JP3853702B2 - 表面処理アルミニウム材の製造方法 - Google Patents

表面処理アルミニウム材の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面に陽極酸化皮膜を有する表面処理アルミニウム材の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、飲料缶をはじめとする各種容器や家具、内装建材用の化粧板には、アルミニウム材の表面にリン酸クロメートもしくはクロム酸クロメートの皮膜を形成し、そのリン酸クロメート皮膜もしくはクロム酸クロメート皮膜の表面に有機樹脂フィルムをラミネートした表面処理アルミニウム材料が採用されている。飲料缶に使用する表面処理アルミニウム材料は、缶に加工する際にラミネートした有機樹脂フィルムがアルミニウム表面から剥離しないよう強い接着性が要求される。また、内容物に対する耐食性も要求される。さらに化粧板等に使用される表面処理アルミニウム材料でも、長期間にわたる良好な耐食性が要求され、成形加工する際にラミネートした有機樹脂フィルムがアルミニウム表面から剥離しないよう強い接着性が要求される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
表面処理アルミニウム材料と有機樹脂フィルムとの密着性を向上させ、併せて耐食性を維持するための手段として、本出願人は先にアルミニウム材料の表面に形成する酸化皮膜を無孔質陽極酸化皮膜とする方法を提案している(特開平11−12796号公報)。しかしながら、係る方法により製造された表面処理アルミニウム材を、レトルト処理(100℃〜130℃で数分から数十分加温)する飲料缶に適用する場合に、缶蓋等に加工した後に密着性及び耐食性が低下する傾向にある。このような密着性及び耐食性の低下が生じると、フェザーリングと呼ばれる開缶時のフィルム剥離残留や、それによる飲料中へのアルミニウム溶出量の増加といった問題が生じる。これらの現象は、缶蓋等への成形加工による密着性の低下とともに、高温で腐食性の飲料環境への暴露による密着性の低下、及びフィルムの被覆欠陥部からの腐食によるものである。
【0004】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、密着性及び耐食性に優れ、加熱環境、腐食環境に曝され得る飲料缶等に用いて好適な表面処理アルミニウム材の製造方法を提供することを目的としている
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る表面処理アルミニウム材は、アルミニウム基材又はアルミニウム合金からなる金属基材と、該基材の表面に形成された陽極酸化皮膜とを備え、前記陽極酸化皮膜が、有孔度25%以下の無孔質又は微孔質の陽極酸化皮膜とされ、該皮膜の膜厚が5nm以上350nm以下とされており、pH9以上でCa,P,Na,K,Si,Al,Baから選ばれる1種以上を含む無機塩を含有するアルカリ性水溶液中で直流電解処理することにより形成された陽極酸化皮膜であることを特徴としている。
【0006】
上記構成を備えた本発明に係る表面処理アルミニウム材によれば、優れた密着性及び耐食性を得ることができ、例えば飲料缶のようにレトルト処理を施され、温飲料環境においても使用される用途に用いる場合にも表面に接着した樹脂フィルム等が剥離することがなく、またこのようなフィルムの欠損による腐食も防止される。
【0007】
まず、有孔度が25%以下のいわゆる無孔質又は微孔質の陽極酸化皮膜とされることで、陽極酸化皮膜の孔からの腐食性物質の浸入が生じにくく、優れた耐食性を得られる。また、樹脂フィルム等を接着する際には、多孔質の陽極酸化皮膜よりも密着面積を大きくすることができ、優れた密着性を得ることができる。さらに、孔径が極めて微小であることから孔からの不純物(水分)の放出が少なく、貼り合わせた樹脂フィルムの密着性の低下が生じにくい。上記有孔度が25%を越えると、皮膜に孔が形成され、耐食性及び密着性が低下する。また、有孔度5%以下とするのがより好ましい。尚、上記有孔度は、陽極酸化皮膜表面の微細な孔の面積を、陽極酸化皮膜の面積で除した値を指すものである。
【0008】
