトップコート組成物には、上記アルカリ可溶性樹脂(R)および水性樹脂分散体(P)以外の成分として、滑り調整剤、可塑剤、皮膜形成助剤、濡れ性向上剤、多価金属化合物等を配合することができる。
【0068】
上記滑り調整剤としては、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス、蜜蝋、ラノリン、鯨ロウ等の動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン等の鉱物系ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の石油系ワックス、フィッシャートロプシュワックス等の合成炭化水素系ワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス等の合成ワックス等をあげることができる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
なかでも、特に、耐ブラックヒールマーク(BHM)性、耐スカッフ(SM)性、耐滑り性の点から、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、酸化ポリプロピレンワックスを用いることが好ましい。
【0070】
上記滑り調整剤は、塗布後におけるトップコート組成物の乾燥皮膜中に5〜40質量%の範囲となるように配合することが好ましい。
【0071】
また、本発明のトップコート組成物に用いることのできる可塑剤としては、クエン酸アセチルトリブチル等のクエン酸エステル類、リン酸トリブチル、リン酸トリ2−エチルヘキシル、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレシル、リン酸トリブトキシエチル等のリン酸エステル類、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ2−エチルヘキシル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル等の脂肪族二塩基酸エステル類、ペンタジオールのイソブチルエステル誘導体、塩素化パラフィン等があげられる。
【0072】
さらに、本発明のトップコート組成物に用いることのできる皮膜形成助剤としては、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール等の多価アルコール類、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−メチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル等のグリコールエーテル類、α−アミノアルコール、β−アミノアルコール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノイソヘキシルアルコール、N,N,−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、N,N−ブチルエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、3−アミノ−1−プロパノール等のアミン化合物等があげられる。
【0073】
また、本発明のトップコート組成物に用いることのできる濡れ性向上剤としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、高級アルコール硫酸エステルナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステルナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル類、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ミリスチン酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、パーム核油脂肪酸ジエタノールアミドなどの脂肪酸アルカノールアミド類、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤、ラウリルベタインなどのアルキルベタイン型両性界面活性剤、ラウロイルアミドプロピルベタイン等のアミドベタイン型両性イオン界面活性剤、2−アルキル−N−カルボキシメチルイミダゾリニウムベタイン、2−アルキル−N−カルボキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のイミダゾリン型両性イオン界面活性剤、アルキルスルホベタイン型両性イオン界面活性剤、ヤシ脂肪酸アミドジメチルヒドロキシプロピルスルホベタインなどのアミドスルホベタイン型両性界面活性剤、N−アルキル−β−アミノプロピオン酸塩、N−アルキル−β−イミノジプロピオン酸塩、β−アラニン型両性界面活性剤等の両性界面活性剤があげられる。
