図7は本発明の参考形態1の概略を示す。この参考形態1は、定着装置を有する電子写真方式の画像形成装置の一参考形態である。回転体からなる像担持体は、例えばドラム形状の感光体1が用いられ、図示しない駆動部により回転駆動される。この感光体1の周りには、矢印で示す回転方向へ順次に、帯電手段としての帯電装置2、露光手段の一部を構成するミラー3、現像手段として現像装置4、シート状被加熱体である記録媒体としての転写紙P(OHP紙などでもよい)に感光体1上の未定着トナー像を転写する転写手段としての転写装置5、クリーニング手段としてのクリーニング装置6などが配置されている。
ここに、帯電装置2は帯電ローラからなり、現像装置4は現像ローラ4aを有する現像装置からなる。クリーニング装置6は感光体1の外周面に摺接するブレード6aを有する。
感光体1は帯電装置2と現像ローラ4aとの間で露光手段によりミラー3を介して露光光Lbで走査されるようになっており、感光体1上の露光光Lbが照射される位置を露光部7と呼ぶ。転写装置5は感光体1の下面と対向しており、感光体1上の転写装置5と対向する位置を転写部8と呼ぶ。
転写部8より転写紙搬送方向上流側の位置には一対のレジストローラ9が設けられ、このレジストローラ9に向けて図示しない給紙トレイから転写紙Pが給紙コロ10により送り出される。この転写紙Pは図示しない搬送ガイドにより案内されてレジストローラ9で一旦停止する。転写部8より転写紙搬送方向下流側の位置には加熱ローラ11を有する加熱装置としての定着装置12が配置されている。
この画像形成装置においては、次のように画像形成が行われる。使用時には感光体1が回転を始め、この感光体1の回転中に感光体1が暗中において帯電装置2により均一に帯電され、露光手段によりミラー3を介して露光光Lbが感光体1の露光部7に照射されて感光体1が走査されることにより、形成すべき画像に対応した静電潜像が形成される。この感光体1上の静電潜像は、感光体1の回転により現像装置4のところに移動してきて、ここで現像装置4によりトナーで可視像化されてトナー像が形成される。
一方、給紙コロ10により給紙トレイから転写紙Pの給送が開始され、この転写紙Pは破線で示す搬送経路を経て一対のレジストローラ9の位置で一旦停止して感光体1上のトナー像と転写部8で合致するような送り出しのタイミングを待つ。この送り出しのタイミングが到来すると、レジストローラ9の位置で停止していた転写紙Pはレジストローラ9により送り出されて転写部8に向けて搬送される。
感光体1上のトナー像と転写紙Pとは転写部8で合致し、転写装置5による電界により感光体1上のトナー像が転写紙Pに転写される。従って、感光体1、帯電装置2、露光手段、現像手段4、転写装置5は、転写紙P上に未定着のトナー像からなる未定着画像を形成する像形成手段を構成する。転写紙Pは、転写されたトナー像を担持し、定着装置12に向けて搬送される。この転写紙Pは、定着装置12を通過する間にトナー像が定着され、図示しない排紙部に排紙される。
また、転写部8で転写されずに感光体1上に残った残留トナーは、感光体1の回転と共にクリーニング装置6に至り、このクリーニング装置6を通過する間にブレード6aで清掃されて次の画像形成に備える。
図8は上記定着装置12の詳細な構成を示す。定着装置12は、加熱部としての定着ローラ11と、この定着ローラ11に圧接される加圧部材としての加圧ローラ13とを有する。定着ローラ11及び加圧ローラ13は図示しない駆動部により回転駆動され、定着ローラ11は主発熱部材11a、補助発熱部材11bの発熱により加熱されて温度が上がる。この発熱部材(発熱体ともいう)11a、11bは、ハロゲンヒータが用いられているが、特にハロゲンヒータに限られず、その他抵抗発熱体などの発熱部材を用いてもかまわない。
未定着のトナー像tを担持する転写紙Pは、定着ローラ11及び加圧ローラ13のニップ部を通過する間に定着ローラ11及び加圧ローラ13による加熱及び加圧によりトナー像tが定着される。
図1及び図2は上記定着装置12の回路構成を示す。図1及び図2において、14は主電源、15は補助電源、16は充電器、17は補助電源15の充放電を切替える充放電切替手段としてのスイッチ、18は定着ローラ11の温度(表面温度)を検知する温度検知手段としての温度センサ、19は構成切替手段、20は発熱部材11aの通電制御を行う通電制御用スイッチである。加熱部としての定着ローラ11は内部に発熱部材11a、11bを有しており、発熱部材11aは主電源14から通電制御用スイッチ20を介して供給される電力により発熱して定着ローラ11を加熱する。
主電源14は、当該画像形成装置の設置場所に備えられているコンセントなどに接続されることで商用電源からの交流電力を出力するものであり、定着ローラ11に応じた電圧の調整及び交流から直流への整流などを行う機能を有していてもよい。補助電源15は、充放電可能な装置であり、本参考形態では大容量コンデンサである電気二重層キャパシタを用いている。コンデンサは、二次電池と異なり化学反応を伴わないために以下のような優れた特徴(1)(2)を有する。
(1)充電時間が短い。:
二次電池として一般的なニッケル−カドミウム電池を用いた補助電源では、急速充電を行っても充電に数時間の時間を要するため、一日の大電力供給可能回数が数時間おきに数回しか実現できず、実用的ではなかった。これに対して、コンデンサを用いた補助電源では、数十秒〜数分程度の急速な充電が可能であるため、補助電源を用いた加熱の回数を実用的な回数にまで増やすことができる。このため、本参考形態のようにコンデンサを補助電源として用いた場合には、一般的なニッケル−カドミウム電池を補助電源として用いた場合に比べて、同一時間内での補助電源を用いた定着ローラの加熱の回数が増える。
(2)寿命が長い。:
ニッケル−カドミウム電池は、充放電の繰り返し回数が500から1000回であるため、加熱用補助電源としては寿命が短く、交換の手間やコストが問題となる。これに対して、コンデンサを用いた補助電源は、1万回以上のほぼ永久的な寿命を有し、繰り返しの充放電による劣化も少ない。従って、非加熱動作(待機)と加熱動作を繰り返す加熱装置や画像形成装置に特に有利である。また、鉛蓄電池のように液交換や補充なども必要としないため、メンテナンスがほとんどいらない。
(3)安全性が高い。:
二次電池は、化学反応を利用しているため、最大容量まで充電した後、放電の必要が無い場合、充電回路に接続し続けると、化学反応によるガスなどにより容器が膨張して破裂するなどの危険がある。これに対し、キャパシタを用いた補助電源は化学反応ではなく物理現象を利用しているので、ガスの発生などは無く安全である。
近年、コンデンサにも多量の電気エネルギーを蓄えられるものが開発されてきており、コンデンサの電気自動車などへの採用も検討されている。例えば、日本ケミコン(株)の開発した電気二重層キャパシタ等は、2000F程度の静電容量を有しており、数秒から数十秒の電力供給に十分な容量を備えている。また、NECではハイパーキャパシタという商品名で80F程度のコンデンサが実現されており、このコンデンサは10A程度の電流を数十秒程度の時間供給することが可能である。
本参考形態では、定着ローラ11の発熱部材11a、11bに対する電力供給については、主電源14から通電制御用スイッチ20を介して発熱部材11aに電力が供給されるとともに、発熱部材11bに対しても補助電源15からスイッチ17を介して電力を供給することが可能である。これにより、主電源14及び補助電源15の両方からの電力を定着ローラ11の加熱に利用することで、数秒から数十秒程度の短い所定時間の間だけでも主電源14による最大供給電力を上回る大量の電力を定着ローラ11に供給できる。
コンデンサからなる補助電源15が十分に充電されていない場合には、比較的電力を消費しない待機時などに図示しない制御手段によりスイッチ17が充電器16側に切替えられ、充電器16が主電源14からの交流電力を直流電力に変換してスイッチ17を介して補助電源15に印加することにより、補助電源15が充電される。定着ローラ11の温度を室温から作動温度(定着可能な温度)まで急激に上昇させたい立ち上がり時など、定着ローラ11が多量の電力を必要とする時には、制御手段によりスイッチ17が発熱部材11b側に切替えられて補助電源15からスイッチ17を介して発熱部材11bへ電力が供給される。
これにより、定着ローラ11が多量の電力を必要とする時には、主電源14及び補助電源15からの電力を共に利用して定着ローラ11の発熱部材11a、11bに多量のエネルギーを供給することで短時間に定着ローラ11の温度を上昇させることができ、補助電源15としてコンデンサを用いたことにより、二次電池では得られなかった効果を得ることができる。
図示しない制御手段は、温度センサ18からの検知信号に基づいて、定着ローラ11の表面温度が定着可能な設定温度以下の時には通電制御用スイッチ20をオンさせて主電源14から定着ローラ11の発熱部材11aへ電力を供給させるが、定着ローラ11の表面温度が定着可能な設定温度を超えた時には通電制御用スイッチ20をオフさせて主電源14から定着ローラ11の発熱部材11aへの電力供給をオフさせることで、定着ローラ11の表面温度を一定の温度に制御する。
本参考形態では、補助電源15は少なくとも2つ以上のキャパシタセル15a、15bからなり、この複数のキャパシタセル15a、15bのつなぎ方を電力供給時に変えることが可能である。また、複数のキャパシタセル15a、15bからなる補助電源15の構成は少なくとも放電時に変更することが可能である。構成切替手段19は、温度センサ18からの検知信号に基づいて、定着ローラ11の温度が高くなるに従って発熱部材11a、11bへの供給電力が低くなるように切替える。
例えば、構成切替手段19は、定着ローラ11の温度が低くて所定の温度に達しない初期加熱時のような状態では、図1に示すようにキャパシタセル15a、15bを直列につないで発熱部材11bへの印加電圧を高電圧とし、発熱部材11bに対して大電力を供給させる。
