JP4249042B2 - 差動チャージポンプ用オフセットキャンセル装置 - Google Patents

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Description

この発明は、差動チャージポンプ用オフセットキャンセル装置、特に、差動チャージポンプの出力電位差に依存しない電流駆動特性をもつ差動チャージポンプ用オフセットキャンセル装置に関するものである。
従来の差動チャージポンプ回路は、図7に示すように構成されていた。即ち、電流源11及び12を含む第1のカレントパス1と、電流源21及び22を含む第2のカレントパス2とを電源VDDとアース間に接続すると共に、差動対3を構成し、定電流源4に接続されたDOWN信号回路5を第1のカレントパス1の正ノード6に接続し、UP信号回路7を第2のカレントパス2の負ノード8に接続したものである。
このような構成において、UP/DOWNの信号が電流信号に変換されて差動対3に至り、カレントパス1、2の電流を引き抜くことによって相対的に一方のカレントパスに対して他方のカレントパスに流れる電流を変化させ、差電流を生成すると共に、電圧信号から電流信号への変換を行っている。差動対3における第1のカレントパスの正ノード6の電位と第2のカレントパスの負ノード8の電位が動作時に等しくない場合は、電流源11、21を構成しているトランジスタ(図示せず)のドレイン電圧が異なることになり、第1、第2のカレントパス1、2の対をなす電流源11、21の電流にアンバランスが生じる。
電流アンバランスの原因は、MOSトランジスタの飽和領域の電流特性がドレイン電流に依存することによる。式で説明すると、トランジスタのドレイン電流IDと、ゲート電圧VGS、ドレイン電圧VDS、スレッシュホールド電圧VTHとの関係は次のようになる。(例えば非特許文献1参照)。
ID=K0(VGS−VTH)2[1+λ(VDS−(VGS−VTH))]
即ち、ドレイン電流値はドレイン電圧に依存するものであるため、図7の各電流源の詳細構成を示した図8により説明すると、差動対3の出力ノード6、8の電位に差があった場合は、第1、第2のカレントパス1、2の対をなす電流源11と21及び12と22の電流値がそれぞれ異なることになる。図中の太い矢印は電流が大きいことを示し、細い矢印は電流が小さいことを示している。
出力ノード6、8の電位差は、図示のように、正ノード6の電位が負ノード8の電位より高いとすると、NMOS電流源12、22は正ノード6の第1のカレントパス1の方が多く流れる。
この図では、PMOS側、NMOSの電流源とも2個のMOSトランジスタをカスコード構成にして定電流性を向上させているが、実際にはそれでもノードX、Yや、ノードZ、Wにはある程度の電位差が残っている。カスコード構成をとらない場合は、更に電位差が大きくなってしまうと考えられる。
一方、PMOS電流源11、21は、負ノード8の第2のカレントパス2の方が第1のカレントパス1よりもドレイン・ソース間の電位差が大きいため、負ノード8の第2のカレントパス2の電流源の方が多く流れる。従って、NMOS、PMOS合わせて考えると、正ノード6の方が対GNDに流れる電流が多く(=NMOS電流源12がより多く流す)、負ノード8の方が対VDDに流れる電流が多く(=PMOS電流源21がより多く流す)なる。この結果、差動対3の出力電位に差があるとき、チャージポンプ特性がその電位差に依存することになる。
その結果、例えばPLL回路のチャージポンプ回路に上記差動チャージポンプ回路を適用した場合、位相比較特性がチャージポンプ回路の出力電位差に応じて変化することになる。
一般的にPLL回路の位相比較器は、参照クロック(もしくはデータ)と、フィードバッククロック間の位相差に応じたパルス信号をチャージポンプ回路に伝え、チャージポンプ回路はそのパルス信号に応じた電流値を出力する。理想的にはチャージポンプ回路の出力電位に関係なく、位相差とチャージポンプ回路に流れる電流量は1対1に対応するはずである。
図9は、差動チャージポンプ回路の出力電位差を変化させた時のPLL回路の位相比較特性を回路シミュレーションした結果を示す図である。横軸は参照クロック(もしくはデータ)と、フィードバッククロック間の位相差を時間に表したものであり、縦軸はその位相毎のチャージポンプ回路に流れる電流の平均値を示している。チャージポンプ回路の平均電流=0の時、PLL回路はロックする。従ってその時の位相差が、PLL回路がロックしたときの位相誤差(=参照クロック(もしくはデータ)と、フィードバッククロックの位相のオフセット)を表している。
従来の差動チャージポンプ回路は、上述のように、チャージポンプ回路の出力電位差によって定電流源の電流値が異なるため、チャージポンプ回路の出力電位差を変化させたときのロック時位相誤差がチャージポンプ回路の出力電位差によって変化している。図9に示すシミュレーションの場合、チャージポンプ回路の出力電位差(正ノード電位−負ノード電位)〜±0.1V変化で、約5psの位相誤差変動となった。