【0074】
また、本発明のトップコート組成物に用いることのできる多価金属化合物としては、酸化亜鉛、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、炭酸亜鉛アンモニア、炭酸カルシウムエチレンジアミン−アンモニア、酢酸亜鉛アンモニア、アクリル酸亜鉛アンモニア、リンゴ酸亜鉛アンモニア、アラニンカルシウムアンモニア等の金属架橋を形成するための多価金属化合物(重金属等)等を用いることができる。なお、ここでいう多価金属とは、2価以上の金属であり、具体的には、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、マンガン、銅、カドミウム、鉛、ビスマス、バリウム、アンチモン、ジルコニウム等があげられ、多価金属化合物とは、これらの多価金属を含有する化合物である。
【0075】
また、本発明のトップコート組成物には、上記各成分以外に、適宜、アンモニア,アミン等のpH調整剤、防腐剤、消泡剤、抗菌剤、香料、染料、ウレタン樹脂、コロイダルシリカ、蛍光増白剤、紫外線吸収剤等を用いることもできる。
【0076】
本発明のトップコート組成物において、上記任意成分をも含めた塗布後の乾燥皮膜固形分量は、トップコート組成物全体中において3〜35質量%程度に設定されることが好ましい。
【0077】
そして、トップコート組成物は、例えば、水に、可塑剤、皮膜形成助剤、界面活性剤、溶剤を添加した後、合成ワックス、水性樹脂分散体、アルカリ可溶性樹脂等を混合することにより、好適に製造することができる。ただし、混合の順序は適宜変更できるものであり、上記順序に限定されるものではない。
【0078】
なお、本発明のトップコート組成物は、原液におけるpH(JIS−Z−8802:1984「pH測定方法」)が、25℃で7〜10に設定され、かつ、外観が透明〜乳白色であるものが好適である。
【0079】
本発明のトップコート組成物は、スプレー塗布、ローラー塗布、ブラシ塗布、刷毛塗り、モップによる塗布などの通常の方法により被塗物に塗布することができる。該トップコート組成物は、装置および塗布条件に応じて水、水混和性溶剤等の溶剤で希釈して使用することもできる。その他の塗布条件としての温度、湿度等の調節は、適宜乾燥機、送風機、エアコンディショナー等によって行うことができる。
【0080】
本発明のトップコート組成物を塗布し、常温(5〜35℃)で、より好適には20〜25℃前後で乾燥することにより可剥離性の保護膜が形成される。なお、保護膜の形成過程において水分の蒸発を促進させるために、送風,加熱又は両者の併用等の水分除去手段を適宜用いるようにしてもよい。これにより、保護膜の形成時間を調整することが容易となるが、加熱手段は、あくまでも水分の蒸発のためのものであって、保護膜形成のために加熱を必須構成要件とするものではない。
【0081】
このようにして得られた床構造体は、ベースコート皮膜とトップコート皮膜が積層形成されているため、光沢度、耐ブラックヒールマーク(BHM)性、耐スカッフ性に優れている。そして、トップコート皮膜が経時的に磨耗して美観等が低下した場合には、後述するように、上記トップコート皮膜のみを、その磨耗の程度に応じて洗浄剥離して、その上に新たなトップコート皮膜を再形成すれば足り、ベースコート皮膜の切削・研磨等の作業が不要となることから、床面の維持管理を、簡単かつ安全な作業で、低コストで行うことができるという利点を有する。
【0082】
特に、本発明において、トップコート皮膜形成のために、特定のアルカリ可溶性樹脂(R)と特定の水性樹脂分散体(P)とを含有する特殊なトップコート組成物を用いているため、上記洗浄剥離工程において、従来の溶剤を多量(15質量%以上)に含有する剥離剤や、医薬用外劇物に該当するアルカリ剤を含有する剥離剤(JIS K−3304「石けん試験方法」2.1(5)にしたがって測定される遊離アルカリが、水酸化ナトリウム換算で1.5質量%以下である剥離剤)を多量に用いずとも、JIS K−3304「石けん試験方法」2.1(5)にしたがって測定される遊離アルカリが、水酸化ナトリウム換算で0.5質量%以下である剥離剤を用いて容易に剥離洗浄できることから、廃水等の環境負荷や作業性を大幅に軽減することができる。
