JP4250346B2 - 野菜の調理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、野菜の調理方法に関する。さらに詳しくは、食感に優れ、色調・艶が良く、離水量が少なくボリューム感が維持され、かつ保存性に優れた野菜炒めの調理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
大量の野菜を一度に炒める場合、固定式あるいは回転式の釜による一回だけの加熱処理で調理されている。この場合、低温の食材が一度に投入されるため、釜の表面温度は急激に低下する上、加熱面積に比較して調理される食材の量が多くなるため、効率的な熱伝導ができず、全体に火が通るまでに長時間を要する結果となる。食材の組織は、この間に生じる緩慢加熱により傷害を受ける上、長時間におよぶ攪拌操作による物理的な損傷を受け、さらには、攪拌が不十分な部分における過加熱による熱的損傷を受ける。さらに、前処理での水洗後の水切りによっても、野菜表面に残存している水分により、部分的に茹でた状態になるため、旨み成分の流出と外部水分の侵入という現象も起こる。これらの原因により、固定式あるいは回転式の釜による一回だけの加熱処理で調理した野菜炒めは、おいしい野菜炒めの特徴であるシャキシャキ感を損なうという問題がある。
【0003】
さらに、大量調理される一般的な野菜炒めは、日持ちを良くするために、次亜塩素酸ナトリウム等による処理が行われているが、この処理方法では、十分な日持効果が得られないため、調理時の加熱による殺菌、高濃度の次亜塩素酸ナトリウムによる処理、さらには、pH調整剤を中心とする制菌剤を別途添加して対処し、日持効果を得ざるをえないという結果を招いている。このため、本来のおいしさという観点からすれば、過剰な加熱や制菌剤の添加を免れない。
【0004】
これらのことが重なって製造された最終食品は、組織の破壊が進行し、内部の水分とともに旨み成分が流失することにより、シャキシャキ感も旨みもないものとなる。その上、過剰の制菌剤の添加による食味への悪影響も避けられない、
【0005】
そこで、食品の風味を維持し、かつ日持ちを良くする調理方法が望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、食感に優れ、色調・艶が良く、離水量が少なくボリューム感が維持され、かつ保存性に優れた野菜炒めを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討した結果、加熱工程を二段階に分けて調理することにより、上記問題点を解決できることを見出した。すなわち、一次加熱として熱伝導度の高い液体状の加熱油脂を直接野菜にかけることによって、まず、野菜表面に残存する水分を一気に蒸発させると同時に、食品の品温をある程度まで急速に上昇させる。ついで、これに続く本調理を、比較的高い温度で、好ましくは、油かけの温度よりも高い温度で炒め、調理することにより、野菜が余分な水分を含まない状態で調理でき、また、すでに食材自体の温度も一次加熱で上昇しているため、調理時間を大幅に短縮できることを可能にした。このことにより、野菜からの離水を抑制し、旨み、ジューシー感、および適度なシャキシャキ感などの食感を維持し、さらに、色調、艶に優れた野菜炒めが得られることを見出して、本発明を完成させた。
【0008】
また、本発明者らは、上記調理の前に、酸、アルカリ、及び/又はアルコールで原料野菜の前処理を行い、原料野菜の細菌数を予め十分に低下させることで、必要以上の加熱を行わなくても十分な保存性が得られ、より大きな保存性を得るために制菌剤を併用する場合でも制菌剤の使用量を少なくすることができること、及び、それにより、高温短時間で調理ができ、食感、色調、艶、ボリューム感に優れた野菜炒めが得られることを見出して、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、野菜に加熱油脂を流下させて油かけを行う工程、および該油かけした野菜を炒める工程を含む、野菜の調理方法に関する。
