JP4248818B2 - 表面処理アルミニウム材料の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、キャップ材等に使用される表面処理を施したアルミニウム材料に関するもので、強度な深絞り加工を施しても、塗料やインクの塗膜の密着性及び耐食性に優れた表面処理アルミニウム材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、キャップ材のための下地処理としては、プライマー処理やリン酸クロメートもしくはクロム酸クロメート等のクロメート処理、最近ではジルコニウム系の化成処理による化成皮膜を形成したり、あるいは陽極酸化皮膜を形成し、それらの化成皮膜や陽極酸化皮膜の表面に塗料あるいは印刷インクを塗布した表面処理アルミニウム材料が採用されている。
【0003】
キャップ材では生産性の面からコイル状のアルミニウム材料に上記下地処理及び塗装、印刷等を施したプレコート材を使用するのが主流となっている。このコイル材を巻き戻してキャップに深絞り加工するわけであるが、キャップ材ではスクリュー部の加工等比較的厳しい加工が多く、加工により塗装や印刷が剥離して問題となることがある。これを防ぐために塗膜の密着性が高い下地処理が求められている。
また、キャップに加工された後は飲料が充填されたボトルや瓶のキャップとして用いられるわけであるが、キャップの腐食によるアルミニウムの内容物への混入は許されず、耐食性向上に対する要求も強くなっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述の各種下地処理のうち、クロム酸クロメート処理は比較的塗膜の密着性や材料の耐食性には優れているものの、6価クロムの環境問題があったり人体に有害なため強い規制を受けており、ボトルや瓶のキャップ材用の下地処理としては用いられなくなっている。なお、リン酸クロメート処理はクロメート処理にくらべると6価クロムを含有しないことから規制は少ないものの、耐食性や密着性にやや劣るという欠点がある。
【0005】
プライマー処理やジルコニウム系の化成処理も塗料成分や薬液の改良はなされているものの、厳しい深絞り加工をするキャップ材では塗膜の密着性や耐食性に問題がある。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、強度な深絞り加工を施しても塗料や印刷インクの塗膜の密着性に優れ、耐食性にも優れた表面処理アルミニウム材料を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の表面処理アルミニウム材料の製造方法の一つは、アルミニウム又はアルミニウム合金をpH9.5以上13.5以下のアルカリ性電解液中で直流電解処理することにより、アルミニウム又はアルミニウム合金の表面に有孔率が5%以下で厚さが50〜300nmの無孔質の陽極酸化皮膜を形成する方法を採用した。
このような製造方法を採用すれば、強度な深絞り加工を施しても塗料や印刷インクの塗膜が剥離することはなく、耐食性にも優れた表面処理アルミニウム材料となる。
【0007】
本発明の表面処理アルミニウム材料の製造方法では、前記電解液としてりん酸塩溶液又は珪酸塩溶液を使用して電解処理することができる。
また、電解液に水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを添加してpH9.5以上13.5以下の電解液とすることが好ましい。
このような条件で陽極酸化処理を行えば、有孔率が5%以下で厚さが50〜300nmの陽極酸化皮膜を容易に形成することができる。
【0008】
本発明のもう一つの表面処理アルミニウム材料の製造方法では、アルミニウム又はアルミニウム合金をpH9.5以上13.5以下のアルカリ性電解液中で直流電解処理した後に、珪酸塩を含む水溶液を塗布して加熱乾燥し、アルミニウム又はアルミニウム合金の表面に有孔率が5%以下で厚さが50〜300nmであって、かつシリコン(Si)を200〜50000ppm含む陽極酸化皮膜を形成する製造方法とした。
この方法によれば、シリコンが陽極酸化皮膜中に取り込まれ、陽極酸化皮膜の耐食性を向上させる効果を発揮する。
【0009】