また、陽極酸化皮膜の膜厚が5nm〜350nmとされることで、優れた密着性及び成形加工性を得ることができる。上記膜厚が5nm未満では、耐水和性が不十分なものとなり、例えば2ピース缶の缶蓋として用いた場合に、フェザーリング性及びアルミ溶出性の低下が生じる場合がある。また、上記膜厚が350nmを越える皮膜は、多孔質化し易く、缶蓋を成形した際に皮膜にクラックを生じてフェザーリング性及びアルミ溶出性低下の原因となる。上記陽極酸化皮膜の膜厚は、より好ましくは50nm〜300nmの範囲である。
【0009】
また、本発明に係る表面処理アルミニウム材の陽極酸化皮膜は、pH9以上でCa,P,Na,K,Si,Al,Baから選ばれる1種以上を含む無機塩を含有するアルカリ性水溶液中で直流電解処理することにより形成されたものとされる。
まず、pH9以上のアルカリ水溶液を電解液として用いることで、形成された陽極酸化皮膜表面の水酸基(−OH基)が増加するので、この水酸基が、陽極酸化皮膜上にシランカップリング剤を塗布する際の結合手となり、シランカップリング剤を塗布する効果をより高めることができる。上記電解液のpHが9未満の場合には、表面の−OH基が減少する。特に酸性の電解液では電解液成分と中和反応して−OH基がより減少し密着性が低下するので好ましくない。
また、上記電解液としてCa,P,Na,K,Si,Al,Baから選ばれる1種以上を含む無機塩を含有するものを用いることで、これらの金属イオンが陽極酸化皮膜の表面に吸着され、耐食性を向上させる効果を得られる。これらの金属元素のうちでも、P,Siを含む無機塩を含有する電解液により形成された陽極酸化皮膜がより優れた耐食性を呈する。
【0010】
次に、本発明に係る表面処理アルミニウム材においては、前記陽極酸化皮膜上に、シランカップリング剤が0.05mg/m以上100mg/m以下塗布されるとともに、その上に有機樹脂フィルムが被覆された構成とすることもできる。
温飲料水環境では、樹脂フィルムを透過してくる僅かな水分により陽極酸化皮膜が水和反応し、樹脂フィルムとの密着性が低下することがあるが、シランカップリング剤を陽極酸化皮膜表面に塗布することで、この水和反応を効果的に抑制することができる。これは、シランカップリング剤のシラノール基(Si−OH)が、陽極酸化皮膜の水和を受けやすい水酸基Al−OHと脱水反応して結合し(Si−O−Al)、皮膜と水との反応が生じないように改質するためである。また、本発明に係る陽極酸化皮膜では、アルカリ水溶液により電解処理されていることで、シランカップリング剤との結合性に優れるため、シランカップリング剤を塗布する効果が促進され、優れた耐食性を得られるようになっている。
このようにシランカップリング剤の塗布により陽極酸化皮膜の耐水和性が向上され、耐食性が向上されることから、仮に樹脂フィルムに欠陥が生じたとしても陽極酸化皮膜がバリヤとなり、基材のアルミニウムが溶出するのを効果的に防止することができる。
【0011】
シランカップリング剤の塗布量を上記範囲とすることでシランカップリング剤が均一かつ強固に無孔質陽極酸化皮膜と結合し、優れた耐食性、密着性が得られる。前記塗布量が0.05mg/m未満では、無孔質陽極酸化皮膜表面におけるシランカップリング剤の均一性が低下して密着性が低下する。また、前記塗布量が100mg/mを越えると、アルミニウム材加工時にシランカップリング剤層の内部で凝集破壊が生じやすくなり密着性が低下する場合がある。
【0012】
次に、本発明に係る表面処理アルミニウム材においては、前記シランカップリング剤が、アミノ基を含むものであることが好ましい。このような構成とすることで、有機樹脂フィルムと陽極酸化皮膜(シランカップリング剤)との密着性をより強固なものとすることができる。
【0013】
次に、本発明に係る表面処理アルミニウム材においては、前記有機樹脂フィルムが、膜厚3μm以上50μm以下の多層構造のポリエステルフィルムとされ、前記金属基材と接着される側に、ポリエステルに3%以上のイソフタル酸を共重合した接着層を有することが好ましい。
【0014】
次に、本発明に係る表面処理アルミニウム材においては、前記有機樹脂フィルムが、膜厚3μm以上50μm以下で、3%以上のイソフタル酸を共重合したポリエステル樹脂からなるポリエステルフィルムとされることが好ましい。
【0015】
そして、本発明に係る表面処理アルミニウム材の製造方法は、アルミニウム基材又はアルミニウム合金からなる金属基材と、該基材の表面に形成された陽極酸化皮膜とを備える表面処理アルミニウム材を製造するに際して、pH9以上でCa,P,Na,K,Si,Al,Baから選ばれる1種以上を含む無機塩を含有するアルカリ性水溶液中で直流電解処理することにより、有孔度25%以下、膜厚5nm以上350nm以下の無孔質又は微孔質の陽極酸化皮膜を金属基材表面に形成することを特徴とする。