【0083】
つぎに、本発明の、床構造体の床面維持管理方法について詳細に説明する。
【0084】
すなわち、まず、床構造体のトップコート皮膜の摩耗に応じて、トップコート皮膜を剥離洗浄し、つぎに、上記トップコート組成物を再塗布してトップコート皮膜を再形成する。つまり、ベースコート組成物の皮膜上に、トップコート組成物の皮膜を施し、該トップコート組成物皮膜の摩耗に応じて、繰り返し、トップコート組成物皮膜を剥離洗浄し、トップコート組成物を再塗布・乾燥させてトップコート組成物皮膜を再形成させることを行う。
【0085】
このように、本発明の床面維持管理方法によれば、トップコート皮膜の剥離洗浄と再形成を繰り返すことにより、半永久的なベースコート皮膜を傷めることなく、経済的にも安価で、作業性・環境安全性に優れた床面の清浄・美観の維持管理を実現できる。
【0086】
上記床面維持管理方法において、トップコート皮膜の摩耗や汚れに応じた洗浄は、例えば、アルカリクリーナーを用いて、ベースコート皮膜を傷めることなく、トップコート皮膜のみを洗浄剥離することによって行われる。このとき、剥離洗浄廃液は、ウエットバキュームやフロアースクイジー等を用いて回収することが好適である。
【0087】
そして、剥離洗浄後、水道水によりすすぎを行い、すすぎ廃液は、バキュームやスクイジーを用いて回収する。また、床面は、拭きあげた後、乾燥させる。
【0088】
そして、上記床面に、モップやアプリケーター等を用いて、トップコート組成物を塗布する。塗布量は、トップコート皮膜の磨耗の程度によるが、通常、10〜25g/m2 に設定することが好適である。その後、床面を乾燥することにより、トップコート皮膜を再形成することができる。
【0089】
そして再び、トップコート皮膜に摩耗や汚れを認めた場合、上記一連の作業を繰り返すことにより、床面の清浄・美観を回復させることができる。
【0090】
なお、上記トップコート皮膜を剥離洗浄する工程においては、ポリッシャー、自動床用洗浄機を用いた機械洗浄であっても、モップ,ブラシ等を用いた手作業による洗浄であってもよいが、作業効率等から、ポリッシャー、自動床用洗浄機等を用いた機械洗浄であることが好ましい。
【0091】
特に、機械洗浄で行う場合には、ポリッシャー、自動床用洗浄機に装着されるフロアパッドとしては、白パッド(例えば、商品名:ホワイトスーパーポリッシュパッド/住友3M社製)、赤パッド(例えば、商品名:レッドバッファーパッド/住友3M社製)、青パッド(例えば、商品名:ブルークリーナーパッド/住友3M社製)、モッピングパッド(例えば、住友3M社製)、ヤーンパット(例えば、住友3M社製)等のワックスの軽い洗浄・つや出し作業、焼き付け作業用途で用いられる比較的柔らかなフロアパッドを用いることが好ましく、特に、白パッド、赤パッド、モッピングパッドのいずれかを用いることが好適である。
【0092】
一方、本発明の床面の清浄・美観の維持管理方法において、通常、ワックスの剥離作業用途で用いられる黒パッド(例えば、商品名:ハイプロパッド、ストリッピングパッド/住友3M社製)、茶パッド(例えば、商品名:ブラウンストリッパーパッド/住友3M社製)を用いた場合には、トップコート組成物の皮膜を剥離するのにとどまらず、ベースコート組成物の皮膜をも研磨・剥離してしまうために、該皮膜に傷が入ってしまうとともに、光沢度が著しく低下してしまい、傷ついた該皮膜の上にトップコート組成物の皮膜を形成しても、充分な光沢度や美観を回復することが困難となるおそれがある。
【0093】
また、上記剥離洗浄する工程において好適に用いることのできるアルカリクリーナーとしては、界面活性剤を主剤とする、商品名:無リン・フォワード(ジョンソン・プロフェッショナル社製)、商品名:フォワード・ノンリンス(ジョンソン・プロフェッショナル社製)、商品名:バンノークリーナー(ティーポール社製)、商品名:サニタリークリーナー(ティーポール社製)等があげられる。
【0094】
なお、従来の床用剥離剤を使用することもできる。例えば、水酸化アルカリ金属塩等のアルカリ剤および溶剤を主剤とする、商品名:ゲットオフ(ジョンソン・プロフェッショナル社製)、商品名:パワーゴー(ジョンソン・プロフェッショナル社製)、スーパーオールゴー(ジョンソン・プロフェッショナル社製)、ニュー・スーパーオールゴー(ジョンソン・プロフェッショナル社製)等があげられる。
【0095】