本発明のさらに別の表面処理アルミニウム材料の製造方法は、前記請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の製造方法によって得られた表面処理アルミニウム材料の表面に、0.5〜5000mg/m2 のシランカップリング剤を塗布した後、塗料もしくは印刷用インクの塗膜を形成する製造方法とした。
この方法によれば、塗料や印刷インクの塗膜と陽極酸化皮膜との密着性がより向上する効果を発揮する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の表面処理アルミニウム材料の製造方法について順を追って説明する。
本発明に使用するアルミニウム素材としては、主として深絞り加工により成形するので、柔軟で成形性に富む材質が求められ、たとえば純アルミ系のJIS1000番系合金、Al−Mn系のJIS3000番系合金あるいはAl−Mg系のJIS5000番系合金等が使用でき、材質については特に限定されるものではない。これらの素材の各種圧延板が好んで使用される。また、これらのアルミニウム合金のクラッド材も使用できる。
【0011】
次に、アルミニウム素材に対して前処理が施される。前処理は特に限定されるものではなく、アルミニウム素材表面の不均質な酸化膜を除去するためのものであって、例えば、弱アルカリ性の脱脂液による洗浄をした後、水酸化ナトリウム水溶液中でアルカリエッチングをし、硝酸水溶液中でデスマット処理を行う方法や、前記脱脂液による洗浄後に酸洗浄を行う方法などが用いられる。
【0012】
次に、この前処理が施されたアルミニウム素材を陽極として、電解質溶液中で電解してアルミニウム素材の表面に陽極酸化皮膜を形成するための陽極酸化処理を行う。
電解液としては、例えばリン酸塩溶液や珪酸塩溶液を使用する。特に珪酸塩溶液を使用する場合には、生成する酸化皮膜中に電解液中のシリコンが付着または取り込まれ、陽極酸化皮膜の耐食性が向上する利点がある。この場合、電解処理後の水洗の程度により皮膜のシリコン量を変えることができる。
リン酸塩溶液を使用する場合には、陽極酸化皮膜形成後に水ガラス等の珪酸塩を含む溶液を塗布して、陽極酸化皮膜中にシリコンが取り込まれるようにするのが好ましい。
【0013】
陽極酸化皮膜は無孔質のバリヤー型皮膜と多孔質皮膜に大別される。
バリヤー型皮膜は通常アルミニウムを硼酸や酒石酸アンモニウムなどの中性溶液中で陽極酸化した場合に生成する。これらの溶液はアルミニウムの酸化皮膜を溶解する力が弱いことから、アルミニウム表面には緻密で薄い酸化皮膜が生成する。
一方、多孔質皮膜は通常アルミニウムを硫酸、蓚酸、リン酸、クロム酸等の酸性溶液中で陽極酸化した場合に生成する。この皮膜は緻密な酸化皮膜(バリアー型皮膜)と多孔質な酸化皮膜とからなる複合皮膜である。陽極酸化皮膜の生成過程は、まずアルミニウム表面に薄く均一で平坦な皮膜が生成し、次いで表面に無数の小さな凹凸が現れ、やがてこの小さな凹凸の約10%が大きな孔へと成長してゆく。大きな孔の数と直径は変化することなく定常速度で皮膜成長が進行する。バリアー型皮膜の厚さは、電解時間や浴温にはあまり影響を受けずに、電解電圧に依存する。アルミニウムの場合、バリヤー型皮膜の厚さ(nm)と電解電圧(V)の関係はほぼ1.35nm/Vとなる。
【0014】
本発明においては、バリヤー型の無孔質陽極酸化皮膜をpH8以上14以下のアルカリ性電解液を使用して直流電解により形成する。
本発明の製造方法によれば、電解処理により形成される陽極酸化皮膜中にアルカリ成分が取り込まれることで、皮膜の耐アルカリ性を向上させることができる。電解液のpHが8未満の場合には、皮膜に取り込まれるアルカリ成分が少なく、耐アルカリ性を向上させる効果が顕著でない。また、電解液のpHが14に近くなると陽極酸化皮膜の形成効率が低下し、所望の膜厚を得るための処理時間が長くなり、製造効率が低下する。上記理由から、耐アルカリ性に優れる陽極酸化皮膜を効率よく形成するために、pH8〜14の範囲とする。
【0015】