【0010】
好ましい実施態様においては、前記加熱油脂の温度が160〜180℃であり、炒め温度が140℃以上の温度である。
【0011】
好ましい実施態様においては、前記加熱油脂の温度が160〜180℃であり、炒め温度が170℃以上、好ましくは180℃以上である。
【0012】
別の好ましい実施態様においては、前記野菜を炒める工程が、油かけの温度よりも高温で炒める工程である。
【0013】
さらに好ましい実施態様においては、前記油かけを行う工程の前に、酸、アルカリ及び/又はアルコールで野菜の前処理を行う工程を含む。
【0014】
好ましい実施態様においては、前記アルカリによる前処理が貝殻焼成物とサポニンとの混合物による前処理である。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる野菜には特に制限はない。例えば、ホウレン草、ミズナ、ブロッコリー、キャベツ、カリフラワー、ピーマン、カボチャ、タマネギ、ダイコン、ニンジン、ゴボウ、ジャガイモ、サツマイモなどが挙げられる。これらの野菜は、適切な大きさにカットして用いられる。
【0016】
本発明の野菜の調理方法は、野菜に油かけ処理を行い、ついで、野菜を調理する(炒める)点にあり、好ましくは、油かけより高い温度で野菜を調理する(炒める)点に特徴があるが、この調理する野菜に前処理を行うことが好ましいので、まず、野菜の前処理について説明する。本発明の好ましい態様では、従来の次亜塩素酸ナトリウム処理のかわりに、酸、アルカリ及び/又はアルコールで前処理が行われる。
【0017】
前処理に用いられる酸としては、無機酸、有機酸またはそれらの塩が用いられる。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。これらの酸またはその塩は単独で用いても良く、2種以上組合せて用いてもよい。ナトリウム過剰摂取を避ける観点から、カリウム塩が好ましい。
【0018】
無機酸またはその塩としては、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、ピロリン酸二水素ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウムアンモニウム等が挙げられる。
【0019】
有機酸またはその塩としては、酢酸、氷酢酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、アジピン酸、フマル酸、グルコン酸、グルコノデルタラクトン、フィチン酸等の酸、およびそれらの塩(例えば、酒石酸水素カリウムなど)が挙げられるが、これらに限定されない。また、本発明においては、クエン酸、酢酸等の有機酸を含有する醸造酢、梅酢、果汁等も有機酸に含まれる。
【0020】
酸による前処理は、上記酸の1又は2以上をpHが約1〜6、好ましくはpHが約2〜5となるように溶解し、これに調理すべき食品材料を適切な時間、例えば、10秒〜60分、好ましくは2〜20分間浸漬する。浸漬後、食品材料を水洗して、酸を洗い流すことが食品の風味を維持する上で好ましい。浸漬後アルカリ中和してもよいが、ナトリウム過剰摂取を避ける観点から、カリウムで中和することが好ましい。
【0021】
前処理に用いられるアルカリとしては、金属水酸化物、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及び/又は水に溶解したときにアルカリ性を呈する物質が好ましく用いられる。
【0022】
これらの例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸アンモニウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ピロリン酸四カリウム、焼成カルシウム等の水に溶解したときにアルカリ性となる物質が挙げられる。アルカリ処理は、上記アルカリ剤を単独で用いてもよく、混合して用いてもよい。
【0023】