上記製造方法によれば、形成される陽極酸化皮膜表面に多くの水酸基を含み、上記金属元素のイオンが表面に吸着された表面処理アルミニウム材が得られ、シランカップリング剤や接着剤との密着性に優れ、耐食性に優れる表面処理アルミニウム材を製造することができる。
【0016】
次に、本発明に係るアルミニウム成形体は、先に記載の本発明に係る表面処理アルミニウム材を成形加工したことを特徴とする。
次に、本発明に係るアルミニウム缶は、先に記載の本発明に係る表面処理アルミニウム材からなる缶蓋及び/又は缶胴を備えたことを特徴とする。
上記構成によれば、樹脂フィルムの密着性に優れ、耐食性に優れるアルミニウム成形体及びアルミニウム缶を得ることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
本発明に係る表面処理アルミニウム材の基本構成は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属基材の表面に有孔度25%以下の無孔質又は微孔質の陽極酸化皮膜が形成されたものである。アルミニウム基材又はアルミニウム合金基材としては、特に限定されず、純アルミ系の1000系合金、Al−Cu系、Al−Cu−Mg系の2000系合金、Al−Mn系の3000系合金、Al−Si系の4000系合金、Al−Mg系の5000系合金、Al−Mg−Si系の6000系合金、Al−Zn−Mg−Cu系、Al−Zn−Mg系の7000系合金、Al−Fe−Mn系の8000系合金などが用いられ、成形用合金、構造用合金、電気用合金、AC1A,AC2A,AC3A,AC4Bなどの鋳造用合金が用いられる。
また、これらの合金に溶体化処理、時効処理などの種々の調質処理を施したものも用いられる。さらに、これらのアルミニウム合金を表面にクラッディングしたクラッド材も使用できる。また、予めプレス成形加工などを施した加工材のものであってもよく、未加工の板材、押出材、鋳造品であってもよい。2ピース缶に用いる場合には、缶胴用として3000系合金基材、缶蓋用としてに5000系合金基材を用いるのが通常である。
【0018】
また、上記の基材上に陽極酸化皮膜を形成するにあたっては、前記基材の表面に前処理を行うことが好ましい。この前処理としては、要は素材の表面に付着した油脂分を除去し、素材表面の不均質な酸化物皮膜が除去できるものであれば特に限定されない。例えば、弱アルカリ性の脱脂液による脱脂処理を施したのち、水酸化ナトリウム水溶液でアルカリエッチングをした後、硝酸水溶液中でデスマット処理を行う方法や脱脂処理後に酸洗浄を行う方法などが適宜選択して用いられる。
【0019】
前記金属基材上に有孔度25%以下の無孔質又は微孔質の陽極酸化皮膜を形成するには、必要に応じて上記前処理を施された金属基材を、電解浴に浸漬した状態で電解する。電解浴の電解液としては、Ca,P,Na,K,Si,Al,Baから選ばれる1種以上を含む無機塩を含有するアルカリ性水溶液が用いられる。上記無機塩の具体例としては、特に限定されるものではないが、リン酸塩、炭酸塩、アルカリ金属の水酸化物等を挙げることができる。これらの無機塩を含有する電解液を使用することで、電解処理により形成された陽極酸化皮膜の表面に上記金属元素のイオンが吸着され、もって耐食性を向上させる効果を得られる。
【0020】
また、本発明に係る表面処理アルミニウム材を製造するに当たり使用される上記電解浴は、pH9以上とされる。このようなアルカリ水溶液中で電解処理することで、形成された無孔質又は微孔質の陽極酸化皮膜表面に多数の水酸基(−OH)が形成され、この水酸基が接着剤やシランカップリング剤の結合手として作用することで、接着剤やシランカップリング剤と陽極酸化皮膜との密着性が著しく向上する。電解液のpHが9未満の場合には、形成された陽極酸化皮膜表面の水酸基量が少なくなるために樹脂フィルム及びシランカップリング剤の密着性が低下する傾向にある。
【0021】
さらに、本発明に係る表面処理アルミニウム材を製造するに当たっては、電解方法として直流電解が用いられる。直流電解により金属基材表面に陽極酸化皮膜を形成することで、皮膜の多孔質化を防止し、かつCa,Na,K,Si,Al,Baイオンを皮膜内に効果的に取り込むことができる。
【0022】