上記のアルカリ性電解液としては、生成する陽極酸化皮膜を溶解しにくく、かつ無孔質の陽極酸化皮膜を生成する電解質である炭酸塩、アルカリ金属の水酸化物、珪酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、アジピン酸塩、フタル酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩などの群から選ばれる1種または2種以上を溶解した水溶液が用いられる。これらの電解質のなかでも珪酸塩、リン酸塩が酸化皮膜の性状、コストなどの点で好ましい。電解液のpH調整は、例えば電解液に適量のNaOHやKOHを添加することにより容易に調整することが可能である。また、陽極酸化皮膜の膜厚の調整は電解時間により調整することができる。
尚、電解液中の電解質濃度は2重量%からその電解質の飽和濃度の範囲で選ばれる。電解浴の浴温は15〜50℃の範囲で十分であり、浴温は50℃を越える高温とする必要はない。
【0016】
本発明においては、電解電流に直流を使用する。これは交流電解処理により形成された皮膜は、膜厚を厚くするのが難しく、特に、アルカリ水溶液中での電解処理ではその傾向が顕著なものとなるからである。また、交流電解処理では形成された皮膜が多孔質化し易く、皮膜の一部にアルカリ溶解を強く受けた皮膜欠陥が生じやすくなるため好ましくないからである。さらに、交流の特性上、基材表面で陽極酸化皮膜の生成と溶解が交互に生じるため、緻密な皮膜が形成し難く、耐食性が十分でないことにより変色や穴あきを生じやすくなるからである。
その点本発明の直流電解は酸化皮膜の生成のみ生起するので、緻密な酸化皮膜が得られ、膜厚の制御も容易である。
直流電解処理にあたっては、アルミニウム基材を陽極とし、陰極には電解液に不溶性の導電材料、例えば炭素電極を用いる。
【0017】
本発明において得られる陽極酸化皮膜の有孔率は、5%以下のほぼ無孔質の陽極酸化皮膜とする必要がある。有孔率が高くなるほど塗料や印刷インク等の塗膜の密着性は高くなるものの、腐食性物質が容易にアルミニウム基材に到達するようになり、材料の耐食性が低下する。また、孔内に残った電解液成分や吸着水分が塗膜の乾燥や焼付け後に放出され、塗膜の密着性を低下させる。したがって、陽極酸化皮膜の有孔率は5%以下とし、できれば0(零)とすることが好ましい。
尚、陽極酸化皮膜の有孔率は、電子顕微鏡観察における所定視野内の微細孔の総面積を皮膜の面積で除して導出することができる。
【0018】
本発明において得られる陽極酸化皮膜の膜厚は、50nm以上300nm以下とする必要がある。陽極酸化皮膜の膜厚が50nm未満では必要な耐食性が得られず、また、腐食により密着性も低下する。また、300nmを越えると深絞り加工の際に陽極酸化皮膜にクラックが発生し易くなり、耐食性が低下する。したがって、陽極酸化皮膜の膜厚は50nm以上300nm以下とする必要がある。より好ましくは、70nm以上200nm以下とする。
陽極酸化皮膜の膜厚は、皮膜をダイヤモンド刃を備えたスーパーミクロトームで切断し、切断した断面を透過電子顕微鏡観察して測定することができる。また、光電子分光分析(ESCA)、オージェ電子分析(Auger)、グロー放電質量分析(GD−MS)等の装置を用いて、皮膜をArなどのイオンでエッチングし、皮膜がエッチング除去されるまでに要した時間とエッチングレートから換算して求める方法も適用できる。
【0019】
さらに、本発明において得られる陽極酸化皮膜には、シリコン(Si)を200〜50000ppm含むものが好ましい。シリコンが陽極酸化皮膜中に取り込まれると、陽極酸化皮膜の耐食性を向上させる効果を発揮する。Si濃度が200ppm未満では耐食性向上の効果は少なく、50000ppmを越えても耐食性の向上は増進しない。また、50000ppmを越えると皮膜が脆くなる。
陽極酸化皮膜にSiを付与するには、たとえば電解液として珪酸塩溶液を使用すれば、生成する酸化皮膜中に適度のシリコンが取り込まれ、陽極酸化皮膜の耐食性が向上する。
あるいは、リン酸塩溶液等を使用する場合には、陽極酸化皮膜形成後に珪酸ナトリウム(Na2SiO3)等の珪酸塩を含む水溶液をロールコーター等の塗布装置を使用して直接塗布し、120℃程度の温度で加熱乾燥して陽極酸化皮膜中にシリコンが取り込まれるようにすることもできる。
【0020】