なお、床用剥離剤は、アルカリ剤や溶剤の配合量が多いため、通常の使用濃度で用いてしまうと、本発明のトップコート組成物の皮膜を剥離するにとどまらず、ベースコート組成物の皮膜にも、影響を与えてしまうおそれがあるため、その場合は、大幅に希釈して用いることが望ましい。言い換えれば、本発明のトップコート組成物は、その組成によっては、アルカリ剤や溶剤を多量に含有する従来の床用剥離剤を用いずとも、界面活性剤を主剤とするアルカリクリーナーで充分に所望の剥離洗浄をおこなうことができる。
【0096】
【実施例、比較例】
以下に、本発明の実施例および比較例を説明する。なお、以下の記載において「部」は質量部を意味し、「%」は質量%を意味する。もちろん、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0097】
<トップコート組成物>
(1)アルカリ可溶性樹脂(R)
まず、トップコート組成物に用いられるアルカリ可溶性樹脂(R)の単量体組成(部)を、後記の表1、表2に示す(R1〜R10)。
【0098】
(1−1)アルカリ可溶性樹脂(R)の調製
乳化重合または溶液重合により、表1、表2に示す単量体混合物を共重合させ、水−アンモニア水溶液で中和し、固形分20〜30%のアルカリ可溶性樹脂(R)の水溶液を得た。なお、各例における重合方法、ガラス転移温度(℃)、酸価、固形分(%)を、表1、表2に併せて示した。
【0099】
ただし、後記の表1、表2において、CHAはシクロヘキシルアクリレート、CHMAはシクロヘキシルメタクリレート、nBAはアクリル酸n−ブチル、2EHAはアクリル酸2−エチルヘキシル、AAはアクリル酸、MAAはメタクリル酸、MMAはメタクリル酸メチル、STはスチレン、AMSはα−メチルスチレン、Tgはガラス転移温度、Avは酸価、Mwは平均分子量、固形分はアルカリ可溶性樹脂(R)中における重合体の有効成分量をそれぞれ示す。
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
(2)水性樹脂分散体(P)
つぎに、上記アルカリ可溶性樹脂(R)とともに、トップコート組成物に用いられる水性樹脂分散体(P)の単量体組成(部)を、後記の表3〜表5に示す(P1〜12)。
【0103】
(2−1)水性樹脂分散体(P)の調製
攪拌機、還流冷却器、2個の滴下ロート、温度計、窒素導入管を備えた反応容器内に水60部およびラウリル硫酸ナトリウム0.5部を仕込み85℃に昇温した。そして、表3〜表5に示す単量体混合物に、ラウリル硫酸ナトリウム0.5部および水35部を加えて乳化させた。得られた単量体乳化液および5%過硫酸アンモニウム水溶液10部をそれぞれ別の滴下ロートにより3時間かけて連続的に反応容器内に滴下して乳化重合させた。滴下終了から1時間後に系を冷却して重合を終了させて、水性樹脂分散体(P)を得た。
【0104】
なお、各例におけるガラス転移温度(℃)と固形分(%)を、表3〜表5に併せて示した。
【0105】
なお、表3〜表5において、CHAはシクロヘキシルアクリレート、CHMAはシクロヘキシルメタクリレート、nBAはアクリル酸n−ブチル、2EHAはアクリル酸2−エチルヘキシル、AAはアクリル酸、MAAはメタクリル酸、MMAはメタクリル酸メチル、STはスチレン、AMSはα−メチルスチレン、Tgはガラス転移温度、固形分は水性樹脂分散体(P)中における重合体の有効成分量をそれぞれ示す。
【0106】
【表3】
【0107】
【表4】
【0108】
【表5】
【0109】
【実施例1〜20、参考例1〜7】
上記表1、表2のアルカリ可溶性樹脂(R1〜R10)と、表3〜表5の水性樹脂分散体(P1〜P12)を用い、後記の表6〜表11に示す組成により、実施例1〜20、参考例1〜7のトップコート組成物を調製した。ただし、これらの表において、各成分の組成を示す数字は、有り姿の質量%を示すものであり、各成分の詳細は以下に示すとおりである。
【0110】
滑り調整剤1 :ハイテックE−4000(東邦化学工業社製、ポリエチレンワックスエ マルション純分40%)
滑り調整剤2 :ハイテックP−5060S(東邦化学工業社製、ポリプロピレンワック スエマルション純分40%)
アミン類1 :トリエタノールアミン
アミン類2 :N−メチルジエタノールアミン
可塑剤 :トリブトキシエチルフォスフェート(大八化学工業社製)
皮膜形成助剤1:ジエチレングリコールモノエチルエーテル
皮膜形成助剤2:ジプロピレングリコールモノエチルエーテル
皮膜形成助剤3:エタノール