水に溶解したときにアルカリ性を呈する物質としては、貝殻を焼成して得られる貝殻焼成物が挙げられる。貝殻焼成物としては、約600℃〜約1200℃で焼成し、微粉砕したものが好ましく用いられる。
【0024】
貝殻としては、ホタテ貝、カキ貝等の二枚貝、サザエ、アワビ等の巻き貝の貝殻などが挙げられるが、ホタテ貝の貝殻が好ましく用いられる。
【0025】
貝殻焼成物を用いる場合、サポニンを同時に使用すると、より殺菌効果が高くなる。サポニンとしては、特に限定されるものではないが、バラ科キラヤ樹皮由来のサポニン(キラヤサーベラス)、マメ科エンジュの花またはその蕾由来のサポニン、マメ科大豆由来のサポニン、ツバキ科チャ種子由来のサポニン、アサガオ科サトウダイコン由来のビートサポニン等が挙げられ、これらの市販品が使用できる。中でも、キラヤサポニンがもっとも好ましく使用できる。
【0026】
前処理に使用する場合、上記貝殻焼成物とサポニンとは重量比約2000/1〜1/2で用いられる。より好ましくは約500/1〜2/1、さらに好ましくは約50/1〜約1/1である。
【0027】
貝殻焼成物を用いる場合、さらに、貝殻焼成物に対して、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどの脂肪酸エステル類を、重量比約2000/1〜1/1の割合で添加することにより、さらに保存性の向上が期待される。
【0028】
アルカリによる前処理は、上記アルカリ剤の1又は2以上をpHが約8〜14、好ましくはpHが約10〜13となるように溶解し、これに調理すべき食品材料を適切な時間、例えば、10秒〜60分間、好ましくは2〜20分間浸漬する。浸漬後、食品材料を水洗して、アルカリを洗い流すことが食品の風味を維持する上で好ましい。あるいは、例えば上記酸で中和して用いてもよい。
【0029】
アルコール処理は、1〜95V/V%、好ましくは5〜50V/V%のエタノールが用いられ、これに調理すべき食品を適切な時間、例えば、10秒〜60分間、好ましくは2〜20分間浸漬する。浸漬後、水洗して、エタノールを洗い流すことが、食品の風味を維持する上で好ましい。
【0030】
酸処理、アルカリ処理、アルコール処理は組合せて用いてもよい。酸処理の後にアルカリ処理を行ってもよいし、アルカリ処理の後に酸処理を行ってもよい。
【0031】
また、処理する食品材料と前処理溶液の比率は、食品材料10重量部に対して、前処理溶液約5〜500重量部であることが好ましい。
【0032】
さらに、前処理工程において、必要に応じて、従来から食品の保存料として用いられている制菌効果、殺菌効果、保存効果を有することが知られている各種成分、制菌効果を向上させる補助成分、味覚調整剤等を配合することもできる。
【0033】
制菌効果、殺菌効果、保存効果を有することが知られている各種成分としては、例えば、有機酸、ε−ポリリシン、プロタミン、リゾチーム、ペクチン分解物、グレープフルーツ種子抽出物、シソ抽出物、ショウガ抽出物、タデ抽出物、ニンニク抽出物、ブドウ果皮抽出物、ホコッシ抽出物、孟宗竹抽出物、ラクトフェリン濃縮物、ワサビ抽出物、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、グリシン、ビタミンB1等が挙げられる。
【0034】
制菌効果を向上させる補助成分として、例えば、野菜表面の洗浄性を高めることによって保存性を向上させる効果を有するグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなど、および上記サポニンなどの界面活性効果を有するものが挙げられる。
【0035】
味覚調整剤としては、例えば、特許第1438050号公報に記載された植物繊維物質の焙煎抽出エキス、特許第1867643号に記載された植物繊維物質の焙煎抽出エキスの有機溶媒抽出物等の酸味、酸臭を低減させる効果を有する物質、トレハロース、ソルビット、ステビア等の糖類ないし甘味成分が例示される。
【0036】