さらに、このような表面に陽極酸化皮膜を形成した表面処理アルミニウム材料の表面に、装飾性を高めるために塗料あるいは印刷インクを塗布しても良い。塗布する塗料あるいは印刷インクの種類には特に制限はない。塗料あるいは印刷インクを塗布するに当たって、シラン系カップリング剤を塗布しておくと陽極酸化皮膜と塗料あるいは印刷インクの塗膜との密着力をより向上させることができる。塗布量は0.5〜5000mg/m2が適する。0.5mg/m2未満では密着力向上の効果は認められず、また5000mg/m2を越えるとシラン系カップリング剤自体の陽極酸化皮膜との密着性が低下する場合がある。したがって、シラン系カップリング剤の塗布量は0.5〜5000mg/m2が適する。
【0021】
このようにして得られた陽極酸化皮膜を具備した表面処理アルミニウム材料、あるいはさらに塗料あるいは印刷インクを塗布した表面処理アルミニウム材料は、陽極酸化皮膜の耐食性が優れ、アルミニウム素材と陽極酸化皮膜とが強固に結合されていて、さらに塗料あるいは印刷インクを塗布した場合にも陽極酸化皮膜と塗料あるいは印刷インク塗膜とが強固に密着しているので、キャップに深絞り加工する際にも塗膜が剥離することはない。また、陽極酸化皮膜がバリヤ性に優れているので耐食性の経時劣化も起こらない。このため本発明の表面処理アルミニウム材料は、キャップ材等に利用するのに極めて有用である。
【0022】
【作用】
本発明は、特定の有孔率と膜厚を有する陽極酸化皮膜をpH9.5以上13.5以下のアルカリ性電解液を使用して直流電解法により形成して、強度な深絞り加工を施しても塗膜が剥離することのない優れた密着性を有し、かつ耐食性にも優れた表面処理アルミニウム材料を得られるようにした。
【0023】
【実施例】
以下実施例と比較例を用いて本発明をより具体的に説明する。
アルミニウム素材として0.3mmまで圧延したJIS1100(質別:H14)板材を準備した。この素材を5%NaOH水溶液で50℃で10秒間エッチングして脱脂処理した後、10秒間水洗した。さらに、10%硝酸溶液に室温で10秒間浸漬して中和した後10秒間水洗して乾燥した。
【0024】
次いで、表1に示す塩を含む水溶液に水酸化ナトリウムを加えて所定のpHに調整して電解液とし、上記アルミニウム素材を陽極にして直流電解処理を行った。陰極にはカーボン板を使用した。電解電圧は28〜215V、電流密度は0.5〜3.0A/dm2 の範囲で適宜調整した。電解時間は膜厚に応じて適宜調整した。
このようにしてアルミニウム合金表面に表1に示す有孔率と厚さの陽極酸化皮膜を形成した。
ここで珪酸塩溶液を使用した場合は形成された陽極酸化皮膜中にシリコン元素が取り込まれてSi濃度が高くなっているが、リン酸塩溶液を使用した場合には陽極酸化皮膜中にシリコン元素が取り込まれておらず、Si濃度は低い。
【0025】
さらに、得られた陽極酸化皮膜の表面にエポキシフェノール系の樹脂塗料をロールコーターを使用して塗布し、230℃で5分間乾燥を行い、70mg/m2の塗膜を形成した。塗料の塗布に当たっては、密着性を向上させる目的で一部の試料について、塗料の塗布前にシラン系カップリング剤として1%アミノシラン水溶液を塗布し、100℃で乾燥させた後、塗料を塗布した。
【0026】
各試料について有孔率、膜厚、含有されるSi成分の量を測定し、耐食性と密着性を評価した。
有孔率は、陽極酸化皮膜表面の任意の20箇所を5万倍の電子顕微鏡で観察し、全面積に対する孔の面積の割合を求めた。ただし、金属間化合物などがあって皮膜形成が不均一化している場所は、測定が困難なため測定から除外した。
膜厚は、皮膜をダイアモンド刃を備えたスーパーミクロトームで切断し、切断した断面を透過電子顕微鏡観察して測定した。
Si成分の定量は、2重収束型GDMS装置(VG Elemental 社製 VG9000)を使用して、グロー放電質量分析法(GD−MASS分析)により皮膜表面をエッチングしながらAlに対するSi元素の割合を測定した。測定条件は放電ガス;アルゴン、放電電圧;0.5kV、放電電流;3.0mA、加速電圧;8.3kVとし、スパッタ速度;約20nm/minで膜厚分をエッチングしてシリコン濃度を測定した。これらの測定結果を表1に合わせて示す。
【0027】
さらに、前記の塗料を塗布したアルミニウムの陽極酸化皮膜と塗膜との密着性を評価した。この密着性の評価方法は、塗料を塗布したアルミニウム板材を深さ30mm、外径25mmのスクリュー付きのキャップに加工し、各1000個の試料につき塗膜の状態を目視判定で評価した。その結果、塗膜に剥離が全く無い場合には◎印を、僅かな剥離でかつ発生率が3%未満の場合には○印を、僅かあるいはやや大きな剥離が3%以上発生している場合には×印を付した。