その後、構成切替手段19は、定着ローラ11の温度が高くなって所定の温度以上になったときには、図2に示すようにキャパシタセル15a、15bを並列につないで発熱部材11bへの印加電圧を図4に示すように下げ、発熱部材11bに対する電力供給を小さくする。これにより、主電源14及び補助電源15から定着ローラ11の発熱部材11a、11bへの電力供給のオン/オフ制御でも定着ローラ11の温度変化が緩やかになるため、定着ローラ11の時間的な温度変動が小さくなり、転写紙P上に形成した画像の加熱ムラが小さくなって高品質な画像形成が可能になる。
なお、キャパシタセル15a、15bのつなぎ方としては、図1に示すようにキャパシタセル15a、15bを直列につながずに図3に示すように一部のキャパシタセル15aだけをスイッチ17を介して発熱部材11bにつなぐようにしても良いが、発熱部材11bに供給できるエネルギーが補助電源15の保持エネルギーの一部であること及び、充電時のキャパシタセル15a、15b間のバランスをとりにくいことから、図1に示すようにキャパシタセル15a、15bを直列につないで発熱部材11bに電力を供給することが望ましい。
この参考形態1によれば、発熱部材11a、11bの発熱により温度が上がる加熱部としての定着ローラ11と、商用電源が用いられて発熱部材11aに電力を供給する主電源14と、商用電源より充電され発熱部材11bに電力を供給する補助電源15として用いられる複数のセル15a、15bから構成される大容量キャパシタとを有する加熱装置において、複数のセル15a、15bの接続を少なくとも放電時に可変する構成としたので、発熱部材11bに低電圧で電力を供給することにより加熱部の温度ムラの発生を低減することができる。つまり、加熱部の温度が低いときに高電圧で大電力を供給すると、加熱部の温度ムラが大きくなるが、発熱部材に低電圧で電力を供給することにより加熱部の温度ムラの発生を低減することができ、加熱部の温度変動を小さくすることができる。
また、参考形態1によれば、複数のセル15a、15bを並列と直列に切り替える構成としたので、キャパシタの保持エネルギーをできるだけ多く利用することができる。
また、参考形態1によれば、当該装置の状況を検知する検知手段(温度センサ18)を有し、この検知手段の検知情報により複数のセル15a、15bの接続を切り替えるので、温度変動を小さくでき、立ち上がり時間を短くすることができる。
また、参考形態1によれば、上記検知手段として加熱部11の温度を検知する温度検知手段としての温度センサ18を用いたので、温度変動を小さくでき、立ち上がり時間を短くすることができる。
また、参考形態1によれば、加熱部11が所定の温度以上の時に複数のセル15a、15bを並列に接続して該複数のセル15a、15bから加熱部11に電力を供給するので、加熱部の温度変動を小さくすることができる。
また、参考形態1によれば、加熱部11が所定の温度に達しない時に複数のセル15a、15bを直列に接続して該セル15a、15bから加熱部11に電力を供給するので、温度上昇を速くでき、温度変動を小さくできる。
図5は本発明の参考形態2におけるキャパシタセルの各接続状態を示す。この参考形態2では、上記参考形態1において、補助電源15は複数のキャパシタセル15a〜15fからなる大容量の電気二重層キャパシタが用いられている。1つのキャパシタセルの電圧をVとすると、図5(a)に示すように3つずつのキャパシタセル15a〜15c、15d〜5fをそれぞれ直列に接続したものを並列に接続した場合には補助電源15の出力電圧は3Vとなる。
また、図5(b)に示すように2つずつのキャパシタセル15a,15b、15c,15d、15e,5fをそれぞれ直列に接続したものを並列に接続した場合には補助電源15の出力電圧は2Vとなり、図5(c)に示すように各キャパシタセル15a〜5fを並列に接続した場合には補助電源15の出力電圧は1Vとなる。
構成切替手段19は、温度センサ18からの検知信号に基づいて、定着ローラ11の温度に応じてキャパシタセル15a〜5fのつなぎ方を切替える。なお、構成切替手段19は、キャパシタセル15a〜15fのつなぎ方を図5(a)〜図5(c)の全ての構成に切替える必要はなく、例えば図5(a)(b)の構成に切替えるだけでもよい。
発熱部材11a、11bには、供給電力が余りに低いと発熱しなくなる最低発熱電圧がある。このため、キャパシタセル15a〜5fのつなぎ方を図1、図2に示すように単純に並列接続の列数と、直列接続の個数とを変えると、発熱部材11a、11bが低電力供給時に発熱しないことがある。この場合には、構成切替手段19は、温度センサ18からの検知信号に基づいて、定着ローラ11の温度に応じて(定着ローラ11の温度が所定の温度に達したか否かにより)キャパシタセル15a〜5fのつなぎ方を図5(a)の構成と図5(b)の構成に切替えて(定着ローラ11の温度が所定の温度に達しない場合にはキャパシタセル15a〜5fのつなぎ方を図5(a)の構成に切替え、定着ローラ11の温度が所定の温度以上になった場合にはキャパシタセル15a〜5fのつなぎ方を図5(b)の構成に切替えて)発熱部材11a、11bへの出力電圧を3V、2Vというやや高めの電圧(変化が小さい電圧)とすることにより、発熱部材11a、11bを発熱させながら定着ローラ11の温度変化のムラを小さくできる画像形成装置を実現する。
この参考形態2によれば、複数のセル15a〜5fの並列接続の列数を可変にして複数のセル15a〜5fの接続を可変する構成としたので、加熱部の温度変動を小さくすることができる。
図6は本発明の参考形態3における定着装置の回路構成を示す。この参考形態3では、上記参考形態1において、当該画像形成装置の制御部は連続画像形成枚数を計数してその連続画像形成枚数情報を保持しているが、この連続画像形成枚数情報が構成切替手段19に送られる。構成切替手段19は、温度センサ18からの検知情報の代りに上記制御部からの連続画像形成枚数情報が入力され、キャパシタセル15a、15bのつなぎ方を連続画像形成枚数情報に応じて変えて発熱部材11a、11bへの供給電力を適切に制御する。
すなわち、定着ローラ11の温度は連続画像形成枚数が増えるに従って低下していくため、構成切替手段19は、連続画像形成枚数が増えるに従って発熱部材11bへの供給電力が高くなるようにキャパシタセル15a、15bのつなぎ方を切替える。例えば、構成切替手段19は、連続画像形成枚数が所定の枚数に達しない場合にはキャパシタセル15a、15bのつなぎ方を図2に示すように切替え、連続画像形成枚数が所定の枚数以上になった場合にはキャパシタセル15a、15bのつなぎ方を図1に示すように切替える。
この参考形態3によれば、被加熱体である転写紙の連続加熱枚数情報(ここでは連続画像形成枚数情報)を用いてキャパシタセルのつなぎ方を切替えるので、加熱部の温度変動を小さくすることができる。
また、参考形態1乃至参考形態3によれば、被加熱体としての転写紙P上に画像を形成する像形成手段(感光体1、帯電装置2、露光手段、現像手段4、転写装置5)と、転写紙P上の画像を加熱する像加熱手段とを有する画像形成装置において、前記像加熱手段として上記加熱装置12を備えたので、画像のムラをなくすことができ、出力品質を高くできる。
また、参考形態1乃至参考形態3によれば、被加熱体としての転写紙P上に未定着画像を形成する像形成手段(感光体1、帯電装置2、露光手段、現像手段4、転写装置5)と、転写紙P上の未定着画像を加熱して転写紙Pに定着させる定着手段とを有する画像形成装置において、定着手段として上記定着装置12を備えたので、画像のムラをなくすことができ、出力品質を高くできる。
図9は本発明の参考形態4における加熱装置を示す。この参考形態4では、上記参考形態1において、定着ローラ11の代りに定着ローラ21が用いられ、この定着ローラ21は芯金上に弾性層及び離型層が順次に形成されて3層構造に構成される。
図10は参考形態4における定着装置12の回路構成を示す。主電源14から発熱部材14aへの通電を制御する制御手段としての制御部22は、通電制御用スイッチ20及びはCPUなどの制御装置からなり、温度センサ18からの検知信号に基づいて、定着ローラ21の表面温度が設定温度以下の時には通電制御用スイッチ20をオンさせて主電源14から定着ローラ21の発熱部材11aへ電力を供給させるが、定着ローラ21の表面温度が設定温度を超えた時には通電制御用スイッチ20をオフさせて主電源14から定着ローラ21の発熱部材11aへの電力供給をオフさせることで、定着ローラ21の表面温度を一定の温度に制御する。
補助電源15の充放電を切替える充放電切替手段としての充放電切替部23は、補助電源15が十分に充電されていない場合には比較的電力を消費しない待機時などにスイッチ17を充電器16側に切替え、充電器16がスイッチ17を介して補助電源15を充電する。また、充放電切替部23は、定着ローラ21の温度を室温から作動温度(定着可能な温度)まで急激に上昇させたい立ち上がり時など、定着ローラ21が多量の電力を必要とする時には、スイッチ17を発熱部材11b側に切替えて補助電源15からスイッチ17を介して発熱部材11bへ電力を供給させる。
この参考形態4では、定着ローラ21の芯金に弾性層を被覆したことにより、この弾性層の伸縮性により定着ローラ21と転写紙P上のトナー層との密着性を高くすることができ、光沢ムラの無い優れた画質を得ることができる。また、定着ローラ21の弾性層の熱伝導性が悪いことにより、主電源14から発熱部材11aへの電力供給のみでは連続通紙時に定着ローラ21の表面温度の落ち込みが生じた場合でも、補助電源15から発熱部材11bへ電力を供給することにより、プロセス速度を低下させることなく画像定着性を良好に保つことができる。
定着ローラ21の芯金としては、鉄、アルミニウム、ステンレスなどの熱伝導性の高い金属を用いることができる。