多価金属化合物:酸化亜鉛アンモニウム錯体水溶液(ZnO 12%)
消泡剤 :SE−21(WSC社製、純分17%)
防腐剤 :スラオフWB(武田薬品工業社製)
界面活性剤 :サンモリンOT−70(三洋化成工業社製、純分70%)と、S−10 0(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)を9:1で混合したも の。
【0111】
【表6】
【0112】
【表7】
【0113】
【表8】
【0114】
【表9】
【0115】
【表10】
【0116】
【表11】
【0117】
そして、得られた各種トップコート組成物について、耐滑り性、剥離性、環境安全性、皮膜のべとつき、耐水性、自己分散性、貯蔵安定性、耐ブラックヒールマーク(BHM)性、耐スカッフ(SM)性、光沢度の試験項目および総合評価について、以下の試験方法と判定基準により評価し、その結果を後記の表12〜表17に併せて示した。
【0118】
(1)耐滑り性
〔試験方法〕
コンポジションビニルタイル(東リ社製、ニューマチコV No.33)の床に、ベースコートとして紫外線硬化型塗料(ジョンソン・プロフェッショナル社製、試作品1)を40g/m2 の塗布量の割合で、塗布・硬化した後、トップコートとして供試トップコート組成物を15g/m2 の塗布量の割合で1回塗布し、常温にて一昼夜乾燥させた。そして、塗布3ヶ月後における、実歩行時の床面の滑り状態を、下記判断基準により評価した。
〔判定基準〕
○:滑り感はなく、歩行に何ら支障がない
×:滑り感があり、歩行に支障をきたすおそれがある
【0119】
(2)剥離性
〔試験方法〕
ホモジニアスビニルタイル(東リ社製、MSプレーン MS5626)の床に、ベースコートとして紫外線硬化型塗料(ジョンソン・プロフェッショナル社製、試作品1)を40g/m2 の塗布量の割合で、塗布・硬化した後、トップコートとして供試トップコート組成物を15g/m2 の塗布量の割合で1回塗布し、常温にて一昼夜乾燥させた。そして、アルカリクリーナーとして、無リンフォワード(ジョンソン・プロフェッショナル社製)の20倍希釈液、3Mハンドブラシ(白)(住友3M社製)を用いて剥離洗浄したときの剥離状態を、以下の判定基準に従って目視で判定した。
〔判定方法〕
○:完全に剥離できる
×:剥離残しがある
【0120】
(3)環境安全性
〔試験方法〕
剥離洗浄廃液のBODを測定し、以下の判定基準により判定した。なお、フロアーポリッシュ組成物(後述する比較例9、10)においては、床用剥離剤(商品名:ニュー・スーパーオールゴー、ジョンソン・プロフェッショナル社製)の5倍希釈溶液を用いている。
〔判定基準〕
○:10,000mg/kg未満
×:10,000mg/kg以上
【0121】
(4)皮膜のべとつき
〔試験方法〕
コンポジションビニルタイル(東リ社製、ニューマチコV No.33)の床に、ベースコートとして紫外線硬化型塗料(ジョンソン・プロフェッショナル社製、試作品1)を40g/m2 の塗布量の割合で、塗布・硬化した後、トップコートとして供試トップコート組成物を15g/m2 の塗布量の割合で1回塗布し、常温にて1時間乾燥させた。得られた皮膜を指で押しつけた後、持ち上げて、そのべとつき感を評価した。
〔判定基準〕
○:べとつかず、指に張りつき感がない
△:少しべとついて、指にわずかに張りつき感がある
×:べとつきがあり、指にはっきりとした張りつき感がある
【0122】
(5)耐水性
〔試験方法〕
コンポジションビニルタイル(東リ社製、ニューマチコV No.33)の床に、ベースコートとして紫外線硬化型塗料(ジョンソン・プロフェッショナル社製、試作品1)を40g/m2 の塗布量の割合で、塗布・硬化した後、トップコートとして供試トップコート組成物を15g/m2 の塗布量の割合で1回塗布し、常温にて一昼夜乾燥させた。そして、さらに一晩乾燥させた後、0.2mLの水滴を滴下し、さらに1時間静置したときのタイル表面の皮膜状態を評価した。
〔判定基準〕
◎:白化を認めない
○:わずかにスポット跡が残る
△:白化を認める
×:白化し、さらに皮膜が剥がれる
【0123】
(6)自己再分散性
〔試験方法〕
ホモジニアスビニルタイル(東リ社製、MSプレーン MS5626)の床に、ベースコートとして紫外線硬化型塗料(ジョンソン・プロフェッショナル社製、試作品1)を40g/m2 の塗布量の割合で、塗布・硬化した後、トップコートとして供試トップコート組成物を15g/m2 の塗布量の割合で1回塗布し、常温にて一昼夜乾燥させた。そして、3日後、供試トップコート組成物を床面に滴下し、布製モップ(商品名:Jコーター、ジョンソン・プロフェッショナル社製)で古い皮膜を溶かしながら塗り重ねをし、古い皮膜の溶け具合を評価した。