上記添加することができる各種成分は、単独で添加してもよく、2以上組み合わせて用いてもよい。これらの成分の添加量は、通常用いられる範囲から任意に選択でき、種類によっても異なるが、味覚に影響を与えず、かつ保存効果等が発揮される範囲であり、概ね、0.01重量部〜1重量部である。
【0037】
上記の前処理により、野菜が滅菌され、保存性が高められる。前処理された野菜には、本発明の調理方法が適用される。本発明の調理方法が適用される野菜は、必ずしも前処理されている必要はなく、調理された野菜の流通が速く、保存期間が短くてすむ場合、野菜の前処理は必要がない場合がある。
【0038】
本発明の調理方法は、まず、野菜を加熱油脂に接触させて一次加熱を行う。この時、加熱油槽中に野菜を潜らせる方法では、大量の野菜を処理する場合、加熱により野菜表面に残存していた水分が一気に気化して大量の気泡を生じ、野菜全体を油槽中に潜行させることを妨げ、短時間で均一に処理することを困難とし、さらに高温の油が飛び散るため、作業上の危険性が増大し、製造ラインの汚染を引き起こす。このため、本発明では、野菜の上から加熱油脂をかける方法を採用する。この油をかける方法としては、加熱した油脂を野菜全体に均一に行き渡るような十分な量の加熱油脂を供給できる方法であれば、油をかける方法は特に限定されない。しかし、油脂の酸化、均一に行き渡らせること、およびラインの汚染を防止することなどを考慮すると、スプレー、シャワーリングなどの方法よりも、膜状に流下させる方法が好ましい。例えば、加熱油脂を一旦貯留するオイルパンを製造ライン上に設け、この加熱油脂を膜状にオーバーフローさせ、この下を前処理した野菜を入れたバケットをコンベアなどで移動させて通過させることにより行われる。従って、野菜の加熱処理は短時間である。このタイプのフライヤーとしてアサヒ装設(株)製のヒートウエーブフライヤーが挙げられる。油かけ後は、野菜への油脂の吸着率が4〜15重量部、好ましくは6〜10重量部となるように油きりを行う。
【0039】
流下させる加熱油脂の温度は、高温になるほど粘度が下がるため、野菜への吸着率を低下させることができる。油温が160℃を下回ると、野菜への油の付着量が多くなりすぎるためベタベタとした食感となり、好ましくない。他方、油温が180℃を超えると、食材の厚みの薄い部分での加熱による組織の破壊が進行すると同時に、水の急激な気化によって起こる油の飛散による作業上の危険性が増大する。このため、油かけに用いる加熱油脂の温度は、160〜180℃が好ましく、165〜175℃がさらに好ましい。この温度で油かけ処理することにより、野菜の表面が固化され、野菜の組織損傷を低減し、食感の維持、色調の低下抑制の効果が得られる。
【0040】
使用される油脂としては、食用に用いられる油脂であれば特に制限はないが、コーン油、ごま油、菜種油、綿実油、米糠油、大豆油、豚脂、牛脂、羊脂などが挙げられる。
【0041】
次に、油かけした野菜は、炒められる。炒めは高出力の調理器を用いて行うことが好ましく、直火型、高圧タイプの蒸気釜、直火と蒸気の併用タイプの調理器が好ましく用いられる。中でもガスの直火の高温性と、上記の高カロリー性を併せ持つハイブリド方式がより好ましく、このタイプの加熱釜としては(株)カジワラのガスチームが挙げられる。炒める温度は、140℃以上が好ましく、170℃以上がより好ましい。従来、焦げを生じないように蒸気釜で炒めているが、この蒸気釜で炒める場合と比べると、短時間で炒められる。高温の油かけ処理により、野菜の温度が上昇し、野菜の表面が油脂でコーティングされているので、熱伝導が良好で均一に加熱することができるため、直火で焦げの発生が抑制される。
【0042】
さらに、調理に際して、保存性向上の目的から、制菌剤を添加してもよい。制菌剤としては、一般に食品に使用されるものであれば特に制限はないが、本発明のおいしさを求める目的からすれば、例えば、酢酸ナトリウム、グリシンおよび比較的温和なpH調整剤を併用したものなど、味覚への影響の少ない制菌剤が望ましい。
【0043】