定着ローラ21の弾性層としては、耐熱性の高い弾性体であればよく、シリコーンゴム、フッ素ゴム等を挙げることができる。この中でも特に、耐熱性と耐久性の点からシリコーンゴムが定着ローラ21の弾性層として好ましい。定着ローラ21の弾性層の厚みとしては、用いる材料のゴム硬度にもよるが、0.1〜1mm程度が好ましい。定着ローラ21の弾性層の厚みが0.1mmより薄い場合にはトナー層や転写紙の凹凸を吸収しきれず、光沢ムラなどの画像不良が生じる。また、定着ローラ21の弾性層が1mmよりも厚いと定着ローラ21の熱容量が大きくなり、立ち上がり時の時間が長くなるので、好ましくない。
定着ローラ21の離型層としては、耐熱性を有する樹脂が用いられ、例えば、フッ素樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。離型性や耐久性を考慮すると、定着ローラ21の離型層は、特にフッ素樹脂が好ましく、PFA(パーフルオロアルキルビニールエーテル共重合樹脂)、PTFE(ポリテトラフフルオロエチレン)、FEP(四フッ化エチレン六フッ化プロピレン共重合樹脂)等のフッ素樹脂が使用できる。
定着ローラ21の離型層の厚みとしては、好ましくは5〜30μmである。定着ローラ21の離型層の厚みが5μm未満であると離型層の耐久性が低くなり、定着ローラ21の離型層の厚みが30μmを越えると離型層が硬くなり、光沢ムラ等の画質不良が現れる可能性があり、共に好ましくない。定着ローラ21の離型層は必ずしも必要では無いが、定着ローラ21の離型層がある場合には、定着ローラと転写紙上のトナーとの分離性が向上するので、定着ローラ21は離型層を備えることが好ましい。
このように参考形態4では、上記参考形態1において、加熱部としての定着ローラ21が弾性層を有するので、高画質化と高速化を両立させることができる。
また、参考形態4では、弾性層の厚さが0.1mm以上であるので、高画質を確保することができる。
さらに、参考形態4では、弾性層の最外層に離型層を設けたので、加熱部とトナー像との分離性を向上させることができる。
ところで、上記参考形態4では、定着ローラ21の表面温度が所定の温度以下になると、定着ローラ21から転写紙P上のトナーに熱を十分に与えられず、着定不良が生じる。そこで、本発明の参考形態5は、上記参考形態4において、充放電切替部23は、連続通紙時(連続画像形成時)に温度センサ18からの検知信号に基づいて定着ローラ21の表面温度が所定の温度以下になったかどうかを判断し、定着ローラ21の表面温度が所定の温度以下になった場合には、スイッチ17を発熱部材11b側に切替えて補助電源15からスイッチ17を介して発熱部材11bへ電力を供給させ、定着ローラ21の表面温度を着定不良が生じない温度範囲に保持する。充放電切替部23は、補助電源15が十分に充電されていない場合には比較的電力を消費しない待機時などにスイッチ17を充電器16側に切替え、充電器16がスイッチ17を介して補助電源15を充電しておく。
この参考形態5のように主電源14から発熱部材11aへの電力供給を通電制御用スイッチ20でオン/オフして定着ローラ21の表面温度を制御しながら大容量キャパシタを用いた補助電源15を使用する際には、補助電源15から発熱部材11bへ大電力を一気に供給するため、図4に示すように定着ローラ21の表面温度が時間的に大きく変動しやすい。
定着装置12にて連続的な加熱動作を行っている最中に主電源14の供給電力だけでは定着ローラ21を加熱するための加熱部材11a、11bへの供給電力が僅かに不充分である場合、補助電源15から加熱部材11bへ急激に大電力を供給することは、定着ローラ21の表面温度が通紙中に変化することにより画像品質にムラができ、画質を低下させてしまうという不具合がある。
そこで、構成切替手段19は、複数のキャパシタセル15a、15bのつなぎ方を変えて補助電源15から加熱部材11bへの供給電力量を調整し、例えば温度センサ18からの検知信号に基づいて定着ローラ21の表面温度をチェックして定着ローラ21の温度が所定の温度に達しない初期加熱時のような状態では、図1に示すようにキャパシタセル15a、15bを直列につないで発熱部材11bへの印加電圧を高電圧とし、発熱部材11bに対して大電力を供給させる。
その後、構成切替手段19は、連続通紙時(連続画像形成時)に定着ローラ21の表面温度が所定の温度以上になって補助電源15から加熱部材11bへ電力を供給するときには、図2に示すように複数のキャパシタセル15a、15bを並列につないで発熱部材11bへの印加電圧を下げ、発熱部材11bに対する供給電力を小さくする。
このように参考形態5では、補助電源15は複数のキャパシタセル15a、15bのつなぎ方を少なくとも放電時に並列接続に変更することが可能である。連続通紙時(連続画像形成時)における定着ローラ21の表面温度の低下時のように定着ローラ21の表面温度がある程度高い場合には複数のキャパシタセル15a、15bを並列に接続することにより、発熱部材11bへの印加電圧を下げて発熱部材11bに対する供給電力を小さくすることができる。これにより、補助電源15から加熱部材11bへの供給電力をオン/オフ制御しても定着ローラ21の表面温度の変化が緩やかになって定着ローラ21の表面温度の時間的な変化が小さくなり、画像の定着装置12による加熱ムラが小さくなって高品質な画像形成が可能になる。
この参考形態5では、被加熱体である転写紙Pが定着装置12を連続的に通過する連続通紙時(連続画像形成時)に加熱部としての定着ローラ21の表面温度が所定の温度以下になった場合に補助電源15から発熱部材11bへ電力を供給するので、連続通紙時(連続画像形成時)の加熱部の温度落ち込みを防止し、高速化を図ることができる。
また、参考形態5では、補助電源15は複数のキャパシタセル15a、15bを備え、その接続を可変としたので、補助電源15から発熱部材11bへの供給電力量を最適化することができる。
また、参考形態5では、補助電源15の放電時にはキャパシタセル15a、15bを並列に接続するので、加熱部としての定着ローラ21の温度の安定性を向上させることができる。
定着ローラ21の表面温度低下量は、転写紙Pの種類に依存するが、連続通紙枚数(連続画像形成枚数)によりほぼ決まる。そこで、本発明の参考形態6では、上記参考形態4において、充放電切替部23は、連続通紙時(連続画像形成時)に当該画像形成装置の制御部にて計数した連続画像形成枚数の情報に基づいて連続画像形成枚数が所定の枚数以上になったかどうかを判断し、連続画像形成枚数が所定の枚数以上になった場合には、スイッチ17を発熱部材11b側に切替えて補助電源15からスイッチ17を介して発熱部材11bへ電力を供給させ、定着ローラ21の表面温度を定着不良が生じない温度範囲に保持することで、速度を低下させなくても定着性を良好に保つ。ここで、所定の枚数は、主電源14からの投入電力、定着ローラ21の構成(特に熱容量、熱伝動率)、プロセス、転写紙の搬送間隔(距離)、転写紙の種類などにより決められる。充放電切替部23は、補助電源15が十分に充電されていない場合には比較的電力を消費しない待機時などにスイッチ17を充電器16側に切替え、充電器16がスイッチ17を介して補助電源15を充電しておく。
また、充放電切替部23は、複数のキャパシタセル15a、15bのつなぎ方を変えて補助電源15から加熱部材11bへの供給電力量を調整し、例えば温度センサ18からの検知信号に基づいて定着ローラ21の表面温度をチェックして定着ローラ21の温度が所定の温度に達しない初期加熱時のような状態では、図1に示すようにキャパシタセル15a、15bを直列につないで発熱部材11bへの印加電圧を高電圧とし、発熱部材11bに対して大電力を供給させる。
その後、充放電切替部23は、連続通紙時(連続画像形成時)に定着ローラ21の表面温度が所定の温度以上になって補助電源15から加熱部材11bへ電力を供給するときには、図2に示すように複数のキャパシタセル15a、15bを並列につないで発熱部材11bへの印加電圧を下げ、発熱部材11bに対する電力供給を小さくする。
この参考形態6では、被加熱体である転写紙Pが定着装置12を連続的に通過する枚数(連続画像形成枚数)が所定の枚数になった場合に補助電源15から発熱部材11bへ電力を供給するので、連続通紙時(連続画像形成時)の加熱部の温度落ち込みを防止し、高速化を図ることができる。
本発明の参考形態7は、上記参考形態2において、定着ローラ11の代りに上記参考形態4における加熱ローラ21を用いるようにしたものである。
この参考形態7によれば、補助電源15の少なくとも放電時には複数のキャパシタセル15a〜5fを発熱部材11bの印加電圧が発熱部材11bの最低発熱電圧以上になるように接続するので、発熱部材11bの印加電圧は発熱部材11bの最低発熱電圧を確保して発熱部材11bを確実に発熱させることができる。 本発明の参考形態8は、上記参考形態3において、定着ローラ11の代りに上記参考形態4における加熱ローラ21を用いるようにしたものであり、参考形態4と同様な効果が得られる。
次に本発明の参考例1について説明する。この参考例1では、上記参考形態4において、定着ローラ21は、外径40mm、厚さ1mmの鉄製の中空円筒状芯金に、弾性層としてシリコーンゴムを厚さ0.5mmに形成し、その上に表面の離型性を高めるために厚さ30μmのPFA層を設けて構成した。加圧ローラ13は、外径が40mmであり、アルミニウム製の芯金の外周に厚さ3mmのシリコーンゴムの弾性層を設けた。この加圧ローラ13は、定着ローラ21の回転軸方向にバネを用いて荷重がかけられており、定着ローラ21とのニップ部の幅が約8mmであった。発熱部材11aは900Wの主ヒータを用い、発熱部材11bは500Wの補助ヒータを用いた。主ヒータ11aのみで定着ローラ21を加熱し、定着装置12に連続通紙を行ったところ、次第に定着ローラ21の表面温度が低下したので、定着ローラ21の表面温度が165℃まで低下したところで、補助電源15から補助ヒータ11bへの電力供給を行った。その結果、定着ローラ21の表面温度は回復し、線速を低下させることなく、定着性を良好に保つことができた。