〔判定基準〕
◎:極めて早く溶ける
○:溶ける
△:少し溶ける
×:溶けない
【0124】
(7)貯蔵安定性
〔試験方法〕
JISK3920(フロアーポリッシュ試験方法)に準拠し、供試トップコート組成物を容器(ポリエチレン製、300ml容量)に入れて密栓し、50℃に保った恒温槽(いすず製作所社製、型式;KAX−730)で14日間保持する。その後の試料の状態をゲル化、相分離、固形分の沈殿等の有無を以下の判定基準に従って、目視で判定した。
〔判定基準〕
○:問題が見られない
×:問題がみられる
【0125】
(8)耐ブラックヒールマーク(BHM)性
〔試験方法〕
JISK3920(フロアーポリッシュ試験方法)に準拠し、ホモジニアスビニルタイル(東リ社製、マチコSプレーンNo. 5626)に、ベースコートとして紫外線硬化型塗料(ジョンソン・プロフェッショナル社製、試作品1)を40g/m2 の塗布量の割合で、塗布・硬化した後、トップコートとして供試トップコート組成物を15g/m2 の塗布量の割合で1回塗布し、常温にて一昼夜乾燥させたものをヒールマーク試験機にて試験し、目視にて10段階で判定した。
〔判定基準〕
10:極めて高い耐BHM性を示す。
6〜9:適度な耐BHM性を有し、実用性を備えている。
2〜5:耐BHM性に欠け、実用性にも欠ける。
1:極めて耐BHM性に欠ける。
【0126】
(9)耐スカッフ(SM)性
〔試験方法〕
JISK3920(フロアーポリッシュ試験方法)に準拠し、ホモジニアスビニルタイル(東リ社製、マチコSプレーンNo. 5626)に、ベースコートとして紫外線硬化型塗料(ジョンソン・プロフェッショナル社製、試作品1)を40g/m2 の塗布量の割合で、塗布・硬化した後、トップコートとして供試トップコート組成物を15g/m2 の塗布量の割合で1回塗布し、常温にて一昼夜乾燥させたものをヒールマーク試験機にて試験し、目視にて10段階で判定した。
〔判定基準〕
10:極めて高い耐スカッフ性を示す。
6〜9:適度な耐スカッフ性を有し、実用性を備えている。
2〜5:耐スカッフ性に欠け、実用性にも欠ける。
1:極めて耐スカッフ性に欠ける。
【0127】
(10)光沢度
〔試験方法〕
JISK3920(フロアーポリッシュ試験方法)に準拠し、ホモジニアスビニルタイル(東リ社製、商品名:マチコSプレーンNo. 5626)に、ベースコートとして紫外線硬化型塗料(ジョンソン・プロフェッショナル社製、試作品1)を40g/m2 の塗布量の割合で、塗布・硬化した後、トップコートとして供試トップコート組成物を15g/m2 の塗布量の割合で1回塗布後、1時間乾燥させたものの光沢度を、鏡面光沢度計(日本電色工業社製、型式:PG−1M)を用いて測定した。
【0128】
(11)総合評価
上記(1)〜(10)の評価項目における結果をもとに、トップコート組成物の実用性について、下記判定基準により、総合的に判断した。
〔判定基準〕
◎:極めて実用性に優れる
○:実用性を有している
×:実用性に乏しい
【0129】
【表12】
【0130】
【表13】
【0131】
【表14】
【0132】
【表15】
【0133】
【表16】
【0134】
【表17】
【0135】
上記実施例1〜20の評価結果から、耐滑り性、剥離性、環境安全性、皮膜のべとつき、耐水性、自己再分散性、貯蔵安定性、耐ブラックヒールマーク(BHM)性、耐スカッフ(SM)性、光沢度の試験項目および総合評価においても良好な結果であることがわかる。また、ベースコート組成物に、シリコーン塗料、ウレタン塗料、アクリル塗料を使った場合においても、同様の結果が得られた。
【0136】
【比較例1、2】
比較例1、比較例2は、本発明のトップコート組成物の替わりに、従来の水性フロアーポリッシュ組成物を用いた場合の例である。比較例1では、商品名:スターダム(ジョンソン・プロフェッショナル社製)を、比較例2では、商品名:ステイタス(ジョンソン・プロフェッショナル社製)を用いた場合の例である。これらについても、上記と同様にして評価を行い、その結果を下記の表18に示した。表18により、比較例1、2のトップコート組成物は、剥離性、環境安全性に乏しく、総合評価においても、本発明の実施例品には、劣ることがわかる。
【0137】
【表18】
【0138】
【実施例21、22】
上記実施例18のトップコート組成物を用い、ベースコートに紫外線硬化塗料を用い、以下の一連の手順(1)〜(9)により、白パッドを用いて剥離洗浄した場合を実施例21、赤パッドを用いた場合を実施例22とする。