調理(炒め)に際して、野菜の味覚を損なうことがなく、野菜の軟化、煮崩れ、変色などを防止するために、軟化・煮崩れ防止剤を添加することもできる。軟化・煮崩れ防止剤として、カルシウム塩も好ましく用いられる。カルシウムイオンは、野菜表面のペクチン質を強化し、食感維持に効果を有する。
【0044】
カルシウム塩としては、有機酸とカルシウムとの塩(例えば、乳酸カルシウム、酢酸カルシウムなど)、および無機酸とカルシウムとの塩(例えば、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、炭酸カルシウムなど)のいずれもが使用される。なかでも、乳酸カルシウムが、溶解性に優れる、味覚に変化を与えないなどの点から、最も好ましい。
【0045】
カルシウム塩は単独で用いてもよいが、これに、クエン酸3ナトリウム、クエン酸1カリウム、乳酸ナトリウム、フマル酸1ナトリウム、DL−リンゴ酸ナトリウム、DL−酒石酸ナトリウム、コハク酸1ナトリウム、あるいは酢酸ナトリウムを添加して用いてもよい。
【0046】
これらの軟化・煮崩れ防止剤の添加量は、調理する野菜に応じて決定すればよいが、一般的には、野菜100重量部に対して、好ましくは0.05〜1重量部、より好ましくは0.2〜0.7重量部である。
【0047】
高温(好ましくは、直火による180℃以上の温度)で炒めるに際し、粉末あるいは液状の調味料を添加して、味を調整することができる。炒め終わった後は、油切りを行い、余分な油を除いて、冷却する。冷却には、真空冷却などの方法がある。
【0048】
【実施例】
以下、本発明を、実施例を挙げて説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。なお、実施例で用いた貝殻焼成カルシウムは、株式会社エヌ・シー・コーポレーションのホタテ貝焼成物である。
【0049】
(前処理の検討)
にんじんをカットし、表1に記載の条件で前処理し、処理直後の生菌数を測定した。結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
この結果は、本発明の前処理により、無処理に比べて一般生菌数が2オーダー減少し、従来の次亜塩素酸ナトリウム処理よりも、1オーダーも生菌数が減少したことがわかった。
【0052】
(実施例1〜6、比較例1〜4)
キャベツ70重量部、にんじん15重量部、ピーマン5重量部をそれぞれカットし、表2に記載の条件で前処理し、ついで、表2に記載の方法で調理した。調理に際して、比較例2、比較例4および実施例5では、制菌剤を野菜100重量部に対して0.5重量部加えた。また、全てに、調理時に乳酸カルシウムを野菜100重量部に対して0.2重量部加えた。加熱調理開始後2分で粉末調味料、醤油を適量加えて味付けをした。ついで、油切りを行い、20℃まで真空冷却を行った。保存は25℃で行った。
【0053】
それぞれの調理法で得られた野菜炒めについて、食感、色調・艶およびボリューム感について官能検査を行った。また、調製直後、24時間後および48時間後に一般生菌数を調べて保存性を検討した。結果を表2に示す。なお、官能評価は、以下の基準で行った。
5:良い
4:やや良い
3:普通
2:やや悪い
1:悪い
【0054】
さらに、制菌剤としては、酢酸ナトリウムとクエン酸とグリシンをそれぞれ、70重量部、10重量部、および20重量部含む混合物を用いた。
【0055】
【表2】
【0056】
この結果、従来の次亜塩素酸ナトリウム処理による調理方法(比較例1)では、色調・艶は優れているものの、ボリューム感がなく、食感も悪かった。調理時に制菌剤を添加し、比較例1と同様に処理した比較例2は、食感、色調・艶、ボリューム感が悪かった。また、前処理をしないで従来の方法で調理した場合(比較例3)、食感、色調・艶、ボリューム感は良いが、保存性が悪かった。これに対して、本発明の方法を適用した実施例1は、食感、色調・艶、ボリューム感も良く、保存性も従来の方法より改善されていた。
【0057】