上記にて形成された金属基材表面の陽極酸化皮膜上には、必要に応じてシランカップリング剤が塗布される。シランカップリング剤の塗布により、陽極酸化皮膜の水酸基とシランカップリング剤の官能基とが結合して、水和反応に起因する腐食を防止することができる。これによって極めて良好な耐食性、密着性を有する表面処理アルミニウム材とすることができる。
また、本発明に係る陽極酸化皮膜は、pH9以上のアルカリ性の電解液を用いた電解により形成されるため上記水酸基を多く含んでおり、よりシランカップリング剤との密着性が良好なものとなっている。シランカップリング剤の塗布量は、0.05mg/m以上100mg/m以下とされる。その理由は先に記載の通りである。
【0023】
本発明に係る表面処理アルミニウム材に適用することができるシランカップリング剤としては、無機質と化学結合する反応基として、メトキシ基、エトキシ基、シラノール基などを有するシランカップリング剤、及び有機質と化学結合する反応基として、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、ウレイド基、クロロアルキル基などを有するシランカップリング剤を挙げることができ、この内でも、アミノ基を有するシランカップリング剤が他の反応基よりも比較的高い密着性を示すためより好ましい。
【0024】
上記シランカップリング剤を無孔質又は微孔質の陽極酸化皮膜表面に塗布する場合、シランカップリング剤をアルコールなどの揮発性溶媒で希釈して塗布するのがよい。また、塗布方法には特に限定はなく、ロールコート法、スプレーコート法、バーコート法、ディッピング法などを適用することができる。そして、上記カップリング剤の希釈液を塗布した後は、60〜280℃で熱処理を行うことが好ましい。熱処理時間は処理温度により異なるが、処理温度を高くするほど熱処理時間を短くすることができ、例えば処理温度が130℃以上であれば60秒以上、60〜130℃では120秒以上等とすればよい。
上記熱処理を行うことで、この熱処理を行うことで、シランカップリング剤による脱水反応を促進させることができるので、無機材料である基材と、シランカップリング剤との結合を強くすることができ、同時にシランカップリング剤どうしの結合も強くすることができる。そのため、表面処理アルミニウム材の耐食性を向上させることができ、かつ良好な密着性を得ることができる。
【0025】
また、本発明に係る表面処理アルミニウム材においては、陽極酸化皮膜上に塗布されたシランカップリング剤層上に、更に1層又は2層以上の有機樹脂フィルムが接着される。このような有機樹脂フィルムとしては、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂等からなる有機樹脂フィルムが用いられる。このような有機樹脂フィルムとしては、加工性に優れるポリエステルとポリエステルに第二成分を添加して融点を下げた接着層を持つ2層フィルムや、ポリエステル及びポリエステルにイソフタル酸や、フタル酸、テレフタル酸等の第2成分を加え融点を下げたものを用いることが好ましい。このようなポリエステルの低融点化を行うのは、ポリエステルの融点が260℃程度と高く、そのままでは陽極酸化皮膜との接着にこの融点近傍まで加熱する必要があり、このような高温下ではシランカップリング剤の熱分解が生じて十分な密着性、耐食性が得られなくなるおそれがあるからである。
【0026】
また、上記有機樹脂フィルムとしてポリエステルフィルムを用いることで、成形加工時の耐衝撃性が向上し、フィルム欠陥が生じ難くなる。例えば缶蓋成形におけるスコア加工などの強い衝撃を受ける加工時に、フィルム欠陥が生じるのが効果的に防止される。また、樹脂フィルム厚さが3μm未満の場合には、水分が透過し易くなり、50μmを越える場合には成形加工時の潤滑性が悪くなりフィルム欠陥が生じ易くなるので好ましくない。また、上記接着層を有する多層構造とすることで、陽極酸化皮膜と樹脂フィルムとを容易に強固に接着することができ、密着性、耐食性に優れる表面処理アルミニウム材を容易に得ることができる。イソフタル酸の共重合が3%未満の場合には、イソフタル酸の添加による融点の低下効果を得ることができず、接着層が機能しない。
【0027】
有機樹脂フィルムの接着方法は、特にその条件が限定されることはないが、適切な有機樹脂フィルムを用意し、これを必要に応じてベーキング処理した表面処理アルミニウム材の陽極酸化皮膜の表面に積層し、この積層体を、有機樹脂フィルムの融点以上の温度に加熱した加熱ローラ等に通過させて有機樹脂フィルムを熱融着させる。ローラによって印加される線圧は有機樹脂フィルムの材質や厚み等により適宜決定される。このようにして、有機樹脂フィルムをラミネートした表面処理アルミニウム材を作製する。また、加熱ローラの他に、ヒートプレス等によってもラミネートが可能である。