(1)アルカリクリーナーとして、商品名:無リンフォワード(ジョンソン・プロフェッショナル社製)を用いて、トップコート被膜を剥離洗浄する。
(2)剥離洗浄には、作業効率の点から、自動床用洗浄機(JA−17、ジョンソン・プロフェッショナル社製)を用いる。
(3)このとき、自動床用洗浄機に装着されるフロアパッドは、白パッドを用いて剥離洗浄した場合を実施例21、赤パッドを用いた場合を実施例22とする。
(4)剥離洗浄廃液は、ウエットバキュームを用いて回収する。
(5)剥離洗浄後、水道水によりすすぎを行なう。
(6)すすぎ廃液は、ウエットバキュームを用いて回収する。
(7)床面を拭きあげた後、乾燥させる。
(8)モップを用いて、トップコート組成物18を15g/m2 の割合の量で塗布する。(9)床面を乾燥させる。
【0139】
そして、トップコート皮膜に摩耗や汚れを認める毎に、上記(1)〜(9)の作業をおこなって、床面の清浄・美観を回復させることを6ヶ月間行った結果、良好な床面の清浄・美観を維持することができた。光沢度にあっては、常に90以上を維持できた。
【0140】
【実施例23、24】
上記実施例18のトップコート組成物を用い、ベースコートにシリコーン塗料を用い、
上記一連の手順(1)〜(9)により、白パッドを用いて剥離洗浄した場合を実施例23、赤パッドを用いた場合を実施例24とする。
【0141】
そして、トップコート皮膜に摩耗や汚れを認める毎に、上記(1)〜(9)の作業をおこなって、床面の清浄・美観を回復させることを6ヶ月間行った結果、良好な床面の清浄・美観を維持することができた。光沢度にあっては、常に80以上を維持できた。
【0142】
なお、上記実施例21および実施例23における白パッドに替えて、茶パッドを用いて剥離洗浄したところ、ベースコート皮膜を侵してしまい、ベースコート皮膜に傷が入ってしまうとともに、光沢度は70以下に低下してしまった。
【0143】
【発明の効果】
以上のように、本発明のトップコート組成物によれば、後述する、優れた床面維持管理方法を実現しうる床構造体を形成することができる。そして、従来の溶剤を多量(15質量%以上)に含有する剥離剤や、医薬用外劇物に該当するアルカリ剤を含有する剥離剤を多量に用いずとも、通常のフロアーポリッシュ組成物に比べて、低いアルカリ度の洗浄剤水溶液でも、容易に剥離洗浄できることから、廃水等の環境負荷や作業性を大幅に軽減することができる。
【0144】
また、本発明の床構造体は、ベースコート皮膜と、上記特殊なトップコート組成物を用いたトップコート皮膜が積層形成されているため、光沢度、耐ブラックヒールマーク(BHM)性、耐スカッフ(SM)性に優れている。そして、トップコート皮膜が経時的に磨耗して美観等が低下した場合には、上記トップコート皮膜のみを、その磨耗の程度に応じて洗浄剥離して、その上に新たなトップコート皮膜を再形成すれば足り、ベースコート皮膜の切削・研磨等の作業が不要となることから、床面の維持管理を、簡単かつ安全な作業で、低コストで行うことができるという利点を有する。
【0145】
そして、本発明の床面維持管理方法によれば、半永久的に光沢を備えたベースシート皮膜を、何ら傷つけることなく、トップコート皮膜のみを、その磨耗の程度に応じて洗浄剥離して、その上に新たなトップコート皮膜を再形成すれば足りるため、廃水等の環境負荷や作業労力を軽減することができる。また、特殊な装置を必要とせず、簡便に床面の清浄・美観を維持管理することができる。
Claims (12)
- 床材上に、紫外線硬化型塗料、シリコーン塗料、ウレタン塗料およびアクリル塗料から選ばれる少なくとも一つの塗料を塗布・乾燥してなるベースコート皮膜が形成され、さらにその上に、トップコート組成物を塗布・乾燥してなるトップコート皮膜が形成された床構造体に用いられるトップコート組成物であって、下記のアルカリ可溶性樹脂(R)が、塗布後のトップコート組成物乾燥皮膜中に25〜95質量%含有されるよう配合されているとともに、下記の水性樹脂分散体(P)が、塗布後のトップコート組成物乾燥皮膜中に5〜75質量%含有されるよう配合されており、JIS K−3304「石けん試験方法」2.1(5)にしたがって測定される遊離アルカリが、水酸化ナトリウム換算で1.5質量%以下である水溶液に可溶化および/または分散する皮膜を形成する物性を有していることを特徴とするトップコート組成物。