さらに前処理を行った後に、本発明の方法で調理した実施例2〜4は、比較例2と比べて前処理の効果が表れており、食感、色調・艶、ボリューム感ともに良く、焦げも発生しなかった。そのうえ、保存性にも優れていた。また、前処理後、制菌剤を加えて調理した実施例5も、同様に制菌剤を添加して調理した比較例2(次亜塩素酸ナトリウムを用いる方法)と比べて、はるかに食感、色調・艶もよく、ボリューム感もあった。さらに、保存性も向上していた。貝殻焼成カルシウムで前処理した実施例6は、食感、色調・艶、ボリューム感ともに良く、焦げも発生しなかった。そのうえ、制菌剤を加えていないにもかかわらず、試験した中では保存性が最も優れていた。
【0058】
以上から、本発明により新たな調理方法が提供されることがわかる。特に、前処理を行うことにより、従来用いられている次亜塩素酸ナトリウムは、若干安全性に問題があるが、これを使用しないで、食感、色調・艶、ボリューム感を損なうことなく、保存性を高めることができる。
【0059】
(実施例7)
ニンジンをほぼ、一定の大きさとなるようにカットし、実施例6と同じ条件で前処理した。この前処理したニンジンを170℃の加熱油が流下、循環する装置を用いて、流下油をくぐらせた。その後、180℃のパンで直火で加熱した。調理開始時に、制菌剤(酢酸ナトリウム70重量部、グリシン20重量部およびクエン酸10重量部を混合したもの)を、ニンジン100重量部に対して、0.5重量部添加し、乳酸カルシウムを同じく0.2重量部添加した。
【0060】
調理開始後、サンプリングしたニンジンの中心温度を中心温度計で測定した。比較として、蒸気釜で調理する場合の温度変化を同様に測定した。結果を表3に示す。
【0061】
【表3】
【0062】
表3の結果は、本発明の方法で行った実施例7は、従来の方法である比較例5よりも温度上昇が速く、内部温度が90℃以上になるのに、1分以上も差が生じることが示された。
【0063】
さらに、調理前と調理、真空冷却後のニンジンの重量を測定して、離水率を求めた。結果を表4に示す。
【0064】
【表4】
【0065】
表4の結果は、従来の調理方法では、離水率が30%であるのに対し、本発明の調理方法では離水率は17%程度であったことを示している。
【0066】
表3および表4の結果から、従来の調理法は、100℃に到達した後も、保存性向上のため、2分間の加熱が必要であり、これにより、食感、ボリューム感が低下すると思われるが、本発明においては、前処理で十分滅菌されているうえ高温短時間で処理されるため、保存性に優れ、離水率も低下するため、食感、ボリューム感が維持されるとともに、色調・艶よく仕上がると思われる。
【0067】
【発明の効果】
野菜に加熱油脂を均一に油かけを行う工程、および該油かけした野菜を炒める工程を含む野菜の調理方法を提供する。本発明の方法により、食感に優れ、色調・艶が良く、離水量が少なくボリューム感が維持され、かつ保存性に優れた野菜炒めが得られる。調理前の野菜を酸、アルカリ及び/又はアルコールで前処理すると、さらに保存性、食感、色調・艶、ボリューム感が向上する。
【0068】
特に、野菜を前処理することにより、除菌されることから、食感を重視した高温、短時間炒めでおいしさが保持される。また、油かけによる野菜表面の組織が固化されることにより食感が維持され、短時間炒めにより、離水量が小さく、野菜内部に水分を保持する結果、ボリューム感が維持される。さらに油かけにより均一に表面がコーティングされているので、高温、短時間処理が可能で、焦げ付きも少ない野菜炒めが得られる。
Claims (4)
- 野菜に加熱油脂を流下させて油かけを行う工程、および該油かけした野菜を該油かけの温度よりも高温で炒める工程を含む、野菜の調理方法。
- 前記加熱油脂の温度が160〜180℃である、請求項1に記載の調理方法。
- 前記油かけを行う工程の前に、酸、アルカリ及び/又はアルコールで野菜の前処理を行う工程を含む、請求項1または2に記載の方法。
- 前記アルカリによる前処理が貝殻焼成物とサポニンとの混合物による前処理である、請求項3に記載の方法。
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