David Johns & Ken Martin 著 "Analog Integrated Circuit Design" John Wiley & Sons,Inc. 1997 発行
従来の差動チャージポンプ回路は上記のように構成されているため、図9のシミュレーションで示された位相誤差変動によりPLL回路の位相調整の精度が劣化することから、高精度の位相調整機能を必要とする高速インタフェースのDLL(Delay-Locked-Loop:位相調整ループ)回路や、CDR(Clock and Data Recovery)回路においては大きな問題点となっていた。
この発明は、上記のような問題点を解消するためになされたもので、電流源のトランジスタのドレイン電圧の変動による駆動電流の変動をキャンセルし、PLL 回路等の位相調整を高精度で行うことができる差動チャージポンプ用オフセットキャンセル装置を提供することを目的とする。
この発明に係る差動チャージポンプ用オフセットキャンセル装置は、一対の電流源を含
む2つのカレントパスによって差動対を構成し、各カレントパスへの入力電流に応じた差
電流を生成する差動チャージポンプ回路において、上記各カレントパス間の出力電位差を
検出し、上記出力電位差に応じて上記差動対を構成している各カレントパスの対をなす電
流源の電流値を制御する制御手段を備え、上記電流源をトランジスタで構成し、上記トランジスタのドレイン電圧を上記出力電位差に応じて制御するようにし、上記各カレントパスのトランジスタにそれぞれ別のトランジスタを並列接続し、一方のカレントパスの別のトランジスタのゲートに他方のカレントパスのトランジスタのドレイン電位を与え、他方のカレントパスの別のトランジスタのゲートに一方のカレントパスのトランジスタのドレイン電位を与えるようにしたものである。
この発明に係る差動チャージポンプ用オフセットキャンセル装置は以上のように構成されているため、電流源のトランジスタのドレイン電圧の変動による駆動電流の変動をキャンセルし、PLL 回路等の位相調整を高精度で行うことができる。
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図にもとづいて説明する。図1は、実施の形態1の基本的な考え方を説明するための概略回路図、図2は、実施の形態1の実施例を示す概略回路図である。図1、図2において、図7と同一または相当部分には同一符号を付して説明を省略する。図1において、図7と異なる点は、差動チャージポンプ回路の出力電位差、即ち、正ノード6と負ノード8との電位差を検出する制御装置30を設け、この制御装置30によって電流源11及び21の電流値を上記電位差に応じて制御することにより、両電流源が同じ電流駆動力となるようにしたものである。
図2の場合は、電流源11、21にそれぞれトランジスタ等のドレイン電圧を制御する素子31を接続し、差動チャージポンプ回路の正ノード6と負ノード8との出力電位差を制御装置30によって検出すると共に、制御装置30によって上記出力電位差に応じてドレイン電圧を制御する素子31のドレイン電圧を制御して電流源11と21が同じ電流駆動力となるようにしたものである。
また、図3は、実施の形態1の他の実施例を示す回路図で、カレントパス1と2に2つのクロスカップルしたMOS トランジスタを設けることにより、正ノード6と負ノード8の出力電位差の検出と、電流源11と21の電流値制御とを合わせて行うようにしたものである。
図4は、図3の出力電位差検出部と電流源の制御部の詳細構成を示す回路図である。
以下、図4のチャージポンプ回路がPLL回路に適用され、例えば正出力ノード6の電位が負出力ノード8の電位より高い状態でロック状態(定常状態)になっている場合を想定して説明する。
第1のカレントパス1のPMOS側を構成するMOS トランジスタMP1とMP5及び第2のカレントパス2を構成するMOS トランジスタMP2 とMP6はそれぞれカスコード構成とされ、正負出力ノード6、8に対して高い定電流性をもっている。しかし厳密には、トランジスタMP1、MP2 がある程度の有限な出力インピーダンスをもつことから、トランジスタMP3、MP4がない場合には、ノードXはノードYより高い電圧となる。トランジスタMP1とMP2にとって、このドレイン電圧の違いが、流れる電流の差を生じさせることになる。
トランジスタMP3、MP4はそれぞれゲート端子を互いのドレイン端子に接続し、クロスカップルを構成している。正出力ノード6の電位が負出力ノード8の電位より高い場合には、MP3のゲート電圧の方がMP4のゲート電圧より低いことから、MP3の方がよりON状態になっているといえる。言い換えると、MP3の方がMP4より電流駆動力が大きいと言える。このMP3、MP4の2つのトランジスタにより、正出力ノード6の方が負出力ノード8より高電位の場合、ノードXから正出力ノード6間のMP3、MP5 によるON抵抗は、ノードYから負出力ノード8間のMP4、MP6によるON抵抗より低くなる。
従って、正出力ノード6の電位が負出力ノード8の電位より高い場合でも、MP3、MP4のサイズを調整することにより、ノードXの電圧とノードYの電圧を等しくすることが出来る。