【0028】
さらに、前記のスクリュー付きキャップを各100個ずつ腐食試験に供した。腐食試験の条件は、50℃で5%の塩水を80cm2 に対して平均1.5ml/hrで連続的に噴霧する塩水噴霧試験を30日間実施した後、外観を目視観察した。その結果、全く腐食の発生が認められな場合には◎印を、僅かな腐食が5%未満のキャップに観察される場合には○印を、僅かな腐食でも5%以上のキャップで観察される場合には×印を付した。これらの評価結果を表1に併記する。
【0029】
【表1】
【0030】
表1に示すように、本発明の要件を満たす実験例1から実験例9は、アルミニウム材料表面の陽極酸化皮膜と塗膜との接着性に優れ、耐食性も良好であった。
これらの実験例の表面処理アルミニウム材料は、いずれも陽極酸化皮膜の膜厚が50〜300nmの範囲であり、有孔率が5%以下である。
【0031】
また、陽極酸化被膜中のSi含有量が200ppm以上の実験例3,実験例5〜9においては、耐食性が一段と優れていることがわかる。
また、塗料を塗布するに当たってシラン系カップリング剤を塗布した実験例4〜実験例9では、陽極酸化皮膜と塗膜との密着性に優れていることがわかる。
さらに、pH9.5以上13.5以下のアルカリ性電解液を使用した実験例5〜9においては、耐食性及び密着性に優れていることがわかる。
【0032】
これに対して比較例1は陽極酸化皮膜の膜厚は厚いものの有孔率が高すぎるため耐食性が悪く、塗膜の密着性も悪い。比較例2では陽極酸化皮膜の有孔率は低いものの膜厚が薄すぎるので塗膜の密着性も耐食性も悪くなっている。
また比較例3では陽極酸化皮膜の膜厚が厚過ぎるため、キャップ加工過程でクラックが発生して耐食性が劣っている。
【0033】
比較例4ではpH7.5の酸性リン酸塩溶液で処理したため、塗膜の密着性が悪い。比較例5では陽極酸化皮膜中のSi濃度が高すぎて脆くなり、塗膜の密着性が悪い。
【0034】
比較例6は、交流電解処理したので材料に耐食性及び塗膜の密着性がともに悪い。
比較例7及び比較例8では、陽極酸化皮膜の膜厚が薄いので材料に耐食性及び塗膜の密着性がともに悪い。
【0035】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明の表面処理アルミニウム材料は、アルミニウム又はアルミニウム合金の表面に陽極酸化皮膜が形成され、該陽極酸化皮膜は厚さが50〜300nm、有孔率が5%以下あるので、深絞り加工しても耐食性に優れ、塗膜との密着性を高めることが可能である。また、本発明の表面処理アルミニウム材料は、キャップ材等に使用すれば、加工する際に塗膜が剥離することはなく、良好な塗膜の密着性及び耐食性を示すものとすることができる。
Claims (4)
- アルミニウム又はアルミニウム合金をpH9.5以上13.5以下のアルカリ性電解液中で直流電解処理することにより、アルミニウム又はアルミニウム合金の表面に有孔率が5%以下で厚さが50〜300nmの陽極酸化皮膜を形成することを特徴とする表面処理アルミニウム材料の製造方法。
- 前記電解液がりん酸塩溶液又は珪酸塩溶液であることを特徴とする請求項1に記載の表面処理アルミニウム材料の製造方法。
- アルミニウム又はアルミニウム合金をpH9.5以上13.5以下のアルカリ性電解液中で直流電解処理した後に、珪酸塩を含む水溶液を塗布して加熱乾燥し、アルミニウム又はアルミニウム合金の表面に有孔率が5%以下で厚さが50〜300nmであって、かつシリコン(Si)を200〜50000ppm含む陽極酸化皮膜を形成することを特徴とする表面処理アルミニウム材料の製造方法。
- 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の製造方法によって得られた表面処理アルミニウム材料の表面に、0.5〜5000mg/m2のシランカップリング剤を塗布した後、塗料もしくは印刷用インクの塗膜を形成することを特徴とする表面処理アルミニウム材料の製造方法。
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