次に比較例1について説明する。比較例1は、参考例1において、補助電源15を用いないようにしたもので、連続通紙により定着ローラ21の表面温度が160℃以下に低下し、定着不良が生じた。定着ローラ21の表面温度を定着不良が生じない温度に保つには、線速を低下させなければならなかった。
次に本発明の参考例2について説明する。参考例2は、参考形態7において、定着ローラ21及び発熱部材11a,11bは参考例1と同様であり、複数のキャパシタセル15a〜5fを図5(b)に示すようにつないで補助ヒータ11bに電力供給を行った。主ヒータ11aのみで定着ローラ21を加熱し、定着装置12に連続通紙を行ったところ、次第に定着ローラ21の表面温度が低下したので、定着装置12に130枚通紙したところで、補助電源15から補助ヒータ11bへの電力供給を行った。その結果、定着ローラ21の表面温度は緩やかに回復し、線速を低下させることなく、定着性を良好に保つことができた。
次に比較例2について説明する。比較例2は、参考例2において、補助電源15を用いないようにしたもので、連続通紙で135枚目に定着不良が生じた。
次に比較例3について説明する。比較例3は、参考例2において、複数のキャパシタセル15a〜5fを図5(c)に示すようにつないで補助ヒータ11bに電力供給を行った。この比較例3では、補助ヒータ11bの印加電圧が補助ヒータ11bの最低発熱電圧以下となり、補助ヒータ11bは発熱せず、定着装置12への連続通紙により定着ローラ21の表面温度がさらに低下し、定着不良が生じた。
次に参考例3について説明する。参考例3は、参考形態7において、定着ローラ21は、外径40mm、厚さ3mmのアルミニウム製の中空円筒状芯金に、弾性層としてシリコーンゴムを厚さ0.3mmに形成し、その上に表面の離型性を高めるために厚さ30μmのPFA層を設けて構成した。加圧ローラ13は、外径が40mmであり、アルミニウム製の芯金の外周に厚さ3mmのシリコーンゴムの弾性層を設けた。この加圧ローラ13は、定着ローラ21の回転軸方向にバネを用いて荷重がかけられており、定着ローラ21とのニップ部の幅は約8mmであった。発熱部材11aは900Wの主ヒータを用い、発熱部材11bは500Wの補助ヒータを用いた。複数のキャパシタセル15a〜5fは図5(b)に示すようにつないで補助ヒータ11bに電力供給を行った。主ヒータ11aのみで定着ローラ21を加熱し、定着装置12に連続通紙を行ったところ、次第に定着ローラ21の表面温度が低下したので、定着ローラ21の表面温度が165℃まで低下したところで、補助電源15から補助ヒータ11bへの電力供給を行った。その結果、定着ローラ21の表面温度は緩やかに回復し、線速を低下させることなく、定着性を良好に保つことができた。また、定着後の画像は光沢ムラやザラツキが無く、画質が良好であった。
次に、本発明の参考形態9について説明する。この参考形態9では、上記参考形態1において、定着装置の回路構成が図11に示すようになっている。図11において、24は本参考形態の設置場所に備えられているコンセントなどに接続されることで商用電源からの交流電力を出力する主電源、25は補助電源、26は充電器、27は補助電源25の充放電を切替える充放電切替手段、28は主電源24から主発熱部材11aへの電力供給を制御する主電力制御手段である。
主発熱部材11aは、主電源24から主電力制御手段28を介して電力が供給されて発熱する。補助発熱部材11bは補助電源25から電力が供給されることにより発熱する。充電器26が主電源24からの交流電力を直流電力に変換して充放電切替手段27を介して補助電源25に印加することにより、補助電源25が充電され、充放電切換手段27が充電器26側から補助発熱部材11b側に切り替えられることにより、補助電源25から補助発熱部材11bへ電力が供給される。
このように、主発熱部材11a、補助発熱部材11bに対して主電源24と補助電源25から別系統で電力が供給されることで、回路の簡素化とコストの低減が可能である。これを図13に示すように1系統にした構成例の定着装置と本参考形態9の定着装置とを比較するに、図13に示す定着装置は主電源24及び補助電源25からの電力を1つの発熱部材11cに供給して熱に変換する構成である。
しかし、この定着装置では、主電源24からの電力をA/D変換部29でA/D変換して主電力制御手段28及び切替スイッチ30を介して発熱部材11cに供給することが必要になり、補助電源25から充放電切替手段27及び切替スイッチ30を介して発熱部材11cへ電力が供給される。このため、構成が複雑化すると共にコストが上昇し、さらに、A/D変換部29での変換効率によって供給電力が低下してしまうという課題がある。従って、定着装置は図11に示す2系統の構成が望ましい。
本参考形態9において加熱部としての加熱ローラである定着ローラ11は発熱部材11a、11bを有している。発熱部材11a、11bとしては、ハロゲンヒータや、セラミック基盤上に形成された発熱体が電力供給によって発熱するセラミックヒータ、金属抵抗薄膜などを基体状に形成した薄膜抵抗体などが用いられる。
本参考形態9は、主電源部24から主電力制御手段28を介して供給される電力により発熱する主発熱部材11a、及び補助電源25から充放電切替手段27を介して供給される電力により発熱する補助発熱部材11bを有し、加熱ローラ1の表面温度を所定温度まで上昇させることができる。
本参考形態9では、発熱部材11a、11bとしてハロゲンヒータを用いている。ハロゲンヒータは、ハロゲンランプから照射される光を熱として利用したものであり、タングステンからなるフィラメントが蒸発しても、ガラス中に封止されたハロゲンガスと反応してフィラメントに戻るハロゲンサイクルにより長寿命であるという特徴を持つ。
主電源24は、本参考形態9の設置場所付近に備えられているコンセントなどとつながれて商用電源からの交流電力を出力するものであり、日本では商用電源として100Vの電圧電源が通常多く用いられる。さらに、1回路は15A程度の電流容量でブレーカが落ちることが多く、最大で1500Wという電力の上限がある。主電源24は、単純に主電力制御手段28を介して発熱部材11aと接続するだけでなく、加熱部材11aに応じた電圧の調整及び交流と直流の整流や電圧の安定化などの機能を有していてもよい。
補助電源25は充放電可能な電源であり、本参考形態では補助電源25に大容量コンデンサである電気二重層キャパシタを用いている。コンデンサは、二次電池と異なり化学反応を伴わないために上述のような優れた特徴(1)〜(3)を有し、さらに短時間で放電するという優れた特徴を有する。大容量のコンデンサは、短時間で放電して電力を使い切ることができ、電圧も放電量に応じて徐々に低下していく。
本参考形態9では、500F、2.5Vのキャパシタセルを複数個直列につないで補助電源25として補助発熱部材11bへの電力供給に用いている。これにより、補助電源25は、補助発熱部材11bへ電力を数秒から数十秒供給するのに十分な容量を備えていることを確認している。また、補助電源25は、電気二重層キャパシタ以外にもレドックスキャパシタやシュードキャパシタなどの名称で呼ばれている大容量キャパシタを用いてもかまわない。
本参考形態9では、主電源24から主電力制御手段28を介して発熱部材11aへ電力が供給されるとともに、発熱部材11bに対しても補助電源25から充放電切替手段27を介して電力を供給することが可能である。主電源24及び補助電源25の両方から電力を同時に加熱ローラ11内の発熱部材11a、11bに供給することで、主電源24による供給電力を上回る大量の電力を加熱ローラ11内の発熱部材に供給することができる。
このため、図12に示すように加熱ローラ11の温度が定着可能な温度まで上昇する時間は、主電源24のみを用いるより、主電源24と補助電源25を同時に用いた方が短くすることができる。そして、補助電源25は、所定の時間放電すると電力供給量が低下していくため、自動的に電力を遮断する安全装置を備えているような動作をする。このため、主電源24と補助電源25を用いる定着装置では、単純に主電源24の電力を増やす構成よりも格段に安全に昇温時間を短縮させることが可能である。
図14は本参考形態9の動作例を示す。本参考形態9は、上述のように高速昇温が可能であり、補助電源25の充電時間が短い。電気二重層キャパシタなどの急速充電が可能な大容量コンデンサ等からなる補助電源25が十分に充電されていない時、例えば朝一番に本参考形態9の電源を投入する朝一昇温時には、主電源24からのみ加熱部材11aへ電力を供給する。そして、加熱部材11aの温度を高くする必要がない待機状態では、主電源24から充電器26及び充放電切替手段27を介して補助電源25へ電力を供給して補助電源25を充電しておく。
次に、加熱ローラ11の温度を昇温する時など、多量の電力を必要とするときには、主電源24及び補助電源25から主電力制御手段28及び充放電切替手段27を介して同時に発熱部材11a、11bへ電力が供給され、発熱部材11a、11bに投入されるトータルの電力が主電源24だけの電力供給時よりも多く供給されることで、短時間で加熱ローラ11の温度が上昇する。このように、補助電源25としてコンデンサを用いることにより、二次電池では得られなかった効果を得ることができる。
例えば、従来30秒で所定温度まで昇温可能であった加熱ローラについて説明する。従来の加熱ローラとして直径50mmで肉厚0.7mmの鉄製定着ローラを用いる場合、約180℃の所定の温度まで加熱ローラの温度を上げるのに、従来の定着装置で加熱部材として通常用いられる1200wのハロゲンヒータでは約30秒で上記加熱ローラを昇温させることができた。