(R)ガラス転移温度(Tg)70〜140℃、酸価(Av)50〜300、および平均分子量(Mw)4,000〜45,000であるアルカリ可溶性樹脂。
(P)ガラス転移温度(Tg)−30〜30℃、平均分子量(Mw)50,000〜1,000,000である水性樹脂分散体。 - 上記アルカリ可溶性樹脂(R)が、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−αメチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−αメチルスチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−αメチルスチレン−アクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、スチレン−αメチルスチレン−メタクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、スチレン−αメチルスチレン−メタクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体、アクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸エステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ジイソブチレン−無水マレイン酸共重合体、ロジン変性マレイン酸、シェラックから選ばれる少なくとも一種を含有するものである請求項1記載のトップコート組成物。
- 上記アルカリ可溶性樹脂(R)が、アクリル酸およびメタクリル酸の少なくとも一方と共重合可能な単量体との共重合体からなるものである請求項1または2記載のトップコート組成物。
- 上記水性樹脂分散体(P)における各単量体の割合が、全単量体の合計量を基準として下記の割合に設定されている請求項1記載のトップコート組成物。
(a)α,β−カルボン酸単量体:2〜40質量%。
(b)アクリル酸アルキルエステル単量体およびメタクリル酸アルキルエステル単量体の少なくとも一方:20〜90質量%。
(c)上記(a)および(b)単量体と共重合可能な単量体:0〜78質量%。 - ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、酸化ポリプロピレンワックスから選ばれる少なくとも一種の滑り調整剤が、塗布後のトップコート組成物乾燥皮膜中に5〜40質量%含有されるよう配合されている請求項1〜4のいずれか一項に記載のトップコート組成物。
- 原液におけるpH(JIS−Z−8802:1984「pH測定方法」)が、25℃で7〜10に設定され、かつ、外観が透明〜乳白色である請求項1〜5のいずれか一項に記載のトップコート組成物。
- 床材上に、紫外線硬化型塗料、シリコーン塗料、ウレタン塗料およびアクリル塗料から選ばれる少なくとも一つの塗料を塗布・乾燥してなるベースコート皮膜が形成され、さらにその上に、上記請求項1〜6のいずれか一項に記載のトップコート組成物を塗布・乾燥してなるトップコート皮膜が形成されていることを特徴とする床構造体。
- 請求項7記載の床構造体の床面を維持管理する方法であって、上記トップコート皮膜からなる床表面の摩耗に応じて、(イ)JIS K−3304「石けん試験方法」2.1(5)にしたがって測定される遊離アルカリが、水酸化ナトリウム換算で1.5質量%以下である洗浄剤水溶液で、摩耗したトップコート皮膜を洗浄剥離する工程と、(ロ)トップコート組成物を塗布・乾燥してトップコート皮膜を再形成する工程を含むことを特徴とする床面維持管理方法。
- 上記トップコート皮膜を剥離洗浄する工程(イ)において用いられる洗浄剤水溶液が、JIS K−3304「石けん試験方法」2.1(5)にしたがって測定される遊離アルカリが、水酸化ナトリウム換算で0.5質量%以下である請求項8記載の床面維持管理方法。
- 上記トップコート皮膜を剥離洗浄する工程(イ)において、ポリッシャーもしくは自動床用洗浄機を用いるようにした請求項8または9記載の床面維持管理方法。
- 上記ポリッシャーもしくは自動床用洗浄機に装着されるフロアパッドが、白パッド、赤パッドおよびモッピングパッドのいずれかである請求項10記載の床面維持管理方法。
- 上記トップコート皮膜を剥離洗浄する工程(イ)において用いられる洗浄剤水溶液が、アルカリクリーナーである請求項8〜11のいずれか一項に記載の床面維持管理方法。
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