これにより、ノードX、Yは正・負出力ノード6、8の電位差に関係なく等しい値にすることが出来、トランジスタMP1、MP2は同じ電流駆動力となる。
更に、例えばNMOS側のトランジスタMN1、MN2の定電流性が問題になる場合にも同様な調整が可能である。例えば、正出力ノード6の電位が負出力ノード8の電位より高い場合、MN1のドレイン電流の方がMN2のドレイン電流より大きくなる。従って、MP3、MP4のサイズを調整し、逆にノードXの電圧がノードYの電圧より低くなるようにする。
これにより、トランジスタMP1のドレイン電流がMP2より大きくなる。MN1のMN2に対する電流増加分とMP1のMP2に対する電流増加分が等しくなるようにMP3、MP4のサイズを調整することで、差動チャージポンプ回路の出力電位差に起因した電流アンバランスによるオフセット電流を全体としてキャンセルすることが可能となる。
図6に示す位相比較特性のシミュレーションを行って効果を確認した。図9に示すシミュレーションにおいて、オフセットキャンセル機構なしで5ps であった位相変動が、同じ条件で1ps未満に収まることが図6のシミュレーションで確認できた。
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2を図にもとづいて説明する。図5は、実施の形態2の構成を示す概略回路図である。この図において、図1と同一または相当部分には同一符号を付して説明を省略する。図1と異なる点は、差動チャージポンプ回路と同構成とされたレプリカの差動チャージポンプ回路を設けると共に、差動チャージポンプ回路の出力電位差と、レプリカ回路の出力電位差とをコンパレータで比較し、両出力電位差が等しくなるように差動チャージポンプ回路及びレプリカ回路の電流源の電流値を制御するようにした点である。
図5は、差動対3を含む差動チャージポンプ回路と同構成とされ、UP=DOWNの状態のレプリカとなるレプリカ回路40を設け、差動チャージポンプ回路の出力電位差δV1と、レプリカ回路40の出力電位差δV2とをコンパレータ41に入力し、コンパレータ41の比較結果を制御装置30を経てレプリカ回路及び差動チャージポンプ回路の電流源11、21に図示のようにフィードバックし、出力電位差δV1とδV2とが等しくなるように制御装置30によって各電流源の電流値を制御するようにしたものである。
従って、例えばδV2がδV1より小さい場合には、δV2=δV1になるまでレプリカ回路40の一方の電流源11または21の電流値を大きくする。この電流値の制御は、実際に使用されている差動チャージポンプ回路にも図示のように行われる。レプリカ回路40が常にUP=DOWN状態の差動チャージポンプ回路のレプリカであることから、このフィードバック制御が定常状態になってPLL がロックしている時は、UP信号とDOWN信号がバランスがとれてロックしていることになる。レプリカ回路40を用いて各カレントパスの電流源を制御する方法は、サイズの調整といったトランジスタの性能に依存した調整とは無関係に実現できるため、デバイスに依らない高精度の制御が可能となる。
この発明の実施の形態1の基本的な考え方を説明するための概略回路図である。 実施の形態1の実施例を示す概略回路図である。 実施の形態1の他の実施例を示す回路図である。 図3の出力電位差検出部と電流源の制御部の詳細構成を示す回路図である。 この発明の実施の形態2の構成を示す概略回路図である。 実施の形態1をPLL回路に適用した場合における位相比較特性のシミュレーション結果を示す図である。 従来の差動チャージポンプ回路の構成を示す概略回路図である。 図7の各電流源の詳細構成を示す回路図である。 従来の差動チャージポンプ回路をPLL回路に適用した場合における位相比較特性のシミュレーション結果を示す図である。
符号の説明
1 第1のカレントパス、 2 第2のカレントパス、 3 差動対、 4 定電流源、
5 DOWN信号回路、 6 正ノード、 7 UP信号回路、 8 負ノード、
11、12,21,22 電流源、 30 制御装置、 31 トランジスタ、
40 レプリカ回路、 41 コンパレータ。

Claims (1)

  1. 一対の電流源を含む2つのカレントパスによって差動対を構成し、各カレントパスへの入力電流に応じた差電流を生成する差動チャージポンプ回路において、上記各カレントパス間の出力電位差を検出し、上記出力電位差に応じて上記差動対を構成している各カレントパスの対をなす電流源の電流値を制御する制御手段を備え
    上記電流源をトランジスタで構成し、上記トランジスタのドレイン電圧を上記出力電位差に応じて制御するようにし、
    上記各カレントパスのトランジスタにそれぞれ別のトランジスタを並列接続し、一方のカレントパスの別のトランジスタのゲートに他方のカレントパスのトランジスタのドレイン電位を与え、他方のカレントパスの別のトランジスタのゲートに一方のカレントパスのトランジスタのドレイン電位を与えるようにしたことを特徴とする差動チャージポンプ用オフセットキャンセル装置。
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