【0028】
本発明に係る表面処理アルミニウム材は、プレス加工、絞り加工、しごき加工などの塑性加工により種々の形状に加工して使用することができ、このような加工を施すことで、例えば、電機部品外筐、エアコンフィン材、自動車や航空機の構造体、建材パネル、アルミニウムの2ピース缶等に好適に使用することができる。
特に、上記構成を備えた本発明のアルミニウム材は、アルミニウム缶に好適なものであり、表面に有機樹脂フィルムがラミネートされた本発明の表面処理アルミニウム材をアルミニウム缶の缶蓋に適用することで、その優れた密着性により優れたフェザーリング性を得ることができ、また、優れた耐食性により缶蓋や缶胴からのアルミニウムの溶出を効果的に防止することができる。
【0029】
【実施例】
以下、本発明を、実施例および比較例により、具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0030】
(試料の作製)
アルミニウム合金基材として板厚0.1mmに圧延したJIS5052合金を用い、界面活性剤を2%含む50℃の脱脂液に60秒間浸漬し、次いで30秒間水洗した後、50℃の10%NaOH溶液により30秒間エッチングし、次いで30秒水洗した。その後、10%HNO溶液で30秒間洗浄し、30秒間水洗して脱脂処理した。
【0031】
次に、表1に示す無機塩を含む各種電解液を用意し、さらにNaOHの添加により表1に示す各pHに調整して電解液を調製した。次いで、各電解液を30℃に加温し、上記脱脂処理後の基材を陽極に接続し、炭素板を陰極として2分間の直流電解処理を行い、各種膜厚の陽極酸化皮膜を上記基材表面に形成した。それぞれの膜厚は印加電圧により調整した。電解処理後の基材は、10秒間の水洗の後、120℃で5分間乾燥させた。
また、比較例7の試料については、交流電解処理により陽極酸化皮膜を形成した。この試料については、電解方法が異なる以外は、実施例2と同様としたが、交流電解処理のため、有孔度が24%に増加している。
【0032】
次に、表1に示す実施例2,5,12,13,14,15,16及び比較例6,7の試料について、3#のバーコーターでシランカップリング剤を表1に示す塗布量で塗布し、その後80℃で2分間の乾燥を行った。実施例14,15の試料については、官能基としてそれぞれエポキシ基、メタクリル基を有するシランカップリング剤を塗布した。
【0033】
次に、ポリエステルからなる10μm厚のベース層と、イソフタル酸の添加により20%共重合されたポリエステルからなる1μm厚の接着層とを備えた2層構造の有機樹脂フィルムを用意し、アルミニウム合金基材の陽極酸化皮膜又はシランカップリング剤上に重ね合わせた状態で、250℃に加熱したロール間を通過させて熱融着により貼り合わせた。
また、実施例16の試料については、イソフタル酸を添加して20%共重合させたポリエステルのみからなる単層構造の有機樹脂フィルムを上記と同様にして基材と貼り合わせた。
【0034】
【表1】
Figure 0003853702
【0035】
(測定及び評価)
上記の工程により得られた実施例1〜16及び比較例1〜7の試料については、以下の陽極酸化皮膜の膜厚の測定及び有孔度の測定を行っており、その測定結果を表1に併記する。
膜厚の測定は、試料の断面を透過電子顕微鏡により倍率10万倍で観察し、得られた電子顕微鏡像から求めた。この膜厚の測定は、断面観察により陽極酸化皮膜の膜厚を測定した試料を標準試料とし、EPMAの酸素カウントから換算して求めても十分な精度で膜厚を導出することが可能である。
陽極酸化皮膜の有孔度は、電解処理後の陽極酸化皮膜の表面の50箇所を、10万倍で電子顕微鏡観察し、全観察面積に対する孔の面積の割合として導出した。但し、基材上に存在する金属間化合物により陽極酸化皮膜の形成が阻害された結果生じた皮膜の不連続部分については、孔の総面積から除外した。この有孔度は、上記の測定方法の他、試料の断面を10万倍で透過電子顕微鏡観察し、その断面像における陽極酸化皮膜表面の孔の割合から導出することもできる。
【0036】
次に、上記実施例1〜16及び比較例1〜7の試料について、加工密着性及び加工耐食性の評価を行った。評価結果を表1に併記するとともに、以下に評価方法を説明する。