また、補助電源としての電気二重層キャパシタを高電圧に充電し、供給電流が12Aに制限された発熱部材を使用する例を説明する。ハロゲンヒータは、最大電流が制限される。このため、電気二重層キャパシタを50Vに充電した場合には電気二重層キャパシタから12A×50Vすなわち600wの電力を取り出せる。商用電源の1200wと同時に補助電源の600wの電力をハロゲンヒータに供給した場合は、ハロゲンヒータに対して1800wの電力を供給することになり、従来30秒であった加熱ローラの昇温時間が約20秒に短縮された。
しかし、2.5Vに充電可能なキャパシタセルを複数個直列に接続してこれを50Vに充電してハロゲンヒータへの電力供給に使用する場合には、電気的な安全上の問題がある。すなわち、画像形成装置内に約50Vの高圧電源を有しているため、使用者あるいは保守点検作業者が装置内部へアクセスする際に、高電位の端子部に触れてしまった際に感電してしまうおそれがある。
(社)日本電気協会の発行している「電気工事士教科書」によると、キャパシタなどの直流電源では、約3.5mA程度の電流の感電で「少しちくちく」し、6mA程度の感電で「苦痛を伴わないショック」があるとされている。人間の抵抗が5〜10kΩであるため、人間は上述の感電でそれぞれ18〜35V、30〜60Vで電撃を受ける可能性があるとされている。このため、上記構成で2.5Vに充電可能なキャパシタセルを20個直列に接続してこれを50Vに充電した場合には、50Vに充電したコンデンサは誤って触れた使用者に対して感電のショックを与えてしまうことになる。
本参考形態9では、補助電源25の端子間に電気的負荷である抵抗体31が選択的接続手段としての切換手段32を介して接続され、通常は切換手段32が解放状態になっている。所定の指示動作により切換手段32が閉成状態になると、補助電源25の端子間に抵抗体31が接続され、補助電源25から抵抗体31へ電力が供給されて補助電源25の電圧が降下する。抵抗体31の代りにフィン等の電気的負荷を取り付け、この電気的負荷で発生した熱を効率よく放熱して破損することのない構成としても良い。
切換手段32に対する指示は、例えば従来から設置されている筐体(補助電源25などが該筐体に収納される)のカバーの開閉検知スイッチなどのアクセス検知手段(使用者及び保守作業者の装置内部アクセスを検知する検知手段)と切換手段32とが連動することでなされ、筐体を開けることでアクセス検知手段が動作してそのアクセス検知信号により切換手段32が閉成状態に切り替わり、補助電源25から抵抗体31へ電力が供給される。切換手段32に対する指示は、このほか、補助電源3により電位が高くなっている端子へ使用者及び保守作業者がアクセスする際に開閉する部材の開閉スイッチなどのアクセス検知手段によりなされ、使用者及び保守作業者が高電位部にアクセスする際には自動的に切換手段32に対する放電の指示としてアクセス検知手段の検知信号が発生する構成としてもよい。
本参考形態9では、13Ω程度の抵抗体31を用いており、補助電源25の電圧を切換手段32の閉成で抵抗体31に放電させると、約2.5分で50Vから30Vに低下させることができ、補助電源25の電力供給端子の電圧を人間がショックのある電撃を受けないレベルにまで下げることができる。また、使用者及び保守作業者は、補助電源25から抵抗体31への放電を意識的に指示しなくてもよいため、うっかり忘れて感電することがなく、安全上から望ましい。
このように本参考形態9によれば、補助電源の出力電圧を、誤って人が触れても感電しない電圧に下げることで感電を防止でき、安全性が高い。また、作業者の装置内部へのアクセスを自動的に検知して電圧を強制的に低減することができ、感電のおそれが少ない安全な加熱装置を実現できる。さらに、200V以下では、直流は交流よりも人体を流れにくく、約4倍の安全性があるため、同じ電圧で同じ電力供給性能を有していながら、安全性がより高い補助電源を実現することができる。
図15は、本発明の参考形態10における定着装置の回路構成を示す。この参考形態10では、上記参考形態9において、補助電源25に充放電切換手段27及び切換手段32を介してDC/ACコンバータ33の入力側が接続され、このDC/ACコンバータ33の出力側が発熱部材11bに接続される。抵抗体31は省略される。切換手段32は、上記参考形態9とは逆に、通常は閉じており、筐体(補助電源25などが該筐体に収納される)のカバーの開閉検知スイッチなどのアクセス検知手段による所定の指示動作により閉成状態になる。
直流電源である補助電源25からの直流電力は、充放電切換手段27及び切換手段32を介してDC/ACコンバータ33により交流電力に変換され、補助発熱部材11bに供給される。DC/ACコンバータ33は、補助電源25の出力に対して昇圧もしくは降圧など電圧を変更したり、単純にDC/AC変換をすることができ、特に変圧に関する機能は問わない。ここでは、DC/ACコンバータ33は、補助電源25からの50Vの直流電圧を50Vの交流電圧に変換する。補助発熱部材11bに対する電力供給をオン/オフする切換手段32は、DC/ACコンバータ33の入力側のDC回路に設置され、図16に示すような定着装置の比較例3ではDC/ACコンバータ33の出力側のAC回路に設置されている。
以下本参考形態10の作用と効果を説明する。ここでは、切換手段32がオフになった停止状態での各部の電位を考える。本参考形態10のようにDC回路に切換手段32が設けられている場合には、使用者や保守作業者が回路に触れて50Vの高電位で感電するのはDC回路側の各部である。AC回路では、DC/ACコンバータ33に電力が供給されていないために電位が0となっており、感電することはない。
上記比較例3のようにAC回路に切換手段32が設けられている場合には、使用者や保守作業者が回路に触れて50Vの高電位で感電するのはAC回路の各部及びDC回路の各部である。すなわち、本参考形態10及び比較例3ともに50Vの直流電圧での感電のおそれはあるが、本参考形態10では50Vの交流電圧での感電のおそれはない。
(社)日本電気協会の発行している「電気工事士教科書」によると、同じ電圧でも直流と交流で感電への危険性が異なり、交流は直流の約4倍の危険性がある事が明らかにされている。直流電源では、図20に示すように約3.5mA程度の電流で「少しちくちく」し、6mA程度で「苦痛を伴わないショック」があるのに対し、交流電源では、約3.5mA程度の電流では「苦痛を伴わないショック」を充分に受け、6mA程度では「苦痛を伴うショック」になる。
人間は、抵抗が5〜10kΩであるため、それぞれ18〜35V、30〜60Vで電撃を受ける可能性があるが、その危険性が交流では約4倍程度危険になる。このため、本参考形態10では、人間が電撃を受けてしまった場合でも直流による電撃を受けたことになり、人体に対する安全性を高めることが可能となる。
このように本参考形態10によれば、200V以下では、直流は交流よりも人体を流れにくく、約4倍の安全性があるため、同じ電圧で同じ電力供給性能を有していていながら、安全性がより高い補助電源を実現することができる。
図17は本発明の参考形態11における定着装置の回路構成を示す。この参考形態11では、上記参考形態9において、補助電源25を放電させるための電気的負荷を抵抗発熱体である補助発熱部材11bにしている。補助発熱部材11bは、ハロゲンヒータを用いており、600wの出力が可能である。
補助発熱部材11bは、上記参考形態9の単なる抵抗体31に比較して大電力での放電が可能であるため、短時間で補助電源25の電圧を低下させることが可能である。例えば600wの補助電源25では、約1分程度で50Vから30Vに降圧でき、補助電源25の降圧に必要な放電時間を1/3程度に短縮することができる。さらに、補助電源25の1200w出力が可能である場合には、30秒で補助電源25の降圧が可能である。
本参考形態11では、補助電源25を放電させる電気的な負荷として補助発熱部材11bを用いることで、発熱に対する対策が最小限で済む利点もある。もともと補助発熱部材11bは高温になることを想定して設計されており、補助発熱部材11bが高温になってもこれを冷却をするための装置は最低限で済ませることができる。
本参考形態11において50V、25Fの補助電源25を単体で放電させた場合には、最大でも約120℃まで加熱ローラ11の温度を上昇させるため、特に温度制御を入れる必要もなく熱的には安全な放電が可能であった。これにより、装置が複雑になることなく、安全な加熱装置を実現が可能である。
そして、保守作業員が能動的に補助電源25の放電のオン/オフ動作を指示する様になっている。例えば、複写機の操作パネルには保守作業員だけが設定可能な特殊な設定画面モードが備えられていることが多く、本参考形態11でも同様である。本参考形態11では、保守作業員が内部の装置にアクセスして補助電源25の高電圧端子に触れる可能性がある作業をする際には、その特殊な設定画面モードにおいて、保守作業員が能動的に補助電源25の電圧を低下させ、つまり、充放電切換手段27を発熱部材11b側に切り替えさせて補助電源25から発熱部材11bへ放電させることで補助電源25の電圧を低下させる。これにより、高電圧になる端子に対する安全性が通常の作業で充分に保持されている場合などには、補助電源25の無駄な放電を押さえることが可能になる。
このように本参考形態11によれば、感電を防止でき、安全性が高い。抵抗体は、許容できる電力が小さいために放電時間が長く、作業者が短時間で内部にアクセスした際には、まだ充分に補助電源25の電圧が低下していない場合がある。しかし、補助電源25を放電させるための電気的負荷を抵抗発熱体である発熱部材11bにすることで電気的負荷の抵抗値を小さくして補助電源25の放電時間を短くすることができる。このため、短時間で補助電源25の電圧を降下させることができ、安全な装置を提供することができる。
また、使用者が不用意にアクセスできず危険度の低い状況に補助電源を設置している場合は、扉の開閉など内部へのアクセスを検知しただけで補助電源が放電してしまうと電力が無駄になるとともに、その後の立ち上げに時間がかかり使用者の利便性が損なわれる。しかし、保守作業員が保守作業を実施する際に能動的に行う動作に対して補助電源25の電圧を低減させることにより補助電源25の無駄な放電動作をなくし、エネルギー消費を少なくでき、使用者の使い勝手の良い装置を提供できる。なお、補助電源25の容量によっては、補助電源25を完全に放電させても加熱ローラ11が180℃を越えることがないため、記録紙の発熱は心配ない。
図18は本発明の参考形態12における定着装置の回路構成を示す。この参考形態12では、上記参考形態9において、補助電源25を放電させる電気的な負荷として抵抗体31の代りにモータ34を用いている。これにより、装置内部の発熱を押さえながら補助電源25の電圧を降下させることが可能である。
このように参考形態12によれば、エネルギーを電気的な発熱以外で消費するため、装置の部材温度を上げずに補助電源から放電させることが可能である。このため、記録紙詰まりで装置内部に記録紙が残っていたとしても、記録紙温度を上昇させることなく補助電源の電圧を降下させることが可能である。補助電源25を放電させる電気的な負荷として抵抗体を用いた場合に比較して発熱を格段に小さくできるため、記録紙等が定着装置等の内部に残っていても、記録紙発火点(約300℃)を超えるような温度上昇がなく、発火に対して安全な装置を提供することができる。
図19は本発明の参考形態13における補助電源を示す。この参考形態13では、上記参考形態9において、補助電源25は複数のキャパシタセル251,252、253,254をそれぞれ直列に接続した複数の補助電源モジュール25a、25bを切換手段32を介して直列に接続して構成される。ただし、補助電源モジュール25a、25b内に保有しているキャパシタセル251,252、253,254は、1つでも複数でもよく、また、並列に接続されていてもかまわない。
補助電源モジュール25a、25bは、切換手段32を介して直列に接続され、発熱部材11bに対して大電圧を供給するが、所定の指示により切換手段32が補助電源モジュール25a、25bの接続を切り離してその一方のみを発熱部材11bに接続されることでその一方の補助電源モジュールから発熱部材11bに電圧が供給される。切換手段32は、通常は補助電源モジュール25a、25bを直列に接続しており、筐体(補助電源25などが該筐体に収納される)のカバーの開閉検知スイッチなどのアクセス検知手段により所定のアクセス動作で補助電源モジュール25a、25bの接続を切り離してその一方のみを発熱部材11bに接続する。
本参考形態例13では、例えば500F、2.5Vのキャパシタセルを10個直列に接続して25Vの補助電源モジュールとし、さらにこの補助電源モジュールを2つ切換手段32を介して直列にすることで50Vの補助電源とする。補助電源モジュール25a、25b内部のキャパシタセルは特に切り離すことができないが、補助電源モジュール25a、25b同士は切換手段32により任意に接続を切り離してその一方のみを発熱部材11bに接続することが可能である。
この様な構成にすることで、保守作業員や使用者が画像形成装置内部にアクセスする際には、補助電源モジュール25a、25bを切り離してその一方のみを発熱部材11bに接続する動作が可能になる。すなわち、補助電源25から発熱部材11bに電力を供給する際には、50Vであった補助電源25の端子電位は、補助電源モジュール25a、25bを切換手段32により切り離してその一方のみを発熱部材11bに接続した際には半分の25Vに低下することになり、感電の危険のない電位に瞬時に下げることができる。
この場合、補助電源25の50Vの端子電位は、2つに等分割しているが、3つ以上にわけて一個あたりの補助電源モジュール電圧をさらに低くしても良いし、20Vと30Vの様に異なる補助電源モジュール電圧にしても良い。以上のような方式によれば、リチウムイオン電池などの様な放電しても電圧の低下が起きない、キャパシタ以外の電池系の補助電源を用いても安全な構成をとることが可能である。
このように本参考形態13によれば、補助電源25を複数の補助電源モジュールに分けることで、高い全電圧を複数の低い電圧の補助電源モジュールに分けることが可能である。これにより、補助電源の電力出力端子における電圧を降下させることができ、感電のおそれがなく安全に作業ができる装置を実現可能である。この際に補助電源の放電を伴わないため、安全な状態にする時間が短く、電力のロスがない。また、キャパシタ以外のリチウムイオン電池や燃料電池など放電しても電圧が低下しない電池系を補助電源25として用いても、感電のおそれがない安全に作業ができる装置を実現可能である。
図21は本発明の参考形態14における定着装置の回路構成を示す。この参考形態14では、上記参考形態9において、抵抗体31及び切換手段32が省略され、昇圧手段35が設けられる。この昇圧手段35の入力側は充放電切替手段27を介して補助電源25に接続され、昇圧手段35の出力側は発熱部材11bに接続される。
補助電源25は例えば1300F、2.5Vのキャパシタセルを複数個直列に接続して構成される。補助電源25からの電力は、充放電切替手段27を介して昇圧手段35により昇圧され、発熱部材11bに供給される。
図22は本参考形態14の動作例を示す。本参考形態14は、加熱ローラ11の高速昇温が可能であり、補助電源25の充電時間が短い。電気二重層キャパシタなどの急速充電が可能な大容量コンデンサ等からなる補助電源25が十分に充電されていない朝一番に電源(主電源24)を投入する朝一昇温時には、商用電源からのみ発熱部材11aへ電力が供給される。そして、加熱ローラ11の温度を高くする必要がない待機状態では、主電源24から充電器26、充放電切換手段27を介して補助電源25へ電力を供給して充電をしておく。
そして、次に加熱ローラ11の温度を昇温する時など、多量の電力を必要とするときには、主電源24から主電力制御手段28を介して発熱部材11aへ電力が供給されると同時に補助電源25から充放電切替手段27及び昇圧手段35を介して発熱部材11bへ電力が供給され、加熱部材に投入されるトータルの電力が主電源24からの電力だけの時よりも多く供給されることにより、短時間で加熱ローラ11の温度が上昇する。
キャパシタを補助電源25として用いた際には重要な特徴として補助電源25の所定の電力を使い果たしてしまうという事が挙げられ、これにより安全に加熱ローラ11の短時間昇温を実現する構成を提供することができる。
加熱ローラに供給する電力を単純に増やす方法としては、電源を2系統にして電力を増やしたり、二次電池や燃料電池などを使うことも考えられる。これらの方法では、システムが暴走した際には温度ヒューズやサーモスタットなどの安全回路で電源回路を直接に遮断して電力供給を終了させる安全装置が欠かせないが、加熱ローラの昇温時間が短くなるとこれら安全回路の反応時間が遅くて加熱ローラの昇温速度に追いつかなくなる。このため、安全回路が作動する頃には加熱ローラの温度が高くなり過ぎ、最悪の場合には記録紙が発火してしまうこともありうる。
しかし、補助電源としてキャパシタを用いた構成では、システムが暴走して制御がきかなくなりキャパシタから発熱部材への電力供給が続いても、キャパシタの所定の電力を使い果たしてしまうと発熱部材の発熱が終了し、加熱ローラの温度上昇は自然にストップしてくれる。このため、キャパシタを補助電源として用いることで、安全に加熱ローラの昇温時間の短縮を実現することができる。
このように、定着装置の補助電源としてコンデンサを用いることにより、二次電池では得られなかった効果を得ることができる。
例えば、従来10秒で所定温度まで昇温可能であった加熱ローラの昇温について説明すると、加熱ローラとして直径30mmで肉厚1mmのアルミ製定着ローラを用いた場合、加熱ローラの温度を約180℃まで上げるのに必要な熱量は約12000Jである。従来の定着装置で通常用いられるハロゲンヒータは、100Vの電圧で約1200Wの電力を供給することが可能であるため、約10秒で上記加熱ローラを昇温させることができた。
1300F、2.5Vのキャパシタを複数個直列に接続した電気二重層キャパシタを補助電源として用いた場合における加熱ローラ11の昇温について説明すると、本参考形態14において、図23に示すように昇圧手段35を用いず、補助電源25の電気二重層キャパシタを50Vの高電圧にして発熱部材11bとして最大電流が12Aに制限されるハロゲンヒータを用いた構成の定着装置では、電気二重層キャパシタから600wの電力を取り出すことができ、この600wと商用電源の1200wにより加熱ローラ11に対して1800wの電力を供給することになり、従来10秒であった加熱ローラ11の昇温時間を約6秒に短縮可能である。
しかし、この着定装置では、昇圧手段35を用いないので、補助電源25において2.5Vのキャパシタセルを50Vにして使用するには、約20個のキャパシタセルを直列に接続する必要がある。このとき、補助電源25の保持するエネルギーは80000J程度となる。しかし、加熱ローラ11の温度を上昇させるのに必要な熱量は、その1/6にすぎず、キャパシタセル3個を直列にするだけのエネルギーで十分である。さらに、10秒間600Wの電力を加熱ローラ11に供給する場合には、補助電源25から6000J程度の電力しか取り出していない。これは、補助電源25の保有するエネルギー80000Jの約8%弱である。
このように、単純にキャパシタセルを複数個直列に接続して電圧を高くしこれを補助電源として用いる構成の定着装置では、単に補助電源の電圧を上げるだけで余分なキャパシタセルが必要となるとともに、その保有する電気エネルギーを加熱ローラ11の昇温時に短時間に取り出すことが困難となり、補助電源のキャパシタセルが増えて体積が大きくなりコストも上昇する。