加工密着性の評価は、フェザーリング性の評価により行った。具体的には、有機樹脂フィルムが貼り合わされた各アルミニウム材(ラミネート材)を2ピース缶の缶蓋に成形した後、塩素イオンを50ppm含むイオン交換水を充填した缶にパッキングし、120℃で30分間レトルト処理した後、50℃に加温してプルトップ蓋を開けて、開缶部の有機樹脂フィルムが剥離し残留(フェザーリング)した面積を測定した。評価基準は、開缶部におけるフィルム残留面積が0.3mm未満のものを◎、フィルム残留面積が0.3mm以上1.0mm以下のものを○、フィルム残留面積が1.0mmを越えるものを×とした。
加工耐食性は、アルミニウム溶出量により評価した。具体的には、有機樹脂フィルムが貼り合わされた各アルミニウム材を2ピース缶の缶蓋に成形した後、塩素イオンを50ppm含むイオン交換水を充填した缶にパッキングし、120℃で30分間レトルト処理した後、倒置して50℃にて3ヶ月間放置し、その後充填液を取り出してアルミニウムの含有量を測定した。評価基準は、充填液からアルミニウムが検出されない(検出限界0.01ppm)ものを◎、僅かに検出された(検出量が0.01ppmを越えて0.3ppm未満)ものを○、検出量が0.3ppm以上のものを×とした。
【0037】
表1に示すように、本発明の要件を満たす実施例1〜16の試料においては、加工密着性及び加工耐食性のいずれも良好な結果が得られた。Si又はPを含む無機塩を含有する電解液を用いて陽極酸化皮膜を形成した実施例4〜7及び実施例11〜13の試料については、より良好な結果が得られる傾向にある。
これに対して、陽極酸化皮膜が3nmと極めて薄い比較例1の試料は、加工密着性及び加工耐食性のいずれも劣るものであった。膜厚が厚すぎるもの(比較例2)及び有孔度が大きすぎるもの(比較例3)では、加工耐食性に劣る結果となった。また、使用電解液のpHが低いもの(比較例4)、電解液に金属元素を含まないもの(比較例5)、シランカップリング剤の塗布量が過剰なもの(比較例6)については、加工密着性が劣る結果となった。
このように、本発明に係る構成のように、基材上に形成された陽極酸化皮膜の有孔度及び膜厚、並びに陽極酸化皮膜を形成するための電解液のpHを適切な範囲とし、かつ電解液に含まれる金属元素種を適切に選択することで、優れた密着性と耐食性を兼ね備え、アルミニウム缶として用いた場合に優れたフェザーリング性とアルミニウム溶出性を得られる表面処理アルミニウム材を提供することができる。
【0038】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明に係る表面処理アルミニウム材は、前記陽極酸化皮膜が、有孔度25%以下の無孔質又は微孔質の陽極酸化皮膜とされ、該皮膜の膜厚が5nm以上350nm以下とされており、pH9以上でCa,P,Na,K,Si,Al,Baから選ばれる1種以上を含む無機塩を含有するアルカリ性水溶液中で直流電解処理することにより形成された陽極酸化皮膜である構成を採用したことで、優れた密着性と耐食性を得ることができ、アルミニウム缶の缶蓋として用いた場合のフェザーリング性にも優れたものである。
【0039】
特に、陽極酸化皮膜上に塗布量0.05mg/m以上100mg/m以下のシランカップリング剤を塗布するとともに、有機樹脂フィルムをラミネートすることで、より優れた密着性、耐食性を得ることができる。
【0040】
次に、本発明に係る表面処理アルミニウム材の製造方法によれば、形成される陽極酸化皮膜表面に多くの水酸基を含み、上記金属元素のイオンが表面に吸着された表面処理アルミニウム材が得られ、シランカップリング剤や接着剤との密着性に優れ、耐食性に優れる表面処理アルミニウム材を製造することができる。

Claims (1)

  1. アルミニウム基材又はアルミニウム合金からなる金属基材と、該基材の表面に形成された陽極酸化皮膜とを備える表面処理アルミニウム材を製造するに際して、
    pH9以上でCa,P,Na,K,Si,Al,Baから選ばれる1種以上を含む無機塩を含有するアルカリ性水溶液中で直流電解処理することにより、有孔度25%以下、膜厚5nm以上350nm以下の無孔質又は微孔質の陽極酸化皮膜を金属基材表面に形成することを特徴とする表面処理アルミニウム材の製造方法。
JP2002173106A 2002-06-13 2002-06-13 表面処理アルミニウム材の製造方法 Expired - Fee Related JP3853702B2 (ja)

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