次に、補助電源の電気二重層キャパシタからの電力を昇圧手段を用いて昇圧した電力を発熱部材に供給して使用する定着装置においては、昇圧手段ではIGBT素子などを用いて低電圧・大電流の補助電源からの電力を高電圧・低電流に昇圧する事が可能である。例えば、本参考形態14のように2.5Vのキャパシタセル8個を直列に接続して20Vの補助電源を構成し、この補助電源の出力が20Vで60Aとすると1200Wの電力が補助電源から得られるが、これは昇圧手段35を用いて100Vで12Aにする事ができる。補助電源のキャパシタの保持する電力としては、8個のキャパシタセルで32500Jになるため、1200Wを10秒使うと単純計算で12000J弱を使えることになる。これは、補助電源のキャパシタの保持電力の36%であり、単純に20個のキャパシタセルを直列に接続した場合の8%と比べると4.5倍の利用効率向上となる。
このように、昇圧手段35を用いることで、より大きな電力を少ないキャパシタセルで実現することができる。8個のキャパシタセルを用いる上記定着装置の例では、従来20個のキャパシタセルを用いて600Wしか得られなかったものが、8個のキャパシタセルで1200Wが得られる様になった。これにより大きな利点が2つある。その1つは、大電力を得られることであり、より加熱ローラの昇温時間の短縮をすることができる。2つは、キャパシタセルの数が減ることであり、キャパシタセルの体積を減らせるとともに重さも低減でき、キャパシタセルのコストを大幅に減らすことができる。この8個のキャパシタセルを用いる定着装置では、上記20個のキャパシタセルを用いる定着装置に比べてキャパシタセルの数が半分以下に減る。
このように、加熱ローラへ供給する電力は従来の商用電源からの電力供給の上限であった1200wに制限されていたが、加熱ローラへ供給する電力が1800w〜2000wになることで加熱ローラの昇温時間を短縮させることが可能である構成の定着装置において、本参考形態14のように補助電源25から発熱部材11bへの供給電圧を昇圧手段35により高くする構成にすることで、補助電源25のキャパシタの保有するエネルギーを無駄なく使って必要なキャパシタセルの個数を減らすことができるため、補助電源の体積を減らし、さらに設置スペースを小さくし補助電源コストを低減することが可能である。
このように本参考形態14によれば、発熱部材11bへ供給する高い電圧を確保するために補助電源25の直列に接続するキャパシタセルの数を減らすことができてキャパシタの体積を低減できるため、加熱ローラ11の昇温時間を短くするための補助電源25を小型化することができる。
また、システムが暴走しても一定時間後には補助電源25から発熱部材11bへの電力供給が自然に低下し、加熱ローラ11が高温になりすぎる危険がないため、システム暴走時の安全性が高くて短時間昇温可能な加熱装置を実現できる。
また、発熱部材11bへの電圧が高いので、発熱部材11bに流れる最大電流が小さくても大電力を発熱部材11bに供給することが可能であるため、短時間で加熱ローラ11を昇温させることが可能である。
また、商用電源の供給電力の制限を越える最大供給電力を加熱装置に投入できるため、立ち上がり時間が短い装置を提供できる。
図24は本発明の参考形態15における定着装置の回路構成の一部を示し、図25は該参考形態15において昇圧手段35へ入力される入力電圧Vinと、補助発熱部材11bに昇圧手段35から出力される出力電圧Voutの時間的な変化、及び加熱ローラ11の表面温度の時間的な変化を示す。この参考形態15では、上記参考形態14とは以下に述べるように異なり、その他は同じである。
加熱ローラ11の昇温時間を短くするためには、発熱部材11bへの供給電力を大きくすればよい。例えば、発熱部材11bへ電力を供給する電源装置は、200Vの商用電源を用いたり、2次電池等の定電圧電源を用いたりすることもある。しかし、発熱部材11bへの供給電力をあまり大きくしすぎると、加熱ローラ11の温度がオーバーシュートしてしまうという問題がある。
本参考形態15では、昇圧手段35の入力電圧Vinは、補助電源25のキャパシタの特性上、時間が経つに従って低下していく。この昇圧手段35の入力電圧Vinに対して昇圧手段35の出力電圧Voutは特に制御をしておらず、出力電圧Voutを入力電圧Vinで割った昇圧の倍率は常に一定である。このため、回路が簡素化されると共に、昇温時の加熱ローラ11の温度のオーバーシュートを防止することができる。
これは、補助電源25の電圧が低下する際に、制御用の検知手段を特に用意する必要がないほか、入力電圧Vinの低下を補って昇圧の倍率を上げる制御をしなくて済むためである。また、加熱ローラ11の低温状態では発熱部材11bへフルに電力を供給し、加熱ローラ11の温度が高くなってくると発熱部材11bへの電力を減らす動作を自然に行うことができるため、加熱ローラ11の温度のオーバーシュートを低減することができる。
これは、図25に示すように、加熱ローラ11の温度を上昇させる際には、加熱ローラ11の温度が上がるにつれて補助電源25からの電力が消費されて発熱部材11bへの供給電圧が減るため、商用電源からの供給電力も含めた発熱部材11a、11b全体への供給電力を徐々に減らすことができるためである。これにより、発熱部材11a、11bへの給電開始直後で加熱ローラ11が低温である状態では、発熱部材11a、11bへフルに電力を供給できる一方、補助電源25の放電が進んで加熱ローラ11の温度が高くなってくると、補助電源25の電圧が低下して補助電源25の供給電力が自然に減ってくる。
以下、本参考形態15を具体的に説明する。補助電源25は1300Fのキャパシタセルを8個直列に接続し、昇圧手段35は初期の20Vの入力電圧Vinを100Vまで昇圧して1200Wを補助発熱部材11bに供給していたとする。昇圧手段35のロスがなく、昇圧手段35の昇圧の倍率が一定とすると、30秒後には昇圧手段35の入力電圧Vinが13Vに低下し、補助発熱部材11bへ供給される電力は400w程度になる。よって、主発熱部材11aへの電力を1200wとすると、発熱部材11a、11b全体に供給される電力は、加熱ローラ11の温度が低いときには2400wであったものが、加熱ローラ11の温度が上昇するにつれて1600w程度に低減する。
従って、本参考形態15では、補助電源としての定電圧電源で電力を増やす様な構成の場合に問題となる、加熱ローラの温度がその上昇速度が速くて高温に上昇しすぎる温度のオーバーシュートを低減することが可能となるとともに、加熱ローラ11の温度が低いときには補助発熱部材11bへの電力が大きいため、加熱ローラ11の昇温時間短縮にも効果が十分にある。
このように本参考形態15によれば、複雑な制御をしなくて済むため、回路の簡素化、加熱ローラ11の温度のオーバーシュートの低減を図ることができる。
図26は本発明の参考形態16において昇圧手段35へ入力される入力電圧Vinと、補助発熱部材11bに昇圧手段35から出力される出力電圧Voutの時間的な変化と、加熱ローラ11の温度の時間的な変化の例を示す。この参考形態16では、上記参考形態14とは以下に述べるように異なり、その他は同じである。
まず、昇圧手段35の出力電圧Voutを制御していない場合を考える。
補助電源25は1300Fのキャパシタセルを8個直列に接続し、昇圧手段35は初期の20Vの入力電圧Vinを100Vまで昇圧して1200Wを補助発熱部材11bに供給していたとする。昇圧手段35のロスがなく、昇圧手段35の昇圧の倍率が一定とすると、30秒後には昇圧手段35の入力電圧Vinが13Vに低下し、補助発熱部材11bへ供給される電力は400w程度まで低下する。
よって、主発熱部材11aへの電力を1200wとすると、発熱部材11a、11b全体に供給される電力は、加熱ローラ11の温度が低いときには2400wであったものが、加熱ローラ11の温度が上昇するにつれて1600w程度に低減する。このため、加熱ローラ11の昇温時間をより短縮したい場合には、昇圧手段35の出力電圧Voutが一定になるようにして、補助発熱部材11bへの供給電力を補助発熱部材11bへの給電時間中にほぼ一定にすると良い。
そこで、本参考形態16では、昇圧手段35は、入力電圧Vinが13Vまで低下するにつれて、昇圧の倍率を上げていくような制御を行う制御手段を有する。これにより、加熱ローラ11への供給電力が増え、加熱ローラ11の昇温時間の短縮が可能となる。なお、上記制御手段は、昇圧手段35の外部に設けてもよい。
このように本参考形態16によれば、発熱部材11bへ大きな電力を供給することができるため、加熱ローラ11の昇温時間の短縮が可能となる。
図27は本発明の参考形態17における定着装置の回路構成を示し、図28は該定着装置の概略を示す。この参考形態17では、上記参考形態14とは以下に述べるように異なり、その他は同じである。主発熱部材11aと補助発熱部材11bは、ハロゲンヒータからなり、輻射熱で金属ローラからなる加熱ローラ11を加熱する。補助発熱部材11aは、主発熱部材11aよりも抵抗値が小さく、大電流を流すことが可能である。
加熱ローラ11の基体は、アルミや鉄などの金属製であることが耐久性や加圧による変形などの点から望ましい。加熱ローラ11の表面にはトナーとの固着を防ぐための離型層を形成していることが望ましい。加熱ローラ11の内面には、ハロゲンヒータ11a、11bの熱を効率よく吸収するための黒化処理をしていることが望ましい。
主発熱部材11aは100Vで10Aを流すことで1200Wを得ることが可能である一方、補助発熱部材11bは120Vで12Aを流すことで1440Wを得ることが可能である。主発熱部材11aへの電圧は商用電源の100Vで決まってしまうが、補助発熱部材11bへの電圧は昇圧手段35の設定倍率を大きくすることで高くすることが可能であるため、補助発熱部材11bへの電力を大きくすることが可能である。
主発熱11aへの供給電力を越える大電力で補助発熱部材11bのハロゲンヒータを使用することで、加熱ローラ11の昇温時間を短縮することができる。また、補助電源25の有するエネルギーを短時間で無駄なく取り出すことが可能である。
このように本参考形態17によれば、補助発熱部材11bへ大電力を供給することができるので、短時間で補助電源25の蓄電電力を使い切ることが可能であり、加熱ローラ11の昇温時間の短縮が可能である。
また、ハロゲンヒータ11bへの電圧が高いため、ハロゲンヒータ11bに流れる最大電流が小さくても大電力をハロゲンヒータ11bへ供給することが可能であり、短時間で加熱ローラ11を昇温することが可能である。
図29は本発明の実施形態1における定着装置の回路構成を示す。この実施形態1では、上記参考形態14において、昇圧手段35の代りに昇圧手段35aが設けられる。この昇圧手段35aの入力側は充放電切替手段27を介して補助電源25に接続され、昇圧手段35aの出力側は発熱部材11bに接続される。
補助電源25は例えば1300F、2.5Vのキャパシタセルを複数個直列に接続して構成される。補助電源25からの電力は、充放電切替手段27を介して昇圧手段35aにより昇圧され、発熱部材11bに供給される。温度検知手段36は加熱ローラ11の表面温度を検知する。昇圧手段35aは、温度検知手段36からの検知信号に基づいて、補助電源25からの入力電圧を所定のタイミングで所定の電圧に昇圧し、つまり、補助電源25からの入力電圧をどのタイミングでどれだけ上げるかを制御する制御手段を有する。この制御手段は、昇圧手段35aの外部に設けてもよい。
図30に示すように、昇圧手段35aは、上記制御手段にて補助発熱部材11bによって加熱されて温度が上昇する加熱ローラ11の温度を検知する温度検知手段36からの情報を基に昇圧設定を変える。図31は、補助電源25から昇圧手段35aへ入力される入力電圧Vinと、補助発熱部材11bに昇圧手段35aから出力される出力電圧Voutの時間的な変化、及び加熱ローラ11の温度の時間的な変化を示す。
加熱ローラ11の昇温時間を短くするためには、補助発熱部材11bへの供給電力を大きくすればよい。例えば、補助発熱部材11bへ電力を供給する電源装置は、200Vの商用電源を用いたり、2次電池を用いる等の定電圧電源を用いたりすることもできる。しかし、補助発熱部材11bへの供給電力をあまり大きくしすぎると、温度検知手段36の検知時間遅れが問題となり、加熱ローラ11の温度がオーバーシュートしてしまうという問題がある。本実施形態1では、補助発熱部材11bへの供給電力を大きくする手段として補助電源25のキャパシタを用いているが、加熱ローラ11の温度オーバーシュートを防ぐために、昇圧手段35aは、上記制御手段にて、加熱ローラ11の温度が所定の設定温度T1になった時点で、出力電圧Voutを一定の電圧から低減させていく。
このため、昇温時に加熱ローラ11の温度のオーバーシュートを確実に低減することができるとともに、電力供給前の加熱ローラ11の温度が何度であっても加熱ローラ11の温度のオーバーシュートを低減することができる。これは、本実施形態1の画像形成装置をある人が稼働させた直後に次の人が稼働させる場合など、加熱ローラ11の温度が通常よりも高くなっている場合に特に有効に機能する。
このように本実施形態1によれば、加熱ローラ11の温度が高い際には、加熱ローラ11への供給電圧を下げて加熱ローラ11への電力供給量を少なくするので、加熱ローラ11の急激な温度上昇が緩和されて温度検知手段36の温度検知の時間遅れがあっても正確な加熱ローラ11の温度検知ができてフィードバックの精度が上がるため、安全に加熱ローラ11の温度のオーバーシュートが少ない短時間昇温構成を実現できる。
また、システムが暴走して加熱ローラ11への電力供給のオン/オフ制御が不能になっても、一定時間後には補助電源25から発熱部材11bへの電力供給量が自然に低下するので、加熱ローラ11が高温になり記録紙が発火する危険を減らすことができるため、システム暴走時の安全性が高い短時間昇温可能な加熱装置を実現できる。
また、加熱ローラ11の温度が高い際には、加熱ローラ11への供給電圧を下げて発熱部材11bへの電力供給量を少なくする。これにより、温度検知手段36の温度検知の時間遅れがなく正確なフィードバックが可能になるため、安全に加熱ローラ11の温度のオーバーシュートが少ない短時間昇温構成を実現できる。
また、加熱ローラ11の温度が上昇して高い温度に到達する際には、加熱ローラ11への供給電圧を下げて発熱部材11bへの電力供給量を少なくすることで、温度検知手段36の温度検知の時間遅れがあっても正確なフィードバックが可能になるため、加熱ローラ11の温度のオーバーシュートが少ない短時間昇温構成を安全に実現する。
また、商用電源の制限を越える最大供給電力を加熱装置に投入できるため、立ち上がり時間が短い装置を提供できる。
また、商用電源の制限を越える最大供給電力を加熱装置に投入できるため、加熱装置の立ち上がり時間が短い画像形成装置を提供できる。
次に、本発明の実施形態2について説明する。この実施形態2では、上記実施形態1において、昇圧手段35aの代りに、補助発熱部材11bによって加熱されて温度が上昇する加熱ローラ11の温度を検知する温度検知手段36の情報を基に昇圧設定を変えて徐々に出力電圧Voutを変化させる制御手段を有する昇圧手段が用いられる。
図32は、本実施形態2において補助電源25から昇圧手段へ入力される入力電圧Vinと、補助発熱部材11bへ昇圧手段から出力される出力電圧Voutの時間的な変化、及び加熱ローラ11の温度の時間的な変化を示す。
加熱ローラ11の昇温時間を短くするためには、発熱部材11bへの供給電力を大きくすればよい。例えば、発熱部材11bへ電力を供給する電源装置は、200Vの商用電源を用いたり、2次電池等の定電圧電源を用いたりすることもある。しかし、発熱部材11bへの供給電力をあまり大きくしすぎると、温度検知手段36の検知時間遅れが問題となり、加熱ローラ11の温度がオーバーシュートしてしまうという問題がある。本実施形態2では、発熱部材11bへの供給電力を大きくする手段として補助電源25のキャパシタを用いているが、加熱ローラ11の温度オーバーシュートを防ぐために、昇圧手段は、上記制御手段にて、温度検知手段36からの検知信号に基づき、加熱ローラ11が所定の設定温度T1になった時点で、出力電圧Voutを低く切り替える。
このため、昇温時に加熱ローラ11の温度のオーバーシュートを確実に低減することができるとともに、電力供給前の加熱ローラ11の温度が何度であっても加熱ローラ11の温度のオーバーシュートを低減することができる。これは、本実施形態2の画像形成装置をある人が稼働させた直後に次の人が稼働させる場合など、加熱ローラ11の温度が高くなっている場合に特に有効に機能する。本実施形態2は、昇圧手段の出力電圧Voutを徐々に低減するのではなく、低く切り替えるので、回路が簡素化されると共に、確実に加熱ローラ11の温度のオーバーシュートを低減することが可能となる。
このように本実施形態2によれば、加熱ローラ11の温度が上昇して高い温度になった際には、昇圧手段の出力電圧Voutを下げて発熱部材11bへの電力供給量を少なくするので、温度検知手段36の温度検知の時間遅れがなく正確なフィードバックが可能になるため、安全に加熱ローラ11の温度のオーバーシュートが少ない短時間昇温構成を実現できる。
次に、本発明の実施形態3について説明する。この実施形態3では、上記実施形態2において、図34に示すように、上記昇圧手段の代りに昇圧手段35bが用いられる。昇圧手段35bは、入力電圧Vinと出力電圧Voutが図32とほぼ同等である。本実施形態3では、図33に示すように昇圧手段35bは、補助発熱部材11bによって加熱されて温度が上昇する加熱ローラ11の温度を検知する温度検知手段36からの情報を基にして昇圧設定を変えることで加熱ローラ11の温度が所定の設定温度T1になった時点で出力電圧Voutを低く切り替えるとともに、補助電源25の残電力を検知する残電力検知手段37からの情報を基にして昇圧設定を変え、補助電源25の残電力が所定の残電力より高かった場合に出力電圧Voutを低くする制御手段を有する。
補助電源25から昇圧手段35bへ入力される入力電圧Vinと、補助発熱部材11bに昇圧手段35bから出力される出力電圧Vout及び加熱ローラ11の温度の時間的な変化は図33で示される。補助電源25の残電力が多いと、加熱ローラ11の温度が高くなっている際に補助発熱部材11bへの大きな電力の供給が続くと、加熱ローラ11の温度が所定の温度をオーバーシュートしてしまう。そこで、昇圧手段35bは、上記制御手段にて、加熱ローラ11の温度が設定変更温度Y1になる時点で残電力検知手段37からの情報により補助電源25の残電力量を検知し、補助電源25の電力量が所定の値よりも大きかった場合に、出力電圧Voutを低く切り替える。
このため、昇温時に加熱ローラ11の温度のオーバーシュートを確実に低減することができるとともに、電力供給前の加熱ローラ11の温度が何度であっても、補助電源25の残電力が大きかった場合には加熱ローラ11の温度のオーバーシュートを低減することができる。これは、本実施形態3の画像形成装置をある人が稼働させた直後に次の人が稼働させる場合など、加熱ローラ11の温度が通常より高くなっている場合に特に有効に機能する。また、昇圧手段35bが出力電圧Voutを徐々に低減するのではなく、低く切り替えるので、回路が簡素化されると共に、確実に加熱ローラ11の温度のオーバーシュートを低減することが可能となる。
このように本実施形態3によれば、補助電源25の電圧が高電圧であればその電圧を下げて補助発熱部材11bへの電力供給量を少なくするので、温度検知手段36の温度検知の時間遅れがなく正確なフィードバックが可能になるため、安全に加熱ローラ11の温度のオーバーシュートが少ない短時間昇温構成を実現できる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、加熱部が定着ベルトなどであってもよい。